(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395192
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20180913BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20180913BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F04B39/12 D
F04B39/10 C
F04B39/00 104E
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-541826(P2016-541826)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-529445(P2016-529445A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014001665
(87)【国際公開番号】WO2015036065
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年6月16日
(31)【優先権主張番号】102013015158.9
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596055475
【氏名又は名称】ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フォッセ・ヘリベルト
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05101857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/12
F04B 39/10
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダハウジング(14)とシリンダハウジングに接続されているシリンダヘッド(16)を備えた、自動車の圧縮空気系のための空気を圧縮するための圧縮機(10)であって、シリンダハウジング(14)において、少なくとも一つの圧縮機ピストンが、少なくとも一つのシリンダ内で振動するように上下に運動可能である圧縮機において、少なくとも一つの圧縮機ピストンに面した、シリンダヘッド(16)の下側(30)における少なくとも一つの窪み(38)内に少なくとも一つの薄板(34,36)が収容されており、この薄板を用いて、シリンダヘッド(16)の少なくとも一つの制御流路(60,60’)を閉じるかあるいは開くことにより、圧縮機(10)の送出能力の調節が実施可能であり、少なくとも一つの薄板(34,36)の支承端部(44)が、窪み(38)の支承輪郭(54)内に旋回可能に収容されてこの窪み(38)の支承輪郭(54)に枢着されていることを特徴とする圧縮機(10)。
【請求項2】
少なくとも一方の薄板(34,36)の支承端部(44)とシリンダヘッド(16)の割当てられた少なくとも一方の窪み(38)の支承輪郭(54)が、各々少なくとも一部が円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
少なくとも一つの薄板(34,36)の支承端部(44)とシリンダヘッド(16)の少なくとも一つの窪み(38)の各々の支承輪郭(54)の少なくとも一部が噛合い係合式に互いに係合していることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
少なくとも一つの薄板(34,36)が、薄板の旋回運動のために、支承端部(44)から離れるように向いた操作端部(46)に操作部分(48)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の圧縮機。
【請求項5】
操作部分(48)が、ほぼT字状に形成されており、かつ短いT字腕木状部分に二つの互いに対向して配置されかつほぼ半円形の腕木状部分端部(72,74)を備えていること、および両腕木状部分端部(72,74)の間のほぼ中央に、薄板の旋回運動を操作するためのアクチュエータ(56)に機械的に接続するための操作ピン(50)が形成されているかあるいは固定されていることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
少なくとも一つの薄板(34,36)の支承端部(44)と作動部分(48)が、制御流路(60,60’)を閉じるかあるいは開くための両側で円弧状の弁部分(52)を介して互いに接続されていることを特徴とする請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
少なくとも一つの薄板(34,36)の無負荷運転用操作位置において、薄板の弁部分(52)が、シリンダヘッド(16)の少なくとも一つの制御流路(60,60’)の少なくとも一部を開放することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の圧縮機。
【請求項8】
少なくとも一つの薄板(34,36)の負荷運転用操作位置において、薄板の弁部分(52)が、少なくとも一つの制御流路(60,60’)を完全に閉鎖することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の圧縮機。
【請求項9】
少なくとも一つの薄板(34,36)の材料肉厚(62)が、その大きさにわたりほぼ一定であること、およびこの材料肉厚(62)が、シリンダヘッド(16)の下側(30)の中の少なくとも一つの窪み(38)の深さ(64)よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダハウジングと、シリンダハウジングと接続されているシリンダヘッドとを備えた、自動車の圧縮空気系のための空気を圧縮するための圧縮機であって、シリンダハウジングにおいて、少なくとも一つの圧縮機ピストンが、少なくとも一つのシリンダ内で振動するように上下に運動可能である圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機はすべての種類のガスを圧縮するために、そして特に異なる技術
的な応用のために空気を圧縮するために使用される。例えば、圧縮機は自動車および鉄道車両の空気圧制動系を運転するための圧縮空気を供給するために必要である。圧縮機は、自動車の場合、一般的に自動車の駆動のために設けられた内燃機関により一緒に駆動される。場合によっては圧縮機のために、内燃機関から独立した補助駆動装置が設けられていてもよい。
【0003】
特許文献1からは、例えば補助の加圧室を備えたガス圧縮機が知られている。無負荷
運転モードにおけるガス圧縮機の電力消費を最小限に減らすために、移動可能なおよび/または旋回可能な薄板を用いた、いわゆるデッドスペースの適切な接続によりシリンダ室は拡大され、これにより無負荷
運転モードにおける圧縮機の機械的駆動出力は下げられる。
【0004】
それに対して、ペアで逆方向に振動するピストンを備えた多気筒圧縮機の場合、各々二つのシリンダ室を無負荷
運転モードにおいてバイパス流路を介して互いに接続することが知られている。この目的を達成するために、圧縮機の無負荷
運転モードにおいてアクチュエータを用いて薄板の適切な操作位置により、少なくとも一つのバイパス流路の少なくとも一部は開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19848217号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底を成す課題は、圧縮機の公知の実施形態に比べて、低損失の供給量調節でもって設計的に簡単な構造を備えた、ガスを圧縮するための圧縮機を提案することである。
【0007】
本発明は、圧縮機の設計上の構造が、シリンダヘッドの下側における低損失の供給量調節のために使用される薄板の支承を最適化することにより単純化できるという認識から出発する。
【0008】
従って本発明は、シリンダハウジングとこのシリンダハウジングと接続されているシリンダヘッドを備えた、自動車の圧縮空気系のための、空気を圧縮するための圧縮機から出発する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、少なくとも一つの圧縮機ピストンに面した、シリンダヘッドの下側における少なくとも一つの窪み内に少なくとも一つの薄板が収容されており、この薄板を用いて、シリンダヘッドの少なくとも一つの制御流路を閉じるかあるいは開くことにより、圧縮機の送出能力の低損失の調節が実施可能であり、少なくとも一つの薄板の支承端部が、旋回可能に案内されており、かつこの窪みの支承輪郭に
枢着されていることが考慮されている。
【0010】
この構成により特に、僅かに有利な実施形態に比べて、シリンダヘッドの下側で薄板を旋回可能に支承するための局所的な支承ピンは不必要である。更にシリンダヘッドのこのような支承ピンのための保持構造において、隣接して配置された流路に向かう方向での、他の場合に必要な材料の厚さの増大はなくなる。本発明による構造により、流路の流れ断面は拡大されて形成されていてもよく、同時にシリンダヘッドを製造する際の必要な材料の使用は、コストを減らすやり方で削減されることができる。
【0011】
本発明の有利な実施例において、少なくとも一つの薄板の支承端部とシリンダヘッドの対応する少なくとも一つの窪みの支承輪郭は、各々少なくとも一部が円形に形成されていることが考慮されている。これにより、薄板の支承端部とシリンダヘッドの窪みの支承輪郭の間に生じる支承面の最適化が生じる。窪みの周囲輪郭は、薄板のための支承輪郭を含めて、窪み内での薄板の完全な収容を保証するために、幾何学的には実質的にこの薄板の周囲輪郭に位置している。
【0012】
他の実施例によれば、少なくとも一つの薄板の支承端部とシリンダヘッドの少なくとも一つの窪みの支承輪郭の少なくとも一部が
噛合い係合式に互いに係合している。これにより、シリンダヘッドの該窪みの支承輪郭内における少なくとも一つの薄板の支承端部の、滑らかに動き、かつ同時に理想的な場合には遊びが無い支承が提供されている。
【0013】
別の実施形態によれば、少なくとも一つの薄板が、支承端部から離れるように向いた
操作端部に
操作部分を備えていることが考慮されている。これにより、圧縮機の各動作状態に依存した薄板の旋回に対する、シリンダヘッド内に一体化されたアクチュエータ、例えば小型の空気圧ピストン・シリンダ機構の接続が可能である。
【0014】
薄板の
操作部分の他の典型的な実施形態において、操作部分は平面図では、薄板の旋回軸線に対して平行にほぼT字状に形成されており、かつ短いT字腕木状部分に二つの互いに対向して配置されかつほぼ半円形の腕木状部分端部を備えており、これら両腕木状部分端部の間のほぼ中央に、アクチュエータに機械的に接続するための
操作ピンが形成されているかあるいは固定されている。
【0015】
二つの
操作側の腕木状部分端部を備えた薄板の
操作部分のT字状あるいはハンマー状の構造の結果、旋回
操作の際に薄板の二つの端部位置が生じ、これらの端部位置において、薄板の各々一つの腕木状部分端部は、シリンダヘッドの窪みの周囲輪郭の極めて近くに配置されている。薄板のT字状の幾何学形状により、薄板はその腕木状部分端部の領域においてシリンダヘッドの円弧状の凹部を覆い、この凹部を薄板の
操作ピンが貫通する。シリンダヘッドの円弧状の凹部の下方には、薄板の旋回運動を操作するためのアクチュエータが配置されており、このアクチュエータは薄板腕木状部分を用いて円弧状の凹部を覆うことにより、圧縮工程の熱からならびに汚れから保護される。別の実施形態において、薄板はL字状の幾何学形状も備えていてもよく、短いL型腕木状部分はシリンダヘッドの円弧状の凹部を覆う。
【0016】
他の実施形態によれば、薄板の平面図では、薄板の腕木状部分に対して平行に、少なくとも一つの薄板の支承端部と
操作部分は、両側で円弧状の弁部分を介して互いに接続されている。これにより、薄板の弁部分は大きな横断面積でもって、小さい旋回角度だけ比較的わずかな旋回運動をする際に制御流路を覆いかつ再度開放する。
【0017】
それに加えてこの圧縮機の場合、少なくとも一つの薄板の無負荷
運転用操作位置において、薄板の弁部分は、シリンダヘッドの少なくとも一つの制御流路の少なくとも一部を開放することが考慮されている。これにより、圧縮機の省エネルギーの無負荷
運転モードが可能である。それに反して少なくとも一つの薄板の負荷
運転用操作位置においては、薄板の弁部分は少なくとも一つの制御流路を完全に閉鎖する。従って、圧縮機は薄板の容易な旋回により、無負荷
運転用操作位置から、圧縮機の必要な機械的駆動出力を同時に高めながら、最大の供給量の際の全負荷運転における負荷
運転用操作位置へ切替えられることができる。
【0018】
最後に、少なくとも一つの薄板の材料肉厚が、その大きさにわたりほぼ一定であること、およびこの材料肉厚が、シリンダヘッドの下側にある少なくとも一つの窪みの深さよりも小さいことが好ましい。これにより、いかなる場合でもシリンダヘッドの組立後の薄板の自由な可動性が保証されている。
【0019】
本発明の一層良好な理解のために、明細書には図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】二つのシリンダを備えた圧縮機の斜視図を示す。
【
図2】下側から取外されて示された二つの薄板と共に、
図1の圧縮機のシリンダヘッドの下側の斜視図を示す。
【
図3】挿入されかつ負荷
運転用操作位置に配置された薄板を備えた
図2のシリンダヘッドの下側の平面図を示す。
【
図4】挿入され無負荷
運転用操作位置に配置された薄板を備えた
図2のシリンダヘッドの下側の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図において、同じ構造要素は各々同じ符号を備えている。
【0022】
従って
図1は全ての種類のガスを圧縮するための、特に空気圧系統のための圧縮空気を発生させるための二気筒圧縮機を示す。圧縮機10は特にクランク室12、シリンダハウジング14ならびにシリンダハウジング上に装着されたシリンダヘッド16を備えており、このシリンダヘッドはその側においてシリンダヘッドカバ18により閉鎖されている。圧縮機10の駆動軸22の駆動は、図示されていない駆動ユニットにより行われ、この駆動ユニットはクランク室12に形成されたフランジ20を介して圧縮機10と接続可能である。特に空気を圧縮するための二つのシリンダを備えたこのような圧縮機の構造設計のそれ以上の技術的詳細は、空力学の技術的専門分野に従事する当業者にとっては十分周知であり、従ってこの場所では圧縮機10の内部構造詳細な説明はしない。
【0023】
図2には、シリンダヘッド16の、圧縮機10の圧縮ピストンに近い方にある下側30の斜視図が、これから外れた状態で示された二つの薄板34,36と一緒に示されている。シリンダヘッド16の下側30は、二つの領域I,IIに分割されており、これらの領域は全ての孔、流路、ピンおよび凹部も含めて対称軸線32に対して鏡対称に形成されている。下側30から浮いた状態で示された両方の薄板34,36にも同じことが言え、従って反復を避けるために、引続く説明では下側30の領域Iならびに薄板34だけが詳細に記載される。
【0024】
シリンダヘッド16の下側30には、その領域Iにおいて特に閉じられた周囲輪郭40を備えた窪み38が形成されている。この場合、周囲輪郭40の幾何学的推移は、おおよそ薄板34の周囲輪郭42と一致する。窪み38における薄板34の面一の収容と、同時に周囲輪郭40により規定された窪み38の面内における薄板の旋回を可能にするために、窪み38の周囲輪郭40は薄板34の周囲輪郭42に比べて薄板34の縦方向延在部に対して横方向に大きくされている。
【0025】
薄板34は支承端部44と、これから離間する方向に向く
操作端部46に、シリンダ状の
操作ピン50を有する
操作部分48とを備えており、これら支承端部と
操作部分は膨らんでいるかまたは各々両側で円弧状の弁部分52を介して互いに接続されている。シリンダヘッド16の窪み38内部の薄板34の旋回可能な支承は支承端部44により行われ、この支承端部の少なくとも一部は、窪み38の周囲輪郭40の円形セグメント状の支承輪郭54内へ
噛合い係合式に挿入可能であり、そこでこの窪みと協働して薄板34の旋回運動のための支点を規定する。
【0026】
圧縮機10の運転状態に依存した、特に最少の供給量の際の無負荷
運転モードおよび最大の供給量を有する全負荷
モードに依存した薄板34の旋回は、破線で指示されたアクチュエータ56により行われ、このアクチュエータはシリンダヘッド16の下側30の上方でシリンダヘッドの図示されていない孔に配置されており、ならびに空気圧ピストン・シリンダ機構として形成されている。この目的で、薄板34の
操作ピン50は薄板の挿入された状態でシリンダヘッド16の円弧状の凹部58を貫通し、かつこのようにしてアクチュエータ56のピストンの図示されていない環状溝と係合する。
【0027】
窪み38内部の薄板34の旋回により、シリンダヘッド16の二つの制御流路60,60’は少なくともその一部が開放されるかあるいは完全に覆われ、制御流路60,60’の開口部を通って、例えばいわゆるデッドスペースが圧縮機10の所属するシリンダ室に接続され、その結果として、作業容積は拡大されることができる。この作業容積により無負荷
運転モードの際に必要な圧縮機10の駆動出力の明らかな減少が行われる。
【0028】
ここで与えられた、好ましくは圧縮機10のシリンダ室内に逆方向に上下に振動する二つの圧縮機ピストンにおいて、上記シリンダ室は制御流路60,60’を介して薄板34により互いに接続されており、従って、両シリンダ室間の圧縮機10の無負荷
運転モードにおける空気は実際には損失なくあちこちに搬送され、圧縮機10の無負荷
運転モードにおいてまだ必要とされる駆動出力は劇的に減少されている。
【0029】
薄板34の材料肉厚62は、特にシリンダヘッド16の組立後の薄板34の自由な可動性を保証するために、シリンダヘッド16の窪み38の深さ64よりも小さいように採寸されている。
【0030】
さらにシリンダヘッド16において、多数の別の孔、流路、開口部、凹部およびピンが構成されているかまたは配置されており、これらは本発明の理解にとって重要ではない。
【0031】
図3は、嵌め込まれ、かつその負荷
運転用操作位置で旋回される薄板34,36を備えた、
図2のシリンダヘッド16の下側30の平面図を示す。対称線32に対するシリンダヘッド16の下側30の対称な構造のため、説明の別の進行において、もっぱら下側30の領域Iがより詳しく説明される。ここに示された位置では、薄板34はその負荷
運転用操作位置にあり、この負荷
運転用操作位置において、円弧状の弁部分52は破線で示された二つの制御流路60,60’を完全に覆い、従って圧縮機10は圧縮される空気の最大に可能な供給量を送り出す。
【0032】
薄板34の支承端部44は、実質的に円形に形成されており、かつ少なくとも一部が
噛合い係合式に同様に支点70の構成のため窪み38のほぼ円形の支承輪郭54内
に旋回可能に収容されている。支承輪郭54
は窪み38の周囲輪郭40の一部分である。支点70は、さらにこの領域におけるシリンダヘッド16の薄板34の旋回可能な支承のために必要な枢軸の代わりになる。これによりシリンダヘッド16の設計上の構造かなり単純化されることが明らかになる。支点70により、下側30に対して平行に作用する機械的負荷に対する、窪み38内部の薄板34の旋回可能な支承が保証されている。ここに示された実施例とは異なり、薄板34の支承端部44は、円形とは異なる幾何学形状を備え、利用できる支承面を減らしながら、例えば多角形として、例えば星形等で形成されていてもよい。
【0033】
薄板34の
操作部分48は、この実施例では、ほぼT字状に形成されており、かつ二つの対向するように互いに配置され、各々ほぼ半円形の腕木状部分端部72,74を備えている。第一の腕木状部分端部72と第二の腕木状部分端部74の間の中心には、すでに挙げた円形の
操作ピン50が薄板34に固定されており、この固定は例えば圧入、接着、リベット留め、溶接等によって行われてもよい。両腕木状部分端部72,74は、窪み38の周囲輪郭40における腕木状部分端部72,74に一致するように形整された、同様にほぼ半円形のポケット状部分76,78と協働して、窪み38内部での薄板34の二つの規定された最終位置を定める。薄板34の示された旋回位置において、第二の腕木状部分端部74はこれに割当てられた第二のポケット状部分78内にあり、これにより薄板34の示された負荷
運転用操作位置が定められている。先に挙げたアクチュエータ56は、その軸方向の往復運動の両端部位置でもって、薄板34の旋回運動の両端部位置を決定する。
【0034】
圧縮機10を
図3に示された負荷
運転用操作位置から出発して低損失の無負荷
運転用操作位置に動かすために、薄板34はその可動な要素が
操作ピン50と係合するアクチュエータ56を用いて、矢印80の方向に、第一の腕木状部分端部72がそれに割当てられた第一のポケット状部分76においてほぼ当接し、円弧状の弁部分52が制御流路60を理想的な場合、完全に開放するまで(
図4参照)、支点70を中心にして旋回する。アクチュエータ56と薄板34の
操作ピン50の間の必要な機械的な連結を可能にするために、シリンダヘッド16は、半円形のポケット状部分76,78の領域に円弧状の凹部58を備えている。薄板34の
操作ピン50とアクチュエータ56の間の機械的な連結は、例えばアクチュエータのピストンに入れられた環状溝を介して行われることができ、この環状溝内には
操作ピン50が係合する。それにより、長手方向中心軸線を中心にしたアクチュエータ56の場合によってはあり得る回転運動には左右されない、アクチュエータ56と
操作ピン50の間の機械的な連結が保証されており、これによって特にシリンダヘッド16の組立は容易にされる。
【0035】
薄板34はこの実施例では長手方向中心軸線82に対して対称に形成されており、
操作部分48,弁部分42ならびに支承端部44は、長手方向中心軸線82に対して各々相前後してかつ各々対称に形成されている。更に
操作ピン50ならびに支点70は、同様にある間隔84だけお互いから隔てられた状態で長手方向中心軸線82上にある。
【0036】
窪み38の周囲輪郭40の幾何学形状は、実質的に薄板34の周囲輪郭42に一致しているが、窪み38の周囲輪郭40の横方向延在部は、薄板34の周囲輪郭42の横方向延在部と比較して、長手方向中心軸線82に対して不釣合いに大きい。これにより薄板34は、その無負荷
運転用操作位置においても、その負荷
運転用操作位置においても、完全にシリンダヘッド16の窪み38の中に収容されていることが保証されている。
【0037】
圧縮機10の無負荷
運転用操作位置と負荷
運転用操作位置の間で切替えを行うための所望の調節作用あるいは制御作用が、制御流路60,60’を覆うことによりまたは開放することにより達せられ、特に窪み38内での薄板34の完全な収容がその両方の旋回位置で得られている限り、窪み38の周囲輪郭40と薄板34の周囲輪郭42は、図示した実施例と異なって構成されていてもよい。
【0038】
同様に
図4は、嵌め込まれ、かつその無負荷
運転用操作位置にある薄板34,36を備えた、
図2のシリンダヘッド16の下側30の平面図を示す。
図4の描写は
図3の描写に十分対応しているが、薄板34は
図3で示された負荷
運転用操作位置とは異なり、ここでは無負荷
運転用操作位置に配置された状態に旋回されている。この無負荷
運転用操作位置において、シリンダヘッド16の下側30から現れ出る制御流路60,60’は、薄板34の円弧状の弁部分52から完全に開放されている。こうして制御流路60,60’を介して、それ自体その中で各々逆方向に移動する圧縮機ピストンあるいは少なくとも一つの大きさが適当なデッドスペースを備えた、ここに設けられている二つのシリンダ室の間の空気圧接続が提供され、これにより圧縮機の無負荷
運転モードにおける圧縮機10の動力消費はかなり減らされている。
【0039】
薄板34をここで示された無負荷
運転用操作位置から出発して、再度
図3による負荷
運転用操作位置に戻すために、薄板34の
操作部分48の第二の腕木状部分端部72の少なくともその一部が、再度窪み38の周囲輪郭40により規定された第二のポケット状部分76にほぼ当接するまで、窪み38の支承輪郭54内
に旋回可能に収容された薄板34は、アクチュエータ56を用いて矢印86の方向へ戻るように旋回される。
【符号の説明】
【0040】
10 圧縮機
12 クランク室
13 シリンダハウジング
16 シリンダヘッド
18 シリンダヘッドカバ
20 クランク室のフランジ
22 圧縮機の駆動軸
30 シリンダヘッドの下側
32 対称軸線
34 第一の薄板
36 第二の薄板
38 シリンダヘッド下側の窪み
40 窪みの周囲輪郭
42 薄板の周囲輪郭
44 薄板の支承端部
46 薄板の
操作端部
48 薄板の
操作部
分
50 薄板の
操作ピン
52 薄板の円弧状の弁部分
54 周囲輪郭の支承輪郭
56 アクチュエータ
58 円弧状の凹部
60 シリンダヘッドの第一の制御流路
60’ シリンダヘッドの第二の制御流路
62 薄板の材料肉厚
64 窪みの深さ
70 薄板の支点
72 薄板の第一の腕木状部分端部
74 薄板の第二の腕木状部分端部
76 第一のポケット状部分
78 第二のポケット状部分
80 矢印
82 薄板の長手方向軸線
84 間隔
86 矢印