(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記録媒体に係合可能な取込爪を有し、前記取込爪が前記出入口側から前記記録媒体に係合した状態で前記反対側へ移動することによって、前記記録媒体を前記出入口側から前記収納室側へ取り込む取込部を含み、
取り込まれる前記記録媒体が前記情報処理のために前記処理位置まで搬送される際、前記繰出部は、待機位置にあり、前記収納室内の別の前記記録媒体に接触することによって当該別の記録媒体を前記搬送方向に対して傾斜した状態で待機させることを特徴とする、請求項1記載の記録媒体処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施形態に係る記録媒体処理装置1について具体的に説明する。記録媒体処理装置1で取り扱われる記録媒体Cは、たとえば、パチンコ店等の遊技施設の遊技客に発行されるICカードである。記録媒体Cには、記憶部MとアンテナAとが内蔵されている(後述する
図2参照)。記憶部Mには、個々の記録媒体Cを識別するためのIDや、プリペイド価値の残高や、持玉データや、貯玉データ等の情報が記憶される。アンテナAは、記録媒体Cの外周部の全域に亘って設けられている。アンテナAを介して、記録媒体Cと、ICリーダー等の外部の処理部との間で、記憶部M内の情報の読み取りや更新といった情報処理が行われる。記録媒体Cの種類には、遊技施設に会員登録した会員の遊技客に発行される会員記録媒体と、会員記録媒体を所持していない一般の遊技客に発行される一般記録媒体とがある。
【0017】
持玉データとは、遊技客が当日の遊技で獲得した遊技媒体(ここではパチンコ玉)のうちの一部または全部を、現物として所有するのではなく数値データとして記録媒体Cに記憶させて所有する場合の数値データをいう。一般記録媒体に記憶されている持玉データは、当日のみ有効であり、その日の営業が終了した時点で効力を失う。一方、会員記録媒体に記憶されている持玉データは、その持玉データが発生した日の営業が終了した時点で、持玉データとしての効力は失うが、貯玉データとして会員記録媒体に記憶される。持玉データとなるパチンコ玉は、持玉と呼ばれ、貯玉データとなるパチンコ玉は、貯玉と呼ばれる。
【0018】
なお、持玉データや貯玉データは、記録媒体Cの記憶部Mに直接記憶されるのではなく、記録媒体CのIDに関連付けて、データベース等の別の記憶装置に記憶されてもよい。また、以下の説明では、記録媒体Cが一般記録媒体であることを前提とする。
記録媒体処理装置1に関連して、遊技施設には、遊技機2と、遊技機2に併設されて記録媒体Cの処理を行なう台間記録媒体処理機3とが存在する。
図1は、記録媒体処理装置1が搭載された台間記録媒体処理機3と遊技機2との外観を示す正面図である。
【0019】
図1を参照して、遊技機2は、たとえば、パチンコ機である。遊技機2の内部には、パチンコ玉を払い出すための払出機構4が設けられている。遊技機2の前面には、パチンコ玉を一時的に貯留するための上皿5および下皿6が設けられている。上皿5のパチンコ玉が一杯になると、上皿5のパチンコ玉が下皿6に流れる。たとえば、上皿5の前面には、払出機構4にパチンコ玉の貸出指令を入力するために貸出ボタン7と、遊技の終了に伴って台間記録媒体処理機3に記録媒体Cの返却指令を入力するための返却ボタン8と、記録媒体Cのプリペイド価値を表示するための表示部9とが設けられている。貸出ボタン7や返却ボタン8は、遊技客によって操作される。
【0020】
台間記録媒体処理機3は、遊技機2の左側において遊技機2の左側面に沿って配置された縦長のボックス状である。通常、複数の遊技機2が横に並んで設置されているので、台間記録媒体処理機3は、隣り合う2つの遊技機2の間に配置されていることが多い。台間記録媒体処理機3は、右隣の遊技機2に対する専用機であり、この遊技機2と通信可能に接続されている。
【0021】
台間記録媒体処理機3の前面には、紙幣の挿入口11と、主に遊技客向けの情報が表示される表示部12と、遊技客等によって操作される操作部13と、遊技機2の上皿5に持玉や貯玉を供給するための払出ノズル14と、記録媒体Cが出し入れされる出入口15とが設けられている。前述した返却ボタン8は、台間記録媒体処理機3の前面に設けられてもよい。
【0022】
台間記録媒体処理機3において出入口15が設けられた部分が、記録媒体処理装置1である。記録媒体処理装置1は、点線で示すように、台間記録媒体処理機3に内蔵されており、出入口15だけが台間記録媒体処理機3の前面から露出されている。
以下では、正面視における台間記録媒体処理機3の左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zを基準として、記録媒体処理装置1について説明する。左右方向Xは、左側X1と右側X2とによって構成され、前後方向Yは、
図1の紙面手前側である前側Y1と、
図1の紙面奥側である後側Y2とによって構成され、上下方向Zは、上側Z1と下側Z2とによって構成される。
【0023】
図2は、記録媒体処理装置1の斜視図である。
図2を参照して、記録媒体処理装置1は、左右方向Xに薄く、前後方向Yおよび上下方向Zに細長いボックス状である。この実施形態の記録媒体処理装置1は、上下方向Zよりも前後方向Yにおいて長手である。記録媒体処理装置1は、その外郭をなす本体部20を含む。本体部20の前面には、出入口15が縦長の状態で形成されている。本体部20では、出入口15側が前側Y1であり、出入口15側とは反対側が後側Y2である。出入口15に対して出し入れされる記録媒体Cの厚さ方向は、前後方向Yに直交する左右方向Xである。
【0024】
図3は、記録媒体処理装置1の内部構造の模式的な平面図である。
図3を参照して、本体部20内の略前半分の領域には、出入口15から上下方向Zおよび前後方向Yに沿って後側Y2へ延びる搬送路21が形成されている。搬送路21は、出入口15と同様に記録媒体Cを1枚だけ通せる縦長の断面を有していて、前後方向Yにおける本体部20の略中央まで直線的に延びる帯状の空間である。搬送路21は、左右方向Xに薄く上下方向Zに沿った縦長の姿勢の記録媒体Cを、前後方向Yという搬送方向に沿って搬送する。本体部20内には、左右方向Xにおいて対向配置される一対の板状のガイド23が設けられている。一対のガイド23の互いに対向面は、上下方向Zおよび前後方向Yに沿う平坦面であり、これらの対向面によって搬送路21が区画されている。
【0025】
本体部20内には、前後方向Yに並んで配置される2つのローラ24と、各ローラ24に対して右側X2から1つずつ対向配置される2つのローラ25とが、上下方向Zに延びる回転軸(図示せず)まわりに回転可能な状態で配置されている。各ローラ24の右側X2の外周面と、各ローラ25の左側X1の外周面とが搬送路21内に露出されている。2つのローラ24には、1本のエンドレスベルトである搬送ベルト26が掛け回されていて、2つのローラ25には、1本のエンドレスベルトである搬送ベルト27が掛け回されている。
【0026】
搬送ベルト26の一部は、前後方向Yに沿った状態で搬送路21内に露出されている。搬送ベルト27の一部も、前後方向Yに沿った状態で搬送路21内に露出されている。搬送路21内を搬送される記録媒体Cは、搬送路21内に露出された搬送ベルト26と搬送ベルト27との間を通過する。本体部20内において一対のガイド23における左側X1のガイド23Aよりも左側X1には、搬送モータ28が配置されている。搬送モータ28が発生した駆動力は、ローラ25に伝達される。これにより、搬送ベルト27が周回移動する。
【0027】
本体部20内において搬送路21よりも後側Y2の領域には、記録媒体Cの収納室22が設けられている。収納室22は、搬送路21に対して後側Y2から接続されて左右方向Xにおける左側X1へ広がる空間である。収納室22には、複数枚の記録媒体Cを左右方向Xに積層した状態で収納することが可能である。なお、後述するように、収納室22には、前後方向Yに沿った状態の記録媒体Cを積層状態で収納するだけでなく(
図6B等参照)、前後方向Yに対して傾斜した状態の記録媒体Cも積層状態で収納することができる(
図6A等参照)。
【0028】
左側X1のガイド23Aの後端部には、上下左右に平坦であって左側X1へ延びる板状のゲート29が接続されている。ゲート29は、搬送路21と収納室22との境界に位置して、収納室22を前側Y1から塞いでいる。搬送路21と収納室22との境界は、記録媒体Cが1枚だけ通過できる連絡口30である。ゲート29は、一対のガイド23における右側X2のガイド23Bとの間で連絡口30を区画している。
【0029】
右側X2のガイド23Bは、ガイド23Aよりも前後方向Yに長く、連絡口30よりも後側Y2へ延びている。ガイド23Bの左側面において連絡口30よりも前側Y1の部分は、前述したようにガイド23Aに対向する対向面である。ガイド23Bの左側面において連絡口30よりも後側Y2の部分は、先ほどの対向面と面一の状態で前後方向Yに沿って後側Y2へ延びる平坦面23Cと、前後方向Yに対して傾斜するように平坦面23Cから後側Y2かつ右側X2へ延びる傾斜面23Dとを含む。平坦面23Cおよび傾斜面23Dは、収納室22内に右側X2から露出されていて、平坦面23Cは、収納室22の略前半分の領域に位置し、傾斜面23Dは、収納室22の略後半分の領域に位置している。
【0030】
収納室22には、例えば金属製であって記録媒体Cをほぼ同じ形状の支持板31が配置されている。本体部20は、収納室22を左側X1から塞ぐ板状の閉塞部20Aを有し、支持板31と閉塞部20Aとの間では、ばね等で構成された付勢部材32が、左右方向Xに圧縮された状態で配置されている。圧縮状態の付勢部材32は、支持板31において後側Y2に偏った部分を右側X2へ押圧している。これにより、
図3に示すように収納室22内に記録媒体Cが1枚も存在しない状態では、支持板31は、後側Y2の部分がガイド23Bの傾斜面23Dに沿って前側Y1の部分が平坦面23Cから左側X1へ浮くように、前後方向Yに対して傾斜している。
【0031】
本体部20内では、左側X1のガイド23Aよりも左側X1かつゲート29の前側Y1の位置に、処理部としてのICリーダー48が設けられている。ICリーダー48は、記録媒体Cとの間で前述した情報処理を行なう部品であり、ICリーダー48として公知のものを用いることができる。ICリーダー48は、搬送路21の後端部と前後方向Yで同じ位置にある。搬送路21においてICリーダー48と前後方向Yで同じ位置を、以下では「処理位置」と呼ぶ。処理位置にある記録媒体Cでは、その少なくとも一部がICリーダー48と前後方向Yで同じ位置にあり、左右方向Xにおいてガイド23Aを挟んだ状態ICリーダー48と対向する。
【0032】
図4は、記録媒体処理装置1の内部構造を抜き出した斜視図である。
図5は、内部構造を露出させた状態における記録媒体処理装置1の斜視図である。以下の説明では、
図3だけでなく、必要に応じて、
図4や
図5も参照する。
本体部20内において前後方向Yでガイド23Bの傾斜面23Dと同じ位置には、リフト33が設けられている。
図4に示すように、リフト33は、本体部20内の後端部で上下方向Zに延びる回動軸34を回動中心として、回動軸34と一体的に回動可能な上下一対のアーム状である。
【0033】
回動軸34には、前後方向Yに延びるスライドレバー35の後端部が連結されている。
図4に示すスライドレバー35は、前後方向Yに沿ったホームポジションにある。スライドレバー35は、その後端部を回動中心としてホームポジションから下側Z2へ回動することができるが、ホームポジションよりも上側Z1へは回動できない。ばね等の付勢部材(図示せず)によって、スライドレバー35は、ホームポジションへ戻るように常に付勢されている。
【0034】
通常のリフト33は、
図3に示すように傾斜面23Dよりも右側X2に退避した退避位置にある。ガイド23Bにおいて左右方向Xから見てリフト33と重なる位置には、貫通穴23Eが形成されている。リフト33は、前述したように回動することによって、左右方向Xに移動可能であり、退避位置から左側X1へ移動し、貫通穴23Eを通って収納室22内に進出することができる。収納室22内に進出したときの左右方向Xにおけるリフト33の位置は、進出位置である(
図3には図示せず)。リフト33は、右側X2へ移動することによって、進出位置から退避位置まで戻ることができる。リフト33を移動させる構成については、以降で説明する。
【0035】
本体部20内の前側Y1の領域においてガイド23Bよりも右側X2には、シャッターレバー36が配置されている。シャッターレバー36は、前後方向Yに延びていて、その後端部には、上側Z1へ突出する検知部37が一体的に設けられている。シャッターレバー36は、その前後方向Yにおける途中に挿通されて上下方向Zに延びる揺動軸38を揺動中心として、左右方向Xに揺動可能である。
【0036】
図3に示すシャッターレバー36は、傾斜位置にある。傾斜位置のシャッターレバー36は、その前端部よりも検知部37が左側X1に位置するように、前後方向Yに対して傾斜している。傾斜位置のシャッターレバー36では、検知部37だけが右側X2のガイド23Bよりも左側X1にはみ出ていて、前述した連絡口30の後側Y2において収納室22内に進出している。シャッターレバー36は、その全体が前後方向Yに沿って水平となってガイド23Bから左側X1にはみ出さない水平位置(
図3には図示せず)まで、傾斜位置から揺動することができる。ばね等の付勢部材(図示せず)によって、シャッターレバー36は、傾斜位置に位置するように常に付勢されている。
【0037】
シャッターレバー36の前端部には、小片状のシャッター39が取り付けられている。シャッター39の左端面39Aは、後側Y2へ向かうにつれて右側X2へ延びる傾斜面である。シャッター39は、シャッターレバー36の前端部に取り付けられた状態で、シャッターレバー36の前端部に対して左右方向Xに相対移動可能である。最も左側X1まで移動したときのシャッター39の位置を閉位置(
図3には図示せず)と呼び、
図3に示すように最も右側X2まで移動したときのシャッター39の位置を開位置と呼ぶ。シャッター39は、出入口15よりも僅か後側Y2に位置し、ばね等の付勢部材40(
図5参照)によって、左側X1の閉位置へ向けて常に付勢されている。
図3に示すようにシャッターレバー36が傾斜位置にある場合には、シャッター39は、搬送路21から右側X2に退避している。
【0038】
本体部20内には、取込部41と繰出部42とが設けられている。取込部41は、前後方向Yに延びるアーム状である。取込部41の左側面の後側Y2の領域には、右側X2へ窪んで前後方向Yに長手の窪み43が設けられている。取込部41の後端部は、後側当接部41Aとして、左側X1へ折り曲げられていて、後側Y2から窪み43を塞いでいる。取込部41は、前側Y1から窪み43を塞ぐ前側当接部41Bも有する。
【0039】
取込部41の前端部には、上下方向Zから見て略三角形状に尖った取込爪44が設けられている。
図3において実線で示す取込爪44は、取込部41に沿うように傾倒した傾倒位置にある。取込爪44は、上下方向Zに延びる回動軸45を介して取込部41の前端部に連結されており、回動軸45まわりに回動することにより、
図3において破線で示す起立位置まで移動できる。起立位置の取込爪44は、取込部41から左側X1に起立して左右方向Xに延びており、搬送路21にはみ出して、搬送路21を前後に分断している。そのため、記録媒体Cを出入口15に挿入しても、この記録媒体Cは、取込爪44に邪魔されることによって、取込爪44よりも後側Y2へ移動できない。逆に、取込爪44よりも後側Y2に位置する記録媒体Cは、取込爪44に邪魔されることにより、取込爪44よりも前側Y1へ移動できない。取込爪44は、ばね等の付勢部材(図示せず)によって、起立位置へ向けて常に付勢されているが、通常は、右側X2のガイド23Bに左側X1から押さえ付けられることによって傾倒位置にある。
【0040】
繰出部42は、前後方向Yに延びるアーム状であって、その左側面は、後側Y2へ向かうにつれて左側X1へ向かうように前後方向Yに対して傾斜している。この左側面の後端部は、前後方向Yに沿って平坦な載置面42Aである。載置面42Aは、右側X2のガイド23Bの平坦面23Cとほぼ面一である。載置面42Aの後端部には、左側X1へ突出した繰出爪46が一体的に設けられている(
図5も参照)。繰出部42の前端部42Bは、右側X2へ折り曲げられていて、取込部41の窪み43に左側X1から嵌め込まれている。前端部42Bは、窪み43内で前後方向Yに移動できる。そのため、前端部42Bが窪み43内で前後方向Yに移動できる範囲内で、取込部41と繰出部42とは、前後方向Yに相対移動できるように遊びを持って連結されている。この構成では、取込部41の取込爪44と繰出部42の繰出爪46とは、一体化されておらず、分離された状態にある。
【0041】
取込部41と繰出部42とは、本体部20内で前後方向Yに沿って移動可能である。取込部41が移動する際、所定のタイミングになると、取込爪44は、傾倒位置から起立位置まで移動する。右側X2のガイド23Bには、傾倒位置から起立位置まで移動する取込爪44を通過させるための貫通穴(図示せず)が適宜形成されている。繰出部42が移動する際、繰出爪46は、常にガイド23Bよりも左側X1にはみ出ていて、ガイド23Bの左側面に沿って、搬送路21および収納室22を横断するように前後方向Yに移動する。本体部20内においてガイド23Bよりも右側X2には、取込部41および繰出部42を移動させるとともに、リフト33も移動させる駆動力を発生する駆動モータ51が設けられている。
【0042】
図4に示すように、駆動モータ51において駆動力を出力するための出力軸51Aは、後側Y2へ延びている。平歯車で構成された出力ギア52が出力軸51Aに対して同軸状で固定されている。出力ギア52は、左右方向Xに延びる支持軸53に対して同軸状で取り付けられた平歯車である中継ギア54と噛み合っている。左右方向Xに延びる支持軸55に対して同軸状で取り付けられた平歯車である駆動ギア56が、中継ギア54の後側Y2に配置され、中継ギア54と噛み合っている。駆動モータ51は、正逆回転可能である。駆動モータ51が正回転すると、駆動ギア56は、左側X1から見て反時計回りに回転し、駆動モータ51が逆回転すると、駆動ギア56は、左側X1から見て時計回りに回転する。
【0043】
駆動ギア56の左端面には、カム部57が一体的に設けられている。カム部57は、左右方向Xに薄く支持軸55と同軸状をなす円盤部58と、円盤部58の周上1箇所から円盤部58の径方向外側へ突出したカム突起59とを一体的に含む。左側X1から見て、カム突起59では、反時計回りの方向における端部に、円盤部58の径方向外側へ向かうにつれて反時計回りに尖った角部59Aが形成されている。左側X1から見て、カム突起59では、時計回りの方向における端部に、時計回りの方向へ膨出した湾曲面59Bが形成されている。駆動ギア56が回転したときのカム突起59の回転軌跡の途中に、前述したスライドレバー35の前端部が後側Y2から入り込んでいる。
【0044】
図5に示すように、駆動ギア56の右端面の外周部の周上1箇所には、右側X2へ突出した円柱状の軸部60が一体的に設けられている。軸部60に関連して、本体部20内において右側X2のガイド23Bよりも右側X2には、スライド部材61が設けられている。スライド部材61は、左右方向Xに薄い板状であって、本体部20によって前後方向Yへスライド可能に支持されている。スライド部材61の後端部には、スライド部材61を左右方向Xに貫通する長穴62が形成されている。長穴62は、上下方向Zに細長く、前後方向Yにおける長穴62の幅は、軸部60の直径よりも僅かに大きい。軸部60は、長穴62に対して左側X1から嵌め込まれている。スライド部材61の前端部には、左右方向Xに延びる回転軸63を中心に回転可能なピニオンギア64が設けられている。ピニオンギア64に関連して、取込部41の右側面には、前後方向Yに延びるラックギア65が一体的に設けられている。ピニオンギア64は、ラックギア65の下側Z2に配置され、ラックギア65と噛み合っている。
【0045】
図3に示すように、記録媒体処理装置1には、たとえばフォトインタラプタで構成された複数のセンサ67が設けられている。
図3では、本体部20の外側にセンサ67が模式的に図示されているが、実際には、センサ67は、本体部20に内蔵されている。複数のセンサ67は、出入検知センサ67Aと、処理位置検知センサ67Bと、抜取位置検知センサ67Cと、シャッターセンサ67Dと、収納検知センサ67Eと、待機位置検知センサ67Fと、繰出位置検知センサ67Gとを含む。
【0046】
出入検知センサ67Aは、出入口15における記録媒体Cの出し入れ、つまり、記録媒体Cの挿入や抜き取りを検知する。処理位置検知センサ67Bは、記録媒体Cが処理位置にあるか否かを検知する。抜取位置検知センサ67Cは、記録媒体Cが抜取位置にあるか否かを検知する。抜取位置の記録媒体Cでは、ほとんどの部分が出入口15から前側Y1にはみ出ているので、遊技客は、記録媒体Cをつまんで出入口15から抜き取ることができる。シャッターセンサ67Dは、シャッター39が開位置および閉位置のいずれに位置するのかを検知する。
【0047】
収納検知センサ67Eは、収納室22における記録媒体Cの有無を検知する。収納検知センサ67Eに関連して、
図3に示すように収納室22に記録媒体Cが存在しない場合には、シャッターレバー36が傾斜位置にあって、その検知部37が収納室22内に進出している。そのため、収納検知センサ67Eは、シャッターレバー36が傾斜位置にあることを検知することによって、収納室22に記録媒体Cが存在しないことを検知し、シャッターレバー36が水平位置にあることを検知することによって、収納室22に記録媒体Cが存在することを検知する。待機位置検知センサ67Fは、繰出部42が待機位置(後述する)にあるか否かを検知する。繰出位置検知センサ67Gは、繰出部42が繰出位置(後述する)にあるか否かを検知する。
【0048】
次に、記録媒体処理装置1における記録媒体Cの繰出動作および取込動作のそれぞれについて、
図6A〜
図9Dを参照しながら説明する。繰出動作とは、収納室22に収納された記録媒体Cを処理位置まで繰り出す動作である。取込動作とは、前側Y1から出入口15に挿入されて処理位置にある記録媒体Cを後側Y2に取り込んで収納室22に収納する動作である。取込動作で収納室22に収納される記録媒体Cとして、持玉データがなくなった一般記録媒体が挙げられる。この記録媒体Cは、取込動作で収納室22に収納されると、新規の一般記録媒体となって、以降の繰出動作によって遊技客に対して発行される。
【0049】
繰出動作も取込動作も行われない待機状態の記録媒体処理装置1が、
図6Aに示される。
図6Aでは、収納室22内に3枚の記録媒体Cが積層状態で収納されている。このとき、繰出部42は、前後方向Yにおける待機位置にある。
待機位置の繰出部42では、繰出爪46が、収納室22に収納された最も右側X2の記録媒体Cにおける前後方向Yの略中央部に右側X2から接触している。これにより、待機位置の繰出部42は、収納室22内の全ての記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させている。傾斜した状態で待機している記録媒体Cでは、略後半分がガイド23Bの傾斜面23Dに沿い、略前半分がガイド23Bの平坦面23Cから左側X1に浮いている。そのため、収納室22内の記録媒体Cと平坦面23Cとの間には、上下方向Zから見て前側Y1へ向けて徐々に広がる略三角形状の隙間66が形成されている。また、収納室22内では、記録媒体Cと平行な姿勢の支持板31が、付勢部材32の付勢力によって、左側X1から記録媒体Cを押圧しているので、記録媒体Cが傾斜した状態が安定している。
【0050】
また、待機位置の繰出部42では、前端部42Bが、取込部41の窪み43の後端に位置し、取込部41の後側当接部41Aに対して前側Y1から当接している。このときの取込部41は、前後方向Yにおける前進位置にあり、その前端部における取込爪44は、出入口15の僅か後側Y2において傾倒位置にある。このときシャッターレバー36は、傾斜位置にあって、シャッター39は、開位置にある。また、リフト33は、退避位置にある。
【0051】
収納室22内の最も右側X2の記録媒体が遊技客の記録媒体Cであって、この遊技客が遊技機2で遊技していることを前提として、以下では、
図6A〜
図7Dを参照しながら繰出動作について説明する。
遊技を終えた遊技客が別の遊技機2に移動したり、獲得したパチンコ玉について景品交換したりしたい場合には、前述した返却ボタン8(
図1参照)を押す。すると、待機状態の記録媒体処理装置1では繰出動作が始まって、駆動モータ51が正回転し、
図7Aに示すように、駆動ギア56は、左側X1から見て、白抜き矢印で示すように、反時計回りに回転する。すると、駆動ギア56の軸部60が、スライド部材61の長穴62内で上側Z1へ移動しながら、長穴62の周縁部を後側Y2へ押す。これにより、スライド部材61が後側Y2へ移動する。これに伴い、スライド部材61に設けられたピニオンギア64が反時計回りに回転するので、ピニオンギア64を噛み合うラックギア65を有する取込部41が前進位置から後側Y2へ移動する。ただし、取込部41が動き始めた段階では、繰出部42の前端部42Bが窪み43の途中にあって後側当接部41Aおよび前側当接部41Bのいずれからも離れているので、繰出部42は引き続き待機位置にある。
【0052】
そして、取込部41の後側Y2への移動によって、前側当接部41Bが繰出部42の前端部42Bに前側Y1から当接すると、取込部41と繰出部42との間の遊びがなくなるので、繰出部42が、
図7Bに示すように、取込部41に従動することによって、取込部41と一体となって待機位置から後側Y2へ移動する。このとき、引き続き反時計回りに回転する駆動ギア56のカム突起59における角部59Aが、今までホームポジションにあったスライドレバー35に上側Z1から接触する。これにより、スライドレバー35は、ホームポジションから下側Z2へ回動する。これでは、駆動ギア56の回転が回動軸34には伝わらないので、回動軸34は静止した状態にあり、リフト33は退避位置のままである。
【0053】
図7Cに示すように、取込部41および繰出部42が、一体となってさらに後側Y2へ移動すると、繰出部42は、
図6Bに示す繰出位置に到達する。繰出位置の繰出部42では、繰出爪46が、収納室22内の記録媒体Cから離れて収納室22よりも後側Y2に位置している。そのため、収納室22内の記録媒体Cは、前述したように傾斜していた状態(
図6A参照)から、前後方向Yに沿った状態に変わる。このとき、収納室22内の記録媒体Cは、右側X2のガイド23Bの平坦面23Cと、繰出部42の後端部の載置面42Aとに右側X2から支えられている。これによって、記録媒体Cが前後方向Yに沿った状態が維持されている。収納室22内で最も右側X2の記録媒体Cは、返却ボタン8を押した遊技客のための記録媒体Cであり、収納室22内で最も右側X2に位置し、前後方向Yから見て、出入口15、連絡口30および搬送路21のそれぞれと重なっている。
【0054】
このときの取込部41は、前後方向Yにおいて最も後側Y2の後退位置にある。後退位置における取込部41では、その前端部における取込爪44が起立位置にあって、収納室22内で最も右側X2の記録媒体Cに対して前側Y1から隣接している。シャッターレバー36は、その後端部の検知部37が収納室22内の記録媒体Cによって左側X1から押圧されることによって、今までの傾斜位置から揺動して水平位置にある。シャッター39は、閉位置にあって搬送路21内にはみ出している。リフト33は退避位置のままである。
【0055】
図7Cを参照して、駆動モータ51は引き続き正回転していて、駆動ギア56は、反時計回りの回転を続ける。すると、駆動ギア56の軸部60が、スライド部材61の長穴62内で今度は下側Z2へ移動しながら、長穴62の周縁部を前側Y1へ押す。これにより、スライド部材61が前側Y1へ移動する。これに伴い、スライド部材61に設けられたピニオンギア64が時計回りに回転するので、ピニオンギア64を噛み合うラックギア65を有する取込部41が後退位置から前側Y1へ移動する。ただし、取込部41が移動し始めた段階では、繰出部42の前端部42Bが窪み43の途中にあって後側当接部41Aおよび前側当接部41Bのいずれからも離れているので、繰出部42は引き続き繰出位置にある。
【0056】
そして、取込部41の前側Y1への移動によって、後側当接部41Aが繰出部42の前端部42Bに後側Y2から当接すると、取込部41と繰出部42との間の遊びがなくなるので、繰出部42が、
図7Dに示すように、取込部41に従動することによって、取込部41と一体となって繰出位置から前側Y1へ移動する。このときの繰出部42の移動速度は、たとえば、平均で250mm/秒である。また、引き続き反時計回りに回転する駆動ギア56のカム突起59が、スライドレバー35が外れるので、スライドレバー35はホームポジションまで戻る。リフト33は退避位置のままである。
【0057】
取込部41および繰出部42が、一体となって前側Y1へ移動すると、繰出部42は、その後端部の繰出爪46が収納室22内における最も右側X2の記録媒体Cに後側Y2から係合した状態で、この記録媒体Cを伴って前側Y1へ移動する。これにより、この記録媒体Cは、収納室22から前側Y1へ繰り出される。繰出部42が
図6Cに示す待機位置まで戻ると、駆動モータ51の駆動が停止される。これにより、繰出動作が完了する。駆動モータ51は、駆動停止まで常に正回転していたので、繰出動作のための各部品の全ての動作が駆動モータ51の正回転だけで実現されたことが分かる。
【0058】
駆動モータ51の駆動が停止されたとき、待機位置の繰出部42では、繰出爪46が、収納室22に残った最も右側X2の記録媒体Cにおける前後方向Yの略中央部に右側X2から接触している。これにより、待機位置の繰出部42は、収納室22内の全ての記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させている。取込部41は、前進位置にあり、取込爪44は、出入口15の僅か後側Y2において傾倒位置にある。このとき、シャッターレバー36は、引き続き水平位置にあって、シャッター39は、閉位置にあって搬送路21内にはみ出している。リフト33は、退避位置にある。
【0059】
繰出部42が待機位置にあるとき、先ほど繰出部42に伴われて収納室22から前側Y1へ繰り出された記録媒体Cは、搬送路21における処理位置で静止している。ICリーダー48は、処理位置にあるときの記録媒体Cとの間で情報処理を行なう。
以上のように、繰出部42は、繰り出される記録媒体Cを情報処理のために処理位置まで搬送する際に、収納室22内の別の記録媒体Cに接触することによって当該別の記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させる。
【0060】
処理位置にある記録媒体Cの後端部(厳密には、略後半分部分)は、収納室22内に入り込んでいる。しかし、収納室22内で前後方向Yに対して傾斜した状態で待機する当該別の記録媒体Cでは、処理位置の記録媒体Cに近い前端部(厳密には、略前半分部分)が、処理位置の記録媒体Cの後端部から隙間66を隔てて左右方向Xに離れて配置される。隙間66により、処理位置の記録媒体Cおよび収納室22内の当該別の記録媒体CのそれぞれのアンテナAのパターンが互いに干渉しなくなるので、ICリーダー48は、収納室22内の記録媒体Cの影響を受けることなく、処理位置の記録媒体Cとの間で情報処理を正常に行なうことができる。
【0061】
処理位置にある記録媒体Cの前端部は、搬送ベルト26と搬送ベルト27とに挟まれている。情報処理が完了すると、搬送モータ28が駆動されて、搬送ベルト26と搬送ベルト27とが、互いの対向部分が前側Y1に移動するように周回移動する。これにより、処理位置にあった記録媒体Cは、前側Y1へ移動する。このとき、収納室22内の記録媒体Cが引き続き前後方向Yに対して傾斜した状態で待機しているので、移動する記録媒体Cには、収納室22内の記録媒体Cが載っていない。そのため、周回移動する搬送ベルト26および27は、記録媒体Cとの間のグリップ力が小さくても、記録媒体Cを前側Y1へ移動させることができる。搬送ベルト26および27による記録媒体Cの搬送速度は、たとえば300mm/秒である。
【0062】
そして、移動する記録媒体Cの先には、閉位置のシャッター39が存在するが、記録媒体Cは、シャッター39の左端面39Aに接触して左端面39Aを後側Y2から押圧する。左端面39Aは、後側Y2へ向かうにつれて右側X2へ延びる傾斜面であるので、左端面39Aに対する記録媒体Cの押圧力が右側X2へ作用することによって、シャッター39が右側X2の開位置まで移動する。これにより、記録媒体Cの先にシャッター39が存在しなくなるので、記録媒体Cは、さらに前側Y1へ進んで、
図6Dに示すように、前述した抜取位置まで到達する。これにより、搬送モータ28の駆動が停止される。
【0063】
搬送モータ28の駆動が停止した状態では、記録媒体Cの後端部は、搬送ベルト26と搬送ベルト27とに挟まれている。遊技客は、抜取位置の記録媒体Cを前側Y1へ抜き取ることによって、収納室22から繰り出された記録媒体Cを受け取ることができる。
次に、
図8A〜
図9Dを参照しながら取込動作について説明する。遊技客は、自身の記録媒体Cにプリペイド価値を付加したり、遊技のためにプリペイド価値や持玉データを引き落としてパチンコ玉に替えたり、記録媒体Cの記憶部Mに記憶された情報を閲覧したりしたい場合には、記録媒体Cを、
図8Aに示す待機状態の記録媒体処理装置1の出入口15に前側Y1から挿入する。すると、記録媒体Cの後端部は、搬送ベルト26と搬送ベルト27とに挟まれる。その後、搬送モータ28が駆動される。すると、搬送ベルト26と搬送ベルト27とが、互いの対向部分が後側Y2に移動するように周回移動する。これにより、記録媒体Cは、後側Y2へ取り込まれる。
【0064】
後側Y2へ取り込まれた記録媒体Cが、
図8Bに示すように処理位置に到達すると、搬送モータ28の駆動が停止される。これに応じて、ICリーダー48は、処理位置にあるときの記録媒体Cとの間で情報処理を行なう。取り込まれる記録媒体Cが情報処理のために処理位置まで搬送される際、繰出部42は、常に待機位置にあり、収納室22内の別の記録媒体Cに接触することによって当該別の記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させている。
【0065】
処理位置にある記録媒体Cの後端部は、前述したように収納室22内に入り込んでいる。しかし、収納室22内で前後方向Yに対して傾斜した状態で待機する当該別の記録媒体Cでは、処理位置まで搬送される記録媒体Cに近い前端部が、処理位置の記録媒体Cの後端部から隙間66を隔てて左側X1に離れて配置されている。そのため、処理位置の記録媒体Cの先端(後端)が当該別の記録媒体Cに接触することを防止できる。これにより、取込時において記録媒体Cに傷が付くことを防止できる。また、隙間66により、処理位置の記録媒体Cおよび収納室22内の当該別の記録媒体CのそれぞれのアンテナAのパターンが互いに干渉しなくなるので、ICリーダー48は、収納室22内の記録媒体Cの影響を受けることなく、処理位置の記録媒体Cとの間で情報処理を正常に行なうことができる。情報処理の一環としてICリーダー48が記録媒体CのIDを認証することによって記録媒体Cの識別を完了させると、台間記録媒体処理機3において、この記録媒体Cに関連する情報が表示部12に表示されたり、この記録媒体Cに対応するプリペイド価値や持玉データ等の範囲で遊技客へのパチンコ玉の貸出が可能になったりする。
【0066】
情報処理が完了すると、取込動作が始まって、駆動モータ51が逆回転し、
図9Aに示すように、駆動ギア56は、左側X1から見て、白抜き矢印で示すように、時計回りに回転する。すると、駆動ギア56の軸部60が、スライド部材61の長穴62内で下側Z2へ移動しながら、長穴62の周縁部を後側Y2へ押す。これにより、スライド部材61が後側Y2へ移動する。これに伴い、スライド部材61に設けられたピニオンギア64が反時計回りに回転するので、ピニオンギア64を噛み合うラックギア65を有する取込部41が前進位置から後側Y2へ移動する。ただし、取込部41が動き始めた段階では、繰出部42の前端部42Bが窪み43の途中にあって後側当接部41Aおよび前側当接部41Bのいずれからも離れているので、繰出部42は引き続き待機位置にある。
【0067】
そして、取込部41の後側Y2への移動によって、前側当接部41Bが繰出部42の前端部42Bに前側Y1から当接すると、取込部41と繰出部42との間の遊びがなくなる。このとき、取込部41の取込爪44は、起立位置にあり、情報処理後の記録媒体Cに前側Y1から係合する。この状態で、繰出部42は、
図8Cに示すように、取込部41に従動することによって、取込部41と一体となって、待機位置から後側Y2の繰出位置まで移動する。これにより、取込爪44と係合した記録媒体Cが搬送路21内を後側Y2へ移動し、連絡口30を通って前側Y1から収納室22内に取り込まれる。
【0068】
また、繰出部42が繰出位置まで移動するのに伴い、今まで収納室22内にあった記録媒体Cは、取り込まれる記録媒体Cによって左側X1へずらされながら、右側X2のガイド23Bの平坦面23Cと平行となるように前後方向Yに沿った状態になる。収納室22内に取り込まれた記録媒体Cは、右側X2のガイド23Bの平坦面23Cと、繰出部42の後端部の載置面42Aとに右側X2から支えられることによって前後方向Yに沿った状態で、収納室22内の記録媒体Cに対して右側X2から積層される。このとき、繰出位置にある繰出部42の繰出爪46は、収納室22内の記録媒体Cよりも後側Y2に配置される。また、このときの取込部41は、後退位置にある。
【0069】
その後、
図9Bに示すように、駆動ギア56が引き続き時計回りに回転すると、今まで下側Z2へ移動していた駆動ギア56の軸部60が、今度は、スライド部材61の長穴62内で上側Z1へ移動しながら、長穴62の周縁部を前側Y1へ押す。これに伴い、スライド部材61に設けられたピニオンギア64が時計回りに回転するので、ピニオンギア64を噛み合うラックギア65を有する取込部41が、繰出部42を待機位置へ戻すために後退位置から前側Y1へ移動する。ただし、取込部41が動き始めた段階では、繰出部42の前端部42Bが窪み43の途中にあって後側当接部41Aおよび前側当接部41Bのいずれからも離れているので、繰出部42は引き続き繰出位置にある。
【0070】
また、取込部41が前側Y1への移動を開始するのと同時に、時計回りに回転する駆動ギア56のカム突起59における湾曲面59Bが、ホームポジションのスライドレバー35に下側Z2から接触する。前述したようにスライドレバー35は、ホームポジションから上側Z1へ回動できないので、回動する代わりに湾曲面59Bに沿ってカム突起59に乗り上げようとし、その際、
図9Cに示すように、後側Y2に移動する。すると、スライドレバー35が連結された回動軸34がリフト33を伴って回動し、リフト33は、
図8Dに示すように、今までの退避位置から進出位置まで左側X1へ移動する。このとき、スライドレバー35、駆動ギア56、スライド部材61、ピニオンギア64およびラックギア65は、リフト33の移動を取込部41の移動と連動させる連動機構68として機能している(
図9C参照)。
【0071】
リフト33は、左側X1の進出位置まで移動することにより、今まで収納室22内で前後方向Yに沿った状態で積層されていた記録媒体C(
図8C参照)の後端部を押して左側X1へ移動させる。その結果、収納室22内の記録媒体Cは、後端部が前端部よりも左側X1にずれるように前後方向Yに対して傾斜した状態となる。収納室22内で最も右側X2の記録媒体Cでは、その前端よりも後側Y2の部分が、右側X2のガイド23Bの平坦面23Cから左側X1へ浮いていて、この記録媒体Cの後端は、繰出位置の繰出部42の繰出爪46よりも左側X1に位置している。
【0072】
その後、取込部41の前側Y1への移動によって、後側当接部41Aが繰出部42の前端部42Bに後側Y2から当接すると、取込部41と繰出部42との間の遊びがなくなる。このとき、今まで上側Z1へ移動していた駆動ギア56の軸部60が、今度は、
図9Dに示すように、スライド部材61の長穴62内で下側Z2へ移動しながら、長穴62の周縁部を前側Y1へ押す。これにより、繰出部42が、
図8Eに示すように、取込部41に従動することによって、取込部41と一体となって、繰出位置から前側Y1の待機位置まで移動する。
【0073】
このように取込部41に遅れて繰出部42が移動するのに先立って、繰出爪46が収納室22内の記録媒体Cに引っ掛からないように進出位置のリフト33が当該記録媒体Cを左右方向Xへ移動させている(
図8D参照)。これにより、リフト33が記録媒体Cを移動させた後に繰出部42が移動する際に、繰出爪46が収納室22内の記録媒体Cに引っ掛かることを防止できる。そのため、繰出部42を円滑に待機位置まで戻せるので、処理時間の一層の短縮化を図ることができる。
【0074】
また、繰出部42の移動によって繰出爪46が収納室22内の記録媒体Cの後端部よりも前側Y1に移動すると、
図9Dに示すように、スライドレバー35は、駆動ギア56の時計回りの回転に伴って駆動ギア56のカム突起59を通過することにより、前側Y1の元の位置へ戻る。これにより、スライドレバー35が連結された回動軸34がリフト33を伴って今までとは逆向きに回動し、リフト33は、
図8Eに示すように、退避位置まで戻る。
【0075】
そして、繰出部42が待機位置に到達すると、駆動モータ51の駆動が停止される。駆動モータ51の駆動が停止されると、記録媒体処理装置1は待機状態となり、取込動作が完了する。駆動モータ51は、駆動停止まで常に逆回転していたので、取込動作のための各部品の全ての動作が駆動モータ51の逆回転だけで実現されたことが分かる。
待機状態の記録媒体処理装置1において、待機位置の繰出部42の繰出爪46が、収納室22に残った最も右側X2の記録媒体Cにおける前後方向Yの略中央部に右側X2から接触している。これにより、待機位置の繰出部42は、収納室22内の全ての記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させている。
【0076】
図10A〜
図10Fは、比較例に係る記録媒体処理装置70の内部構造の平面図であって、記録媒体の繰出動作を行っている状態を示す。比較例の記録媒体処理装置70について、前述した左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zを用いて簡単に説明する。
図10Aに示すように、記録媒体処理装置70には、その前端に位置する記録媒体Cの出入口71と、出入口71から後側Y2へ前後方向Yに沿って延びる搬送路72と、搬送路72に対して後側Y2から接続される収納室73とが設けられている。
【0077】
搬送路72において出入口71の近傍には、回転駆動される左右一対の搬送ローラ74が前後に2組設けられている。搬送路72の左側X1において、収納室73の近傍には、ICリーダー48(
図3参照)と同じ機能を持つICリーダー75が配置されている。
収納室73は、左側X1へ広がる空間であって、記録媒体Cを常に前後方向Yに沿った状態で積層して収納できる。収納室73内には、記録媒体Cと平行な状態で記録媒体Cの左側X1に配置される支持板76と、支持板76を記録媒体Cに対して左側X1から押し付ける付勢部材77とが設けられている。
【0078】
収納室73の右側X2には、前後に長手のブロック状のリフト78が配置されている。リフト78の左側面は、前後上下に沿って平坦である。リフト78は、左右方向Xに移動することによって、収納室73内に右側X2から進入したり、収納室73内から右側X2へ退避したりすることができる。
記録媒体処理装置70内には、搬送体79が前後方向Yへ移動可能に設けられている。搬送体79の移動速度は、平均でたとえば70mm/秒である。搬送体79は、前後方向Yに長手のアーム状であり、その前端部には取込爪80が設けられ、その後端部には繰出爪81が設けられている。そのため、搬送体79では、取込爪80と繰出爪81とが直結されている。取込爪80は、
図10Aに示すように左側X1へ起立して搬送路72内にはみ出した起立位置と、
図10Bに示すように前後方向Yに沿うように傾倒して搬送路72から外れた傾倒位置との間で回動可能であって、起立位置へ向けて常に付勢されている。繰出爪81は、左側X1に突出した突起である。
【0079】
図10Aにおける記録媒体処理装置70は待機状態にある。このとき、搬送体79は待機位置にあり、収納室73内の記録媒体Cは、起立位置の取込爪80と繰出爪81との間に位置している。繰出動作が開始されると、搬送体79が前側Y1へ移動する。これにより、繰出爪81が収納室73内における最も右側X2の記録媒体Cに後側Y2から係合し、搬送体79は、この記録媒体Cを、
図10Bに示す処理位置まで繰り出す。
【0080】
その後、
図10Cに示すように、リフト78が収納室73内に右側X2から進入して、収納室73内の記録媒体Cを左側X1へ移動させる。これにより、処理位置にある記録媒体Cにおいて収納室73内に残った後端部と、収納室73内の別の記録媒体Cとの間には、左右方向Xにおける隙間82が形成される。
隙間82が形成されると、ICリーダー75は、処理位置の記録媒体Cとの間で情報処理を行なう。この際、隙間82によって、処理位置にある記録媒体Cが収納室73内の別の記録媒体Cから離れているので、ICリーダー75は、当該別の記録媒体Cの影響を受けることなく、処理位置の記録媒体Cに対して正常に情報処理を行なえる。
【0081】
処理位置にある記録媒体Cの前端部は、後側Y2における左右の搬送ローラ74の間に挟まっている。情報処理が完了すると、これらの搬送ローラ74が回転し、処理位置の記録媒体Cは、
図10Dに示すように、前側Y1の出入口71まで搬送される。搬送ローラ74による記録媒体Cの搬送速度は、たとえば、113mm/秒である。搬送ローラ74の回転中において、リフト78は引き続き収納室73内に進入している。
【0082】
出入口71の記録媒体Cが遊技客によって抜き取られると、搬送体79は後側Y2へ移動して、
図10Eに示すように待機位置まで戻る。その際、収納室73内の記録媒体Cが搬送体79の繰出爪81にぶつからないように、リフト78は引き続き収納室73内に進入して、収納室73内の記録媒体Cを左側X1へずらしている。
搬送体79が待機位置に到達すると、リフト78は、
図10Fに示すように収納室73内から右側X2へ退避する。これにより、繰出動作が完了する。
【0083】
本実施形態に係る記録媒体処理装置1では、繰出部42が、繰出動作の際に記録媒体Cを処理位置まで搬送するついでに、収納室22内の記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で待機させて、情報処理のための隙間66を予め確保している(
図6C参照)。そのため、比較例に係る記録媒体処理装置70において繰出動作での情報処理のために必要な隙間82に関連してリフト78を移動させるという独立した処理(
図10Cおよび
図10F参照)を省略できるので、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0084】
一方、
図11Aに示すように、記録媒体処理装置70が待機状態において、遊技客が記録媒体Cを前側Y1から出入口71に差し込むと、記録媒体Cの後端部が、前側Y1における左右の搬送ローラ74の間に挟まる。すると、
図11Bに示すように、搬送ローラ74が回転することによって記録媒体Cが後側Y2の処理位置へ向けて搬送され、同時に、リフト78が収納室73内に右側X2から進入して、収納室73内の記録媒体Cを左側X1へ移動させるので、前述した隙間82が形成される。処理位置に到達した記録媒体Cの前端部は、後側Y2の左右の搬送ローラ74の間に挟まっている。
【0085】
隙間82が形成されると、ICリーダー75は、処理位置の記録媒体Cとの間で情報処理を行なう。その後、
図11Cに示すように、今まで待機位置にあった搬送体79が前側Y1へ移動する。移動後の搬送体79では、取込爪80が、傾倒位置にあり、処理位置の記録媒体Cの前端部に対して僅か前側Y1に位置している。
次に、
図11Dに示すように、搬送体79が後側Y2へ数mm(たとえば10mm)程度移動し、傾倒位置の取込爪80が処理位置の記録媒体Cの前端部の後隣に配置される。
【0086】
その後、処理位置にある記録媒体Cの前端部を挟んでいた後側Y2の左右の搬送ローラ74が回転し、記録媒体Cが処理位置から後側Y2へ数mm程度搬送される。すると、
図11Eに示すように、この記録媒体Cが搬送ローラ74から外れるとともに、この記録媒体Cの前端部より前側Y1にある取込爪80が起立位置まで勢いよく回動し、記録媒体Cの前端部に前側Y1から係合する。
【0087】
次に、これまで収納室73内に進入していたリフト78が、
図11Fに示すように、収納室73内にから右側X2へ退避する。その後、
図11Gに示すように、搬送体79が後側Y2の待機位置まで移動し、その際、繰出爪81に係合している記録媒体Cを収納室73内に取り込む。これにより、取込動作が完了する。取込動作で取り込まれた記録媒体Cは、収納室73内において最も右側X2で収納される。
【0088】
本実施形態に係る記録媒体処理装置1では、取込動作の際に記録媒体Cが処理位置まで搬送されるのに先立って、繰出部42が、収納室22内の別の記録媒体Cを前後方向Yに対して傾斜した状態で既に待機させて、情報処理のための隙間66を予め確保している(
図8A参照)。そのため、比較例に係る記録媒体処理装置70において取込動作での情報処理のために必要な隙間82に関連してリフト78を移動させるという独立した処理(
図11Bおよび
図11F参照)を新たに行わずに済むので、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0089】
また、本実施形態において、比較例のリフト78に相当するリフト33は、取込動作の際に取込部41の移動に連動して移動するので(
図9B〜
図9D参照)、リフト78を単独で移動させる比較例(
図11Bおよび
図11F参照)と比べて、処理時間の一層の短縮化を図ることができる。
また、本実施形態に係る記録媒体処理装置1では、比較例に係る記録媒体処理装置70において情報処理後に搬送体79を後側Y2へ数mm移動させる処理(
図11D参照)や、記録媒体Cを処理位置から後側Y2へ数mm程度搬送させる処理(
図11E参照)が不要であるので、処理時間の一層の短縮化を図ることができる。
【0090】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、この記録媒体処理装置1は、台間記録媒体処理機3以外に記録媒体Cを取り扱う製品全般にも適用可能である。その場合、記録媒体処理装置1は、出入口15が横長になるように配置されてもよい。出入口15が横長になる場合、前述した左右方向Xと上下方向Zとの関係が逆になる。
【0091】
また、記録媒体処理装置1において出入口15の近傍では、搬送ベルト26および27の周回移動によって記録媒体Cを搬送したが、これらの搬送ベルト26および27を省略し、ローラ24および25の回転だけで記録媒体Cを搬送してもよい(
図3参照)。
また、前述した記録媒体処理装置1は、繰出動作および取込動作の両方が可能であったが、繰出動作だけが可能であってもよい。繰出動作だけが可能な記録媒体処理装置1では、リフト33を省略できるので、記録媒体処理装置1の小型化や、コストダウンを図ることができる。
【0092】
また、記録媒体Cとして、前述したICカードに限らず、積層可能な全ての物を挙げられる。