特許第6395318号(P6395318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395318
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20180913BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H02M3/155 K
   H02M3/28 K
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-137394(P2015-137394)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-22837(P2017-22837A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】堀井 一宏
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−131721(JP,A)
【文献】 特開2001−025245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 − 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、前記主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一端が接続され、前記転流素子の他端にコンデンサの一端が接続され、前記コンデンサの他端とチョークコイルの他端が入力電源の他端に接続され、前記コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧を前記パワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
前記制御回路は、
前記パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
前記パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
前記加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
前記三角波電圧信号と前記出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して前記主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
前記スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して前記転流素子を前記主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、前記主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、前記転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、前記バッファコンデンサの他端と前記チョークコイルの一次巻線の他端が前記入力電源の他端に接続され、前記チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、前記出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧を前記パワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
前記制御回路は、
前記パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
前記パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
前記加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
前記三角波電圧信号と前記出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して前記主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
前記スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して前記転流素子を前記主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、前記主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、前記転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、前記バッファコンデンサの他端と前記チョークコイルの一次巻線の他端が前記入力電源の他端に接続され、前記チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、前記出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧を前記パワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
前記制御回路は、
前記パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
前記転流素子の他端と前記バッファコンデンサの一端が接続された箇所から、入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を取得し、前記加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
前記三角波電圧信号と前記出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して前記主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
前記スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して前記転流素子を前記主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
入力電源の一端にチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、前記チョークコイルの一次巻線の他端に主スイッチング素子の一端が接続され、前記主スイッチング素子の他端に入力電源の他端が接続され、前記チョークコイルの二次巻線の両端に転流素子とコンデンサの直列回路を接続し、前記コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧を前記パワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
前記制御回路は、
前記パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
前記パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
前記加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
前記三角波電圧信号と前記出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して前記主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
前記スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して前記転流素子を前記主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1、2又は4記載のスイッチング電源装置において、
前記加算電圧発生回路は、
前記チョークコイルに結合するサブ巻線備え、前記主スイッチング素子がオンのときに前記サブ巻線に発生する電圧と、前記主スイッチング素子がオフのときに前記サブ巻線に発生する電圧を加算した値を加算値比例電圧として生成する回路であることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項4記載のスイッチング電源装置において、
前記加算電圧発生回路は、前記主スイッチング素子がオフのときに前記主スイッチング素子の両端に発生する電圧を、加算値比例電圧として生成する整流平滑回路であることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れかに記載のスイッチング電源装置に於いて、
前記三角波発生回路は、
前記加算値比例電圧に比例した加算値比例電流を出力する電流源回路と、
前加算値比例電流で充電される三角波コンデンサと、
前記スイッチング周期で三角波コンデンサを放電するリセット回路と、
を備え、前記三角波コンデンサの充電と放電によって、前記スイッチング周期で振幅する前記三角波電圧信号を出力することを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を所望の電圧に変換し電子機器に供給するためのスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力電圧を主スイッチング素子のオン、オフにより断続電圧に変換し、これを整流・平滑することで直流の出力電圧を得ることができるスイッチング電源装置が広く用いられている。例えば、これらのスイッチング電源装置として、非絶縁型のコンバータでは降圧チョッパーが用いられ、絶縁型のコンバータではシングルエンディッドフォワードコンバータが用いられる。
【0003】
これらのスイッチング電源装置では、出力電圧を所定の値に安定化するための制御回路を備えたものが多い。この制御回路としては、スイッチング素子のオンのデューティを制御することで出力電圧を制御する方式であるパルス幅変調制御(PWM制御)が用いられているものが多い。
【0004】
スイッチング電源装置の入力電源電圧が急激に変動した場合でも、スイッチング電源装置の出力電圧を安定に制御する方法として、フィードバック制御回路を介さずに、スイッチング電源装置の入力電源電圧の変化に対してスイッチング素子をオンするパルス幅を決定する制御方法である入力電圧フィードフォワード制御が知られている。
【0005】
例えば、降圧チョッパーに入力電圧フィードフォワード制御を適用した例として特許文献1のものがあり、また、シングルエンディッドフォワードコンバータに入力電圧フィードフォワード制御を適用した例として特許文献2,3のものがある。
【0006】
これらのスイッチング電源装置は、入力電圧を検出することで入力電圧に比例した傾きを持つ三角波を生成し、この三角波を基にPWM制御を行うことで、入力電圧の変動に対して、即座に主スイッチング素子のパルス幅を変化させる動作を行い、出力電圧の安定性を向上させている。
【0007】
以下、絶縁型シングルエンディッドフォワードコンバータを例に入力電圧フィードフォワード制御の説明を行う。
【0008】
(絶縁型シングルエンディッドフォワードコンバータ)
図8に、絶縁型シングルエンディッドフォワードコンバータに、入力電圧フィードフォワード制御を適用したスイッチング電源装置の一例を示す(特許文献1)。図9図8のスイッチング電源装置の入力電圧が低い場合の動作波形を示したタイムチャート、図10図8のスイッチング電源装置の入力電圧が高い場合の動作波形を示したタイムチャートである。
【0009】
図8のスイッチング電源装置100は、入力電源101にトランス102の一次巻線104と主スイッチング素子108が直列に接続され、トランス102の2次巻線106に同期整流素子112,114、同期整流制御回路115、チョークコイル116及び平滑コンデンサ118を持つ整流平滑回路110が接続され、主スイッチング素子108に制御回路130が接続され、制御回路130が主スイッチング素子108のオンデューティを制御することで、出力電圧Voを所定の電圧に制御する。
【0010】
制御回路130は、三角波発生回路132、出力電圧制御信号発生回路134、スイッチング素子駆動回路136から構成される。三角波発生回路132は、入力電源電圧Vinに比例した電流Iを出力する抵抗Riを持つ電流源回路142、三角波コンデンサ144及びリセット回路145より構成される。
【0011】
ここで三角波コンデンサ144の発生する三角波電圧信号(コンデンサ電圧)をVtriとすると、電流源回路142の出力電流Iは、抵抗Riを流れる電流となり、
I=(Vin−Vtri)/Ri
となる。
【0012】
Vin>>Vtriとすると、I≒Vin/Riとなるため、電流源回路142は入力電圧Vinに比例した電流Iを出力する。即ち
【0013】
【数1】
【0014】
となる。
【0015】
次に図8のスイッチング電源の動作を図9及び図10のタイムチャートを参照して説明する。
【0016】
まず、リセット回路145は、図9(A)のように、所定の周期Tでリセット信号を瞬時的に出力して三角波発生回路132の三角波コンデンサ144を放電リセットし、このリセット周期Tが、スイッチング電源装置のスイッチング周波数となる。三角波コンデンサ144がリセットされると、スイッチング素子駆動回路136は主スイッチング素子108をオンさせる。
【0017】
続いて三角波コンデンサ144は電流Iで充電され、コンデンサ電圧Vtriは時間tに対し式(2)に従って変化する。
【0018】
【数2】
【0019】
ここで、Vinは入力電圧、tは充電時間、Cは三角波コンデンサ144の容量、Riは抵抗値である。
【0020】
三角波発生回路132からの三角波電圧信号Vtriはスイッチング素子駆動回路136に設けたPWMコンパレータ150の反転入力端子に出力される。
【0021】
一方、出力電圧制御信号発生回路134は基準電圧源148による基準電圧Vrefとスイッチング電源装置の出力電圧Voの差分を誤差アンプ146で増幅した誤差電圧を出力電圧制御信号VFBとして発生し、PWMコンパレータ150の非反転入力端子に出力している。
【0022】
PWMコンパレータ150は三角波電圧信号Vtriと出力電圧制御信号VFBを比較し、Vtri<VFBのとき駆動信号VGSにより主スイッチング素子108をオンし、Vtri≧VFBのとき駆動信号VGSにより主スイッチング素子108をオフすることで、主スイッチング素子108のオン期間Ton、即ちオンデューティ=(Ton/T)を制御する。
【0023】
このような制御回路130による主スイッチング素子108のオン、オフ動作が繰り返されることで、トランス102の一次巻線104にパルス状の電圧が印加され2次側に伝送される。トランス102の2次巻線106に発生したパルス状の電圧は、整流平滑回路110により直流に変換され、スイッチング電源装置の出力電圧Voとなる。
【0024】
次に、図8のスイッチング電源装置が理想的に動作した場合の出力電圧制御を説明する。理想的な動作をした場合の図8のスイッチング電源装置の出力電圧は式(3)のように決定される。
【0025】
【数3】
【0026】
ここで、Voは出力電圧、Vinは入力電圧、N1はトランス102の一次巻線104の巻数、N2はトランス102の2次巻線106の巻数、Tはスイッチング周期、Tonは主スイッチング素子108のオン時間である。
【0027】
主スイッチング素子108のオン時間Tonは、三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBに到達するまでの時間で決定される。
Vtri=VFB (4)
式(1)〜式(4)から以下の式が得られる。
【0028】
【数4】
【0029】
式(5)から、理想的に動作する図8のスイッチング電源装置は、出力電圧制御信号VFBが一定の値となるように制御を行なうことで、入力電圧Vinが変動しても出力電圧Voを一定とすることができることが分かる。
【0030】
式(5)を定性的に表すと、図9に示すように入力電圧Vinが低い場合は、PWMコンパレータ150に入力する三角波電圧信号Vtriの上昇速度が遅いため、主スイッチング素子108がオンしている期間Tonが長くなる。一方、図10に示すように入力電圧Vinが高い場合は、PWMコンパレータ150に入力する三角波電圧信号Vtriの上昇速度が速いため、主スイッチング素子108がオンしている期間Tonが短くなる。
【0031】
図8のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの急激な変動に対して、出力電圧制御信号発生回路134の応答に頼ることなく(つまり、出力電圧制御信号VFBが一定値のままであっても)、主スイッチング素子108のオンデューティが高速に応答し、出力電圧を一定値に保つことができる。従って、出力電圧制御信号発生回路134を応答速度が遅い安価な部品で構成したとしても、安定性の高いスイッチング電源装置を作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開平03−183357号公報
【特許文献2】特開2008−131721号公報
【特許文献3】特開2010−124524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
(昇降圧チョッパーに従来の入力電圧フィードフォワード制御を適用した場合の問題)
しかしながら、このような従来のスイッチング電源装置に用いた入力電圧フィードフォワード制御を昇降圧チョッパーやこれから派生したスイッチング電源装置に用いた場合、入力電圧の急激な変化に対して、出力電圧制御信号発生回路が高速に応答しないと、スイッチング電源装置の出力電圧を安定に制御することができない。以下、詳細を説明する。
【0034】
図11は、昇降圧チョッパー回路に、従来の入力電圧フィードフォワード制御を適用したスイッチング電源装置の従来例を示す。
【0035】
図11のスイッチング電源装置200は、パワー回路として昇降圧チョッパー回路を使用しており、入力電源212のプラス側となる一端に主スイッチング素子214の一端が接続され、主スイッチング素子214の他端には、チョークコイル216の一端と転流素子218の一端が接続され、転流素子218の他端にはコンデンサ220の一端が接続されている。そして、入力電源212のマイナス側となる他端には、チョークコイル216の他端とコンデンサ220の他端が接続されている。
【0036】
図11のスイッチング電源装置200は、主スイッチング素子214のオン、オフによって入力電圧を断続電圧に変換する。主スイッチング素子214と転流素子218は、相補的にオン、オフするように制御されており、主スイッチング素子214がオンのときにチョークコイル216に磁気エネルギーを蓄え、主スイッチング素子214がオフのときにチョークコイル216に蓄えられた磁気エネルギーを、転流素子218を介してコンデンサ220に出力する。
【0037】
転流素子218は、主スイッチング素子214と相補的にオン、オフするように制御されることで、同期整流を行っている。
【0038】
制御回路130は、三角波発生回路132、出力電圧制御信号発生回路134、スイッチング素子駆動回路136及び転流素子駆動回路138から構成される。
【0039】
三角波発生回路132は、電流源回路142(ここでは、抵抗Riとした)と三角波コンデンサ144で構成される。三角波コンデンサ144は電流源回路142が出力する入力電圧比例電流Iで充電される。
【0040】
三角波コンデンサ144の両端には、リセット回路145が接続される。リセット回路145は、一定値に設定されたスイッチング周期で三角波コンデンサ144をリセットする。これにより、三角波コンデンサ144の電圧である三角波電圧信号Vtriは三角波状に成形される。三角波電圧信号Vtriは三角波発生回路132の出力電圧としてPWMコンパレータ150へ入力される。
【0041】
出力電圧制御信号発生回路134はフィードバック制御回路として機能しており、出力電圧Voに比例した出力電圧情報と基準電圧源148の基準電圧Vrefの差分を増幅する誤差アンプ146で構成され、誤差アンプ146の出力である出力電圧制御信号VFBがPWMコンパレータ150へ入力される。
【0042】
スイッチング素子駆動回路136は、
(三角波電圧信号Vtri)<(出力電圧制御信号VFB)
のとき主スイッチング素子214をオンさせる。これにより、主スイッチング素子214のオンデューティが制御される。
【0043】
出力電圧制御回路134は、スイッチング電源装置の出力電圧Voが基準電圧Vrefで決定される所定の値よりも大きい場合は、出力電圧制御信号VFBを低下させることで主スイッチング素子214のオンデューティを減少させて、スイッチング電源装置の出力電圧Voを低下させる。スイッチング電源装置の出力電圧Voが基準電圧Vrefで決定される所定の値よりも小さい場合は、出力電圧制御信号VFBを上昇させることで主スイッチング素子214のオンデューティを増加させ、スイッチング電源装置の出力電圧Voを上昇させる。
【0044】
図11のスイッチング電源装置は、同期整流の昇降圧チョッパー回路であるので、主スイッチング素子214のオンデューティ(duty)は、出力電流によらず、入力電圧Vinと出力電圧Voで決定され、式(6)のようになることが一般的に知られている。
【0045】
【数5】
【0046】
主スイッチング素子214のオンデューティ(duty)が式(6)に従うように、出力電圧制御信号発生回路134が、出力電圧制御信号VFBを制御することで主スイッチング素子214のオンデューティを制御する。
【0047】
以下、図11のスイッチング電源装置の動作を具体的な数値を示して説明を行う。
【0048】
三角波コンデンサ144の容量Ci=2000pF、電流源回路142である抵抗Ri=100kΩとし、スイッチング周波数fsw=100kHz(周期10μs)で動作しているものとする。
【0049】
(入力電圧Vin=40V、出力電圧Vo=10Vの場合)
三角波発生回路132には、入力電圧Vin=40Vが印加される。三角波コンデンサ144のコンデンサ電圧Vtriが十分に小さい範囲で動作している場合、三角波コンデンサ144の容量Ciの充電電流である入力電圧比例電流Iは、入力電圧Vinを抵抗Riで割った値であり、以下のようになる。
I=40[V]÷100[kΩ]=0.4[mA] (7)
オンデューティ(duty)は、上記の式(6)に従うように制御されるため、オンデューティ=0.2となる。
【0050】
【数6】
【0051】
スイッチング周波数は100kHz(周期10us)であり、オンデューティ=0.2とすると、主スイッチング素子214のオン時間は2μsとなる。
【0052】
主スイッチング素子214のオン時間は、リセット回路145が動作して三角波コンデンサ144をリセットしてから、三角波電圧信号Vtriと出力電圧制御信号VFBが交差するまでの時間であるので、この時間が2μsになるように出力電圧制御信号発生回路134は出力電圧制御信号VFBを制御する。
【0053】
リセット回路145が動作して三角波コンデンサ144をリセットしてから、三角波電圧信号Vtriの電圧上昇は、式(9)であらわされる。
【0054】
【数7】
【0055】
ここで、I=0.4mA、t=2μs、Ci=2000pFであるので、式(9)から、三角波コンデンサ144をリセットしてから2μs後の三角波電圧信号VtriはVtri=0.4Vとなる。
【0056】
主スイッチング素子214がオフするのは三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBに到達したときであるので、出力電圧制御信号発生回路134は、出力電圧制御信号VFBが0.4Vとなるように制御が行われることで、主スイッチング素子214のオンデューティが0.2(オン時間2μs)となり、この結果、出力電圧Voが10Vとなるように制御される。
【0057】
(入力電圧Vin=90V、出力電圧Vo=10Vの場合)
三角波発生回路132には、入力電圧Vin=90Vが印加される。三角波コンデンサ144のコンデンサ電圧Vtriが十分に小さい範囲で動作している場合、三角波コンデンサ144の充電電流である入力電圧比例電流Iは、入力電圧Vinを抵抗Riで割った値であり、以下のようになる。
I=90[V]÷100[kΩ]=0.9[mA] (10)
オンデューティ(duty)は、上記の式(6)に従うように制御されるため、オンデューティ=0.1となる。
【0058】
【数8】
【0059】
スイッチング周波数は100kHz(周期10μs)であり、オンデューティ=0.1とすると、主スイッチング素子214のオン時間は1μsとなる。
【0060】
主スイッチング素子214のオン時間は、リセット回路145が動作して三角波コンデンサ144をリセットしてから、三角波電圧Vtriと出力電圧制御信号VFBが交差するまでの時間であるので、この時間が1μsとなるように出力電圧制御信号発生回路134は出力電圧制御信号VFBを制御する。
【0061】
リセット回路145が動作して三角波コンデンサ144をリセットしてから、三角波電圧信号Vtriの電圧上昇は、先の式(9)であらわされる。
【0062】
ここで、I=0.9mA、t=1us、Ci=2000pFであるので、式(9)から、三角波コンデンサ144をリセットしてから1μs後の三角波電圧信号VtriはVtri=0.45Vとなる。
【0063】
主スイッチング素子214がオフするのは三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBに到達したときであるので、出力電圧制御信号発生回路134は、出力電圧制御信号VFBが0.45Vとなるように制御が行われることで、主スイッチング素子214のオンデューティが0.1(オン時間1μs)となり、この結果、出力電圧Voが10Vとなるように制御される。
【0064】
図11スイッチング電源装置において、入力電圧Vinが40Vから90Vに変化した場合、出力電圧制御信号発生回路134は、出力電圧制御信号VFBを0.4Vから0.45Vに変化させないと、出力電圧Voを10Vに保つことができないことが分かる。
【0065】
従って、従来のスイッチング電源装置に用いた入力電圧フィードフォワード制御を昇降圧チョッパーやこれから派生したスイッチング電源装置に用いた場合、入力電圧の急激な変化に対して、出力電圧制御信号発生回路134が高速に応答しないと、スイッチング電源装置の出力電圧を安定に制御することができないことになる。
【0066】
高速に応答する出力電圧制御信号発生回路134は、高速に動作する高価な誤差アンプが必要になるため、スイッチング電源装置が高価なものになってしまう。
【0067】
また、図11の昇降圧チョッパー回路に従来の入力電圧フィードフォワード制御を適用した場合に関して説明を行ったが、入力電圧フィードフォワード制御を行わなかった場合も、入力電圧の急激な変化に対して、出力電圧制御信号発生回路が高速に応答しないと、スイッチング電源装置の出力電圧を安定に制御することができない。
【0068】
本発明は、昇降圧チョッパーやこれから派生したスイッチング電源装置の入力電圧変動や負荷電流の変動に対してフィードフォワード制御を導入して、出力電圧の安定化を低コストで実現するスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0069】
(第1発明のスイッチング電源装置)
第1発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一端が接続され、転流素子の他端にコンデンサの一端が接続され、コンデンサの他端とチョークコイルの他端が入力電源の他端に接続され、コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
制御回路は、
パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を設けたことを特徴とする。
【0070】
(第2発明のスイッチング電源装置)
第2発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、バッファコンデンサの他端とチョークコイルの一次巻線の他端が入力電源の他端に接続され、チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
制御回路は、
パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
三角波電圧信号と前記出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を設けたことを特徴とする。
【0071】
(第3発明のスイッチング電源装置)
第3発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、バッファコンデンサの他端とチョークコイルの一次巻線の他端が入力電源の他端に接続され、チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
制御回路は、
パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
転流素子の他端とバッファコンデンサの一端が接続された箇所から、入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を取得し、加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を設けたことを特徴とする。
【0072】
(第4発明のスイッチング電源装置)
第4発明は、入力電源の一端にチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、
チョークコイルの一次巻線の他端に主スイッチング素子の一端が接続され、
主スイッチング素子の他端に入力電源の他端が接続され、
チョークコイルの二次巻線の両端に転流素子とコンデンサの直列回路を接続し、前記コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、
制御回路は、
パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、
パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、
加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、
三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、
スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路と、
を設けたことを特徴とする。
【0073】
(加算電圧発生回路)
第1発明、第2発明及び第4発明のスイッチング電源装置に設けた加算電圧発生回路は、
チョークコイルに結合するサブ巻線を備え、主スイッチング素子がオンのときにサブ巻線に発生する電圧と、主スイッチング素子がオフのときにサブ巻線に発生する電圧を加算した値を加算値比例電圧として生成する回路である。
【0074】
また、第4発明のスイッチング電源装置に設けた加算電圧発生回路は、主スイッチング素子がオフのときに主スイッチング素子の両端に発生する電圧を、加算値比例電圧として生成する整流平滑回路であってもよい
【0075】
(三角波発生回路)
第1乃至第4発明のスイッチング電源装置に設けた三角波発生回路は、
加算値比例電圧に比例した加算値比例電流を出力する電流源回路と、
加算値比例電流で充電される三角波コンデンサと、
スイッチング周期で三角波コンデンサを放電するリセット回路と、
を備え、三角波コンデンサの充電と放電によって、スイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を出力する。
【発明の効果】
【0076】
(第1発明のスイッチング電源装置による効果)
第1発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一端が接続され、転流素子の他端にコンデンサの一端が接続され、コンデンサの他端とチョークコイルの他端が入力電源の他端に接続され、コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、制御回路は、パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路を設けるようにしたため、フィードフォワード制御によって、入力電圧が変化すると、出力電圧制御信号が変化しなくても、主スイッチング素子のオン時間を変化させて、所定の出力電圧を出力することができる。これにより、従来の入力電圧フィードフォワード制御のように、出力電圧制御信号発生回路を高速に応答させなくても出力電圧を所定の電圧に安定に制御することができる。従って、高速に動作する高価な誤差アンプが不要になる。
【0077】
さらに、第1発明のスイッチング電源装置は、負荷が急激に電流を要求して出力電圧が低下した場合に、出力電圧を所定の値に速く復帰させる効果をもつ。この効果は、出力電圧が低下すると三角波電圧信号の上昇速度が低下する。三角波電圧信号の上昇速度が低下すると、主スイッチング素子のオンデューティが増加し、出力電圧を上昇させる方向に動作する。負荷が急激に電流を要求して出力電圧が低下した場合の出力電圧の安定性を高めるためには、一般的には、高速に動作する高価な誤差アンプを用いて対応することになるが、第1発明のスイッチング電源装置ではこれが不要になる。
【0078】
以上により、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を低コストで作ることができる。
【0079】
(第2発明のスイッチング電源装置による効果)
第2発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、バッファコンデンサの他端とチョークコイルの一次巻線の他端が入力電源の他端に接続され、チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、制御回路は、パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路とを設けるようにしたため、第1発明と同様に、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を、絶縁型で構成することができる。
【0080】
また、第2発明のスイッチング電源装置は、昇降圧チョッパーであるため、入力電圧が低下(理論的には、入力電圧が略0Vまで)しても出力電圧を所定の値に安定化することが可能であるため、従来のシングルエンディッドフォワードコンバータ等に比べて、広い入力電圧範囲で動作することが可能な絶縁型のスイッチング電源装置を得ることが可能である。
【0081】
(第3発明のスイッチング電源装置による効果)
第3発明は、入力電源の一端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に転流素子の一端とチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、転流素子の他端にバッファコンデンサの一端が接続され、バッファコンデンサの他端とチョークコイルの一次巻線の他端が入力電源の他端に接続され、チョークコイルの二次巻線の両端に整流素子と出力コンデンサの直列回路を接続し、出力コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、制御回路は、パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、転流素子の他端とバッファコンデンサの一端が接続された箇所から、入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を取得し、加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路とを設けるようにしたため、第1発明と同様に、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を構成することができる特徴を有し、また、第2発明と同様に、広い入力電圧範囲で出力電圧を所定の値に安定化することが可能である特徴を備え、さらに、入力電源とバッファコンデンサを直列にした構成とすることで、第1発明及び第2発明に設けた加算電圧発生回路を削除しても、加算値比例電圧を得ることができる。これにより、第1発明及び第2発明で設けていたチョークコイルのサブ巻線およびこれに付帯する回路を削除することが可能となり、低コストで、入力電圧変動に対して出力電圧の安定度が高く、入力電圧範囲が広い、絶縁型のスイッチング電源装置を得ることができる。
【0082】
(第4発明のスイッチング電源装置による効果)
第4発明は、入力電源の一端にチョークコイルの一次巻線の一端が接続され、チョークコイルの一次巻線の他端に主スイッチング素子の一端が接続され、主スイッチング素子の他端に入力電源の他端が接続され、チョークコイルの二次巻線の両端に転流素子とコンデンサの直列回路を接続し、前記コンデンサの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御するスイッチング電源装置に於いて、制御回路は、パワー回路の出力電圧を所定電圧に制御するための出力電圧制御信号を発生する出力電圧制御信号発生回路と、パワー回路の入力電圧に比例した電圧値と出力電圧に比例した電圧値を加算した電圧値である加算値比例電圧を出力する加算電圧発生回路と、加算値比例電圧に対応した傾きを持ち所定のスイッチング周期で振幅する三角波電圧信号を発生する三角波発生回路と、三角波電圧信号と出力電圧制御信号との比較に基づきスイッチング駆動信号を発生して主スイッチング素子をオン、オフするスイッチング素子駆動回路と、スイッチング駆動信号を反転した反転スイッチング駆動信号を発生して転流素子を主スイッチング素子に対し相補的にオン、オフする転流素子駆動回路とを設けるようにしたため、フィードフォワード制御によって入力電圧が変化すると、出力電圧制御信号が変化しなくても、主スイッチング素子のオン時間を変化させて、所定の出力電圧を出力するフライバックコンバータとすることができる。さらには、負荷が急激に電流を要求して出力電圧が低下した場合に、出力電圧を所定の値に速く復帰させる特徴も備えている。
【0083】
これにより出力電圧制御信号発生回路を高速に応答させなくても出力電圧を所定の電圧に安定に制御することができるフライバックコンバータを作ることができるため、高速に動作する高価な誤差アンプを必要としない低コストのフライバックコンバータを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】本発明によるスイッチング電源装置の第1実施形態を示した回路図
図2】入力電圧が低い場合の図1における各部の動作波形を示したタイムチャート
図3】入力電圧が高い場合の図1における各部の動作波形を示したタイムチャート
図4】本発明によるスイッチング電源装置の第2実施形態を示した回路図
図5】本発明によるスイッチング電源装置の第3実施形態を示した回路図
図6】本発明によるスイッチング電源装置の第4実施形態を示した回路図
図7】フライバックコンバータにおける主スイッチング素子の両端から加算値比例電圧を取り出す本発明の他の実施形態を示した回路図
図8】絶縁型シングルエンディッドフォワードコンバータに、従来の入力電圧フィードフォワード制御を適用したスイッチング電源装置を示した回路図
図9図8のスイッチング電源装置の入力電圧が低い場合の動作波形を示したタイムチャート
図10図8のスイッチング電源装置の入力電圧が高い場合の動作波形を示したタイムチャート
図11】昇降圧チョッパーに、従来の入力電圧フィードフォワード制御を適用したスイッチング電源装置を示した回路図
【発明を実施するための形態】
【0085】
[スイッチング電源装置の第1実施形態]
図1は本発明によるスイッチング電源装置の第1実施形態を示した回路図、図2は入力電圧が低い場合の図1における各部の動作波形を示したタイムチャート、図3は入力電圧が高い場合の図1における各部の動作波形を示したタイムチャートである。なお、図2(A)は入力電圧Vinを示し、図2(B)はサブ巻線22の電圧を示し、図2(C)はコンデンサ54の電圧VC1を示し、図2(D)はコンデンサ58の電圧VC2を示し、図2(G)は主スイッチング素子14の駆動信号VGS1を示し、図2(H)は転流素子18の駆動信号VGS2を示している。この点は図3(A)〜(H)も同様である。
【0086】
(パワー回路)
図1に示すように、本実施形態によるスイッチング電源装置10のパワー回路は、昇降圧チョッパー回路で構成されている。昇降圧チョッパー回路は、入力電源12のプラス側の一端にMOS−FETを用いた主スイッチング素子14の一端が接続され、主スイッチング素子14の他端にMOS−FETを用いた転流素子18の一端とチョークコイル16の一端が接続され、転流素子18の他端にコンデンサ20の一端が接続され、コンデンサ20の他端とチョークコイル16の他端が入力電源12のマイナス側の他端に接続され、コンデンサ20の両端から出力電圧Voを得るパワー回路を構成し、制御回路30によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御する。
【0087】
(制御回路)
図1に示すように、制御回路30は、三角波発生回路32、出力電圧制御信号発生回路34、スイッチング素子駆動回路36、転流素子駆動回路38及び加算電圧発生回路40から構成される。
【0088】
パワー回路は、制御回路30による主スイッチング素子14のオン、オフによって入力電圧Vinを断続電圧に変換する。主スイッチング素子14がオンのとき、チョークコイル16に入力電圧Vinが印加される。これによりチョークコイル16に磁気エネルギーが蓄えられる。主スイッチング素子14がオフすると、チョークコイル16は磁気エネルギーを出力電流としてコンデンサ20および出力に接続された負荷(図示せず)に放出する。
【0089】
チョークコイル16は、出力側に磁気エネルギーを放出する際に、出力電圧Voと同じ電圧を発生させる。このとき、チョークコイル16のドットで示すプラス側、コンデンサ20、転流素子18、チョークコイル16のドット無しのマイナス側となる経路で電流が流れる。転流素子18は、主スイッチング素子14と相補的にオン、オフする。転流素子18がオンすることで同期整流として動作している。
【0090】
スイッチング素子駆動回路36は、主スイッチング素子14のオン、オフを制御する回路であり、内部にPWMコンパレータ50を持つ。PWMコンパレータ50には、三角波発生回路32からの三角波電圧信号Vtriと出力電圧制御信号発生回路34からの出力電圧制御信号VFBが入力され、三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBよりも小さいときは主スイッチング素子14をオンに制御し、三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBよりも大きいときは主スイッチング素子14をオフに制御する。
【0091】
転流素子駆動回路38は、転流素子18のオン、オフを制御する回路であり、主スイッチング素子14に対して相補的に転流素子18をオン、オフさせる制御を行う。
【0092】
加算電圧発生回路40は、入力電圧Vinと出力電圧Voを加算した値に比例した電圧を発生する回路であり、加算値比例電圧Vsumを出力する。加算電圧発生回路40は、チョークコイル16に結合したサブ巻線22にダイオード52とコンデンサ54を備えた整流平滑回路と、ダイオード56とコンデンサ58を備えた整流平滑回路が接続されている。
【0093】
主スイッチング素子14がオンのとき、チョークコイル16に入力電圧Vinが印加される。このとき、サブ巻線22には、チョークコイル16の巻数N1とサブ巻線22の巻数Nsubの巻数比に比例した電圧が発生する。主スイッチング素子14がオンのときにサブ巻線22に発生する電圧は、ダイオード52を介してコンデンサ54に蓄えられる。ダイオード52の順方向電圧降下をゼロとすると、コンデンサ54に蓄えられる電圧VC1は、以下のようになる。
【0094】
【数9】
【0095】
主スイッチング素子14がオフのとき、チョークコイル16には、出力電圧Voが発生する。このとき、サブ巻線22には、チョークコイル16の巻数N1とサブ巻線22の巻数Nsubの巻線比に比例した電圧が発生する。主スイッチング素子14がオフのときにサブ巻線22に発生する電圧は、コンデンサ54およびダイオード56を介してコンデンサ58に蓄えられる。
【0096】
ダイオード56の順方向電圧降下をゼロとすると、コンデンサ58に蓄えられる電圧VC2は、以下のようになる。また、コンデンサ58に蓄えられる電圧VC2は、加算電圧発生回路40の出力である加算値比例電圧Vsumとなる。
【0097】
【数10】
【0098】
三角波発生回路32は、電流源回路42、三角波コンデンサ44、リセット回路45から構成される。三角波発生回路32には、加算値比例電圧Vsumが入力され、三角波電圧信号Vtriを出力する。三角波電圧信号Vtriは、スイッチング素子駆動回路36内のPWMコンパレータ50に入力される。
【0099】
電流源回路42は、加算値比例電圧Vsumを基に加算値比例電流Iを生成する。ここで、電流源回路42は、三角波コンデンサ44の電圧VCiが加算値比例電圧Vsumと比較して十分に小さいときは、抵抗を用いることができる。本実施形態では、電流源回路42として抵抗Riを用いている。このとき、加算値比例電流Iは、以下のようになる。
【0100】
【数11】
【0101】
なお、電流源回路42は、抵抗に限定されることなく、入力電圧Vinに比例した電圧値と出力電圧Voに比例した電圧値の和に比例した電流を出力する回路であれば、半導体素子で構成された回路を用いても良い。
【0102】
三角波コンデンサ44は、リセット回路45によって、スイッチング電源装置における所定のスイッチング周期で放電され、その後、加算値比例電流Iで充電されることで、三角波状の電圧波形を生成する。三角波コンデンサ44の電圧VCiは、以下のようになる。また、三角波コンデンサ44の電圧VCiは、三角波発生回路32の出力である三角波電圧信号Vtriとなる。
【0103】
【数12】
【0104】
出力電圧制御信号発生回路34は、出力電圧制御信号VFBを制御することによって、スイッチング電源装置の出力電圧を所定の値に制御するための回路である。
【0105】
出力電圧制御信号発生回路34は、誤差アンプ46を用いて、出力電圧Voに比例した出力電圧情報と基準電圧源48の基準電圧Vrefを比較し、両者の誤差に応じた出力電圧制御信号VFBを出力する。出力電圧制御信号VFBは、スイッチング素子駆動回路36内のPWMコンパレータ50に入力される。
【0106】
基準電圧源48で設定している基準電圧Vrefは、スイッチング電源装置の出力電圧Voを所定の設定値にするための基準となる電圧である。出力電圧制御信号発生回路34は、出力電圧Voが所定の設定値よりも大きい場合は出力電圧制御信号VFBを低下させる制御を行う。また、出力電圧Voが所定の設定値よりも小さい場合は出力電圧制御信号VFBを上昇させる制御を行う。
【0107】
図1では、出力電圧制御信号発生回路34として、内部に基準電圧Vrefとオペアンプである誤差アンプ46を用いているが、出力電圧制御信号VFBを発生できるものであれば、デジタルプロセッサ等を用いても良いし、フィードバック制御機能を持たない、所定の設定電圧を出力するだけの機能を備えた電圧源を用いても良い。
【0108】
本実施形態のパワー回路は昇降圧チョッパー回路であるので、主スイッチング素子14のオンデューティは、式(6)に従う。式(6)とスイッチング周波数fswから、主スイッチング素子14のオン時間Tonは、以下のように求まる。
【0109】
【数13】
【0110】
ここで、図2(E)〜(G)に示すように、リセット回路45が動作してから、三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBに到達するまでの時間が主スイッチング素子14のオン時間Tonとなる。従って、出力電圧制御信号発生回路34は、主スイッチング素子14のオン時間Tonが式(16)に従うように出力電圧制御信号VFBを決定する。
【0111】
式(15)、式(16)から出力電圧制御信号VFBを求めると、以下の式が得られる。
【0112】
【数14】
【0113】
ここで、サブ巻線22の巻数をNsub、チョークコイル16の巻数N1、電流源回路42の抵抗値Ri、三角波コンデンサ44の容量Ci、および、スイッチング周波数fswは、全て固定値である。従って、出力電圧制御信号VFBは、入力電圧Vinに依存することなく、出力電圧Voだけで決定されている。出力電圧制御信号VFBが入力電圧Vinに依存しないのは、入力電圧Vinが変化することで三角波電圧信号Vtriの電圧上昇の傾きが変化し、主スイッチング素子14のオン時間Tonを変化させる動作を行っているためである。
【0114】
(本実施形態の利点)
図1に示した本実施形態のスイッチング電源装置は、フィードフォワード制御によって、入力電圧Vinが変化すると、出力電圧制御信号VFBが変化しなくても、主スイッチング素子14のオン時間Tonを変化させて、所定の出力電圧Voを出力することができる。これにより、従来の入力電圧フィードフォワード制御のように、出力電圧制御信号発生回路を高速に応答させなくても出力電圧Voを所定の電圧に安定に制御することができる。従って、高速に動作する高価な誤差アンプが不要になる。
【0115】
さらに、本実施形態のスイッチング電源装置は、負荷が急激に電流を要求して出力電圧Voが低下した場合に、出力電圧Voを所定の値に速く復帰させる効果をもつ。この効果は、式(14)で説明できる。出力電圧Voが低下すると加算値比例電流Iが低下する。加算値比例電流Iが低下すると、三角波コンデンサ44の充電電流が低下し、三角波電圧信号Vtriの上昇速度が低下する。三角波電圧信号Vtriの上昇速度が低下すると、主スイッチング素子14のオンデューティが増加し、出力電圧を上昇させる方向に動作する。負荷が急激に電流を要求して出力電圧Voが低下した場合の出力電圧Voの安定性を高めるためには、一般的には、高速に動作する高価な誤差アンプを用いて対応することになるが、本実施形態のスイッチング電源装置ではこれが不要になる。
【0116】
以上により、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を低コストで作ることができる。
【0117】
[スイッチング電源装置の第2実施形態]
図4は本発明によるスイッチング電源装置の第2実施形態を示した回路図である。
【0118】
(パワー回路)
図4に示すように、本実施形態によるスイッチング電源装置10のパワー回路は、入力電源12のプラス側となる一端に主スイッチング素子14の一端が接続され、主スイッチング素子14の他端に転流素子18の一端とチョークコイル16の一端が接続され、転流素子18の他端にバッファコンデンサ20aの一端が接続され、バッファコンデンサ20aの他端とチョークコイル16の他端が入力電源12のマイナス側となる他端に接続され、チョークコイル16の二次巻線24の両端に整流素子26と出力コンデンサ20bの直列回路を接続し、出力コンデンサ20bの両端から出力電圧Voを得る構成とし、制御回路30によりパワー回路から所定電圧に安定化された出力電力を得るように制御する。
【0119】
即ち、図4に示す本実施形態のパワー回路は、図1のチョークコイル16に二次巻線24を設け、巻数N1のチョークコイル(一次巻線)16、巻数N2の二次巻線24、巻数Nsubのサブ巻線22の3つを結合させた構成としている。また、図1のコンデンサ20に代えてバッファコンデンサ20aを設けている。なお、バッファコンデンサ20aは図1のコンデンサ20と同じ動作を行う。そして、チョークコイル16の二次巻線24に整流素子26と出力コンデンサ20bを接続し、出力コンデンサ20bの両端から出力電圧Voを得る構成としたものである。
【0120】
これにより昇降圧チョッパー回路から絶縁された出力電力を得ることができるスイッチング電源装置10を構成している。このとき、チョークコイル16側の回路がスイッチング電源装置の一次側となり、チョークコイル16の二次巻線24側の回路がスイッチング電源装置の2次側となる。
【0121】
制御回路30は、図1と同様に、三角波発生回路32、出力電圧制御信号発生回路34、スイッチング素子駆動回路36、転流素子駆動回路38および加算電圧発生回路40から構成される。
【0122】
本実施形態のパワー回路は、図1と同様に、主スイッチング素子14のオン、オフによって入力電圧Vinを断続電圧に変換する。主スイッチング素子14がオンのとき、チョークコイル16の巻線N1に入力電圧Vinが印加される。これによりチョークコイル16に磁気エネルギーが蓄えられる。
【0123】
主スイッチング素子14がオフしたときのスイッチング電源装置の一次側の動作は、図1と同様のチョークコイル16がバッファコンデンサ20aに磁気エネルギーを放出する動作に加えて、バッファコンデンサ20aのプラス側、チョークコイル16、転流素子18及びバッファコンデンサ20aのマイナス側となる経路で電流が流れ、スイッチング電源装置の2次側では、チョークコイル16の二次巻線24のドットで示すプラス側、出力コンデンサ20b(および図示されていない負荷)、整流素子26及びチョークコイル16の二次巻線24のドットの無いマイナス側となる経路で電流が流れることでバッファコンデンサ20aのエネルギーが2次側に伝送される。このとき、バッファコンデンサ20aと出力コンデンサ20bが結合された状態とになる。
【0124】
バッファコンデンサ20aの電圧VCo1とで出力コンデンサ20bの電圧VCo2は、チョークコイル16の巻数N1と二次巻線24の巻数N2に比例した関係を持つ。また、出力コンデンサ20bの電圧VCo2はスイッチング電源装置の出力電圧Voとなる。
【0125】
【数15】
【0126】
スイッチング素子駆動回路36、転流素子駆動回路38は、図1と同一の回路である。
【0127】
加算電圧発生回路40は、図1と同一の回路であるが、加算値比例電圧Vsumが異なる。主スイッチング素子14がオンのとき、図1と同様に、チョークコイル16に入力電圧Vinが印加される。このとき、サブ巻線22には、チョークコイル16の巻数N1とサブ巻線22の巻数Nsubの巻数比に比例した電圧が発生する。主スイッチング素子14がオンのときにサブ巻線22に発生する電圧は、ダイオード52を介してコンデンサ54に蓄えられる。ダイオード52の順方向電圧降下をゼロとすると、コンデンサ54に蓄えられる電圧VC1は、図1と同じく式(12)のようになる。
【0128】
主スイッチング素子14がオフのとき、サブ巻線22に発生する電圧が図1と異なり、サブ巻線22には、チョークコイル16の二次巻線24の巻数N2とサブ巻線22の巻数Nsubの巻数比で決定される電圧が発生する。主スイッチング素子14がオフのときにサブ巻線22に発生する電圧は、コンデンサ54およびダイオード56を介してコンデンサ58に蓄えられる。ダイオード56の順方向電圧降下をゼロとすると、コンデンサ58に蓄えられる電圧VC2(=加算値比例電圧Vsum)は、以下のようになる。
【0129】
【数16】
【0130】
三角波発生回路32は、図1と同一の回路であるが、印加される加算値比例電圧Vsumが異なるため、加算値比例電流Iが異なる。本実施形態の加算値比例電流Iは、以下のようになる。
【0131】
【数17】
【0132】
従って、本実施形態の三角波コンデンサ44の電圧VCi(=三角波電圧信号Vtri)は、以下のようになる。
【0133】
【数18】
【0134】
出力電圧制御信号発生回路34は、図1と同一の回路である。
【0135】
本実施形態のスイッチング電源装置は、バッファコンデンサ20aに蓄えられた電圧を出力電圧とみなした昇降圧チョッパーと考えることができるので、昇降圧チョッパーのデューティを求めるための式(6)に、バッファコンデンサ20aと出力電圧Voの関係を表す式(18)を代入すると、主スイッチング素子14のオンデューティ(duty)を求める式を得ることができる。
【0136】
【数19】
【0137】
式(22)とスイッチング周波数fswから、主スイッチング素子14のオン時間Tonは、以下のように求まる。
【0138】
【数20】
【0139】
ここで、図1と同様に、リセット回路45が動作してから三角波電圧信号Vtriが出力電圧制御信号VFBに到達するまでの時間が主スイッチング素子14のオン時間Tonとなる。従って、出力電圧制御信号発生回路34は、主スイッチング素子14のオン時間Tonが式(21)に従うように出力電圧制御信号VFBを制御する。式(21)、式(23)から出力電圧制御信号VFBを求めると、以下の式が得られる。
【0140】
【数21】
【0141】
ここで、サブ巻線22の巻数Nsub、チョークコイル16の巻数N1、チョークコイル16の二次巻線24の巻数N2、電流源回路42の抵抗Ri、三角波コンデンサ44の容量Ci、および、スイッチング周波数fswは、すべて固定値である。従って、本実施形態のスイッチング電源装置は、図1と同様に、出力電圧制御信号VFBは、入力電圧Vinに依存することなく、出力電圧Voだけで決定されることになる。出力電圧制御信号VFBが入力電圧Vinに依存しないのは、入力電圧Vinが変化することで三角波電圧信号Vtriの電圧上昇の傾きが変化し、主スイッチング素子14のオン時間Tonを変化させる動作を行っているためである。
【0142】
本実施形態のスイッチング電源装置は、基本的な動作は、図1のスイッチング電源装置と同じであり、図1のコンデンサ20に換えて、バッファコンデンサ20aに蓄えられたエネルギーをチョークコイル16とその二次巻線24を介して出力コンデンサ20bへ取り出すものであるため、入力電圧Vinの変動に対する加算値比例電圧Vsumの生成や三角波電圧信号Vtriの電圧上昇の傾き等の基本的な動作は、図1と同じ動作を行う。従って、入力電圧Vinの変動に対して、出力電圧制御信号発生回路34は、出力電圧制御信号VFBを変化させる必要が無い。
【0143】
(本実施形態の利点)
図4の実施形態によるスイッチング電源は、図1の実施形態の特徴である、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を、絶縁型で構成することができる。
【0144】
また、本実施形態のスイッチング電源装置は、昇降圧チョッパーであるため、入力電圧Vinが低下(理論的には、入力電圧Vin≒0まで)しても出力電圧Voを所定の値に安定化することが可能であるため、従来例の図8で示したシングルエンディッドフォワードコンバータ等に比べて、広い入力電圧範囲で動作することが可能な絶縁型のスイッチング電源装置を得ることが可能である。
【0145】
[スイッチング電源装置の第3実施形態]
図5は本発明によるスイッチング電源装置の第3実施形態を示した回路図である。
【0146】
(パワー回路)
図5に示すように、本実施形態によるスイッチング電源装置10のパワー回路は、入力電源12のマイナス側となる一端に主スイッチング素子14の一端が接続され、主スイッチング素子14の他端に転流素子18の一端とチョークコイル16(一次巻線)の一端が接続され、転流素子18の他端にバッファコンデンサ20aの一端が接続され、バッファコンデンサ20aの他端とチョークコイル16の他端が入力電源12のプラス側となる他端に接続され、チョークコイル16の二次巻線24の両端に整流素子26と出力コンデンサ20bの直列回路を接続し、出力コンデンサ20bの両端から出力電力を得るパワー回路を構成し、制御回路30によりパワー回路から所定電圧に安定化された出力電力を得るように制御する。
【0147】
即ち、本実施形態のスイッチング電源装置は、図4に示したスイッチング電源装置の一次側パワー回路の構成を、電気的な動作を変更せずに、部品の接続位置を変更したものである。具体的には、図4では、バッファコンデンサ20aとチョークコイル16の接続点を入力電源12のマイナス側に接続していたが、本実施形態では、バッファコンデンサ20aとチョークコイル16の接続点を入力電源12のプラス側に接続する形へ変更している。このバッファコンデンサ20aとチョークコイル16の接続点を入力電源12のプラス側に接続する構成が加算電圧発生回路40としての回路機能を実現する。
【0148】
パワー回路は、図1及び図4と同様に、主スイッチング素子14のオン、オフによって入力電圧を断続電圧に変換する。主スイッチング素子14がオンのとき、チョークコイル16に入力電圧Vinが印加される。これによりチョークコイル16に磁気エネルギーが蓄えられる。主スイッチング素子14がオフしたときの動作は、スイッチング電源装置の一次側では、図4と電流が通過する部品の順番が異なるが電気的に同じであり、バッファコンデンサ20aのプラス側、転流素子18、チョークコイル16、バッファコンデンサ20aのマイナス側となる経路で電流が流れる。
【0149】
スイッチング電源装置の2次側では、図4と同じ動作となり、チョークコイル16の二次巻線24のドットで示すプラス側、出力コデンサ20b(および図示されていない負荷)、整流素子26及びチョークコイル16の二次巻線24となる経路で電流が流れることでバッファコンデンサ20aのエネルギーが2次側に伝送される。このとき、図4と同様に、バッファコンデンサ20aと出力コンデンサ20bが結合された状態とになる。
【0150】
バッファコンデンサ20aの電圧VCo1と出力コンデンサ20bの電圧VCo2は、図4と同様に、チョークコイル16の巻数N1とチョークコイル16の二次巻線24の巻数N2に比例した関係を持つ。また、図4と同様に、出力コンデンサ20bの電圧VCo2は、スイッチング電源装置の出力電圧Voとなる。
【0151】
パワー回路を図5に示した構成とすることで、図1および図4で用いた、サブ巻線22を用いた加算電圧発生回路40を削除し、本実施形態の加算電圧発生回路40に相当するバッファコンデンサ20aと転流素子18の接続点から加算値比例電圧Vsumを得ることができる。
【0152】
これは、バッファコンデンサ20aが入力電源12と直列に接続されており、バッファコンデンサ20aと転流素子18の接続点とグランドの間で、入力電圧Vinとバッファコンデンサ20aの電圧VCo1(=Vo・N1/N2)を加算した電圧を得ることができる構成となっているからである。

【0153】
本実施形態のスイッチング電源装置は、図4のスイッチング電源装置に対して、サブ巻線22の巻数Nsubがチョークコイル16の巻数N1と同じであると考えることで、図2の特性を示した式(18)から式(24)の全てを適用することができる。
【0154】
従って、入力電圧Vinの変動に対する加算値比例電圧Vsumの生成や三角波電圧信号Vtriの電圧上昇の傾き等の動作は、図1及び図4と同じ動作を行うことになり、出力電圧制御信号VFBは、入力電圧Vinに依存することなく、出力電圧Voだけで決定される。
【0155】
出力電圧制御信号VFBが入力電圧Vinに依存しないのは、入力電圧Vinが変化することで三角波電圧信号Vtriの電圧上昇の傾きが変化し、主スイッチング素子14のオン時間Tonを変化させる動作を行っているためである。
【0156】
(本実施形態の利点)
本実施形態のスイッチング電源装置は、図1と同様に、入力電圧変動や負荷電流の変動に対して、出力電圧変動の少ないスイッチング電源装置を構成することができる特徴を有する。また、図4のスイッチング電源装置と同様に、広い入力電圧範囲で出力電圧Voを所定の値に安定化することが可能である特徴を備える。
【0157】
さらに、入力電源12とバッファコンデンサ20aを直列にした構成により加算電圧発生回路40としての回路機能を実現することで、図1及び図4に示した構成の加算電圧発生回路40を削除しても、加算値比例電圧Vsumを得ることができる。これにより、チョークコイル16のサブ巻線22およびこれに付帯する回路を削除することが可能となり、低コストで、入力電圧変動に対して出力電圧の安定度が高く、入力電圧範囲が広い、絶縁型のスイッチング電源装置を得ることができる。
【0158】
[スイッチング電源装置の第4実施形態]
図6は本発明によるスイッチング電源装置の第4実施形態を示した回路図である。
【0159】
(パワー回路)
図6に示すように、本実施形態によるスイッチング電源装置10のパワー回路は、入力電源12のプラス側となる一端にチョークコイル16(一次巻線)の一端が接続され、チョークコイル16の他端に主スイッチング素子14の一端が接続され、主スイッチング素子14の他端に入力電源12のマイナス側となる他端が接続され、チョークコイル16の二次巻線24の両端に転流素子18とコンデンサ20の直列回路を接続し、コンデンサ20の両端から出力電圧Voを得るパワー回路を構成し、制御回路30によって所定電圧に安定化された出力電圧をパワー回路から得るように制御する。
【0160】
即ち、本実施形態によるスイッチング電源装置10のパワー回路は、フライバックコンバータ回路としている。フライバックコンバータ回路は、図1の昇降圧チョッパー回路を絶縁型コンバータに変形した構成となっている。本実施形態は図1のチョークコイル16二次巻線24を設け、これをスイッチング電源装置の二次側回路とする。また図1の転流素子18、とコンデンサ20の直列回路を二次巻線24の両端に接続し、コンデンサ20の両端から出力電力を取り出す構成となっている。
【0161】
制御回路30は、図1と同様に、三角波発生回路32、出力電圧制御信号発生回路34、スイッチング素子駆動回路36、転流素子駆動回路38及び加算電圧発生回路40から構成される。
【0162】
パワー回路は、主スイッチング素子14のオン、オフによって入力電圧を断続電圧に変換する。主スイッチング素子14がオンのとき、チョークコイル16に入力電圧Vinが印加される。これによりチョークコイル16に磁気エネルギーが蓄えられる。主スイッチング素子14がオフすると、チョークコイル16は、チョークコイル16の二次巻線24から、磁気エネルギーを出力電流としてコンデンサ20(および図示されていない負荷)に放出する。
【0163】
チョークコイル16は、出力側の二次巻線24に磁気エネルギーを放出する際に、二次巻線24に出力電圧Voと同じ電圧を発生させる。このとき、チョークコイル16の二次巻線24のドットで示すプラス側、コンデンサ20、転流素子18及びチョークコイル16の二次巻線24のドット無しのマイナス側となる経路で電流が流れる。転流素子18は、主スイッチング素子14と相補的にオン・オフし、転流素子18がオンすることで同期整流として動作している。
【0164】
スイッチング素子駆動回路36は、図1図4および図5と同一の回路である。
【0165】
転流素子駆動回路38は、2次側に移動された転流素子18を駆動する回路であるが、動作は図1と同一であり、主スイッチング素子14に対して相補的に転流素子18をオン、オフさせる制御を行う。
【0166】
加算電圧発生回路40は、図1及び図4と同一の回路であり、加算値比例電圧Vsumは、図4と同じになり、式(19)で求められる。
【0167】
三角波発生回路32は、図1及び図4と同一の回路であり、加算値比例電圧Vsumが図4と同一の式(19)で求められるため、加算値比例電流Iは、式(20)で求められ、三角波コンデンサ44の電圧VCi(=三角波電圧信号Vtri)は式(21)で求められる。
【0168】
出力電圧制御信号発生回路34は、図1図4および図5と同一の回路である。
【0169】
本実施形態のスイッチング電源装置はフライバックコンバータであり、主スイッチング素子14のオンデューティ(duty)は、以下の式に従うことが一般的に知られている。
【0170】
【数22】
【0171】
これは、昇降圧チョッパーのチョークコイル16に二次巻線24を設けて出力電圧Voが一定となる電力出力を取り出す構成とした図4の式(22)と同じになることから、主スイッチング素子14のオン時間Tonは、式(23)と同じになり、従って、出力電圧制御信号VFBも式(24)のようになる。
【0172】
本実施形態のスイッチング電源装置においても、サブ巻線22の巻数をNsub、チョークコイル16の巻数N1、電流源回路42の抵抗Ri、三角波コンデンサ44の容量Ci、および、スイッチング周波数fswは、全て固定値である。従って、本実施形態のイッチング電源装置における出力電圧制御信号VFBは、入力電圧Vinに依存することなく、出力電圧Voだけで決定される。
【0173】
(本実施形態の利点)
図6の実施形態は、フィードフォワード制御によって、入力電圧Vinが変化すると、出力電圧制御信号VFBが変化しなくても、主スイッチング素子14のオン時間Tonを変化させて、所定の出力電圧Voを出力することができるフライバックコンバータである。さらには、図6の実施形態は、負荷が急激に電流を要求して出力電圧Voが低下した場合に、出力電圧Voを所定の値に速く復帰させる特徴も備えている。
【0174】
これにより本実施形態のスイッチング電源装置は、出力電圧制御信号発生回路を高速に応答させなくても出力電圧Voを所定の電圧に安定に制御することができるフライバックコンバータを作ることができるため、高速に動作する高価な誤差アンプを必要としない低コストのフライバックコンバータを作ることができる。
【0175】
[加算例電圧発生回路の変形例]
図1図4及び図6の加算電圧発生回路40は、入力電圧Vinに比例した電圧値をコンデンサ54に蓄え、コンデンサ58で入力電圧Vinに比例した電圧値と出力電圧Voに比例した電圧値を加算した値を蓄える構成としたが、出力電圧Voに比例した電圧値をコンデンサ54に蓄え、コンデンサ58で入力電圧Vinに比例した電圧値と出力電圧Voに比例した電圧値を加算した値に比例した電圧を蓄える構成としても良い。具体的には、図1図4及び図6の加算電圧発生回路40におけるサブ巻線22の接続極性を逆にすれば良い。
【0176】
また、サブ巻線22から加算値比例電圧を取得するだけでなく、制御回路30が動作するために必要な電力を取得しても良い。
【0177】
[加算電圧発生回路の変形例]
図7は本発明によるスイッチング電源装置の他の実施形態を示した回路図であり、パワー回路は図6に示したフライバックコンバータ回路と同一の回路であり、制御回路30の加算電圧発生回路40として、主スイッチング素子14がオフしたときに、主スイッチング素子14の両端に発生する電圧を取り出す回路としたことを特徴とする。
【0178】
図7のフライバックコンバータを用いたスイッチング電源装置では、主スイッチング素子14がオフのときに、主スイッチング素子14の両端に、入力電圧Vinと、出力電圧Voにチョークコイル16の巻数N1と二次巻線24の巻数N2の巻数比に比例にした電圧を加算した電圧が発生する。即ち、主スイッチング素子14がオフのときに主スイッチング素子14の両端(ドレイン・ソース間)に発生電圧VDSは以下のようになる。
【0179】
【数23】
【0180】
従って、図7に示すように、加算電圧発生回路40をダイオード60とコンデンサ62で構成した整流平滑回路とし、主スイッチング素子14に発生した電圧を加算電圧発生回路40に設けたダイオード60とコンデンサ62で取り出すことによって、加算値比例電圧Vsumを得ることができる。
【0181】
[本発明の変形例]
本発明は、上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。また上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0182】
10:スイッチング電源装置
12:入力電源
14:主スイッチング素子
16:チョークコイル
18:転流素子
20:コンデンサ
20a:バッファコンデンサ
20b:出力コンデンサ
22:サブ巻線
24:二次巻線
26:整流素子
30:制御回路
32:三角波発生回路
34:出力電圧制御信号発生回路
36:スイッチング素子駆動回路
38:転流素子駆動回路
40:加算電圧発生回路
42:電流源回路
44:三角波コンデンサ
45:リセット回路
46:誤差アンプ
48:基準電圧源
50:PWMコンパレータ
52,56,60:ダイオード
54,58,62:コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11