(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような漏液検知器は、床下等に配置されるため汚れが付着しても清掃が困難である。一方、漏液検知器は、床下等に配置されたまま、例えば数年以上にわたって精度良く漏液を検知し続けることが望まれる。しかしながら、漏液検知器を床下等で長期間使用し続ける間に、例えば埃等の汚れが漏液検知器の周囲に堆積し、さらに結露等によって埃に液体が付着するなどの経時的な要因によって電気抵抗の出力データが変動し、漏液を誤検知するおそれがあった。以上より、長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる漏液検知器及び漏液検知方法が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態に係る漏液検知器は、周囲に存在する液体の量に応じた出力値を出力する漏液検知センサと、第1の閾値を設定し、漏液検知センサから出力された出力値と第1の閾値とを比較することで液体の漏れの有無を判定する漏液判定部と、を備え、第1の閾値は、出力値に応じて変動する。
【0006】
この漏液検知器では、漏液検知センサから出力された、周囲に存在する液体の量に応じた出力値と、出力値に応じて変動する第1の閾値と、を漏液判定部によって比較し、液体の漏れの有無を判定する。従って、漏液検知センサの周囲への汚れの付着等の経時的な要因により徐々に出力値が変動した場合には、出力値の変動に応じて第1の閾値も徐々に変動するため、液体が漏れているとの誤検知を抑制できる。以上によって、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制することができる。
【0007】
別の形態に係る漏液検知器において、第1の閾値は、出力値の移動平均に応じて変動してよい。出力値が経時的な要因によって変動するときは、出力値は徐々に変動する。この場合、出力値の移動平均に応じて変動する第1の閾値と、出力値との差が維持される。従って、経時的な要因によって変動した出力値が第1の閾値に到達することによる誤検知を抑制できる。一方、出力値が液体の漏れによって変動するときは、出力値は急激に変動する。この場合、出力値の移動平均に応じて滑らかに変動する第1の閾値に対し、出力値は変動が早い。従って、液体の漏れがあったときは第1の閾値に出力値が到達するため、液体の漏れを精度良く検知できる。以上によって、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知をより精度良く抑制できる。
【0008】
別の形態に係る漏液検知器において、出力値は、電気抵抗の測定値であってよい。この場合、汚れの付着等の経時的な要因による出力値の変動と、液体が漏れた場合の出力値の変動とを精度良く判定できるため、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる。
【0009】
別の形態に係る漏液検知器において、漏液判定部は、出力値によらず、予め所定の値に定められる第2の閾値を更に設定し、出力値と第1の閾値及び第2の閾値とを比較することで液体の漏れの有無を判定してよい。出力値が経時的な要因によって変動するときは、出力値は徐々に変動する。この場合、出力値に応じて変動する第1の閾値と、出力値との差が維持される。一方、経時的な要因によって出力値が徐々に変動し続けた結果、出力値の変化の大きさが一定以上となるときは、液体が漏れたものと判定すべき場合がある。しかしながら、第1の閾値を出力値の変動に応じて際限なく変動させるとすると、出力値の変化の大きさが一定以上となるにも関わらず第1の閾値には到達せず、液体が漏れたものと判定されない。ここで、出力値が第1の閾値に到達していなくても液体が漏れたものと判定することができる閾値として、第2の閾値を設定することによって、第1の閾値によらず適切なタイミングで液体の漏れを検知することができる。以上によって、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知をより精度良く抑制できる。
【0010】
別の形態に係る漏液検知器において、第1の閾値は、漏液検知センサが周囲に存在する液体の量を検知し始めてから所定の期間内は出力値によらず一定であってよい。この場合、漏液検知センサが出力値を出力し始めた直後の、出力値の誤差が大きい期間内において、漏液検知センサの周囲に液体が漏れていないにも関わらず液体が漏れているとの誤検知をすることを抑制できる。
【0011】
別の形態に係る漏液検知器において、第2の閾値は、調節可能であってよい。この場合、汚れの付着等の経時的な要因による出力値の変動と、液体が漏れた場合の出力値の変動とを精度良く判定できるため、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる。
【0012】
別の形態に係る漏液検知器において、漏液判定部は、液体の漏れが有ると判定した後において、漏れが無くなったと判定するための復帰閾値を更に設定し、出力値と復帰閾値とを比較することで漏れが無くなったか否かを判定し、復帰閾値は、第1の閾値に応じて変動してよい。この場合、変動する第1の閾値に対して適切な復帰閾値を設定することが可能となる。これにより、漏液検知センサの周囲に液体が漏れた後に、漏れた液体を取り除いた場合に、液体の漏れが無くなったことを精度良く判定することができる。
【0013】
また、本発明の一形態に係る漏液検知方法は、漏液検知センサの周囲に存在する液体の量に応じた出力値を出力する工程と、漏液検知センサから出力された出力値と出力値に応じて変動する第1の閾値とを比較する工程と、比較に基づいて液体の漏れの有無を判定する工程と、を備える。
【0014】
この漏液検知方法では、漏液検知センサから出力された、周囲に存在する液体の量に応じた出力値と、出力値に応じて変動する第1の閾値と、を漏液判定部によって比較し、液体の漏れの有無を判定する。従って、漏液検知センサの周囲への汚れの付着等の経時的な要因により徐々に出力値が変動した場合には、出力値の変動に応じて第1の閾値も徐々に変動するため、液体が漏れているとの誤検知を抑制できる。以上によって、漏液検知器の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る漏液検知器の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る漏液検知器の一実施形態を示す概略図である。漏液検知器1は、例えば建物の床下等に設置されて液体の漏れを検知すると共に、漏れを検知した場合にユーザに対し報知する。特に本実施形態において、漏液検知器1は、例えば水道水、海水、工場排水、溶剤等の導電性の液体の漏れを検知する。漏液検知器1は、
図1に示すように、電極部2と、本体部3と、電力供給部4と、を有している。
【0019】
電極部2は、本体部3に組み込まれた出力値演算部5と共に漏液検知センサ7を構成する。電極部2は、離間して配置された電極2a,2bを有している。より具体的には、電極部2は、例えば扁平な略円筒形状をなし、底面の外周側に、外周に沿って湾曲した細長形状の電極2a,2bが離間して配置されている。電極部2は、本体部3に組み込まれた出力値演算部5との間をケーブル10で電気的に接続されており、ケーブル10を介して本体部3側から給電される。出力値演算部5は、電極部2の電極2a,2b間の電圧降下に基づいて電気抵抗を算出すると共に、本体部3に組み込まれた漏液判定部6へ電気抵抗の測定値を出力値R1として出力する。出力値R1は、電極部2の周囲、特に電極2a、2b間に存在する液体の量に応じて変動する。
【0020】
本体部3は、例えば箱型の筐体の内部に、例えば漏水判定及びセンサ電圧制御といった処理を行うマイクロプロセッサを備えている。また、本体部3は、漏液検知器1の設定を行うための入力部と、例えば漏水の有無を表示する情報表示部と、漏水があった旨を報知するブザーと、を有している。入力部はロータリースイッチによって構成されるが、押ボタン式やボリュームであってもよい。
【0021】
マイクロプロセッサは、電極部2の電極2a,2b間の電圧降下から電気抵抗を算出する出力値演算部5と、出力値演算部5から出力された出力値R1から液体の漏れの有無を判定する漏液判定部6とを含む。漏液判定部6は、入力部を操作することにより、出力値R1と比較して漏れの有無を判定するための閾値を設定できる。同様に、漏液判定部6は、既に漏れたと判定された後に漏れが無くなったと判定するための別の閾値を設定できる。
【0022】
電力供給部4は、外部電源との接続を行うプラグ8と、プラグ8とケーブル10で電気的に接続されるAC/DCコンバータ9と、を有している。AC/DCコンバータ9は、プラグ8を介して外部から給電されるAC100VをDC12Vに変換する。また、AC/DCコンバータ9は、本体部3とケーブル10で電気的に接続され、DC12Vを本体部3に給電する。
【0023】
続いて、漏液検知センサ7による電気抵抗の測定方法の一例について説明する。ただし、以下の測定方法は一例に過ぎず、下記の秒数等は適宜変更してもよく、異なる測定方法によって測定を行ってもよい。
【0024】
漏液検知センサ7の電極2a,2bには、電位5Vと0Vとを1.0秒周期で繰り返す矩形波がそれぞれ印加されている。電極2a,2bは、それぞれ5Vの電圧が0.5秒間印加された後、0.5秒間0Vとされる。また、電極2a,2bは、印加される矩形波の位相が0.5秒分ずれており、電極2aに5Vの電圧が印加されているときは電極2bは0Vであり、一方、電極2aが0Vのときは電極2bに5Vの電圧が印加されている。
【0025】
漏液検知センサ7は、電極2aに5Vの電圧が印加された状態での電気抵抗を出力値R1として漏液判定部6に出力する。同様に、電極2bに5Vの電圧が印加された状態での電気抵抗を、次の出力値R1として漏液判定部6に出力する。このように、電極2a,2b間の電気抵抗の出力値R1が、1.0秒毎に漏液判定部6に出力される。
【0026】
続いて、漏液判定部6が設定する各種閾値について説明する。
【0027】
漏液判定部6では、
図2及び
図3に示すように、漏液検知センサ7から出力された電極2a,2b間の電気抵抗と比較して漏水の有無を判定するための閾値として、第1の閾値S1と、第2の閾値S2と、を設定する。なお、
図2及び
図3において、縦軸は電気抵抗を表し、横軸は時間の経過を表す。また、図中に四角形で表した報知期間Aは、漏液検知器1が漏水を検知し、漏水があった旨を本体部3に配置されたブザー等が報知している期間を表している。
【0028】
本実施形態において、第1の閾値S1は、変動値S1a及び基準値S1bのいずれか一方の値に設定され、ここでは、変動値S1a及び基準値S1bのうち、より小さい方の値が第1の閾値S1として採用される。第1の閾値S1の候補となる変動値S1aは、
図2及び
図3に示すように、漏液検知センサ7から漏液判定部6へ出力された出力値R1に基づいて変動する。従って、変動値S1aが第1の閾値S1として採用された場合、第1の閾値S1は、出力値R1に応じて変動する。ここで、変動値S1a(第1の閾値S1)は、出力値R1のリアルタイムな変動に基づいて完全に追従するように変動しない値であることが好ましい。すなわち、
図2に示すように、出力値R1は、漏れが発生していない状況でも小刻みに変動しており、漏れと判定すべき状況では急激に大きく変動する(Aで示す箇所における出力値R1を参照)。変動値S1a(第1の閾値S1)が出力値R1に完全に追従するものである場合、漏れが発生して出力値R1が急激に変動しても、変動値S1a(第1の閾値S1)もそれに追従して変動することで、漏れの検知が遅れてしまう。従って、変動値S1a(第1の閾値S1)は、出力値R1の変動を平滑化・平均化した値に追従するように設定されることが好ましい。
【0029】
例えば、変動値S1a(第1の閾値S1)は、出力値R1の移動平均R2に応じて変動してよい。変動値S1a(第1の閾値S1)は、出力値R1の移動平均R2から所定の値を減算した値であってもよく、移動平均R2に所定の係数を掛けあわせた値であってもよい。また、移動平均R2として、修正移動平均、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均などを採用してよい。例えば、変動値S1a(第1の閾値S1)を出力値R1の移動平均R2に基づいて設定する場合、漏液判定部6は、出力値R1に基づいて以下の式(1)により移動平均R2を算出する。ただし、R1(n)はn番目の出力値、R2(n)はn番目の移動平均である。また、αは移動平均の滑らかさを示す係数であり、0以上1以下の値である。漏液判定部6は、移動平均R2から所定の値を引いた値を変動値S1a(第1の閾値S1)として設定する。
R2(n)=α×R1(n)+(1−α)×R2(n−1)…(1)
ただし、
R2(0)=R1(0)
【0030】
基準値S1b(第1の閾値S1)は、漏れが無いと判定してもよい安全基準として設定される値である。すなわち、基準値S1b(第1の閾値S1)は、少なくとも出力値R1が当該基準値S1bに到達していない限りは、漏れが無いと判定しても問題のない値に設定される。基準値S1b(第1の閾値S1)は、後述する第2の閾値S2に所定の値を加算した値として設定されてよい。例えば、基準値S1b(第1の閾値S1)は、電極部2の電極2a、2b間が乾燥した状態での変動値S1aよりも低い値に設定されている。本実施形態において、基準値S1bは、経時的に変動しない。なお、基準値S1b(第1の閾値S1)は、第2の閾値S2に所定の係数を掛けあわせた値であってもよい。また、基準値S1b(第1の閾値S1)として、第2の閾値S2とは無関係に定められた値を採用してもよい。また、基準値S1b(第1の閾値S1)は、出力値R1とは無関係なパターンによって経時的に変化するような値であってもよい。例えば、基準値S1b(第1の閾値S1)は、所定の傾きで増大又は減少するような値であってもよい。なお、
図2及び
図3に示す例では、変動値S1aが基準値S1bよりも大きいときには第1の閾値S1として基準値S1bが採用され、変動値S1aが基準値S1b以下となったタイミングで、第1の閾値S1として変動値S1aが採用されている。しかし、第1の閾値S1が基準値S1bから変動値S1aへ切り替わるタイミングは特に限定されない。例えば、漏液検知センサ7が周囲に存在する液体の量を検知し始めてから所定の期間経過したら、自動的に変動値S1aを第1の閾値S1としてよい。
【0031】
第2の閾値S2は、
図2及び
図3に示すように、出力値R1によらない所定の値に設定される。出力値R1は経時的な要因によって徐々に低下していくが、例えば
図2のピークP1のように急激に出力値R1が低下しない場合は、出力値R1が上述の第1の閾値S1に到達しない。この場合、漏れが発生していると判断すべき水準にまで出力値R1が低下しているにも関わらず、急激に出力値R1が低下していないことによって、第1の閾値S1では漏れを検知することができない可能性がある。第2の閾値S2は、このような状況下において、第1の閾値S1に関わらず、漏れの発生を検知するための閾値である。第2の閾値S2は、出力値R1がその値にまで到達したら(経時的な要因や、突発的な出力値R1の変動などには関わらず)ただちに漏れが発生していると判断可能な程度の、低い値に設定される。例えば、第2の閾値S2は、少なくとも、電極部2の電極2a、2b間が乾燥した状態での変動値S1aよりも低い値に設定され、基準値S1bよりも低い値に設定される。第2の閾値S2は、経時的に変動しないが、例えば本体部3に設けられた入力部であるロータリースイッチを操作することによって自由に設定される。
【0032】
また、漏液判定部6では、第1の閾値S1,第2の閾値S2によって漏水があると判定された後に漏水が無くなったと判定するための復帰閾値S3,S4を設定する。出力値R1が第1の閾値S1以下となることで漏水があると判定された場合、復帰閾値S3が有効となる。一方、出力値R1が第2の閾値S2以下となることで漏水があると判定された場合、復帰閾値S4が有効となる。
【0033】
復帰閾値S3は、
図2に示すように、出力値R1が第1の閾値S1に到達したときの第1の閾値S1の値(すなわち、漏れが検知された場合における出力値R1)より大きい値に設定される。例えば、復帰閾値S3は、出力値R1が第1の閾値S1に到達したときの第1の閾値S1の値に所定の値C1を加算した値であってもよい。また、復帰閾値S3は、出力値R1が第1の閾値S1に到達したときの第1の閾値S1の値に所定の係数を掛けあわせた値であってもよい。このように、復帰閾値S3は、第1の閾値S1に基づいて設定される。特に、
図2に示すように、第1の閾値S1として変動値S1aが採用されている領域にて漏れが検知された場合は、変動する第1の閾値S1に基づいて復帰閾値S3が設定されることとなる。この場合は、復帰閾値S3は一定の値に定められるのではなく、変動する第1の閾値S1に応じ、復帰閾値S3も変動した値に設定されることとなる。なお、使用期間の長さに応じて、復帰閾値S3を経時的に変化させてもよい。
【0034】
復帰閾値S4は、
図3に示すように、第2の閾値S2の値より大きい値に設定される。例えば、復帰閾値S4は、第2の閾値S2の値に所定の値C2を加算した値であってもよい。また、復帰閾値S4は、第2の閾値S2の値に所定の係数を掛けあわせた値であってもよい。なお、使用期間の長さに応じて、復帰閾値S4を経時的に変化させてもよい。
【0035】
続いて、漏液判定部6が、第1の閾値S1に基づいて漏水があったと判定する場合について、
図2を参照しながら説明する。漏液検知器1は、上述した通り、例えば電極部2の周囲への汚れの付着等の経時的な要因により、徐々に電気抵抗の出力値R1が変動する。すなわち、絶縁体である空気を介して電極2aと電極2bとが離間して配置された状態から、導電性の水等が埃に混ざって電極2a,2b間に入り込み、電極2a,2b間の電気抵抗の出力値R1及び移動平均R2が徐々に低下する。この場合、移動平均R2の低下に応じて第1の閾値S1(変動値S1a)も徐々に低下するため、(実際は漏水していないにも関わらず)埃の堆積等の経時的な要因で出力値R1が低下することによる漏水の誤検知を抑制できる。一方、
図2においてピークP1として示すように、実際に漏水が発生した場合、電極2a,2b間が導電性の水等によって短絡するため、出力値R1は急激に減少する。従って、出力値R1の移動平均R2の減少に応じて第1の閾値S1(変動値S1a)が減少するより早く、出力値R1が第1の閾値S1(変動値S1a)に到達する。これにより、漏液判定部6は、漏水があったと判定し、ブザー等によってユーザに報知する。その後、ユーザが電極部2の周囲に漏れた液体を拭き取る等した場合、電極2a,2b間の電気抵抗は再度増大し、出力値R1は増大する。そして、出力値R1が第1の閾値S1に到達したときの第1の閾値S1の値に所定の値C1を加算した値、すなわち復帰閾値S3まで出力値R1が増大すると、漏液判定部6は、漏水が無くなったと判定し、ブザー等による報知を停止する。
【0036】
一方、第1の閾値S1として基準値S1bが採用される領域では、
図2においてピークP2として示すように、(漏水以外の原因で)出力値R1が大きく変動して変動値S1aに到達したとしても、出力値R1は未だ大きい値であるため漏水があったと判断する必要はない。このような場合、本実施形態によれば、出力値R1は、第1の閾値S1として採用される基準値S1bには到達していないため、漏水があったとは判断されないため誤検知を抑制できる。
【0037】
また、漏液判定部6が、第2の閾値S2に基づいて漏水があったと判定する場合について、
図3を参照しながら説明する。上述したように、経時的な要因によって電極2a,2b間の電気抵抗の出力値R1及び移動平均R2が徐々に低下する場合、移動平均R2の低下に応じて第1の閾値S1(変動値S1a)も徐々に低下する。このため、
図2においてピークP2として示すようなピークが出力値R1に発生しない場合、出力値R1が第1の閾値S1(変動値S1a)以下になることがなく、漏液判定部6は漏水があったと判定しない。しかし、出力値R1が、実際に漏水があった場合の出力値R1と同等の値まで低下した場合は、出力値R1が第1の閾値S1(変動値S1a)に到達していなくても漏水があったと判定した方がよい。そこで、経時的に変動しない第2の閾値S2を設定することで、出力値R1が徐々に低下したため第1の閾値S1(変動値S1a)に到達しない場合であっても、出力値R1が第2の閾値S2に到達することで漏水があったと判定することができる。この場合、漏液判定部6は、漏水があったと判定し、ブザー等によってユーザに報知する。その後、ユーザが電極部2の周囲に漏れた液体を拭き取る等した場合、電極2a,2b間の電気抵抗は再度増大し、出力値R1は増大する。そして、第2の閾値S2の値に所定の値C2を加算した値、すなわち復帰閾値S4まで出力値R1が増大すると、漏液判定部6は、漏水が無くなったと判定し、ブザー等による報知を停止する。
【0038】
以上説明したように、漏液検知器1では、漏液検知センサ7から出力された、周囲に存在する液体の量に応じた電気抵抗の出力値R1と、出力値R1に応じて変動する第1の閾値S1と、を漏液判定部6によって比較し、液体の漏れの有無を判定する。従って、漏液検知センサ7の周囲への汚れの付着等の経時的な要因により徐々に出力値R1が変動した場合には、出力値R1の変動に応じて第1の閾値S1も徐々に変動するため、液体が漏れているとの誤検知を抑制できる。以上によって、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制することができる。
【0039】
また、第1の閾値S1は、出力値R1の移動平均に応じて変動する。出力値R1が経時的な要因によって変動するときは、出力値R1は徐々に変動する。この場合、出力値R1の移動平均R2に応じて変動する変動値S1aと、出力値R1との差が維持される。従って、経時的な要因によって変動した出力値R1による誤検知を抑制できる。一方、出力値R1が液体の漏れによって変動するときは、出力値R1は急激に変動する。この場合、出力値R1の移動平均R2に応じて滑らかに変動する変動値S1aに対し、出力値R1は変動が早い。従って、液体の漏れがあったときは変動値S1aに出力値R1が到達するため、液体の漏れを精度良く検知できる。以上によって、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知をより精度良く抑制できる。
【0040】
また、出力値R1は、電気抵抗の測定値である。このため、汚れの付着等の経時的な要因による出力値R1の変動と、液体が漏れた場合の出力値R1の変動とを精度良く判定できるため、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる。
【0041】
また、漏液判定部6は、出力値R1によらず、予め所定の値に定められる第2の閾値S2を更に設定し、出力値R1と第1の閾値S1及び第2の閾値S2とを比較することで液体の漏れの有無を判定する。出力値R1が経時的な要因によって変動するときは、出力値R1は徐々に変動する。この場合、出力値R1の移動平均R2に応じて変動する変動値S1aと、出力値R1との差が維持される。一方、経時的な要因によって出力値R1が徐々に変動し続けた結果、出力値R1の低下の度合いが一定以上となるときは、液体が漏れたものと判定すべき場合がある。しかしながら、変動値S1aを出力値R1の変動に応じて際限なく変動させるとすると、出力値R1の低下の度合いが一定以上となるにも関わらず変動値S1aには到達せず、液体が漏れたものと判定されない。ここで、出力値R1が変動値S1aに到達していなくても液体が漏れたものと判定することができる閾値として第2の閾値S2を設定することによって、第1の閾値S1によらず適切なタイミングで液体の漏れを検知することができる。以上によって、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知をより精度良く抑制できる。
【0042】
また、第1の閾値S1は、漏液検知センサ7が周囲に存在する液体の量を検知し始めてから所定の期間内は出力値R1によらず一定である。このため、漏液検知センサ7が出力値R1を出力し始めた直後の、出力値R1の誤差が大きい期間内において、漏液検知センサ7の周囲に液体が漏れていないにも関わらず液体が漏れているとの誤検知をすることを抑制できる。
【0043】
また、第2の閾値S2は、調節可能である。このため、汚れの付着等の経時的な要因による出力値R1の変動と、液体が漏れた場合の出力値R1の変動とを精度良く判定できるため、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制できる。
【0044】
また、漏液判定部6は、液体の漏れが有ると判定した後において、漏れが無くなったと判定するための復帰閾値S3を更に設定し、出力値R1と復帰閾値S3とを比較することで漏れが無くなったか否かを判定し、復帰閾値S3は、第1の閾値S1に応じて変動する。このため、変動する第1の閾値S1に対して適切な復帰閾値S3を設定することが可能となる。これにより、漏液検知センサ7の周囲に液体が漏れた場合、漏れた液体を取り除くことで、液体の漏れが無くなったことを精度良く判定することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る漏液検知方法では、漏液検知器1において、漏液検知センサ7は、離間して配置された電極2a,2b間の電気抵抗を測定し、出力値R1を出力する。また、漏液判定部6は、漏液検知センサ7から出力された出力値R1と、出力値R1に応じて変動する第1の閾値S1とを比較する。そして、出力値R1と第1の閾値S1との比較に基づいて、漏水の有無を判定する。これにより、漏液検知センサ7から出力された、周囲に存在する液体の量に応じた出力値R1と、出力値R1に応じて変動する第1の閾値S1と、を漏液判定部6によって比較し、液体の漏れの有無を判定する。従って、漏液検知センサ7の周囲への汚れの付着等の経時的な要因により徐々に出力値R1が変動した場合には、出力値R1の変動に応じて第1の閾値S1も徐々に変動するため、液体が漏れているとの誤検知を抑制できる。以上によって、漏液検知器1の長期間の使用に関わらず誤検知を抑制することができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、漏液検知センサ7は離間して配置された電極2a,2bを有し、電極2a,2b間の電気抵抗を測定することで、水等の導電性の液体の漏れを検知する。しかしながら、漏液検知センサ7は、例えば電極間の静電容量、又は光の透過率を出力値R1として出力してもよい。これにより、油等の非導電性の液体の漏れを検知することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、出力値R1を電極2a,2b間の電気抵抗としたため、漏液判定部6は、出力値R1が第1の閾値S1又は第2の閾値S2を下回った場合に漏れがあったと判定する。しかしながら、例えば、出力値R1として電極2a,2b間の電気抵抗に演算処理を行った値を用いる場合、又は出力値R1として電気抵抗以外を用いる場合等において、漏液判定部6は、出力値R1が第1の閾値S1又は第2の閾値S2を上回った場合に漏れがあったと判定することとしてもよい。