特許第6395204号(P6395204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395204
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】光導波路装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20180913BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02B6/122
   G02B6/13
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-8755(P2014-8755)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-138094(P2015-138094A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】平山 智之
【審査官】 橿本 英吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−276724(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078341(WO,A1)
【文献】 特開2009−265519(JP,A)
【文献】 特開平11−133254(JP,A)
【文献】 特開平11−038252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0258691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンで光信号を伝播するコア層を有する光導波路装置であって、粗面状になっている基板の表面に、第一のアンダークラッド層と第二のアンダークラッド層とがこの順で形成され、上記第二のアンダークラッド層の表面に、照射線によってパターニングされたコア層が形成されており、上記第一のアンダークラッド層は、厚みが〜7μm、上記照射線に対する透過率が48〜70%に設定され、上記第二のアンダークラッド層は、上記照射線に対する透過率が72〜100%に設定されていることを特徴とする光導波路装置。
【請求項2】
上記第一のアンダークラッド層が、上記照射線を吸収する照射線吸収剤を含有するものであり、その照射線吸収剤の含有量が1.0〜2.0重量%に設定されている請求項1記載の光導波路装置。
【請求項3】
上記照射線が紫外線である請求項1または2記載の光導波路装置。
【請求項4】
上記第一のアンダークラッド層と基板の接着強度(ASTM D3350−87による)が、剥離面積0〜50%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項5】
上記第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の比率(D1:D2)が3:1〜1:3に設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項6】
上記基板の厚みをTとすると、第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の和(D1+D2)が、1.05T〜3Tに設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項7】
請求項1記載の光導波路装置の製造方法であって、表面が粗面状になっている基板を準備し、その粗面状になっている基板表面に、第一のアンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア層形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層を照射線により所定パターンに露光し、その露光部分をコア層に形成する工程とを備え、上記コア層形成工程において、上記感光性樹脂層に対する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記基板の粗面状表面に達しそこで反射して上記感光性樹脂層を照射するものであり、上記第一のアンダークラッド層の、厚みが〜7μm、上記照射線に対する透過率が48〜70%となるようにするとともに、上記第二のアンダークラッド層の上記照射線に対する透過率が、72〜100%となるようにしたことを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項8】
上記第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の比率(D1:D2)が、3:1〜1:3となるようにした請求項7記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項9】
上記基板の厚みをTとすると、第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の和(D1+D2)が、1.05T〜3Tとなるようにした請求項7または8記載の光導波路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、光情報処理、その他一般光学で広く用いられる光導波路装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路装置の光導波路は、通常、アンダークラッド層の表面に、光の通路となるコア層を所定パターンに形成し、さらにそのコア層を被覆するオーバークラッド層を形成して構成されている。このような光導波路は、通常、金属製基板等の基板の表面に形成され、その基板とともに光導波路装置として製造される。
【0003】
このような光導波路装置の従来の製造方法は、例えばつぎのとおりである。まず、図3(a)に示すように、基板20の表面に、アンダークラッド層21を形成する。ついで、図3(b)に示すように、そのアンダークラッド層21の表面に、コア層形成用の感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層22Aを形成する。つぎに、コア層のパターンに対応する開口パターンの開口23が形成されたフォトマスクMを介して、上記感光性樹脂層22Aに対してエネルギー源となる光(例えば紫外線)を照射し、その照射線Lを上記開口パターンの開口23を通じて上記感光性樹脂層22Aに到達させ、その感光性樹脂層22Aの部分を露光する。上記照射線Lは、上記感光性樹脂層22Aに対して直角に照射され、その照射による露光部分では光反応が進み、硬化する。そして、現像液を用いて現像を行うことにより、図3(c)に示すように、未露光部分を溶解させて除去し、残存した露光部分が所定パターンのコア層22となる。このコア層22は、通常、断面形状が四角形に形成される。その後、図3(d)に示すように、コア層22を被覆するように、上記アンダークラッド層21の表面にオーバークラッド層24を形成する。このようにして、上記基板20の表面に光導波路Wを形成する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような従来の方法では、基板20の表面が粗面になっている場合、露光に用いられる照射線Lが、コア層形成用の感光性樹脂層22Aおよびアンダークラッド層21を透過したのち、基板20の粗面状の表面で乱反射し、その散乱光が、上記アンダークラッド層21を下から斜め上方向に透過して、感光性樹脂層22Aのコア層形成領域において、コア層22のパターニングの境界面を斜め下から不均一に露光する。そのため、コア層22の側面部25〔図3(c)参照〕では、本来不要な光反応が不均一に進行して、コア層22の側面部25が粗面に形成されることが知られている。そして、このようなコア層22を有する光導波路Wでは、コア層22内を伝播する光の伝播損失が大きくなるため、その低減が重要な課題となっている。
【0005】
そこで、本出願人は、上記のような照射線の乱反射による散乱光を低減させるために、アンダークラッド層21に照射線吸収剤を添加することを提案し、すでに出願している(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−341454号公報
【特許文献2】特開2009−276724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では、コア層22に直接接するアンダークラッド層21に照射線吸収剤を添加しているため、この照射線吸収剤が、コア層22内を伝播する光の波長に対しても吸収帯を有し、マルチモードの伝播過程において、伝播光が減衰してしまうという問題がある。また、光導波路Wの末端における光取り出し部分において、上記アンダークラッド層21を伝播光が透過する構造となるため、伝播光の減衰を避けることが難しいという問題もある。
【0008】
さらに、信号伝播光の屈折率制御のためにクラッド材料にフッ素樹脂を配合することがあるが、そのようなフッ素樹脂を含有するアンダークラッド材料は、基板との接着力が低く、アンダークラッド層21と基板20との間で剥離が生じて光導波路Wの信頼性を低下させるおそれがあるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、表面が粗面状になっている基板表面に光導波路を形成しても、その光導波路の形状に起因する光伝播損失が抑制され、しかもアンダークラッド層と基板とが高い接着強度を有する光導波路装置と、その製造方法とを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、所定パターンで光信号を伝播するコア層を有する光導波路装置であって、粗面状になっている基板の表面に、第一のアンダークラッド層と第二のアンダークラッド層とがこの順で形成され、上記第二のアンダークラッド層の表面に、照射線によってパターニングされたコア層が形成されており、上記第一のアンダークラッド層は、厚みが〜7μm、上記照射線に対する透過率が48〜70%に設定され、上記第二のアンダークラッド層は、上記照射線に対する透過率が72〜100%に設定されている光導波路装置を第一の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記第一の要旨である光導波路装置の製造方法であって、表面が粗面状になっている基板を準備し、その粗面状になっている基板表面に、第一のアンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア層形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層を照射線により所定パターンに露光し、その露光部分をコア層に形成する工程とを備え、上記コア層形成工程において、上記感光性樹脂層に対する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記基板の粗面状表面に達しそこで反射して上記感光性樹脂層を照射するものであり、上記第一のアンダークラッド層の、厚みが〜7μm、上記照射線に対する透過率が48〜70%となるようにするとともに、上記第二のアンダークラッド層の上記照射線に対する透過率が、72〜100%となるようにした光導波路装置の製造方法を第二の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光導波路装置によれば、粗面状の基板表面に、厚みが〜7μm、コア層パターニングのための照射線に対する透過率が48〜70%に設定された、特殊な特性の第一のアンダークラッド層と、上記照射線の透過率が72〜100%に設定された第二のアンダークラッド層とが形成されているため、そのコア層形成工程において、コア層形成用の感光性樹脂層を透過した照射線が、上記第一のアンダークラッド層内で、基板表面で乱反射する前または乱反射した後に吸収ないし弱められている。このため、基板の表面で乱反射して第一のアンダークラッド層を下から斜め上方向に透過し、第二のアンダークラッド層を通過してコア層形成用の感光性樹脂層に達する照射線が大幅に減少し、その結果、コア層形成用の感光性樹脂層内において、コア層の側面となる面を斜め下から露光して粗面とする照射線が殆どなくなり、コア層側面の粗面化が効果的に抑制されている。しかも、上記第一のアンダークラッド層の上に、上記照射線の透過率が高い第二のアンダークラッド層を介してコア層が形成されているため、コア層の周囲が、一般的な光導波路の構成と変わることがなく、その端面から信号伝播光を取り出す際、伝播光の減衰等が生じず、光伝播損失が小さいという利点を有している。
【0013】
また、基板と接する第一のアンダークラッド層の、照射線に対する透過率が制限されているため、露光による第一のアンダークラッド層の硬化を遅らせる作用を果たし、従来に比べて、基板と第一のアンダークラッド層の接着強度が高められている。したがって、基板の第一のアンダークラッド層との間で界面剥離等が生じることがなく、高い品質安定性を維持することができる。
【0014】
そして、本発明の光導波路装置の製造方法によれば、上記光導波路装置を簡単に製造することができるという利点を有する。
【0015】
なお、本発明の光導波路装置のなかでも、特に、第一のアンダークラッド層が、上記照射線を吸収する照射線吸収剤を含有するものであり、その照射線吸収剤の含有量が1.0〜2.0重量%に設定されている場合には、その照射線吸収剤の添加量によって、照射線に対する透過率や第一のアンダークラッド層形成時の硬化速度等をコントロールすることができ、好適である。
【0016】
また、上記光導波路装置のなかでも、特に、上記照射線が紫外線であるものは、照射エネルギーが大きく、しかも照射装置が小型かつ安価であるため、効率よく安価に、光導波路装置を提供することができるという利点を有している。
【0017】
そして、上記光導波路装置のなかでも、特に、上記第一のアンダークラッド層と基板の接着強度(ASTM D3350−87による)が、剥離面積0〜50%であるものは、基板と第一のアンダークラッド層との間で界面剥離が生じず、長期にわたって優れた品質が維持されるという利点を有する。
【0018】
また、上記光導波路装置のなかでも、特に、上記第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の比率(D1:D2)が3:1〜1:3に設定されているものは、上記二種類のアンダークラッド層を組み合わせて用いることの効果が顕著に発揮されるため、好適である。
【0019】
さらに、上記光導波路装置のなかでも、特に、上記基板の厚みをTとすると、第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の和(D1+D2)が、1.05T〜3Tに設定されているものは、とりわけ光導波路において優れた性能が発揮されることになり、好適である。
【0020】
そして、本発明の光導波路装置の製造方法のなかでも、特に、上記第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の比率(D1:D2)が、3:1〜1:3となるようにしたもの、あるいは、上記基板の厚みをTとすると、第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の和(D1+D2)が、1.05T〜3Tとなるようにしたものは、上記のように、とりわけ優れた性能を発揮する光導波路装置を提供することができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態である光導波路装置を示す模式的な説明図である。
図2】(a)〜(d)は、いずれも上記光導波路装置の製造方法の一例を示す模式的な説明図である。
図3】(a)〜(d)は、いずれも従来の光導波路装置の製造方法の一例を示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0023】
図1は、本発明の光導波路装置の一実施の形態の断面構成を模式的に示している。この光導波路装置は、表面が粗面になっている金属製の基板1と、この基板1の表面に形成された光導波路W1 とを備えている。そして、上記光導波路W1 は、照射線吸収剤を含有し、厚みが〜7μm、コア層形成時の露光に用いられる照射線Lに対する透過率が48〜70%に設定された第一のアンダークラッド層2と、照射線吸収剤を含有せず、上記照射線Lに対する透過率が72〜100%に設定された第二のアンダークラッド層3と、コア層4と、これを被覆するオーバークラッド層5とで構成されている。
【0024】
上記光導波路装置は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、表面が粗面状になっている基板1を準備する。この基板1としては、表面が粗面状になっているものが用いられ、例えば、ステンレス(SUS)製、銅製、アルミニウム製、ニッケル製等の金属製基板があげられる。なかでも、ステンレス製基板が、熱に対する伸縮耐性に優れていることから、光導波路装置の製造過程における寸法安定性の点で好適である。この種のステンレス製基板は、通常、その製造過程に由来してその上下両表面が粗面になっており、その算術平均粗さ(Ra)は、概ね100〜200nmの範囲内である。なお、上記基板1は、その厚みが、例えば20μm〜1mmの範囲内のものが好適に用いられる。そして、ごく薄い箔状のものは、通常、シリコンウェハ等からなるベース材の表面に貼付された状態で取り扱われるようになっている。
【0025】
つぎに、図2(a)に示すように、上記基板1の表面の所定領域に、第一のアンダークラッド層2形成用の感光性樹脂および照射線吸収剤が有機溶剤に溶解しているワニスを塗工して、塗布層(感光性樹脂層)2aを形成する。
【0026】
上記感光性樹脂としては、光導波路形成用に用いられる各種の感光性樹脂を用いることができ、例えば、感光性エポキシ樹脂等があげられる。
【0027】
また、上記照射線吸収剤は、後のコア層4形成工程〔図2(c)、(d)参照〕においてコア層4形成用の塗布層(感光性樹脂層)4aを露光する際に用いる紫外線等の照射線Lを吸収するものであり、例えば照射線Lが紫外線である場合、紫外線吸収剤が用いられる。
【0028】
上記紫外線吸収剤としては、紫外線波長を吸収し、信号伝播光の波長を透過するものが好適であり、その観点から、トリアジン系紫外線吸収剤があげられる。市販品としては、BASFジャパン社製:TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479、旭電化工業社製:アデカスタブ LA−46、アデカスタブ LA−F70、岩瀬コスファ社製:TINOSORB S、サンケミカル社製:サイアソーブUV−1164等があげられる。これらのなかでも、特に、紫外線波長に対する吸収率の高さと、信号伝播光波長に対する透過率の高さ、さらには樹脂との相溶性および安定性の観点から、BASFジャパン社製のTINUVIN479が最適である。
【0029】
また、他の紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、旭電化工業社製:アデカスタブ LA−29、LA−31、LA−31RG、LA−31G、LA−32、LA−36、LA−36G、BASFジャパン社製:TINUVIN P、TINUVIN234、TINUVIN326、TINUVIN329、TINUVIN213、TINUVIN571、TINUVIN928、ケミプロ化成社製:KEMISORB71、KEMISORB73、KEMISORB74、KEMISORB79、KEMISORB279等があげられる。
【0030】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤である、旭電化工業社製:1413、BASFジャパン社製:CHIMASSORD 81、ケミプロ化成社製:KEMISORB10、KEMISORB11、KEMISORB11S、KEMISORB12、KEMISORB111等があげられる。
【0031】
そして、ベンゾエート系紫外線吸収剤である、BASFジャパン社製:TINUVIN120、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤である、BASFジャパン社製:CHIMASSORB2020、944、TINUVIN622SF、TINUVIN PA144、TINUVIN765、TINUVIN770DF、KEMISTAB29、KEMISTAB62、KEMISTAB77、KEMISTAB94等があげられる。
【0032】
上記照射線吸収剤の添加量は、硬化して得られる第一のアンダークラッド層2における、コア層形成時に用いられる照射線Lに対する透過率が48〜70%(参考形態として20〜70%)の範囲内となるよう調整される。
【0033】
このような特性を備えた第一のアンダークラッド層2を得るための照射線吸収剤の添加量は、その照射線吸収剤の種類にもよるが、一般に、第一のアンダークラッド層2形成用のワニス全体の固形分に対して0.2〜4重量%となる範囲内に設定することが好適である。すなわち、この範囲よりも低い割合の添加量では、照射線吸収効果が充分に得られず光伝播損失に対する低減効果が見込めなくなるおそれがあり、好ましくない。また、この範囲よりも高い割合となる添加量では、照射線吸収剤による照射線Lの吸収が過度になって、第一のアンダークラッド層2の硬化を妨げるおそれがあり、やはり好ましくない。また、後述するように、基板1との接着強度に点からも好ましくない。そして、上記添加量のなかでも、特に、ワニス全体の固形分に対して0.5〜2重量%に設定することが、とりわけ好適である。
【0034】
また、上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法、ディッピング法、キャスティング法、インジェクション法、インクジェット法等により行われる。そして、上記ワニスの塗布層2aは、必要に応じて、乾燥のために50〜120℃×10〜30分間程度加熱処理される。
【0035】
つぎに、この塗布層2aを照射線により露光する。上記露光用の照射線Lとしては、例えば、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線によれば、大きなエネルギーを照射して高い硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは、50〜3000mJ/cm2 である。
【0036】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、80〜250℃、好ましくは、100〜200℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行う。これにより、図2(a)に示すように、基板1の表面に第一のアンダークラッド層2を形成する。上記第一のアンダークラッド層2の厚みは、〜7μmの範囲内(参考形態として、通常、1〜50μmの範囲内、好ましくは、5〜30μmの範囲内)に設定される。
【0037】
つぎに、図2(b)に示すように、上記第一のアンダークラッド層2の表面に、照射線吸収剤が含有されていない第二のアンダークラッド層3を形成する。この第二のアンダークラッド層3の形成材料としては、通常、上記第一のアンダークラッド層2の形成材料と同様の材料であって、照射線吸収剤を含有しないものが用いられる。それ以外は、第一のアンダークラッド層2を形成する場合と同様にして、第二のアンダークラッド層3を形成することができる。
【0038】
上記第二のアンダークラッド層3の厚みは、通常、1〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは5〜30μmの範囲内に設定される。そして、特に、第一のアンダークラッド層2の厚みをD1とし、第二のアンダークラッド層3の厚みをD2とした場合、両者の比率(D1:D2)が3:1〜1:3となるよう設定することが好適である。すなわち、アンダークラッド層全体のうち、照射線吸収剤を含有する第一のアンダークラッド層2が厚み方向に占める割合が、上記の範囲よりも小さいと、せっかく第一のアンダークラッド層2内に照射線吸収剤を含有させても、その効果が充分に得られないおそれがあり、逆に、第一のアンダークラッド層2が厚み方向に占める割合が、上記の範囲よりも大きいと、光導波路W1の端部における信号伝播光の減衰抑制効果が小さくなって、光伝播損失が大きくなるおそれがあるからである。
【0039】
また、前記基板1の厚みをTとすると、第一のアンダークラッド層の厚みD1と第二のアンダークラッド層の厚みD2の和(D1+D2)が、1.05T〜3Tとなるよう設定することが好ましい。すなわち、基板1に対するアンダークラッド層全体の厚み(D1+D2)の割合が、上記の範囲よりも小さいと、基板1の端部におけるアンダークラッド層のカバレッジ性が悪化するおそれがあり、逆に、上記の範囲よりも大きいと、光導波路W1の柔軟性が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0040】
つぎに、上記第二のアンダークラッド層3の上に、図2(c)に示すように、コア層4形成用の感光性樹脂と溶媒からなるワニスを塗布して塗布層4aを形成する。この塗布層4aの形成は、図2(a)で説明した、第一のアンダークラッド層2を形成するための塗布層2aの形成方法と同様にして行われる。なお、コア層4の形成材料は、上記第一、第二のアンダークラッド層2、3および後記のオーバークラッド層5(図1参照)の形成材料よりも屈折率の大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記第一、第二のアンダークラッド層2、3、コア層4、オーバークラッド層5の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0041】
つぎに、上記コア層4形成用の塗布層4aの上に、コア層4の形成パターンに対応する開口パターンが形成されたフォトマスクMを配置し、このフォトマスクMを介して、上記塗布層4aの上記開口パターンに対応する部分を照射線Lにより露光する。この露光は、先に述べた第一、第二のアンダークラッド層2、3の形成工程と同様にして行われる。上記露光において、上記照射線Lは、上記塗布層4aに対して直角に照射され、その照射による露光部分で光反応を進めて硬化させる。その光反応に寄与しなかった照射線Lは、上記塗布層4aを透過し、上記第一のアンダークラッド層2内で、基板1の表面で乱反射する前または乱反射した後に照射線吸収剤により吸収ないし弱められる。このため、基板1の表面で乱反射して第一のアンダークラッド層2を下から斜め上方向に透過する照射線Lは、大幅に減少する。その結果、コア層4形成用の塗布層4a内において、コア層4の側面となる面を乱反射により露光する照射線Lが殆どなくなり、コア層4の側面の粗面化を抑制することができる。
【0042】
上記露光後、先に述べた第一のアンダークラッド層2の形成工程と同様にして、加熱処理を行う。ついで、現像液を用いて現像を行うことにより、図2(c)に示すように、上記塗布層4aにおける未露光部分を溶解させて除去し、第二のアンダークラッド層3上に残存した塗布層4aをコア層4のパターンに形成する。上記現像は、例えば、浸漬法、スプレー法、パドル法等が用いられる。また、現像液としては、例えば、有機系の溶媒、アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像液および現像条件は、感光性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0043】
上記現像後、コア層4のパターンに形成された塗布層4aの表面等に残存する現像液を加熱処理により除去する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×10〜30分間の範囲内で行われる。これにより、上記コア層4のパターンに形成された塗布層4aをコア層4に形成する〔図2(d)参照〕。このコア層4の側面は、粗面化が抑制されている。また、上記コア層4の厚みは、通常、10〜150μmの範囲内に設定され、好ましくは、20〜100μmの範囲内に設定される。また、コア層4の幅は、通常、8〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは、10〜25μmの範囲内に設定される。
【0044】
つぎに、上記コア層4を被覆するように、上記第二のアンダークラッド層3の表面に、オーバークラッド層5形成用の感光性樹脂組成物からなるワニスを用いて塗布層を形成する。この塗布層の形成は、図2(a)で説明した、第一のアンダークラッド層2形成用の塗布層2aの形成方法と同様にして行われる。その後も、第一のアンダークラッド層2の形成工程と同様に露光、加熱処理等を行い、上記塗布層をオーバークラッド層5に形成する(図1参照)。オーバークラッド層5の厚み(コア層の表面からの厚み)は、通常、5〜100μmの範囲内に設定され、好ましくは、10〜80μmの範囲内に設定される。
【0045】
このようにして、基板1の表面に、第一のアンダークラッド層2、第2のアンダークラッド層3、コア層4およびオーバークラッド層5からなる光導波路W1 が形成された光導波路装置が得られる。この光導波路装置の光導波路W1 では、上記第一のアンダークラッド層2において、厚みが〜7μmで、照射線吸収剤が含有され、コア層4形成用の照射線Lに対する透過率が48〜70%に限られており、第二のアンダークラッド層3において、照射線吸収剤が含有されておらず、上記照射線Lに対する透過率が72〜100%になっているため、コア層4の形成工程おいて、コア層4形成用の塗布層4aを透過した照射線Lは、第二のアンダークラッド層3を透過し、第一のアンダークラッド層2内で、基板1の表面で乱反射する前または乱反射した後に吸収されるか、もしくは弱められる。このため、コア層4の側面の粗面化が抑制されて、光の伝播損失が小さくなり、良好な光伝播を行うことができる。
【0046】
しかも、この光導波路装置は、第一のアンダークラッド層2の形成材料である感光性樹脂組成物に、特定の割合で照射線吸収剤が含有されているため、基板1と第一のアンダークラッド層2との密着力が強化されている。すなわち、感光性樹脂は、一般に、硬化速度が速く、基板1に対する濡れが不充分な状態で硬化するため、基板1との密着力が低くなる。しかも、感光性樹脂は、一般に、硬化収縮量が大きいため、硬化の際、内部応力が大きくなって基板1から剥がれようとする力が働く。これに対し、上記光導波路装置は、第一のアンダークラッド層2の形成材料である感光性樹脂組成物に照射線吸収剤が含有されているため、基板1の表面で硬化する際、この照射線吸収剤により基板1との界面付近における露光量が減少し、硬化速度を遅くすることができるとともに硬化収縮量を小さくすることができる。このため、照射線吸収剤が適度な割合にコントロールされた第一のアンダークラッド2は、基板1に対する接着強度が高く、界面剥離が生じないという利点を有する。
【0047】
なお、上記の例では、基板1の裏面(上記光導波路W1 が形成されている面と反対側の面)には、何も形成されていないが、上記基板1の裏面には、絶縁層を介して電気回路を形成してもよいし、また、その電気回路に実装用パッドを形成し、その実装用パッドに発光素子、受光素子等の光学素子を実装してもよい。
【0048】
また、上記の例では、コア層4を被覆するオーバークラッド層5を形成したが、このオーバークラッド層5は、場合によって、形成しなくてもよい。
【実施例】
【0049】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるわけではない。なお、以下の記載において、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準である。
【0050】
参考例1〕
まず、以下に示すようにして材料の準備を行った。
【0051】
〔基板の準備〕
基板であるSUS304箔〔東洋製箔社製、厚み20μm、表面の算術平均粗さ(Ra)0.5μm〕を、厚み約500μmのシリコンウェハ上に貼付した。
【0052】
〔第一のアンダークラッド層形成材料の調製〕
遮光条件下にて、液状長鎖二官能半脂肪族エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−4818)50部、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(ダイセル社製、EHPE3150)20部、液状長鎖二官能脂肪族エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、PG−207GS)30部、光酸発生剤(アデカ社製、アデカオプトマーSP−170)2.0部、紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、TINUVIN479)0.26部、を乳酸エチル20部に混合し、85℃加熱下で撹拌し、完全に溶解させた。そして、室温(25℃)まで冷却し、孔径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行い、第一のアンダークラッド層形成材料となる感光性ワニスaを調製した。
【0053】
〔第二のアンダークラッド層形成材料の調製〕
遮光条件下にて、液状二官能フッ化アルキルエポキシ樹脂(東ソーエフテック社製、H022)50部、液状二官能脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製、セロキサイド2021P)50部、光酸発生剤(アデカ社製、アデカオプトマーSP−170)4.0部、リン系酸化防止剤(三光社製、HCA)0.54部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、KBM−403)1部、を乳酸エチル20部に混合し、80℃加熱下で撹拌し、完全に溶解させた。そして、室温(25℃)まで冷却し、孔径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行い、第二のアンダークラッド層形成材料となる感光性ワニスbを調製した。
【0054】
〔コア層形成材料の調製〕
遮光条件下にて、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(ダイセル社製、EHPE3150)80部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX−8040)20部、光酸発生剤(和光純薬工業社製、WPI−116)1.0部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(共同薬品社製、Songnox1010)0.5部、リン系酸化防止剤(三光社製、HCA)0.5部、を乳酸エチル40部に混合し、85℃加熱下で撹拌し、完全に溶解させた。そして、室温(25℃)まで冷却し、孔径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行い、コア層形成材料となる感光性ワニスcを調製した。
【0055】
上記材料を用い、以下の手順にしたがって、目的とする光導波路装置を作製した。
【0056】
〔第一のアンダークラッド層の形成〕
前記基板(シリコンウェハ上に貼付されたステンレス箔)の表面に、スピンコータを用いて、前記第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaを塗工した後、ホットプレート上にて、130℃×5分間の加熱により有機溶剤(乳酸エチル)を乾燥させて、フィルム状の未硬化層を形成した。この未硬化層に対し、混線(ブロード光)を用いて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行った。その後、130℃×10分間の後加熱を行うことにより、第一のアンダークラッド層(厚み15μm)を形成した。
【0057】
〔第二のアンダークラッド層の形成〕
形成された第一のアンダークラッド層上に、スピンコータを用いて、前記第二のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスbを塗工した後、混線(ブロード光)を用いて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行った。その後、130℃×10分間の後加熱を行うことにより、第二のアンダークラッド層(厚み15μm)を形成した。
【0058】
形成された第二のアンダークラッド層上に、スピンコータを用いて、前記コア層形成材料である感光性ワニスcを塗工した後、ホットプレート上にて、130℃×5分間の加熱により有機溶剤(乳酸エチル)を乾燥させて、フィルム状の未硬化層を形成した。この未硬化層に対し、混線(ブロード光)を用いて5000mJ(波長365nm積算)のマスクパターン露光(パターン幅/パターン間隔〔L/S〕=50μm/200μm)を行い、その後、140℃×5分間の後加熱を行った。そして、水洗後、ホットプレート上にて120℃×5分間の加熱を行い、水分を乾燥することにより、所定パターンのコア層(厚み55μm)を形成した。
【0059】
〔オーバークラッド層の形成〕
形成されたコアパターン上に、スピンコータを用いて、前記オーバークラッド層形成材料である感光性ワニスdを塗工した後、混線(ブロード光)を用いて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行った。そして、130℃×10分間の後加熱を行うことにより、オーバークラッド層(厚み60μm)を形成した。
【0060】
このようにして、ステンレス基板(シリコンウェハ上に貼付)上に、第一のアンダークラッド層と、第二のアンダークラッド層と、コア層と、オーバークラッド層とからなる光導波路を有する光導波路装置を得ることができた。
【0061】
参考例2〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を0.52部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0062】
参考例3〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を0.78部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0063】
参考例4〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を1.04部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0064】
参考例5〕
第一のアンダークラッド層の厚みを30μmに変えた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0065】
〔実施例
第一のアンダークラッド層の厚みを7μmに変えた。それ以外は参考例4と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0066】
参考
第一のアンダークラッド層の厚みを30μmに変えた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0067】
〔実施例
第一のアンダークラッド層の厚みを7μmに変えた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0068】
参考
第二のアンダークラッド層の厚みを7μmに変えた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0069】
参考
第二のアンダークラッド層の厚みを30μmに変えた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0070】
参考
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤として、BASFジャパン社製のTINUVIN928を0.52部用いた。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0071】
〔比較例1〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤を添加しなかった。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0072】
〔比較例2〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を0.052部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0073】
〔比較例3〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を0.104部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0074】
〔比較例4〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を2.6部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0075】
〔比較例5〕
第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaの調製において、紫外線吸収剤の量を5.2部に変えた。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0076】
〔比較例6〕
第一のアンダークラッド層を形成しなかった。それ以外は参考例1と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0077】
〔比較例7〕
第二のアンダークラッド層を形成しなかった。それ以外は参考例2と同様にして、光導波路装置を作製した。
【0078】
このようにして得られた各光導波路装置について、下記の項目について下記の方法にしたがって評価した。それらの結果を後記の表1〜表4に併せて示す。
【0079】
〔第一、第二のアンダークラッド層の紫外線透過率〕
スピンコータを用いて、各実施例、参考例、比較例に用いたと同様の第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaを、厚み約500μmのシリコンウェハ上に塗工した後、ホットプレート上にて130℃×5分間の乾燥を行って有機溶剤(乳酸エチル)を乾燥させ、フィルム状態の未硬化層を形成した。そして、この未硬化層に対して、混線(ブロード光)により5000mJ(波長365nm積算)の露光を行った。そして、130℃×10分間の後加熱を行うことにより、第一のアンダークラッド層(厚み20μm)を作製した。剃刀を用いて、この層をシリコンウェハから剥離し、得られたフィルムを、紫外線透過率測定用の試料とした。測定には、紫外可視分光光度計(Jasco社製、V−670スペクトロメータ)を用い、波長360nmでの透過率(%)を求めた。また同様にして、各実施例、参考例、比較例に用いたと同様の第二のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスb(各例とも同じ)を用いて、第二のアンダークラッド層と同様のフィルムを得た後、上記と同様にして、波長360nmでの透過率(%)を求めた。
【0080】
〔露光後の第一のアンダークラッド層のタック性〕
上記第一のアンダークラッド層形成材料である感光性ワニスaを、シリコンウェハ上に塗工(プリベーク後の塗膜の厚みがおおよそ20μmとなるよう塗工)した後、ホットプレート上で150℃×5分間プリベーク(乾燥)し、混線(ブロード光)にて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行った。そして、130℃×10分間の後加熱を行うことにより、第一のアンダークラッド層を形成した。この層の表面を指触し、その状態を以下の基準に従って評価した。
○:タック性がなく、表面荒れが発生していない。
×:タック性を有しており、表面荒れが発生している。
【0081】
〔コア層パターンの評価〕
上記実施例、参考例、比較例で得られたコア層のパターン(オーバークラッド層を作製する前の段階)を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−3000N)により確認し、下記の基準に従って評価した。また、同時に、電子顕微鏡観察によって、コア層パターンの線幅を計測した。
○:コア層パターンの形状が、パターンうねりや裾引き等を有さず、矩形になっている。×:コア層パターンの形状が、矩形になっておらず、パターンうねりや裾引き等の形状異常を有している。
【0082】
〔光導波路の光伝播損失の測定〕
光源(三喜社製、850nmVCSEL光源 OP250)から発振された光を、マルチモードファイバ〔三喜社製、FFP−G120−0500(直径50μmMMF、NA=0.2)〕にて集光し、上記実施例、参考例、比較例で得られた各光導波路に入射した。そして、各光導波路から出射された光をレンズ〔清和光学製作所社製、FH14−11(倍率20、NA=0.4)〕にて集光し、光計測システム(アドバンテスト社製、オプティカルマルチパワーメーターQ8221)にて、4チャンネルをカットバック法により測定した。なお、値は、平均全損失から算出された直線損失の値である。
【0083】
〔接着強度〕
テープテストによる接着強度測定の標準的な試験方法(ASTM D3359−87)に従って、クロスハッチ接着性能を評価した。すなわち、まず、上記実施例、参考例、比較例と同様の手順で、シリコンウェハに貼付されたステンレス基板表面に、第一のアンダークラッド層と第二のアンダークラッド層とをこの順で形成した後、その表面から基板表面に達する碁盤目状の切り傷(縦横のピッチ:1mm)を形成した。そして、その表面にセロハン粘着テープを貼り付け、テープ端部を垂直に保って瞬間的に引き剥がした後、ステンレス基板と第一のアンダークラッド層との間で界面剥離したマス目数を数え、100個数当たりの剥離個数として示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
上記の結果から、実施例1,2品および参考例1品は、比較例1〜7と比較して、基板表面で乱反射してコア層の側面となる面に達する紫外線が弱められ、その結果、光伝播損失が大幅に抑制されていることがわかる。また、実施例1,2品および参考例1品は、比較例4〜6と比較して、第一のアンダークラッド層に適量の紫外線吸収剤を含有するものであるため、基板と第一のアンダークラッド層との接着強度が高く、安定した品質を維持することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によって提供される光導波路装置は、光伝播損失が小さく、基板との接着性にも優れているため、光通信、光情報処理等において、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 基板
2 第一のアンダークラッド層
3 第二のアンダークラッド層
4 コア層
図1
図2
図3