(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の消火システムに於いて、前記制御部は、前記火災検出部で検出した火災検出方向に前記放水銃を放水した状態で、前記ビーム走査装置を動作して前記放水銃から放水により前記防護区域に散布する水膜にビーム光を投射し、前記放水中心線を通る垂直面を表示させることを特徴とする消火システム。
【背景技術】
【0002】
従来、体育館などの比較的広く天井の高い空間を防護区画として消火用水の放水により消火する放水銃装置として例えば
図14に示すものが知られている。
【0003】
図14に示すように、放水銃装置200は、体育館などの床面を見渡すことのできる例えば4メートル程度の高さの壁面に装置本体202を埋込み設置しており、装置本体202の壁面に露出した前パネルの上部に火災検出部204を設け、その下に放水銃206を設けている。
【0004】
火災検出部204は、防護区画に対する赤外線検出素子からの検出光軸を、検出部本体の縦方向に形成した検出窓の範囲で垂直方向に光学的に走査すると共に火災検出部204を水平方向に回動走査して防護区画の火災を監視している。
【0005】
また放水銃206は定常状態では旋回カバーの裏側に位置して装置本体202内に収納しており、火災検出部204により防護区画の火災による火源210からの赤外線を検知して火災を断定すると、火源210の方向を特定し、放水銃206を前方に旋回して火源210の方向に向け、自動モードの場合は所定の自動放水条件が確定した場合に放水パターン208で示す放水を開始し、また手動モードの場合は、放水起動スイッチを操作した場合に放水を開始するようにしている。
【0006】
この場合の放水銃206の旋回制御は、水平走査していた火災検出部204を、火源210を検出した水平方向の位置に停止して垂直走査し、放水銃206を火災検出部204で火源210を検出した水平走査角を目標値とし、放水銃206に設けた旋回角度検出器(ロータリーエンコーダ)で検出した旋回角度との偏差を零とするようにフィートバック制御することで、放水銃206を火源210の検出方向に向けている。
【0007】
ところで、火災検出部204は、通常監視状態では、正面側の例えば180°の水平走査範囲を例えば1°単位にステップ移動しながら、各ステップ移動毎に下向き0°から水平となる90°の垂直走査をしながら火災を監視している。
【0008】
このため放水銃装置200の設置工事の際には、防護区画の壁面に放水銃装置200を設置した後に、放水銃206を手動操作で旋回し、例えば放水銃206を壁面に直交した正面方向、即ち火災検出部202による水平走査角が半分の90°となる方向に向け、この状態で放水銃206に設けた旋回角度検出器の検出角度を90°に設定する調整作業を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の放水銃の旋回検出角度を調整する作業にあっては、作業者が放水銃装置200から放水距離だけ離れた正面の位置に立ち、手動操作により旋回している放水銃206が自分の方を向いた場合に合図をして止めて正面方向に向いたとしており、人為的な判断であることから精度が悪く、放水銃206を正しく正面方向に向けることができず、この状態で放水銃206に設けた旋回角度検出器の検出角度を90°に設定することから、放水銃206の旋回角度と火災検出部204による火災の検出角度との誤差が大きくなる問題がある。
【0011】
本発明は、放水銃の防護区画に対する放水中心線の向きを正確に視認可能として水平回りにおける放水銃の向きと火災検出部の検出角度との一致調整を可能とする消火システム及び放水銃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火システム)
本発明は、
防護区画を二次元走査して火災を検出する火災検出装置と、
放水方向を所定の上向き角度に固定した放水銃を水平周りに旋回自在に支持した放水銃装置と、
火災検出部により検出した火災検出方向に向くように放水銃を旋回駆動して放水させる制御部と、
を備えた消火システムに於いて、
放水銃装置に、放水銃の放水中心線に水平方向で一致し、垂直方向で回転走査するビーム光を防護区画に投射するビーム走査装置を設け、
制御部により所定の動作状態でビーム走査装置を駆動して防護区画にビーム光を投射し、放水中心線に相当する輝線を表示させることを特徴とする。
【0013】
(放水中のビーム光走査)
制御部は、火災検出部で検出した火災検出方向に放水銃を放水した状態で、ビーム走査装置を動作して放水銃から放水により防護区域に散布する水膜にビーム光を投射し、放水中心線を通る垂直面を表示させる。
【0014】
(駆動源によるビーム回転走査)
ビーム走査装置は、
放水銃の下側に取付固定され、放水銃の放水中心線を通る垂直面の方向に開口窓を形成した装置筐体と、
装置筐体の開口窓に相対した内部に水平軸回りに回転自在に配置し、水平方向から入射したビーム光を反射面により垂直方向に反射して開口窓から出射する光学反射部材と、
装置筐体内に設けられ、光学反射部材の反射面にビーム光を水平方向から入射するビーム光源部と、
装置筐体内に設けられ、光学反射部材を所定速度で回転駆動して開口窓から出射するビーム光を垂直周りに回転走査させる駆動部と、
を設ける。
【0015】
(手動操作によるビーム回転)
ビーム走査装置は、
放水銃の下側に取付固定され、放水銃の放水中心線を通る垂直面の方向に開口窓を形成した装置筐体と、
装置筐体の開口窓に相対した内部に水平軸回りに回転自在に配置し、水平方向から入射したビーム光を反射面により垂直方向に反射して開口窓から出射する光学反射部材と、
装置筐体内に設けられ、光学反射部材の反射面にビーム光を水平方向から入射するビーム光源部と、
装置筐体の外部に設けた調整操作部の操作により、光学反射部材を回転して開口窓から出射するビーム光を垂直周りに回転させるビーム操作部と、
を設ける。
【0016】
(ビーム光の点滅)
ビーム走査装置は、ビーム光を点滅させながら投射する。
【0017】
(ビーム光の明暗変化)
ビーム走査装置は、ビーム光の強さを変化させながら投射する。
【0018】
(旋回時又は放水前のビーム光投射)
制御部は、火点への旋回時又は放水前にビーム走査装置を駆動して防護区画にビーム光を投射させる。
【0019】
(放水銃装置)
本発明の別の形態は、放水方向を所定の上向き角度に固定した放水銃を水平周りに旋回自在に支持し
、防護区画に所定の放水領域を形成可能な放水銃装置に於いて、
放水銃の放水中心線に水平方向で一致し、垂直方向で回転走査又は首振り走査するビーム光を防護区画に投射し、
放水領域における放水銃からの最小距離点及び最大距離点を含む放水中心線
の投影像に相当する輝線を表示させるビーム走査装置を設けたことを特徴とする。
【0020】
ここで、ビーム走査装置の他の特徴は、前述した消火システムに設けたビーム走査装置と同じになる。
【発明の効果】
【0021】
(基本的な効果)
本発明は、防護区画を二次元走査して火災を検出する火災検出装置と、放水方向を所定の上向き角度に固定した放水銃を水平周りに旋回自在に支持した放水銃装置と、火災検出部により検出した火災検出方向に向くように放水銃を旋回駆動して放水させる制御部と、を備えた消火システムに於いて、放水銃装置に、放水銃の放水中心線に水平方向で一致し、垂直方向で回転走査するビーム光を防護区画に投射するビーム走査装置を設け、制御部により所定の動作状態でビーム走査装置を駆動して防護区画にビーム光を投射し、放水中心線に相当する輝線を表示させるようにしたため、ビーム走査装置により防護区画の床面や壁面に投射されたビーム光の回転走査又は首振り走査による輝線によって、現在、放水銃が向いている水平面内での方向を目視により正確に知ることができる。
【0022】
(放水中のビーム光走査による効果)
制御部は、火災検出部で検出した火災検出方向に放水銃を放水した状態で、ビーム走査装置を動作して放水銃から放水により防護区域に散布する水幕にビーム光を投射し、放水中心線を通る垂直面を表示させるようにしたため、放水銃からの放水で防護区画に降り注ぐ水幕にビーム光が当たってカーテン状に水幕が輝くようになり、例えば夜間や昼間でも暗いような中で放水する場合には、光のカーテンとなる照明により、放水の様子を確実に把握でき、これを見て放水銃による放水に対する信頼感を高めることを可能とする。
【0023】
また、監視員が手動操作により放水銃を火源の方向に向けて放水する場合、ビーム走査装置を動作してビーム光の垂直回転走査による輝線を防護区画に表示することで、輝線を火源に合せるように旋回操作して停止することで、正確に放水銃を簡単且つ確実に火源に向けることができ、放水操作で放水を開始した場合に、確実に火源に放水可能とする。
【0024】
(駆動源によるビーム回転走査の効果)
ビーム走査装置は、放水銃の下側に取付固定され、放水銃の放水中心線を通る垂直面の方向に開口窓を形成した筒状の装置筐体と、装置筐体の開口窓に相対した内部に水平軸回りに回転自在に配置し、水平方向から入射したビーム光を反射面により垂直方向に反射して開口窓から出射する光学反射部材と、装置筐体内に設けられ、光学反射部材の反射面にビーム光を水平方向から入射するビーム光源部と、装置筐体内に設けられ、光学反射部材を所定速度で回転駆動して開口窓から出射するビーム光を垂直周りに回転走査させる駆動部とを設けるようにしたため、ビーム走査装置をコンパクトな筒状の装置として実現することで、放水銃の下側のスペースに適切に設置可能となり、放水銃装置側の変更をほとんど必要とすることなく、ビーム走査装置を設けて活用することを可能とする。
【0025】
また、ビーム光を駆動部による光学反射部材、例えばミラー部材の回転で垂直回りに回転走査することで、ビーム光源部にレーザー光源を使用した場合、レーザー出力が例えば1mWを超えて人に害を及ぼすレベルとなっても、レーザースポットの移動を人が輝線として認識可能な例えば30rpmで回転駆動した場合、レーザー光は固定照射ではなく、移動照射となるために、レーザー光の直射により人が受けるレーザー光のエネルギーは大幅で低減し、例えば空気中を伝わる場合に輝線が見える例えば200mWを超える出力のレーザー光源であっても、人に害を及ぼすことになく防護区画に輝線を表示でき、また100メートルを超えるような放水距離をもつ放水銃への適用も可能とする。
【0026】
(手動操作によるビーム回転の効果)
ビーム走査装置は、放水銃の下側に取付固定され、放水銃の放水中心線を通る垂直面の方向に開口窓を形成した装置筐体と、装置筐体の開口窓に相対した内部に水平軸回りに回転自在に配置し、水平方向から入射したビーム光を反射面により垂直方向に反射して開口窓から出射する光学反射部材と、装置筐体内に設けられ、光学反射部材の反射面にビーム光を水平方向から入射するビーム光源部と、装置筐体の外部に設けた調整操作部の操作により、光学反射部材を回転して開口窓から出射するビーム光を垂直周りに回転させるビーム操作部とを設けるようにしたため、モータ等の駆動源を必要としない分、構成が簡単で低コストとなり、放水銃を正確に正面方向に向ける場合の確認に使用するための輝点を防護区画に表示することで、放水銃の旋回検出角度を火災検出部が正面を向いた場合の火災検出角度に一致するように設定する調整操作を可能とする。
【0027】
(ビーム光の点滅による効果)
また、ビーム走査装置は、ビーム光を点滅させながら投射することで、防護区画の床面や壁面に破線又は移動する破線となる輝線を表示することを可能とする。
【0028】
(ビーム光の明暗変化による効果)
また、ビーム走査装置は、ビーム光の強さを変化させながら投射することで、防護区画の床面や壁面に表示する輝線の明るさを必要に応じて変化させることを可能とする。
【0029】
(2色ビーム光による効果)
また、ビーム走査装置は、放水時のビーム光と放水時以外でのビーム光の色を異ならせるようにしたため、例えば放水時は赤色のビーム光を投射して注意を促し、一方、放水時以下の場合は、緑色のビーム光を投射して放水時とは区別可能とする。
【0030】
(旋回時又は放水前のビーム光投射による効果)
また、制御部は、火点への旋回時又は放水前にビーム走査装置を駆動して防護区画にビーム光を投射させるようにしたため、一般の施設利用者に放水を予告して注意を促すことを可能とする。
【0031】
(放水銃装置による効果)
放水銃装置による効果は、前述した消火システムの放水銃装置にビーム走査装置を設けた場合と同様となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(消火システムの概要)
図1は放水銃を設けた消火システムの概略を示した説明図である。
図1に示すように、消火システムは、放水銃装置10、現地操作盤12、ユニット制御盤14、マスタ制御盤16、自火報受信機18、火災感知器20、ポンプ制御盤22、消火ポンプ設備24、給水配管26、電動弁を用いた一斉開放弁28で構成しており、防護区画に2系統の放水銃装置10を設置した場合を例にとっている。
【0034】
消火システムの動作は次のようになる。放水銃装置10は火災検出部の走査により防護区域を2次元走査して火災を監視しており、火源の炎からの赤外線を検出するとその位置で監視走査を停止し、火源方向を示すデータを含む火災検出信号をユニット制御盤14に送信する。ユニット制御盤14は火災検出信号に基づき放水銃装置10の放水銃を火源方向に旋回走査し、放水準備を完了する。
【0035】
続いてユニット制御盤14は放水制御を行うが、この放水制御には、自動放水モード、半自動放水モード、手動放水モードがある。
【0036】
マスタ制御盤16又は現地操作盤12で自動放水モードを設定していた場合、ユニット制御盤14は、放水銃装置10の火災検出部からの火災検出信号に加えて、防護区画に設置している火災感知器20の発報を受信した自火報受信機18から火災移報信号を受けた場合に自動放水条件が成立したと判断し、所定時間のカウントダウン後に、ポンプ制御盤22にポンプ起動信号を送って消火ポンプ設備24の消火ポンプを起動し、一斉開放弁28に開制御信号を送って開制御し、放水銃装置10の放水銃からの放水を開始する。
【0037】
放水を開始させるとユニット制御盤14で所定の放水時間を設定したタイマを起動し、タイムアップすると一斉開放弁28を閉制御して放水停止する。続いて、ユニット制御盤14は放水銃装置10の火災検出部による火災監視走査を再開し、もし火災検出が行われると、放水後に再度燃え上がったような場合であることから、火源検出方向に放水銃を旋回制御して放水を再開する。火災監視走査を開始しても火災検出がなければ、ユニット制御盤14は通常の状態監視に入る。
【0038】
なお、通常、自動放水モードは無人状態で行われていることから、火災通報を受けた管理者等が出向いてくることにより現場の状況を判断して鎮火を確認したら、手動操作により消火ポンプ設備24の停止等の復旧を行う。
【0039】
マスタ制御盤16又は現地操作盤12で半自動放水モードを設定していた場合には、ユニット制御盤14は火災検出信号に基づく火源方向に放水銃装置10の放水銃を旋回走査し、放水準備を完了した後、現地操作盤12又はマスタ制御盤16の放水操作信号を受けて放水銃からの放水を開始する。
【0040】
現地操作盤12又はマスタ制御盤16による放水操作は、監視員が操作パネルに設けた手動放水スイッチにキーを差し込んで放水位置に操作する放水操作を行う。この手動放水操作による手動放水信号を受けたユニット制御盤14は、ポンプ制御盤22にポンプ起動信号を送って消火ポンプ設備24の消火ポンプを起動し、一斉開放弁28に開制御信号を送って開制御し、放水銃装置10の放水銃からの放水を開始する。監視員が鎮火を確認したら
現地操作盤12又はマスタ制御盤16の手動放水スイッチを放水停止位置に操作し、これを受けてユニット制御盤14は一斉開放弁28を閉鎖して放水停止する。また消火ポンプ設備24の停止等の復旧を手動で行う。
【0041】
マスタ制御盤16又は現地操作盤12で手動放水モードを設定していた場合には、火災を確認した監視員は、例えば現地操作盤12の操作で、放水銃装置10の放水銃を旋回して火源に向け、手動放水スイッチにキーを差し込んで放水位置に操作し、これによる放水操作信号を受けてユニット制御盤14は、ポンプ制御盤22にポンプ起動信号を送って消火ポンプ設備24の消火ポンプを起動し、一斉開放弁28に開制御信号を送って開制御し、放水銃装置10の放水銃からの放水を開始する。監視員が鎮火を確認したら
現地操作盤12の手動放水スイッチを放水停止位置に操作し、これを受けてユニット制御盤14は一斉開放弁28を閉鎖して放水停止する。また消火ポンプ設備24の停止等の復旧を手動で行う。
【0042】
[放水銃装置の放水領域とビーム走査]
(放水銃の放水パターン)
図2は放水銃の放水領域とビーム走査装置による輝線表示を示した説明図である。
図2に示すように、放水銃装置10は体育館等の防護区画における壁面の所定高さに設置しており、火災検出部34の二次元走査により防護区画の火災を監視している。火災検出部34で火災を検出すると、放水銃30を火源の方向に旋回制御して放水し、放水パターン120に示すように、所定の放水距離まで所定幅となる範囲に単位時間当り規定水量となる放水を行う。
【0043】
(ビーム走査装置の概要)
本実施形態にあっては、放水銃30の下にビーム走査装置48を設けている。ビーム走査装置48は、放水銃30の放水中心線に水平方向で一致し、垂直方向で回転走査又は首振り走査するレーザーのビーム光を防護区画に投射し、放水中心線の投影像に相当する輝線122を防護区画の床面や壁面に表示し、これによって、現在、放水銃30が向いている方向を目視により正確に知ることを可能とする。
【0044】
防護区画の対する輝線122の表示は、ビーム走査装置48から投射するビーム光が、その開口窓や放水銃30に遮られることから、ビーム光を垂直軸回りに回転走査していても、実際に直下のP点から最大放水距離となる放水領域Sの外縁となる部分を少なくとも含むような走査となって輝線122を表示する。
【0045】
(放水停止中のビーム走査)
ビーム走査装置48のビーム走査による輝線122の表示は、例えば放水銃装置10を設置した場合に、放水銃装置10の正面となる最大放水距離だけ離れた点Qに適宜の目印をつけ、この目印をビーム光の回転走査による輝線122が通るように放水銃30を手動操作により旋回して位置決めし、これにより放水銃30を正確に正面方向に向けることを可能とする。
【0046】
この状態で放水銃30に設けている旋回角度検出器(ロータリーエンコーダ)の旋回検出角度を火災検出部が正面を向いた場合の火災検出角度に一致するように設定する調整操作を行うことで、火災検出部34と放水銃30の水平回りの検出角度の誤差を低減又はなくし、火災検出部34で検出した火災検出角度の方向に放水銃30を正確に旋回制御して、火源の方向に消火用水を放水して確実に消火することを可能とする。
【0047】
また、ビーム走査装置48の別の使い方として、手動操作により放水銃30を旋回走査しながらビーム走査装置48を動作してビーム光の垂直回転走査による輝線122を防護区画に表示することで、放水銃30による放水シミュレーションに相当する表示が可能となり、実放水をしなくとも、放水銃30による放水の様子を実感として把握することを可能とする。
【0048】
更に、手動放水モードを設定していた場合の手動放水制御で、監視員が放水銃30を火源の方向に向ける場合、ビーム走査装置48を動作してビーム光の垂直回転走査による輝線122を防護区画に表示することで、輝線122を火源に合せるように旋回操作して停止することで、正確に放水銃30を簡単且つ確実に火源に向けることができ、放水操作で放水を開始した場合に、確実に火源に放水可能とする。
【0049】
(放水中のビーム光走査)
また、ビーム走査装置48の使い方として、火災検出部34で検出した火災検出方向に放水銃30を旋回して放水した場合に、ビーム走査装置48を動作して放水銃30から放水により防護区域に散布する放水パターン120にビーム光を投射し、放水銃30からの放水で防護区画に降り注ぐ水幕にビーム光が当たってカーテン状に水幕が輝くようになり、例えば夜間や昼間でも暗いような中で放水する場合には、光のカーテンとなる照明により、放水の様子を確実に把握でき、これを見て放水銃30による放水に対する信頼感を高めることを可能とする。
【0050】
[放水銃装置の概要]
図3は放水銃装置を取り出して正面から示した説明図、
図4は放水銃装置を取り出して側面から示した説明図、
図5は放水銃を防護区画に向けて旋回動作した状態を示した説明図である。
【0051】
図3及び
図4に示すように、放水銃装置10は、箱型の装置本体31の前部に前パネル32を装着しており、前パネル32の上部に火災検出部34を設け、その下に放水銃を内蔵した放水銃カバー36を設けている。
【0052】
火災検出部34は、半円筒状の張出部の下に、円錐状の旋回走査部38を水平周りに回動走査自在に配置し、旋回走査部38には縦方向に検出窓40を設けている。火災検出部34の内部には赤外線センサと赤外線センサの防護区画に対する検出光軸を垂直方向に走査する回転ミラーを備えた走査光学系を内蔵している。
【0053】
このため火災検出部34は、防護区画に対する赤外線検出素子からの検出光軸を、旋回走査部38の縦方向に形成した検出窓40の範囲、例えば水平となる0°から下向きとなる90°の範囲で光学的に垂直方向に繰り返し走査すると共に、旋回走査部38を水平方向に例えば180°の範囲で往復する回動走査を繰り返して防護区画の火災を検出する。
【0054】
放水銃カバー36は通常状態で裏側に放水銃を収納しており、火災検出部34で火災を検知した場合には、
図5に示すように、モータ駆動による旋回で放水銃30を取出し、火災検出部34で検出した火源の方向に放水銃30を向けて放水する。
【0055】
[放水銃の構成]
図6は放水銃を取り出して側面から示した説明図、
図7は放水銃を取り出して内部構造を示した断面図、
図8は放水銃を取り出して正面から示した説明図である。
【0056】
図6乃至
図8に示すように、放水銃30は、図示しない基台側(固定側)に配置した給水本管の回転継手に対し送水管41を挿入して旋回自在に支持しており、送水管41の上部は、
図7に示すように、斜め上向きに屈曲しており、先端に放水ノズル42を固定している。このため放水ノズル42は送水管41を介して固定設置した基台側に対し水平回りに旋回自在に支持しており、放水中心線35の方向を所定の上向き角度、例えば10°程度に固定している。
【0057】
送水管41の垂直部分の上部にはモータ連結部46を設け、ここに上部に配置したモータの駆動軸を連結して例えば180°の水平旋回範囲で放水銃30を旋回可能としている。また、送水管41の立ち上がり部分には箱型に形成した固定ケース43を固定し、固定ケース43の前方に前後に開口した箱型の可動ケース45を配置している。
【0058】
可動ケース45の前方の開口部にはデフレクター44を支持固定している。デフレクター44は放水ノズル42の前方に位置し、放水ノズル42からの噴流の衝突を受けて散水し、例えば有効放水距離16メートル又は18メートルとする散水分布領域に放水量を最小化して効率的な散水を可能とする。
【0059】
[ビーム走査装置]
(ビーム走査装置の構成)
図9はビーム走査装置を取り出して示した説明図であり、
図9(A)は正面、
図9(B)は側面、
図9(C)は横方向の断面を示す。
図9に示すように、ビーム走査装置48は、円筒状の装置筐体50の中央に透明カバー65で封止した開口窓52を斜め下向き方向を中心とした180°程度の範囲に亘って縦向きに形成している。装置筐体50の上部には逆三角形に開いたスライドレール74をビス75により固定している。
【0060】
装置筐体50の内部の右側には、ケース55に収納したビーム光源部54を配置している。ビーム光源部54はレーザー発光部56、拡散部58及び平行化レンズ60を備える。レーザー発光部56は赤色のレーザー光又は緑色のレーザー光を射出するレーザーダイオードを用いた光源である。防護区画にビーム光を走査して表示する輝線の視認性を高めるためには緑色のレーザー光が望ましく、コストの面では赤色のレーザー光が望ましい。
【0061】
また、レーザー発光部56に赤色のレーザー光を出射するレーザーダイオードと緑色のレーザー光を射出するレーザーダイオードを配置し、必要に応じて赤色と緑色のレーザー光を切り替えて出射するようにしても良い。
【0062】
このように2色のレーザ光を出射可能とした場合には、例えば放水時は赤色のレーザー光を投射して注意を促し、一方、放水時以下の場合は、緑色のレーザー光を投射して放水時とは区別可能とする。
【0063】
拡散部58は、レーザー発光部56から射出されたレーザー光を拡散し、所定のスポットサイズを持った光線束に広げる機能を有する。拡散部58としては例えば表面レリーフ型のホログラム素子を用いる。平行化レンズ60は、拡散部58から射出された拡散光を平行なビーム光として射出する。
【0064】
ここで、レーザー発光部56の出力としては、人に対する安全性を確保するために1mW以下の低出力とすることが望ましく、前述した放水銃装置10のように、放水距離が16メートル又は18メートルといった小規模放水銃の場合には、この程度の出力でもビーム光の走査による輝線を明確に視認可能である。
【0065】
一方、放水距離が70メートルとなる中規模放水銃や、放水距離が100メートルを超える大規模放水銃の場合には、ビーム光の走査による輝線を明確に視認可能とするため100mWを超える高出力とする必要がある。また小規模放水銃であっても、輝線を明確に表示可能とするため、100mWを超える高出力とすることも可能である。
【0066】
装置筐体50の開口窓52に相対した内部には、光学反射部材64を水平軸回りに回転自在に配置し、ビーム光源部54により水平方向から入射したビーム光を、45°の角度に形成した反射面により垂直方向に反射して開口窓52から出射する。光学反射部材64は、円筒部材の右側を斜め45°に加工して表面に反射鏡を設けている。開口窓52は例えば斜め下向きを中心とした180°程度の範囲に形成し、内側にリング状に形成した透明カバー65を装着して封止している。
【0067】
光学反射部材64はケース61の左側に収納配置したモータ62の回転軸に固定し、垂直回りに回転駆動され、これによりビーム光源部54から入射したレーザーのビーム光を反射して垂直回りに旋回走査し、開口窓52からビーム光72を外部に投射する。
【0068】
ここで、モータ62による光学反射部材64の回転数、即ちビーム光72の垂直回りの回転数は、30rpm以上の一定回転数とする。このようにビーム光72の回転数を30rpmとすることで、
図2のように防護区画をビーム走査で移動するビームスポットが一本の輝線122として見えるようにする。即ち、ビーム光72の投射による輝点が1秒間に30回以上通過するようにモータ62による光学反射部材64を回転走査する。
【0069】
また、光ビームを30rpm以上の回転数で走査することにより、例えばレーザービーム光を人が直視したとしても、レーザービーム光はレーザーポインタのように固定照射ではなく、移動照射となるために、実際に人が受けるレーザービーム光のエネルギーは大幅で低減し、空気中を伝わる場合に輝線が見える例えば200mWを超える出力のレーザー光であっても、人に害を及ぼすことになく防護区画に輝線を安全に表示可能とする。
【0070】
モータ62の左側には回路基板66を収納しており、回路基板66にはレーザー発光部56の駆動回路及びモータ62の駆動回路を実装しており、コネクタ68に対する信号線接続による外部からの制御信号を受けてビーム走査装置48を動作する。
【0071】
図10はビーム走査装置の機能構成を示したブロック図であり、ビーム光源部54に対し発光駆動部88を設け、また反射光学部材を備えた旋回走査部92に対しモータを備えた旋回駆動部90を設け、制御部86により発光駆動部88及び旋回駆動部90を外部からの制御信号に基づき動作可能としている。
【0072】
(ビーム走査装置の取付構造と位置調整機構)
図11は放水銃に対するビーム走査装置の取付構造を示した説明図であり、
図11(A)は正面、
図11(B)は
図11(A)のX−X断面、
図11(C)は側面を示す。
【0073】
図11に示すように、ビーム走査装置48は、固定枠部材76を介して
放水銃30の下側に取付固定する。固定枠部材76は、両側の取付部76aを連結する水平部76bに、下向きに開いた断面逆三角形のスライド溝76cを形成しており、取付部76aを下側から放水銃30に嵌め入れてビス77により固定する。
【0074】
放水銃30に固定した固定枠部座76のスライド溝76cに対しては、右側から装置筐体50の上部に固定したスライドレール74を嵌め入れ、その右側にプレート部材78をビス79で固定して抜け止めする。ここで、スライド溝76cの横幅に対し装置筐体50に固定したスライドレール74の横幅を所定長さΔLだけ短くしており、ビーム光が通る開口窓52の中心を放水銃30の放水中心線35に一致させた場合、両側にΔL/2の位置調整用の隙間を形成している。
【0075】
固定取付部材76の左側に位置する取付部76a及び右側に固定したプレート部材78のねじ穴80には、調整ねじ82を螺合しており、左右の調整ねじ82の一方を緩め、他方をねじ込むことで、装置筐体50を横方向に移動調整可能としている。
【0076】
このようなビーム走査装置48の位置調整機構により、放水銃30の放射中心線の方向と、これに取付固定したビーム走査装置48からのビーム投射方向に取付誤差があっても、放水銃30に対する固定側に対し装置筐体50側の位置を調整することで、両者の水平面における方向を正確に一致させ、放水銃30の放水中心線に対応して輝線を正確に防護区画に表示することを可能とする。
【0077】
[消火システムの機能構成]
図12は
図1の消火システムの機能構成の概略を示したブロック図であり、
図1の1系統について示している。
図12に示すように、放水銃装置10には、火災検出部34、放水銃駆動モータ94、放水銃旋回検出器(ロータリーエンコーダ)96及びビーム走査装置48を設けている。
【0078】
火災検出部34には、赤外線センサ98、水平走査モータ100及び垂直走査モータ102を設け、防護区画に対する赤外線センサ98から検出走査線を、水平走査モータ100による例えば1°単位にステップ回転し、このステップ回転誤度に垂直走査モータ102によるミラー回転で垂直回りに走査して防護区画の火災を監視する。
【0079】
現地操作盤12とマスタ制御盤16は放水操作部106,110と放水停止操作部108,112の機能を備え、自動放水モード、半自動放水モード又は手動放水モードを選択設定すると共に、半自動放水モード又は手動放水モードでは各モードに従った放水操作と放水停止操作を行う。また、現地操作盤12とマスタ制御盤16は、何れか一方に操作権を移行する制御を行い、操作権を持つ側の操作を有効とする。
【0080】
ユニット制御盤14は制御部104を備え、制御部104により自動放水モード、半自動放水モード又は手動放水モードに従って放水銃装置10の放水銃を火源に向ける制御、ポンプ制御盤22に対するポンプ起動制御及び一斉開放弁28に対する開制御を行って放水銃から放水を開始させる制御を行い、また自動放水モードでの自動放水停止制御を行い、半自動放水モード及び手動放水モードでは鎮火を確認した監視員の停止操作に基づく放水停止制御を行う。
【0081】
更に、ユニット制御盤14の制御部104は、放水銃装置10に設けたビーム走査装置48の制御として、現地操作盤12とマスタ制御盤16の操作又は設定操作に基づき、放水停止状態で又は放水中にビーム走査装置48を動作する制御を行う。
【0082】
[手動操作によりビームを回転するビーム走査装置]
図13はダイヤル操作によりビーム光を回動するビーム走査装置の他の実施形態を示した説明図であり、
図13(A)は正面、
図13(B)は横方向の断面、
図13(C)は側面を示す。
【0083】
図13に示すように,ビーム走査装置48は、
図9の実施形態で設けているモータ62を除き、これに代えて光学反射部材64の回転軸116を設けて左端から取出し、この軸端にダイヤル114を設け、ダイヤル114の外側にはビーム光72の投射方向を示す矢印118を表示しており、ダイヤル114の回転操作により開口窓
52から投射する光ビーム72を垂直回りに回転操作可能としている。
【0084】
それ以外の構成は
図9の実施形態と同じになることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0085】
このようにビーム走査装置48は、装置筐体50の外部に設けた調整操作部として機能するダイヤル114の操作により、光学反射部材64を回転して開口窓52から出射するビーム光72を垂直周りに回転させるようにしたため、モータ等の駆動源を必要としない分、構成が簡単で低コストとなり、放水銃30を正面方向を示す防護区画に設けた目印にビーム光の輝点が当たるように回転操作することで、放水銃30の旋回検出角度を火災検出部34が正面を向いた場合の火災検出角度に設定する調整操作を可能とする。
【0086】
なお、本実施形態にあっては、ビーム光をモータ駆動のように一定速度で回転しないことから、人がレーザービーム光を直視する可能性があり、このためレーザー発光部56の出力を0.1mW以下の低出力とすることが望ましい。また、レーザー発光部56の出力を高出力とする場合には、人に向けて投射しないように十分に注意しながら、ダイヤル操作を行う必要がある。
【0087】
[本発明の変形例]
(ビーム光の点滅)
本発明の他の実施形態として、ビーム走査装置からのビーム光を点滅又はしながら投射することで、防護区画の床面や壁面に破線又は移動する破線となる輝線を表示することを可能とする。
【0088】
(ビーム光の明暗変化)
また、本発明の他の実施形態として、ビーム走査装置からのビーム光の強さを変化させながら投射することで、防護区画の床面や壁面に表示する輝線の明るさを必要に応じて変化させることを可能とする。
【0089】
(旋回時又は放水前のビーム光投射)
また、本発明の他の実施形態として、制御部は、火点への旋回時又は放水前にビーム走査装置を駆動して防護区画にビーム光を投射させるようすることで、一般の施設利用者に放水を予告して注意を促すことを可能とする。
【0090】
(放水銃)
上記の実施形態は、火災検出部と放水銃とを一体化した放水銃装置を例にとるものであったが、火災検出部と放水銃を分離して設置する放水銃装置についても、同様に放水銃の下側にビーム走査装置を取り付けて放水中心線を通る垂直面でビーム光を旋回走査するようにしても良い。
【0091】
(ビーム首振り走査)
上記の実施形態のビーム走査装置はビーム光を垂直回りに回転走査しているが、斜め下向きの所定角度範囲でビーム光を首振り走査しても良い。ビーム光を首振り走査する機構としては、ガルバノミラーを用いた駆動機構等とする。
【0092】
(既設対応のビーム走査装置)
上記の実施形態のビーム走査装置は、放水銃装置の製造段階でビーム走査装置を取り付ける場合を例にとっているが、既設の放水銃装置に後付け可能なビーム走査装置としても良い。この場合には、上記の実施形態のビーム走査装置に加え、電池電源と無線送受信部を備えた制御ユニットを準備してビーム走査装置のコネクタにケーブル接続し、現地操作盤側に置いている無線操作装置から制御信号を送信して制御ユニットを動作し、コントロールユニットからの電源供給と制御信号の出力でビーム走査装置を動作させる。
【0093】
また、既設の放水銃装置に対するビーム走査装置を簡単にするため、マグネット吸着の取付固定枠を使用することが望ましい。
【0094】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。