(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395191
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】集積MOS型バリキャップおよびこれを有する電圧制御発振器、フィルター
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20180913BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20180913BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20180913BHJP
H01L 29/94 20060101ALI20180913BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L27/04 V
H01L29/94 Z
H03B5/32 E
H03B5/32 H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-523405(P2016-523405)
(86)(22)【出願日】2015年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2015063513
(87)【国際公開番号】WO2015182363
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-113482(P2014-113482)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398069894
【氏名又は名称】インターチップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌明
(72)【発明者】
【氏名】有吉 竜司
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−099787(JP,A)
【文献】
特開2000−252480(JP,A)
【文献】
特開平09−027732(JP,A)
【文献】
特開2001−210788(JP,A)
【文献】
特開2007−158766(JP,A)
【文献】
特開平09−307356(JP,A)
【文献】
特開2014−039043(JP,A)
【文献】
特開2009−004972(JP,A)
【文献】
特開2012−064915(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0151575(US,A1)
【文献】
英国特許出願公告第2363927(GB,A)
【文献】
特開2004−120728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/94
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバリキャップを並列に接続して構成したバリキャップの集合体であって、
各バリキャップは、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されたMOS型キャパシタであり、
しかも前記各バリキャップは、
第1の電極となる第1導電型半導体基板上に容量絶縁膜を介して形成された第2の電極となる導電体層、前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に対向する領域に近接した表面近傍に形成された第2導電型不純物領域を有し、
前記各バリキャップを、前記第2導電型不純物領域に、前記第1導電型半導体基板および前記第2導電型不純物領域からなるダイオードの逆方向電圧となり、かつ電圧が異なる複数種類の直流電圧を印加することにより、前記第1の電極となる前記第1導電型半導体基板および前記第2の電極となる前記導電体層の間を容量要素とした場合の容量・制御電圧特性が異なるバリキャップとして機能するように構成したことを特徴とする集積MOS型バリキャップ。
【請求項2】
複数のバリキャップを並列に接続して構成したバリキャップの集合体であって、
各バリキャップは、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されたMOS型キャパシタであり、
しかも前記各バリキャップは、
第1の電極となる第1導電型半導体基板上に容量絶縁膜を介して形成された第2の電極となる導電体層、前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に対向する領域に近接した表面近傍に形成された第2導電型不純物領域および前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に覆いつくされるように、前記導電体層に対向する領域のみの表面近傍に形成された第1導電型の高濃度層を有し、
前記各バリキャップを、前記第2導電型不純物領域に、前記第1導電型半導体基板および前記第2導電型不純物領域からなるダイオードの逆方向電圧となり、かつ電圧が異なる複数種類の直流電圧を印加することにより、前記第1の電極となる前記第1導電型半導体基板および前記第2の電極となる前記導電体層の間を容量要素とした場合の容量・制御電圧特性が異なるバリキャップとして機能するように構成したことを特徴とする集積MOS型バリキャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する集積MOS型バリキャップにおいて、
前記各バリキャップは、同一の前記直流電圧が印加される複数個の単位バリキャップを並列に接続してなり、各単位バリキャップに接続される配線を適宜変更することで、前記制御電圧特性に対する任意の容量特性を有するものとしたことを特徴とする集積MOS型バリキャップ。
【請求項4】
請求項3において、前記配線の変更を各単位バリキャップに接続されるフューズを選択的に切断することにより前記制御電圧特性に対する任意の容量特性を有するものとしたことを特徴とする集積MOS型バリキャップ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載する集積MOS型バリキャップを発振周波数を規定する可変容量素子として有することを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載する集積MOS型バリキャップを遮断周波数を規定する可変容量素子として有することを特徴とするフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積MOS型バリキャップおよびこれを有する電圧制御発振器、フィルターに関し、特に複数種類の特性を有するバリキャップおよびこれを適用した電子機器に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
図7は特許文献1に示すMOS型キャパシタを有する発振器を示す回路図である。同図に示す発振器は制御電圧Vcにより発振周波数の制御を行うことができる電圧制御発振器(以下,VCOII(Voltage Controlled Oscilater)とも称する)である。この種のVCOIIは、外部に接続される水晶振動子110を接続するための外部接続端子121、122を有する。また、CMOSインバータ123を有し、このCMOSインバータ123が、その入力側端子124と出力側端子125との間に接続されたバイアス抵抗Rf126と一体となって増幅回路を構成している。VCOIIの増幅回路の出力端となる出力側端子125と外部接続端子122との間には、抵抗Rd127が接続されている。また、外部接続端子122には、容量Cd128が接続され、その間に設けられたCo容量接続端子129には、外付けで調整用外付け付加容量Co115(必要がなければ不要)が接続されている。
【0003】
一方、外部接続端子121には、直流電圧を遮断する容量Cp130を介して容量Cg131、MOS型可変容量素子としてのバリキャップ50および抵抗R
1133が接続され、抵抗R
1133の他端に制御電圧Vcが印加される。
【0004】
ここで、抵抗Rd127、水晶振動子110、容量Cd128、調整用外付け付加容量Co115、容量Cg131、バリキャップ50、および容量Cp130で共振回路を形成し、かかる共振回路が、CMOSインバータ123およびバイアス抵抗Rf126で構成される増幅回路により駆動される。
【0005】
また、前記共振回路からの出力は、前記増幅回路の出力側に接続された水晶振動子110の反対側端子が接続された外部接続端子121から前記増幅回路の入力側端子124に帰還される。
【0006】
制御電圧Vcは、抵抗R
1133を介して、バリキャップ50に印加され、バリキャップ50の容量を制御電圧Vcの直流電圧値により変化させる。
【0007】
かかるVCOIIでは、前記共振回路を構成する容量Cd128、調整用外付け付加容量Co115、容量Cg131、バリキャップ50および直流遮断容量Cp130からなる合成容量で発振周波数f
0が決定される。したがって、制御電圧Vcの電圧によりバリキャップ50の容量を変化させ、これにより発振周波数f
0を任意の値に制御することができる。
【0008】
特許文献1に開示するバリキャップ50は、容量可変幅を大きくして、これを適用したVCOIIの周波数可変幅を大きく取れるように工夫している。詳細な構造に関しては後に詳述するが、要約すれば、例えばP
-型半導体基板に絶縁膜を介してゲート電極を形成したMOS型キャパシタの構造において、前記P
-型半導体基板の前記ゲート電極に対向する領域に近接してN
+型不純物領域を形成するとともに、コンタクトホールを介して前記N
+型不純物領域に直流電圧を印加することができるようにしたものである。前記N
+型不純物領域に直流電圧を印加することで、前記ゲート電極に対向する前記P
-型半導体基板の領域に強反転層が形成されることを防止して可変容量特性の飽和を回避するようにしたものである。この結果、前記N
+型不純物領域に印加する電圧によりバリキャップ50の可変容量範囲を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−252480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の如く特許文献1が開示するバリキャップ50では大きな可変容量範囲を確保することができ、したがってバリキャップ50をVCOIIに適用した場合には、大きな可変周波数領域を確保することができる。
【0011】
しかしながら、バリキャップ50の可変容量特性は所定通りに作製することができた場合でも、水晶振動子110の物理的特性(例えば、等価回路における回路パラメータ、電極の大きさ等)が異なる場合には、VCOIIの周波数特性も変わってしまう。すなわち、VCOIIの周波数特性におけるリニアリティが水晶振動子110の特性によって変わることがある。このような場合には、適用VOC毎にばらつく特性に応じた容量特性の合わせ込みが必要になる。
【0012】
一方、比較的低周波数(例えば20MHz)帯で周波数を変化させるVCOIIに適用する場合と、比較的高周波数(例えば155MHz)帯で周波数を変化させる場合のVCOIIに適用する場合とでは、例えば所望のリニアリティを得るための条件が異なるので、低周波数帯域から高周波数帯域までの普遍的な特性を備えたバリキャップを提供することが困難な場合が発生していた。
【0013】
そこで、従来のVCOIIにおいて、必要な発振周波数特性を得るためには、MOS型キャパシタであるバリキャップの特性を適用条件に応じて適宜変更する必要がある。かかる特性の変更にはMOS型キャパシタであるバリキャップのプロセス条件(例えばチャネルに対するイオンインプラ条件)を低周波数帯域用および高周波数帯域用で変えて個別に製造する必要がある。かかる個別的なプロセス条件の変更は、製造工程を複雑にする面倒な作業を行わなければならず、コストもその分高価なものとなってしまう。
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑み、共通かつ唯一のプロセス条件で作製された場合であっても各種の適用用途に柔軟に対応して適用した電子デバイスの所望の特性を実現し得る集積MOS型バリキャップおよびこれを有する電圧制御発振器、フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、複数のバリキャップを並列に接続して構成したバリキャップの集合体であって、各バリキャップは、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されたMOS型キャパシタであり、しかも前記各バリキャップは、第1の電極となる第1導電型半導体基板上に容量絶縁膜を介して形成された第2の電極となる導電体層、前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に対向する領域に近接した表面近傍に形成された第2導電型不純物領域を有
し、前記各バリキャップ
を、前記第2導電型不純物領域に、前記第1導電型半導体基板および前記第2導電型不純物領域からなるダイオードの逆方向電圧となり、かつ電圧が異なる複数種類の直流電圧
を印加することにより、前記第1の電極となる前記第1導電型半導体基板および前記第2の電極となる前記導電体層の間
を容量要素
とした場合の容量・制御電圧特性が異なるバリキャップとして機能するように構成したことを特徴とする集積MOS型バリキャップにある。
【0016】
本態様によれば、第2導電型不純物領域に印加する直流電圧をパラメータとして、第1の電極と第2の電極との間の制御電圧に対する容量特性を変化させることができるので、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されたMOS型キャパシタで、前記直流電圧の種類に応じた複数種類の容量・制御電圧特性を有する複数種類のバリキャップを容易に形成することができる。
【0017】
この結果、複数種類の容量・制御電圧特性を有するバリキャップを自由に組み合わせて所望の容量特性を有する集積MOS型バリキャップを、容易かつ安価に提供することができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、複数のバリキャップを並列に接続して構成したバリキャップの集合体であって、各バリキャップは、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されたMOS型キャパシタであり、しかも前記各バリキャップは、第1の電極となる第1導電型半導体基板上に容量絶縁膜を介して形成された第2の電極となる導電体層、前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に対向する領域に近接した表面近傍に形成された第2導電型不純物領域および前記第1導電型半導体基板の前記導電体層に覆いつくされるように、前記導電体層に対向する領域のみの表面近傍に形成された第1導電型の高濃度層を有
し、前記各バリキャップ
を、前記第2導電型不純物領域に、前記第1導電型半導体基板および前記第2導電型不純物領域からなるダイオードの逆方向電圧となり、かつ電圧が異なる複数種類の直流電圧
を印加することにより、前記第1の電極となる前記第1導電型半導体基板および前記第2の電極となる前記導電体層の間
を容量要素
とした場合の容量・制御電圧特性が異なるバリキャップとして機能するように構成したことを特徴とする集積MOS型バリキャップにある。
【0019】
本態様によれば、各バリキャップが、第1導電型の高濃度層を有するので、第1の態様のものよりさらに可変容量範囲が広いMOS型バリキャップとすることができる。この結果、第1の態様と同様の作用・効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載する集積MOS型バリキャップにおいて、前記各バリキャップは、同一の前記直流電圧が印加される複数個の単位バリキャップを並列に接続してなり、各単位バリキャップに接続される配線を適宜変更することで、前記制御電圧に対する任意の容量特性を有するものとしたことを特徴とする集積MOS型バリキャップにある。
【0021】
本態様によれば、配線を、例えばスイッチ手段により切替えることにより簡単に容量特性が異なるバリキャップの組み合わせを形成することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記配線の変更を各単位バリキャップに接続されるフューズを選択的に切断することにより前記制御電圧に対する任意の容量特性を有するものとしたことを特徴とする集積MOS型バリキャップにある。
【0023】
本態様によれば、フューズを、例えばレーザ光で溶断することにより簡単に容量特性が異なるバリキャップの組み合わせを形成することができる。
【0024】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれか一つに記載する集積MOS型バリキャップを発振周波数を規定する可変容量素子として有することを特徴とする電圧制御発振器にある。
【0025】
本態様によれば、異なる容量・制御電圧特性を有するバリキャップが組み合わされた集積MOS型バリキャップを用いることで可変容量素子による発振周波数特性の最適化を容易かつ的確に実現することができる。また、例えば電圧制御発振器の水晶振動子の特性が異なる等の原因により所望の発振周波数特性を得るための容量調整も簡単かつ的確に実現することができる。
【0026】
本発明の第6の態様は、第1〜第4の態様のいずれか一つに記載する集積MOS型バリキャップを遮断周波数を規定する可変容量素子として有することを特徴とするフィルターにある。
【0027】
本態様によれば、フィルターの遮断周波数特性の最適化を容易かつ的確に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、集積MOS型バリキャップの要素であり、共通かつ唯一のプロセス条件で形成した各バリキャップの特性を、第1導電型半導体基板の導電体層に対向する領域に近接した表面近傍に形成された第2導電型不純物領域に印加する直流電圧で簡単に変更することができる。この結果、前記直流電圧が異なる複数種類のバリキャップを適宜組み合わせることにより任意の容量特性を有する集積MOS型バリキャップを安価なコストで容易に製造することができる。
【0029】
したがって、当該集積MOS型バリキャップを組み合わせた電子デバイスの特性、例えばVCOにおける発振周波数特性の調整も容易かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る集積MOS型バリキャップを組み込んだVCOを示す回路図である。
【
図2】本形態におけるバリキャップを構成するMOS型キャパシタの構造を示す模式的断面図である。
【
図3】バリキャップの容量値Cと制御電圧Vcとの関係を、直流電圧V1をパラメータとして示す特性図である。
【
図4】単位バリキャップの集合体としてのバリキャップのタイプ別の接続例を示す回路図である。
【
図5】本形態に係るVCOIの制御電圧Vcに対する発振周波数f
0の特性を示す特性図である。
【
図6】他の形態におけるバリキャップを構成するMOS型キャパシタの構造を示す模式的断面図である。
【
図7】従来技術(特許文献1)に示すMOS型キャパシタを組み込んだVCOIIを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明の実施の形態に係る集積MOS型バリキャップIIIを組み込んだVCOIを示す回路図である。同図に示すように、本形態においては、集積MOS型バリキャップIIIの部分、および外部接続端子121のみならず、外部接続端子122にも、直流電圧を遮断する容量Cp130が接続されている点を除き、他の構成は
図7に示すVCOIIと同様である。そこで、
図7と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
図1に示すように、集積MOS型バリキャップIIIは、並列に接続された複数個(本形態では3個)のバリキャップ50A,50B、50Cが、図中左右に分かれて対称に3組づつ計6個接続されている。これらのバリキャップ50A,50B,50Cは、共通かつ唯一のプロセス条件で作製されているが、各バリキャップ50A,50B,50CのN
+型不純物領域(後に詳述する)には3種類の直流電圧(後に詳述する)のいずれかが印加されており、印加される直流電圧をパラメータとして異なる3種類の容量・制御電圧特性を持たせてある。容量・制御電圧特性で分ければ、第1のタイプがバリキャップ50A(以下、第1のタイプともいう)、第2のタイプがバリキャップ50B(以下、第2のタイプともいう)、第3のタイプがバリキャップ50C(以下、第3のタイプともいう)である。
【0034】
図2は上記3種類のバリキャップ50A,50B,50C(バリキャップ50A〜50Cは共通かつ唯一のプロセス条件で作製された同一構成の素子であるので、これらを併せてバリキャップ50と表記する)を構成するMOS型キャパシタの構造を示す模式的断面図である。同図に示すように、P
-型半導体基板51には、MOS型キャパシタを構成するポリシリコンで形成したゲート電極53が絶縁膜54を介して設けられている。また、P
-型半導体基板51のゲート電極53に対向する領域に近接してN
+型不純物領域52が形成されている。絶縁膜54のN
+型不純物領域52に対向する領域にはコンタクトホール54aが形成され、N
+型不純物領域52に直流電圧Vを印加できるようになっている。
【0035】
バリキャップ50では、N
+型不純物領域52が上述したようにゲート電極53に対向する領域に近接して設けてあり、このN
+型不純物領域52に、P
-型半導体基板51とN
+型不純物領域52とからなるダイオードの逆方向電圧となる直流電圧V1を印加する。このことにより、基板表面に集まってくる少数キャリアは、逆方向にバイアスされたN
+型不純物領域52に吸収されて、強反転状態になりにくくなる。すなわち、逆方向にバイアスされたN
+型不純物領域52のおかげで、ゲート電極53に印加する電圧の増加に対し空乏層の厚みは飽和することなく成長する。この結果、容量値Cの可変幅を大きく取ることが可能となる。ちなみに、バリキャップ50の容量値Cは、絶縁膜54の容量値C
0と、空乏層55の容量値との直列合成容量である。したがって、合成容量値はゲート電極53に印加される制御電圧Vcの増大とともに減少する。
【0036】
図3はバリキャップ50の容量値Cと制御電圧Vcとの関係を、直流電圧V1をパラメータとして示す特性図である。図中、点線が直流電圧V1=GND電位、一点鎖線がV1=1.0〔V〕、二点鎖線がV1=1.65〔V〕および実線がV1=3.3〔V〕の場合をそれぞれ示している。同図を参照すれば、直流電圧V1が大きくなるにつれ、容量値Cが飽和する制御電圧Vcが大きくなり、その分可変容量領域が広くなっていることが分かる。
【0037】
本形態におけるバリキャップ50の第1〜第3のタイプとなる各バリキャップ50A〜50Cはそれぞれが複数の単位バリキャップ50A1,50B1,50C1の集合体として構成されている。すなわち、
図4に示すように、同一の直流電圧V1が印加されるグループ毎に、第1〜第3の各タイプを構成する単位バリキャップ50A1,50B1,50C1が、複数個づつ並列に接続されている。本例は、第1のグループの直流電圧V1が3.3〔V〕、第2のグループの直流電圧V1が1.65〔V〕、第3グループの直流電圧V1が1.0〔V〕の場合であるので、各単位バリキャップ50A1,50B1,50C1は
図3に示すいずれかの容量値・制御電圧特性を有する。また、単位バリキャップ50A1,50B1,50C1は、各素子に至る配線の途中に接続してあるフューズFを選択的に切断することにより任意の特性を有する任意の合成容量値のMOS型キャパシタを構成することができる。
【0038】
なお、各種の直流電圧V1は電源電圧Vccおよびこの電源電圧Vccを適宜分圧抵抗で分圧することにより好適に得ることができる。この際、電源電圧Vccより正確な電圧値を安定的に出力する電源回路の基準電圧V
refおよびこれを分圧した電圧を利用することも、勿論可能である。基準電圧V
refを利用した場合の方が、直流電圧V1が安定するので、単位バリキャップ50A1,50B1,50C1の特性も安定させることができるので、より好ましい。
【0039】
一方、VCOIの発振周波数は、
図5に示すように、制御電圧Vcが大きくなるにつれ、すなわち容量値Cが小さくなるにつれ発振周波数f
0が高くなるが、大きな可変容量範囲を有する本形態におけるバリキャップ50を適用した場合には、その分大きな発振周波数範囲を有するVCOIとすることができるばかりでなく、直流電圧V1の値が異なる複数種類のバリキャップ50を適宜組み合わせることでVCOIの水晶振動子110等の特性のばらつき等を発生していても、例えば特性Cに示すような、所望のリニアリティを確保した発振周波数特性を得ることができる。特性Cは第1のタイプに対して、第2および第3のタイプの数を相対的に増やしたものであり、特性Dはさらに第3のタイプを増やすことにより得られる特性である。特性Aは、例えば全部を第1のタイプで形成したものであり、特性Bは、一部を第2または第3のタイプで形成したものである。
【0040】
一般に使用されるVCOIにおいては、制御電圧Vcは単極性であり、例えば0V〜+3Vあるいは+4Vまでの電圧を使い、負の電圧は使用しない。したがって、この正の電圧範囲で容量の可変幅を大きく取るには、制御電圧0Vの時の容量を大きくすればよいことになる。この容量を大きくするには、P
-型半導体基板51の表面近傍をイオン注入などの手段により、濃いP型層を作り、ゲート電極53が0V以下での空乏層の厚みを薄く抑えることができるバリキャップとすれば良い。すなわち、
図6に示すように、バリキャップ60のゲート電極53に対向する領域にP
+型層57を設けることにより、ゲート電極53が0V以下での空乏層の厚みを薄く抑えることができ、制御電圧Vcが0Vのときの容量を大きくする。かかるバリキャップ60では、バリキャップ50よりも、さらに大きい容量値Cの可変幅を取ることが可能となる。すなわち、本形態によれば、バリキャップ60が、第1導電型の高濃度層を有するので、第1の実施の形態のものよりさらに可変容量範囲が広いMOS型バリキャップとすることができる。この結果、第1の実施の形態と同様の作用・効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0041】
以上、上記実施の形態における説明では、本発明のMOS型キャパシタをP
-基板上に形成した場合について説明したが、かかるMOS型キャパシタはPウェル上に作製することも可能であり、また、N基板やNウェル上に上記の実施例と逆の不純物領域を形成することで、電気的に逆の極性を有するMOS型キャパシタを作ることができることは言うまでもない。
【0042】
また、上記実施の形態では集積MOS型バリキャップIIIをVCOに適用した場合に関して示したが、これに限るものではない。例えば、遮断周波数を規定する可変容量素子とフィルターに適用することもできる。この場合には、フィルターの遮断周波数特性の最適化を容易かつ的確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は可変容量を利用する電子デバイスの製造・販売に関する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
I VCO
III 集積MOS型バリキャップ
50,50A,50B,50C、60 バリキャップ
50A1,50B1,50C1 単位バリキャップ
Vc 制御電圧
V1 直流電圧
f
0 発振周波数