(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記型のパターンデータを取得し、該パターンデータに基づいて前記主軸方向を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
前記制御部は、前記主軸方向と前記配列方向とが鋭角をなすように、前記塗布位置を決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
前記制御部は、任意の前記樹脂に対して、任意の角度を持って前記配列方向を傾け、前記主軸方向に沿って前記任意の樹脂の径の幅を有する帯が存在すると仮定し、前記任意の樹脂が存在する前記配列方向のn列(nは整数)と、該n列の隣のn+1列とに存在し、前記帯と重なる樹脂をそれぞれ第1樹脂と第2樹脂と決定したとき、
前記樹脂の半径をr、前記樹脂の塗布間隔をD、前記任意の樹脂と前記第2樹脂との前記主軸方向の間隔をL、前記主軸方向と前記配列方向とのなす角をα、および前記任意の樹脂と前記第2樹脂とのなす角をβとすると、
D(sinα)≦2r
L(tanβ)≦2r
の条件を満たすように、前記なす角αを決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインプリント装置1の構成を示す概略図である。インプリント装置1は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、ウエハ上(基板上)に塗布された未硬化樹脂とモールド(型)とを接触させて成形し、ウエハ上に樹脂のパターンを形成する装置である。なお、ここでは、光硬化法を採用したインプリント装置とする。また、以下の図においては、ウエハ上の樹脂に対して紫外線を照射する照明系の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。インプリント装置1は、まず、光照射部2と、モールド保持機構3と、ウエハステージ4と、塗布部5と、制御部6とを備える。
【0012】
光照射部2は、インプリント処理の際に、モールド7に対して紫外線8を照射する。この光照射部2は、不図示であるが、光源と、この光源から発せられた紫外線8をインプリントに適切な光に調整し、モールド7に照射する照明光学系とを含む。光源は、水銀ランプなどのランプ類を採用可能であるが、モールド7を透過し、かつ後述の樹脂(紫外線硬化樹脂)9が硬化する波長の光を発する光源であれば、特に限定するものではない。照明光学系は、レンズ、ミラー、アパーチャ、または照射と遮光を切り替えるためのシャッターなどを含み得る。なお、本実施形態では、光硬化法を採用するために光照射部2を設置しているが、例えば熱硬化法を採用する場合には、この光照射部2に換えて、熱硬化性樹脂を硬化させるための熱源部を設置することとなる。
【0013】
モールド7は、外周形状が多角形(好適には、矩形または正方形)であり、ウエハ10に対する面には、例えば回路パターンなどの転写すべき凹凸パターンが3次元状に形成されたパターン部7aを含む。なお、パターンサイズは、製造対象となる物品により様々であるが、微細なものでは十数ナノメートルのパターンも含まれる。また、モールド7の材質は、紫外線8を透過させることが可能で、かつ熱膨張率の低いことが望ましく、例えば石英とし得る。さらに、モールド7は、紫外線8が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さのキャビティを有する場合もある。
【0014】
ここで、参考として、パターン部7aに形成され得る凹凸パターンの形状について説明する。
図2は、凹凸パターン30の形状の例を示す平面図である。まず、
図2(a)に示す凹凸パターン30aは、主軸方向31がY軸方向となるものである。ここで、「主軸方向」とは、微細な凹部が延設される方向であり、具体的には、パターン部7aに形成されている凹凸パターン30に対して樹脂9が充填された際に、その樹脂9が流れやすい方向をいう。次に、
図2(b)に示す凹凸パターン30bは、主軸方向31がX軸方向となるものである。次に、
図2(c)に示す凹凸パターン30cは、主軸方向31がY軸方向で、かつ微細な凹部が複数箇所で分断されているものである。次に、
図2(d)に示す凹凸パターン30dは、微細な凹部が平面方向にて複数の曲部を有するものである。この場合、凹部のY軸方向の長さがX軸方向に比べて長いならば、凹凸パターン30dの主軸方向31は、Y軸方向であるとする。そして、
図2(e)に示す凹凸パターン30eは、微細な凹部が十字に交差しているものである。この場合も、凹部のY軸方向の長さがX軸方向に比べて長いならば、凹凸パターン30eの主軸方向31は、Y軸方向であるとする。
【0015】
モールド保持機構3は、モールド7を保持するモールドチャック11と、このモールドチャック11を移動自在に保持するモールド駆動機構12と、不図示であるが、モールド7(パターン部7a)の形状を補正する倍率補正機構とを有する。モールドチャック11は、モールド7における紫外線8の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールド7を保持し得る。モールドチャック11は、例えば真空吸着力によりモールド7を保持する場合、外部に設置された不図示の真空ポンプに接続され、この真空ポンプの排気により吸着圧を適宜調整することで、モールド7に対する吸着力(保持力)を調整し得る。モールド駆動機構12は、モールド7とウエハ10上の樹脂9との押し付け、または引き離しを選択的に行うようにモールド7を各軸方向に移動させる。このモールド駆動機構12に採用可能な動力源としては、例えばリニアモーターまたはエアシリンダーがある。また、モールド駆動機構12は、モールド7の高精度な位置決めに対応するために、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成され得る。さらに、モールド駆動機構12は、Z軸方向だけでなく、X軸方向やY軸方向またはθ(Z軸周りの回転)方向の位置調整機能や、モールド7の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成もあり得る。なお、インプリント装置1における押し付けおよび引き離しの各動作は、モールド7をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、ウエハステージ4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。また、モールド駆動機構12の駆動時におけるモールド7の位置は、不図示であるが、モールド7とウエハ10との間の距離を計測する光学式変位計などの位置計測部により計測可能である。倍率補正機構は、モールドチャック11におけるモールド7の保持側に設置され、モールド7の側面に対して外力または変位を機械的に与えることによりモールド7(パターン部7a)の形状を補正する。さらに、モールドチャック11およびモールド駆動機構12は、平面方向の中心部(内側)に、光照射部2から照射された紫外線8がウエハ10に向かい通過可能とする開口領域13を有する。
【0016】
ウエハ10は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板、またはガラス基板である。このウエハ10上の複数のパターン形成領域(インプリント装置1に搬入される前に、前工程にて既にパターン(以下「基板側パターン」という)が形成されている)には、パターン部7aにより樹脂9のパターン(パターンを含む層)が成形される。
【0017】
ウエハステージ4は、ウエハ10を移動可能に保持し、例えば、モールド7とウエハ10上の樹脂9との押し付けの際のパターン部7aと基板側パターンとの位置合わせなどを実施する。このウエハステージ4は、ウエハ10を吸着力により保持するウエハチャック14と、ウエハ10の外周を取り囲むように設置される補助部材15と、ウエハチャック14を機械的に保持し、各軸方向に移動可能とするステージ駆動機構16とを有する。ウエハチャック14は、例えば、高さの揃った複数のピンでウエハ10を支持し、ピン以外の部分を真空排気により減圧することでウエハ10を保持する。補助部材15は、ウエハチャック14に載置されたウエハ10と同等の表面高さを有し、ウエハ10の外周端部における樹脂パターンの厚さの均一化を図るなどのために用いられる。ステージ駆動機構16は、駆動中および静止中の振動が少ない動力源であり、採用可能な動力源としては、例えばリニアモータまたは平面モータなどがある。このステージ駆動機構16も、X軸およびY軸の各方向に対して、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成し得る。さらに、Z軸方向の位置調整のための駆動系や、ウエハ10のθ方向の位置調整機能、またはウエハ10の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成もあり得る。また、ウエハステージ4は、その側面に、X、Y、Z、ωx、ωy、ωzの各方向に対応した複数の参照ミラー17を備える。これに対して、インプリント装置1は、これらの参照ミラー17にそれぞれヘリウムネオンなどのビームを照射することでウエハステージ4の位置を測定する複数のレーザー干渉計(位置計測機構)18を備える。なお、
図1では、参照ミラー17とレーザー干渉計18との1つの組のみを図示している。レーザー干渉計18は、ウエハステージ4の位置を実時間で計測し、後述する制御部6は、このときの計測値に基づいてウエハ10(ウエハステージ4)の位置決め制御を実行する。なお、位置計測機構としては、上記のような干渉計測長器の他にも半導体レーザーを用いたエンコーダなどが採用可能である。
【0018】
塗布部5は、モールド保持機構3の近傍に設置され、ウエハ10上に存在するパターン形成領域としてのショット(基板側パターン)上に、樹脂(未硬化樹脂)9を塗布する。この樹脂9は、紫外線8を受光することにより硬化する性質を有する紫外線硬化樹脂(光硬化性樹脂、インプリント材)であり、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。この塗布部5は、塗布方式としてインクジェット方式を採用し、未硬化状態の樹脂9を収容する容器19と、液滴吐出部20とを含む。容器19は、その内部を樹脂9の硬化反応を起こさないような、例えば若干の酸素を含む雰囲気としつつ、樹脂9を管理可能とするものが望ましい。また、容器19の材質は、樹脂9にパーティクルや化学的な不純物を混入させないようなものとすることが望ましい。液滴吐出部20は、例えば複数の吐出口を含むピエゾタイプの吐出機構(インクジェットヘッド)を有する。樹脂9の塗布量(吐出量)は、0.1〜10pL/滴の範囲で調整可能であり、通常、約2pL/滴で使用する場合が多い。なお、樹脂9の全塗布量は、パターン部7aの密度、および所望の残膜厚により決定される。塗布部5は、制御部6からの動作指令に基づいて、樹脂9を液滴(後述の液滴32)としてショット上に分散させて塗布させ、塗布位置や塗布量などを制御する。
【0019】
ここで、参考として、塗布部5がショット上に塗布し得る樹脂9の液滴の配置例について説明する。
図3は、ショット上での液滴32の配置例を示す概略平面図である。特に、
図3(a)は、液滴32を正方格子状(四角形格子状)に配置した例を示し、一方、
図3(b)は、液滴32を三角形格子状に配置した例を示している。すなわち、
図3(a)および
図3(b)では、共に液滴32が多角形格子状に配列されている。液滴32が
図3(a)に示すように配置される場合、モールド7の凹凸パターン30の主軸方向31に対応する配列方向33は、X、Y軸方向と一致する。ここで、「配列方向」とは、液滴32を特定の規則を持って配置した場合に並ぶ列の方向をいう。一方、液滴32が
図3(b)に示すように配置される場合も、配列方向33は、X、Y軸方向に平行と見ることができる。
【0020】
制御部6は、インプリント装置1の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。制御部6は、例えばコンピュータなどで構成され、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。本実施形態の制御部6は、少なくとも、塗布部5、およびウエハステージ4と後述する回転機構などの動作を制御する。なお、制御部6は、インプリント装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0021】
また、インプリント装置1は、ウエハ10上に形成されているアライメントマークを計測するアライメント計測系21を備える。また、インプリント装置1は、ウエハステージ4を載置し基準平面を形成する定盤22と、モールド保持機構3を固定するブリッジ定盤23と、定盤22から延設され、床面からの振動を除去する除振器24を介してブリッジ定盤23を支持する支柱25とを備える。さらに、インプリント装置1は、共に不図示であるが、モールド7を装置外部とモールド保持機構3との間で搬入出させるモールド搬送機構や、ウエハ10を装置外部とウエハステージ4との間で搬入出させる基板搬送機構などを含み得る。
【0022】
次に、インプリント装置1によるインプリント方法(インプリント処理)について説明する。まず、制御部6は、基板搬送装置によりウエハステージ4にウエハ10を載置および固定させる。次に、制御部6は、ステージ駆動機構16を駆動させてウエハ10の位置を適宜変更させつつ、アライメント計測系21によりウエハ10上のアライメントマークを順次計測させ、ウエハ10の位置を高精度に検出する。そして、制御部6は、その検出結果から各転写座標を演算し、この演算結果に基づいて所定のショットごとに逐次パターンを形成させる(ステップ・アンド・リピート)。ある1つのショットに対するパターン形成の流れとして、制御部6は、まず、ステージ駆動機構16により、液滴吐出部20の吐出口の下にウエハ10上の塗布位置(ショット上の特定の位置)を位置決めさせる。その後、塗布部5は、ウエハ10上のショットに樹脂9を塗布する(塗布工程)。次に、制御部6は、ステージ駆動機構16により、パターン部7a直下の押し付け位置にショットが位置するようにウエハ10を移動させ、位置決めさせる。次に、制御部6は、パターン部7aとショット上の基板側パターンとの位置合わせや倍率補正機構によるパターン部7aの倍率補正などを実施した後、モールド駆動機構12を駆動させ、ショット上の樹脂9にパターン部7aを押し付ける(押型工程)。この押し付けにより、樹脂9は、パターン部7aの凹凸パターンに充填される。なお、制御部6は、押し付け完了の判断をモールド保持機構3の内部に設置された不図示の荷重センサにより行う。この状態で、光照射部2は、硬化工程としてモールド7の背面(上面)から紫外線8を所定時間照射し、モールド7を透過した紫外線8により樹脂9を硬化させる。そして、樹脂9が硬化した後、制御部6は、モールド駆動機構12を再駆動させ、パターン部7aをウエハ10から引き離す(離型工程)。これにより、ウエハ10上のショットの表面には、パターン部7aの凹凸パターンに倣った3次元形状の樹脂パターン(層)が形成される。このような一連のインプリント動作をウエハステージ4の駆動によりショットを変更しつつ複数回実施することで、インプリント装置1は、1枚のウエハ10上に複数の樹脂パターンを形成することができる。
【0023】
ここで、塗布工程では、塗布部5は、ショットに対する樹脂9の塗布を、上記のように樹脂9の複数の液滴を吐出することで実施している。以下、このときのショットに対する本実施形態での液滴の配置について説明する。まず、比較のために、従来のインプリント装置の場合について説明する。
図4は、モールド7のパターン部7aに形成された凹凸パターン30の形状と、この凹凸パターン30に対して、ショットに塗布する樹脂9の従来の液滴の配置を示す概略平面図である。なお、この場合の凹凸パターン30の形状は、
図4(a)に示すように、
図2(a)に例示した凹凸パターン30aの形状と同様とする。従来のインプリント装置では、ショット上への液滴32の配置は、
図4(b)に示すように正方格子状である。
【0024】
図5は、パターン部7aとショット上に塗布された樹脂9とを押し付けた際の凹凸パターン30に対する、ある1つの液滴32の充填挙動を示す平面図である。
図5(a)に示すようにパターン部7aがショット上の液滴32に接触すると、液滴32は、
図5(b)に示すように徐々に広がっていく。このとき、液滴32は、抵抗の少ない主軸方向31に沿って広がりやすく、主軸方向31に直交する方向では、凸部を乗り越えなければならないため広がりにくい。したがって、この液滴32は、その広がり形状を、主軸方向31に長く、直交する方向に短い楕円形状としながら、凹凸パターン30に充填されていく。
【0025】
図6は、
図5に示す充填挙動を踏まえ、各液滴32が
図4(b)に示すように全てショット上に配置されているときの、凹凸パターン30に対する液滴32の充填挙動について説明する概略平面図である。
図6(a)に示すようにパターン部7aがショット上の液滴32に接触すると、
図6(b)に示すように、各液滴32は、まず主軸方向31で隣り合う液滴同士が接触し、この方向で1列につながる。その後、各液滴32(樹脂9)は、主軸方向31に直交する方向で隣り合う液滴(液列)同士も接触し、最終的に
図6(c)に示すように凹凸パターン30の全面に広がる。すなわち、従来のインプリント装置では、パターン部7aとショット上の樹脂9との押し付け時に、液滴32の主軸方向31へ広がる時間に対し、主軸方向31に直交する方向へ広がる時間の方が長くなる。この広がり時間が長くなることは、押し付け時間自体を長くしてしまうことにつながり、結果的に、スループット、すなわち生産性に影響を及ぼすことになる。なお、上記
図4から
図6では、説明のために凹凸パターン30の凹部の幅を大きく示している。上記のとおり、凹凸パターン30のパターンサイズ(溝幅)は、非常に微細である。一般に、パターンサイズが100nmまたはそれ以下であるのに対して、液滴32の塗布間隔は、数十から数百μmであり、液滴32の塗布間隔の方がパターンサイズよりも大きい。
【0026】
これに対して、本実施形態では、ショット上に塗布する樹脂9の液滴の配置を
図6(a)に示す従来の配置から角度を変更する(傾かせる)ことで、パターン部7aとショット上の樹脂9との押し付け時の液滴32の広がり時間を短縮させる。
図7は、本実施形態におけるショット上に塗布する樹脂9の液滴32の配置を示す概略平面図である。なお、凹凸パターン30の形状は、従来との比較のために、
図4(a)に示す形状と同一とする。従来のインプリント装置では、凹凸パターン30の主軸方向31と、ショット上での液滴32の配列方向33とが一致している。これに対して、本実施形態での各液滴32の配置は、
図7に示すように、配置形状(塗布間隔)自体は従来と同様に正方格子状としつつ、主軸方向31と配列方向33とが鋭角をなすように設定されている。
【0027】
図8は、
図7に示すように配列方向33を傾ける際の角度αの決定方法を説明するための概略平面図である。なお、
図8では、それぞれ隣り合って配置される6つの任意の液滴32を抽出して示している。まず、制御部6は、
図8(a)に示すように、任意の角度を持って配列方向33を傾け、主軸方向31に沿って任意の液滴32aの径と同等の幅を有する帯34が存在すると仮定する。次に、制御部6は、液滴32aが存在する配列方向33のn列と、このn列の隣のn+1列とにあり、帯34と重なる液滴32を、それぞれ第1液滴(第1樹脂)32bと第2液滴(第2樹脂)32cとする。なお、nは、整数である。ここで、
図8(b)に示すように、液滴32の半径をr、液滴32の塗布間隔をD、液滴32aと第2液滴32cとの主軸方向31の間隔をL、また液滴32aと第2液滴32cとのなす角をβとする。このとき、制御部6は、以下の式(1)および式(2)の条件を満たすように、液滴32の液滴量と塗布間隔とに加えて、角度α(なす角α)を決定すればよい。
D(sinα)≦2r (1)
L(tanβ)≦2r (2)
【0028】
図9は、凹凸パターン30に対する
図8に示す6つの液滴32の充填挙動について説明する概略平面図である。液滴32aは、押し付け開始直後では、
図9(a)に示すようにn列で隣り合う液滴32bと接触する。そして、押し付けがさらに進むにつれて、液滴32aは、主軸方向31に沿ってさらに広がり、
図9(b)に示すように、n+1列の液滴32のうち主軸方向31に直交する方向で最も近隣の液滴32cと接触する。すなわち、主軸方向31に直交する方向で考えると、従来の液滴32の配置では、n列とn+1列とに存在する液滴32が接触するには、その間の凸部を乗り越えなければならないため時間がかかっていたが、本実施形態では短時間で接触することがわかる。
【0029】
図10は、比較のために、
図9に対する従来の場合の6つの液滴32の充填挙動について説明する概略平面図である。従来の液滴32の配置は、
図10(a)に示すように、凹凸パターン30の主軸方向31と、ショット上での液滴32の配列方向33とが一致している。したがって、液滴32aは、
図10(b)に示すように、主軸方向31では短時間で広がって液滴32bと接触するが、主軸方向31に直交する方向では、n+1列の液滴32と隙間は埋まらず、この隙間が埋まるまでにはさらに時間を要する。
【0030】
図11は、ショット上への液滴32の配置が
図7に示すように設定され、各液滴32が全てショット上に配置されているときの、凹凸パターン30に対する液滴32の充填挙動について説明する概略平面図である。
図11(a)に示すようにパターン部7aがショット上の液滴32に接触すると、
図11(b)に示すように、各液滴32(樹脂9)は、主軸方向31で隣り合う液滴同士が接触するとともに、主軸方向31に直交する方向で隣り合う液滴同士も接触を開始する。そして、各液滴32(樹脂9)は、このように短時間で広がった後、最終的に
図11(c)に示すように凹凸パターン30の全面に広がる。
【0031】
次に、上記のように、主軸方向31に対して配列方向33の角度αを変更する際のインプリント装置1の動作について説明する。
図12は、一般的なウエハ10上のショットに対する樹脂9の塗布動作を時系列で示す概略平面図である。塗布工程において、制御部6は、まず、
図12(a)に示すように、ステージ駆動機構16により、塗布部5の液滴吐出部20を構成するインクジェットヘッド40が、ウエハ10上の所望のショットに向かう位置にウエハ10を移動させる。次に、制御部6は、
図12(b)に示すように、再度ステージ駆動機構16によりウエハ10をステージ走査方向41(X軸方向)に走査させつつ、塗布部5に対し、インクジェットヘッド40から樹脂9の液滴32をショット上に順次塗布させる。そして、制御部6は、
図12(c)に示すように、ショット上に所望の配置で液滴32を塗布させ、塗布動作を終了する。
【0032】
図12に示す塗布動作を踏まえ、例えば、以下のような方法を用いて本実施形態の液滴32の塗布配置を実現する。
図13は、本実施形態における液滴32の塗布動作の複数の例を示す概略平面図である。まず、
図13(a)に示す第1例では、制御部6は、従来と同様に、インクジェットヘッド40をY軸方向と平行に配置させ、ウエハ10をステージ走査方向41(X軸方向)に走査させつつ、インクジェットヘッド40からショット上に液滴32を塗布させる。このとき、制御部6は、その後モールド7を回転させることを考慮し、塗布部5に対してインクジェットヘッド40の吐出口を適宜選択させて、液滴32の塗布位置を凹凸パターン30の領域内に収まるように制御する。なお、モールド7を回転させる機構としては、モールド駆動機構12を利用するか、またはモールド保持機構3に押し付け方向(Z軸方向)を中心軸として回転可能とする回転機構を別途設置し、利用してもよい。その後、制御部6は、上記のような回転機構によりショット面の中心部を基準として角度αだけ傾くように回転させる。次に、
図13(b)および
図13(c)に示す第2例では、制御部6は、
図13(b)に示すように、ウエハ10を角度αだけ回転させた後に、インクジェットヘッド40からショット上に液滴32を塗布させる。なお、ウエハ10を回転させる機構としては、ステージ駆動機構16を利用するか、またはウエハステージ4に押し付け方向を中心軸として回転可能とする回転機構を別途設置し、利用してもよい。その後、制御部6は、この場合の回転機構によりウエハ10を回転させて、ウエハ10の位置を元に戻す。次に、
図13(d)に示す第3例では、制御部6は、インクジェットヘッド40をY軸方向から角度αだけ傾け、さらにステージ走査方向41をX軸方向から角度αだけ傾けた上で走査させ、インクジェットヘッド40からショット上に液滴32を塗布させる。この場合、回転機構は、別途、配列方向に並ぶ複数の吐出口を一体的に回転させるようにインクジェットヘッド40に設置される。次に、
図13(e)に示す第4例では、インクジェットヘッド40は、従来よりも密に構成された吐出口を有し、不図示の駆動機構によりY軸方向に走査可能とする。その上で、制御部6は、塗布部5に対してインクジェットヘッド40の吐出口を適宜選択させつつ、ウエハ10をステージ走査方向41に走査させて、ショット上に液滴32を塗布させる。そして、
図13(f)に示す第5例では、インクジェットヘッド40は、
図13(d)に示すものと同様にY軸方向から角度αだけ傾けられ、かつ、
図13(e)に示すものと同様にY軸方向に走査可能とする。その上で、制御部6は、インクジェットヘッド40をY軸方向から角度αだけ傾けつつ、Y軸方向に走査させながら、ウエハ10をステージ走査方向41に走査させて、ショット上に液滴32を塗布させる。なお、これらの例示以外にも、例えば、ウエハステージ4の走査移動に換えて、インクジェットヘッド40自体がウエハ10上を走査移動する場合も考えられる。
【0033】
本実施形態の塗布工程では、ショット上に塗布する塗布量に加えて、上記のような主軸方向31の設定と、この主軸方向31に対する配列方向33の角度αとを予め決定し、それらの情報に基づいて塗布部5に対して樹脂9を塗布させる。ここで、特に主軸方向31の設定は、ショット上に形成する樹脂パターンのパターンデータを取得し、該パターンデータに基づいて、制御部6が予め決定するものでもよいし、またはユーザーが初期設定として制御部6に対して予め入力するものであってもよい。
【0034】
このように、インプリント装置1は、パターン部7aとショット上の樹脂9との押し付け時に、液滴32の特に主軸方向31に直交する方向への広がり時間を短縮させることができるので、結果的にスループットを早め、生産性を向上させることができる。特に本実施形態では、液滴32の塗布配置の角度を変更することのみで、ショット上に塗布する樹脂9の総塗布量は従来と変わらない。すなわち、液滴32のウエハ10(ショット)上に形成される樹脂パターンの残膜厚の均一化をそのまま実現することができ、かつ、押し付け時における凹凸パターン30に対する樹脂9の未充填部分の発生をも抑えることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、モールドの凹凸パターンに対する樹脂の未充填部分の発生の抑止でき、スループットを向上させるのに有利なインプリント装置および方法を提供することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインプリント装置について説明する。本実施形態のインプリント装置の特徴は、凹凸パターン30が、異なるパターン密度を有する複数の部分領域からなるときに、ウエハ10上のショットに塗布する樹脂9の液滴32の配置を第1実施形態の場合から変更する点にある。
図14は、モールド7のパターン部7aに形成された本実施形態における複数の部分領域に存在する凹凸パターン30の形状と、この凹凸パターン30に対して、ウエハ10上のショットに塗布する樹脂9の液滴32の配置とを示す概略平面図である。
図14(a)および
図14(b)に示すように、パターン部7aには、一例として2つの凹凸パターン30、すなわち、第1凹凸パターン30f
1と第2凹凸パターン30f
2とが存在する。第1凹凸パターン30f
1のパターンサイズは、第2凹凸パターン30f
2のパターンサイズよりも粗く、それぞれの主軸方向31は、共にY軸方向である。
【0037】
ここで、パターン部7aに複数の凹凸パターン30が存在する場合には、押し付け時に液滴32がパターン部7a全面に広がったときに樹脂9の残膜厚を均一とするための配慮を要する。例えば、パターン密度が異なる複数の凹凸パターン30に対して液滴32の塗布密度を同じにすると、残膜厚にムラが生じる可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、制御部6は、それぞれの凹凸パターン30に対する液滴32の塗布密度を予め異ならせる。また、それぞれパターン密度が異なる複数の凹凸パターン30では、主軸方向31と、それに直交する方向とで液滴32の広がり速度も異なる。そこで、制御部6は、2つの凹凸パターン30f
1、30f
2の主軸方向31に対して配列方向33を傾ける際には、
図14(c)および
図14(d)に示すように、それぞれ異なる角度α(α
1、α
2)を予め適宜調整しておく。このように、本実施形態によれば、凹凸パターン30が異なるパターン密度を有する複数の凹凸パターンからなる場合でも、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第1凹凸パターン30f
1と第2凹凸パターン30f
2との境界領域に、ミスマッチによりパターン部7a全面に均一な残膜厚が形成できなくなることを避けるため、実際の製品(すなわち回路動作)に影響を与えない範囲で、ダミーパターンを設置してもよい。
【0038】
なお、上記実施形態では、ウエハ10上のショットに塗布する樹脂9の液滴32の配置が
図3(a)に示すような正方格子状として説明したが、本発明は、
図3(b)に示すような三角格子状であっても適用可能である。この場合も、
図15に示すように、主軸方向31に対して角度αを有する配列方向33を設定することで、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
なお、上記各実施形態では、光硬化法によるインプリント装置およびインプリント方法について述べた。光を照射して樹脂を硬化させる工程を、熱を加えて樹脂を硬化させる熱硬化法による工程に変更しても、本発明の作用、効果は、同様となる。すなわち、本発明は、熱硬化法においても適用され得る。
【0040】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。