(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車載側制御部は、前記認証用信号の送信時間と、前記認証用信号の受信時間とを比較し、比較結果に基づいて、前記車載側受信部によって受信された信号が、前記携帯側送信部によって送信されたアンサー信号であるか否かを判定する、
請求項1記載の携帯端末装置認証システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0023】
図1は、携帯端末装置認証システム1を示す構成図である。同図に示される携帯端末装置認証システム1は、自動車や原動機付自転車等の車両に適用され、同車両の施錠時の利用を制限する。携帯端末装置認証システム1は、機械的な鍵を使わずに、携帯端末装置200を認証することで、車両の施錠、解錠、エンジン始動等の制御対象にあたる装置を駆動させることができる。
【0024】
例えば、小型車両であるスクータVの車体フレームには、エンジンEおよび変速機(不図示)を含むパワーユニットPが揺動可能に支承され、パワーユニットPによって駆動される後輪WFが該パワーユニットPの後部に軸支される。パワーユニットPは、施錠状態にある場合、駆動が制限される(駆動制限状態)。スクータVの車体フレームの前部には、ハンドルHが設けられており、ハンドルHは、連結軸を介して前輪WRの向きを調整可能に支持される。ハンドルHは、施錠状態にある場合、上記の連結軸の回転がハンドルロック部16により制限される。ハンドルロック部16は、連結軸の回転を制限する機構を含むアクチュエータ部18を備える。
【0025】
なお、パワーユニットPには、キックペダル6の踏込み操作により、パワーユニットPに含まれる発電機Gを駆動し得るキック作動部7が設けられる。例えば、スクータVは、バッテリ上がりが生じた場合に、キック作動部7のキック動作により発電して得られた電力を利用することができる。
【0026】
スクータVには、バッテリBが搭載されており、バッテリBの充電状態(端子電圧)に応じて、パワーユニットPの始動方法が切り替わる。
【0027】
バッテリBには、発電機Gが発電した電力が変換部8を介して供給される。エンジンEが駆動されている場合には、エンジンEによって発電機Gが駆動される。例えば、キック作動部7のキックペダル6を踏込み操作することにより発電機Gから出力される電力によりバッテリBが充電される。この場合、変換部8は整流器およびレギュレータとして機能する。
【0028】
さらに、バッテリBに蓄えた電力を発電機Gに供給して、発電機GをエンジンEのスターターとして用いてもよい。この場合、変換部8は、発電機Gをモーターとして機能させるように電力を供給する。
【0029】
また、エンジンEが備える点火プラグ(不図示)には、メインリレー(MRY)12の状態に応じて、点火回路13から点火電力が供給される。
【0030】
ところで、たとえば携帯端末装置200がスクータVに対応する正規のものであると照合された場合、車載装置100は、各種制限状態を解除する。各種制限状態には、ハンドルHの施錠、パワーユニットPの駆動制限が含まれる。
【0031】
(車載装置100の構成)
車載装置100は、電源部20と、車載側制御部30と、車載側送信部40と、車載側受信部50と、駆動回路部61と、入力回路部62と、メインスイッチ状態取得部63と、メインリレー駆動部64とを備える。さらに、車載装置100は、スターター駆動部65を備えるように構成してもよい。
【0032】
電源部20は、バッテリBまたは発電機Gを電源とし、バッテリBの端子電圧を、電圧+Vregを基準に安定化して車載側制御部30等の各部に供給する。車載側制御部30等の各部は、安定化された直流電圧をそれぞれの電源にする。電源部20は、バッテリBの端子電圧の予め定められた閾値電圧VTH以下の電圧低下を監視して、検出結果を出力する。
【0033】
車載側送信部40は、携帯端末装置200を呼び出すリクエスト信号を送信する。車載側送信部40から送信される信号をLF信号という場合がある。リクエスト信号(LF信号)には、携帯端末装置200を特定する識別情報(以下、「携帯端末装置識別情報」と称する)と、複数の認証処理用の情報(以下、「認証用情報」と称する)とが含まれる。本実施形態では、説明を簡略化するために、リクエスト信号に含まれる複数の認証用情報として、第1の認証用情報と、第2の認証用情報との2種類を代表して説明するが、認証用情報は、これら情報のみに限定されるものでない。例えば、第3、第4等の認証用情報が含まれていてもよい。認証用情報は、「認証用信号」の一例である。また、第1の認証用情報と第2の認証用情報とは、それぞれ「第1の信号」および「第2の信号」の一例である。
【0034】
車載側受信部50は、外部の装置によって送信された信号を受信する。例えば、車載側受信部50は、携帯端末装置200によって送信される信号を受信する。以下、携帯端末装置200から送信され、車載側受信部50が受信する信号をRF信号と称して説明する場合がある。RF信号の搬送周波数は、前述のLF信号の搬送周波数に対して比較的高い。
【0035】
駆動回路部61は、メインスイッチ11の導通状態でアクチュエータ部18を駆動する。メインスイッチ11は、例えば、物理的なキー(鍵)によって導通状態、或いは非導通状態にされる。なお、アクチュエータ部18は、車両の走行を不能とするためにハンドルHをロックするハンドルロック部16に含まれ、ハンドルロック部16の施錠および解錠状態を切換える。
【0036】
メインスイッチ11が導通状態である場合、駆動回路部61は、アクチュエータ部18を駆動してハンドルHをアンロックしてロック状態を保持させる。また、メインスイッチ11が非導通状態である場合、駆動回路部61は、アクチュエータ部18を駆動してハンドルHをアンロックしてアンロック状態を保持させる。
【0037】
入力回路部62は、起動スイッチ17からの信号を受け付ける。起動スイッチ17は、例えば、ハンドルHに設けられ、オン状態、あるいはオフ状態になるように乗員によって操作される。
【0038】
メインスイッチ状態取得部63は、乗員の操作に応じて導通することを可能としたメインスイッチ11の導通状態を取得する。
【0039】
メインリレー駆動部64は、車載側制御部30の制御により、メインリレー14のオン状態とオフ状態とを切換える。
【0040】
スターター駆動部65は、車載側制御部30からの制御により、パワーユニットPを始動させるための駆動信号を供給する。例えば、スターター駆動部65は、発電機GをエンジンEのスターターとして利用する際の駆動信号を変換部8に供給する。
【0041】
車載側制御部30は、始動制御部31と、通信制御部32と、判定部33と、駆動制御部34と、記憶部35とを備える。始動制御部31と、通信制御部32と、判定部33と、駆動制御部34とのうち一部または全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。また、記憶部35は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部35に格納されていてもよいし、外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部35にインストールされてもよい。
【0042】
例えば、記憶部35は、車載側制御部30の各部を機能させるためのプログラム、及び、車載装置100に対応する携帯端末装置200の識別情報などを保持する。
【0043】
始動制御部31は、リクエスト信号の送信要求を検知する。リクエスト信号の送信要求は、例えば、起動スイッチ17の操作などに起因する。例えば、始動制御部31は、メインスイッチ11がオフ状態、すなわち、ハンドルHがロック状態(車両の走行が不可能な状態)であり、起動スイッチ17がオン状態である場合に、リクエスト信号の送信要求を検知する。
【0044】
通信制御部32は、始動制御部31によってリクエスト信号の送信要求が検知された場合に、車載側送信部40を制御してリクエスト信号を送信させる。より具体的には、通信制御部32は、メインスイッチ11がオフ状態、すなわち、ハンドルHがロック状態(車両の走行が不可能な状態)である場合において、起動スイッチ17がオン状態になったときに、車載側送信部40にリクエスト信号を送信させる。
【0045】
なお、通信制御部32が車載側送信部40にリクエスト信号を送信させる状況において、バッテリBには、リクエスト信号の送信要求に応じてリクエスト信号を送信する際に必要となる電力が蓄えられているものとする。
【0046】
一方、リクエスト信号の送信に要する電力がバッテリBに蓄えられていない場合、メインスイッチ11がオン状態となって、車載装置100に電力を供給する発電機Gを駆動するキック作動部7が操作され、必要な電力がバッテリBに蓄電されるまで待機する。
【0047】
判定部33は、車載側受信部50によって受信された信号を解読し、解読した結果に基づいて、車載側受信部50によって受信された信号がリクエスト信号に対する信号であるか否かを判定する。以下、リクエスト信号に対する信号を、「アンサー信号」と称する。
【0048】
例えば、判定部33は、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200によって送信されたアンサー信号である場合に、車載側受信部50の受信元の装置(この場合携帯端末装置200)が予め定められた正規の装置であると判定し、認証に成功したと判定する。
【0049】
一方、判定部33は、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200によって送信されたアンサー信号でない場合に、車載側受信部50の受信元の装置が予め定められた正規の装置でないと判定し、認証に失敗したと判定する。例えば、判定部33は、携帯端末装置200と異なる装置から信号が送られてきた場合に、この装置を正規の装置でないと判定する。
【0050】
また、判定部33は、入力回路部62から入力される信号に基づいて、起動スイッチ17の動作状態を判定する。
【0051】
また、判定部33は、車載側受信部50によって信号が受信されたか否かを判定する。
【0052】
駆動制御部34は、判定部33の判定結果に応じて、ハンドルHのロック状態と、エンジンEの始動制限とを制御する。例えば、駆動制御部34は、判定部33によって認証に成功したと判定された場合、すなわち、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200によって送信されたアンサー信号である場合に、ハンドルのロック状態を解除し、エンジンEの始動制限を解除する。例えば、駆動制御部34は、駆動回路部61を介してハンドルロック部16のアクチュエータ部18を駆動させて、ハンドルのロック状態を解除する。駆動制御部34は、スターター駆動部65を介して、発電機Gを駆動させることで、エンジンEを始動させる。
【0053】
(携帯端末装置200の構成)
携帯端末装置200は、車載装置100により認証される。車載装置100の記憶部35には、携帯端末装置200の識別情報が記憶されている。携帯端末装置200は、携帯側受信部210と、携帯側送信部220と、携帯側制御部230と、を備える。
【0054】
携帯側受信部210は、車載装置100によって送信されるリクエスト信号を受信する。携帯側送信部220は、携帯側制御部230によって生成されたアンサー信号を、リクエスト信号の受信元である車載装置100に送信する。
【0055】
携帯側制御部230は、例えば、信号強度測定部231と、受信時間計時部232と、信号生成部233とを備える。信号強度測定部231は、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号の信号強度を測定する。
【0056】
受信時間計時部232は、信号強度測定部231による測定結果に基づいて、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号の受信時間を計時する。信号生成部233は、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号に応じたアンサー信号を生成し、携帯側送信部220に送信させる。
【0057】
なお、携帯側受信部210と、携帯側送信部220と、携帯側制御部230とのうち一部または全部は、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部としてもよい。また、これらのうち一部または全部は、LSIやASIC等のハードウェア機能部であってもよい。また、携帯側制御部230が記憶部(不図示)を備えていてもよく、同記憶部がROMやRAM、HDD、フラッシュメモリ等で実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムは、予め上記記憶部に格納されていてもよいし、外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで上記記憶部にインストールされてもよい。
【0058】
図2は、車載側送信部40の構成の一例を示す図である。車載側送信部40は、例えば、変調部41と、局部発振部42と、ミキサー43と、送信回路部44と、送信用アンテナ45とを備える。
【0059】
変調部41は、車載側制御部30から入力される信号を、ASK(amplitude-shift keying)やPSK(phase-shift keying)等の変調方式に基づいて変調する。
【0060】
ミキサー43は、変調部41によって変調された信号と、局部発振部42によって出力された信号とを混合し、両信号の和または差を周波数とする信号(例えばビート信号)を、送信回路部44に出力する。
【0061】
送信回路部44は、ミキサー43から入力された信号の利得の増幅や、ノイズ除去、フィルタリング処理等を行って、送信用アンテナ45に出力する。
【0062】
送信用アンテナ45は、送信回路部44によって出力された信号に基づく電波を、大気中に放射する。
【0063】
図3は、携帯側受信部210の構成の一例を示す図である。携帯側受信部210は、例えば、受信用アンテナ211と、受信回路部212と、局部発振部213と、ミキサー214と、復調部215とを備える。
【0064】
受信回路部212は、受信用アンテナ211によって受信された信号の利得の増幅や、ノイズ除去、フィルタリング処理等を行って、ミキサー214に出力する。
【0065】
ミキサー214は、受信回路部212によって出力された信号の周波数を、局部発振部213によって出力された信号に基づいて変換する。例えば、ミキサー214は、受信回路部212によって出力された信号の周波数と局部発振部213によって出力された信号の周波数との差から生じたビート信号を復調部215に出力する。
【0066】
復調部215は、ミキサー214によって出力された信号を、上述した変調部41の変調方式に対する復調を行い、復調した信号を携帯側制御部230に出力する。
【0067】
(リクエスト信号のフレーム構造)
図4を参照して、本実施形態のLF通信にて送信するリクエスト信号のフレーム構造について説明する。
図4は、本実施形態のLF通信にて送信するリクエスト信号のフレーム構造を示す説明図である。以下、リクエスト信号のフレーム構造をパターンLFPと称して説明する。
【0068】
パターンLFPのフレーム伝送に要する時間をTLFPとして示す。
図4に示すように、例えば、パターンLFPは、携帯端末装置用情報と、認証用情報とを含む。携帯端末装置用情報は、少なくともトレーニングデータTDと、フレームヘッダFH1と、識別情報IDkとを含み、認証用情報は、第1の認証用情報AUD1と、第2の認証用情報AUD2とを含む。さらに、携帯端末装置用情報は、誤り訂正情報ECC1などのデータを含めてもよい。
【0069】
トレーニングデータTDは、パターンLFPを送信する際に最初に送信されるように配置されている。トレーニングデータTDには、携帯端末装置200がパターンLFPを受信する際に携帯側受信部210の調整に要する信号パターンが割り付けられる。
【0070】
フレームヘッダFH1は、例えばトレーニングデータTDの次に送信するように配置されている。フレームヘッダFH1には、携帯側受信部210がトレーニングデータTDによるトレーニングを終えた後に、各種情報を抽出する際に指標とする信号パターンと、パターン種別を識別する情報が含まれる。
【0071】
識別情報IDkは、パターンLFPの送信先(宛先)にあたる携帯端末装置を特定する識別情報である。
【0072】
誤り訂正情報ECC1は、パターンLFPにおいて、受信した識別情報IDkなどの各データの誤り検出や誤り訂正を行うための情報である。誤り訂正情報ECC1は、パターンの種類ごとに、誤り検出や誤り訂正の対象範囲、及び、誤り検出や誤り訂正の手法などを適宜定めることができる。
【0073】
パターンLFPに含まれる第1の認証用情報AUD1および第2の認証用情報AUD2は、例えば、暗号処理に必要とされる情報(暗号鍵、暗号文など)を示す。暗号処理の方法には、一般的なアルゴリズムを適用することができる。暗号処理は、車載装置100において暗号化された情報を、携帯端末装置200により復号化され、復号化された情報の判定を携帯端末装置200と車載装置100の何れかで実施するようにしてもよい。
【0074】
(車載側制御部30の処理)
以下、
図5を参照して、本実施形態の車載側制御部30の処理について説明する。
図5は、車載側制御部30の処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、メインスイッチ11がオフ状態、すなわち、ハンドルHがロック状態(車両の走行が可能な状態)で実施されるものとする。
【0075】
まず、判定部33は、入力回路部62から入力される信号に基づいて、起動スイッチ17の動作状態を判定する(ステップS100)。起動スイッチ17がオフ状態である場合、車載側制御部30は、本フローチャートの処理を終了する。
【0076】
一方、通信制御部32は、起動スイッチ17がオン状態である場合、リクエスト信号の送信周波数の設定をする(ステップS102)。
【0077】
例えば、通信制御部32は、第1の認証用情報AUD1を送出する際の周波数f1と、第2の認証用情報AUD2を送出する際の周波数f2とを、上述した送信用アンテナ45の利得(信号強度)に対する周波数の特性(以下、「共振特性」と称する)に基づいて、それぞれ設定する。周波数f1は、例えば、上述した送信用アンテナ45の共振周波数f0に対して周波数f2よりも近い値に設定される。
【0078】
通信制御部32は、リクエスト信号の信号強度を簡易に変更することができ、第1の認証用情報AUD1が送出される際の電波の信号強度と、第2の認証用情報AUD2が送出される際の電波の信号強度とを異なるようにしてリクエスト信号を送信することができる。
【0079】
次に、通信制御部32は、リクエスト信号の送信時間を設定する(ステップS104)。なお、ステップS104の処理は、ステップS102の前に実施されてもよい。
【0080】
例えば、通信制御部32は、第1の認証用情報AUD1を送出する時間TAUD1と、第2の認証用情報AUD2を送出する時間TAUD2とを、乱数的(ランダム)に決定する。この際、時間TAUD1と時間TAUD2とは一致していてもよいし、相違していてもよい。これによって、通信制御部32は、時間TAUD1および時間TAUD2に関する情報の秘匿性を向上させることができる。
【0081】
通信制御部32は、決定した時間TAUD1および時間TAUD2を記憶部35に記憶させておき、再度、時間TAUD1および時間TAUD2を設定した際は、例えば、前回記憶させた情報の上に今回設定した時間TAUD1および時間TAUD2の情報を上書きする。すなわち、通信制御部32は、時間TAUD1および時間TAUD2を設定する度に、記憶部35内の時間TAUD1および時間TAUD2の情報を更新する。
【0082】
通信制御部32は、設定した送信周波数(周波数f1、f2)と送信時間(時間TAUD1、TAUD2)とに基づいて、リクエスト信号を携帯端末装置200に送信する(ステップS106)。
【0083】
例えば、通信制御部32は、
図4に示すようなフレーム構造のリクエスト信号を携帯端末装置200に送信する。通信制御部32は、局部発振部42から出力される信号の周波数を、所定の周波数に設定して、車載側送信部40に携帯端末装置用情報を送信させる。
【0084】
また、通信制御部32は、局部発振部42から出力される信号の周波数を、周波数f1に設定して、車載側送信部40に時間TAUD1をかけて第1の認証用情報AUD1を送信させる。なお、周波数f1は、携帯端末装置用情報の送信時の周波数(所定の周波数)と一致していてもよいし、相違していてもよい。
【0085】
また、通信制御部32は、局部発振部42から出力される信号の周波数を、周波数f2に設定して、車載側送信部40に時間TAUD2をかけて第2の認証用情報AUD2を送信させる。
【0086】
次に、判定部33は、車載側受信部50によって信号が受信されたか否かを判定する(ステップS108)。車載側受信部50によって信号が受信されない場合、車載側制御部30は、信号が受信されるまで待機する。
【0087】
一方、判定部33は、車載側受信部50によって信号が受信された場合、車載側受信部50によって受信された信号に、認証用情報を受信した際に要した時間(以下、「受信時間」と称する)を示す情報が含まれているか否かを判定する(ステップS110)。
【0088】
判定部33は、車載側受信部50によって受信された信号に、受信時間を示す情報が含まれている場合、記憶部35に記憶された送信時間、すなわち、通信制御部32によって設定された送信時間と、当該受信時間とが一致するか否かを判定する(ステップS112)。
【0089】
判定部33は、送信時間と受信時間とが一致する場合、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200により送信されたアンサー信号であると判定する。この認証用情報の送受信時間の一致に併せて、アンサー信号に含まれる携帯機ID情報の一致確認、RSSI強度(第1の認証情報AUD1の受信強度)が所定閾値以上あるかの確認、および暗号用データの復号による暗号用データの一致確認等が確認できた場合、判定部33は、車載側受信部50の通信相手である携帯端末装置200を正規の装置であると判定し、認証に成功したと判定する(ステップS114)。
【0090】
一方、判定部33は、車載側受信部50によって受信された信号に、受信時間を示す情報が含まれていない場合、または送信時間と受信時間とが一致しない場合に、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200により送信されたアンサー信号でないと判定する。判定部33は、車載側受信部50の通信相手である装置を正規の装置でないと判定し、認証に失敗したと判定する。つまり、本実施の形態の携帯端末装置認証システムでは、仮に、判定部33において、上記の携帯機ID情報の一致等の確認がなされたとしても(中継器を使用したリレーアタックにより正規携帯機との通信がなされたとしても)、認証用情報の送信時間と受信時間の一致がなければ、車載側受信部50の通信相手である装置を正規の装置でないと判定する(ステップS116)。
【0091】
ステップS114の処理の後、車載側制御部30(駆動制御部34)は、各部の駆動部(ソレノイド)を駆動させて各部の施錠状態を解錠するように制御する(ステップS118)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0092】
(携帯側制御部230の処理)
以下、
図6を参照して、本実施形態の携帯側制御部230の処理について説明する。
図6は、携帯側制御部230の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0093】
まず、携帯側制御部230は、携帯側受信部210によってリクエスト信号の受信が開始されたか否かを判定する(ステップS200)。携帯側受信部210によってリクエスト信号の受信が開始されない場合、本フローチャートの処理は終了する。
【0094】
受信時間計時部232は、携帯側受信部210によってリクエスト信号の受信が開始された場合、リクエスト信号のフレーム構造(パターンLFP)において第1の認証用情報AUD1の受信が開始されるか否かを判定する(ステップS202)。
【0095】
例えば、受信時間計時部232は、リクエスト信号の受信開始時、すなわち、リクエスト信号のフレーム構造(パターンLFP)において携帯端末装置用情報が開始されるのに応じて時間のカウントを開始し、携帯端末装置用情報の最後に配置されるデータを確認できた場合に第1の認証用情報AUD1の受信が開始されると判定する。
【0096】
受信時間計時部232は、第1の認証用情報AUD1の受信が開始されない場合、待機数する。一方、受信時間計時部232は、第1の認証用情報AUD1の受信が開始された場合、第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#をカウントする(ステップS204)。
【0097】
例えば、受信時間計時部232は、携帯端末装置用情報の最後に配置されるデータの受信が完了したのに応じて、第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#をカウントする。
【0098】
なお、携帯端末装置用情報内において当該携帯端末装置用情報の送信時間を示すデータが格納されている場合、受信時間計時部232は、リクエスト信号の受信開始時刻と、携帯端末装置用情報の送信時間を示すデータとに基づいて、第1の認証用情報AUD1の受信開始時刻(または携帯端末装置用情報の終了時刻)を算出して、当該算出時刻から第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#をカウントし始めてもよい。
【0099】
また、受信時間計時部232は、携帯端末装置用情報の開始時刻から第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#をカウントし始めてもよい。この場合、受信時間計時部232は、携帯端末装置用情報の受信に要する時間を、受信時間TAUD1#のカウント結果から減算し、実際の受信時間TAUD1#を導出する。
【0100】
次に、受信時間計時部232は、信号強度測定部231による測定結果に基づいて、リクエスト信号のフレーム構造(パターンLFP)において第1の認証用情報AUD1が終了したか否かを判定する(ステップS206)。
【0101】
図7は、第1の認証用情報AUD1が終了したか否かの判定方法を説明するための図である。
図7中に示すSIGは、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号を表している。縦軸は信号強度(例えば単位は「dB」)を表し、横軸は時間(例えば単位は「ms」)を表している。
【0102】
信号強度測定部231は、例えば、携帯側受信部210によってリクエスト信号の受信が開始されるのと同時に、当該リクエスト信号の信号強度を測定する。具体的には、リクエスト信号の信号波形から包絡線を取得する包絡線検波を行って、信号強度を測定する。例えば、信号強度に関する波形の上限値側で検波される包絡線をEL1と表し、振幅の下限値側で検波される包絡線をEL2と表す。
【0103】
受信時間計時部232は、例えば、信号強度測定部231によって検波された包絡線EL1とEL2との間の振幅W1が閾値Th以上であるか否かを判定して、第1の認証用情報AUD1が終了したか否かを判定する。
図7の例では、信号強度測定部231は、第1の認証用情報AUD1において信号強度の振幅W1が閾値Th以下になった時点(時刻Tc)で、第1の認証用情報AUD1が終了したと判定するとともに、第2の認証用情報AUD2が開始したと判定する。従って、受信時間計時部232は、携帯端末装置用情報の最後に配置されるデータの終了時刻から時刻Tcまでの期間を、第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#としてカウントし、時刻Tc以降の期間を、第2の認証用情報AUD2の受信時間TAUD2#としてカウントを開始する。なお、閾値Thは、複数設けられていてもよいし、包絡線をEL1およびEL2にそれぞれ異なる閾値として設けられてもよい。
【0104】
受信時間計時部232は、第1の認証用情報AUD1が終了しない場合、すなわち、第1の認証用情報AUD1において信号強度の振幅W1が閾値Th以下にならない場合、受信時間TAUD1#のカウントを継続する。
【0105】
一方、受信時間計時部232は、第1の認証用情報AUD1が終了した場合、すなわち、第1の認証用情報AUD1において信号強度の振幅W1が閾値Th以下になった場合、受信時間TAUD1#のカウントを終了して、図示しない記憶部に記憶させ(ステップS208)、第2の認証用情報AUD2の受信時間TAUD2#のカウントを開始する(ステップS210)。
【0106】
次に、受信時間計時部232は、信号強度測定部231による測定結果に基づいて、リクエスト信号のフレーム構造(パターンLFP)において第2の認証用情報AUD2が終了したか否かを判定する(ステップS212)。
【0107】
例えば、受信時間計時部232は、第2の認証用情報AUD2に受信時(時刻Tc以降)において、信号強度測定部231によって検波された包絡線EL1とEL2との間の振幅W2が略ゼロである場合に、第2の認証用情報AUD2が終了したと判定し、振幅W2が略ゼロでない場合、第2の認証用情報AUD2が終了していないと判定する。
【0108】
受信時間計時部232は、第2の認証用情報AUD2が終了していない場合、受信時間TAUD2#のカウントを継続する。一方、受信時間計時部232は、第2の認証用情報AUD2が終了した場合、受信時間TAUD2#のカウントを終了して、図示しない記憶部に記憶させる(ステップS214)。
【0109】
次に、信号生成部233は、所定のフレーム構造を有するアンサー信号を生成して、携帯側送信部220に送信させる(ステップS216)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
【0110】
(アンサー信号のフレーム構造)
図8は、本実施形態のRF通信にて送信するアンサー信号のフレーム構造を示す説明図である。以下、アンサー信号のフレーム構造をパターンRFAと称して説明する。
【0111】
図8に示すように、例えば、パターンRFAは、車載装置用情報と、第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#を示す情報と、第2の認証用情報AUD2の受信時間TAUD2#を示す情報とを含む。車載装置用情報は、少なくともトレーニングデータTDと、フレームヘッダFH2とを含む。さらに、車載装置用情報は、誤り訂正情報ECC2などのデータを含めてもよい。なお、パターンRFAのフレーム構造を有するアンサー信号の送出には、時間TRFAを要するものとする。
【0112】
トレーニングデータTDは、パターンRFAを送信する際に最初に送信されるように配置されている。トレーニングデータTDには、車載装置100がパターンRFAを受信する際に車載側受信部50の調整に要する信号パターンが割り付けられる。
【0113】
フレームヘッダFH2は、例えばトレーニングデータTDの次に送信するように配置されている。フレームヘッダFH2には、車載側受信部50がトレーニングデータTDによるトレーニングを終えた後に、各種情報を抽出する際に指標とする信号パターンと、パターン種別を識別する情報が含まれる。
【0114】
誤り訂正情報ECC2は、パターンRFAにおいて、受信した受信時間TAUD1#を示す情報などの各データの誤り検出や誤り訂正を行うための情報である。誤り訂正情報ECC2は、パターンの種類ごとに、誤り検出や誤り訂正の対象範囲、及び、誤り検出や誤り訂正の手法などを適宜定めることができる。
【0115】
これによって、車載装置100の判定部33は、
図8に示すようなフレーム構造(FLP2)のアンサー信号から、第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#と、第2の認証用情報AUD2の受信時間TAUD2#とを取得して、送信時間TAUD1と受信時間TAUD1#と比較するとともに、送信時間TAUD2と受信時間TAUD2#と比較することで、各受信時間が対応する送信時間と一致、あるいは所定の数値範囲内で一致する場合に、車載側受信部50によって受信された信号がリクエスト信号に対するアンサー信号であると判定することができる。
【0116】
以下、
図9を参照して、車載側制御部30の各部の動作タイミングについて説明する。
図9は、車載側制御部30の各部の動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。なお、
図9の例では、バッテリBの電圧が十分高く、キック動作を必要としないものとする。
【0117】
図9には、(a)起動スイッチ、(b)制御部起動、(c)初期化処理、(d)メインスイッチ、(e)メインスイッチ判定値、(f)LF送信、(g)携帯端末装置側処理、(h)RF受信、(i)RFデータ判定、(j)ソレノイド制御、及び、(k)解錠の各状態が示される。
【0118】
時刻t20に起動スイッチ17の操作の検出(0V)により、車載側制御部30に対して制御部起動が指示(「制御部起動:オン(ON)」)される。この指示に応じて、車載側制御部30は、初期化処理を実施して時刻t25までに終了する。初期化処理には、車載側制御部30の周辺部にあたる入出力ポートの設定処理や車載側受信部50の初期状態の調整等の処理などが含まれる。
【0119】
車載側制御部30は、メインスイッチ状態取得部63によるメインスイッチ11の導通状態の取得結果に基づいて、メインスイッチ11が、オフ(OFF)の状態にあることを検出し、メインスイッチの判定結果(メインスイッチ判定値)をオフ(OFF)のまま継続する。
【0120】
通信制御部32は、車載側送信部40に対して、時刻t111においてLF通信でリクエスト信号(LFP)の送信を開始させ、時刻t112においてリクエスト信号(LFP)の送信を終了させる。
【0121】
携帯側制御部230(信号生成部233)は、時刻t111から時刻t112の期間(TLFP)において、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号(LFP)に基づいて、アンサー信号(RFA)を生成する。携帯側制御部230(信号生成部233)は、携帯側送信部220に対して、時刻t112においてRF通信でアンサー信号(RFA)の送信を開始させ、時刻t113においてアンサー信号(RFA)の送信を終了させる。
【0122】
判定部33は、時刻t112から時刻t113の期間(TRFA)において、車載側受信部50によって受信されたアンサー信号(RFA)に基づいて、携帯端末装置200の認証判定(RFデータ判定)を行う。携帯端末装置200の認証が成功した場合、認証判定(RFデータ判定)の判定値は、1(オン)に設定される。
【0123】
車載側制御部30(駆動制御部34)は、携帯端末装置200の認証が成功した場合(時刻t114)、各部の駆動部(ソレノイド)を駆動させて各部の施錠状態を解錠するように制御する。これによって、時刻t115以降において各部の施錠状態が解錠される。
【0124】
以上説明した実施形態における携帯端末装置認証システム1によれば、車載側制御部30が、携帯端末装置200に対して、信号強度が異なる複数の認証用情報を含むリクエスト信号を車載側送信部40に送信させる。また、携帯側制御部230が、携帯側受信部210によって受信されたリクエスト信号に含まれる複数の認証用情報の信号強度に基づいて、複数の認証用情報を判別し、認証用情報の受信時間を、判別した認証用情報ごとに計時し、車載装置100に対して、計時した受信時間を示す情報を含めたアンサー信号を携帯側送信部220に送信させる。また、車載側制御部30は、車載側受信部50によって受信された信号に認証用情報の受信時間を示す情報が含まれているか否かを判定し、認証用情報の受信時間を示す情報が含まれている場合に、認証用情報の受信時間を示す情報に基づいて、車載側受信部50によって受信された信号が、リクエスト信号の送信先である携帯端末装置200の携帯側送信部220によって送信されたアンサー信号であるか否かを判定する。これによって、実施形態における携帯端末装置認証システム1は、認証のセキュリティ性を向上させることができる。
【0125】
また、実施形態における携帯端末装置認証システム1によれば、複数の認証用情報として、例えば、第1の認証用情報AUD1と、第2の認証用情報AUD2とに着目した場合、第1の認証用情報AUD1の送信時間TAUD1と、アンサー信号に含まれる第1の認証用情報AUD1の受信時間TAUD1#とを比較するとともに、第2の認証用情報AUD2の送信時間TAUD2と、アンサー信号に含まれる第2の認証用情報AUD2の受信時間TAUD2#とを比較することによって、認証時の判定精度を高めることができる。
【0126】
また、実施形態における携帯端末装置認証システム1によれば、送信用アンテナ45の共振特性に基づいて、複数の認証用情報の送信時の周波数を設定することによって、リクエスト信号の信号強度を簡易に変更することができる。
【0127】
また、実施形態における携帯端末装置認証システム1によれば、車載側制御部30(通信制御部32)が、乱数的に決定した送信時間で、リクエスト信号を車載側送信部40に送信させることによって、情報の秘匿性が向上し、認証時の判定精度を、より高めることができる。
【0128】
以下、その他の実施形態(変形例)について説明する。
上述した実施形態における携帯端末装置認証システム1は、例えば、乗用車等の車両ドアを有する自動車に適用されてもよい。この場合、携帯端末装置200が車載装置100によって認証されたときに、車両ドアの施錠を解錠するようにしてもよい。
【0129】
また、上述した実施形態における携帯端末装置認証システム1において、リクエスト信号に含まれる認証用情報の送出(送信)時の信号強度(出力)は、送信用アンテナ45の共振特性と周波数の差異とによって変動させるものとして説明したが、これに限られない。例えば、送信用アンテナ45の共振特性を疑似的に摸したフィルタ回路等によって、認証用情報ごとの信号強度(あるいは利得)に差異を持たせてもよい。また、上記フィルタ回路は、アナログ回路やディジタル回路、またはこれら回路の組み合わせで実現されてもよい。
【0130】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。