特許第6395478号(P6395478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395478ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395478
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/02 20060101AFI20180913BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B32B37/02
   B32B27/30 A
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-140158(P2014-140158)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-33851(P2015-33851A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-144142(P2013-144142)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-144143(P2013-144143)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-144144(P2013-144144)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】中島耕平
(72)【発明者】
【氏名】山田一貴
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−294261(JP,A)
【文献】 特開2009−279806(JP,A)
【文献】 特開2012−056252(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129766(WO,A1)
【文献】 特開2010−085978(JP,A)
【文献】 特開2010−105188(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00915105(EP,A1)
【文献】 特開平11−255923(JP,A)
【文献】 特開2010−017874(JP,A)
【文献】 特開2012−177900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層側から順に、(α)機能層、(γ)アンカーコート、及び(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層を有する積層体の製造方法であって、
(i)上記(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを
(A)押出機とTダイとを備える装置を用い、Tダイから、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを、連続的に押出す工程;
(B)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを供給投入し、押圧する工程;及び、
(C)フィルムを上記第一の鏡面体に抱かせて次の移送ロールへと送り出す工程;
を含み、ここで
(D)上記第一の鏡面体の表面温度は上記第二の鏡面体の表面温度よりも高くされている;
方法により製膜する工程;
(ii)上記工程(i)で製膜された上記(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、上記(α)機能層との積層面の上に、上記(γ)アンカーコートを形成する工程;
(iii)上記工程(ii)で形成された上記(γ)アンカーコートの面の上に上記(α)機能層を形成する工程;
を含み、ここで
上記(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;芳香族ポリカーボネート系樹脂層;第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、この順に直接積層されたポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂多層積層フィルムであり;
上記(α)機能層は、光拡散機能、反射防止機能、耐汚染性機能、防曇性機能、抗菌性機能、熱伝導性機能、及び帯電防止機能、からなる群から選択される1以上の機能を有し、
上記積層体は全光線透過率が80%以上である
方法。
【請求項2】
上記工程(ii)が、
(ii−1)上記(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、上記(α)機能層との積層面にコロナ放電処理を施し、濡れ指数を50mN/m以上にする工程;
(ii−2)上記(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、上記工程(ii−1)においてコロナ放電処理を施された面の上に上記(γ)アンカーコートを形成する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記アンカーコートが、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記アンカーコートが、熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度が150℃以上である請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
画像表示装置部材の製造方法であって、
(1)請求項1〜の何れか1項に記載の方法で積層体を製造する工程;
(2)上記工程(1)で得られた積層体を使用して画像表示装置部材を製造する工程;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂積層体に関する。更に詳しくは、機能層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層との密着強度に優れ、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることのできるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイ等の画像表示装置上に設置され、表示を見ながら指やペン等でタッチすることにより入力を行うことのできるタッチパネルが普及している。
【0003】
従来、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板には、耐熱性、寸法安定性、高透明性、高表面硬度、及び高剛性などの要求特性に合致することから、ガラスを基材とする部材が使用されてきた。一方、ガラスには、耐衝撃性が低く割れ易い、加工性が低い、ハンドリングが難しい、比重が高く重い、ディスプレイの曲面化やフレキシブル化の要求に応えることが難しいなどの問題がある。そこでガラスに替わる材料が盛んに研究されており、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、及びノルボルネン系重合体などの透明樹脂フィルム基材の表面に表面硬度と耐擦傷性に優れるハードコートを形成したハードコート積層フィルムが多数提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、その耐熱性や寸法安定性は不十分である。
【0004】
特に透明導電性基板の代替については、透明導電膜を形成する際にプロセス温度を高く保って透明導電膜の結晶化度を高め、表面抵抗を低くしたいところ、透明樹脂フィルム基材の耐熱性が不充分であるため、プロセス温度を上げることができない;透明樹脂フィルム基材の耐熱性が不充分であるため、透明導電性積層フィルムの上に更に薄膜トランジスタを形成することはできない;などの理由によりハードコート積層フィルムの採用は進んでいない。透明導電性基板には専らガラスが使用されているというのが現状である。
【0005】
そこで本発明者は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を透明樹脂フィルム基材として用いることを考えた。ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂であり、例えば、特許文献2に開示されている。しかし、通常のTダイ押出法では、表面平滑性、透明性、外観に優れたポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得ることはできなかった。また特許文献3には、「膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好なアクリルフィルムおよびその製造方法」が開示されている。ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂はアクリル系樹脂としての特性も有することから、本発明者は特許文献3の技術の適用を試みたが、やはり表面平滑性、透明性、外観に優れたポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得ることはできなかった。また本発明者が、試験したところ、機能層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムとの密着強度は、機能層の形成に用いる材料によっては、十分に満足のできるものにならないことのあることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−208896号公報
【特許文献2】特表2011−519999号公報
【特許文献3】特開2009−292871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、機能層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層との密着強度に優れ、画像表示装置(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)の部材、例えば、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることのできる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の積層体が上記課題を達成できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、表層側から順に、(α)機能層と(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層とを有し、上記(α)機能層は、光拡散機能、反射防止機能、耐汚染性機能、防曇性機能、抗菌性機能、熱伝導性機能、及び帯電防止機能、からなる群から選択される1以上の機能を有し、全光線透過率が80%以上であることを特徴とする積層体である。
【0010】
本発明の第2の発明は、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムが、下記特性(イ)、及び(ロ)を満たすことを特徴とする第1の発明に記載の積層体である。
(イ)全光線透過率 85%以上。
(ロ)ヘーズ 3.0%以下。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、少なくとも上記(α)機能層との積層面側の濡れ指数が、50mN/m以上であることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の積層体である。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、少なくとも上記(α)機能層との積層面側の上に、更にアンカーコートを有することを特徴とする第1〜3の発明の何れか1に記載の積層体である。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記アンカーコートが、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする第4の発明に記載の積層体である。
【0014】
本発明の第6の発明は、上記アンカーコートが、熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤を含むことを特徴とする第4の発明に記載の積層体である。
【0015】
本発明の第7の発明は、第1〜6の発明の何れか1に記載の積層体の、画像表示装置部材としての使用である。
【0016】
本発明の第8の発明は、第1〜6の発明の何れか1に記載の積層体を含む画像表示装置部材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層体は、機能層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層との密着強度に優れ、画像表示装置に要求される1以上の機能を有し、透明性、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れ、色調も良好である。そのため液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ等の画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、例えば、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(α)機能層
本発明の積層体は、(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層の表面側(画像表示装置の表となる側)に(α)機能層を有する。上記層αは、光拡散機能、反射防止機能、耐汚染性機能、防曇性機能、抗菌性機能、熱伝導性機能、及び帯電防止機能、からなる群から選択される1以上の機能を有する。
【0019】
上記層αの有する機能は、1に限らず2以上であってもよい。層αが2以上の機能を有する場合、1つの層で2以上の機能を有するようにしてもよく、1つの層には1つの機能を持たせ、これらを積層することにより2以上の機能を有するようにしてもよい。また2以上の層を積層することにより1又は2以上の機能を有するようにしてもよい。
【0020】
光拡散機能
上記層αに光拡散機能を付与する場合について説明する。層αに光拡散機能を付与することにより、透過型画像表示装置において、画像が拡大投影された場合にも、輝度が画面の端部と中央部とで異なることなく、良好な画像が表示されるようになる。
【0021】
上記層αに、光拡散機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、硬化性樹脂組成物と透光性微粒子とを含む塗料を用いて層αを形成する方法;互いに非相溶の2以上の硬化性樹脂の混合物を含む硬化性樹脂組成物を用い、層αを形成する際に、ウェット塗膜を乾燥する工程において、相分離を起こさせる方法;層αの未硬化塗膜に、微細な凹凸を有する型(例えば、表面に微細凹凸を形成したフィルムや表面に微細凹凸加工を施したエンボスロールなどをあげることができる。)を押圧する方法;表面に微細凹凸を形成したフィルムの上に、層α形成用の塗料を塗布硬化し、形成された層αを、上記表面に微細凹凸を形成したフィルムから剥離し、層βの上に転写する方法;及びこれらの2以上を組み合わせる方法;などをあげることができる。
【0022】
上記層αに、光拡散機能の中でも、特に防眩性機能を付与する場合について更に説明する。層αに、防眩性機能を付与することにより、上述の効果に加えて、画像表示装置、特に高精細な画像表示装置の画像に見られるシンチレーション(ぎらつき)を低減することができる。
【0023】
上記層αに、防眩性機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。具体的な方法については、防眩性機能の上位概念である光拡散機能の付与方法の説明において上述した。
【0024】
上記硬化性樹脂組成物と透光性微粒子とを含む塗料を用いて層αを形成する方法について説明する。
【0025】
上記硬化性樹脂組成物は、熱や活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、透明性に優れていること、好ましくは透明性と色調に優れていること以外は、特に制限されず、任意の硬化性樹脂組成物を用いることができる。好ましい硬化性樹脂組成物としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。
【0026】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物をあげることができる。
【0027】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0029】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記透光性微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、含弗素系樹脂、及びアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂微粒子をあげることができる。透光性微粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
上記透光性微粒子の平均粒子径は、シンチレーション(ぎらつき)低減効果を得る観点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上である。また透明性の観点から、通常20μm以下、好ましくは10μm以下である。また平均粒子径の異なる2種以上の透光性微粒子を用いることも好ましい。
【0032】
なお本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0033】
上記透光性微粒子の配合量は、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して、シンチレーション(ぎらつき)低減効果を得る観点から、通常1質量部以上、好ましくは3質量部以上である。また透明性の観点から、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下である。
【0034】
上記透光性微粒子と上記硬化性樹脂組成物との屈折率の差は、シンチレーション(ぎらつき)低減効果を得る観点から、通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。また所謂白ボケを防止し、画像のコントラストを良好に保つ観点から、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0035】
なお本明細書において、上記透光性微粒子の屈折率は、温度20℃において、有機溶媒透明分散液を調整し、ナトリウムD線(波長589.3nm)の屈折率を測定した測定値を、透光性微粒子と溶媒の比重から計算して、透光性微粒子100体積%に外挿して算出した値である。また上記硬化性樹脂組成物の屈折率は、測定サンプルとして硬化性樹脂組成物のみからなる硬化塗膜を作成し、温度20℃において、ナトリウムD線(波長589.3nm)を使用し、JIS K 7142:2008のA法に従い測定した値である。
【0036】
また上記硬化性樹脂組成物と上記透光性微粒子とを含む塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラー(透光性微粒子を除く。)などの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0037】
また上記硬化性樹脂組成物と上記透光性微粒子とを含む塗料には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は塗料の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
【0038】
上記硬化性樹脂組成物と上記透光性微粒子とを含む塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
【0039】
上記硬化性樹脂組成物と上記透光性微粒子とを含む塗料を用いて、上記防眩性機能を有する層αを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0040】
上記層αに、防眩性機能を付与する場合の、層αの厚みは、特に制限されないが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmであってよい。
【0041】
反射防止機能
上記層αに反射防止機能を付与する場合について説明する。層αに、反射防止機能を付与することにより、画像表示装置、特に高精細な画像表示装置への外光の映り込みによる視認性の低下を抑制することができる。
【0042】
上記層αに、反射防止機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、上記層βの上に高屈折率層(屈折率1.54〜2.40程度の相対的に屈折率の高い層)と低屈折率層(屈折率1.33〜1.50程度の相対的に屈折率の低い層)の複数層を形成する方法;上記層βの上に低屈折率層を形成する方法;などをあげることができる。
【0043】
なおポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの屈折率は、例えば、下記A−1は1.54であり、上記層βを高屈折率層として反射防止機能が発現するようにしてもよい。
【0044】
ここで屈折率は、温度20℃において、ナトリウムD線(波長589.3nm)を使用し、JIS K 7142:2008のA法に従い測定した値である。
【0045】
上記層βの上に高屈折率層と低屈折率層の複数層を形成する方法について説明する。
【0046】
上記高屈折率層は、特に制限されず、公知の高屈折率層を適宜形成することができる。例えば、硬化性樹脂組成物と金属酸化物微粒子とを含む塗料を用いて形成することができる。
【0047】
上記硬化性樹脂組成物については、上記層αに防眩性機能を付与する場合の説明において上述した。
【0048】
上記金属酸化物微粒子としては、例えば、アンチモン酸亜鉛(酸化亜鉛と五酸化二アンチモンとの複合金属酸化物)、アンチモンドープ酸化錫(少量の酸化アンチモンを含有する酸化錫)、錫ドープ酸化インジウム(少量の錫や酸化錫を含有する酸化インジウム)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、及び酸化ジルコニウムなどの微粒子をあげることができる。金属酸化物微粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0049】
なおアンチモン酸亜鉛、アンチモンドープ酸化錫、及び錫ドープ酸化インジウムなどは高い導電性を有するため、これらを上記金属酸化物微粒子として用いる場合には、帯電防止機能も付与することができる。
【0050】
上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は、高屈折率を安定的に発現させる観点から、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また透明性の観点から、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。平均粒子径の測定方法については上述した。
【0051】
上記金属酸化物微粒子の配合量は、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して、用いる金属酸化物微粒子の比重にもよるが、高屈折率を安定的に発現させる観点から、通常50質量部以上、好ましくは100質量部以上である。また透明性の観点から、通常600質量部以下、好ましくは500質量部以下である。
【0052】
また上記高屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記金属酸化物微粒子とを含む塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラー(金属酸化物微粒子を除く。)などの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0053】
また上記高屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記金属酸化物微粒子とを含む塗料には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は塗料の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
【0054】
上記高屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記金属酸化物微粒子とを含む塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
【0055】
上記硬化性樹脂組成物と上記金属酸化物微粒子とを含む塗料を用いて、上記高屈折率層を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0056】
上記高屈折率層の厚みは、特に制限されないが、通常1〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは50〜250nmであってよい。
【0057】
上記低屈折率層は、特に制限されず、公知の低屈折率層を適宜形成することができる。例えば、硬化性樹脂組成物と低屈折率微粒子とを含む塗料を用いて形成することができる。
【0058】
上記硬化性樹脂組成物については、上記層αに防眩性機能を付与する場合の説明において上述した。
【0059】
上記低屈折率微粒子としては、例えば、ポリシロキサン、含弗素系樹脂、コロイダルシリカ、中空シリカ、及び弗化マグネシウムなどの微粒子をあげることができる。低屈折率微粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
上記低屈折率微粒子の平均粒子径は、低屈折率を安定的に発現させる観点から、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また透明性の観点から、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。平均粒子径の測定方法については上述した。
【0061】
上記低屈折率微粒子の配合量は、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して、用いる低屈折率微粒子の比重にもよるが、低屈折率を安定的に発現させる観点から、通常10質量部以上、好ましくは20質量部以上である。また透明性の観点から、通常200質量部以下、好ましくは150質量部以下である。
【0062】
また上記低屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記低屈折率微粒子とを含む塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラー(低屈折率微粒子を除く。)などの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0063】
また上記低屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記低屈折率微粒子とを含む塗料には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は塗料の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
【0064】
上記低屈折率層を形成するための上記硬化性樹脂組成物と上記低屈折率微粒子とを含む塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
【0065】
上記硬化性樹脂組成物と上記屈折率微粒子とを含む塗料を用いて、上記低屈折率層を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0066】
上記低屈折率層の厚みは、特に制限されないが、通常1〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは50〜250nmであってよい。
【0067】
耐汚染性機能
上記層αに耐汚染性機能を付与する場合について説明する。層αに耐汚染性機能を付与することにより、例えば、油性ペン、水性ペン、コーヒー、紅茶、スキンクリーム、及び指紋(皮脂)などの汚れを付着し難く、拭取りを容易にすることができる。なお本明細書において、「耐汚染性」の用語は、防汚性、耐指紋性などを含む用語として使用する。
【0068】
上記層αに耐汚染性機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、含弗素化合物、重合性官能基含有含弗素化合物、ポリエーテル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリカ微粒子、及び脂肪分解酵素などの公知の耐汚染性向上剤の1種又は2種以上の混合物を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成する方法;任意のフィルム基材上に、上記耐汚染性向上剤を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成し、形成された層αを、上記フィルム基材から剥離し、層βの上に転写する方法;などをあげることができる。
【0069】
防曇性機能
上記層αに防曇性機能を付与する場合について説明する。層αに防曇性機能を付与することにより、浴室等の高湿度な環境においても、画像表示装置の表面に湯気が付着して、あるいは水蒸気が画像表示装置の表面において凝結して曇りを生じることなく、画像表示装置を使用することができる。
【0070】
上記層αに防曇性機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホニル酸基、及びアミノ基などの親水性官能基を有する重合性モノマー、及びこれらの1種以上からなる重合体;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリビニルアセタールなどのポリエーテルポリオール系樹脂;アンモニウム塩、グリセリン酸エステル類等の界面活性剤;などの1種又は2種以上の混合物を含む防曇性機能層形成用材料を用いて層αを形成する方法などをあげることができる。また任意のフィルム基材上に、上記防曇性機能層形成用材料を用いて層αを形成し、形成された層αを、上記フィルム基材から剥離し、層βの上に転写してもよい。
【0071】
抗菌性機能
上記層αに抗菌性機能を付与する場合について説明する。層αに抗菌性機能を付与することにより、病院、老人ホ―ム、及び保育園などの細菌感染症対策の必要な施設において、画像表示装置、特にタッチパネルを共同使用することによる感染症リスクを低減することができる。
【0072】
上記層αに抗菌性機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、金、銀、銅、亜鉛、白金、アンチモン、ニッケル、アルミニウム、及びマンガン等の1種以上の金属イオンや、これら金属イオンを配位してなる金属錯体を、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、及び酸化チタン等の担体に担持させた抗菌剤;及びフェノール系抗菌剤などの公知の抗菌剤の1種又は2種以上の混合物を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成する方法などをあげることができる。また任意のフィルム基材上に、上記抗菌剤を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成し、形成された層αを、上記フィルム基材から剥離し、層βの上に転写してもよい。
【0073】
熱伝導性機能
上記層αに熱伝導性機能を付与する場合について説明する。層αに熱伝導性機能を付与することにより、熱による画像表示装置の誤作動等を抑制することができる。なお本明細書において、「熱伝導性」の用語は放熱性、伝熱性などを含む用語として使用する。
【0074】
上記層αに、熱伝導性機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、及びマグネシウムなどの良熱伝導性金属の極細線;カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどの熱伝導性カーボン;などの熱伝導性フィラーの1種又は2種以上の混合物を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成する方法などをあげることができる。また任意のフィルム基材上に、上記熱伝導性フィラーを含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成し、形成された層αを、上記フィルム基材から剥離し、層βの上に転写してもよい。
【0075】
帯電防止機能
上記層αに帯電防止機能を付与する場合について説明する。上記層αに、帯電防止機能を付与することにより、静電気による画像表示装置の誤作動等を抑制することができる。
【0076】
上記層αに、帯電防止機能を付与する方法は、透明性に優れた積層体を得ることができる限り、好ましくは透明性や色調に優れた積層体を得ることができる限り、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、及びニッケルなどの良導電性金属の極細線;カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどの導電性カーボン;などの導電性フィラーの1種又は2種以上の混合物を含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成する方法などをあげることができる。また任意のフィルム基材上に、上記導電性フィラーを含む硬化性樹脂組成物を用いて層αを形成し、形成された層αを、上記フィルム基材から剥離し、層βの上に転写してもよい。
【0077】
(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層
本発明の積層体は、(β)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層を有する。層βはポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムからなる層である。透明樹脂フィルム基材としてポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを用いることにより、透明性、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れ、色調も良好な積層体になる。なお本明細書において、ポリ(メタ)アクリルイミドとは、ポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミドの意味である。
【0078】
上記層βとして用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0079】
また上記層βとして用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0080】
更に上記層βとして用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0081】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得るために用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、透明性や色調に優れたフィルムを得ることができる限り、特に制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。好ましいポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い測定)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましいポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、150℃以上のものが好ましい。より好ましくは170℃以上である。
【0082】
ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「ACRYMID TT70(商品名)」などをあげることができる。
【0083】
また上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
【0084】
また本発明の積層体に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の単層フィルムに限定されない。2以上のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の単層フィルムの積層フィルムを用いてもよい。任意の他の樹脂フィルムとの多層積層フィルムを用いてもよい。
【0085】
上記多層積層フィルムの好ましいものとしては、例えば、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;芳香族ポリカーボネート系樹脂層;第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、この順に直接積層されたポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂多層積層フィルムをあげることができる。ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は表面硬度に優れているが、高い耐打抜加工性は有しないのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は耐打抜加工性に優れているが、高い表面硬度は有しない。そこで上記の層構成にすることにより、両者の長所を併せて、表面硬度と耐打抜加工性の何れにも優れた多層積層フィルムとなる。
【0086】
上記第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚みは、特に制限されないが、表面硬度を高く保つ観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上であってよい。上記第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚みは、特に制限されないが、耐カール性の観点から、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層と同じ層厚みであることが好ましい。上記芳香族ポリカーボネート系樹脂層の層厚みは、特に制限されないが、耐打抜加工性の観点から、通常20μm以上、好ましくは80μm以上、より好ましくは120μm以上であってよい。
【0087】
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層積層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常−5〜+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。
【0088】
上記第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂と、上記第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えばメルトマスフローレートやガラス転移温度の異なるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いても良いが、多層積層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
【0089】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0090】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、芳香族ポリカーボネート系樹脂層の耐衝撃性をより高めることができる。
【0091】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物をあげることができる。
【0092】
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
【0093】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いて上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを製膜する方法は、透明性や色調に優れたフィルムを得ることができる限り、特に制限されない。好ましい製膜方法としては、例えば、
(A)押出機とTダイとを備える装置を用い、Tダイから、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを、連続的に押出す工程;
(B)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを供給投入し、押圧する工程;
を含む方法をあげることができる。
【0094】
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムが、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂多層積層フィルムである場合の好ましい製膜方法としては、例えば、
(A’)押出機とTダイとを備える共押出装置を用い、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;芳香族ポリカーボネート系樹脂層;第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層;が、この順に直接積層された溶融フィルムを、Tダイから連続的に共押出する工程;
(B’)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂多層積層フィルムの溶融フィルムを供給投入し、押圧する工程;
を含む方法をあげることができる。
【0095】
上記押出機としては、任意のものを使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び、異方向回転二軸押出機などをあげることができる。
【0096】
上記共押出装置としては、制限されず任意のものを使用することができ、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、及びスタックプレート方式などの共押出装置をあげることができる。
【0097】
またポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂や芳香族ポリカーボネート系樹脂の劣化を抑制するため、押出機内を窒素パージすることも好ましい。
【0098】
更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂や芳香族ポリカーボネート系樹脂は吸湿性の高い樹脂であるため、製膜に供する前に、これを乾燥することが好ましい。また乾燥機で乾燥したポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂や芳香族ポリカーボネート系樹脂を、乾燥機から押出機に直接輸送し、投入することも好ましい。乾燥機の設定温度は、好ましくは100〜150℃である。
【0099】
上記Tダイとしては、任意のものを使用することが出来、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及び、コートハンガーダイなどをあげることができる。
【0100】
Tダイの温度は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを、連続的に押出す工程を安定的に行うために、少なくとも260℃以上に設定することが好ましい。より好ましくは270℃以上である。またポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の劣化を抑制するため、Tダイの温度は、350℃以下に設定することが好ましい。
【0101】
またリップ開度(R)と得られるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの厚み(T)との比(R/T)は、レタデーションが大きくならないようにする観点から、5以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。また比(R/T)は、押出負荷が過大にならないようにする観点から、1以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。
【0102】
上記第一の鏡面体としては、例えば、鏡面ロール、鏡面ベルトなどをあげることができる。上記第二の鏡面体としては、例えば、鏡面ロール、鏡面ベルトなどをあげることができる。
【0103】
上記鏡面ロールは、その表面が鏡面加工されたロールであり、金属製、セラミック製、シリコンゴム製などがある。また鏡面ロールの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
【0104】
上記鏡面ベルトは、その表面が鏡面加工された、通常は金属製のシームレスのベルトであり、例えば、一対のベルトローラー相互間に掛け巡らされて、循環するようにされている。また鏡面ベルトの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
【0105】
上記鏡面加工は、限定されず、任意の方法で行うことができる。例えば、微細な砥粒を用いて研磨することにより、上記鏡面体の表面の算術平均粗さ(Ra)を好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、十点平均粗さ(Rz)を好ましくは500nm以下、より好ましくは250nm以下にする方法をあげることができる。
【0106】
理論に拘束される意図はないが、上記の製膜方法で外観や光学特性の良好なポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムが得られるのは、第一鏡面体と第二鏡面体とで、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムが押圧されることにより、第一鏡面体及び第二鏡面体の高度に平滑な面状態がフィルムに転写され、ダイスジ等の不良箇所が修正されるためと考察できる。
【0107】
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第一鏡面体の表面温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。一方、フィルムに第一鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第一鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
【0108】
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第二鏡面体の表面温度は、好ましくは5℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは60℃以上、最も好ましくは100℃以上である。一方、フィルムに第二鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第二鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
【0109】
なお第一鏡面体の表面温度を第二鏡面体の表面温度よりも高くすることが好ましい。これはフィルムを第一鏡面体に抱かせて次の移送ロールへと送り出すためである。
【0110】
上記層βとして用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。ウェブハンドリング性の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。また高い剛性を必要としない用途では、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明の積層体をディスプレイ面板として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。またタッチパネルの薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。
【0111】
上記層βとして用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの、少なくとも上記(α)機能層との積層面側には、層αと層βとの接着強度を高めるため、層αを層βの上に形成する前に、コロナ放電処理を施すことが好ましい。コロナ放電処理に替えてアンカーコートを形成することも好ましい。コロナ放電処理を施した後、更にアンカーコートを形成することも好ましい。
【0112】
コロナ放電処理は、絶縁された電極と誘電体ロールとの間にフィルムを通し、高周波高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、フィルム表面を処理するというものである。このコロナ放電により酸素などがイオン化し、フィルム表面に衝突することにより、フィルム表面において、樹脂分子鎖の切断や樹脂分子鎖への含酸素官能基付加が起こり、上記層αやアンカーコートとの接着強度を向上させることができる。
【0113】
上記コロナ放電処理の単位面積、単位時間当たりの処理量(S)が、上記層αやアンカーコートとの接着強度を向上させるために十分であるか否かは、濡れ指数(JISK6768:1999に従い測定)によりスクリーニングすることができる。十分な接着強度を期待できる濡れ指数は、通常50mN/m以上、好ましくは60mN/m以上である。上記濡れ指数を得るのに必要な処理量(S)は、通常80W・min/m以上、好ましくは120W・min/m以上である。
【0114】
またフィルムの劣化を防止する観点から、処理量(S)は500W・min/m以下に抑えることが好ましい。より好ましくは400W・min/m以下である。
【0115】
なお処理量(S)は次式で定義される。
S=P/(L・V)
ここでS:処理量(W・min/m);P:放電電力(W);L:放電電極の長さ(m);V:ライン速度(m/min);である。
【0116】
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート剤としては、本発明の積層体を画像表示装置部材として用いる目的から、高い透明性を有し、着色のないものであること以外は制限されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタンなどの公知のものを用いることができる。中でも上記層αとの接着強度向上の観点から、熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤が好ましい。
【0117】
また上記アンカーコート剤としては、シランカップリング剤を含む塗料を用いることもできる。シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。中でも上記層αとの接着強度向上の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0118】
上記シランカップリング剤を含む塗料は、シランカップリング剤を主として(固形分として50質量%以上)含む塗料である。好ましくは上記塗料の固形分の75質量%以上がシランカップリング剤である。より好ましくは90質量%以上である。
【0119】
なお上記アミノ基を有するシランカップリング剤を含む塗料には、アミノ基を有しないシランカップリング剤、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メタクリロキシ系シランカップリング剤、アクリロキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤などは、少量(通常固形分として50質量%未満、好ましくは25質量%未満。)であれば、含んでいてもよい。
【0120】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤を含む塗料には、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0121】
上記アンカーコート剤を用いてアンカーコートを形成する方法は、制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法があげられる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを使用することができる。
【0122】
また上記アンカーコート剤には、本発明の目的に反しない限度において、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、赤外線遮蔽剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、及びフィラー等の添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0123】
アンカーコートの乾燥厚みは、通常0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜2μmである。
【0124】
積層体
本発明の積層体は、アンカーコート以外の任意の層を更に含んでいてもよい。例えば、最表層側から順に、防眩性機能層(層α)、ハードコート(任意の層)、アンカーコート(任意の層)、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの層(層β)、アンカーコート(任意の層)、ハードコート(任意の層)を有する積層体;最表層側から順に、反射防止機能層(層αその1)、防眩性機能層(層αその2)、ハードコート(任意の層)、アンカーコート(任意の層)、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの層(層β)、アンカーコート(任意の層)、ハードコート(任意の層)を有する積層体;最表層側から順に、反射防止機能層(層αその1)、防眩性機能層(層αその2)、光拡散機能層(層αその3)、アンカーコート(任意の層)、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの層(層β)、アンカーコート(任意の層)、ハードコート(任意の層)を有する積層体;などをあげることができる。
【0125】
本発明の積層体は、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、80%以上である。全光線透過率が80%以上の高透明なものであることにより、積層体を、タッチパネルのディスプレイ面板などの画像表示装置の部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0126】
本発明の積層体は、好ましくは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が5以下である。黄色度指数が5以下の着色のないものであることにより、積層体を、タッチパネルのディスプレイ面板などの画像表示装置の部材として極めて好適に用いることができる。黄色度指数は低いほど好ましく、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
測定方法
(1)積層体の全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0129】
(2)積層体のヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0130】
(3)積層体の黄色度指数:
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて黄色度指数(YI)を測定した。
【0131】
(4)線膨張係数:
JIS K 7197:1991に従い測定した。セイコーインスツル株式会社の熱機械的分析装置(TMA)「EXSTAR6000(商品名)」を用いた。試験片は、縦20mm、横10mmの大きさで、積層体のマシン方向(MD)が試験片の縦方向となるように採取した。試験片の状態調節は、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%で24時間とし、積層体の物性値としての寸法安定性を測定する目的から、測定最高温度における状態調節は行わなかった。チャック間距離は10mm、温度プログラムは、温度20℃で3分間保持した後、昇温速度5℃/分で温度270℃まで昇温するプログラムとした。線膨張係数は、得られた温度−試験片長さ曲線から、低温側温度30℃、高温側温度220℃として計算した。
【0132】
(5)碁盤目試験(上記層αと上記層βとの密着性);
JIS K 5600−5−6:1999に従い、積層体の上記層α側から、碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0133】
(6)防眩性:
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、積層体の上記層α側の面と50cmの距離を隔てた位置から入射角45°で入射し、積層体の上記層α側の面と垂直方向に、50cmの距離を隔てた位置から積層体の上記層α側の面を目視観察し、以下の基準で評価した。その際に、下記C−1の易接着化面に、下記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物P−1を100質量部とメチルイソブチルケトン50質量部とを混合攪拌して得た塗料をグラビア方式の塗工装置を使用し、硬化後厚みが4μmとなるように塗布してハードコートを形成して得た積層体を、基準サンプルとして使用した。
◎:非常に高い防眩性機能を発現している。
○:防眩性機能が高い。
△:防眩性機能が低い。
×:基準サンプルと同様の防眩性機能である。防眩性機能がない。
【0134】
(7)最低反射率:
日本分光株式会社の分光光度計「U−best V−570(商品名)」を使用し、積層体の上記層α側の面について、波長380〜780nmの反射率を測定し、その最低値を記録した。波形が波打つ場合には、スムージング処理を行い、最低値を求めた。
【0135】
(8)耐アルカリ性:
水酸化ナトリウム水溶液(濃度1モル%)0.5ミリリットルを、積層体の上記層α側の面に滴下し、30分放置後に拭取り、汚染状況を目視により、以下の基準で評価した。
◎:汚染が見られない。
△:僅かに汚染される。
×:著しく汚染される。
【0136】
(9)干渉縞:
暗所において、積層体を上記層α側の面を上にして黒板(社団法人日本塗料工業会のD版塗料用標準色のDN−10相当の黒色)の上に置き、パナソニック株式会社の20W昼白色の三波長形蛍光ランプ「パルック(商品名)」で照らし、蛍光ランプの像の周りの干渉縞を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:干渉縞が全く認められない。
○:干渉縞がほとんど認められない。
△:干渉縞がかすかに認められる。
×:干渉縞が明瞭に認められる。
【0137】
(イ) ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0138】
(ロ)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムのヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0139】
(ハ)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの黄色度指数:
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて黄色度指数(YI)を測定した。
【0140】
(A)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム:
(A−1)エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「ACRYMID TT70(商品名)」を用い、50mm押出機(L/D=29、CR=1.86のWフライトスクリュウを装着)、ダイ幅680mmのTダイ、鏡面ロールと鏡面ベルトを備えた装置を使用し、押出機からTダイの温度設定C1/C2/C3/AD/D1〜D6=280/300/320/320/320〜320℃、Tダイのリップ開度0.5mm、スクリュウ回転数90rpm、鏡面ロール表面温度140℃、鏡面ベルト表面温度120℃、鏡面ベルトの押圧1.4MPa、引取速度5.6m/minの条件で、厚さ250μmのフィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表1に示す。
【0141】
(A−2〜7)鏡面ロール表面温度、鏡面ベルト表面温度を表1に示すように変更したこと以外は、全てA−1と同様に行い、厚さ250μmのフィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表1又は2に示す。
【0142】
(A−8)エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「ACRYMID TT70(商品名)」を用い、50mm押出機(L/D=29、CR=1.86のWフライトスクリュウを装着)、ダイ幅680mmのTダイ、第一鏡面ロールと第二鏡面ロールを備えた装置を使用し、押出機からTダイの温度設定C1/C2/C3/AD/D1〜D6=280/300/320/320/320〜320℃、Tダイのリップ開度0.5mm、スクリュウ回転数90rpm、第一鏡面ロール表面温度140℃、第二鏡面ロール表面温度40℃、鏡面ロール同士の押圧1.4MPa、引取速度5.6m/minの条件で、厚さ250μmのフィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表2に示す。
【0143】
(A−9)引取速度を2.6m/minとし、フィルム厚みを550μmに変更したこと以外は、全てA−3と同様に行い、フィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表2に示す。
【0144】
(A−10)引取速度を2.6m/minとし、フィルム厚みを550μmに変更したこと以外は、全てA−8と同様に行い、フィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表2に示す。
【0145】
(A−11)多層積層フィルムの両外層としてエボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂「ACRYMID TT70(商品名)」を、中間層として住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート系樹脂「カリバー301−4(商品名)」を、2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイから連続的に共押出し、回転する鏡面ロールと鏡面ロールの外周面に沿って循環する鏡面ベルトとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚み80μm、芳香族ポリカーボネート系樹脂層の層厚み90μm、第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚み80μmの多層積層フィルムを得た。このとき設定条件は、製膜前の乾燥温度は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂が150℃、芳香族ポリカーボネート系樹脂が100℃;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の押出機の設定温度はC1/C2/C3/C4/C5/AD=260/290〜290℃;芳香族ポリカーボネート系樹脂の押出機の設定温度はC1/C2/C3/C4/C5/C6/AD=260/280/280/260〜260/270℃;何れの押出機も窒素パージを行い、真空ベントを使用;Tダイの設定温度300℃、リップ開度0.5mm;鏡面ロールの設定温度130℃;鏡面ベルトの設定温度120℃、押圧1.4MPa;引取速度6.5m/分であった。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表2に示す。
【0146】
(A−12)全厚みを500μm、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚み80μm、芳香族ポリカーボネート系樹脂層の層厚み340μm、第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層の層厚み80μmに変更し、引取速度を3.3m/分としたこと以外は、全てA−11と同様に行い、フィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
(B)アンカーコート形成用塗料:
(B−1)信越化学工業株式会社のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBE−603(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0150】
(B−2)信越化学工業株式会社のビニルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBE−1003(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0151】
(B−3)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBE−403(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0152】
(B−4)信越化学工業株式会社の3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBE−503(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0153】
(B−5)信越化学工業株式会社の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン「信越シリコーンKBM−803(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0154】
(B−6)信越化学工業株式会社の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBE−9007(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0155】
(B−7)信越化学工業株式会社の3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン「信越シリコーンKBM−585(商品名)」1質量部と;変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0156】
(B−8)和信化学工業株式会社の熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤「ワシンコートVHKE−21クリアー(商品名)」90質量部と;和信化学工業株式会社の熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤「ワシンコートVHKE−21Bマット(商品名)」10質量部と;プロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部とを;混合攪拌して得た。
【0157】
易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(C)
(C−1)上記A−1の片面に、処理量167W・min/m(放電電力500W、放電電極の長さ1m、ライン速度3m/min)の条件で、コロナ放電処理を行った。次に上記B−1をコロナ放電処理面に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.5μmとなるように塗布し、易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得た。
【0158】
(C−2〜4)コロナ放電処理量を、放電電力を調節して、表3に示す値に変更したこと以外は、全てC−1と同様に行い、易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得た。
【0159】
(C−5)コロナ放電処理を施さなかったこと以外は、全てC−1と同様に行い、易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得た。
【0160】
(C−6〜12)上記B−1の替わりに表3又は表4に示すアンカーコート形成用塗料を用いたこと以外は、全てC−1と同様に行い、易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得た。
【0161】
(C−13〜23)上記A−1の替わりに表5又は表6に示すポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(表ではフィルムBと表記)を用いたこと以外は、全てC−1と同様に行い、易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得た。
【0162】
(C−24)コロナ放電処理を施さず、アンカーコート形成も行なわず、上記A−1をそのまま用いた。
【0163】
(P)防眩性機能層用塗料:
下記P−1を100質量部、下記P−2を8質量部、下記P−3を16質量部及びメチルイソブチルケトン50質量部を混合攪拌して得た。
【0164】
(P−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 65質量部、ヘキサンジオールジアクリレート 35質量部、及び双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」6.5質量部を混合攪拌して得た活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。屈折率1.48。
(P−2)スチレン系樹脂微粒子。屈折率1.59、平均粒子径5.0μm。
(P−3)スチレン系樹脂微粒子。屈折率1.59、平均粒子径3.5μm。
【0165】
実施例1
上記C−1の易接着化面に、上記防眩性機能層用塗料Pを、グラビア方式の塗工装置を使用し、硬化後厚みが4μmとなるように塗布して機能層αを形成し、積層体を得た。上記試験(1)〜(6)を行った。結果を表3に示す。
【0166】
実施例2〜24
上記C−1に替えて、表3〜6の何れか1に示す易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(表では易接着フィルムCと表記)を用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表3〜6の何れか1に示す。
【0167】
比較例1
上記C−1に替えて、三菱樹脂株式会社の厚み250μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」の片面に、処理量167W・min/mの条件で、コロナ放電処理を行い、上記記B−8をコロナ放電処理面に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.5μmとなるように塗布して易接着化したものを用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表6に示す。なお試験(4)の線膨張係数は、試験片の収縮が大きく、測定値を得ることができなかった。
【0168】
比較例2
上記C−1に替えて、住友化学株式会社の厚み250μmのアクリル系樹脂フィルム「テクノロイS001G(商品名)」の片面に、処理量167W・min/mの条件で、コロナ放電処理を行い、上記記B−8をコロナ放電処理面に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.5μmとなるように塗布して易接着化したものを用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
(Q)反射防止機能層用塗料:
(QH)高屈折率層形成用塗料:
下記QH−1を100質量部、下記QH−2を400質量部(固形分240質量部)、下記QH−3を4質量部、及び下記QH−4を0.8質量部、混合攪拌して得た。
【0174】
(QH−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
(QH−2)日産化学工業株式会社の固形分60質量%のアンチモン酸亜鉛分散液「セルナックスCX−Z610M−F2(商品名)」。
(QH−3)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の光重合開始剤「イルガキュア184(商品名)」。
(QH−4)日本ルーブリゾール株式会社の固形分20質量%のアルキルアミンエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加体系分散剤「ソルスパース20000(商品名)」。
【0175】
(QL)低屈折率層形成用塗料:
下記QL−1を100質量部、下記QL−2を7質量部(固形分1.4質量部)、及びメチルイソブチルケトン42質量部を混合攪拌して得た。
【0176】
(QL−1)攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1リットルフラスコに、ジシラン化合物「化学式:(CHO)Si−C−C12−C−Si(OCH 」29.9g(0.05モル)、及びt−ブタノール125gを仕込み、25℃で攪拌しているところに、0.1N酢酸水10gを10分かけて滴下。更に25℃で20時間攪拌し、加水分解を終了し、ここに縮合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート2g、レベリング剤としてポリエーテル変性シリコーン1gを加え、更に30分間攪拌し、得た溶液に、エタノール670g、プロピレングリコールモノメチルエーテル40g、ジアセトンアルコール40gを加えて希釈し調整した塗料。(固形分3質量%)。
(QL−2)触媒化成工業株式会社の固形分20質量%の中空シリカ粒子メチルイソブチルケトン分散液「ELCOM RK−1018SIV(商品名)」。
【0177】
実施例25
上記C−1の易接着化面に、上記高屈折率層形成用塗料QHを、硬化後膜厚みが80nmとなるように塗布し(高屈折率層の屈折率1.70)、更に高屈折率層の上に、上記低屈折率層形成用塗料QLを、硬化後厚みが70nmとなるように塗布し(低屈折率層の屈折率1.39)、積層体を得た。上記試験(1)〜(5)、(7)〜(9)を行った結果を表7に示す。
【0178】
実施例26〜48
上記C−1に替えて、表7〜10の何れか1に示す易接着化ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(表では易接着フィルムCと表記)を用いたこと以外は、全て実施例25と同様に行った。結果を表7〜10の何れか1に示す。
【0179】
比較例3
上記C−1に替えて、三菱樹脂株式会社の厚み250μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」の片面に、処理量167W・min/mの条件で、コロナ放電処理を行い、上記記B−8をコロナ放電処理面に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.5μmとなるように塗布して易接着化したものを用いたこと以外は、全て実施例25と同様に行った。結果を表10に示す。なお試験(4)の線膨張係数は、試験片の収縮が大きく、測定値を得ることができなかった。
【0180】
比較例4
上記C−1に替えて、住友化学株式会社の厚み250μmのアクリル系樹脂フィルム「テクノロイS001G(商品名)」の片面に、処理量167W・min/mの条件で、コロナ放電処理を行い、上記記B−8をコロナ放電処理面に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.5μmとなるように塗布して易接着化したものを用いたこと以外は、全て実施例25と同様に行った。結果を表10に示す。
【0181】
【表7】
【0182】
【表8】
【0183】
【表9】
【0184】
【表10】
【0185】
本発明の積層体は、機能層とポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層との密着強度に優れ、画像表示装置に要求される1以上の機能を有し、透明性、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れ、色調も良好である。一方、比較例1〜4は線膨張係数(耐熱性と寸法安定性)に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0186】
図1】実施例において、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの製膜に用いた装置の概念図である。
【符号の説明】
【0187】
1:Tダイ
2:溶融フィルム
3:鏡面ロール
4:鏡面ベルト
5:一対のベルトローラー
図1