(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物と、活性水素含有基を有する化合物との反応に用いられる反応促進剤であって、ハロゲン化カルバモイル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物からなる反応促進剤。
前記分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、その他の一般式OCN−R−NCO(ただしRは炭素数1〜20の二価の脂肪族残基である。)で表されるジイソシアネート化合物、メタクロイルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、その他の一般式R”−NCO(ただしR”は炭素数1〜20の一価の脂肪族残基である。)で表されるモノイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2のいずれかに記載の反応促進剤。
分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物と、活性水素含有基を有する化合物とを反応させて、ウレタン化合物、チオウレタン化合物、アミド化合物、またはウレア化合物を製造する方法であって、前記反応を、請求項1記載の反応促進剤の存在下で行うことを特徴とする製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<反応促進剤>
本発明の反応促進剤は、ハロゲン化カルバモイル基を有する化合物からなる。
本発明において、「ハロゲン化カルバモイル基」は、>N−CO−Z(Zはハロゲン原子である。)で表される構造の基を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0012】
本発明の反応促進剤は、反応促進剤としての機能上はハロゲン化カルバモイル基を有していれば他の構造は特に限定されないが、硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基をさらに有することが好ましい。特に、分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物が、同時に分子内に(メタ)アクリロイル基を有するとき、反応促進剤も同様に(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基(CH
2=CH−CO−)またはメタクリロイル基(CH
2=C(CH
3)−CO−)を示す。
分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基と、(メタ)アクリロイル基とを有する反応促進剤としては、原料入手の容易さおよび反応性の点で、下記一般式(I−1)または(I−2)で表される化合物が好ましい。
【0013】
【化2】
[式中、R
1およびR
2は各々独立に、水素原子またはメチル基であり、R
3は、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合をエーテル結合、エステル結合およびフェニレン結合からなる群より選ばれる結合で置換してなる基であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。前記一般式(I−2)中の2つのR
1は同じでも異なってもよく、2つのR
3は同じでも異なってもよい。]
【0014】
本発明においてアルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の炭素原子に結合する任意の2個の水素原子を除いて生ずる基を意味する。
一般式(I−1)または(I−2)中、R
3における炭素数1〜10のアルキレン基としては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がさらに好ましい。
R
3におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましい。
【0015】
前記アルキレン基は、当該アルキレン基中の炭素原子間の単結合がエーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO−O−)およびフェニレン結合(−C
6H
4−)からなる群より選ばれる結合で置換されていてもよい。該結合で置換される単結合は1つでも2つ以上でもよく、1つであることが好ましい。2以上の単結合が置換される場合、各単結合を置換する結合は同じでも異なってもよい。
【0016】
前記アルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合をエーテル結合、エステル結合およびフェニレン結合からなる群より選ばれる結合で置換してなる基として好ましい具体例は、例えば、−CH
2−、−C
2H
4−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
5−、−(CH
2)
6−、−CH
2−O−C
2H
4−、−C
2H
4−COO−CH
2−、−C
2H
4−Ph−CH
2−等が挙げられる。
【0017】
R
3において、前記アルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合をエーテル結合、エステル結合およびフェニレン結合からなる群より選ばれる結合で置換してなる基は、置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、−OR’、−COR’、−COOR’(R’はアルキル基である。)等が挙げられる。
R
3がフェニレン結合を有する場合、前記置換基は、アルキレン基中の水素原子を置換してもよく、フェニレン結合中の水素原子を置換してもよい。
【0018】
前記置換基における炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10の炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
前記R’におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0019】
R
3としては、上記の中でも、炭素数1〜8のアルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合の少なくとも1つをエーテル結合で置換してなる基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合の少なくとも1つをエーテル結合で置換してなる基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合の少なくとも1つをエーテル結合で置換してなる基がさらに好ましく、−CH
2−、−C
2H
4−、−(CH
2)
3−、−CH
2−O−C
2H
4−、または−C
2H
4−O−C
2H
4−が特に好ましい。
【0020】
Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでもよく、塩素原子が好ましい。
【0021】
一般式(I−1)で表される化合物としては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルバモイルクロリド、N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルカルバモイルクロリド等が好ましい。
一般式(I−2)で表される化合物としては、N−1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルカルバモイルクロリド等が好ましい。
【0022】
本発明の反応促進剤は、分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物と、活性水素含有基を有する化合物との反応に用いられる。
該反応を本発明の反応促進剤の存在下で行うことで、それらの化合物の反応速度を向上させることができる。
【0023】
<ウレタン化合物、チオウレタン化合物、アミド化合物またはウレア化合物の製造方法>
本発明の製造方法は、分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物ともいう。)と、活性水素含有基を有する化合物(以下、活性水素含有化合物ともいう。)とを反応させて、ウレタン化合物、チオウレタン化合物、アミド化合物、またはウレア化合物を製造する方法であって、前記反応を、前記本発明の反応促進剤の存在下で行うことを特徴とする。
【0024】
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物としては、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有するものが用いられる。本発明の反応促進剤は、かかるイソシアナト基と、活性水素含有基との反応を促進する効果に優れる。
イソシアネート化合物としては、分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を有するものであれば特に限定されず、公知のイソシアネート化合物のなかから、該反応により製造しようとする化合物の構造に応じたものを適宜選択できる。イソシアネート化合物は、分子内に芳香環を有するものでも有さないものでもよい。
【0025】
イソシアネート化合物としては、分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を1つ有するモノイソシアネート類、または分子内に、芳香環に直接結合しているのではないイソシアナト基を2つ有するジイソシアネート類が好ましい。
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、その他の一般式OCN−R−NCO(ただしRは炭素数1〜20の二価の脂肪族残基である。)で表されるジイソシアネート化合物等の、ジイソシアネート類;メタクロイルイソシアネート(MAI)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(MOI−EG)、アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(AOI−EG)、その他の一般式R”−NCO(ただしR”は炭素数1〜20の一価の脂肪族残基である。)で表されるモノイソシアネート化合物等の、モノイソシアネート類;等が挙げられる。
Rとしては、例えば直鎖または分岐のアルキレン基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキレン基である。Rの炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは4〜7である。
R”としては、例えば直鎖または分岐のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキル基である。R”の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは4〜7である。
【0026】
イソシアネート化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。イソシアネート化合物が(メタ)アクリロイル基を有すると、該イソシアネート化合物と活性水素含有基との反応生成物として、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が得られる。かかる化合物は重合性を有しており、これを含有する組成物は、硬化性組成物として塗料、インキ、接着剤、被覆剤等に用いることができる。
分子内にイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物としては、原料入手の容易さおよび反応性の点で、下記一般式(II−1)または(II−2)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化3】
[式中、R
1およびR
2は各々独立に、水素原子またはメチル基であり、R
3は、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、または該アルキレン基の炭素原子間の単結合をエーテル結合、エステル結合およびフェニレン結合からなる群より選ばれる結合で置換してなる基である。前記一般式(II−2)中の2つのR
1は同じでも異なってもよく、2つのR
3は同じでも異なってもよい。]
【0028】
一般式(II−1)または(II−2)中のR
1、R
2、R
3の示す構造および好ましい範囲はそれぞれ、前記一般式(I−1)または(I−2)中のR
1、R
2、R
3の示す構造および好ましい範囲と同様である。
一般式(II−1)で表される化合物の具体例としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシペンチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシヘプチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシオクチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシノニルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシデシルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、原料入手性および反応性の点から、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネートが好ましい。
一般式(II−2)で表される化合物の具体例としては、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が好ましい。
【0029】
[活性水素含有化合物]
活性水素含有化合物は、活性水素含有基を有する。
活性水素は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等に結合した水素原子であり、炭素原子に結合した水素原子に比べて反応性が高い。
活性水素含有基としては、構造中に活性水素を含むものであれば特に限定されないが、反応性の点で、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、またはアミノ基であることが好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
【0030】
活性水素含有基として水酸基を有する化合物としては、例えば、R
4OH(R
4は炭素数1〜10のアルキル基である。)等のモノアルコール類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物やエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを開環重合した水酸基含有化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1 ,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカーボネートジオール等のポリマーポリオール類;等が挙げられる。
【0031】
活性水素含有基としてメルカプト基を有する化合物としては、例えば、1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、n−オクタンデカンチオール、α−トルエンチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、2−チアゾリン−2−チオール、2−メチル−2−プロパンチオール、O−アミノチオフェノール等のモノチオール;ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、テトラエチレングリコールビス3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス3−メルカプトプロピオネート、トリス(3−メルカプトプロピニルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス3−メルカプトプロピオネート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等の多価チオール;等が挙げられる。
【0032】
活性水素含有基としてカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;こはく酸、アジピン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の脂肪族・芳香族ポリカルボン酸;ポリアミック酸、アクリル酸の(共)重合物等の高分子ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
活性水素含有基としてアミノ基を有する化合物としては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン等のモノアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3−または1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂肪族ポリアミン;m−またはp−キシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、2,4−または2,6−トリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;キトサン等のグリコサミン類;ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン等のシリコーン化合物;等が挙げられる。
【0034】
[イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応]
イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応は、例えば、イソシアネート化合物および反応促進剤を含む組成物に対し、所定の反応温度条件下で活性水素含有化合物を添加する方法、活性水素含有化合物および反応促進剤を含む組成物に対し、所定の反応温度条件下でイソシアネート化合物を添加する方法、等により行うことができる。
イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを反応させる際の反応温度は、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。80℃以上であると、イソシアネート化合物が二重結合を含む場合(例えば(メタ)アクリロイル基を含む場合)に、該二重結合の反応性が大きくなり重合反応が進行する可能性があるため好ましくない。一方、40℃以下であると、反応速度が小さいため好ましくない。
反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定できる。
【0035】
イソシアネート化合物および反応促進剤を含む組成物を製造する方法としては、例えば、イソシアネート化合物に対し、反応促進剤を添加する方法(i)、イソシアネート化合物を製造する際に、反応促進剤を副生成物として発生させ、反応生成物中に共存させる方法(ii)等が挙げられる。このような方法によれば、イソシアネート化合物と反応促進剤との混合物を製造することができる。
活性水素含有化合物および反応促進剤を含む組成物を製造する方法としては、例えば、活性水素含有化合物に対し、反応促進剤を添加する方法(iii)等が挙げられる。
【0036】
方法(i)または(iii)において、イソシアネート化合物または活性水素含有化合物、反応促進剤はそれぞれ、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
イソシアネート化合物の市販のものとしては、カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、カレンズAOI(登録商標、昭和電工社製、アクリロイルオキシエチルイソシアネート)、カレンズMOI−EG(登録商標、昭和電工社製、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、カレンズBEI(登録商標、昭和電工社製、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)等が挙げられる。
イソシアネート化合物の製造方法としては、例えば、US2821544号公報に記載の方法等が挙げられる。
反応促進剤の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリロイル基およびイソシアナト基を有する化合物に塩化水素ガスを吹き込むことによって製造をし、析出した固体(反応促進剤)を取り出す方法、イソシアネート化合物を合成する過程においてホスゲンや塩化水素等を用いることで、副生生物として反応促進剤を発生させ、イソシアネート化合物との混合物として反応促進剤を得る方法などが挙げられる。
【0037】
方法(ii)の場合、例えば、イソシアネート化合物の製造工程において反応系内にハロゲン化合物を添加し、イソシアネート化合物のイソシアナト基をハロゲン化カルバモイル基に変化させることで、反応促進剤を生成させることができる。なお、この方法の場合、イソシアネート化合物のイソシアナト基部分以外の構造と、反応促進剤のハロゲン化カルバモイル基部分以外の構造とは同じになる。
方法(ii)において、イソシアネート化合物の製造方法としては、上述のような公知の製造方法を採用できる。
イソシアナト基をハロゲン化カルバモイル基に変化させるために使用されるハロゲン化合物としては、例えばホスゲン、塩化水素等が挙げられる。
【0038】
方法(i)または(ii)において、反応促進剤を製造する工程を経てイソシアネート化合物と反応促進剤との混合物を製造する方法としては、例えば下記1)の方法、2)の方法などが挙げられる。
1)(メタ)アクリロイル基およびイソシアナト基を有する化合物に塩化水素ガスを吹き込み、析出した固体(反応促進剤)を取り出す等によって反応促進剤をまず製造したのち、これをイソシアネート化合物と混合する方法。
2)イソシアネート化合物を合成する過程においてホスゲンや塩化水素等を用いることで、副生生物として反応促進剤を発生させ、イソシアネート化合物と反応促進剤との混合物を得る方法。
【0039】
イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応における反応促進剤の使用量は、反応系内におけるイソシアネート化合物の含有量(100質量%)に対する反応促進剤の含有量の割合として5〜20000質量ppmであることが好ましく、5〜8000質量ppmであることがより好ましく、5〜3000質量ppmであることがさらに好ましい。
イソシアネート化合物の含有量に対する反応促進剤の含有量の割合が5質量ppm未満である場合、充分な反応促進効果が得られないおそれがある。
イソシアネート化合物の含有量に対する反応促進剤の含有量の割合が20000質量ppm超である場合、イソシアネート化合物が(メタ)アクリロイル基をさらに有する場合に、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基の両方の反応が促進されてしまい、不都合が生じるおそれがある。イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基の2種の反応性官能基を有する化合物の使用方法としては、まずイソシアナト基を活性水素含有化合物の活性水素含有基と反応(ウレタン化反応等)させたのち、(メタ)アクリロイル基を反応(ラジカル重合反応等)させるという二段階で反応を行うという方法が多い。しかし、ここに反応促進剤が多量に存在すると、例えば一段階目の反応を行う際中、あるいはそれよりも前の保存時において、二段階目の反応が起こってしまい、望まない反応生成物を生じる場合がある。よってイソシアネート化合物の使用方法によっては、反応促進剤の添加量は、イソシアネート化合物の含有量に対して20000質量ppm以下、特に8000質量ppm以下程度に抑えることが好ましい。
前記反応に用いられる反応促進剤は1種でも2種以上でもよい。
【0040】
反応系内におけるイソシアネート化合物の含有量(100質量%)に対する反応促進剤の含有量の割合を求める方法は、例えば下記2種の測定方法1、2が挙げられる。なお、下記測定条件(用いるサンプル量、試薬の種類、NMR機器、NMRの積算回数など)は一例であり、条件は必要に応じて適宜変更して良い(特に含有される反応促進剤が少量である場合、測定方法2の条件は、より精度の高いものに変更する必要が生じる場合もある。)。
【0041】
[測定方法1:硝酸銀滴定法(参考:JIS K1603−3)]
200mL容量ビーカーへ100mLメタノール水溶液(水/メタノール=3/7)と、測定対象となる試料10gを添加し、攪拌・溶解する。該溶液を硝酸銀水溶液(0.02mol/L、力価1.006、関東化学社製)によって滴定し、当量点を測定、下記式にて試料中の反応促進剤の含有量を求める。
反応促進剤(B)含有量(%)=(硝酸銀水溶液の滴定量(L)× 力価1.006×塩素の分子量35.46(g/mol)× 硝酸銀水溶液モル濃度0.02(mol/L)×100 )/試料量(g)
【0042】
[測定方法2:NMR測定]
(条件)
5mmΦのNMR試料管中で、測定対象となる試料100mgを0.3mLの脱水されたベンゼン−d6に均一に溶解させて測定用試料を調製し、その試料の
1H−NMRスペクトルを下記の条件下で測定する。
装置:Bruker Biospin社製 Avance−400
測定温度:室温
パルス幅:30°
パルス繰り返し時間:5秒
積算回数:128回
【0043】
(定量方法)
以下、測定対象となる試料が、イソシアネート化合物がメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下MOI)であって、反応促進剤がメタクリロイルオキシエチルカルバモイルクロライド(以下MOC)である組成物の場合における、反応促進剤の含有量をNMRから求める方法について例示する。
図9〜
図10に該混合物のNMRチャートを提示する(なお本チャートは、MOIと、MOIに対して3330質量ppmの割合のMOCとを含有する組成物のスペクトルである)。
図9は、テトラメチルシラン(TMS)を内部基準物質としてNMR測定を行って得られるδ(ppm)=0.5〜9.5付近のNMRチャート(横軸:δ(ケミカルシフト)、縦軸:シグナル強度)であり、
図10は、
図9に示すNMRチャートのδ(ppm)=5.85〜6.35付近を拡大したものである。
本チャートにおいて、δ(ppm)=2.2〜4.3付近に検出されるピークが、MOIとMOCの両方が有する、エチレン基の4プロトン分に相当するピークである。一方、δ(ppm)=6.02〜6.05付近のピークの積分値が、MOCのメタクリル基の末端の2プロトン分に相当する。
イソシアネート化合物に反応促進剤を、100〜3330質量ppmの範囲で種々の量添加した試料を作製し、その試料100mgを0.3mLの脱水されたベンゼン−d6に均一に溶解させて試料を調製し、それぞれの
1H−NMRスペクトルを上記の条件下で測定する。これらの値を基に、MOC添加量に対する上記2ピークの強度比の検量線を作成する。
測定対象とする組成物のNMRを同様の条件にて測定し、上記検量線にプロットすることで、組成物に含まれるMOC含量が求められる。
【0044】
前記反応におけるイソシアネート化合物および活性水素含有化合物の使用量は、イソシアネート化合物が有するイソシアナト基と、活性水素含有化合物が有する活性水素含有基とのモル比が、イソシアナト基/活性水素含有基=1/3〜3/1の範囲内となる量であることが好ましく、イソシアナト基/活性水素含有基=1.2/1〜1/1.2の範囲内となる量であることがより好ましい。
前記反応に用いられるイソシアネート化合物、活性水素含有化合物はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
【0045】
[イソシアネート化合物と反応促進剤との組み合わせ]
本発明においては、前記反応に用いられるイソシアネート化合物の少なくとも1種からイソシアナト基を除いた構造と、反応促進剤の少なくとも1種からハロゲン化カルバモイル基を除いた構造とが同じであることが好ましい。
たとえば、イソシアネート化合物が、前記一般式(II−1)で表される化合物を含む場合、反応促進剤が、前記一般式(I−1)で表され、かつ該一般式(I−1)中のR
1、R
2、R
3がそれぞれ前記イソシアネート化合物が有するR
1、R
2、R
3と同じである化合物を含むことが好ましい。イソシアネート化合物が、前記一般式(II−2)で表される化合物を含む場合、反応促進剤が、前記一般式(I−2)で表され、かつ該一般式(I−2)中のR
1、R
2、R
3がそれぞれ前記イソシアネート化合物が有するR
1、R
2、R
3と同じである化合物を含むことが好ましい。
上記のように、イソシアネート化合物からイソシアナト基を除いた構造と、前記反応促進剤からハロゲン化カルバモイル基を除いた構造とが同じであると、イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応において、目的とする反応生成物の収率が向上する。
【0046】
[任意成分]
前記イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応においては、イソシアネート化合物、活性水素含有化合物および反応促進剤以外の他の成分(任意成分)が反応系中に添加されてもよい。
任意成分としては、例えば、重合防止剤が挙げられる。重合防止剤としては、重合防止に一般に用いられるフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物等を使用することができ、その具体例としては、例えばハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2、4、6−トリ−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
任意成分として、希釈の目的や取扱いの容易さのために、不活性溶媒を含んでもよい。不活性溶媒は、活性水素を含まない溶媒であり、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、酢酸n−ブチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
その他、必要に応じて、硬化触媒(熱硬化触媒、光硬化触媒等)、光ラジカル開始剤、硬化剤、硬化促進剤、添加剤(充填剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、低応力化剤、可とう性付与剤、ワックス類、樹脂、架橋剤、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤など)等を含んでもよい。
【0047】
前記硬化触媒としては、例えば熱酸発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。熱酸発生剤、光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等を使用できる。硬化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
硬化触媒の添加量は、組成物全量100質量部に対して、例えば0.05〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0048】
光ラジカル開始剤としては、例えばベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾ−ル等を単独、もしくは混合して使用することができ、必要に応じて光増感剤を加えることができる。
【0049】
硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物などが挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール又はクレゾールをホルムアルデヒドを用いて重合させた樹脂を使用できる。この樹脂は、ジシクロペンタジエン、ナフタレン、ビフェニルなどの脂環式化合物又は芳香族化合物を共重合させたものであってもよい。フェノール樹脂の配合量は、組成物全量100質量部に対して、通常0〜200質量部程度、例えば5〜200質量部の範囲で適宜選択できる。
酸無水物としては、多塩基酸無水物が挙げられ、具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、4−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−4−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−4−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。酸無水物の配合量は、組成物全量100質量部に対して、通常0〜160質量部程度、例えば20〜160質量部の範囲で適宜選択できる。
【0050】
硬化促進剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限されないが、ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤(ジアザビシクロアルケン類)、リン酸エステル、ホスフィン類などのリン系硬化促進剤や、3級アミンもしくは4級アンモニウム塩などのアミン系硬化促進剤が挙げられる。ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)及びその塩(オクチル酸塩、スルホン酸塩、オルソフタル酸塩、石炭酸塩等の有機酸塩)を挙げることができる。
上記の他の硬化促進剤としては、具体的には、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエートなどの芳香族を含まないリン化合物(ホスホニウム塩等)、3級アミン塩、4級アンモニウム塩、また、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等の有機スズ化合物、オクチル酸ビスマス、デカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物等の金属塩等の公知の化合物を挙げることができる。さらに、上記ジアザビシクロアルケン類の有機酸塩とともに、金属有機酸塩を併用することができる。金属有機酸塩としては、例えば、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛などが挙げられる。
硬化促進剤の配合量は、組成物全量100質量部に対して、例えば0.00001〜5質量部の範囲で適宜選択できる。
【0051】
反応系には、ガラス微粒子、金属酸化物微粒子、ゴム微粒子、セラミック微粒子等の微粒子を配合してもよい。また、ガラス繊維、ケブラー繊維等の繊維を配合してもよい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
前記イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応により生成する反応生成物は、イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とが、イソシアナト基と活性水素含有基との反応により形成された結合を介して連結された構造を有する。
イソシアナト基と活性水素含有基との反応において、前記活性水素含有基が水酸基である場合はウレタン結合(−NH−CO−O−)が形成され、前記活性水素含有基がメルカプト基である場合はチオウレタン結合(−NH−CO−S−)が形成され、前記活性水素含有基がカルボキシル基である場合はアミド結合(−NH−CO−)が形成され、前記活性水素含有基がアミノ基である場合はウレア結合(−NH−CO−NH−)が形成される。
したがって、活性水素含有化合物が、活性水素含有基として水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、またはアミノ基を有する場合、上記反応は、ウレタン化合物、チオウレタン化合物、アミド化合物、またはウレア化合物を生成する反応(ウレタン化反応、チオウレタン化反応、アミド化反応、またはウレア化反応)である。
【0053】
前記イソシアネート化合物が(メタ)アクリロイル基をさらに含むものである場合、前記反応の反応生成物は、該イソシアネート化合物に由来する(メタ)アクリロイル基を有する。
かかる反応生成物は、硬化性組成物を構成する硬化性成分として用いることができる。例えば該反応生成物を含む(必要に応じてさらにラジカル重合開始剤、他の重合性化合物等を含む)硬化性組成物に対し、光照射、紫外線(UV)照射などの処理を行うと、該硬化性組成物中で、前記反応生成物等の重合性化合物のラジカル重合が進み、硬化物を得ることができる。
このような硬化性組成物は、塗料、インキ、接着剤、被覆剤、電子材料(液状レジスト、フィルムレジスト、カラーフィルターレジスト、半導体用テープ、粘着剤、接着剤)、印刷(刷版、カラー校正)、医療(ソフトコンタクトレンズ、歯科材料)、繊維・紙・木材(表面処理剤)、自動車(トップコート、補修用塗料、部品塗料)、家電(基板、絶縁材料)、建築用材料(セメントプライマー、塗料、接着剤)等として用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
以下の各例において、特に規定のない限り、「%」は質量%(wt%)、「ppm」は質量ppm(wtppm)を示す。
液体クロマトグラフィ分析(以下「LC分析」という。)の条件は、下記のとおりである。
カラム:昭和電工(株)製、商品名「Shodex(登録商標)KF−801」4本、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.8mL/min、
オーブン温度:40℃、
検出器:示差屈折率(RI)・UV(波長210nm)
【0055】
(反応促進剤の調製方法)
<合成例1>
100mLの三口フラスコに、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI(登録商標)、昭和電工社製。以下「MOI」という。)10.0gを仕込み、内温を15℃に冷却しながら、ドライ塩化水素を2.58g内挿管を通してメタクリロイルオキシエチルイソシアネートへバブリングし、メタクリロイルオキシエチルカルバモイルクロライド(以下「MOC」という。)を12.6g得た。純度は100%であった。
【0056】
<合成例2>
トルエン200gにアミノエチルメタクリレート塩酸塩(以下「AEMHCl」という。)110gを仕込み、内温85℃でAEMHClを溶融させた状態で、ホスゲンを110g供給し、MOIを合成した。反応液へ窒素をバブリングすることで溶存しているホスゲンを除去し、さらに溶媒であるトルエンを減圧条件で留去することで粗MOIを110g得た。
粗MOI中のMOC含量を硝酸銀滴定にて確認した結果、10.8%であった。
【0057】
(反応促進剤添加によるウレタン化反応促進効果)
<実施例1>
100mLの三口フラスコに、MOI6.21g、合成例1で製造したメタクリロイルオキシエチルカルバモイルクロライド(以下「MOC」という。)0.0186g(MOIに対し3000ppm相当)、トルエン50mL、BHT0.1gを加え、攪拌混合した。得られた混合物を60℃に昇温し、さらにn−ブタノール8.89gを系内に加えて、MOIとn−ブタノールとの反応(ウレタン化反応)を行った。反応中、反応液の温度は60℃に保持した。
上記の反応において、n−ブタノールを添加した時点を0時間とし、0時間からの経過時間(反応時間)が0分、10分、30分、60分、120分の時点でそれぞれ反応液をサンプリングし、LC分析を行って、使用したMOIのうち、イソシアナト基がウレタンに転化したMOIの割合(転化率)を下記式に基づいて求めた。反応液中のMOI含量(%)は、LC分析により測定した。結果を表1および
図1に示す。
転化率(%)=(仕込み液中[反応前]のMOI含量(%)−反応液中[サンプリング時]のMOI含量(%))/(仕込み液中[反応前]のMOI含量(%))×100
【0058】
<実施例2>
MOCの添加量を0.0932g(MOIに対し15000ppm相当)に変えたほかは実施例1と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表1および
図1に示す。
【0059】
<実施例3>
MOCの添加量を0.03mg(MOIに対し5wtppm相当)に変えたほかは実施例1と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表1および
図1に示す。
【0060】
<比較例1>
MOCを加えなかったほかは実施例1と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表1および
図1に示す。
【0061】
<実施例4>
MOIをアクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI(登録商標)、昭和電工社製。以下「AOI」という。)5.64gに変え、MOCの添加量を0.0846g(AOIに対し15000ppm相当)に変えたほかは実施例1と同様にして、ウレタン化反応および転化率(使用したAOIのうち、イソシアナト基がウレタンに転化したAOIの割合)の測定を行った。結果を表1および
図2に示す。
【0062】
<比較例2>
MOCを加えなかったほかは実施例4と同様にしてウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表1および
図2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
以上の結果から、MOCが、イソシアネートとアルコールとの反応(ウレタン化反応)において、反応促進剤として機能することが確認された。
【0065】
(反応促進剤添加によるアミド化反応促進効果)
<実施例5>
100mLの三口フラスコに、合成例1で製造したMOC0.0932g(この後添加するMOIに対し15000ppm相当)、デカン酸6.89g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)64.52g、BHT0.1gを加え、攪拌混合した。得られた混合物を60℃に昇温し、さらにMOI(カレンズMOI(登録商標)、昭和電工社製)6.21gを系内に加えて、MOIとデカン酸との反応(アミド化反応)を行った。反応中、反応液の温度は60℃に保持した。
上記の反応において、MOIを添加した時点を0時間とし、0時間からの経過時間(反応時間)が0分、10分、30分、60分、120分、240分の時点でそれぞれ反応液をサンプリングし、LC分析を行って転化率(使用したMOIのうち、イソシアナト基がアミドに転化されたMOIの割合)を測定した。転化率は実施例1で用いたのと同様の式にて求めた。結果を表2および
図3に示す。
【0066】
<比較例3>
MOCを加えなかったほかは実施例5と同様にして、アミド化反応および転化率の測定を行った。結果を表2および
図3に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
以上の結果から、MOCが、イソシアネートとカルボン酸との反応(アミド化反応)においても、反応促進剤として機能することが確認された。
【0069】
(添加する反応促進剤の種類によるウレタン化反応促進効果の対比)
<比較例4>
MOCの代わりに、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン(以下「DBU」という。東京化製株式会社製)を0.02g(MOIに対して3000ppmとなる量)を添加した他は、実施例1と同様にしてウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を、実施例1の結果とともに表3および
図4に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
以上の結果より、アミン系触媒に比較して本願発明の反応促進剤は、ウレタン化反応において良好な反応促進効果を有することが分かった。
【0072】
(MOI+MOC系とAOI+MOC系との収率の差)
<実施例6>
途中で反応液のサンプリングを行わず反応を1時間継続して行ったほかは実施例2と同様にウレタン化反応を行った。
反応後、反応液をLC分析したところ、反応により生成したウレタン化合物のうち、メタクリロイルオキシエチル基を有するウレタン化合物の占める割合は100質量%(アクリロイルオキシエチル基を有するウレタンの占める割合は0%)であった。
【0073】
<実施例7>
途中で反応液のサンプリングを行わず反応を1時間継続して行ったほかは実施例4と同様にウレタン化反応を行った。
反応後、反応液をLC分析したところ、反応により生成したウレタン化合物のうち、アクリロイルオキシエチル基を有するウレタン化合物の占める割合は98.8質量%であり、このほかに、メタクリロイルオキシエチル基を有するウレタン化合物を1.2質量%含んでいた。これは、反応促進剤として用いたMOCが反応液中でMOIに変わり、n−ブタノールと反応したためと考えられる。
【0074】
(反応促進剤によるエチレン性不飽和基のラジカル重合反応促進効果)
<参考例I>
MOI(カレンズMOI(登録商標)、昭和電工社製)5.00gを再蒸留し、含有されている重合防止剤(BHT)を除去した。蒸留したMOIに、MOC0.500g(MOIに対して10000ppm相当)を添加し、混合して得られた組成物を窒素置換し、100℃で加熱した。温度を観察したところ、MOC添加の時点から20分が経過した時点において温度上昇があり、メタクリロイル基の反応(ラジカル重合反応)の開始が認められた。
【0075】
<参考例II>
MOCを加えない他は、参考例Iと同様の操作を行い、温度観察をしたところ、264分経過時点において温度上昇があり、メタクリロイル基の反応(ラジカル重合反応)の開始が認められた。
【0076】
参考例IおよびIIの結果から、MOCが、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物におけるイソシアナト基の反応を促進する効果だけでなく、(メタ)アクリロイル基のラジカル反応を促進する効果も発揮することが確認された。
しかしながら参考例Iでは、ラジカル重合開始剤を加えずに加熱しただけの条件(すなわち、光重合開始剤を添加しUV照射をするという適性な光硬化反応の条件ではない条件)にも拘わらず、参考例IIより大幅に短い20分でラジカル反応の開始が認められた。これは目的とする用途や実験操作によっては、保存安定性および下記の観点からあまり好ましくない条件であるとも捉えられる。
また本発明において、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物はイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基の2つの官能点を有するため、先にイソシアナト基を熱により反応させ(1段階目)、そののちに(メタ)アクリロイル基を光により反応させる(2段階目)の2段階によって硬化物を製造することが好ましい。しかしこの際、本願発明の重合促進剤の含有量が多いと、1段階目の反応中に予期せず2段階の反応が進行してしまう恐れがある。
以上のような背景から、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物のような2官能性モノマーの反応において用いる本願発明の重合促進剤の量は、該2官能性モノマーに対して5〜8000質量ppm、特に5〜2000質量ppmとすることがより好ましい形態である。
【0077】
<実施例8>
100mLの三口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、関東化学社製)を6.72g(0.04mol)、MOC0.07g(HDIに対し10417ppm相当)、トルエン50mL、BHT0.1gを加え、攪拌混合した。得られた混合物を60℃に昇温し、さらにn−ブタノール17.8gを系内に加えて、HDIとn−ブタノールとの反応(ウレタン化反応)を行った。反応中、反応液の温度は60℃に保持した。
上記の反応において、n−ブタノールを添加した時点を0時間とし、0時間からの経過時間(反応時間)が0分、10分、30分、60分、120分の時点でそれぞれ反応液をサンプリングし、LC分析を行って転化率(使用したHDIのうち、イソシアナト基がウレタンに転化されたHDIの割合)を測定した。転化率は実施例1で用いたのと同様の式にて求めた。結果を表4および
図5に示す。
【0078】
<比較例5>
MOCを加えなかった他は実施例8と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表4および
図5に示す。
【0079】
<実施例9>
HDIを、イソホロンジイソシアネート(IPDI、東京化成社製)8.89g(0.04mol)に変えた(これに伴い、MOCの使用量はIPDIに対し10675ppm相当となった。)ほかは、実施例8と同様にして、ウレタン化反応および転化率(使用したIPDIのうち、イソシアナト基がウレタンに転化されたIPDIの割合)の測定を行った。なお、IPDIの1級イソシアナト基と2級イソシアナト基、それぞれについて転化率を測定した。結果を表4および
図6〜7に示す。
【0080】
<比較例6>
MOCを加えなかった他は実施例9と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表4および
図6〜7に示す。
【0081】
<比較例7>
HDIを、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、東京化製工業株式会社製)10.01g(0.04mol)に変え(これに伴い、MOCの使用量はMDIに対し10989ppm相当となった。)、加熱温度を60℃から30℃に変えた他は、実施例8と同様にして、ウレタン化反応および転化率(使用したMDIのうち、イソシアナト基がウレタンに転化されたMDIの割合)の測定を行った。結果を表4および
図8に示す。
【0082】
<比較例8>
MOCを加えなかった他は比較例7と同様にして、ウレタン化反応および転化率の測定を行った。結果を表4および
図8に示す。
【0083】
比較例7〜8の結果から見るとおり、MDIのようにイソシアナト基が芳香環に結合している化合物では、本願発明の反応促進剤を添加する効果はほとんど見られなかった。これは、イソシアナト基が芳香環に結合している化合物の場合は、本発明の反応促進剤がない条件でも十分な速さでウレタン化の反応が進んでいるためであると考えられる。
【0084】
【表4】