(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芯材粒子の表面に金又はパラジウムを含む金属皮膜を形成した導電性粒子の表面が、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液から析出させた酸化チタンで被覆されていることを特徴とする被覆導電性粉体。
芯材粒子の表面に金又はパラジウムを含む金属皮膜を形成した導電性粒子を含む懸濁液中に、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液を添加し、該導電性粒子の表面に酸化チタンを析出させる工程を有することを特徴とする被覆導電性粉体の製造方法。
前記ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液の添加は、前記懸濁液を撹拌しながら35℃〜95℃に保持しながら行うことを特徴とする請求項5に記載の被覆導電性粉体の製造方法。
前記ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液の添加後、前記懸濁液を撹拌しながら50〜95℃に保持する工程を更に含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の被覆導電性粉体の製造方法。
前記ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液として、ペルオキソチタン酸及びアンモニアを含む溶液を用いることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の被覆導電性粉体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の被覆導電性粉体は、芯材粒子の表面に金属皮膜を形成した導電性粒子の表面を、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液から析出させた微細な酸化チタンで被覆しているので、メカノフュージョンシステム又はハイブリダーゼションシステムのような衝撃力が導電性粒子に加わることがなく、導電性粒子の破壊及び変形は起こらない。また、本発明の被覆導電性粉体は、酸化チタンの連続膜で被覆するのではなく、析出させた微細な酸化チタンで被覆しているので、例えば
図1に示す電子顕微鏡写真から分かるように、酸化チタンの被覆膜の厚さは表面全体で均一ではなく、箇所によって異なる。更に、酸化チタンの被覆膜は、強固ではなく、適度に柔らかいため、被覆導電性粉体全体としての柔軟性が確保される。
【0014】
上記したように、本発明の被覆導電性粉体における酸化チタンの被覆膜は、導電性粒子の金属皮膜表面に析出した微細な酸化チタンの集合体として形成されたものである。酸化チタンの被覆膜には、厚さの厚い箇所と薄い箇所が存在するが、導電性接着剤に使用する際、接続時に外部からの力によってその厚さの薄い箇所が容易に破壊されるので、高い接続信頼性が得られる。
【0015】
酸化チタン被覆膜の厚さは均一ではなく箇所によって異なるが、酸化チタン被覆膜の厚さは、厚い箇所で好ましくは1nm〜1000nm、より好ましくは2nm〜200nmである。酸化チタン被覆膜の厚さが上記範囲内であれば、導電性を確保し易い。なお、酸化チタン被覆膜の厚さを変更することによって、被覆導電性粉体の色調を制御することもできる。酸化チタン被覆膜の厚さを薄くした場合、酸化チタンはほぼ透明であるので、得られる被覆導電性粉体は、導電性粒子の色を呈する。一方、酸化チタン被覆膜の厚さを厚くした場合、得られる被覆導電性粉体は、灰色から白色を呈する。そのため、本発明の被覆導電性粉体を光学用途に用いる場合、光の反射や屈折を考慮して酸化チタン被覆膜の厚さを更に厚くしてもよい。
【0016】
また、酸化チタン被覆膜の厚さは上記したとおりであるが、酸化チタン被覆膜の量は、得られる被覆導電性粉体に対して、好ましくは0.1質量%〜200質量%、より好ましくは0.5質量〜150質量%である。酸化チタン被覆膜の量が上記範囲内であれば、分散性をより向上させることができる上に、接続時に外部からの力によって被覆膜がより容易に破壊されるので、高い接続信頼性が得られる。
酸化チタン被覆膜の厚さ及び量は、導電性粒子に対するペルオキソチタン酸の添加量を調整することにより任意に変更することができる。
【0017】
本発明で用いられるペルオキソチタン酸を含む溶液は、チタン溶液に水酸化アルカリを加えて加水分解し、得られた白色沈殿物(水酸化チタン)を洗浄した後、過酸化水素を加えて溶解させることにより調製することができる。
【0018】
本発明において、ペルオキソチタン酸を含む溶液を調製するのに用いるチタン溶液は、特に限定されないが、例えば、チタンアルコキシド、塩化チタン溶液、硫酸チタン溶液、水酸化チタン溶液などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。チタンの価数は4価のみならず、3価であってもよい。これらの中でも、コスト及び取り扱いの容易さから、四塩化チタン溶液が好ましい。チタン溶液に添加される水酸化アルカリは、特に限定されないが、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物の水溶液などが挙げられる。白色沈殿物(水酸化チタン)を溶解させるのに用いる過酸化水素としては、濃度が数%〜60%の市販品を制限なく使用することができる。本発明では、濃度が30%〜35%の過酸化水素が好ましい。
【0019】
添加する過酸化水素の量は、水酸化チタンに対して、0.3倍モル〜60倍モルであることが好ましく、1倍モル〜54倍モルであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が上記範囲内であれば、実用的な添加量でペルオキソチタン酸を含む溶液を得ることができる。
【0020】
白色沈殿物の溶解を促進するために、過酸化水素と共にアルカリ溶液を添加してもよい。アルカリ溶液としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、取り扱いの容易さから、水酸化ナトリウム及びアンモニア水が好ましい。
【0021】
ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液のpHは、8〜14であることが好ましく、8〜13であることがより好ましい。ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液のpHが上記範囲内であれば、ペルオキソチタン酸が、溶液中においてより安定した状態で存在することになる。pHが8未満の場合、析出するTiO
2の結晶性が悪化する場合や、常温で沈殿が生じる場合が見られる。pHが14を超える場合、実用的ではない上に、得られる被覆導電性粉体にアルカリ成分が残存する恐れがある。pHの調整は、上記したアルカリ溶液を添加して行えばよい。
【0022】
導電性粒子表面への酸化チタンの析出は、導電性粒子を分散させた懸濁液にペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液を滴下すればよい。ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液を滴下すると、導電性粒子の表面に酸化チタンが徐々に析出する。懸濁液中のペルオキソチタン酸の濃度が、好ましくは0.001g/L〜0.1g/L、より好ましくは0.005g/L〜0.08g/Lとなるように、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液の滴下速度を調整することが望ましい。ペルオキソチタン酸の濃度が上記範囲内であれば、導電性粒子表面に酸化チタンを短時間で効率良く析出させることができる。また、懸濁液中の導電性粒子の濃度は、好ましくは0.1g/L〜200g/Lであり、より好ましくは1g/L〜150g/Lである。懸濁液中の導電性粒子の濃度が上記範囲内であれば、導電性粒子表面に酸化チタンをより均一に且つ短時間で効率良く析出させることができる上に、被覆導電性粉体の凝集を抑制することができる。
【0023】
また、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液を滴下する際は、懸濁液を撹拌しながら、好ましくは35℃〜95℃、より好ましくは45℃〜95℃に加温することが望ましい。析出時の温度が上記範囲内であれば、被覆膜の特性に悪影響を与えることなく、酸化チタンを短時間で効率良く析出させることができる。
【0024】
ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液の添加終了後、必要に応じて、懸濁液を撹拌しながら、好ましくは50℃〜95℃、より好ましくは60℃〜95℃に加温し、好ましくは10分〜5時間、より好ましくは30分〜3時間保持することにより熟成させることが望ましい。熟成温度及び時間が上記範囲内であれば、導電性粒子表面への酸化チタンの析出を促進させることができる。
【0025】
また、より効果的に熟成するために、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液の添加終了後に、懸濁液を高温高圧下で処理することができる。一般的にはオートクレーブなどが有効であるが、熟成中に高温高圧を維持できるものであれば特に限定されない。このとき、芯材粒子が樹脂材料からなる場合、圧力は1.2kg/cm
2〜5kg/cm
2、温度は100℃〜300℃が好ましい。圧力及び温度が上記範囲内であれば、樹脂材料からなる芯材粒子を破壊することなく、導電性粒子表面への酸化チタンの析出をより促進させることができる。一方、芯材粒子が金属又はセラミックからなる場合、圧力及び温度はこの限りではなく、芯材粒子の溶融温度まで上げてもよい。この場合、圧力は300kg/cm
2以下、温度は300℃以下が実用的である。
そして、熟成後、懸濁液をろ過し、ろ過物を必要に応じてリパルプ洗浄してアルカリ成分を除去した後、乾燥させることによって被覆導電性粉体が得られる。
【0026】
なお、酸化チタンの析出を阻害しない範囲で、ペルオキソチタン酸を含むアルカリ性溶液には、無機酸、有機酸、無機アルカリ、有機アルカリ、高分子、アルコールなどを添加してもよく、具体的には、ヒドロキシカルボン酸、その塩、アンモニア水溶液、アンモニウム塩などを添加してもよい。
【0027】
本発明で用いられる芯材粒子としては、無機物であっても有機物であっても特に制限なく用いることができる。無機物の芯材粒子としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の金属粒子、合金、ガラス、セラミック、シリカ、金属または非金属の酸化物(含水物も含む)、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素等が挙げられる。一方、有機物の芯材粒子としては、例えば、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブテン、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル二トリル、ポリアセタール、アイオノマー、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、金属からなる芯材粒子に比べて比重が小さくて沈降し難く、分散安定性に優れ、樹脂の弾性により電気接続を維持し易いという点で、樹脂材料からなる芯材粒子が好ましい。
【0028】
芯材粒子の形状は、特に制限はない。一般に、芯材粒子は球状である。しかし、芯材粒子は球状以外の形状、例えば、繊維状、中空状、板状又は針状であってもよく、その表面に多数の突起を有するもの又は不定形のものであってもよい。本発明においては、充填性に優れるという点で、球状の芯材粒子が好ましい。
【0029】
芯材粒子の平均粒径は、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは1.5μm〜30μmである。芯材粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、得られる被覆導電性粉体が隣接電極間の短絡を発生させることなく、対向電極間での導通を確保することができる。なお、本発明において、芯材粒子の平均粒径は、電気抵抗法を用いて測定された値である。
【0030】
更に、前述の方法によって測定された芯材粒子の粒度分布には幅がある。一般に、粉体の粒度分布の幅は、下記計算式(1)で示される変動係数により表わされる。
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100・・・(1)
この変動係数が大きいということは分布に幅があることを示し、一方、変動係数が小さいということは粒度分布がシャープであることを示す。本発明では、この変動係数が好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下の芯材粒子を用いることが望ましい。この理由は、本発明によって酸化チタンを固着させた導電性粒子を異方性導電膜中の導電粒子として用いた場合に、接続に有効な寄与割合が高くなるという利点があるからである。
【0031】
また、芯材粒子のその他の物性は、特に制限されるものではないが、樹脂材料からなる芯材粒子の場合は、下記の式(2):
K(kgf/mm
2)=(3/√2)×F×S−3/2×R−1/2・・・(2)
〔式(2)中、F及びSはそれぞれ、微小圧縮試験機(MCTM−500島津製作所製)で測定したときの、芯材粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)及び圧縮変位(mm)であり、Rは、微小圧縮試験機(MCTM−500島津製作所製)で測定した芯材粒子の半径(mm)である〕で定義されるKの値が、20℃において10kgf/mm
2〜10000kgf/mm
2の範囲であり、且つ10%圧縮変形後の回復率が20℃において1%〜100%の範囲であるものが、電極同士を圧着する際に電極を傷つけることがなく、電極と十分に接触させることができる点で好ましい。
【0032】
本発明で用いられる導電性粒子は、上記した芯材粒子の表面に無電解めっき法などにより金属皮膜を形成したものである。芯材粒子の表面に金属皮膜を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション法等を利用する乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等を利用する湿式法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせて芯材粒子の表面に金属皮膜を形成してもよい。
【0033】
導電性粒子の大きさは、被覆導電性粉体の用途に応じて適切な大きさが選択される。本発明により製造された被覆導電性粉体を電子回路接続用の導電材料として用いる場合、導電性粒子の平均粒径は、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは1.5μm〜30μmである。導電性粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、得られる被覆導電性粉体が隣接電極間の短絡を発生させることなく、対向電極間での導通を確保することができる。なお、本発明において、導電性粒子の平均粒径は、電気抵抗法を用いて測定された値である。
【0034】
本発明で用いられる導電性粒子の形状は特に制限はない。一般に、導電性粒子は球状である。しかし、導電性粒子は、粉粒状以外の形状、例えば、繊維状、中空状、板状又は針状であってもよく、その表面に多数の突起を有するもの又は不定形のものであってもよい。本発明においては、充填性に優れるという点で、球状の導電性粒子が好ましい。
【0035】
本発明で用いるのに好ましい導電性粒子は、芯材粒子の表面を、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の1種又は2種以上からなる金属皮膜で被覆したものである。これらの中でも、芯材粒子の表面に金属皮膜を無電解めっき法により形成した導電性粒子が、芯材粒子の表面を均一に且つ濃密に金属皮膜で被覆できるという点でより好ましい。金属皮膜は、導電性をより高くするという点で、金又はパラジウムが好ましい。なお、金属皮膜には、ニッケル−リン合金、ニッケル−ホウ素合金等の合金も含まれる。
【0036】
芯材粒子の表面に金属被膜を無電解めっき法により形成する場合、金属皮膜の厚さは、好ましくは0.001μm〜2μm、より好ましくは0.005μm〜1μmである。金属皮膜の厚さは、例えば被覆する金属イオンの添加量や化学分析により算出することができる。
【0037】
無電解めっき法によりニッケル皮膜を形成する場合、(1)触媒化処理工程と、(2)初期薄膜形成工程と、(3)無電解ニッケルめっき工程とを行う。(1)の触媒化処理工程においては、貴金属イオンの捕捉能を有するか又は表面処理によって貴金属イオンの捕捉能を付与した芯材粒子に貴金属イオンを捕捉させた後、これを還元して貴金属を芯材粒子の表面に担持させる。(2)の初期薄膜形成工程は、貴金属が担持された芯材粒子を、ニッケルイオン、還元剤及び錯化剤を含む初期薄膜形成液に分散混合させ、ニッケルイオンを還元させて芯材粒子の表面にニッケルの初期薄膜を形成する。(3)の無電解ニッケルめっき工程は、無電解めっきによって芯材粒子の表面にニッケル皮膜を有するめっき粉体を製造する。これらの工程及び他の金属めっき方法も全て公知である(例えば、特開昭60−59070号公報、特開昭61−64882号公報、特開昭62−30885号公報、特開平01−242782号公報、特開平02−15176号公報、特開平08−176836号公報、特開平08−311655号公報、特開平10−101962号公報、特開2000−243132号公報、特開2004−131800号公報、特開2004−131801号公報、特開2004−197160号公報等参照)。
【0038】
なお、芯材粒子は、上記した(1)の触媒化処理工程を行うに際し、その表面が貴金属イオンの捕捉能を有するか又は貴金属イオンの捕捉能を有するように表面改質されることが好ましい。貴金属イオンは、パラジウムや銀のイオンであることが好ましい。貴金属イオンの捕捉能を有するとは、貴金属イオンをキレート又は塩として捕捉し得ることをいう。例えば芯材粒子の表面に、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、水酸基、ニトリル基、カルボキシル基などが存在する場合には、芯材粒子の表面は貴金属イオンの捕捉能を有する。貴金属イオンの捕捉能を有するように表面改質する場合には、例えば特開昭61−64882号公報、特開2007−262495号公報等に記載の方法を用いることができる。
【0039】
また、本発明で用いられる導電性粒子は、導電性粒子の表面に樹脂からなる絶縁層を更に形成したものであってよい。このような導電性粒子の一例としては、例えば、特開平5−217617号公報、特開平5−70750号公報等に記載の導電性粒子がある。
【0040】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の被覆導電性粉体の表面を、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理してもよいし、或いは絶縁性樹脂で被覆処理してもよい。
【0041】
本発明の被覆導電性粉体は、体積固有抵抗値が好ましくは1Ω・cm以下、より好ましくは0.5Ω・cm以下である。被覆導電性粉体の体積固有抵抗値は酸化チタン被覆膜の厚さによって調整することができる。本発明の被覆導電性粉体は、体積固有抵抗値が上記範囲で、優れた導電性を有することが特徴の1つである。このため、本発明の被覆導電性粉体は、導電性接着剤等の導電性フィラーとして好適に使用することができる。本発明の被覆導電性粉体を導電性接着剤に使用する場合、導電性接着剤は、通常、導電性フィラーとしての被覆導電性粉体と接着樹脂とを含有する。なお、本発明において、被覆導電性粉体の体積固有抵抗値は、垂直に立てた内径10mmの樹脂製円筒内に、粉体試料1.0gを入れ、10kgの荷重をかけた状態で上下電極間の電気抵抗を測定した値である。また、酸化チタン被覆膜の厚さを厚くした被覆導電性粉体は、白色を呈することが望まれる接着剤に好適に使用することもできる。
【0042】
本発明の導電性接着剤は、被接着部材としての、導電部が形成された2枚の基板間に配置され、加熱加圧されて導電部を接着し導通する異方導電性接着剤として好ましく用いることができる。本発明の異方導電性接着剤は、微細化するICチップ等の電子部品や回路基板の電極接続に対しても、信頼性の高い接続ができる。以下、異方導電性接着剤の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0043】
本発明の異方導電性接着剤は、上記した被覆導電性粉体と、接着樹脂としてのエポキシ樹脂とを含む。エポキシ樹脂としては、接着樹脂として用いられる1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂が使用可能である。具体的なものとして、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシ化合物等とエピクロルヒドリン又は2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂が例示される。また、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族及び脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
また、本発明の異方導電性接着剤は、必要に応じて、エポキシ樹脂以外の接着樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂以外の接着樹脂としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
なお、これらの接着樹脂としては、不純物イオン(NaやCl等)や加水分解性塩素などを低減した高純度品を用いることが、イオンマイグレーションの防止のため好ましい。
【0046】
本発明の異方導電性接着剤における被覆導電性粉体の配合量は、接着樹脂100質量部に対し、通常、0.1質量部〜30質量部、好ましくは0.5質量部〜25質量部、より好ましくは1質量部〜20質量部である。被覆導電性粉体の配合量が上記範囲内であれば、接続抵抗や溶融粘度が高くなることを抑制し、接続信頼性を向上させ、接続の異方性を十分に確保することができる。
本発明の異方導電性接着剤には、当該技術分野において公知の添加剤を使用でき、その添加量も当該技術分野において公知の添加量の範囲内で行えばよい。このような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、反応性助剤、金属酸化物、光開始剤、増感剤、硬化剤、加硫剤、劣化防止剤、耐熱添加剤、熱伝導向上剤、軟化剤、着色剤、各種カップリング剤、金属不活性剤等を例示することができる。
【0047】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。反応性助剤すなわち架橋剤としては、例えばポリオール、イソシアネート類、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウトロピン類、アミン類、酸無水物、過酸化物等が挙げられる。
【0048】
エポキシ樹脂硬化剤としては、1分子中に2個以上の活性水素を有するものであれば特に制限することなく使用することができる。具体的なものとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン等のポリアミノ化合物、また無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の有機酸無水物、そしてまたフェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、用途や必要に応じて潜在性硬化剤を用いてもよい。使用できる潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等、及びこれらの変性物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
本発明の異方導電性接着剤は、通常、当該技術分野において広く使用されている製造装置を用いて、被覆導電性粉体、エポキシ樹脂、硬化剤、さらに必要により各種添加剤を配合し、必要により有機溶媒中で混合することにより得ることができる。
【実施例】
【0050】
下記実施例3は、参考例とする。
<ペルオキソチタン酸水溶液の調製>
15%四塩化チタン溶液15mLに25%水酸化ナトリウム20mLを加えて、生じた沈殿物をろ過し、洗浄した。沈殿物に32%過酸化水素100mLを加え、28%アンモニア水を用いてpHを10.5に調整し、ペルオキソチタン酸水溶液を得た。
【0051】
<実施例1>
導電性粒子としての平均粒子径6.5μmの金被覆ニッケル粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト6GNM5−Ni)20gを、300mLの脱塩水中で分散させてスラリーとし、このスラリーを攪拌しながら80℃に保持し、先に調製したペルオキソチタン酸水溶液の全量を20分かけて連続滴下した。滴下終了後、攪拌を続け、80℃に2時間保持して熟成させた。熟成後、液をろ過し、ろ過物を3回リパルプ洗浄した後、真空乾燥機で100℃で乾燥して、導電性粒子表面が酸化チタンで被覆された被覆導電性粒子を得た。なお、導電性粒子及びペルオキソチタン酸の使用量から求めた酸化チタンの被覆量は10質量%である。走査型電子顕微鏡による観察によって、導電性粒子の表面に酸化チタンの被覆膜が一様に形成されていることが確認された。
【0052】
<実施例2>
平均粒子径6.5μmの金被覆ニッケル粒子20gの代わりに、平均粒子径2.5μmの金被覆ニッケル粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト19GNM2.5−Ni)30gを使用したこと以外は実施例1と同様にして被覆導電性粉体を得た。
【0053】
<実施例3>
平均粒子径6.5μmの金被覆ニッケル粒子20gの代わりに、平均粒子径4.6μmのニッケル被覆樹脂粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト52NR4.6−EHD)30gを使用したこと以外は実施例1と同様にして被覆導電性粉体を得た。
【0054】
<実施例4>
平均粒子径6.5μmの金被覆ニッケル粒子20gの代わりに、平均粒子径4.6μmの金−ニッケル被覆樹脂粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト20GNR4.6−EH)30gを使用したこと以外は実施例1と同様にして被覆導電性粉体を得た。
【0055】
<比較例1>
平均粒子径4.6μmのニッケル被覆樹脂粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト52NR4.6−EHD)をそのまま用いた。
【0056】
<比較例2>
平均粒子径4.6μmの金−ニッケル被覆樹脂粒子(日本化学工業株式会社製:商品名ブライト20GNR4.6−EH)をそのまま用いた。
【0057】
<比較例3>
国際公開第2009/054386号パンフレット(特許文献3)に記載の実施例7の被覆導電性粉体を調製した。
【0058】
<比較例4>
国際公開第2009/054387号パンフレット(特許文献4)に記載の実施例28の被覆導電性粉体を調製した。
【0059】
<高温高湿処理>
実施例1〜4で得られた被覆導電性粉体、比較例1〜2の導電性粒子又は比較例3〜4で得られた被覆導電性粉体を、温度60℃、湿度95%に保たれた高温高湿槽に入れ、1000時間放置した。
【0060】
<体積固有抵抗値の測定>
垂直に立てた内径10mmの樹脂円筒内に、粉体1.0gを入れ、10kgfの荷重をかけた状態で上下電極間の電気抵抗を測定し、体積固有抵抗値を求めた。粉体としては、高温高湿処理前のものと、高温高湿処理後のものとを用いた。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から、実施例1〜4の被覆導電性粉体は良好な電気導電性を有し、また、60℃及び95%RHで1000時間の高温高湿処理を施しても体積固有抵抗値の上昇なく良好な電気導電性を保っていた。
【0063】
<異方導電性接着剤の調製>
混練後に得られる樹脂ペースト中の導電性フィラーの個数が3億個/cm
3になるように、実施例1〜4の被覆導電性粉体、比較例1〜2の導電性粒子又は比較例3〜4の被覆導電性粉体を導電性フィラーとして約3質量部〜約15質量部、エポキシ主剤jER828(ジャパンエポキシレジン社製)を100質量部、硬化剤アミキュアPN23J(味の素ファインテクノ社製)を30質量部、粘度調整剤2質量部を遊星式攪拌機で1分混練してペーストを得た。粉体としては、高温高湿処理前のものと、高温高湿処理後のものとをそれぞれ用いた。
【0064】
<分散性評価>
先に調製した異方導電性接着剤をアプリケーターにより100μmの膜厚で厚さ100ミクロンのPETフィルム上に塗布した。これを光学顕微鏡により10cm
2の面積を200倍で観察し、長軸10μm以上の凝集粒子及び長軸8μm以上10μm未満の凝集粒子の個数を計測した。下記基準に従って評価した結果を表2に示す。
◎:凝集粒子が全く無い
○:凝集粒子が1〜2個存在する
×:凝集粒子が3個以上存在する
【0065】
【表2】
【0066】
表2の結果から、実施例1〜4の被覆導電性粉体は60℃及び95%RHで1000時間の高温高湿処理でも良好な分散状態であった。
【0067】
<実装評価>
実施例1〜4で得られた被覆導電性粉体、比較例1〜2の導電性粒子又は比較例3〜4で得られた被覆導電性粉体を5質量部、jER828(ジャパンエポキシレジン社製)を100質量部、硬化剤アミキュアPN23J(味の素ファインテクノ社製)を30質量部、粘度調整剤2質量部を遊星式攪拌機で混練してペーストを得、これを接着剤試料とした。次いでPETフィルム上にアルミニウム配線が形成された基板上に、先に調製した接着剤試料を縦2.5mm×横2.5mm×厚さ0.05mmで塗布した。そこに、金パンプを有するダミーICを載せ、170℃、圧力2.0N、30秒で熱圧着し、抵抗測定用のサンプルを作製した。
【0068】
<プレッシャークッカーテスト>
実装試験で得られた抵抗測定用のサンプルを密閉容器に並べ、プレッシャークラッカーテスト(温度121℃、相対湿度100%、2気圧)を10時間行った後、抵抗値を測定した。
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果から、実施例1〜4の被覆導電性粉体は、接続直後でも良好な導電性を有し、また、プレッシャークラッカーテスト後も接続抵抗値の上昇なく良好な導電性を保っていた。