(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395417
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】シリンダヘッドガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20180913BHJP
F02F 11/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F16J15/08 F
F02F11/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-71689(P2014-71689)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194186(P2015-194186A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】亀井 信博
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 茂伸
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−208992(JP,A)
【文献】
特開2002−309996(JP,A)
【文献】
特開2001−074142(JP,A)
【文献】
特開2012−237273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に配されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記シリンダブロックのボアと前記シリンダヘッドの燃焼室の天井部との間に介在する複数の燃焼室孔と、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドに設けられた冷却液を流すための冷却流路に連通する冷却用孔とを具備し、
前記冷却用孔が、隣接する二つの前記燃焼室孔間に位置し平面視概略V字形状をなす燃焼室冷却用の開口を有し、
この燃焼室冷却用の開口における、前記燃焼室孔により近い側の縁である追い込み縁が、平面視当該燃焼室冷却用の開口と重なる前記シリンダブロックの冷却流路の開口よりも燃焼室孔に接近しており、かつ同追い込み縁が、平面視当該燃焼室冷却用の開口と重なる前記シリンダヘッドの冷却流路の開口の縁と略等しいかこれよりもさらに若干燃焼室孔に接近しており、
前記燃焼室冷却用の開口における、前記燃焼室孔からより遠い縁に、前記追い込み縁の形状に沿って素材を突出させた突出部が形成され、同突出部が、平面視前記シリンダブロックの冷却流路の開口に被さり、かつ同突出部が、平面視前記シリンダヘッドの冷却流路の開口に被さっている、シリンダヘッドガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を構成するシリンダヘッドガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と冷却液を循環させることにより冷却を速やかに行うべく、内燃機関の内部には冷却流路等の流路が設けられている。この冷却流路に関しては、内燃機関において温度上昇し易い箇所を効率的に冷却すべく、その冷却流路の具体的な配置や形状について、例えば特許文献1のような態様のものが開示されている。斯かる特許文献1では、シリンダブロックに設けた冷却流路である水ジャケットにおいて、隣接する二つの燃焼室間の距離が最も短くなる箇所へ向けて冷却液を追い込むように突出するような先端を有する開口形状をなした部分を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−309996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は
、気筒に最も近接した箇所に冷却水を流して燃焼室の冷却をより促すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、複数の気筒を有する内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に
配されるものであって、前記シリンダブロックのボアと前記シリンダヘッドの燃焼室の天井部との間に介在する
複数の燃焼室孔と、前記シリンダブロック
及び前記シリンダヘッドに設けられた冷却液を流すための冷却流路に連通する冷却用孔とを
具備し、前記冷却用孔が、隣接する二つの前記燃焼室孔間に位置
し平面視概略V字形状をなす燃焼室冷却用の開口を有し、この燃焼室冷却用の開口
における、前記燃焼室孔により近い側の縁である追い込み縁が、平面視当該燃焼室冷却用の開口と重なる前記シリンダブロックの冷却流路の開口よりも燃焼室孔に接近しており、かつ同追い込み縁が、平面視当該燃焼室冷却用の開口と重なる前記シリンダヘッドの冷却流路の開口の縁と略等しいかこれよりもさらに若干燃焼室孔に接近しており、前記燃焼室冷却用の開口における、前記燃焼室孔からより遠い縁に、前記追い込み縁の形状に沿って素材を突出させた突出部が形成され、同突出部が、平面視前記シリンダブロックの冷却流路の開口に被さり、かつ同突出部が、平面視前記シリンダヘッドの冷却流路の開口に被さっていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、燃焼室冷却用の開口を流れる冷却液は突出部により燃焼室孔へ向かう方向に流れが誘導されるので、燃焼室の冷却が有効に促される。これにより耐ノッキング性能の向上が期待され、ひいてはノッキング防止のための点火時期の遅角化を抑えた熱機械変換効率の上昇、すなわち燃費の上昇を招来することが可能となる。さらに燃焼室の冷却性能を向上させることで燃焼室の、特にシリンダヘッドの平面視形状をフリクションを低減できるように、より真円形状へと近付けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却性能を有効に向上させることができる内燃機関の構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における構造体である車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態の内燃機関は、例えばポート噴射式の4ストローク火花点火エンジンであり、三つの気筒1a、1b、1cを具備する。それら気筒1a、1b、1cは直列配置されている。この内燃機関は前記気筒1a、1b、1cを内部に構成すべく、下側からシリンダボア2aを構成するシリンダブロック2、板状をなすガスケット3、そして燃焼室の天井部4aを構成するシリンダヘッド4の順に重層された状態で溶接及び締結により強固に固定されている。そして内燃機関は各気筒1a、1b、1cの燃焼による過度の温度上昇を回避すべく、シリンダブロック2、ガスケット3及びシリンダヘッド4に亘って冷却液をすなわち冷却水を流す冷却流路たる水ジャケット5を形成している。
【0012】
ガスケット3は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド4に介して溶接により溶着される溶着部31と、気筒1a、1b、1cすなわち燃焼室を構成するための燃焼室孔32及び水ジャケット5を構成する冷却用孔33を含む開口部30とを有している。すなわち燃焼室孔32は換言すれば、シリンダブロック2に形成されたシリンダボア2aと前記シリンダヘッド4の燃焼室の天井部4aとの間に介在するものである。また水ジャケット5とは、シリンダブロック2及びシリンダヘッド4ともに構成され、冷却用孔33の箇所でともに連通されている。
【0013】
図2は、シリンダブロック2を破線、シリンダヘッド4の外形を二点鎖線で示すとともに、ガスケット3の溶着部31及び開口部30を示した構成説明図である。
【0014】
シリンダブロック2では、気筒1a、1b、1cの周囲において
広範に冷却水を流すべく大きく開口が設けられているとともに、シリンダヘッド4では、隣接する二つの前記燃焼室孔32間に近接する位置に、平面視三角形状の追い込み部40を位置付けている。この追い込み部40は、平面視重複するシリンダヘッドガスケット3の冷却用孔33よりも平面視大きい面積を有する開口である。
【0015】
しかして本実施形態に係るガスケット3たるシリンダヘッドガスケットは、シリンダブロック2とシリンダヘッド4との間に介在し、燃焼室を構成する燃焼室孔32と、冷却用孔33とを有するものであって、前記冷却用孔33が、隣接する二つの前記燃焼室孔32間に位置する燃焼室冷却用の開口たる燃焼室冷却口34を有し、この燃焼室冷却口34が、隣接する二つの燃焼室孔32が最も近接する箇所へ向けて冷却液が流れるように素材を突出させて設けた突出部35を有することを特徴としている。
【0016】
以下、燃焼室冷却口34の構成について説明する。
【0017】
燃焼室冷却口34は、
図3に示すように、追い込み部40の平面視形状に略等しい程度にまで形状を凹ませて形成した追い込み縁36と、この追い込み縁36の形状に沿って素材を突出させて形成した突出部35とを形成した、平面視概略矢尻形状をなす。換言すれば燃焼室冷却口34は平面視概略V字形状をなしている。ここで追い込み縁36の形状は本実施形態では追い込み部40に対し平面視略等しくしているが勿論、寸法誤差等を加味し、追い込み縁36を燃焼室孔32へさらに若干寸法平面視にて凹ませて形成しても良い。換言すれば寸法誤差があっても追い込み縁36が水ジャケット5内に突出しないようにしても良い。
【0018】
このような形状とすることで、シリンダブロック2側から水ジャケット5のシリンダヘッド4側にある追い込み部40を流れる冷却水は突出部35に当たることで追い込み縁36へ向けて傾斜するようにシリンダヘッド4内を流れることとなる。すなわち、追い込み縁36における気筒1a、1b、1cに最も近接した箇所に冷却水が集中するように流れるため、気筒1a、1b、1cすなわち燃焼室の冷却がより促される。
【0019】
翻って、
図4では、従来のガスケット3の構造を図示している。なお同図において本実施形態の構成要素に相当する構成要素に対しては同じ符号を付して説明を省略する。斯かるガスケット3では、追い込み部40に重複する冷却用孔33は燃焼室孔32から遠ざかった位置で略真円形状を形成しているため、斯かる冷却用孔33を通過する冷却水は追い込み部40のうち、幅広に構成された気筒1a、1b、1cから遠い側に優先して流れてしまい、十分に気筒1a、1b、1cを冷却する効果が得られないものであった。
【0020】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係るシリンダヘッドガスケットたるガスケット3は、燃焼室冷却口34を流れる冷却液が突出部35により燃焼室孔32へ向かう方向に流れが誘導されるので、燃焼室すなわち気筒1a、1b、1cの冷却が有効に促される。これにより耐ノッキング性能の向上が期待され、ひいてはノッキング防止のための点火時期の遅角化を抑えた熱機械効率の上昇、すなわち燃費の上昇を招来することが可能となる。
【0021】
特に本実施形態によれば、冷却性能を向上させることで、気筒1a、1b、1cの、特にシリンダブロック2を構成するシリンダボア2aの形状をより真円形状に近い形状に設定してフリクションを低減せしめても耐ノッキング性能を担保できるため、メカロスの低減をも招来したさらなる燃費の向上に資する。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0023】
例えば、上記実施形態では三つの気筒を有する内燃機関に本発明を適用した態様を開示したが、勿論、気筒の数は限定されない。また水ジャケットの具体的な流路形状やシリンダヘッドガスケットの素材や厚み寸法といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0024】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は内燃機関に用いられるシリンダヘッドガスケットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
2…シリンダブロック
3…ガスケット
32…燃焼室孔
33…冷却用孔
34…燃焼室冷却用の開口(燃焼室冷却口)
35…突出部
4…シリンダヘッド
5…冷却流路(水ジャケット)