(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395253
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
B29C 49/20 20060101AFI20180913BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20180913BHJP
B60K 15/077 20060101ALI20180913BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B29C49/20
B29C49/04
B60K15/077 C
B60K15/03 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-160952(P2014-160952)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-36956(P2016-36956A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】鷲山 泰之
(72)【発明者】
【氏名】三輪 康治
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−060096(JP,A)
【文献】
特開2011−148337(JP,A)
【文献】
特開2016−128277(JP,A)
【文献】
特開2015−058715(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/122747(WO,A1)
【文献】
特開2010−168022(JP,A)
【文献】
特開平04−212828(JP,A)
【文献】
特開平01−301227(JP,A)
【文献】
特開平06−143396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造において、
上記内蔵部品には、上記燃料タンクの外壁の内面に融着して上記内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、該取付部材は、上記燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、該当接部は、上記燃料タンクの外壁の内面に溶着される平面状の取付部材溶着面を有し、
上記燃料タンクの外壁は、上記燃料タンク内側に突出する外壁内面突出部が形成され、上記外壁内面突出部の上記取付部材溶着面と対向する面は、平面状の外壁内面溶着面が形成され、
上記外壁内面溶着面は、上記取付部材溶着面よりも小さく形成されるとともに、上記取付部材溶着面と上記外壁内面溶着面が溶着され、上記取付部材溶着面が上記外壁内面溶着面よりも張出すようにしたことを特徴とする自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造。
【請求項2】
上記外壁内面溶着面は、上記燃料タンクの外壁の他の部分よりも肉厚を薄く形成された請求項1に記載の自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造。
【請求項3】
上記内蔵部品を取付ける上記取付部材は、上記燃料タンクの外壁の内側の上面と下面にそれぞれ取付けられ、上記取付部材が取付けられた後に、上記内蔵部品が上記燃料タンクの外壁の内側の上面と下面に取付けられた上記取付部材に取付けられる請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造。
【請求項4】
上記内蔵部品を取付ける上記取付部材又は上記取付部材が取付けられた上記内蔵部品の上記取付部材に接した部分に筒状の取付側壁を形成し、該取付側壁は、取付側壁孔が形成され、該取付側壁孔には、上記燃料タンク内の流体が流入可能に形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造。
【請求項5】
上記取付側壁孔は、衝撃により変形可能に形成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクの内蔵部品の取付構造に関するものであり、特に、熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形することにより外壁が形成され、内部に内蔵部品を有する燃料タンクの内蔵部品の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
一方、ブロー成形方法においても、燃料タンクの内部にバルブ類や燃料の流動音を抑制するためのバッフルプレート等の内蔵部品を設けることが求められている。
そこで、内蔵部品を樹脂枠にセットして、その樹脂枠を金型内にセットして、ブロー成形して樹脂枠を燃料タンクの外壁の内周面に固着して内蔵部品を燃料タンク内部に取付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしこの場合には、内蔵部品を樹脂枠にセットして燃料タンクの外壁の内周面に固着するため、成形後に樹脂枠を切除する手間が必要であり、小さい内蔵部品では、樹脂枠が大きくなり、重量が増加する場合がある。
【0005】
また、燃料タンクの内部に内蔵部品を設けるには、
図13〜
図14に示すように行っている場合もある(例えば、特許文献2参照。)。
それは、まず、
図13に示すように、パリソン108がブロー成形金型140内に入る前に内蔵部品120を支持棒141に載せて、ブロー成形金型140を開いて、その内部に位置させる。その後、ブロー成形金型140を開いたままで、パリソン108を下降させて、パリソン108の内部に内蔵部品120が位置するようにする。
【0006】
その後、
図14に示すように、ブロー成形金型140を閉じる前に、ブロー成形金型140の両側から押圧ピン142を出し、パリソン108を押圧して、パリソン108を内蔵部品120の側端に押付ける。このとき、パリソン108の内面はまだ固化していないので、パリソン108と内蔵部品120の側端は、融着することができる。
そして、支持棒141を下降させて、ブロー成形金型140を閉じて、空気を吹き込み、ブロー成形を行う。
【0007】
この場合は、内蔵部品120の先端に形成したパリソン108と当接する取付部材溶着面133とパリソン108の内面とは単に接触するのみで、パリソン108の内部に取付部材溶着面133が侵入せず、接着性が弱く、充分に融着強度が大きくなく、燃料の振動や、燃料タンクの膨張等により、剥離する恐れがあった。
【0008】
そのため、
図15に示すように、内蔵部品の円筒状の側壁231を有する取付部材230の取付部材溶着面233に複数の円柱状の当接ピン234を形成し、
図16に示すように、パリソン208の内面に押圧し、溶着したものが考えられている(例えば、特許文献3参照。)。
このとき、低温衝撃性を考慮して、内蔵部品の取付部材230に係る応力が低くなるように、取付部材溶着面233とパリソン208との取付部材溶着面積を広くすることが必要となっている。
【0009】
また、取付部材230とパリソン208の溶着強度を確保するため、取付部材溶着面233をパリソン208に強く押圧した場合には、
図16に示すように、パリソン208から溶融樹脂であるノッチ209がはみ出すように形成される。この場合には、取付部材230の溶着部分に衝撃が加わった場合には、ノッチ209の部分に応力が集中して、燃料タンクの外壁に応力がかかる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−301227号公報
【特許文献2】特開平6−143396号公報
【特許文献3】特開2013−060096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、本発明は、ブロー成形時に、内蔵部品がパリソンに対してずれることがなく、燃料タンク内の所定の位置に内蔵部品を取付けることができる燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造において、
内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、当接部は、燃料タンクの外壁の内面に溶着される平面状の取付部材溶着面を有し、
燃料タンクの外壁は、燃料タンク内側に突出する外壁内面突出部が形成され、外壁内面突出部の取付部材溶着面と対向する面は、平面状の外壁内面溶着面が形成され、
外壁内面溶着面は、取付部材溶着面よりも小さく形成されるとともに、取付部材溶着面と外壁内面溶着面が溶着され、取付部材溶着面が外壁内面溶着面よりも張出すようにしたことを特徴とする自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造である。
【0013】
請求項1の本発明では、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造において、内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられている。このため、取付部材により内蔵部品を複数個所で燃料タンクの外壁の内面に融着して固定することができ、安定して取り付けることができる。
【0014】
取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、当接部は、燃料タンクの外壁の内面に溶着される平面状の取付部材溶着面を有している。このため、取付部材の取付部材溶着面と、溶融したパリソンである燃料タンクの外壁の内面が融着し、取付部材を強固に燃料タンクの外壁と固着することができる。
【0015】
燃料タンクの外壁は、燃料タンク内側に突出する外壁内面突出部が形成され、外壁内面突出部の取付部材溶着面と対向する面は、平面状の外壁内面溶着面が形成されている。このため、外壁内面突出部が燃料タンクの他の外壁よりも剛性が向上して、外部からの衝撃を吸収できるとともに、平面状の外壁内面溶着面に取付部材の取付部材溶着面が強固に融着することができる。
【0016】
外壁内面溶着面は、取付部材溶着面よりも小さく形成されるとともに、取付部材溶着面と外壁内面溶着面が溶着され、取付部材溶着面が外壁内面溶着面よりも張出すようにした。このため、取付部材溶着面を外壁内面溶着面に溶着したときに、溶着部分の溶融樹脂のノッチが取付部材溶着面側に生じて、外部からの低温衝撃が加わっても、取付部材側に応力がかかり、燃料タンクの外壁に損傷が生じることがない。
【0017】
請求項2の本発明は、外壁内面溶着面は、燃料タンクの外壁の他の部分よりも肉厚を薄く形成された自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造である。
【0018】
請求項2の本発明では、外壁内面溶着面は、燃料タンクの外壁の他の部分よりも肉厚を薄く形成されたため、外壁内面溶着面と取付部材溶着面の肉厚を同じにすることができ、外部からの衝撃が加わっても、応力の緩和を図ることができる。
【0019】
請求項3の本発明は、内蔵部品を取付ける取付部材は、燃料タンクの外壁の内側の上面と下面にそれぞれ取付けられ、取付部材が取付けられた後に、内蔵部品が燃料タンクの外壁の内側の上面と下面に取付けられた取付部材に取付けられる自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造である。
【0020】
請求項3の本発明では、内蔵部品を取付ける取付部材は、燃料タンクの外壁の内側の上面と下面にそれぞれ取付けられ、取付部材が取付けられた後に、内蔵部品が燃料タンクの外壁の内側の上面と下面に取付けられた取付部材に取付けられる。このため、内蔵部品により、燃料タンクの外壁の内側の上面と下面を支えることができ、燃料タンクの外壁の剛性を向上させることができるとともに、燃料タンクの外壁の過度の膨張と収縮を防ぐことができる。
【0021】
請求項4の本発明は、内蔵部品を取付ける取付部材又は取付部材が取付けられた内蔵部品の取付部材に
接した部分に筒状の取付側壁を形成し、取付側壁は、取付側壁孔が形成され、取付側壁孔には、燃料タンク内の流体が流入可能に形成された自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造である。
【0022】
請求項4の本発明では、内蔵部品を取付ける取付部材又は取付部材が取付けられた内蔵部品の取付部材に
接した部分に筒状の取付側壁を形成し、取付側壁は、取付側壁孔が形成され、取付側壁孔には、燃料タンク内の流体が流入可能に形成された。このため、複数の取付部材を取付けても、燃料タンクの燃料の収容容量を減少させることがない。
【0023】
請求項5の本発明は、取付側壁孔は、衝撃により変形可能に形成された自動車用燃料タンクの内蔵部品の取付構造である。
【0024】
請求項5の本発明では、取付側壁孔は、衝撃により変形可能に形成されたため、燃料タンクの外壁に外部からの衝撃が加わっても、取付側壁孔の変形により応力の緩和を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
燃料タンクの外壁は、燃料タンク内側に突出する外壁内面突出部が形成され、外壁内面突出部の取付部材溶着面と対向する面は、平面状の外壁内面溶着面が形成されているため、外壁内面突出部が燃料タンクの他の外壁よりも剛性が向上して、外部からの衝撃を吸収できるとともに、平面状の外壁内面溶着面に取付部材の取付部材溶着面が強固に融着することができる。
【0026】
外壁内面溶着面は、取付部材溶着面よりも小さく形成されるとともに、取付部材溶着面と外壁内面溶着面が溶着され、取付部材溶着面が外壁内面溶着面よりも張り出すようにしたため、取付部材溶着面を外壁内面溶着面に溶着したときに、溶着部分の溶融樹脂のノッチが取付部材溶着面側に生じて、外部からの低温衝撃が加わっても、燃料タンクの外壁に損傷が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【
図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の燃料タンクの内部に取付けられる内蔵部品の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態の取付部材の平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態の取付部材の断面図であり、
図4のA−A線に沿った断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態の取付部材の底面図である。
【
図7】本発明の実施の形態の取付部材の取付部材溶着面とパリソンの溶着時の断面図である。
【
図8】本発明の他の実施の形態の取付部材の取付部材溶着面とパリソンの溶着時の断面図である。
【
図9】本発明の他の実施の形態の取付部材の斜視図である。
【
図10】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を開いて、内蔵部品をパリソンに挿入した状態の断面図である。
【
図11】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせ、スライドピンで内蔵部品を挟持した状態の断面図である。
【
図12】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【
図13】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を開いた状態の断面図である。
【
図14】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【
図16】従来の取付部材の取付部材溶着面とパリソンの溶着時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、
図1〜
図12に基づき説明する。
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、
図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。また、燃料タンク1の内部には、
図3に示すような、内蔵部品20が取付けられている。
【0029】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。取付用孔3ではなく、燃料タンク1の外周にベルトをかけてそのベルトにより燃料タンク1を車体に取り付けることもできる。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0030】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁10は、例えば、
図2に示すように、外側から順に表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。後述する内蔵部品20は、内部本体層16に溶着される。内蔵部品20と内部本体層16は、溶着しやすい材料、例えば同じ種類の材料を使用することが好ましい。また、外壁10は、1層又は6層以外の多層とすることができる。
【0031】
ブロー成形においては、円筒状のパリソン8の内部に内蔵部品20を挿入する場合や、円筒状のパリソン8を切り開いて平板状にして、ブロー成形金型40を開いて、両側のキャビティー面に取付けて、その平板状のパリソン8に内蔵部品20を取付ける場合もある。
ブロー成形のパリソン8は、上記の6層から構成されるパリソン8が使用される。6層以上の層構成を有するパリソン8を使用することもできる。また、表皮層11は外部本体層12に再生部材や、フィラー等を混入する場合に使用されるが、表皮層11を省略することもできる。さらに、剛性と耐燃料油性を有する材料を使用すれば、1層構成のパリソンを使用することもできる。
【0032】
表皮層11、外部本体層12は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。外部本体層12が、無機フィラーを含有した場合には、外部本体層12の表面を覆うため、表皮層11が使用され、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0033】
燃料タンク1の内部には、例えば、
図3に示す内蔵部品20が取付けられている。内蔵部品20の取付け方法については後述する。
次に、
図3に基づき、内蔵部品20について説明する。
内蔵部品20は、燃料タンク1のタンク外壁の内面に融着して、上下を支える複数の取付部材30が設けられている。取付部材30については後述する。また、取付部材30は、内蔵部品20に取付けらずに、長い取付部材30が直接燃料タンク1のタンク外壁の内面の上面と下面に取付けられることもできる。
【0034】
内蔵部品20には、燃料タンク1の外壁10の内面に融着して内蔵部品20を取付ける後述する取付部材30が複数設けられている。このため、内蔵部品20を複数個所で燃料タンク1の外壁10の内面に融着して固定することができ、安定して取り付けることができる。
【0035】
取付部材30の燃料タンク1の外壁10の内面に当接する先端部分には、取付部材溶着面33が取付けられている。本実施の形態では、取付部材溶着面33は取付部材30と一体に形成されているが、取付部材30の先端に取付部材30とは別体で形成してもよい。
内蔵部品20の上面21に取付けられた取付部材30の取付部材溶着面33は、ブロー成形時に燃料タンク1の外壁10の上側壁を形成するパリソン8の内面に溶着して、内蔵部品20を燃料タンク1の内部に取付けることができる。また、内蔵部品20の上面孔部24における下に向けて形成された取付部材30の取付部材溶着面33は、外壁10の底壁側に溶着される。
【0036】
内蔵部品20は、ポリアセタール、高密度ポリエチレン(HDPE)等の耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂で形成することができる。これにより燃料タンク1の強度を向上させることができるとともに、燃料タンク1の内部に取付けられても、燃料油による膨潤等で剛性が低下することがない。
【0037】
本実施の形態の内蔵部品20は、
図3に示すように、内蔵部品20は、中央部が空間を有して、略四角形状に周囲が連続したリング状に形成されている。なお、本件発明においては、
図3に示す形態のほか、柱部材を梁部材で連結した内蔵部品20を使用することもできる。
【0038】
本実施の形態の内蔵部品20のリング状の部分は、上側の面が略平面上に形成された上面21と、上面21から外周に略直角に垂下された外側面22と、上面21から中央部の空間側に略直角に垂下された内側面23とからなる形状に形成され、上面21、外側面22と内側面23に囲まれた内部は、断面コ字形の下側面がない中空状に形成されている。このため、内蔵部品20は全体として、重量を軽くすることができ、車両の軽量化に貢献できるとともに、柔軟に変形することができる。上面21、外側面22と内側面23は、燃料タンク1のコーナー部や短辺側では、一部の幅が狭く形成されている。
【0039】
上面21には、上述の取付部材30が複数個形成されているとともに、凹んだ上面孔部24が複数個形成されている。上面孔部24の底には取付部材30と取付部材溶着面33を形成することができる。上述のとおり、この取付部材溶着面33は、外壁10の下側内面と融着して内蔵部品20を燃料タンク1のタンク内部に取付けることができる。これにより、燃料タンク1の内圧の変化により、燃料タンク1の外壁10が膨張や伸縮しても、燃料タンク1の外壁10を保持することができる。間t、燃料タンク1の外部から衝撃が加わっても、外壁10を保持することができる。
【0040】
外側面22と内側面23は、内蔵部品20の長辺側において、長手方向に長く形成されている。このため、外側面22と内側面23は、自動車走行時の燃料タンク1内の燃料の移動方向に対して直交する方向に形成されたため、外側面22と内側面23により走行時に燃料タンク1内の燃料が移動したり波打ったりしても、燃料の過度な動きを防止して、燃料タンク1内部の燃料油の波うち音の発生を防止することができるとともに、異音の発生を防止できる。
【0041】
つぎに、取付部材30について、
図4〜9に基づいて説明する。
取付部材30は、内蔵部品20と一体に形成されてもよく、また、内蔵部品20と別体で形成してもよい。本実施の形態では、取付部材30を別体で形成したものを例にとり説明する。
取付部材30は、
図4〜
図9に示すように円筒状又は四角形の筒状に形成する場合や、平板状に形成する場合がある。
本実施の形態では、取付部材30は、円筒状の筒状に形成し、
図4は、取付部材30の平面図、
図5は取付部材30の断面図、
図6は取付部材30の底面図である。
【0042】
取付部材30は、内蔵部品20と連結又は連続する取付部材側壁31と、燃料タンク1の外壁10の内面に当接する当接部32から形成される。
本実施の形態では、取付部材30は内蔵部品20と別体で形成されている。この場合は、取付部材側壁31は、内蔵部品20の上面21の形状に合わせて円筒状に形成され、内部が中空状である。
【0043】
図9に示すように、取付部材30を内蔵部品20とは別に長く円筒状に形成し、取付部材30の上面を燃料タンク1の外壁10の内面の上面に溶着して、取付部材30の下面を燃料タンク1の外壁10の内面の下面に溶着することができる。
この場合には、取付部材30の内部が中空状で、
図9に示すように、取付部材側壁31に取付部材側壁孔35を形成することができる。取付部材側壁孔35は、燃料タンク1内の燃料等の流体が流入可能に形成されている。このため、複数の取付部材30を取付けても、燃料タンク1の燃料の収容容量を減少させることがない。
取付部材側壁孔35は、取付部材側壁31の上下に2列にそれぞれ複数個形成することができる。この場合には、上側の取付部材側壁孔35は、空気抜きの作用をして、下側の取付部材側壁孔35は、液体が出入りすることができる。
【0044】
取付部材側壁孔35は、燃料タンク1の外部からの衝撃により変形可能に形成することが好ましい。この場合には、燃料タンク1の外壁10に外部からの衝撃が加わっても、取付部材側壁孔35の変形により、衝撃の応力の緩和を図ることができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、取付部材側壁孔35を取付部材側壁31に形成したが、取付部材30が平板状の場合には、内蔵部品20の取付部材30に近接した部分に、筒状の取付側壁を形成し、取付側壁に取付側壁孔を形成することができる。この場合には、取付側壁孔から燃料等の流体が流入可能に形成されている。
【0046】
取付部材側壁31の下端には、係止部38が形成され、取付部材側壁31が内蔵部品20の上面21の先端に嵌め込まれたときに、
図5と
図6に示すように、係止部38の爪が上面21の先端部に形成された凹部又は孔に係合されて、取付部材30が強固に取付けられる。取付部材30は、燃料タンク1の外壁10と融着するために、外壁10の材料と同種類の材料を使用する。取付部材30は、例えば内蔵部品20と同様に、ポリアセタール、高密度ポリエチレン(HDPE)等の耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂で形成することができる。
【0047】
なお、取付部材30が内蔵部品20と一体的に形成される場合は、取付部材側壁31は上面21と連続して形成される。
当接部32は、燃料タンク1の外壁10の内面に対向する円形の取付部材溶着面33と、取付部材溶着面33から燃料タンク1の外壁10に向けて突出する複数の当接ピン34が形成されている。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成される。本実施の形態では、当接ピン34は円柱状に形成されている。当接ピン34は円錐台状に形成することも、楕円柱状や断面が楕円で円錐台状に形成することもできる。
なお、取付部材溶着面33に当接ピン34を形成せずに、平板状に形成することもできる。
【0048】
さらに、当接ピン34の取付部材溶着面33からの高さは、燃料タンク1の外壁10の肉厚よりも小さく形成されている。このため、取付部材溶着面33が燃料タンク1の外壁10の内面に密着して、当接ピン34が燃料タンク1の外壁10の内部に侵入する寸法の最大値を制御することができるともに、当接ピン34が燃料タンク1の外壁10の内部に侵入して、強固に燃料タンク1の外壁10と融着することができる。当接ピン34の周囲には当接ピン溝部36を設けることができる。これにより、当接ピン34の柔軟性が向上する。
【0049】
図7に示すように、燃料タンク1の外壁10は、燃料タンク1内側に突出する外壁内面突出部18が形成されている。外壁内面突出部18の取付部材溶着面33と対向する面は、平面状の外壁内面溶着面17が形成されている。このため、外壁内面突出部18は、燃料タンク1の外壁10の他の部分よりも剛性が向上して、外部からの衝撃を吸収できる。
外壁内面溶着面17は、取付部材30の取付部材溶着面33と溶着される。
【0050】
外壁内面溶着面17は、取付部材溶着面33よりも小さく形成されているとともに、取付部材溶着面33が外壁内面溶着面17よりも横方向の外周側にスペースができるように形成されている。このため、取付部材溶着面33を外壁内面溶着面17に溶着したときに、溶着部分から押出されて予行方向にはみ出した溶融はみ出し部37が取付部材溶着面33側に生じて、外部からの低温衝撃が加わっても、燃料タンク1の外壁10に損傷が生じることがない。
【0051】
なお、
図8に示すように、外壁内面突出部18の外壁内面溶着面17は、燃料タンクの外壁10の他の部分よりも肉厚を薄く形成することができる。この場合には、外壁内面溶着面17と取付部材溶着面33の肉厚を同じにすることができ、外部からの衝撃が加わっても、燃料タンク1の外壁10への応力の緩和を図ることができる。
【0052】
次に、ブロー成形による本件発明の燃料タンク1の製造方法を、
図10〜
図12に基づき説明する。
まず、
図10に示すように、内蔵部品20を支持棒41に保持して、ブロー成形金型40が開いた内部に位置させる。その後、パリソン8を下降させて、内蔵部品20をパリソン8の内部に位置させる。
【0053】
そして、
図11に示すように、第1ピンチ板43をスライドさせて、パリソン8の下端を支持棒41とともに挟持する。それとともに、ブロー成形金型40に設けられた複数の押圧ピン42をスライドさせて、パリソン8を内蔵部品20に取付けられた取付部材30と押圧ピン42で挟むように押圧する。
【0054】
そうすると、パリソン8の内面はまだ溶融状態にあるため、上述のように、取付部材30の取付部材溶着面33とパリソン8が融着することができる。このとき、内蔵部品20は、支持棒41により保持されているので、取付部材30と内蔵部品20は、燃料タンク1の外壁10の所定の位置に確実に取付けられることができる。
また、取付部材30の取付部材溶着面33を予め加熱して溶融状態として、溶着強度を向上させることができる。
【0055】
このとき、
図7に示すように、押圧ピン42を形成した場合には、押圧ピン42の押圧ピン押圧面42aに押圧ピン押圧突部42bが形成されているため、パリソン8が押圧され、燃料タンク1の外壁10には、外壁内面突出部18が形成される。外壁内面突出部18の外壁内面溶着面17に取付部材30の取付部材溶着面33が溶着する。
【0056】
その後、
図12に示すように、支持棒41を下降させてブロー成形金型40から抜き、第2ピンチ板44をスライドさせてパリソン8を閉じるとともに、ブロー成形金型40を閉じて、スライドカッター46でパリソン8を切断する。ブロー成形金型40を閉じるときには、押圧ピン42は、そのままパリソン8を押圧続ける。これにより、内蔵部品20を所定位置に保持し続けることができる。
【0057】
そして、エアノズル45からパリソン8の内部に空気を吹き込み、パリソン8の外面をブロー成形金型40に押圧して、燃料タンク1を形成する。このとき、押圧ピン42の先端面とブロー成形金型40のキャビティー内面とは同一平面になることができる。
その後、ブロー成形金型40を開き、燃料タンク1を取出す。
【符号の説明】
【0058】
1 燃料タンク
8 パリソン
10 外壁
17 外壁内面融着部
18 外壁内面突出部
20 内蔵部品
30 取付部材
32 当接部
33 取付部材溶着面
40 ブロー成形金型