(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の過給器は、例えば、スリーブと転がり軸受の外輪とが相対回転してしまうと、振動や摩耗の原因となる。そのため、スリーブと転がり軸受の外輪との相対回転を防止するために、転がり軸受の外輪に回り止めのキー等が加工される。一般に、外輪は、非常に硬い金属等で形成されるとともに、キー等を加工するためのスペースに余裕が無い。そのため、外輪に対するキー等の加工に手間がかかりコストが増加してしまうという課題がある。さらに、特許文献1に記載の過給器の場合、スリーブと外輪との間に隙間があることで、振動によりスリーブと外輪とが断続的に接触して摩耗してしまう可能性がある。
【0007】
この発明は、熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱要素を吸収可能としつつ、容易に外輪の回り止めすることができるとともに、摩耗を抑制できる軸受装置、及び、過給器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第一態様によれば、軸受装置は、回転軸を回転可能に支持する転がり軸受と、前記回転軸の径方向で前記転がり軸受を外側から覆うハウジングと、を備えている。この軸受装置は、前記回転軸の径方向で前記ハウジングの内側に隙間を介して配されるとともに、前記転がり軸受の外輪に対して前記回転軸の径方向および周方向に変位不能に設けられる緩衝部材を更に備えている。この軸受装置は、前記ハウジングと前記緩衝部材との間に設けられて、前記ハウジングに対して前記緩衝部材を前記回転軸の軸線方向に変位可能に支持するとともに、前記緩衝部材に生じる前記回転軸の径方向への変位を吸収するダンパーを更に備えている。
この第一態様における軸受装置の緩衝部材は、外輪に対して回転軸の径方向および周方向に変位不能に設けられている。そのため、回転軸の振動により転がり軸受と緩衝部材とが断続的に接触することを抑制できる。この緩衝部材は、更に、ダンパーを介して回転軸の軸線方向に変位可能にハウジングに支持されている。そのため、転がり軸受や回転軸などの回転軸の軸線方向への熱変形、組立公差、及び、回転軸が回転する際に外乱が生じた場合であっても、ハウジングに対して緩衝部材が回転軸の軸線方向に変位して逃げることができる。この第一態様の軸受装置では、更に、ハウジングに対して緩衝部材を回り止めすれば、転がり軸受がハウジングに対して回り止めされた状態となる。そのため、外輪に切削加工等を施さずに、外輪の回り止めを行うことができる。
その結果、熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱要素を吸収可能としつつ、容易に外輪の回り止めすることができるとともに、摩耗を抑制できる。
【0009】
この発明の第二態様によれば、軸受装置は、第一態様における外輪が、前記緩衝部材に圧入されていてもよい。
このように構成することで、外輪に対する緩衝部材の変位を容易に規制することができる。
【0010】
この発明の第三態様によれば、軸受装置は、第一態様における外輪が、前記緩衝部材と一体成形されていてもよい。
このように構成することで、外輪に対する緩衝部材の相対的な変位を実質的に生じないようにすることができる。加えて、軸受装置の部品点数を低減できる。
【0011】
この発明の第四態様によれば、軸受装置は、第一から第三態様の何れか一つの態様における緩衝部材が、前記外輪を前記回転軸の軸線方向に弾性的に押圧する予圧部を備えていてもよい。
このように構成することで、予圧部によって転がり軸受を予圧することができる。それと共に、予圧部によって、回転軸等の熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱による変位を弾性的に吸収することができる。
【0012】
この発明の第五態様によれば、軸受装置は、第一から第四態様の何れか一つの態様における緩衝部材が、前記回転軸の軸線方向で第一部材と第二部材との少なくとも2つに分割して形成されていてもよい。この緩衝部材の第一部材は、前記外輪に対して前記回転軸の径方向および周方向に変位不能に設けられてもよい。この緩衝部材の第二部材は、前記第一部材に対して前記回転軸の周方向に変位不能、且つ、前記回転軸の軸線方向に変位可能に連結されてもよい。この緩衝部材の第二部材は、更に、前記ハウジングに対して着脱可能に設けられるとともに前記ハウジングに対して前記回転軸の軸線方向、及び、周方向に変位不能に設けられていてもよい。
このように構成することで、組み立てる際に、第二部材を介してハウジングに対する第一部材、及び、外輪の回り止めをすることができる。その結果、容易に組み立てることができる。更に、第二部材がハウジングに対して着脱可能に設けられることで、第二部材を離脱させるだけで第一部材の状態を容易に確認することができる。
【0013】
この発明の第六態様によれば、過給器は、コンプレッサーホイールと、前記コンプレッサーホイールを駆動する電動機と、
第一から第五態様の何れか一つの態様の軸受装置と、を備える。
このように構成することで、電動機を駆動してコンプレッサーホイールを回転させる際に生じる振動や騒音を低減して商品性を向上できるとともに、摩耗を低減して耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
上記軸受装置、及び、過給器によれば、熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱要素を吸収可能としつつ、容易に外輪の回り止めすることができるとともに、摩耗を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
この発明の第一実施形態における軸受装置、及び、過給器を図面に基づき説明する。
この第一実施形態における軸受装置は、過給器の回転軸を回転自在に支持する。この第一実施形態の過給器は、例えば、自動車等の車両に設けられた内燃機関の吸気を加圧する。
【0017】
図1は、この発明の第一実施形態における過給器の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、過給器1は、コンプレッサー部2と、駆動部3と、を備えている。
コンプレッサー部2は、例えば、エアクリーナーボックス等を介して取り込まれた外気を圧縮して内燃機関に送り込む。この実施形態におけるコンプレッサー部2は、いわゆる遠心圧縮機を構成している。コンプレッサー部2は、コンプレッサーホイール4と、コンプレッサーハウジング5とを備えている。
【0018】
コンプレッサーホイール4は、その軸線O1を中心に回転することで空気を圧縮する。コンプレッサーホイール4は、駆動部3から延びる回転軸6の軸端部7に一体に設けられている。
コンプレッサーハウジング5は、その内部に、コンプレッサーホイール4を回転可能に収容する。このコンプレッサーハウジング5の内部の空間8は、内燃機関に外気を供給するための流路の一部を形成している。
【0019】
この実施形態のコンプレッサーハウジング5は、駆動部3が配置される側の壁部に、開口部(図示せず)を有している。上述した回転軸6は、この開口部を通じて、駆動部3から空間8内に向かって延びている。この実施形態におけるコンプレッサーハウジング5は、駆動部3のハウジング14に固定されている。
【0020】
駆動部3は、コンプレッサーホイール4を回転させる駆動力を発生する。この駆動部3は、電動機10と、軸受装置11と、を備えている。
電動機10は、外部から供給される電気エネルギーを回転軸6の回転エネルギーに変換する。この実施形態における電動機10は、例えば、バッテリーやオルタネータ等から給電される。この電動機10は、回転子11aと固定子11bとを備えている。回転子11aは、上述した回転軸6に設けられた永久磁石等からなる。固定子11bは、回転子11aとの間に隙間を有して回転軸6の径方向における回転子11aの外側に配される。固定子11bは、例えば、巻線等からなる。
【0021】
軸受装置11は、回転軸6の軸線O方向における電動機10の両外側で、回転軸6を回転自在に支持している。以下、電動機10を挟んでコンプレッサー部2とは反対側に配される軸受装置11を第一軸受装置12と称する。電動機10とコンプレッサー部2との間に配される軸受装置11を第二軸受装置13と称する。
【0022】
図2は、この発明の第一実施形態における駆動部を拡大した断面図である。
図1、
図2に示すように、第一軸受装置12は、第一転がり軸受16と、第一軸受ハウジング17(ハウジング)と、第一スリーブ18(緩衝部材;
図2参照)と、第一ダンパー19(
図2参照)と、を備えている。
【0023】
第一転がり軸受16は、軸線O方向への予圧を必要とする、例えば、アンギュラ軸受等である。この第一転がり軸受16は、内輪20と、外輪21と、転動体22と、保持器23と、シール部材24と、を備えている。内輪20は、回転軸6に圧入等により固定されている。転動体22は、内輪20と外輪21との間に複数設けられている。保持器23は、複数の転動体22が内輪20の周方向に互いに間隔をあけて配されるように、転動体22を転動自在に保持する。シール部材24は、内輪20と外輪21との間に形成される開口をそれぞれ閉塞する。シール部材24は、内輪20と外輪21との間に封入されるグリースの漏れや、塵埃等の侵入を抑制する。
【0024】
外輪21は、軸線Oに平行な外周面25を有している。この外輪21は、第一スリーブ18に圧入等により固定されている。言い換えれば、外輪21は、第一スリーブ18に対して、回転軸6の軸線O方向、および、周方向に変位できないように固定されている。外輪21と第一スリーブ18との固定方法は、外輪21と第一スリーブ18とが変位不能に固定されればよく、圧入に限られない。外輪21と第一スリーブ18とのその他の固定方法としては、例えば、溶接、接着、冷し嵌め、焼嵌め等を挙げることができる。ここで、内輪20は、回転軸6に固定されたスペーサ37と、回転軸6に設けられた環状の突起Tとによって挟まれることで、軸線O方向への変位が規制されている。
【0025】
第一スリーブ18は、筒状に形成されている。この第一スリーブ18は、回転軸6の径方向で第一軸受ハウジング17の内側に隙間S1を介して配される。言い換えれば、第一スリーブ18の外周面18aと第一軸受ハウジング17の内周面26とは、互いに接触しないように離間して配置されている。
【0026】
第一スリーブ18は、軸受保持部28と、予圧部29と、を有している。
軸受保持部28は、回転軸6の径方向における外側から第一転がり軸受16を覆う管状に形成されている。軸受保持部28は、第一転がり軸受16の外輪21が軸線O方向、および、回転軸6の周方向に変位できないように保持する。この軸受保持部28は、外輪21の外周面25の全面と面接触する内周面27を有している。
【0027】
軸受保持部28の軸線O方向の寸法L1は、第一転がり軸受16の軸線O方向の寸法L2よりも僅かに長く形成されている。これにより、軸受保持部28は、第一転がり軸受16よりも回転子11a側に突出する。このように形成された軸受保持部28の端部28aは、回転子11aと接触しないように、回転子11aに対して軸線O方向に離間して配されている。
【0028】
予圧部29は、第一転がり軸受16の予圧を行う。より具体的には、予圧部29は、第一転がり軸受16の外輪21を回転軸6の軸線O方向で回転子11a側に押圧する。予圧部29は、予圧部本体31と、予圧ばね32と、を有している。
予圧部本体31は、上述した軸受保持部28と一体に成形されている。この実施形態における予圧ばね32は、コイルばねであって、その弾性により、第一スリーブ18を軸線O方向で回転子11a側に付勢している。予圧部本体31は、その径方向の厚さt1が軸受保持部28の厚さt2よりも肉厚に形成されている。これにより、予圧部本体31は、軸線O方向における回転子11a側を向く縦面31aを有している。上述した第一転がり軸受16の外輪21は、その端面21aが予圧部本体31の縦面31aと面接触するように配置される。
【0029】
予圧部本体31は、上述した縦面31aの近傍に、回転軸6の径方向における内側に向かって延びる凸部33を有している。凸部33は、軸線O方向で圧縮された予圧ばね32の第一端部34を支持する。凸部33とスペーサ37との間には、回転軸6の径方向で僅かな隙間が形成される。スペーサ37は、回転軸6の外周面6aに取り付けられている。スペーサ37は、その外周面37aに凹部36を有する。これにより、凸部33を挟んで第一転がり軸受16の反対側には、予圧部本体31とスペーサ37との間に、予圧ばね32を収容する収容空間Kが形成される。
【0030】
予圧部本体31は、軸線O方向で回転子11aとは反対側の端部31bに、係止穴38を有している。この係止穴38と、後述する第一軸受ハウジング17の突出部43とには、周り止めのピン39が挿入される。これにより、第一スリーブ18と第一軸受ハウジング17とが係止されて、これら第一スリーブ18と第一軸受ハウジング17との相対回転が規制される。ここで、この実施形態における第一スリーブ18は、その加工を容易にするために、第一転がり軸受16の外輪21よりも軟らかい材料を用いても良い。
【0031】
第一軸受ハウジング17は、第一スリーブ18を回転軸6の径方向における外側から覆っている。この第一軸受ハウジング17は、突出部43と、第一ダンパー収容部44とを備えている。
突出部43は、第一スリーブ18を挟んで回転子11aとは反対側に配される。この突出部43は、第一軸受ハウジング17の本体17aから回転軸6の径方向で内側に向かって延びている。突出部43は、第一スリーブ18の係止穴38と対向する位置に、貫通孔45を有している。この貫通孔45は、第一スリーブ18を回り止めするためのピン39が抜き差し可能となっている。
【0032】
突出部43は、貫通孔45よりも回転軸6側に、支持部41を有している。この支持部41は、凸部33と軸線O方向で対向するように配され、予圧ばね32の第二端部40を支持する。この突出部43は、軸線O方向で第一スリーブ18との間に僅かな隙間が形成されるように配されている。これにより、第一スリーブ18が回転子11aから軸線Oに沿って離間する方向に変位したとしても、第一スリーブ18が突出部43に突き当たり、第一スリーブ18のそれ以上の軸線O方向への変位が規制される。
【0033】
第一ダンパー収容部44は、第一軸受ハウジング17の内周面26に形成されている。より具体的には、第一ダンパー収容部44は、第一軸受ハウジング17の内周面26のうち、第一転がり軸受16の径方向外側の位置で第一スリーブ18の外周面18aに対向するように形成されている。この実施形態における第一ダンパー収容部44は、軸線O方向に間隔をあけて2つ設けられている。これら第一ダンパー収容部44は、第一ダンパー19を収容する。この実施形態における第一ダンパー収容部44は、第一軸受ハウジング17の周方向に連続する環状の角溝である。
【0034】
第一ダンパー19は、第一軸受ハウジング17と、第一スリーブ18との間に設けられている。第一ダンパー19は、第一スリーブ18を弾性的に支持する。この実施形態における第一ダンパー19は、断面円形の環状に形成され、回転軸6の径方向に圧縮された状態で第一ダンパー収容部44に収容される。この状態で、第一軸受ハウジング17と第一スリーブ18との間には、上述した隙間S1が形成されている。第一スリーブ18は、この隙間S1の分だけ、回転軸6の径方向に弾性的に変位することが可能となっている。つまり、第一ダンパー19は、回転軸6や軸受装置11に生じる回転軸6の径方向における熱変形、組立公差、及び、回転時の振動などの外乱要素を弾性的に吸収することが可能となっている。
【0035】
第一ダンパー19は、第一軸受ハウジング17に対して第一スリーブ18を回転軸6の軸線O方向に変位可能に支持する。言い換えれば、第一ダンパー19は、熱変形、組立公差、及び、回転時の振動などの外乱要素が、第一スリーブ18に対して軸線O方向に作用した場合に、第一スリーブ18を軸線O方向に変位可能な条件(例えば、弾性率、つぶし率、表面摩擦係数等の条件)のものを選定している。これにより、軸線O方向に作用する熱変形、組立公差、及び、回転時の振動などの外乱要素は、予圧ばね32によって吸収できる。
【0036】
ここで、上述したスペーサ37は、ナット47により回転軸6に固定されている。このスペーサ37の端部42には、径方向に突出するようにセンサーターゲットStが形成さている。このセンサーターゲットStを、図示しないセンサにより検出することで、回転軸6の回転数を検出することができる。
【0037】
図3は、縦軸を荷重(N)、横軸を回転数(rpm)としたグラフである。荷重(N)は、第一スリーブ18を軸線O方向に変位させるために必要な荷重である。この荷重(N)は、第一ダンパー19のつぶし率による始動摩擦力、第一ダンパー19の静止状態での始動摩擦力、および、熱変形、組立公差、及び、回転時の振動などの外乱要素による径方向外側に向かう力のうち軸線O方向への分力等の荷重条件に基づいて、シミュレーション等で求めることができる。ここで、第一ダンパー19の静止状態での始動摩擦力は、例えば、第一ダンパー19の表面の摩擦係数と相関関係がある。回転数(rpm)は、電動機10の回転数であり、言い換えれば、回転軸6の回転数である。この回転数は、センサーターゲットStを用いて検出できる。
【0038】
図3に実線で示すように、荷重(N)は、回転数(rpm)が高くなるにつれて大きくなる。荷重(N)は、回転数(rpm)が高くなるにつれて、その増加率が次第に上昇する。この実施形態における予圧ばね32のばね力は、軸受装置11が適用される駆動部3の電動機10の最大回転数に対応する荷重(N)よりも大きくなるように設定される。
【0039】
図2に示すように、第二軸受装置13は、第二転がり軸受49と、第二軸受ハウジング50と、第二スリーブ51と、第二ダンパー52と、を備えている。この第二軸受装置13は、電動機10とコンプレッサーホイール4との間に配されている。この第二軸受装置13は、第一軸受装置12と比較して、予圧ばね32が省略されるなど簡略化した構造になっている。
【0040】
第二転がり軸受49は、第一転がり軸受16と軸線O方向における向きが異なるだけであり、その他の構造などは同一である。すなわち、第二転がり軸受49は、内輪20と、外輪21と、転動体22と、保持器23と、シール部材24と、を備えている。
【0041】
第二スリーブ51は、筒状に形成されている。この第二スリーブ51は、回転軸6の径方向で第二軸受ハウジング50の内側に配されている。これら第二スリーブ51と第二軸受ハウジング50との間には、第一軸受装置12と同様に隙間が形成されている。第二スリーブ51は、第二軸受保持部48と、回り止め部53とを備えている。第二軸受保持部48は、回転軸6の径方向における外側から第二転がり軸受49を覆う環状に形成されている。この第二軸受保持部48は、第二転がり軸受49の外輪21を、軸線O方向、および、回転軸6の周方向に変位できないように保持する。この第二軸受保持部48は、外輪21の外周面25の全面と面接触する第二内周面54を有している。
【0042】
回り止め部53は、第二軸受保持部48のコンプレッサー部2側の部分に形成されている。回り止め部53と第二軸受保持部48とは、一体に成形されている。この回り止め部53は、係止凹部55を有している。この係止凹部55に第二ピン56が軸線O方向に挿入されることで、第二スリーブ51は、第一スリーブ18と同様に、第二軸受ハウジング50に対する回転軸6の周方向への変位が規制される。
【0043】
第二軸受ハウジング50は、第二スリーブ51を、回転軸6の径方向における外側から覆う。この第二軸受ハウジング50は、閉塞部材57と、ハウジング本体58とを備えている。ハウジング本体58には、第一軸受ハウジング17と同様に、第二ダンパー収容部58aが形成されている。この第二軸受ハウジング50と第一軸受ハウジング17とによって、上述したハウジング14が構成されている。
【0044】
閉塞部材57は、ハウジング開口部59を閉塞する。このハウジング開口部59は、ハウジング本体58のコンプレッサー部2側の回転軸6周りに形成される。閉塞部材57は、中央に回転軸6が貫通する孔60を有するリング状に形成されている。閉塞部材57は、ハウジング本体58に対してボルト61等により結合される。
【0045】
閉塞部材57は、上述した第二スリーブ51の係止凹部55に対応する位置に、第二ピン56が貫通可能な第二貫通孔62を有している。この第二貫通孔62を介して係止凹部55に第二ピン56が挿入されることで、ハウジング本体58に結合された閉塞部材57に対する第二スリーブ51の周方向への変位が規制される。一方で、閉塞部材57に対する第二スリーブ51の軸線O方向の変位は可能となっている。ここで、この実施形態における閉塞部材57と回転軸6との間には、リング状のブッシュ63が装着され、このブッシュ63により回転軸6周りがシールされている。
【0046】
第二ダンパー収容部58aは、ハウジング本体58の第二内周面54に形成されている。より具体的には、第二ダンパー収容部58aは、ハウジング本体58の第二内周面54のうち、第二転がり軸受49の径方向外側の位置で第二スリーブ51の外周面51aに対向するように形成されている。この実施形態における第二ダンパー収容部58aは、軸線O方向に間隔をあけて2つ設けられている。これら第二ダンパー収容部58aは、第二ダンパー52を収容する。この実施形態における第二ダンパー収容部58aは、第一軸受ハウジング17の周方向に連続する環状の角溝である。
【0047】
第二ダンパー52は、ハウジング本体58と、第二スリーブ51との間に設けられている。第二ダンパー52は、第二スリーブ51を弾性的に支持する。この実施形態における第二ダンパー52は、第一ダンパー19と同様に、断面円形の環状に形成され、回転軸6の径方向に圧縮された状態で第二ダンパー収容部58aに収容される。この状態で、第二軸受ハウジング50と第二スリーブ51との間には、隙間が形成されている。第二スリーブ51は、この隙間の分だけ、回転軸6の径方向に弾性的に変位することが可能となっている。つまり、第二ダンパー52は、回転軸6や軸受装置11に生じる径方向の熱変形、組立公差、及び、回転時の振動などの外乱要素を弾性的に吸収することが可能となっている。ここで、第二ダンパー52は、第一ダンパー19と同様に、ハウジング本体58に対して第二スリーブ51を軸線O方向に変位可能に支持している。
【0048】
上述した第一実施形態は、第一スリーブ18が外輪21に対して回転軸6の径方向および周方向に変位不能に設けられている。したがって、回転軸6の振動により第一転がり軸受16と第一スリーブ18とが断続的に接触することを抑制できる。
この第一スリーブ18は、更に、第一ダンパー19を介して回転軸6の軸線O方向に変位可能に第一軸受ハウジング17に支持されている。そのため、第一転がり軸受16や回転軸6などの軸線O方向への熱変形、組立公差、及び、回転軸6が回転する際の外乱が生じた場合であっても、第一スリーブ18が第一軸受ハウジング17に対して軸線O方向に変位して逃げることができる。
さらに、第一スリーブ18を第一軸受ハウジング17に対して回り止めすることで、第一転がり軸受16が第一軸受ハウジング17に対して回り止めされた状態となる。そのため、外輪21に切削加工等を施さずに、外輪21の回り止めを行うことができる。
その結果、熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱要素を吸収可能としつつ、容易に外輪21の回り止めすることができる。加えて、第一スリーブ18や外輪21などが摩耗することを抑制できる。
【0049】
さらに、外輪21を第一スリーブ18に圧入することで、外輪21に対する第一スリーブ18の変位を容易に規制することができる。
さらに、予圧部29によって転がり軸受を予圧することができる。それと共に、予圧部29によって、回転軸6等の熱変形、組立公差、及び、回転時の外乱による第一スリーブ18の軸線O方向への変位を弾性的に吸収することができる。
【0050】
さらに、上述した第一実施形態によれば、コンプレッサーホイール4を回転させる際に生じる振動や騒音を低減することができる。その結果、過給器1の商品性を向上できるとともに、摩耗低減により耐久性を向上できる。
【0051】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態と、第一スリーブの構成が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。さらに、この第二実施形態において、第一実施形態の説明と重複する説明は省略する。
【0052】
この第二実施形態の過給器1は、第一実施形態と同様に、コンプレッサー部2と、駆動部3と、を備えている(
図1参照)。この駆動部3は、電動機10と、軸受装置11と、を備えている。軸受装置11は、回転軸6の軸線O方向における電動機10の両外側で、回転軸6を回転自在に支持している。電動機10を挟んでコンプレッサー部2とは反対側に第一軸受装置12が配され。電動機10とコンプレッサー部2との間に第二軸受装置13が配される。
【0053】
図4は、この発明の第二実施形態における第一軸受装置の拡大図である。
図4に示すように、第一軸受装置12は、第一転がり軸受16と、第一軸受ハウジング17(ハウジング)と、第一スリーブ18(緩衝部材)と、第一ダンパー19と、を備えている。
第一スリーブ18は、第一実施形態と同様に、軸受保持部28と、予圧部29と、を有している。予圧部29は、予圧部本体31と、予圧ばね32とを備えている。
【0054】
この第二実施形態における予圧部本体31は、軸線O方向で2つに分割されている。言い換えれば、第一スリーブ18は、軸線O方向で2つに分割されている。より具体的には、予圧部本体31は、第一本体部65(第一部材)と、第二本体部66(第二部材)と、を有している。第一本体部65は、軸受保持部28と一体に成形される。第二本体部66は、第一本体部65と別体で形成される。第二本体部66は、軸線O方向で第一本体部65と並んで配置される。
【0055】
第一本体部65は、凸部33と係止穴38とを有している。係止穴38は、第二本体部66に対向する位置に開口を有している。
【0056】
第二本体部66は、軸線Oを中心とする環状に形成されている。この第二本体部66は、貫通部67とばね支持部68とを備えている。貫通部67は、係止用のピン72を挿通できるように軸線O方向に貫通する貫通孔69を有している。この貫通部67は、軸線O方向で第一軸受ハウジング17の突出部70と第一本体部65とに、それぞれ僅かな隙間を介して挟まれるように配置される。これにより、貫通部67は、上記の隙間の大きさ以上に軸線O方向へ変位することが規制される。
【0057】
第二本体部66は、凹部71を備えている。凹部71は、回転軸6の径方向における内側に向かって凹んでいる。この凹部71は、軸線O方向で第一本体部65とは反対側からピン72を貫通孔69に挿入することが可能なように、貫通孔69の開口を避けるように形成されている。
【0058】
ばね支持部68は、軸線O方向で凹部71が形成される位置に形成されている。ばね支持部68は、第二本体部66から回転軸6の径方向における内側に向かって延びている。このばね支持部68は、予圧ばね32の第二端部40を支持する。
【0059】
この実施形態における第一軸受ハウジング17の突出部70は、第一実施形態の突出部43と同様に、ハウジング本体58から回転軸6の径方向における内側に向かって延びている。この突出部70の内側端部73は、ピン72の挿入を妨げないように、回転軸6の径方向における外側に向かって凹んでいる。この突出部70の内側端部73は、更に、ピン72が回転軸6の周方向へ変位することを規制するために、ピン72に対して回転軸6の周方向に回り込むように形成されている。
【0060】
ピン72は、軸線O方向に延びる柱状に形成されている。このピン72は、凹部71を通じて貫通孔69に挿入される。これにより、ピン72は、ハウジング本体58に対して回転軸6の周方向に変位しようとすると、ハウジング本体58の突出部70に突き当たる。そのため、ピン72の挿入された貫通部67は、ハウジング本体58に対して、回転軸6の周方向に変位できなくなる。
【0061】
貫通部67を貫通したピン72の端部74は、係止穴38に挿入される。これにより、第一本体部65は、第二本体部66に対する回転軸6の周方向への変位が規制される。ここで、ピン72が挿入された状態において、軸線O方向で、第一本体部65、第二本体部66、および、突出部70のそれぞれの間には僅かな隙間が形成されている。これら隙間によって、第一スリーブ18は、軸線O方向に僅かに変位可能な状態となっている。例えば、メンテナンス等によりピン72を抜き去った場合、第二本体部66は、第一本体部65とハウジング本体58とから離脱できる。
つまり、第二本体部66は、第一本体部65に対して、回転軸6の周方向に変位不能、且つ、軸線O方向に変位可能に連結される。第二本体部66は、更に、ハウジング本体58に対して、着脱可能に固定されるとともに軸線O方向、及び、回転軸6の周方向に変位不能に結合される。
【0062】
したがって、第二実施形態によれば、第一軸受装置12を組み立てる際に、第二本体部66を介してハウジング本体58に対する第一本体部65、及び、外輪21の回り止めをすることができる。これにより、第一本体部65をハウジング本体58の内部に組み込んだ後に、予圧ばね32、および、第二本体部66を装着できる。その結果、容易に組み立てることができる。
【0063】
さらに、第二本体部66が第一軸受ハウジング17に対して着脱可能に設けられることで、第二本体部66を離脱させるだけで第一軸受装置12を分解できる。そのため、第一本体部65の状態を容易に確認することができる。
【0064】
この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態において、外輪21が第一スリーブ18に圧入される場合について説明した。しかし、外輪21は、第一スリーブ18に固定されていればよく、各実施形態の構成に限られない。
【0065】
図5は、この発明の第一、第二実施形態の第一変形例における第一軸受装置の拡大図である。例えば、
図5に示すように、外輪21と、第一スリーブ18とを、一体に成形するようにしても良い。ここで、
図5においては、第二実施形態の第一スリーブ18にこの第一変形例を適用した場合を例示しているが、第一実施形態の第一スリーブ18にこの第一変形例を適用しても良い。この場合、第一スリーブ18の外周面に、第一実施形態の外輪21よりも軟らかい材質からなる層75を設けるようにしても良い。このような軟らかい層75を設けることで、第一スリーブ18と外輪21とを一体に成形した場合であっても、第一軸受ハウジング17に対する第一スリーブ18の攻撃性を抑制できる。
【0066】
さらに、上述した各実施形態においては、第一ダンパー19が断面円形に形成される場合について説明した。しかし、第一ダンパー19の形状は断面円形に限られない。
図6は、この発明の第一、第二実施形態の第二変形例における第一軸受装置の部分拡大図である。例えば、
図6に示すように、シート状の第一ダンパー19を用いても良い。さらに、上述した各実施形態では、第一ダンパー19が軸線O方向に2つ並んで配置する場合について説明した。しかし、第一ダンパー19は、1つだけ配置したり、軸線O方向に3つ以上並べて配置したりするようにしても良い。さらに、上述した各実施形態においては、第一ダンパー収容部44が断面四角形の角溝の場合を一例に説明した。しかし、第一ダンパー収容部44の形状は、角溝に限られない。第一ダンパー収容部44は、例えば、U溝や、V溝であっても良い。さらに、第一ダンパー収容部44は、第一スリーブ18に設けたり、第一軸受ハウジング17と第一スリーブ18との両方に設けたりしても良い。
【0067】
さらに、上述した各実施形態においては、過給器1に用いられる軸受装置11を一例に説明した。しかし、この発明の軸受装置11は、過給器1に用いられるものに限られない。過給器以外の回転機械の軸受装置として用いても良い。また、各実施形態において過給器1が自動車等の車両に搭載される場合について説明した。しかし、この発明の過給器は、車両以外に搭載される過給器であっても良い。