【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、注入管の先端部に取り付けられた膨縮性袋体を地盤内で徐々に拡大させるか、或いは膨縮させながら徐々に拡大させて周辺地盤を周囲に押し広げるように締固め、さらに膨縮性袋体を拡大させることによって形成された拡径空間に、流動性固結材または流動性の低い固結材或いはゲル化を伴う固結材、例えば、懸濁液、或は流動性の低い懸濁液や可塑性グラウト等を圧入して柱状に連続する固結体を形成することにより地盤を締固め強化することを特徴とするものである。
【0015】
また、従来の掘削工事における地盤改良は強度のみならず止水を要求されるため改良地盤全体の浸透固結が要求された。しかし、地盤強化、支持力増加を目的とした場合、もともと強度の高い領域では浸透固結する必要がなく、弱い層が要求される強度になれば経済的に目的を達することができる。本発明はこれらの課題も解決したものである。
【0016】
特に、地盤内で膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放して膨縮性袋体周囲のルーズな周辺地盤に生じたせん断強度の弱い領域が膨縮性袋体によって締固められることで地盤密度が増大し、さらに膨縮性袋体によって形成された空間に流動性固結材または流動性の低い固結材を圧入して柱状に連続する固結体を形成することにより、固結材の圧入に伴う地盤の隆起や沈下等を抑制しながら周辺地盤の密度増大を図ることができる。
【0017】
本出願人は、後述する実験で示すように膨縮性のあるゴムの袋体を連続的に膨縮することによる締固め効果と圧入圧力の低減による地盤隆起の低減を目出し本発明を完成したものである。本発明は、膨縮性袋体の連続的な膨縮が地盤変位を低減するため地表面や周辺構造物への影響を低減しながら地盤強化を図ることができる。
【0018】
また、複数の杭が互いに影響し合い、一体となって地盤を強化する固結柱(群杭)を形成することにより、多数の固結柱と周辺土の高密度化された地盤が一体となった地盤強化や液状化防止を図ることができる。
【0019】
また、固結材を圧入する際の加圧と吸引の圧力、圧入量およびそれぞれのサイクルを適切にコントロールすることにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位、周辺地盤の割裂や固結材の逸脱を防止しつつ、連続的かつ効率的に地盤の締固めを行うことができ、また固結体間の連続性と止水性の向上を図ることができる。
【0020】
なお、固結材には、懸濁液、或は流動性の低い懸濁液、可塑性グラウトまたは流動性注入液又はゲル化を伴う注入液、弾性材、さらにはこれらを併用して使用することができる。
【0021】
膨縮性袋体は、不透水性の合成ゴム等、或いはこれらを高強度繊維で補強して用いることができ、気体(主としてエア)または流体(主として水)を圧入することにより任意の全体的に均一な大きさに膨張拡大させることができ、さらに袋体に圧入された気体または流体に加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に付与することにより、膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることができ、これにより膨縮性袋体の拡大による地盤の隆起や沈下等を抑制しつつ、周辺地盤を周囲に押しやるように効率的かつ均一に締固めることができる。
【0022】
また、膨縮性袋体を拡大させることにより形成された拡径空間に流動性固結材或いは可塑性グラウトや低流動性固結材を圧入することにより、多数の均一径の固結柱と周辺土の圧密された地盤が一体となった群杭を形成して地盤強化を図ることができる。
【0023】
また、前記拡径空間に固結材を圧入することにより均一な一定径、或いは周辺地盤の密度に対応した所定径の固結柱が形成されるため、その改良地盤の強度は固結注入強度にも算入できるため固結柱による改良率は少なくてすみ極めて経済的でかつ施工が容易な地盤強化が可能になる。なぜならば、固結柱間の密度の増加と固結柱の強度を加算した複合地盤の強度の設定が可能になるからである。
【0024】
また、地盤強度の劣る部分は圧縮量を大きくして周辺地盤の強度を均等化して改良することができ(
図5(a),(b)参照)、さらに簡便に均一な所定径を有する多数の杭を形成し、かつ廃泥を生ずることなく地盤の支持力を均一にして液状化や建物の不動沈下等を防止することができる。
【0025】
また、本発明は、宅地や工場建設地、あるいは道路などの地盤の安定化や斜面(法面)の強化などにも適用でき、さらには既存構造物の直下や近傍の地盤改良にも適用が可能であり、地盤改良に伴う既存の建物や構造物の損傷等を回避しながら耐震補強が可能できる。
【0026】
また、工事や地震などによる液状化等で沈下した地盤の復旧工事にも適用でき、廃泥を生ずることなく、かつ一本一本が所定の杭径を有する群杭の強度と周辺地盤を強化して一体化することにより複合地盤としての改良強度を設定する地盤改良も可能である。
【0027】
また、本発明の注入管装置は、ピストンポンプ、或いは流体吸引装置、さらには流体の圧入と吸引の両方の機能を備えた装置(例えば圧入ポンプまたは吸引ポンプ、あるいは圧入と吸引の両方の機能を備えたポンプ)に接続して使用することができ、これらのポンプによって地盤内の膨縮性袋体に気体または流体を圧入することにより地盤を締固めることができ、また膨縮性袋体によって形成された拡径空間内に固結材を確実に圧入して地盤を締固め強化することができる。
【0028】
また、加圧と負圧を交互に付与して周辺地盤を締固めて高密度化すると共に、袋体によって形成された拡径空間内に固結材を圧入することにより、複数の固結柱からなる群杭を形成して地盤の高密度化を図ることができ、また複数の固結柱と周辺地盤とを一体化した地盤改良をきわめて効率的にかつ経済に実施することができる。
【0029】
地盤内に形成された拡径空間内に圧入ポンプを用いて固結材を圧入する場合、拡径空間に固結材を圧入しつつ、固結材からなる固結体にピストンの往復動によって加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に繰り返し付与して固結体を膨縮させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合が解放されると共に、間隙水圧の上昇に伴う液状化に類似した土粒子の浮遊により塊状ゲル体の周囲にせん断強度の低下した領域が形成され、当該領域に固結材が圧入されて容易に塊状ゲル体が徐々に拡大することにより周辺地盤が締固められて地盤密度の増大が図られる。
【0030】
同時に、ピストンのストロークを変えて固結材の圧入量と吸引量をコントロールすることにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位を抑制することで、周辺地盤の割裂や固結材の逸脱を防止しながら地盤の締固めを確実に行うことができ、さらに固結体間の連続性と止水性の向上を図ることができる。
【0031】
すなわち、本発明は、単に流動性固結材を地盤内に均等浸透させたり、或は脈状浸透させて地盤を固結強化する薬液注入工法とは異なり、地盤内で固結材そのものからなる塊状ゲル体にピストンの往復動によって加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に繰返し付与して塊状ゲル体を膨縮させながら徐々に拡大させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放して塊状ゲル体周囲のルーズな周辺地盤の土粒子間の結合を解放することにより生じたせん断強度の弱い領域に固結材を容易に圧入し、かつ塊状ゲル体を徐々に拡大させて周辺地盤の密度増大を図り、同時にピストンのストロークを変えて固結材の圧入量と吸引量を調整することにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位をコントロールすることにより周辺地盤の割裂や注入材の逸脱を防止しながら地盤の締固めを行って地盤の高密度化と固結柱の強度を付与し、さらに固結体間の連続性と止水性の向上を図れるようにしたものである。
【0032】
本発明は、膨縮性袋体を介して周辺地盤に圧入による加圧と吸引による負圧を交互に繰り返し付与することで、周辺地盤にダイレイタンシーが生じ、かつ間隙水圧が上昇して有効応力が低下し、せん断強度が低下することにより周辺地盤が周囲に押しやられるように効率的に締固めることができて地盤の高密度が図られる。
【0033】
地盤の改良効果は、圧入力を大きくすれば、密度が高くても或は有効応力が高くても、それを圧入力で破壊してかつ吸引することによって、固結材の強度と注入量を大きくすることによって地盤を強化することができる。したがって、その地盤を破壊できる強度に対応して、かつ地盤の変位の許容範囲になるように所定の強度の地盤改良を行なうことができる(
図4参照)。
【0034】
なお、
図1は液状化しやすい地盤の粒径分布を示す。
図1から判るように薬液注入を行なっても液状化しやすい地盤にすべて浸透させることができない。特に懸濁液を用いて高強度を得ようとしても浸透し得ないことが判る。
【0035】
図2は本発明の改良効果の原理を示す。
図2(イ)は土粒子の配列の例を示す。このような地盤の土の粒径が浸透限界外だと注入液は
図2(ロ)のように脈状注入によって対象範囲外へ逸脱する。
【0036】
しかし、本発明のように膨縮性袋体の膨縮を繰り返すと(
図2(ハ))、ルーズな地盤に載荷と負荷を繰り返して間隙水圧の上昇・減少を繰り返すことによって、土粒子同士の結合が失われて液状化のように土粒子が浮き上がり(
図2(ニ))、有効応力が低下してせん断強度が低下し、ルーズな領域を生ずる。そのルーズな領域を膨縮性袋体が膨縮しながら徐々に拡大することにより締固め、さらに固結材を圧入することにより土粒子を外側に押しやる。この過程を繰り返すことによって固結体が徐々に拡大する(
図2(ホ))。このように、圧入と吸引を繰り返している間、その作用がさらに外部まで拡大する。
【0037】
勿論、圧入が充分行われ、或いは流動性固結材の固化による流動性の低下が進行するにつれ、固結材の吸引は低減するので、さらに、圧入圧と吸引圧を高くして吐出量を調整して繰り返すか、或いは次の圧入ステップに移動することになる。
【0038】
図3(イ),(ロ),(ハ)は、膨縮性袋体の膨縮によって周辺地盤が効率的に締固められる原理を図示したものである。
【0039】
注入管にピストンポンプを接続し、膨縮性袋体に気体または流体を圧入すると膨縮性袋体が膨張する(
図3(イ))。次に、膨縮性袋体内の気体または流体を一部吸引すると膨縮性袋体は一定量縮小する(
図3(ロ))。同時に膨縮性袋体周辺の地盤の土粒子間の結合が解放されると共に、間隙水圧の上昇に伴う液状化に類似した土粒子の浮遊により膨縮性袋体周囲の地盤の有効応力が低下し、地盤のせん断強度が失われる(
図3(ロ))。
【0040】
したがって、ピストンの往復動によって膨縮性袋体内の気体または流体に加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に付与して膨縮性袋体を繰り返し膨縮させながら徐々に拡大させることにより周辺地盤の高密度化を図ることができる(
図3(ハ)参照)。
【0041】
膨縮性袋体を膨縮させることによる空間の拡張の効果は上述した通りであるが、袋体で形成された後の空間の注入材の挙動は、注入材の特性によって異なり、注入材が低流動性の場合や可塑状固結材の場合は、固結材の空間への圧入によって固結体そのものの柱状体が大きく形成される。この場合、圧入と吸引を繰り返せばその固結体そのものは拡大して大きな固結柱が形成される。一方、注入材の流動性が大きい場合はそのまま圧入し続けたら注入材は地盤の弱い層や地表面に逸脱してしまうが、圧入と吸入を繰り返した場合
図2(ニ)の状態の土粒子と混じりあって、土中で注入液と土粒子の混合固結物が形成される。
【0042】
このようにすれば注入液が注入対象領域に逸脱することはなく、また注入液が土粒子間浸透しえないような細粒土も固結することができる。勿論、地盤隆起もコントロールすることができる。
【0043】
以下に、膨縮性袋体による繰り返し静的締固めの原理の実験を示す。これによる固結材の適切な注入量と吸出量の関係や圧入工法の注入圧力とその圧力時における注入体積の関係を知ることができる(
図6〜
図9参照)。
【0044】
1.球状載荷による静的締固め実験
1-1.実験概要
本実験装置は定流量型ポンプおよび測定セルで構成されており、定流量型ポンプはチューブを介して測定セルに水を注入・抽出することが可能である。水の注入・抽出速度は1.4cc/min〜75cc/minの範囲で調節することができ、吐出口に設置した水圧計により注入圧力を計測する。本実験では75cc/minで注入・抽出を行った。測定セルの先端には球状に載荷できるように球状のゴムゾンデを採用している。
【0045】
模型地盤の作製は,まずステンレス製のドラム缶(D=45cm,H=85cm)に地盤高12cmまで珪砂7号を投入,冶具を用いて測定セルを上向きに設置,その後は空中落下法により砂の投入を行った。模型地盤の相対密度はDr=約60%である。
【0046】
また、地盤内での挙動を把握するために土圧計と繰返し圧入が地表面へ与える影響を確認するためにレーザー変位計を土槽上部中央に設置して地表面隆起を計測した。
図6に実験の概略図を示す。また、収縮したゴムゾンデが球状に膨らむまでの過程を排除するため、地盤作製前にゴムゾンデに水の初期注入を5分間行い、ゴムゾンデが直径10cm程度の球になるように調整した。
【0047】
1-2.実験結果・考察
今回の実験では現行の静的締固め工法を模擬した連続注入と可塑状ゲル圧入工法を模擬した繰返し圧入で3Caseの実験を行った.各実験Caseを表-1に示す。また,注入中に発生する注入圧力にはゴム張力が含まれているため、実験結果からゴム張力を差し引いた。
図7に注入量とゴム張力を除した注入圧力の関係を示す。
【0048】
【表-1】
【0049】
Case1、Case3では注入量600cm
3付近で最大圧力が生じ、Case2では注入量250cm
3付近で最大圧力が生じた。
【0050】
また、すべてのCaseで注入量が250cm
3付近までは同様の圧力上昇の傾向を示したが、Case2では注入量250cm
3付近から注入圧力が低下する結果となった。これは繰返し圧入により土の剛性が低下したためと考えられる。
【0051】
図8に注入量と地表面の鉛直変位の関係を示す。Case1では注入量が250cm
3付近から変位の傾きが大きくなり実験終了時には地表面の隆起量は約30mmとなった。Case2、Case3では注入量600cm
3付近までは隆起量と沈下量がほぼ一定で変化しているが、徐々に隆起量が大きくなり増加傾向を示した。また、同注入体積で比較して繰返し効果による隆起抑制が確認された。
【0052】
図9に示した実験前後の地表面の断面図より、土槽中央部の改良体直上だけが隆起することはなく地表面全体で隆起が確認された。この現象はこの深度においてゴムゾンデ径に比して土槽径が小さく、土槽境界の影響を受けたためと考えられる。
【0053】
1-3.まとめ
今回の実験から静的締固め工法における繰返し圧入は地表面の隆起抑制に効果的であることが示唆された。また、細かいサイクルで注入・抽出を行うものが地表面の隆起量が小さく,既設構造物の直下・直近での施工に適していると考えられる。
本発明における注入管の例を以下に示す(
図10〜
図18参照)。
【0054】
注入管は先端部に膨縮性袋体を設けて袋体への流体流路と注入液の流入流路を有するものを用いる。例えば、注入管は外管と内管からなり、内管は先端に吐出口を有し、それより上部に地盤を押し広げ用袋パッカーを装着し、かつ内管が外管内を上下に移動することができる。或いは、内管が突出したまま外管が上方に移動することができる。
【0055】
また特に、既設構造物の直下や橋脚の下、または地下構造物の直下または周辺に不透水性の膨縮性袋体を設置し、その中に固結材として弾性材を圧入して周辺地盤を押し広げるように徐々に拡大することにより、地震等の振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与する柱状、版状または球状の免震体を形成することができる。なお、固結材の代替材として気体または流体を圧入することもできる。
【0056】
また、既設構造物周囲の地盤が支持地盤として比較的良好な場合は、膨縮性袋体内への固結材の圧入ではなく、膨縮性袋体を膨張させることにより地盤中に形成された拡径空間に固結材として弾性材を直接圧入して免震体を形成してもよい。ただし、この場合は気体や流体の使用は避けるのが望ましい。 本発明における固結材として、弾性材を用いることができる。弾性材の例としては、本発明者による先願発明特許第3934103号の例にあるようにポリビニールアルコールとグリオキザールとシリカ化合物を有効成分とし、配合時には液状であるが、配合後は弾力性ゲル化物を形成する組成物や、同じく本発明者の先願発明である特開2007-154090号公報に記載にあるようにウレタンポリマーと水を有効成分とし、配合時には液状であるが配合後は弾性体となる組成物などがあるが、上記膨縮性袋体に流動性のある状態で圧入し、不透水性膨縮性袋体の中に密封されて弾力性を保持できるものならば適用できる。
【0057】
不透水性膨縮性袋体の中に密封して弾力性を示す弾性材料として上記固結材のほかに、気体や液体、懸濁液、粘土などのチキソトロピックな性質を有する非固結性材料を用いてもよい。
【0058】
これらは免震材として作用し、地震などの振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与すると考えられる。また、上記弾性材にはセメント、スラグ、フライアッシュ、粘土、土砂、シリカ粒子、人口骨材、発泡粒体、タイヤ等を粉砕した人工弾性粉状体、ホワイトカーボン等を混入して用いることもでき、また、これらの弾性材を上記不透水性膨縮性袋体の中に圧入しても、或いは上記不透水性膨縮性袋体で拡径した空間に圧入してもよいことは勿論である。
【0059】
(実験2)
使用材料
使用材料はウレタンボリマーと水とを有効成分として含有する地盤注入材であって、ウレタンポリマーの含有量を20重量%未満とすることにより、未硬化状態では低粘性の液状を呈し、硬化すると粘弾性で止水性に優れ、かつ耐久性にも優れ、配合時には液状で流動性のあるウレタンポリマーであることが望ましい。
【0060】
試験に用いたウレタンプレポリマーは、一般式
R[OR
1nOH]
P
(式中、Rは多面アルコール残基を示し、[OR
1]はオキシエチレン基と、炭素数3〜4のアルキレン基を有するオキシアルキレン基とからなるポリオキシアルキレン鎖を示す。ただし、[OR
1]におけるオキシエチレン基の割合は、分子量20〜100重量%を占める。nはオキシアルキレン基の重合度を示す数で、水酸基当量が170〜6000となるに相当する数を示し、pは2〜8の数を示す。)で示されるポリエーテルポリオールの一種または複数種をポリイソシアネートと反応させて得られる末端NCO基含有量が1〜12%のウレタンプレポリマーである。
【0061】
図22に示される振動試験槽16を用いて振動試験を行った。高さ50cm、幅50cm、奥行き50cmの大きさの振動試験槽16を用意し、この中に海砂17を相対密度60%となるように敷き、海砂17中に免震体18を設置した。
【0062】
免震体18は高さ10cm、幅20cm、奥行き20cmの型枠の中央に加速度計19および変位計20を配置し、以下の配合例の注入材を充填し、その後1日静止し、脱型して作成した。
(配合)
ウレタンポリマー 100g
水 900ml
ゲルタイム 5分
体積変化 102%
この試験槽16に変位計20および加速度計19を用い、水平加速度150Gal、最大変位2cmで20秒間振動を加えて振動試験を行った。免震体18中の加速度計19の示す応答加速度、変位計20の示す応答変位を測定した。また比較のために、免震体18を埋設しない砂層における同位置の応答加速度、応答変位も測定した。
【0063】
免震体18がないときの海砂17中の応答加速度のグラフを
図21に示し、海砂17中に免震体18を設けたときの応答加速度のグラフを
図22に示す。
【0064】
免震体18がない海砂17中では、
図21に示すように、水平加速度150Gal、最大変位2cmの振動を与えることにより、応答加速度が約300Galとなり、応答変位は最大3cmとなった。
【0065】
一方、免震体18を設けた場合、同振動により免震体18内では
図22に示されるように、応答加速度が約130Gal以下、応答変位は最大1.5cmと軽減された。このことから、既設の構造物直下や橋脚の下、または地下構造物の周辺に本発明の固結材を注入して免震体を設けることにより地震等の振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与するものと考えられる。
【0066】
さらに、試験測定後の免震体18は破損することなく振動を与える前の形状を保持していたことから、繰り返し荷重を受ける環境でも利用できる。