(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デューティ演算部は、出力デューティ比をOUTDUTY、入力デューティ比をINDUTY、傾きをSLP、前記デューティ指令値の下限をMIN、パラメータをOFS、最大値を選択する関数をmax()とするとき、
OUTDUTY=SLP×max(INDUTY,MIN)+OFS
なる関係式にもとづいて、前記デューティ指令値を演算することを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動回路。
前記デューティ演算部は、出力デューティ比をOUTDUTY、入力デューティ比をINDUTY、傾きをSLP、前記デューティ指令値の下限をMIN、パラメータをOFS、最大値を選択する関数をmax()とするとき、
OUTDUTY=max(SLP×INDUTY+OFS,MIN)
なる関係式にもとづいて、前記デューティ指令値を演算することを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動回路。
【背景技術】
【0002】
近年のパーソナルコンピュータやワークステーションの高速化にともない、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などの演算処理用LSI(Large Scale Integrated circuit)の動作速度は上昇の一途をたどっている。このようなLSIは、その動作速度、すなわちクロック周波数が高くなるにつれて発熱量も大きくなる。LSIからの発熱は、そのLSI自体を熱暴走に導いたり、あるいは周囲の回路に対して影響を及ぼすという問題がある。したがってLSIをはじめとする発熱体(以下LSIという)の適切な熱冷却はきわめて重要な技術となっている。
【0003】
LSIを冷却するための技術の一例として、冷却ファンによる空冷式の冷却方法がある。この方法においては、たとえば、LSIの表面に対向して冷却ファンを配置し、冷たい空気をLSI表面に吹き付ける。このような冷却ファンによるLSIの冷却に際して、LSI付近の温度をモニタし、その温度に応じてファンの回転を変化させることにより冷却の程度を調整することが行われている。
【0004】
図1(a)、(b)は、本発明者らが検討したファンモータの駆動回路およびその周辺回路の回路図である。
図1(a)と(b)とでは、周辺の回路部品の配置が異なっており、駆動IC(Integrated Circuit)200の構成は同一である。
【0005】
9番ピンの電源端子(VCC端子)には、逆流防止用のダイオードD1を介して電源電圧V
DDが入力される。またVCC端子には、過電圧保護用のツェナーダイオードZD1および平滑化用のキャパシタC2が接続される。14番ピンの接地端子(GND)は接地される。Hブリッジ回路212の出力は、6番ピン(OUT2)、8番ピン(OUT1)を介してファンモータ6と接続される。またHブリッジ回路212の下側の端子は、7番ピン(RNF)と接続される。なお、本明細書においてピンの番号は便宜的なものであり、ピンのレイアウト等とは無関係である。コントロールロジック回路208は、パルス幅変調されたパルス信号S1を生成する。プリドライバ210は、パルス信号S1にもとづいてHブリッジ回路212をスイッチングする。
【0006】
ファンモータ6は、ブラシレスDCモータである。駆動IC200は、周辺の回路部品とともに駆動回路を構成し、ファンモータ6をPWM駆動する。ホールセンサ8は、ファンモータ6の近傍に、ロータの位置を検出するために設けられる。
【0007】
ホールバイアス回路204は、ホールバイアス電圧V
HBを生成し、3番ピンを介してホールセンサ8に供給する。駆動IC200の2番ピン、3番ピンには、ホールセンサ8が生成するホール信号H−、H+が入力される。ホールコンパレータ202は、ホール信号H−、H+を比較し、ロータの位置を示すパルス信号S2を生成し、コントロールロジック回路208に出力する。コントロールロジック回路208は、このパルス信号S2と同期して、Hブリッジ回路212の駆動相を遷移させる。
【0008】
Hブリッジ回路212と接地電圧V
SSが与えられる接地ラインの間には、言い換えれば7番ピンと接地ラインの間には、電流検出用の抵抗R
NFが挿入される。抵抗R
NFには、ファンモータ6に流れる電流に比例した検出電圧が発生する。検出電圧V
NFは、RCフィルタを介して5番ピンに入力される。電流クランプコンパレータ206は、検出電圧V
NFを所定の電圧Vclと比較する。電圧Vclは、ファンモータ6に流れる電流の上限を規定するものである。電流クランプコンパレータ206の出力がアサート(ハイレベル)されると、コントロールロジック回路208は、ファンモータ6への通電を停止するようにパルス信号S1の論理値を変化させる。
【0009】
オシレータ220は、所定の周波数を有する周期的なキャリア電圧OSCを生成する。キャリア電圧OSCは、のこぎり波(ランプ波)もしくは三角波を有する。PWMコンパレータ216は、12番ピン(MIN)の電圧V
MINを、キャリア電圧OSCと比較する。PWMコンパレータ216の出力は、12番ピンの電圧V
MINに応じたデューティ比を有する。
【0010】
同様にPWMコンパレータ218は、11番ピン(TH)の電圧V
THをキャリア電圧と比較する。PWMコンパレータ218の出力は、11番ピンの電圧V
THに応じたデューティ比を有する。
【0011】
コントロールロジック回路208は、PWMコンパレータ216および218の出力パルスを論理合成し、パルス信号S1を生成する。パルス信号S1のデューティ比は、PWMコンパレータ216と218の出力パルスのデューティ比のうち、大きい方となる。つまり12番ピンの電圧は、パルス信号S1のデューティ比の下限値(最小デューティ比)を設定する。
【0012】
基準電圧源214は、所定の基準電圧V
REFを生成し、10番ピン(REF)から外部に出力する。抵抗R11、R12は、基準電圧V
REFを分圧し、12番ピン(MIN)に入力する。つまり、外付けされる抵抗R11,R12の抵抗値に応じて、12番ピンの電圧V
MINを設定でき、したがって、パルス信号S1の最小デューティ比を設定できる。
【0013】
PWM入力には、ファンモータ6の目標回転数に応じたデューティ比を有する入力PWM信号が与えられる。
図1(a)では、入力PWM信号は、インバータ10を介して、TH端子に入力される。
【0014】
図1(b)では、入力PWM信号は、インバータ10で反転された後に、RCフィルタ12で平滑化されて、TH端子に入力される。
【0015】
図2(a)、(b)は、
図1(a)、(b)の駆動IC200の動作波形図である。
【0016】
図2(a)を参照し、
図1(a)の駆動IC200の動作を説明する。
図1(a)の駆動IC200のTH端子(11番ピン)には、入力PWM信号を反転したパルス信号V
THが入力される。パルス信号V
THのハイレベルは、内部オシレータが生成するキャリア電圧のピークより高く、パルス信号V
THのローレベルは、内部オシレータが生成するキャリア電圧のボトムより低くなっている。キャリア電圧とパルス電圧V
THを比較した結果、PWMコンパレータ218の出力パルスは、パルス電圧V
THと同じデューティ比を有する。
【0017】
図2(a)では、H−>H+の状態であり、第1相の出力OUT1がスイッチングされ、第2相の出力OUT2はローレベルに固定される。出力OUT1のスイッチングのデューティ比は、V
THと一致し、したがってもとの入力PWM信号のデューティ比と一致する。なお、この例ではV
MIN=V
REFであり、キャリア電圧のピークより高いため、PWMコンパレータ216の出力は、OUT1には影響を与えない。
【0018】
これにより、入力PWM信号のデューティ比が大きくなるほど、ファンモータ6のトルク(回転数)は増大する。
【0019】
続いて
図2(b)を参照し、
図1(b)の駆動IC200の動作を説明する。
図1(b)の駆動IC200のTH端子(11番ピン)には、フィルタにより平滑化されたDC電圧V
THが入力される。出力OUT1は、V
MINとV
THのうち低い方と、キャリア電圧の比較結果に応じたデューティ比を有する。
【0020】
これにより、入力PWM信号のデューティ比が大きくなるほど、ファンモータ6のトルク(回転数)は増大する。また最小トルクすなわち最低回転数が、電圧V
MINに応じて設定可能である。
【0021】
このように
図1の駆動IC200によれば、TH端子に対して、DC電圧を入力することもできるし、パルス信号を入力することもでき、セットの設計者に設計の柔軟性を提供できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者らは、
図1の駆動IC200について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0024】
図1(a)のプラットフォームでは、TH端子のハイレベルおよびローレベルに制約がある。すなわち、TH端子のハイレベルは、キャリア電圧OSCのピークより高く、ローレベルはキャリア電圧OSCのボトムより低くなければならない。したがって、TH端子への入力パルスの振幅を注意深く決める必要がある。
【0025】
また、入力PWM信号のデューティ比(入力デューティ比)と、出力OUT1(OUT2)のデューティ比(出力デューティ比)は一致し、それらの入出力関係を変更することができない。
【0026】
図1(b)のプラットフォームでは、フィルタ12を挿入することにより、入力デューティ比と出力デューティ比の関係(傾き)を調節することができる。しかしながら部品点数が増加するため、コストが高くなりまた装置の小型化の妨げとなる。
【0027】
また、TH端子のDC電圧の変化範囲が出力デューティ比の変動幅となるが、DC電圧に対する出力デューティ比の精度を高めるためには、キャリア電圧OSCのピークとボトムの差、つまり振幅を大きくとる必要があるが、そのためには高い電源電圧V
DDが必要となる。
【0028】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、コストおよび面積の増大を抑えつつ、入出力デューティ比の関係を設定可能なモータ駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明のある態様は、ファンモータをPWM(Pulse Width Modulation)駆動するモータ駆動回路に関する。モータ駆動回路は、入力デューティ比を有する入力パルス変調信号を外部から受けるPWM入力端子と、入力パルス変調信号を受け、入力デューティ比に応じた第1デジタル値に変換するデューティ/デジタル変換器と、入力デューティ比に対する、モータ駆動回路の出力デューティ比の傾きを指示する情報を受ける傾き設定端子と、傾きを指示する情報に応じた第2デジタル値を取得する傾き取得部と、第1デジタル値に対して、第2デジタル値に応じた傾きで線形に増大するデューティ指令値を生成するデューティ演算部と、デューティ指令値に応じた出力デューティ比を有する制御パルスを生成するデジタルパルス幅変調器と、制御パルスにもとづきファンモータを駆動する出力回路と、を備える。
【0030】
この態様によると、デューティ/デジタル変換器を設けたことで、PWM入力端子に入力パルス変調信号を直接入力することができる。また傾き設定端子および傾き取得部を設けたことにより、入力デューティ比に対する出力デューティ比の傾きを外部から設定できる。これらにより、コストおよび面積の増大を抑えつつ、入出力デューティ比の関係を設定することができる。
【0031】
傾き設定端子は、傾きを指示するアナログのDC電圧を受けるものであり、傾き取得部は、傾き設定端子のDC電圧を第2デジタル値に変換する第1A/Dコンバータを含んでもよい。
【0032】
傾き設定端子は、傾きを指示するシリアルまたはパラレルのデジタルデータを受けるものであり、傾き取得部は、デジタルデータを受信するインタフェース回路と、デジタルデータに応じた第2デジタル値を格納するメモリと、を含んでもよい。
【0033】
傾き設定端子は、傾きを指示する第2デジタル値を受けるものであり、傾き取得部は、第2デジタル値を格納する不揮発性メモリを含んでもよい。
【0034】
アナログのDC電圧が入力されるDC入力端子と、DC入力端子のDC電圧を第3デジタル値に変換する第2A/Dコンバータと、をさらに備えてもよい。デューティ演算部は、デューティ指令値を、第3デジタル値を下限としてクランプしてもよい。
これにより、ファンモータの最低回転数を任意に設定できる。また、モータ駆動回路を、アナログの入力DC電圧によって回転数を制御するプラットフォームにも利用することが可能となる。
【0035】
デューティ演算部は、出力デューティ比をOUTDUTY、入力デューティ比をINDUTY、傾きをSLP、デューティ指令値の下限をMIN、パラメータをOFS、最大値を選択する関数をmax()とするとき、以下の関係式にもとづいて、デューティ指令値を演算してもよい。
OUTDUTY=SLP×max(INDUTY,MIN)+OFS
【0036】
デューティ演算部は、出力デューティ比をOUTDUTY、入力デューティ比をINDUTY、傾きをSLP、デューティ指令値の下限をMIN、パラメータをOFS、最大値を選択する関数をmax()とするとき、以下の関係式にもとづいて、デューティ指令値を演算してもよい。
OUTDUTY=max(SLP×INDUTY+OFS,MIN)
【0037】
パラメータOFSは、定数Kを用いて、以下のいずれかの式で与えられてもよい。
OFS=100×(K−SLP)
OFS=100×K
OFS=100×(SLP−K)
【0038】
K=1であってもよい。あるいは定数Kは、モータ駆動回路の外部から設定可能であってもよい。
【0039】
デューティ/デジタル変換器は、値が1、0の2値に変換された入力パルス変調信号に、係数2
L(Lは自然数)を乗算するレベル変換回路と、レベル変換回路の出力データをフィルタリングし、第1デジタル値を出力するデジタルローパスフィルタと、を含んでもよい。
【0040】
デジタルローパスフィルタは、1次IIR(無限インパルス応答)フィルタであり、順に直列に接続された加算器、遅延回路、係数回路を含んでもよい。加算器は、レベル変換回路の出力データに遅延回路の出力データを加算し、係数回路の出力データを減算し、遅延回路は、加算器の出力データを遅延させ、係数回路は、遅延回路の出力データに、係数2
−n(nは自然数)を乗算してもよい。
【0041】
nは、係数回路の出力データのリップル幅が1以下となるように定められてもよい。
【0042】
モータ駆動回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0043】
本発明の別の態様は、冷却装置である。この冷却装置は、ファンモータと、ファンモータを駆動する上述のいずれかの態様の駆動回路と、を備える。
【0044】
本発明の別の態様は電子機器である。この電子機器は、プロセッサと、前記プロセッサを冷却する上述の冷却装置と、を備える。
【0045】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0046】
本発明のある態様によれば、コストおよび面積の増大を抑えつつ、入出力デューティ比の関係を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図3は、実施の形態に係る駆動IC100を備える冷却装置2の構成を示す回路図である。冷却装置2は、たとえばデスクトップ型、あるいはラップトップ型のコンピュータ、ワークステーション、ゲーム機器、オーディオ機器、映像機器などに搭載され、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、電源装置などの冷却対象(不図示)を冷却する。冷却装置2は、冷却対象に対向して設けられたファンモータ6と、ファンモータ6を駆動する駆動装置9を備える。
【0049】
駆動装置9は、実施の形態に係る駆動IC100と、その周辺部品で構成される。駆動装置9の構成部品は、共通のプリント基板上に搭載される。
図3には、駆動IC100の構成を説明するために必要な周辺部品の一部のみを示す。
【0050】
駆動IC100は、デューティ/デジタル変換器102、傾き取得部104、第2A/Dコンバータ106、デューティ演算部108、デジタルパルス幅変調器110、出力回路120、基準電圧源214を備え、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能ICである。
【0051】
10番ピンの電源端子(VCC端子ともいう)には、電源電圧V
DDが入力され、16番ピンの接地端子(GND端子ともいう)には接地電圧V
SSが入力される。基準電圧源214は、所定レベルに安定化された基準電圧V
REFを生成し、11番ピンの基準電圧端子(単にREF端子ともいう)から出力する。この基準電圧V
REFは、駆動IC100の内部および外部において使用される。また
図3の6〜9番ピンはそれぞれ、
図1の5〜8番ピン対応する。
【0052】
デューティ/デジタル変換器102、傾き取得部104、第2A/Dコンバータ106、デューティ演算部108、デジタルパルス幅変調器110は、外部からパルス幅変調された入力PWM信号S
PWMを受け、そのデューティ比(入力デューティ比INDUTY)に応じたデューティ比(出力デューティ比OUTDUTY)を有する制御パルスS
CNTを生成する。
【0053】
出力回路120は、制御パルスS
CNTにもとづき、ファンモータ6を駆動する。具体的には、ホールコンパレータ202の出力にもとづいて、出力OUT1、OUT2を交互に選択しながら、選択された出力を、制御パルスS
CNTにもとづいてスイッチングする。
【0054】
出力回路120は、ホールコンパレータ202、電流クランプコンパレータ206、コントロールロジック回路208、プリドライバ210、Hブリッジ回路212、基準電圧源214を含む。これらの構成については、すでに
図1を参照して説明したため、説明を省略する。また出力回路120の構成は
図3のそれには限定されず、別の構成であってもよい。また
図3において外づけされるホールセンサ8は、駆動IC100に内蔵されてもよい。
【0055】
続いて、制御パルスS
CNTの生成について説明する。
【0056】
5番ピンのPWM入力端子(単にPWM端子ともいう)には、外部から、入力デューティ比INDUTYを有する入力パルス変調信号S
PWMが入力される。デューティ/デジタル変換器102は、入力パルス変調信号S
PWMを受け、入力デューティ比INDUTYに応じた第1デジタル値D
PWMに変換する。
【0057】
駆動IC100は、入力デューティ比INDUTYに対する出力デューティ比OUTDUTYの傾きSLPが外部から設定可能に構成される。4番ピンの傾き設定端子(SLOPE端子ともいう)には、傾きSLPを指示する情報が入力される。傾き取得部104は、傾きSLPを指示する情報を受け、傾きSLPに応じた第2デジタル値D
SLPを取得する。
【0058】
本実施の形態において、SLOPE端子には、傾きSLPに応じた電圧レベルを有するアナログのDC電圧V
SLOPEが入力される。したがって傾き取得部104は、DC電圧V
SLOPEをデジタル値に変換する第1A/Dコンバータ105で構成される。
【0059】
たとえばV
SLOPE=V
REFのときにSLP=2、V
SLOPE=V
REF/2のときSLP=1、V
SLOPE=V
REF/4のときSLP=1/2となるように、第2A/Dコンバータ106は構成される。
【0060】
デューティ演算部108は、第1デジタル値D
PWMに対して、第2デジタル値D
SLPに応じた傾き(SLP)をもって線形に増大するデューティ指令値D
DUTYを生成する。このデューティ指令値D
DUTYは、制御パルスS
CNTのデューティ比OUTDUTYを指示するデータである。デジタルパルス幅変調器110は、デューティ指令値D
DUTYに応じた出力デューティ比OUTDUTYを有する制御パルスS
CNTを生成する。
【0061】
デューティ演算部108の演算処理を説明する。たとえばデューティ演算部108は、式(1)にもとづいてデューティ指令値D
DUTYの値(出力デューティ比OUTDUTY)を演算してもよい。
OUTDUTY=SLP×INDUTY+100×(1−SLP) …(1)
ただし、OUTDUTY≧0である必要があるから、式(1)の値が負であるときには、OUTDUTY=0とする。
【0062】
式(1)の関係は、INDUTY=100%のときにOUTDUTY=100%となるように、100%を基準として定められている。
【0063】
さらに駆動IC100は、外部から、ファンモータ6の最低回転数を設定可能となっている。12番ピンのDC入力端子(MIN端子という)には、アナログのDC電圧V
MINが入力される。第2A/Dコンバータ106は、第2DC電圧V
MINを第3デジタル値D
MINに変換する。デューティ演算部108は、デューティ指令値D
DUTYを、第3デジタル値D
MINを下限としてクランプする。
【0064】
この場合、式(1)を式(2)に修正すればよい。MINはデジタル値D
MINが示す最小デューティ比である。
OUTDUTY=SLP×max(INDUTY,MIN)+100×(1−SLP) …(2)
maxは、INDUTYとMINのうち大きい方を選択する関数である。なお、デューティ演算部108の具体的な構成は特に限定されず、当業者であれば、積和演算器、乗算器、加算器などの組み合わせで、デューティ演算部108を構成可能であることが理解される。
【0065】
図4は、デューティ演算部108の入出力特性を示す図である。横軸は入力デューティ比INDUTYを、縦軸は出力デューティ比はOUTDUTYを示す。(i)SLP=1/2、(ii)SLP=1、(iii)SLP=2のときの特性が示される。
【0066】
なお、デューティ演算部108の入出力特性は、INDUTY=0%のときにOUTDUTY=0%となるように、0%基準で定めてもよいし、INDUTY=50%のときにOUTDUTY=50%となるように、50%基準で定めてもよい。
【0067】
図5は、デューティ/デジタル変換器102の構成を示す回路図である。デューティ/デジタル変換器102は、レベル変換回路150と、デジタルフィルタ152を備える。
【0068】
入力PWM信号S
PWMのハイレベルは1に、ローレベルは0に変換される。これはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)入力に入力PWM信号S
PWMを入力すればよい。レベル変換回路150は、1/0信号に変換された入力PWM信号に、係数2
Lを乗算する。L=7のとき、入力PWM信号S
PWMの1/0はそれぞれ128/0に変換され、後段のデジタルフィルタ152に入力される。
【0069】
デジタルフィルタ152は、1次IIR(Infinite Impulse Response)型ローパスフィルタであり、直列に設けられた加算器153、遅延回路154、係数回路156を備える。
【0070】
遅延回路154は、ビット幅(L+n)を有し、ある周期T
CLKを有するクロック信号CLKと同期して、加算器153の出力データを遅延時間T
CLK、遅延させる。
【0071】
加算器153は、遅延回路154の出力データに、係数2
−nを乗算する。定数nは、ローパスフィルタの周波数特性を決定する。加算器153、係数回路156は、入力データをnビット右シフトするビットシフタで構成してもよい。
【0072】
加算器153は、レベル変換回路150の出力データ、遅延回路154の出力データを加算し、係数回路156の出力データを減算して、演算結果を遅延回路154に出力する。
【0073】
図6(a)、(b)は、
図5のPWMデューティ/デジタル変換器の動作を示す図である。
図6(a)は、入力PWM信号のデューティ比が50%のときの、第1デジタル値D
PWMを示す。nの値を変えることにより、フィードバックループのゲイン(応答性)と、リップルが変化する。
【0074】
クロック信号CLKの周波数f
CLKを検討する。入力PWM信号S
PWMをLビットにてデューティ比に変換する場合、1/2
L以下の精度で正しく変換することが望ましい。たとえばL=7ビット(0〜127)にてデューティ比に変換する場合、1/128≒1%以下の精度が望ましい。入力PWM信号S
PWMのキャリア周波数f
PWMを28kHzと仮定すると、クロック信号CLKの周波数f
CLKをこの2
L(=128)倍、つまり3.6MHz以上にすれば、データをとりこぼすことなく、入力PWM信号の1周期ごとに、1つの第1デジタル値D
PWMを生成することができる。これによってビートの発生を防止できる。
【0075】
続いてフィルタリングの係数nについて検討する。
図6(b)は、デューティ/デジタル変換器102のローパスフィルタ特性を示す図である。第1デジタル値D
PWMのリップルを1ステップ以内とするためには、利得G=1/128=−42dB程度が目安となる。n=12とした場合、入力PWM信号PWMのキャリア周波数f
PWMが21kHzときに、−38.5dB程度の除去率が得られ、キャリア周波数f
PWMがさらに高くなれば、−42dBより低い除去率を得ることができる。
【0076】
以上が駆動IC100の構成である。続いてその動作を説明する。
駆動IC100は、制御方式が異なる複数のプラットフォームで利用可能である。
図7(a)、(b)は、異なるプラットフォームにおける冷却装置2の回路図である。
図7(a)と(b)とでは、周辺回路が異なっている。
【0077】
はじめに
図7(a)のプラットフォームについて説明する。第1プラットフォームに係る冷却装置2aでは、駆動IC100の外部のプロセッサ、たとえばCPUやマイコンから、入力PWM信号S
PWMが、抵抗R21を介してPWM端子(5番ピン)に入力される。
【0078】
VCC端子には、逆流防止用のダイオードD1を介して電源電圧V
DDが入力される。またVCC端子には、過電圧保護用のツェナーダイオードZD1および平滑化用のキャパシタC2を接続してもよい。
【0079】
REF端子(11番ピン)には、平滑化キャパシタC11が接続される。REF端子からは、内部の基準電圧源214により基準電圧V
REFが出力される。抵抗R31、R32は、REF端子の基準電圧V
REFを分圧し、ホールセンサ8のホールバイアス電圧V
HBを生成する。
【0080】
抵抗R41、R42は、基準電圧V
REFを分圧し、SLOPE端子(4番ピン)に入力する。抵抗R51、R52は、基準電圧V
REFを分圧し、MIN端子(12番ピン)に入力する。
【0081】
以上が冷却装置2aの構成である。
この冷却装置2aによれば、抵抗R41,42の分圧比によって、
図4の入出力特性の傾きを自由に設定することができる。またファンモータ6の最低回転数を、抵抗R51、R52の分圧比に応じて任意に設定することができる。
【0082】
この冷却装置2aの利点は、
図1(a)、(b)との対比によって明確となる。
図1(a)では、入力PWM信号を受けるインタフェース回路として、インバータ10が必要であり、
図1(b)では、入力PWM信号を受けるインタフェース回路としてインバータ10およびローパスフィルタ12が必要であった。これに対して、
図7(a)の冷却装置2aでは、インタフェースとして抵抗R21のみで足りるため、回路の部品点数を大幅に削減できる。
【0083】
図1(a)のプラットフォームでは、TH端子のハイレベルおよびローレベルに制約があったが、
図7(a)では、入力PWM信号S
PWMの振幅は特に限定されない。
【0084】
図1(b)のプラットフォームでは、TH端子のDC電圧の変化範囲が出力デューティ比の変動幅となり、DC電圧に対する出力デューティ比の精度を高めるために、キャリア電圧OSCのピークとボトムの差、つまり振幅を大きく必要があり、高い電源電圧V
DDが必要となった。
【0085】
これに対して
図7(a)のプラットフォームでは、入力PWM信号のデューティ比INDUTYがデューティ/デジタル変換器102によってデジタル値に直接変換され、デジタル領域でパルス幅変調された制御信号S
CNTが生成される。したがって電源電圧V
DDを高める必要がなく、低消費電力化を実現できる。
【0086】
また、実施の形態に係る駆動IC100では、アナログのDC電圧に応じた回転数制御も可能である。
図7(b)のプラットフォームでは、DC端子に、外部から、ファンモータ6の回転数を指示するアナログの入力DC電圧V
DCが入力される。
【0087】
入力DC電圧V
DCは、抵抗R61を介してMIN端子に入力される。抵抗R62がREF端子とDC端子の間に設けられる。またREF端子とDC端子の間には、MIN端子の電圧をクランプするために、ダイオードD2、R63が直列に設けられる。このプラットフォームでは、PWM端子は、抵抗R21を介して接地される。
【0088】
以上が
図7(b)の冷却装置2bの構成である。この冷却装置2bでは、PWM端子が接地されるため、デューティ/デジタル変換器102の出力D
PWMはゼロとなる。また第2A/Dコンバータ106の出力D
MINは、入力DC電圧V
DCをデジタル値に変換した値でとなる。したがってD
MIN>D
PWMとなり、式(2)においてMIN>INDUTYとなり、式(3)を得る。
OUTDUTY=SLP×MIN+100×(1−SLP) …(3)
【0089】
つまり、
図7(b)の冷却装置2bでは、入力DC電圧V
DCに応じて、ファンモータ6の回転数を制御できる。
【0090】
このように実施の形態に係る駆動IC100は、PWM信号にもとづく回転制御を行うプラットフォームにも、DC電圧にもとづく回転制御を行うプラットフォームにも使用することができる。すなわち駆動IC100のユーザに、複数のプラットフォームを選択する自由度を提供することができる。
【0091】
(用途)
最後に、冷却装置2の用途を説明する。
図8は、冷却装置2を備えるPCの斜視図である。PC500は、筐体502、CPU504、マザーボード506、ヒートシンク508、および複数の冷却装置2を備える。
【0092】
CPU504は、マザーボード506上にマウントされる。ヒートシンク508は、CPU504の上面に密着されている。冷却装置2_1は、ヒートシンク508と対向して設けられ、ヒートシンク508に空気を吹き付ける。冷却装置2_2は、筐体502の背面に設置され、筐体502の内部に外部の空気を送り込む。
【0093】
冷却装置2は、
図8のPC500の他、ワークステーション、ノート型PC,テレビ、冷蔵庫、などの様々な電子機器に搭載可能である。
【0094】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0095】
(第1変形例)
実施の形態では、ファンモータ6の最低回転数を設定する方法として、式(2)を説明したが、本発明はそれには限定されず、より一般化した式(2a)を用いてもよい。
OUTDUTY=SLP×max(INDUTY,MIN)+OFS …(2a)
OFSはパラメータであり、定数Kを用いて、以下の式(4a)〜(4c)のいずれかで定義することができる。
OFS=100×(K−SLP) …(4a)
OFS=100×K …(4b)
OFS=100×(SLP−K) …(4c)
【0096】
定数Kは、シリアルインタフェースやパラレルインタフェース、あるいは設定ピンに対する入力を利用して、駆動IC100の外部から設定可能であってもよい。あるいは定数Kは固定値であってもよい。なお、式(2)は、式(4a)を採用し、K=1とした場合に相当する。
【0097】
(第2変形例)
実施の形態では、ファンモータ6の最低回転数を設定する方法として、式(2)を説明したが、本発明はそれには限定されず、式(5)を用いてもよい。
OUTDUTY=max(SLP×INDUTY+OFS,MIN) …(5)
OFSは、上記式(4a)〜(4c)のいずれかで定義される。
【0098】
式(2)は、入力デューティ比INDUTYをMINを下限としてクランプしたものと把握できる。これに対して式(5)は、出力デューティ比OUTDUTYを、MINを下限としてクランプしたものと把握できる。
【0099】
(第3変形例)
実施の形態においては、駆動対象のファンモータが単相駆動モータの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他のモータの駆動にも利用可能である。
【0100】
(第4変形例)
実施の形態では、SLOPE端子に、アナログDC電圧を入力する構成としたが、本発明はそれに限定されない。SLOPE端子には、デジタル形式で、傾きを指示する情報を入力してもよい。
図9(a)、(b)は、第4変形例に係る駆動ICの一部の回路図である。
【0101】
図9(a)の駆動IC100aは、シリアルインタフェースのひとつであるI
2C(Inter IC)インタフェースを備える。この場合、シリアルバスと接続されるインタフェース(I/F)端子が、SLOPE端子となり、様々なデータに加えて、傾きSLPを指示するシリアルのデジタルデータD
SLOPEが入力される。駆動IC100aにおいて、傾き取得部104aは、インタフェース回路130、メモリ132を備える。インタフェース回路130は、傾きSLPを指示するデジタルデータD
SLOPEを受信する。メモリ132はレジスタであり、デジタルデータに応じた第2デジタル値D
SLPを格納する。シリアルインタフェースに代えて、パラレルインタフェースを採用してもよい。
【0102】
図9(b)の駆動IC100bは、外部から書き込み可能な不揮発性メモリを備える。SLOPE端子には、傾きSLPを指示するデジタルデータD
SLOPEが入力される。この場合、傾き取得部104bは、不揮発性メモリ134を利用して構成できる。不揮発性メモリ134は、書き込み可能なROM(Read Only Memory)であり、SLOPE端子に入力された第2デジタル値D
SLPを格納する。不揮発性メモリ134は、ソフトウェア的に書き込み可能なOTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)であってもよいし、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などであってもよい。
【0103】
(第5変形例)
駆動IC100を構成する素子はすべて一体集積化されていてもよく、または別の集積回路に分けて構成されていてもよく、さらにはその一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。どの部分を集積化するかは、コストや占有面積、用途などに応じて決めればよい。