特許第6395484号(P6395484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395484
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】正極リード、アルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20180913BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20180913BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20180913BHJP
   H01C 1/144 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01C7/02
   H01C1/034
   H01C1/144
   H01M2/34 A
   H01M10/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-144918(P2014-144918)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-21338(P2016-21338A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516119106
【氏名又は名称】Littelfuseジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】北爪 秀明
(72)【発明者】
【氏名】泉 康士
(72)【発明者】
【氏名】和田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊和
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽平
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084203(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0303445(US,A1)
【文献】 特開2014−035991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0221928(US,A1)
【文献】 特開2008−053652(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138959(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/148152(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01C 1/034
H01C 1/144
H01C 7/02
H01M 2/34
H01M 10/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板形状であり両面が電極になっているPTCサーミスタと、
前記PTCサーミスタより大きい平板形状であり、前記PTCサーミスタの一面に接着された第1金属板と、
前記PTCサーミスタより大きい平板形状であり、前記PTCサーミスタの他面に接着された第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板との間の空間に充填され、前記PTCサーミスタの周囲を覆う保護材と、
前記第1金属板の前記PTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設された帯状の金属板からなる第1リード半体と、を備える正極リード。
【請求項2】
請求項1に記載の正極リードにおいて、前記第2金属板の前記PTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接され、前記第1リード半体の延設方向と反対方向へ延設された帯状の金属板からなる第2リード半体をさらに備える、正極リード。
【請求項3】
請求項2に記載の正極リードにおいて、前記第1金属板の前記第1リード半体の端部が溶接された部分と、前記第2金属板の前記第2リード半体の端部が溶接された部分とが、平面視において互いに重ならない位置にある、正極リード。
【請求項4】
請求項1に記載の正極リードにおいて、前記第2金属板は、前記第2金属板に一体に形成され、前記第1リード半体の延設方向と反対方向へ延設された帯状の第2リード半体を含む、正極リード。
【請求項5】
上端が開口した外装缶と、
正極及び負極がセパレータを介して積層されてなり、前記外装缶にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、
前記外装缶の開口縁に絶縁された状態で固定され、前記開口を封口する蓋板及び前記蓋板に電気的に接続された正極端子を有する封口体と、
前記電極群と前記封口体との間に設置され、前記電極群の正極と前記封口体とを電気的に接続する請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極リードと、を備えるアルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池の正極リードに関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池等の一般的なアルカリ二次電池は、その低い内部抵抗と高い内部エネルギー量から、外部短絡等でショートした際に発熱して高温になることがある。そのため一般的なアルカリ二次電池は、外部短絡が生じた場合の安全性を確保することを目的として、内部で電極群の正極と正極端子とを電気的に接続する正極リードにPTC(positive temperature coefficient)サーミスタが組み込まれている(例えば特許文献1を参照)。このPTCサーミスタは、導電性粒子を含む樹脂からなり、通常時は電気抵抗値が低く良好な導電性を示し、温度が上昇してその温度が所定値に達すると、急激に電気抵抗値が増加する特性を有する電子部品である。
【0003】
このような構成のアルカリ二次電池において、正極リードに組み込まれたPTCサーミスタは、何らかの原因によりアルカリ二次電池に外部短絡が生ずると過剰電流が流れて温度が上昇する。そしてPTCサーミスタの温度が所定値に達すると、PTCサーミスタの電気抵抗値が増大し、電極群から正極端子への電流が正極リードのPTCサーミスタの部分で抑制される。それによってアルカリ二次電池内の過剰電流が抑制されるので、外部短絡が生じたときにアルカリ二次電池の発熱が抑制されることになる。
【0004】
従来のPTCサーミスタが組み込まれた正極リードは、例えば2枚の金属製の帯状体を直列に配置し、その互いの先端部同士を部分的にオーバーラップさせ、その離間対向している帯状体の先端部の間にPTCサーミスタを半田接合することによって構成されている。またPTCサーミスタが半田接合された部分は、例えば耐アルカリを有するエポキシ樹脂等からなる保護材で被覆されて保護されている。これはアルカリ二次電池の内部で発生する高圧酸素によるPTCサーミスタの劣化等、及びアルカリ二次電池の内部のアルカリ雰囲気による半田付け部分の劣化等を防止するためである(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−243856号公報
【特許文献2】特開2014−35991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記説明したアルカリ二次電池の正極リードは、アルカリ二次電池の製造工程において、アルカリ二次電池内部の正極端子と電極群との間の限られた狭い空間に、金属製の帯状体の部分を折り曲げながら設置する必要がある。そしてその際に、PTCサーミスタの半田接合部分を被覆する保護材が設けられた部分で金属製の帯状体が折り曲げられてしまうと、保護材が割れてしまい、PTCサーミスタの半田接合部分が露出し、それによって保護材によるPTCサーミスタの保護機能が損なわれてしまう虞が生ずる。また保護材が設けられた部分の外側で金属製の帯状体が折り曲げられたとしても、場合によっては、その曲げ応力によって保護材が割れてしまうこともある。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、保護材によるPTCサーミスタの保護機能が損なわれてしまう虞が少ないアルカリ二次電池の正極リードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、平板形状であり両面が電極になっているPTCサーミスタと、前記PTCサーミスタより大きい平板形状であり、前記PTCサーミスタの一面に接着された第1金属板と、前記PTCサーミスタより大きい平板形状であり、前記PTCサーミスタの他面に接着された第2金属板と、前記第1金属板と前記第2金属板との間の空間に充填され、前記PTCサーミスタの周囲を覆う保護材と、前記第1金属板の前記PTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設された帯状の金属板からなる第1リード半体と、を備える正極リードである。
【0009】
PTCサーミスタは、PTCサーミスタより大きい第1金属板及び第2金属板が両面に接着され、その2枚の金属板の間の空間に保護材が充填されて周囲が覆われている。それによってPTCサーミスタは、第1金属板、第2金属板及び保護材で完全に覆われて密閉された状態になるので、アルカリ二次電池の内部で発生する高圧酸素やアルカリ雰囲気による劣化等から保護される。またPTCサーミスタの電極は、第1金属板及び第2金属板を通じて、アルカリ二次電池の電極群の正極及び封口体のそれぞれに電気的に接続することができる。
【0010】
第1リード半体は、アルカリ二次電池の電極群の正極又は封口体に、第1金属板を通じてPTCサーミスタの一面を電気的に接続するための部材である。この第1リード半体は、第1金属板のPTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設されている。そのため第1リード半体を折り曲げながらアルカリ二次電池の内部に正極リードを設置する際に、第1リード半体に作用する力は、第1金属板のPTCサーミスタが接着されている部分に作用し、保護材が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって第1リード半体を折り曲げながらアルカリ二次電池の内部に正極リードを設置する際に、保護材が割れてしまう虞を低減することができる。
【0011】
これにより本発明の第1の態様によれば、保護材によるPTCサーミスタの保護機能が損なわれてしまう虞が少ないアルカリ二次電池の正極リードを提供できるという作用効果が得られる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第2金属板の前記PTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接され、前記第1リード半体の延設方向と反対方向へ延設された帯状の金属板からなる第2リード半体をさらに備える、正極リードである。
【0013】
第2リード半体は、アルカリ二次電池の電極群の正極又は封口体に、第2金属板を通じてPTCサーミスタの他面を電気的に接続するための部材である。この第2リード半体は、第2金属板のPTCサーミスタが接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設されている。そのため第2リード半体を折り曲げながらアルカリ二次電池の内部に正極リードを設置する際に、第2リード半体に作用する力は、第2金属板のPTCサーミスタが接着されている部分に作用し、保護材が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって第2リード半体を折り曲げながらアルカリ二次電池の内部に正極リードを設置する際に、保護材が割れてしまう虞を低減することができる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第2の態様において、前記第1金属板の前記第1リード半体の端部が溶接された部分と、前記第2金属板の前記第2リード半体の端部が溶接された部分とが、平面視において互いに重ならない位置にある、正極リードである。
本発明の第3の態様によれば、アルカリ二次電池の内部において正極リードが占有する体積をより小さくすることができる。それによってアルカリ二次電池の内部空間をより有効に利用することができるので、例えばアルカリ二次電池をより高容量化することができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第2金属板は、前記第2金属板に一体に形成され、前記第1リード半体の延設方向と反対方向へ延設された帯状の第2リード半体を含む、正極リードである。
このように第2リード半体を第2金属板に一体に形成することによって、つまり第2金属板と第2リード半体を一枚の金属板で形成することによって、アルカリ二次電池の内部において正極リードが占有する体積をより小さくすることができる。それによってアルカリ二次電池の内部空間をより有効に利用することができるので、例えばアルカリ二次電池をより高容量化することができる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上端が開口した外装缶と、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなり、前記外装缶にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、前記外装缶の開口縁に絶縁された状態で固定され、前記開口を封口する蓋板及び前記蓋板に電気的に接続された正極端子を有する封口体と、前記電極群と前記封口体との間に設置され、前記電極群の正極と前記封口体とを電気的に接続する本発明の第1〜第4の態様のいずれかの正極リードと、を備えるアルカリ二次電池である。
本発明の第5の態様によれば、アルカリ二次電池において、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかによる作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保護材によるPTCサーミスタの保護機能が損なわれてしまう虞が少ないアルカリ二次電池の正極リードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ニッケル水素二次電池を部分的に破断して図示した斜視図。
図2】ニッケル水素二次電池の上部断面を図示した断面図。
図3】本発明に係る正極リードの第1実施例を図示した平面図。
図4】本発明に係る正極リードの第1実施例であり、図3のA−A断面の断面図。
図5】本発明に係る正極リードの第1実施例の製造方法を図示した斜視図。
図6】本発明に係る正極リードの第1実施例の製造方法を図示した斜視図。
図7】本発明に係る正極リードの第1実施例の製造方法を図示した斜視図。
図8】本発明に係る正極リードの第1実施例の製造方法を図示した斜視図。
図9】本発明に係る正極リードの第2実施例を図示した平面図。
図10】本発明に係る正極リードの第2実施例であり、図9のB−B断面の断面図。
図11】本発明に係る正極リードの第3実施例を図示した平面図。
図12】本発明に係る正極リードの第3実施例であり、図11のC−C断面の断面図。
図13】本発明に係る正極リードの第4実施例を図示した平面図。
図14】本発明に係る正極リードの第4実施例であり、図13のD−D断面の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0020】
<ニッケル水素二次電池1の構成>
「アルカリ二次電池」としてのニッケル水素二次電池1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、ニッケル水素二次電池1を部分的に破断して図示した斜視図である。図2は、ニッケル水素二次電池1の上部断面を図示した断面図である。
【0021】
ニッケル水素二次電池1は、外装缶10、電極群20、封口体30及び正極リード50を備える。
【0022】
外装缶10は、導電性を有する材料で形成されており、上端が開口した有底円筒形状をなし、その底壁11は負極端子として機能する。
【0023】
電極群20は、外装缶10にアルカリ電解液とともに収容されており、それぞれ帯状の正極21、負極22及びセパレータ23を含む。電極群20は、セパレータ23を介して正極21と負極22を互いに重ね合わせた状態で渦巻状に巻回されて構成されている。電極群20の最外周は、負極22の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁と接触している。それによって外装缶10は、電極群20の負極22に電気的に接続されている。電極群20と蓋体31との間には、内部短絡防止のために、円形の絶縁部材42が配置されている。また電極群20と外装缶10の底壁11との間には、同様に内部短絡防止のために、円形の絶縁部材43が配置されている。
【0024】
封口体30は、外装缶10の開口縁に絶縁された状態で固定されており、外装缶10を封口する構造体である。封口体30は、蓋体31、弁体32及び正極端子33を含む。蓋体31は、導電性を有する円板形状の部材であり、外装缶10の開口を封口する部材である。蓋体31は中央には、中央貫通孔311が形成されており、蓋体31の外面上には中央貫通孔311を塞ぐ弁体32が配置されている。弁体32は、ゴム等の弾性を有する材料で形成された部材である。正極端子33は、フランジ付き円筒形状の導電性を有する材料で形成された部材であり、図示していないガス抜き孔が設けられている。正極端子33は、弁体32を覆うように蓋体31の上面に固定され、蓋体31に電気的に接続されている。
【0025】
外装缶10の開口内には、蓋体31及びこの蓋体31を囲むリング形状の絶縁パッキン41が配置されている。絶縁パッキン41は、外装缶10の開口縁12をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁12に固定されている。つまり蓋体31及び絶縁パッキン41は、互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。通常時、蓋体31の中央貫通孔311は、弁体32によって気密に閉じられている。そして外装缶10内にガスが発生して内圧が高まると、その内圧によって弁体32が圧縮されて中央貫通孔311を開く。それによって外装缶10内に発生したガスは、外装缶10内から中央貫通孔311及び正極端子33のガス抜き孔を介して外部に放出される。つまり蓋体31の中央貫通孔311、弁体32及び正極端子33は、外装缶10内にガスが発生して内圧が高まったときに作動する安全弁を構成している。
【0026】
正極リード50は、電極群20と封口体30との間に設置され、電極群20の正極21と封口体30の正極端子33とを電気的に接続する構造体である。正極リード50は、封口体接続部51、電極群接続部52、PTCサーミスタモジュール53を含む。
【0027】
封口体接続部51及び電極群接続部52は、導電性を有する材料からなる帯状の部材である。封口体接続部51は、封口体30の蓋体31に電気的に接続されている。電極群接続部52は、絶縁部材42に設けられたスリット421を通じて電極群20の正極21に電気的に接続されている。PTCサーミスタモジュール53は、封口体接続部51と電極群接続部52との間に電気的に接続されている。
【0028】
<正極リード50の第1実施例>
本発明に係る正極リード50の第1実施例について、図3図8を参照しながら説明する。
図3は、正極リード50の第1実施例を図示した平面図である。図4は、正極リード50の第1実施例を図示した断面図であり、図3のA−A断面を図示したものである。
【0029】
正極リード50は、封口体接続部51、電極群接続部52、PTCサーミスタモジュール53を含む。またPTCサーミスタモジュール53は、2枚の金属板531、532、PTCサーミスタ533、保護材534を含む。
【0030】
PTCサーミスタ533は、例えば導電性粒子を分散させた絶縁性ポリマーからなり、平板形状で両面が電極になっている。このようなPTCサーミスタ533は、通常時は、導電性粒子が互いに接触しているため、電気抵抗値が低く、良好な導電性を示す。他方、ニッケル水素二次電池1に外部短絡が発生した時には、PTCサーミスタ533は大電流が流れて発熱するので、この熱により絶縁性ポリマー全体が膨張し、それによって導電性粒子の接触が減少して急激に電気抵抗値が増大する。このようなPTCサーミスタ533の特性を利用することによって、外部短絡の発生時における過電流を抑制することができる。そしてPTCサーミスタ533は、発熱が解消されて冷めると絶縁性ポリマーが収縮するため、元の電気抵抗値が低い状態に戻る。
【0031】
PTCサーミスタ533の作動温度は、例えば国内玩具基準で定められている接触可能な玩具部品の最高温度の70℃(25℃で評価した場合)をニッケル水素二次電池1の表面温度が超えないことを考慮するとともに、誤作動を抑制することを考慮すると、80℃〜100℃の範囲に設定することが好ましい。ニッケル水素二次電池1の内部と外表面とでは、温度差が生じるため、PTCサーミスタ533の作動温度を80℃〜100℃に設定しても、電池の外表面温度は70℃以下に抑えることができるからである。より具体的には、ニッケル水素二次電池1のPTCサーミスタ533が発熱し、その温度が80℃〜100℃に上昇しても、ニッケル水素二次電池1の表面温度は約50℃〜55℃程度になる。
【0032】
金属板531は、PTCサーミスタ533より大きい平板形状であり、PTCサーミスタ533の一面に、例えば半田付けによって接着されている。金属板532は、PTCサーミスタ533より大きい平板形状であり、PTCサーミスタ533の他面に、例えば半田付けによって接着されている。
【0033】
保護材534は、金属板531と金属板532との間の空間に充填されており、PTCサーミスタ533の周囲を覆っている。保護材534は、ニッケル水素二次電池1の内部に発生する高圧酸素によるPTCサーミスタ533の劣化等、及びニッケル水素二次電池1の内部のアルカリ雰囲気による半田付け部分の劣化等を防止するために設けられており、例えば耐アルカリ性を有するエポキシ樹脂等からなる。
【0034】
このようにPTCサーミスタ533は、PTCサーミスタ533より大きい2枚の金属板531、532が両面に接着され、その2枚の金属板531、532の間の空間に保護材534が充填されて周囲が覆われている。それによってPTCサーミスタ533は、2枚の金属板531、532及び保護材534で完全に覆われて密閉された状態になるので、ニッケル水素二次電池1の内部で発生する高圧酸素やアルカリ雰囲気による劣化等から保護される。またPTCサーミスタ533の電極は、2枚の金属板531、532を通じて、ニッケル水素二次電池1の電極群20の正極21及び封口体30の正極端子33のそれぞれに電気的に接続することができる。
【0035】
封口体接続部51は、ニッケル水素二次電池1の封口体30の正極端子33に、金属板531を通じてPTCサーミスタ533の一面を電気的に接続するための部材である。「第1リード半体」としての封口体接続部51は、「第1金属板」としての金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設された帯状の金属板である。より具体的には封口体接続部51は、金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、封口体接続部51の端部の溶接部511が溶接されている。
【0036】
このような構成の正極リード50は、封口体接続部51を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に設置する際に、封口体接続部51に作用する力は、金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分に作用し、保護材534が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって封口体接続部51を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に正極リード50を設置する際に、保護材534が割れてしまう虞を低減することができる。
【0037】
電極群接続部52は、ニッケル水素二次電池1の電極群20の正極21に、金属板532を通じてPTCサーミスタ533の他面を電気的に接続するための部材である。「第2リード半体」としての電極群接続部52は、「第2金属板」としての金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に端部が溶接され、封口体接続部51の延設方向と反対方向へ延設された帯状の金属板である。より具体的には電極群接続部52は、金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、電極群接続部52の端部の溶接部521が溶接されている。
【0038】
このような構成の正極リード50は、電極群接続部52を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に設置する際に、電極群接続部52に作用する力は、金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分に作用し、保護材534が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって電極群接続部52を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に正極リード50を設置する際に、保護材534が割れてしまう虞を低減することができる。
【0039】
このようにして本発明によれば、保護材534によるPTCサーミスタ533の保護機能が損なわれてしまう虞が少ないアルカリ二次電池の正極リード50を提供することができる。
【0040】
次に本発明に係る正極リード50の製造方法の一例について、図5図8を参照しながら説明する。
図5図8は、正極リード50の第1実施例の製造方法を図示した斜視図である。
【0041】
まずPTCサーミスタモジュール53を製造する。より具体的には、まずPTCサーミスタ533の両面に金属板531、532をそれぞれ半田付けする(図5図6)。つづいて金属板531と金属板532との間の空間に保護材534を充填して、PTCサーミスタ533の周囲を覆う(図7)。
【0042】
つづいてPTCサーミスタモジュール53に封口体接続部51及び電極群接続部52を溶接して取り付ける(図8)。溶接は、例えば抵抗溶接やレーザ溶接等、どのような溶接手法でもよい。より具体的には、金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、封口体接続部51の端部の溶接部511を溶接する。また金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、電極群接続部52の端部の溶接部521を溶接する。
尚、封口体接続部51又は電極群接続部52は、PTCサーミスタモジュール53に溶接する前に、必要に応じて折り曲げ加工等を施してもよい。
【0043】
<正極リード50の第2実施例>
本発明に係る正極リード50の第2実施例について、図9及び図10を参照しながら説明する。
図9は、正極リード50の第2実施例を図示した平面図である。図10は、正極リード50の第2実施例を図示した断面図であり、図9のB−B断面を図示したものである。
【0044】
正極リード50の第2実施例は、第1実施例と同様に、封口体接続部51、電極群接続部52、PTCサーミスタモジュール53を含む。またPTCサーミスタモジュール53は、2枚の金属板531、532、PTCサーミスタ533、保護材534を含む。
尚、第1実施例と同一の構成要素については、同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
「第1リード半体」としての電極群接続部52は、「第1金属板」としての金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設された帯状の金属板である。より具体的には電極群接続部52は、金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、電極群接続部52の端部の溶接部521が溶接されている。
【0046】
正極リード50の第2実施例は、電極群接続部52を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に設置する際に、電極群接続部52に作用する力は、金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分に作用し、保護材534が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって電極群接続部52を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に正極リード50を設置する際に、保護材534が割れてしまう虞を低減することができる。
【0047】
他方、「第2リード半体」としての封口体接続部51は、「第2金属板」としての金属板531に一体に形成され、電極群接続部52の延設方向と反対方向へ延設されている。
【0048】
このように封口体接続部51を金属板531に一体に形成することによって、つまり金属板531と封口体接続部51を一枚の金属板で形成することによって、ニッケル水素二次電池1の内部において正極リード50が占有する体積をより小さくすることができる。それによってニッケル水素二次電池1の内部空間をより有効に利用することができるので、例えばニッケル水素二次電池1をより高容量化することができる。
【0049】
<正極リード50の第3実施例>
本発明に係る正極リード50の第3実施例について、図11及び図12を参照しながら説明する。
図11は、正極リード50の第3実施例を図示した平面図である。図12は、正極リード50の第3実施例を図示した断面図であり、図11のC−C断面を図示したものである。
【0050】
正極リード50の第3実施例は、第1実施例と同様に、封口体接続部51、電極群接続部52、PTCサーミスタモジュール53を含む。またPTCサーミスタモジュール53は、2枚の金属板531、532、PTCサーミスタ533、保護材534を含む。
尚、第1実施例と同一の構成要素については、同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
「第1リード半体」としての封口体接続部51は、「第1金属板」としての金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に端部が溶接されて延設された帯状の金属板である。より具体的には封口体接続部51は、金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、封口体接続部51の端部の溶接部511が溶接されている。
【0052】
正極リード50の第3実施例は、封口体接続部51を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に設置する際に、封口体接続部51に作用する力は、金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分に作用し、保護材534が充填された部分にはほとんど作用しないことになる。それによって封口体接続部51を折り曲げながらニッケル水素二次電池1の内部に正極リード50を設置する際に、保護材534が割れてしまう虞を低減することができる。
【0053】
他方、「第2リード半体」としての電極群接続部52は、「第2金属板」としての金属板532に一体に形成され、封口体接続部51の延設方向と反対方向へ延設されている。
【0054】
このように電極群接続部52を金属板532に一体に形成することによって、つまり金属板532と電極群接続部52を一枚の金属板で形成することによって、ニッケル水素二次電池1の内部において正極リード50が占有する体積をより小さくすることができる。それによってニッケル水素二次電池1の内部空間をより有効に利用することができるので、例えばニッケル水素二次電池1をより高容量化することができる。
【0055】
<正極リード50の第4実施例>
本発明に係る正極リード50の第4実施例について、図13及び図14を参照しながら説明する。
図13は、正極リード50の第4実施例を図示した平面図である。図14は、正極リード50の第4実施例を図示した断面図であり、図13のD−D断面を図示したものである。
【0056】
正極リード50の第4実施例は、第1実施例と同様に、封口体接続部51、電極群接続部52、PTCサーミスタモジュール53を含む。またPTCサーミスタモジュール53は、2枚の金属板531、532、PTCサーミスタ533、保護材534を含む。
尚、第1実施例と同一の構成要素については、同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
「第1リード半体」としての封口体接続部51は、「第1金属板」としての金属板531のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、封口体接続部51の端部の溶接部511が溶接されている。また「第2リード半体」としての電極群接続部52は、「第2金属板」としての金属板532のPTCサーミスタ533が接着されている部分の裏側に、電極群接続部52の端部の溶接部521が溶接されている。
【0058】
そして正極リード50の第4実施例は、封口体接続部51の端部の溶接部511と電極群接続部52の端部の溶接部521とが、平面視において互いに重ならない位置にある。このような構成であることによって正極リード50の第4実施例は、ニッケル水素二次電池1の内部において正極リード50が占有する体積をより小さくすることができる。それによってニッケル水素二次電池1の内部空間をより有効に利用することができるので、例えばニッケル水素二次電池1をより高容量化することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ニッケル水素二次電池
50 正極リード
51 封口体接続部
52 電極群接続部
53 PTCサーミスタモジュール
511、521 溶接部
531、532 金属板
533 PTCサーミスタ
534 保護材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14