(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395321
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
F16B 13/14 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
F16B13/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-210068(P2015-210068)
(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-82855(P2017-82855A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 壮平
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−171713(JP,U)
【文献】
特開平08−338411(JP,A)
【文献】
実開昭55−130916(JP,U)
【文献】
実開昭64−045016(JP,U)
【文献】
実開昭62−145854(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B13/00−13/14
17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材の取付用角孔を覆うフランジと、前記フランジに下設された一対の脚片と、前記フランジに穿設されてねじ部材を前記脚片同士の間に案内する挿入孔とを備え、前記各脚片が前記角孔に対し縮径方向の変位を伴って挿入されることで仮止めされ、ねじ部材を取付部材の貫通孔及び前記挿入孔から脚片同士の間にねじ込むことで本止めされ、かつ、前記取付部材を前記フランジと前記ねじ部材の頭との間に挟み込んだ状態で前記被取付部材に固定するグロメットであって、
前記脚片の外側面は、根元側を構成して前記角孔の対応内側面と係合可能な平面状側面部と、前記平面状側面部より先端側を構成して板幅方向の形状が板幅の略中間部を最大張出部となる円弧状に形成した弧状側面部とを有し、
前記最大張出部は、前記被取付部材に仮止めする操作において前記角孔の対応内側面に接触することを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記弧状側面部は、前記脚片の突出端から前記平面状側面部に近づくほど次第に張出量を増すよう傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記弧状側面部は、前記平面状側面部として板幅の両側に比べ略中間部を上下に長く形成することにより、前記脚片が前記角孔に挿入される過程で該角孔の対応内側面に最も強く圧接する仮止部を板幅の両側にある円弧の上端より下に変位した位置に設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記仮止部は、前記平面状側面部と前記弧状側面部との境界であって左右の中間部に位置していることを特徴とする請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
前記境界は、板幅の両側に比べ左右中間部を下方に変位した下凸の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のグロメット。
【請求項6】
前記平面状側面部及び前記弧状側面部のうち前記下凸の円弧状の頂点を通る水平線より上側部分が前記角孔の対応内側面に線当たりとなる区域であり、前記弧状側面部の板幅中間部分が前記角孔の対応内側面に対して点当たりとなる区域であることを特徴とする請求項5に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品取付用のグロメットに関し、特にタッピングねじ等のねじ部材と共に用いられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示のグロメットを示している。このグロメット1は、被取付部材である基板6の取付用角孔(取付孔)6aを覆うフランジ(頭部)2と、該フランジに下設された一対の脚片3と、フランジ2に設けられてタッピングねじSを脚片同士の間に案内する挿入孔4とを備え、各脚片3が角孔6aに対し縮径方向の変位を伴って挿入されることで仮止めされる。また、グロメット1は、基板6に対しタッピングねじSを取付部材7の貫通孔及び挿入孔4から脚片同士の間にねじ込むことで本止めされる。本止め状態では、取付部材7がフランジ2とタッピングねじSの頭との間に挟み込まれた態様で基板6に固定される。
【0003】
なお、グロメット1の要部は、捩込孔5a付きの金属片5や硬質樹脂片をフランジ2に内設することにより、タッピングねじSの締め付け力を増大させたり、締め付け力を維持して再使用可能にした点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−99313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したグロメットにおいて、一対の脚片は、対向配置されており、被取付部材の矩形角孔に対し縮径方向の変位を伴って挿入されることで仮止めされる。
図5から
図7の各(b)はその仮止め構造と関連する問題点を明らかにするため従来グロメット10を示す模式図である。各図では、目視し易いように脚片の外形部のR加工部を省略している。各脚片30は、フランジ20の下面にあって隙間Sを保って対向配置されている。各脚片30の外側面は、根元側を構成して矩形角孔8aの対応内側面と係合可能な上側の平面状側面部14と、先端側を構成して突出端から平面状側面部に近づくほど次第に外向きに張り出すよう傾斜した下側の平面状側面部15とからなる。符号k3は、平面状側面部14と平面状側面部15との境界である。この境界k3は、外側へ最も張出していると共に略水平に延びており、脚片30が角孔8aに挿入される過程で該角孔の対応内側面に最も強く圧接する仮止部となる。
【0006】
ところで、グロメット10を角孔8aに仮止めする操作において、挿入力ないしは押圧力は、脚片30の外側へ最も張出した境界k3、つまり仮止部が角孔8aを通過する付近で最も高くなる。用途によっては、設計上の仮止め力を維持して、仮止め操作での挿入力や押圧力を多少なりとも低く抑えたいこともある。これは、特に、角孔の孔縁の状態つまり孔縁に形成されたバリ等により挿入抵抗が高くなるような場合に要求される。
【0007】
ところが、従来構造では、仮止め操作での挿入力ないしは押圧力を低くすると、仮止め力も比例して低下して、角孔に対し仮止めしたグロメットが不用意に抜け易くなる。以上のような問題は、平面状側面部14として、同図のごとく境界k3から根元に向かって隙間S側に若干傾いた形状以外に、境界k3と根元の間に断面L形(段差)として形成される(例えば、実公平6−2016号公報を参照)構成でも同じ。
【0008】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、仮止め力の低下を抑えて、仮止め操作において脚片の角孔への挿入力ないしは押圧力を低くでき、それにより仮止め操作性を向上することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、
図5から
図7の各(a)を参考にして特定すると、被取付部材8の取付用角孔8aを覆うフランジ2と、前記フランジに下設された一対の脚片3と、前記フランジ2に穿設されてねじ部材6を前記脚片同士の間に案内する挿入孔11とを備え、前記各脚片3が前記角孔8aに対し縮径方向の変位を伴って挿入されることで仮止めされ、ねじ部材6を取付部材
9の貫通孔
9a及び前記挿入孔11から脚片同士の間にねじ込むことで本止めされ、かつ、前記取付部材
9を前記フランジ2と前記ねじ部材の頭6aとの間に挟み込んだ状態で前記被取付部材8に固定するグロメット1であって、前記脚片3の外側面は、根元側を構成して前記角孔8aの対応内側面と係合可能な平面状側面部4と、前記平面状側面部4より先端側を構成して板幅方向の形状が板幅の略中間部を最大張出部となる円弧状に形成した弧状側面部5とを有し
、前記最大張出部は、前記被取付部材8に仮止めする操作において前記角孔8aの対応内側面に接触することを特徴としている。
【0010】
以上の本発明において、『被取付部材』は各種装置や機器類のパネルや基板等の部材である。『取付部材』は被取付部材に後付けされる装置や部品等の部材である。『仮止め』とは角孔から振動等により不用意に抜けなくなることである。『平面状』には例えば平面の一部に凹や凸などが付されている態様も含む。この点は『円弧状』も同じ。
【0011】
以上の本発明は、請求項2〜5で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記弧状側面部は、前記脚片の突出端から前記平面状側面部に近づくほど次第に張出量を増すよう傾斜している構成である(請求項2)。
(イ)、前記弧状側面部は、前記平面状側面部として板幅の両側に比べ略中間部を上下に長く形成することにより、前記脚片が前記角孔に挿入される過程で該角孔の対応内側面に最も強く圧接する仮止部を板幅の両側にある円弧の上端より下に変位した位置に設けている構成である(請求項3)。
【0012】
(ウ)、前記仮止部は、
図6に示されるごとく前記平面状側面部と前記弧状側面部との境界にあって左右の中間に位置している構成である(請求項4)。
(エ)、前記境界は、板幅の両側に比べ左右中間部を下方に変位した下凸の円弧状に形成されている構成である(請求項5)。
(オ)、前記平面状側面部及び前記弧状側面部のうち前記下凸の円弧状の頂点を通る水平線より上側部分が前記角孔の対応内側面に線当たりとなる区域であり、前記弧状側面部の板幅中間部分が前記角孔の対応内側面に対して点当たりとなる区域である構成である(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、各脚片の外側面が根元側に位置して角孔の対応内側面と係合可能な平面状側面部と、平面状側面部より先端側を構成して板幅方向の形状が板幅の略中間部を最大張出部となる円弧状に形成した弧状側面部とを有している。このうち、弧状側面部は、
図7(a)において、平面状側面部4と弧状側面部5との境界kのうち、最大張出部である円弧状の左右中間部である同図のk1が角孔を通過するときに角孔の対応内側面に当たる接触点として、最も大きな挿入抵抗を受ける仮止部となる。これに対し、従来グロメットは、
図7(b)において、各脚片30の外側面が根元側に位置して角孔8aの対応内側面と係合可能な上側の平面状側面部14と、平面状側面部より先端側に位置して突出端から平面状側面部14に近づくほど張出量を増す下側の平面状側面部15とを有しているため、平面状側面部14と平面状側面部15との境界k3が角孔8aを通過するときに所定長さの接触域となり最も大きな挿入抵抗を受ける仮止部となる。
【0014】
従って、グロメットを被取付部材に仮止め操作において、発明グロメットは、被取付部材の角孔に対し各脚部を挿入し押圧操作すると、仮止部k1が少なくとも角孔の上縁に達するまで角孔の対応内側面に点当たりの状態で押し込められ、その結果、挿入抵抗も減じられる。これに比べ、従来グロメットは、仮止部つまり境界k3の両側のR部を除いた部分が角孔の対応内側面に線当たりする接触域となるため、点当たりの状態で押し込められる構成よりも挿入抵抗が増し相対的に大きな挿入荷重が必要となる。また、仮止め状態において、発明及び従来の各グロメットは角孔に対し脚片の根元側平面状側面の基部を係合しているため仮止め力は同程度となる。これにより、本発明では、仮止め力の低下を抑えて、仮止め操作において脚片の角孔への挿入力ないしは押圧力を低くでき、それにより仮止め操作性を向上できる。
【0015】
請求項2の発明では、弧状側面部が脚片の突出端から平面状側面部に近づくほど次第に張出量を増すよう傾斜しているため、前記した点当たりによる挿入抵抗の低減に加え、更に角孔に対する各脚片の良好な挿入性が維持される。
【0016】
請求項3の発明では、平面状側面部4において板幅の両側に比べ略中間部を上下に長く形成(具体的には平面状側面部4がU又はV形状に形成)されており、脚片3の角孔8aへの挿入過程で、該角孔の対応内側面に最も強く圧接する仮止部k1が板幅の両側にある円弧の上端uより下に位置している。この構成では、例えば、各脚片3が
図7(a)のごとく角孔8a内で縮径方向に最大まで変位した状態から、更に
図6(a)のごとく平面状側面部が角孔を通過するまで押し込められるとき、従来のごとくいきなり平面当たりすることなく、境界kの上向きに延びた円弧の上端uの存在により接触部の力を分散させ易くなっており、その結果、角孔に対する脚片の引っかかりが生じ難く良好な挿入性が維持される。
【0017】
請求項4と5の各発明は以上の構成をより確認的に明らかにしたものである。すなわち、仮止部k1が請求項3のごとく平面状側面部4と弧状側面部5との境界kで左右の中間部に位置していたり、境界kが請求項4のごとく板幅の両側に比べ左右中間部を下方に変位した下凸の円弧状に形成されていることにより、
図6(a)のごとく各脚片3を角孔に挿入操作するときに、点当たりから徐々に線当たりへと移行するので引っかかりなく良好に最終まで移行できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4と5の構成をより詳細に明らかにしたものであり、各脚片3を角孔に挿入操作するときに、
図6(a)のごとく点当たりする弧状側面部5の板幅中間部分y1の区域から線当たりする下凸の円弧状の頂点を通る水平線より上側部分y2に徐々に移行するので引っかかりなく良好に最後まで移行できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】形態例のグロメットを使用する際の各部材との関係を示す全体構成図である。
【
図2】上記グロメットの細部を示し、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【
図3】(a)は上記発明グロメットの正面図、(b)は
図2(a)のA−A線断面図、(c)は
図2(b)のB−B線断面図である。
【
図4】(a)は
図2及び
図3のグロメットを被取付部材の角孔に仮止めするときの作動を示す断面図、(b)はその仮止め状態から本止めすると共に、取付部材を被取付部材に固定するときの作動を示す断面図である。
【
図5】(a)は上記グロメットを簡略化して示す発明グロメットの外観斜視図、(b)は従来グロメットを同様な状態で示す外観斜視図である。
【
図6】(a)は
図5(a)の発明グロメットの構成特徴を示す作動説明図、(b)は
図5(b)の従来グロメットの構成特徴を示す作動説明図である。
【
図7】(a)は
図5及び
図6(a)の発明グロメットを仮止めするときの作動を示す模式図、(b)は上記従来グロメットを(a)と同様な状態で示す模式図である。
【
図8】特許文献1のグロメットを示し、(a)は同グロメットの斜視図、(b)は同グロメットを用いて取付部材を被取付部材に固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態例について
図1から
図7を参照しながら説明する。この説明では、構造を明らかにした後、作動特徴に言及する。なお、
図5から
図7は、
図1から
図4に示したグロメットの要部作動を明瞭化するため、目視し易いように脚片の両側の外形部のR加工を省略し、また、同様なタイプの従来グロメットと共に示している。
【0021】
(構造)形態例のグロメット1は、パネルや基板等の被取付部材8の角孔8aを覆うフランジ2と、フランジ2に下設された一対の脚片3と、フランジ2に穿設されてねじ部材6を脚片同士の間に案内する挿入孔11とを備えており、各脚片3が角孔8aに対し縮径方向の変位を伴って挿入されることで仮止めされる。また、グロメット1は、ねじ部材6を取付部材
9の貫通孔
9a及び挿入孔11から脚片同士の間にねじ込むことで本止めされる。本止め状態では、取付部材
9がフランジ2とねじ部材の頭6aとの間に挟み込まれた態様で被取付部材8に固定される。
なお、符号7は貫通孔7a付きの座金である。これらは従来と同じ。相違点は、仮止め操作での挿入力ないしは押圧力を仮止め力を下げることなく低減するため、脚片3の外側面の形状として、各脚片3の外側面が根元側を構成している平面状側面部4と、先端側を構成している板幅の略中間部を最大張出部となる円弧状に形成した弧状側面部5とを有していることにある。以下、これにの細部を明らかにする。
【0022】
グロメット1は樹脂の射出形成体からなる。フランジ2は、円盤状からなり、被取付部
8の矩形角孔8aを覆う大きさからなる。フランジ2の形状は、角孔8aを覆うことができれば矩形や多角形等でもよい。フランジ2には、筒部12が上面中央部に突設されている。筒部12は、円筒状で取付部材9の貫通孔9aに差し込まれる部分である。また、筒部12は、対の縦溝12aにより二分割された状態となっている。縦溝12aは、対向配置された脚片3同士の間の隙間Sに対応した上方に位置している。
【0023】
挿入孔11は、筒部12内からフランジ2を貫通し隙間Sに通じている。挿入孔11の孔径は下側より上側が大きくなっている。この構成は、
図4(b)の一点鎖線に示したごとくねじ部材6が挿入孔にねじ込まれたときに、挿入孔11の孔径に応じて各脚片3が拡径方向に変形し易くする。同様に、筒部12は、縦溝12aの存在によりねじ部材6のねじ込みにより拡径変形し易くなっており、貫通孔9aの内周に対しがたつきなく装着可能となる。
【0024】
各脚片3は、
図3に示されるごとく、基端3aがフランジ2の下面略中央部に接続されていると共に、先端3bが平坦となった突出端となっている。各脚片3の内面側には、ガイド溝3cが先端から挿入孔11に渡って設けられている。そして、ねじ部材6は、挿入孔11からガイド溝3cに沿ってねじ込まれることになる。
【0025】
各脚片3の外側面は、上側の平面状側面部4及び下側の弧状側面部5からなる。平面状側面部4及び弧状側面部5は、
図2から
図4に示されているごとく板幅方向の両側がR加工されおり、R加工部である両側部分4a,5a及び両側部分4a,5aの間を構成している中間部分4b,5bとからなる。符号kは、平面状側面部4と弧状側面部5との境界を示している。なお、
図5から
図7では両側部分4a,5aを省略している。
【0026】
平面状側面部4つまり、両側部分4a及び中間部分4bは、基端3aないしは脚片の根元側に位置して角孔8aの対応内側面と係合可能な部分であり、基端3aから境界kに向けて次第に外形方向に張り出すよう傾斜している。また、平面状側面部4は、板幅の両側に比べ略中間部が上下に長く形成されて、概略U字又はV字形状となっている。
この構成では、脚片3が角孔8aに押入される過程で、該角孔8aの対応内側面に最も強く圧接する仮止部k1が境界kのうち、
図7(a)の左図に示されるごとく板幅の左右略中間部であり、両側にある下凸の円弧状の上端uよりかなり下方に位置している。
【0027】
これに対し、弧状側面部5つまり、両側部分5a及び中間部分5bは、上下方向の形状が先端3bないしは突出端から平面状側面部4に近づくほど次第に張出量を増していると共に、板幅方向の形状が板幅の略中間部を最大張出部となる円弧状に形成されている。換言すると、弧状側面部5は、
図7(a)において、平面状側面部4と弧状側面部5との境界kのうち、最大張出部である円弧状の左右中間部である同図のk1が角孔8aを通過するときに角孔8aの対応内側面に点当たり、つまり最も大きな挿入抵抗を受ける仮止部となる。勿論、仮止部k1の外径は角孔8aの内径より大きくなっている。つまり、一方脚片3の仮止部k1と他方脚片3の仮止部k1との間の距離aは、角孔8のうち、仮止部側が当たる対向内側面の間の距離bよりも長くなっている。
【0028】
また、境界kは、板幅の両側に比べ左右中間部を下方に変位した下凸の円弧状に形成されている。この境界kは、
図6(a)に一点鎖線に示したごとく各脚片3が角孔8aに最終段階まで押し込められた状態において、角孔8aの下側に平面状側面部4の一部が余裕を持って露出される位置となっている。そして、この構成では、平面状側面部4及び弧状側面部5のうち、下凸の円弧状の頂点を通る水平線より上側部分y2が角孔8aの対応内側面に線当たりとなる区域となり、弧状側面部5の板幅中間部分y1が角孔8aの対応内側面に対して点当たりとなる区域となる。
【0029】
(作動)以上のグロメット1は、特に、被取付部材8の角孔8aに対し仮止め操作において以下にような作動により従来に比べ挿入力ないしは押圧力を低減可能となる。
【0030】
(ア)グロメット1は、脚片3が被取付部材の矩形角孔8aに押入される過程で、該角孔8aの対応内側面に最も強く圧接する仮止部k1が境界kのうち、板幅の左右略中間部であり、両側にある円弧の上端uより下方となっている。このため、この構造では、例えば、各脚片3が
図7(a)のごとく角孔8a内で縮径方向に最大まで変位した状態から、更に
図6(a)のごとく平面状側面部が角孔8aを通過するまで押し込められるとき、従来のごとくいきなり平面当たりすることなく、境界kの上向きに延びた両側上端uの存在により接触部の力を分散し易くする。この分散作動は、角孔8aに対する脚部3の押圧力を低減できるよう機能する。
【0031】
(イ)換言すると、弧状側面部5は、
図7(a)において、平面状側面部4と弧状側面部5との境界kのうち、最大張出部である円弧状の左右中間部である同図のk1が角孔8aを通過するときに角孔8aの対応内側面に点当たり、つまり最も大きな挿入抵抗を受ける仮止部となる。従って、グロメット1を被取付部材8に仮止めする操作において、グロメット1は、被取付部材8の角孔8aに対し各脚部3を挿入し押圧操作すると、仮止部k1が少なくとも角孔8aの上縁に達するまで角孔8aの対応内側面に点当たりの状態で押し込められ、その結果、挿入抵抗も減じられる。この点、従来グロメットでは、仮止部つまり境界k3の両側のR部を除いた部分が角孔の対応内側面に線当たりする接触域となるため、点当たりの状態で押し込められる構成よりも挿入抵抗が増し相対的に大きな挿入荷重が必要となる。
【0032】
(ウ)以上の仮止部k1は、境界kにおいて左右の中間部に位置していたり、境界kが板幅の両側に比べ左右中間部を下方に変位した下凸の円弧状に形成されていることにより、
図6(a)のごとく各脚片3を角孔に挿入操作するときに、点当たりから徐々に線当たりへと移行するので引っかかりなく良好に最終段階まで移行できる。すなわち、この構成では、特に、境界kの上向きに延びた両側上端uの存在により接触部の力を分散させ易く、挿入荷重の伝達を
図5(a)に矢印で示したごとく中間部の上向き方向と、両側の斜め上向き方向にコントロールして、角孔8aに対する脚片3の引っかかりが生じ難く良好な挿入性を維持可能にする。なお、従来グロメット10では、挿入荷重の伝達が
図5(b)に矢印で示したごとく上向き方向と、両側の水平方向となるため角孔8aに対する脚片3の引っかかりが生じ易いものとなっている。
【0033】
(エ)そして、仮止め状態では、発明及び従来の各グロメットは角孔8aに対し脚片3の平面状側面4の基端側を係合しているため仮止め力は同程度となる。これにより、本発明では、仮止め力の低下を抑えて、仮止め操作において脚片の角孔への挿入力ないしは押圧力を低くでき、それにより仮止め操作性を向上できる。
【0034】
なお、本発明のグロメットは、請求項1で特定される構成を備えておればよく、細部は形態例や公知例等を参考にして変更したり展開可能なものである。その例としては、グロメットの使用態様として座金を省略したり、逆にフランジと被取付部材との間にシール部材を介在することである。
【0035】
また、特許文献1のごとく捩込孔付きの金属片や硬質樹脂片をフランジに内設してねじ部材の締め付け力を増大させるようにしたり、実公平6−2016号公報のごとく被取付部材の厚さバラツキを吸収するためフランジが上面の窪みによって薄肉片を形成し、薄肉片との接続部に溝で形成された薄肉部を設け、薄肉片がねじ部材のねじ込みにより上向きに変形することにより脚片を引上げると共に被取付部材をフランジ下面に押し付けるようにすることである。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・グロメット
2・・・・フランジ(11は挿入孔)
3・・・・脚片
4・・・・平面状側面部(4aは板幅の両側、4bは板幅の略中間部)
5・・・・弧状側面部(5aは板幅の両側、5bは板幅の略中間部)
6・・・・ねじ部材(6aは頭)
7・・・・座金(7aは貫通孔)
8・・・・被取付部材(8aは角孔)
9・・・・取付部材(9aは貫通孔)
10・・・従来のグロメット(20はフランジ、30は脚片)
11・・・挿入孔
12・・・筒部
k・・・・境界
k1・・・仮止部
k3・・・境界(仮止部)