特許第6395336号(P6395336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395336
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】配管内流体の識別具
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/06 20060101AFI20180913BHJP
   F16L 3/14 20060101ALI20180913BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G09F3/06
   F16L3/14 B
   F16L1/00 Y
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-114714(P2017-114714)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-92123(P2018-92123A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-233794(P2016-233794)
(32)【優先日】2016年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】株式会社アンウェイジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−101787(JP,A)
【文献】 実開昭58−130115(JP,U)
【文献】 特開2003−299745(JP,A)
【文献】 実開平08−001107(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02219838(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/06
F16L 1/00
F16L 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材をその横断面が楕円状となるようにかつその長軸上に前記スリットが位置するように形成したことを特徴とする配管内流体の識別具。
【請求項2】
前記筒状部材の内周面であってその短軸上に該筒状部材の材軸に沿って延びる断面湾曲状の嵌合溝を対向配置した請求項1記載の配管内流体の識別具。
【請求項3】
配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材の前記スリットを挟む対向縁部に対向面が互いに60゜以上80゜以下の角度をなすように縦リブをそれぞれ設けたことを特徴とする配管内流体の識別具。
【請求項4】
配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており(該配管支持用吊りボルトの雄ネジに係合される構成を除く)、前記スリットの幅が前記筒状部材の所定部位から端部にかけて徐々に大きくなるように前記筒状部材を形成したことを特徴とする配管内流体の識別具。
【請求項5】
配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材の各端に該筒状部材の外方に向けて突設されてなる鍔状の環状リブを設けたことを特徴とする配管内流体の識別具。
【請求項6】
前記スリットの幅が前記筒状部材の所定部位から端部にかけて徐々に大きくなるように前記筒状部材を形成した請求項1、請求項2、請求項3又は請求項5記載の配管内流体の識別具。
【請求項7】
前記筒状部材の外観によって配管の流体種別を識別するように構成した請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の配管内流体の識別具。
【請求項8】
前記外観を流体の種類に関連付けられた色とした請求項7記載の配管内流体の識別具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として空調設備や給排水設備の配管支持ボルトに装着される配管内流体の識別具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和や給排水においては、それらの設備機器を運転するためにさまざまな種類の流体を取り扱う必要があり、空調関連の流体には、冷水、冷温水、温水、冷却水などがあり、給排水関連の流体には、補給水、給水、給湯、雑用水、消火水などがある。
【0003】
これらの流体は配管を通して建物内を流れるが、配管の保守点検を効率よく行うためには、流体の種類を配管ごとに特定する必要があり、配管が複雑に交錯している場合には、他の配管と混同しないように識別のしやすさも重要になる。
【0004】
そのため、配管に貼付して使用する表示識別ステッカーや、配管に巻き付けて使用する配管識別シートが知られており、これらの表示識別ステッカーや配管識別シートによれば、配管ごとに貼付しあるいは巻き付けておくことで各配管内を流れる流体の種類を一目で把握することができる(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−168526号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「配管識別表示 カタログNo.HB-6」(ユニット株式会社、オンラインカタログ、10頁〜第35頁、[平成28年11月22日検索]、インターネット<URL :http://www.unit-signs.co.jp/catalog/catalog/hb/frame.html#page=42>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の表示識別ステッカーは、貼付後に剥がれ落ちてしまうという問題を生じており、非特許文献1記載の配管識別シートは、配管に巻き付けた上、その縁部同士を重ねて接着せねばならず、作業に時間がかかるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、設置が容易でなおかつ設置後に剥がれ落ちる等の脱落を防止可能な配管内流体の識別具を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管内流体の識別具は請求項1に記載したように、配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材をその横断面が楕円状となるようにかつその長軸上に前記スリットが位置するように形成したものである。
また、本発明に係る配管内流体の識別具は、前記筒状部材の内周面であってその短軸上に該筒状部材の材軸に沿って延びる断面湾曲状の嵌合溝を対向配置したものである。
また、本発明に係る配管内流体の識別具は請求項3に記載したように、配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材の前記スリットを挟む対向縁部に対向面が互いに60゜以上80゜以下の角度をなすように縦リブをそれぞれ設けたものである。
また、本発明に係る配管内流体の識別具は請求項4に記載したように、配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており(該配管支持用吊りボルトの雄ネジに係合される構成を除く)、前記スリットの幅が前記筒状部材の所定部位から端部にかけて徐々に大きくなるように前記筒状部材を形成したものである。
また、本発明に係る配管内流体の識別具は請求項5に記載したように、配管内を流れる流体の種別を識別するための配管内流体の識別具において、
材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成され、前記スリットが拡がるように前記筒状部材を弾性変形させることにより、前記配管を吊持する配管支持用吊りボルトが前記スリットを介して前記筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で前記配管支持用吊りボルトに保持されるようになっており、前記筒状部材の各端に該筒状部材の外方に向けて突設されてなる鍔状の環状リブを設けたものである。
【0010】
また、本発明に係る配管内流体の識別具は、前記スリットの幅が前記筒状部材の所定部位から端部にかけて徐々に大きくなるように前記筒状部材を形成したものである。
【0011】
また、本発明に係る配管内流体の識別具は、前記筒状部材の外観によって配管の流体種別を識別するように構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る配管内流体の識別具は、前記外観を流体の種類に関連付けられた色としたものである。
【0017】
本発明に係る配管内流体の識別具においては、その装着先を、配管や吊りバンドではなく、配管を吊持する配管支持用吊りボルトとした上、材軸方向に沿ってスリットが形成された弾性材料からなる筒状部材で構成してあり、このスリットを拡げることにより、よく詳しくは、このスリットが拡がるように筒状部材を弾性変形させることにより、該スリットを介して配管支持用吊りボルトが筒状部材の内側空間に挿入されるとともに、筒状部材がその拡径状態からの復元力で、よく詳しくは弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で配管支持用吊りボルトに保持されるようになっている。
【0018】
このようにすると、配管支持用吊りボルトへの装着作業が瞬時に完了するとともに、装着後に脱落するおそれもないため、配管の流体種別が識別可能な状態を効率よく実現できるとともに、該識別可能状態を確実に維持することも可能となる。
【0019】
スリットは、その幅が筒状部材の一端から他端まで概ね同一となるように形成されるのが典型例となるが、かかるスリットは、筒状部材の材軸方向に沿って形成される限り、必ずしも一端から他端まで同一幅に形成される必要はない。
【0020】
特に、スリットの幅が筒状部材の所定部位から端部にかけて徐々に大きくなるように筒状部材を形成した構成においては、スリットの幅が筒状部材の端部で最大となるため、該端部を配管支持用吊りボルトの周面に当接させた姿勢で、筒状部材を配管支持用吊りボルトに押し込むようにすれば、スリットの幅が大きい分、挿入に要する力が小さくて済み、装着時の作業性が向上する。
【0021】
この構成において、スリットのうち、筒状部材の材軸方向に沿って幅が一定となる長さ範囲を標準スリット部、幅が徐々に大きくなって末広がりとなる長さ範囲を拡開スリット部とすると、拡開スリット部は、筒状部材のいずれか一端に設けるようにしてもよし、各端に設けるようにしてもよい。ちなみに、標準スリット部と拡開スリット部の境界が上述した筒状部材の所定部位となる。
【0022】
配管の流体種別が識別可能な状態は、例えば筒状部材に突設されたフックに、配管内流体の種類が識別できるように構成された識別プレートをぶら下げることでも可能であり、かかる場合には、筒状部材は、識別プレートを配管支持用吊りボルトに取り付けるための取付け機能のみを果たし、識別機能は識別プレートが受け持つことになるが、筒状部材の外観によって配管の流体種別を識別するように構成したならば、筒状部材は、取付け機能と識別機能とを兼ね備えることとなり、流体種別の識別可能状態をさらに効率よく実現することが可能となる。
【0023】
筒状部材の外観には、長さや太さといった形状も包摂されるが、これを流体の種類に関連付けられた色としたならば、離れたところからでも容易に視認できるとともに、形状は均一にできるため、製作を低コストで行うことが可能となり、保管や運搬の際の取り扱いにも優れる。
【0024】
着色構成としては例えば、冷水用を青、冷温水用を黄緑、温水用を黄赤、冷却水用を紺、補給水用を緑、給湯用をうすい赤紫、給水用を水色、消火用を赤とすることができる。
【0025】
筒状部材は、スリットを介して内側空間に配管支持用吊りボルトを挿入可能で、弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で配管支持用吊りボルトに保持可能である限り、長さや太さは任意であるし、横断面の形状も限定されるものではなく、円形状の横断面でもかまわないが、筒状部材をその横断面が楕円状となるようにかつその長軸上にスリットが位置するように形成したならば、横断面を円形状とした場合よりも、配管支持用吊りボルトの外周面をより広く覆うことができるため、筒状部材の視認性が高くなり、ひいては配管の流体種別を確実に識別することが可能となる。
【0026】
ここで、筒状部材の内周面であってその短軸上に該筒状部材の材軸に沿って延びる断面湾曲状の嵌合溝を対向配置したならば、配管支持用吊りボルトが細径であっても、該配管支持用吊りボルトが嵌合溝に嵌り込むため、筒状部材は、がたつきや遊びが生じることなく、遊び配管支持用吊りボルトにしっかりと保持される。
【0027】
また、筒状部材の各端に鍔状の環状リブを設けたならば、本発明に係る配管内流体の識別具を配管支持用吊りボルトに段状に複数個装着する場合、筒状部材の端部同士が重なることがないため、装着時の作業性低下を防止することができる。
【0028】
また、筒状部材のスリットを挟む対向縁部に対向面が互いに60゜以上80゜以下の角度なすように縦リブをそれぞれ設けたならば、該縦リブの対向面を配管支持用吊りボルトの外周面に摺動させながら押し込むことができるため、該配管支持用吊りボルトを筒状部材の内部空間に容易に挿入することが可能となる。
【0029】
ここで、対向面を60゜以上80゜以下としたのは、この角度範囲だと、縦リブの対向面を配管支持用吊りボルトの外周面に当接させやすくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る配管内流体の識別具1を、該配管内流体の識別具が装着される配管支持用吊りボルト2とともに示した正面図。
図2】配管内流体の識別具1を示した全体斜視図。
図3】配管内流体の識別具1を示した図であり、(a)は縦断面図、(b)はA−A線方向からの矢視図(平面図)、(b)はB−B線に沿う横断面図。
図4】配管内流体の識別具1を配管支持用吊りボルト2に装着する様子を示した説明図であり、(a)は配管支持用吊りボルト2が細径である場合、(b)は配管支持用吊りボルトが太径である場合の図。
図5】配管内流体の識別具1の作用を示した説明図。
図6】配管内流体の識別具1を配管支持用吊りボルト2に段状に複数装着した様子を示した正面図。
図7】変形例に係る配管内流体の識別具を示した正面図。
図8】別の変形例に係る配管内流体の識別具を示した図であって、(a)は平面図、(b)は横断面図。
図9】さらに別の変形例に係る配管内流体の識別具91を示した全体斜視図。
図10】同じく配管内流体の識別具91を示した図であって、(a)は正面図、(b)はC−C線に沿う横断面図。
図11】同じく配管内流体の識別具91を配管支持用吊りボルト2とともに示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る配管内流体の識別具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る配管内流体の識別具1を、該配管内流体の識別具が装着される配管支持用吊りボルト2とともに示した正面図であり、配管支持用吊りボルト2は、その上端を天井や上階床スラブ(図示せず)の下面に取り付けてあるとともに、その下端には、連結具3を介して吊りバンド4を連結してあり、該吊りバンドの配管挿通部5に配管6を挿通することで、該配管を上述の天井や上階床スラブから吊持できるようになっている。
【0033】
図2は、配管内流体の識別具1を示した全体斜視図、図3は、同じく断面図及び矢視図である。これらの図でわかるように、配管内流体の識別具1は、材軸方向に沿ってスリット11が形成された弾性材料からなる筒状部材12で構成してあり、スリット11を拡げる、より詳しくは、スリット11が拡がるように筒状部材12を弾性変形させることにより、該スリットを介して配管支持用吊りボルト2が筒状部材12の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が拡径状態から図3(b)及び(c)に示した元の状態に戻ろうとする復元力、すなわち筒状部材12が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で配管支持用吊りボルト2に保持されるようになっている。
【0034】
配管内流体の識別具1は、ポリプロピレン等の樹脂材料で形成すればよい。
【0035】
筒状部材12は、その横断面が楕円状となるように、かつその長軸上にスリット11が位置するように形成してあるとともに、筒状部材12の各端には鍔状の環状リブ13,13を設けてあり、配管内流体の識別具1を配管支持用吊りボルト2に段状に複数個装着する場合に筒状部材12の端部同士が重ならないようにしてある。
【0036】
また、筒状部材12のスリット11を挟む対向縁部には、環状リブ13,13の一方から他方へ延設される形で縦リブ14,14を設けてある。
【0037】
縦リブ14,14は、対向面が互いに60゜以上80゜以下の角度なすように、本実施形態では一例としてほぼ70゜となるように形成してあり、スリット11を介した筒状部材12の内側空間への配管支持用吊りボルト2の挿入操作をスムーズに行うことができるようになっている。
【0038】
また、筒状部材12は、流体の種類に関連付けられた色で着色してあり、該筒状部材の外観によって配管6の流体種別を識別できるようになっている。
【0039】
着色構成としては例えば、冷水用を青、冷温水用を黄緑、温水用を黄赤、冷却水用を紺、補給水用を緑、給湯用をうすい赤紫、給水用を水色、消火用を赤とすればよい。
【0040】
図4は、配管支持用吊りボルト2が細径の配管支持用吊りボルトである場合(同図(a))と太径の配管支持用吊りボルトである場合(同図(b))において、該各配管支持用吊りボルトに本実施形態に係る配管内流体の識別具1をそれぞれ装着する様子を示した横断面図である。
【0041】
同図に示すように、本実施形態に係る配管内流体の識別具1を配管支持用吊りボルト2に装着するには、筒状部材12のスリット11が配管支持用吊りボルト2に対面するように配管内流体の識別具1を把持し、次いで、筒状部材12の縦リブ14,14の対向面が配管支持用吊りボルト2の外周面に押し当てられるようにしながら(同図(a)、(b)の上段)、該各配管支持用吊りボルトの側に押し込むだけでよい。
【0042】
このようにすると、筒状部材12のスリット11が拡がり(同図(a)、(b)の中段)、該スリットを介して配管支持用吊りボルト2が筒状部材12の内側空間に挿入されるとともに(同図(a)、(b)の下段)、該筒状部材が元の状態(同図(a)、(b)の上段)に戻ろうとする復元力で配管支持用吊りボルト2に保持される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、その装着先を、配管6や吊りバンド5ではなく、配管6を吊持する配管支持用吊りボルト2とした上、筒状部材12のスリット11を介して配管支持用吊りボルト2が筒状部材12の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が拡径状態から元の状態に戻ろうとする復元力によって配管支持用吊りボルト2に保持されるように構成したので、配管支持用吊りボルト2への装着作業は瞬時に完了するとともに、装着後に脱落するおそれもない。
【0044】
そのため、配管6の流体種別が識別可能な状態を効率よく実現できるとともに、該識別可能状態を確実に維持することも可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、筒状部材12の外観によって配管6の流体種別を識別するように構成したので、筒状部材12は、取付け機能と識別機能の両方を兼ね備えることとなり、流体種別の識別可能状態を効率よく実現することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、筒状部材12の外観を流体の種類に関連付けられた色としたので、離れたところからでも容易に視認できるとともに、形状は均一にできるため、製作を低コストで行うことが可能となり、保管や運搬の際の取り扱いにも優れる。
【0047】
また、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、筒状部材12をその横断面が楕円状となるようにかつその長軸上にスリット11が位置するように形成したので、横断面を円形状とした場合よりも、配管支持用吊りボルト2の外周面をより広く覆うことができる。
【0048】
そのため、筒状部材12の視認性が高くなり、ひいては配管6の流体種別を確実に識別することが可能となる。
【0049】
すなわち、横断面が円状となるように筒状部材を構成した場合、配管内流体の識別具における太径と細径、2種類への対応は、図5(a)に示すように周方向に沿った均等な曲率変化による追従となり、周長は変化しないため、太径の配管支持用吊りボルトにおいてその外周面が十分に覆われるように本発明に係る配管内流体の識別具を構成すると(同図右側)、細径の配管支持用吊りボルトに適用した際(同図左側)、筒状部材の対向縁部同士が先に当接するために筒状部材の内周面が配管支持用吊りボルトの外周面と当接せずに隙間が生じ、その結果、配管支持用吊りボルトに保持されない状況が生じる。
【0050】
したがって、細径の配管支持用吊りボルトに適用する場合を考慮すると、太径の配管支持用吊りボルトの外周面を十分に覆うことができず、配管内流体の識別具を全方位から視認することが難しくなる場合が生じる。
【0051】
それに対し、筒状部材12を横断面が楕円状となるように構成してなる本実施形態の配管内流体の識別具1の場合、図5(b)に示したように、配管支持用吊りボルト2が細径のときには(同図左側)、その外周面のうち、背中合わせとなる2点で、配管内流体の識別具1の側では短軸方向の2点で保持されれば足り、長軸方向では、配管支持用吊りボルト2の外周面から離間する形で長軸方向の余長分を吸収することができるので、配管支持用吊りボルト2が太径のときにその外周面が十分に覆われるように構成しても、細径の配管支持用吊りボルトへの適用に何ら問題は生じない。
【0052】
また、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、筒状部材12の各端に鍔状の環状リブ13,13を設けるようにしたので、図6に示すように配管支持用吊りボルト2に段状に複数個装着する場合であっても、筒状部材12の端部同士が重なることが原因で装着作業に時間がかかるおそれはない。
【0053】
また、本実施形態に係る配管内流体の識別具1によれば、筒状部材12のスリット11を挟む対向縁部に、環状リブ13,13の一方から他方へ延設される形で縦リブ14,14を設けるようにしたので、該縦リブの対向面を配管支持用吊りボルト2の外周面に摺動させながら押し込むことが可能となり、かくして配管支持用吊りボルト2を筒状部材12の内部空間に容易に挿入することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、配管支持用吊りボルト2への装着容易性を高めるため、筒状部材12のスリット11を挟む対向縁部に縦リブ14,14を設けるようにしたが、上述の装着容易性に問題がないのであれば、縦リブ14,14を省略してもかまわない。
【0055】
また、本実施形態では、配管内流体の識別具1を段状に装着することを想定し、その際の作業性が低下しないように筒状部材12の各端に鍔状の環状リブ13,13を設けるようにしたが、複数装着を想定する必要がなく、想定の必要があったとしても端部の重なりを懸念する必要がないのであれば、環状リブ13,13についてもこれを省略することが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、太径と細径の2種類の配管支持用吊りボルトに適応できるよう、筒状部材をその横断面が楕円状になるように構成したが、異なる径サイズへの適用を考慮する必要がない、配管支持用吊りボルトの外周面を半分程度覆うことができれば視認性に問題はないといった状況であれば、筒状部材をその横断面が円状となるように構成してもかまわない。
【0057】
また、本実施形態では、筒状部材12の外観を流体の種類に関連付けられた色としたが、色に代えて、形状の相違、例えば筒状部材の長さや太さの違いによって流体の種類を識別するようにしてもかまわない。
【0058】
また、本実施形態では、筒状部材12の外観によって配管6の流体種別を識別するように構成することで、筒状部材に取付け機能と識別機能を併せ持たせたが、これに代えて、筒状部材12を配管支持用吊りボルト2への取付け機能のみに限定し、識別機能については別手段で実現することが可能である。
【0059】
図7は、本実施形態の筒状部材12と着色構成を除いて同様に構成された筒状部材12aの環状リブ13,13のうち、装着時に下方となる環状リブ13に掛止部61を突設するとともに、該掛止部に形成された挿通孔62にフック64を掛けることで、該フックを介して配管6の流体種類が識別可能に構成された識別プレート63を吊り下げることができるように構成してある。
【0060】
かかる構成においては、筒状部材12aは、識別プレート63を配管支持用吊りボルト2に取り付けるための取付け機能のみを果たし、識別機能は識別プレート63が受け持つことになる。
【0061】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図8(a)に示すように、筒状部材12に代えて、楕円状横断面の短軸上であって内周面の対向位置に材軸方向に延びる断面湾曲状の嵌合溝71,71を配置してなる筒状部材12aを採用することができる。
【0062】
かかる構成によれば、同図(b)に示すように、配管支持用吊りボルト2が細径であっても、該配管支持用吊りボルトが嵌合溝71,71に嵌り込むため、筒状部材12aは、がたつきや遊びが生じることなく、配管支持用吊りボルト2にしっかりと保持される。
【0063】
なお、筒状部材12aは、嵌合溝71,71を設けた点を除き、筒状部材12と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
また、本実施形態では、スリット11の幅が筒状部材12の一端から他端まで概ね同一となるように該筒状部材を形成したが、かかる構成に代えて、図9及び図10に示すように、材軸方向に沿ってスリット11aが形成され横断面が円形状の弾性材料からなる筒状部材92で配管内流体の識別具91を構成し、スリット11aが拡がるように筒状部材92を弾性変形させることで、該スリットを介して配管支持用吊りボルト2が筒状部材92の内側空間に挿入されるとともに、該筒状部材が弾性変形前の状態に戻ろうとする復元力で配管支持用吊りボルト2に保持されるようになっているが、スリット11aは、その幅が一定となるように延設された標準スリット部94と、該標準スリット部の一方の端部側にて幅が徐々に大きくなって末広がりとなるように延設された拡開スリット部93とで構成してある。
【0065】
かかる構成においては、スリット11aの幅が筒状部材92の端部で最大となるため、図11に示すように、筒状部材92の端部を配管支持用吊りボルト2の周面に当接させた姿勢で、筒状部材92を配管支持用吊りボルト2に押し込むようにすれば、スリット11aの幅が大きい分、挿入に要する力が小さくて済み、装着時の作業性が向上する。
【0066】
なお、スリット11aに関する構成を除く着色その他の筒状部材92の構成は、筒状部材12と概ね同様の構成であるし、筒状部材92の各端に鍔状の環状リブ13,13を設けることで、配管内流体の識別具91を配管支持用吊りボルト2に段状に複数個装着する場合に筒状部材92の端部同士が重ならないようになっている点、さらには筒状部材92のスリット11aを挟む対向縁部に、環状リブ13,13の一方から他方へ延設される形で縦リブ14,14を設けるとともにそれらの対向面がほぼ60゜となるように形成することで、スリット11aを介した筒状部材92の内側空間への配管支持用吊りボルト2の挿入操作をスムーズに行うことができるようになっている点については、上述した実施形態とほぼ同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0067】
また、上述したスリット11aに関する変形例では、配管支持用吊りボルト2への装着容易性を高めるため、筒状部材92のスリット11aを挟む対向縁部に縦リブ14,14を設けるようにしたが、上述の装着容易性に問題がないのであれば、縦リブ14,14を省略してもかまわない。
【0068】
また、同変形例では、配管内流体の識別具91を段状に装着することを想定し、その際の作業性が低下しないように筒状部材92の各端に鍔状の環状リブ13,13を設けるようにしたが、複数装着を想定する必要がなく、想定の必要があったとしても端部の重なりを懸念する必要がないのであれば、環状リブ13,13についてもこれを省略することが可能である。
【0069】
また、同変形例では、筒状部材92をその横断面が円状となるように構成したが、太径と細径の2種類の配管支持用吊りボルトに適応できるようにする必要があるのであれば、上述した実施形態と同様、筒状部材をその横断面が楕円状になるように構成することが可能である。
【0070】
また、同変形例では、筒状部材92の外観を流体の種類に関連付けられた色としたが、色に代えて、形状の相違、例えば筒状部材の長さや太さの違いによって流体の種類を識別するようにしてもかまわない。
【0071】
また、同変形例では、筒状部材92の外観によって配管6の流体種別を識別するように構成することで、筒状部材に取付け機能と識別機能を併せ持たせたが、これに代えて、筒状部材92を配管支持用吊りボルト2への取付け機能のみに限定し、識別機能については、上述した実施形態と同様に別手段で実現することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,91 配管内流体の識別具
2 配管支持用吊りボルト
6 配管
11,11a スリット
12,92 筒状部材
13 環状リブ
14 縦リブ
71 嵌合溝
93 拡開スリット部
94 標準スリット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11