(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395491
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20180913BHJP
F02F 11/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F02F11/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-159498(P2014-159498)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37974(P2016-37974A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠三
(72)【発明者】
【氏名】濱野 賢司
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3310547(JP,B2)
【文献】
実開昭62−075262(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3191100(JP,U)
【文献】
特開2013−044401(JP,A)
【文献】
特許第5173732(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール対象の2部材の一方の部材に形成された環状溝に嵌め入れられた状態で前記2部材間に介在されて当該2部材間をシールする弾性体製のガスケットであって、
環状のガスケット本体と、
前記ガスケット本体の側部に周方向に沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体の幅方向に隆起するよう形成された複数の隆起部と、
前記隆起部の隆起面に周方向に沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体の幅方向に突出するよう形成された複数の小突起部とを備え、
前記環状溝に嵌め入れられた状態では、前記小突起部が当該環状溝の溝壁に弾接するよう構成されており、
前記ガスケット本体の幅寸法及び前記隆起部の隆起高さ寸法の合計が前記環状溝の溝幅寸法より小さく、且つ、前記ガスケット本体の幅寸法、前記隆起部の隆起高さ寸法及び前記小突起部の突出高さ寸法の合計が前記環状溝の溝幅寸法より大とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記小突起部は、横断面形状が略半円形状で前記環状溝の深さ方向に延びる直状体であることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記小突起部は、略半円球形状であることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項3に記載のガスケットにおいて、
前記複数の小突起部は、周方向に沿って千鳥状に配列されていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記複数の隆起部は、前記ガスケット本体の両側部に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項5に記載のガスケットにおいて、
前記小突起部は、前記両側部の隆起部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とするガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール対象の2部材の一方の部材に形成された環状溝に嵌め入れられた状態で当該2部材間をシールする弾性体製のガスケットに関し、例えば、エンジンのシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に介在されるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のようなシール対象の2部材の間に介在されるガスケットは、ゴム等の弾性部材からなり、一方の部材に形成された環状溝に嵌め入れられた状態で他方の部材との間に圧縮状態で介在される(特許文献1〜特許文献3参照)。このようなガスケットと環状溝とは、圧縮時の弾性変形に伴うガスケットの逃げ代を確保するため、ガスケットが環状溝に対して遊びをもって嵌め入れられるような幅寸法に設計される。そのため、当該2部材の組立て過程で、ガスケットを一方の部材の環状溝に嵌め入れて他方の部材に合体させる際、ガスケットが脱落することがあり、これが組立て作業の効率を低下させる一要因となる。また、2部材を締結させる過程で、ガスケットが横倒れして、正常な圧縮状態とならず、シール性能が充分に発揮されなくなることもある。特許文献1〜3に記載されたガスケットは、このような脱落や横倒れを防止するための構造を備えている。
【0003】
特許文献1には、ヘッドカバーの嵌合溝(環状溝)に嵌挿されるシールラバー(ガスケット)であって、このガスケットの側部に歯形状の係止溝を備えた凸部を形成して、嵌合溝に嵌挿させる際のガスケットの姿勢保持、脱落及びずれ防止を図ることが記載されている。また、特許文献2には、環状のガスケット本体の側部に、倒防止凸部を形成し、この倒防止凸部の凸部面に脱落防止用の小突起部を形成したガスケットが記載されている。さらに、特許文献3には、ガスケットの姿勢を安定させる(倒れを防止する)突出部をガスケットの長手方向に連続して設け、この突出部に長手方向に間隔を空けて複数の脱落防止用の複数の突起を設けたガスケットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−75262号公報
【特許文献2】特許第3310547号公報
【特許文献3】特許第5173732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に示されたガスケットの場合、各凸部間の部分では、嵌合溝との隙間が大きいため、倒れ防止機能は左程発揮されないものと考えられる。凸部を増やして凸部間を狭めると、係止溝に対する組付け性が低下することが予想される。また、特許文献2に示されたガスケットの場合、各倒防止凸部には1個の脱落防止用の小突起部を形成し(形成していないものもある)ているが、取付溝(環状溝)の溝壁に対して倒防止凸部毎に1点の点接触となるため、ガスケットの組付状態が不安定となることが懸念される。この場合、小突起部を環状溝の周方向に沿った線接触となるような長さのあるものにすると、取付溝に対する嵌合力大きくなり、組付け性が低下することになる。さらに、特許文献3に示されたガスケットの場合、倒れを防止するための突出部がガスケットの長手方向(周方向)に連続して設けられているから、圧縮時の弾性変形に伴うガスケットの環状溝内での逃げ代が少なくなる懸念がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、環状溝に対する組付け性が良く、安定した倒れ防止機能及び脱落防止機能を備えたガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスケットは、シール対象の2部材の一方の部材に形成された環状溝に嵌め入れられた状態で前記2部材間に介在されて当該2部材間をシールする弾性体製のガスケットであって、環状のガスケット本体と、前記ガスケット本体の側部に周方向に沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体の幅方向に隆起するよう形成された複数の隆起部と、前記隆起部の隆起面に周方向に沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体の幅方向に突出するよう形成された複数の小突起部とを備え、前記環状溝に嵌め入れられた状態では、前記小突起部が当該環状溝の溝壁に弾接するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ガスケット本体の幅方向に隆起するよう形成された複数の隆起部が、当該ガスケットを環状溝に嵌め入れて前記2部材間に介在させる際に、ガスケットの倒れ防止機能を奏する。また、当該ガスケットが環状溝に嵌め入れられた状態では、小突起部が環状溝の溝壁に弾接するよう構成されているから、この弾接力により環状溝からのガスケットの脱落が防止される。しかも、複数の小突起部が、各隆起部の隆起面に周方向に沿って間隔を空けて形成されているから、隆起部毎に周方向の複数個所で小突起が溝壁に弾接することになり、これによって、脱落防止が安定的になされる。特に、複数の小突起部の溝壁に対する弾接は、接触面積が左程増大することなくなされ、そのため、前記嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず、組付け性も良好となる。
【0009】
また本発明
は、前記ガスケット本体の幅寸法及び前記隆起部の隆起高さ寸法の合計が前記環状溝の溝幅寸法より小さく、且つ、前記ガスケット本体の幅寸法、前記隆起部の隆起高さ寸法及び前記小突起部の突出高さ寸法の合計が前記環状溝の溝幅寸法より大とされている
ことを特徴とする。 本発明によれば、ガスケット本体の幅寸法及び前記隆起部の隆起高さ寸法の合計が前記環状溝の溝幅寸法より小さいから、ガスケットを環状溝に嵌め入れて組付ける際の組付け性が良好である。また、ガスケット本体の幅寸法、前記隆起部の隆起高さ寸法及び前記小突起部の突出高さ寸法の合計が環状溝の溝幅寸法より大とされているから、ガスケットが環状溝に嵌め入れられる際に小突起部の弾性変形を伴い溝壁に弾接するから、ガスケットの環状溝からの脱落が防止される。
【0010】
本発明において、前記小突起部は、横断面形状が略半円形状で前記環状溝の深さ方向に延びる直状体であっても良い。
本発明によれば、小突起部が環状溝の深さ方向に延びる直状体であるから、脱落防止機能がより効果的に発揮される。また、小突起部を介した隆起部の倒れ防止機能もより効果的に発揮される。さらに、小突起部の横断面形状が半円形状であるから、溝壁に対する弾接が環状溝の深さ方向に沿って略線接触でなされるため、当該ガスケットの環状溝に対する嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず組付け性が悪くなることもない。
【0011】
本発明において、前記小突起部は、略半円球形状であっても良い。
本発明によれば、小突起部が略半円球形状であるから、環状溝の溝壁に対する弾接が略点接触でなされ、そのため、当該ガスケットの環状溝に対する嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず組付け性が悪くなることもない。また、隆起部毎の複数の小突起部の前記溝壁に対する点接触の弾接が周方向に間隔を空けてなされるから、組付け状態が安定化され、倒れ及び脱落防止機能が的確に発揮される。
この場合、前記複数の小突起部は、周方向に沿って千鳥状に配列されていてもよい。
これによれば、隆起部の隆起面には前記深さ方向にも幅を持った状態で小突起部が存在することになるから、当該複数の小突起部の環状溝の溝壁に対する略点接触の弾接が2次元的になされ、組付け状態がより安定化され、倒れ及び脱落防止機能がより的確に発揮される。
【0012】
本発明において、前記複数の隆起部は、前記ガスケット本体の両側部に形成されていても良い。この場合、前記小突起部は、前記両側部の隆起部の少なくとも一方に形成されているものとしても良い。
本発明によれば、複数の隆起部が、前記ガスケット本体の両側部に形成されているから、倒れ防止機能がより効果的に発揮される。また、小突起部が、前記両側部の隆起部の少なくとも一方に形成されておれば、嵌合力が増大することなく、ガスケットの環状溝に対する嵌め入れがなされる。また、小突起部が、前記両側部の隆起部に形成されておれば、脱落防止機能がより効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環状溝に対する組付け性が良く、安定した倒れ防止機能及び脱落防止機能を備えたガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るガスケットの一実施形態を示す概略的平面図である。
【
図2】(a)は
図1のA−A線矢視拡大断面図、(b)は
図1のB−B線矢視拡大断面図である。
【
図3】
図2(a)におけるC線方向に沿った矢視図である。
【
図4】本発明に係るガスケットの別の実施形態の
図3と同様図である。
【
図5】
図4におけるD−D線矢視拡大断面図である。
【
図6】同実施形態の変形例を示す
図4と同様図である。
【
図7】
図6におけるE−E線矢視拡大断面図である。
【
図8】本発明に係るガスケットのさらに別の実施形態を示す要部の拡大平面図である。
【
図9】同実施形態の変形例を示す
図8と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1乃至
図3は、自動車用エンジンのシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に介在されるヘッドカバーガスケットを示している。即ち、
図1乃至
図3は、シール対象の2部材としてのシリンダヘッド1及びヘッドカバー2の一方の部材であるヘッドカバー2に形成された環状溝21に嵌め入れられた状態でシリンダヘッド1及びヘッドカバー2間に介在されてシリンダヘッド1及びヘッドカバー2間をシールするヘッドカバーガスケット(ガスケット)3を示している。シリンダヘッド1は、金属の鋳造品からなり、ヘッドカバー2はアルミニウムの鍛造品や合成樹脂の成型品からなる。シリンダヘッド1はシリンダブロック(不図示)上に締結一体とされ、その上面はヘッドカバー2との合体面10とされる。また、ヘッドカバー2は、シリンダヘッド1上に前記ヘッドカバーガスケット3を介して締結により一体とされ、その下面はシリンダヘッド1との合体面20とされる。ヘッドカバー2の合体面20には、周方向に沿って環状溝21が形成されている。
【0016】
当該ヘッドカバーガスケット3は弾性体製であり、例えば、ゴムの成型体からなる。ヘッドカバーガスケット3は、環状のガスケット本体30と、ガスケット本体30の側部(図例では内側部30a)に周方向aに沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体30の幅方向bに隆起するよう形成された複数の隆起部31…と、各隆起部31の隆起面31aに周方向aに沿って間隔を空け、且つ、ガスケット本体30の幅方向bに突出するよう形成された複数(図例では3個)の小突起部32…とを備える。そして、当該ヘッドカバーガスケット3は、環状溝21に嵌め入れられた状態では、小突起部32…が環状溝21の溝壁(図例では内側溝壁21a)に弾接するよう構成されている。本実施形態では、ガスケット本体30の断面形状は、長径が環状溝21の深さ方向cに向く楕円形状乃至は長円形状とされている。このガスケット本体30の長径方向の両端頂部が、前記シリンダヘッド1の合体面10及びヘッドカバー2の合体面20における設計上のシールライン(不図示)に対応する設計上のシールラインLを構成する。また、隆起部31は平面視して略台形状に形成されているが、略半長円形状、或いは、略半楕円形状であっても良い。また、本実施形態の小突起部32…は、横断面形状が略半円形状で、
図3にも示すように環状溝21の深さ方向cに延びる直状体とされている。そして、本実施形態では、ガスケット本体30の幅寸法d1及び隆起部31の隆起高さ寸法d2の合計(d1+d2)が環状溝21の溝幅寸法dより小さく、且つ、ガスケット本体30の幅寸法d1、隆起部の隆起高さ寸法d2及び小突起部32…の突出高さ寸法d3の合計(d1+d2+d3)が環状溝21の溝幅寸法dより大とされている。このような寸法関係によって、ヘッドカバーガスケット3が、環状溝21に嵌め入れられた状態では、小突起部32…が環状溝21の内側溝壁21aに弾接する。
【0017】
前記のように構成されるヘッドカバーガスケット30をヘッドカバー2の環状溝21に嵌め入れてシリンダヘッド1とヘッドカバー2との間に介在させる要領について説明する。先ず、ヘッドカバー2をその合体面20が上向きになるよう作業台(不図示)上に置き、環状溝21内にヘッドカバーガスケット3を嵌め入れる。ヘッドカバーガスケット3が環状溝21内に嵌め入れられた状態では、小突起部32…が環状溝21の内側溝壁21aに弾接する。次いで、ヘッドカバー2を天地反転させて、合体面20がシリンダヘッド1の合体面10に合体するようシリンダヘッド1上に載せ置く。この天地逆転の際、ヘッドカバーガスケット3は、小突起部32…が環状溝21の内側溝壁21aに弾接しているから、この弾接力により環状溝21からのヘッドカバーガスケット3の脱落が防止される。しかも、複数の小突起部32…が、各隆起部31の隆起面31aに周方向aに沿って間隔を空けて形成されているから、隆起部31毎に周方向aの複数個所で小突起32…が内側溝壁21aに弾接することになり、これによって、脱落防止が安定的になされる。特に、小突起部32…が断面半円形で、環状溝21の深さ方向cに延びる直状体であるから、内側溝壁21aに対する弾接が環状溝21の深さ方向cに沿った略線接触でなされるため、脱落防止機能がより効果的に発揮される。また、略線接触であることにより、当該ヘッドカバーガスケット3の環状溝21に対する嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず組付け性が悪くなることもない。さらに、複数の小突起部32…の内側溝壁21aに対する弾接は、接触面積が左程増大することなくなされ、そのため、前記嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず、組付け性も良好となる。
【0018】
そして、不図示のボルトによって、シリンダヘッド1とヘッドカバー2とを所定の締結状態となるよう締結する。
図2(a)(b)の2点鎖線は、シリンダヘッド1とヘッドカバー2とを所定の締結状態となるよう締結された状態を示す。この締結過程でガスケット本体30は、締結方向(深さ方向c)に所定の締め代分圧縮され、下部が弾性変形して、シリンダヘッド10の合体面10に弾性的に密着するとともに、上部が環状溝21内の空間部を満たすように弾性変形して、外側溝壁21b及び溝底壁21cに弾性的に密着する。また、ガスケット本体30は、内側溝壁21a側に横倒れしようとするが、小突起部32…が内側溝壁21aに弾接しており、しかも小突起部32…は隆起部31の隆起面31に形成され、隆起部31が土台のように機能するから、小突起部32…自体の変形が少なく、この横倒れが効果的に防止される。したがって、所定の締結状態では、シリンダヘッド1の合体面10及びヘッドカバー2の合体面20の間に介在するシリンダヘッドガスケット3は、前記設計上のシールラインLがシリンダヘッド1及びヘッドカバー2の前記設計上のシールライン(不図示)からずれることが抑えられ、所期の密封機能を的確に発揮する。
なお、
図2ではヘッドカバーガスケット3の原形を示しており、シリンダヘッド1とヘッドカバー2とが所定の締結状態とされたときには、前記のように弾性変形した状態で、シリンダヘッド1とヘッドカバー2との間に介在する。
【0019】
図4及び
図5は、本発明に係るガスケットの別の実施形態を示す。本実施形態では、複数(図例では5個)の小突起部32…が、いずれも略半円球形状であり、隆起部31の隆起面31aにガスケット本体30の周方向aに沿って間隔を空け、且つ、環状溝21の深さ方向cの異なる深さ位置に交互に配した千鳥状に配列されている。本実施形態においては、小突起部32…が略半円球形状であるから、環状溝21の内側溝壁21aに対する弾接が略点接触でなされ、そのため、当該シリンダヘッドガスケット3の環状溝21に対する嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず組付け性が悪くなることもない。また、隆起部31毎の複数の小突起部32…の内側溝壁21aに対する点接触の弾接が周方向aに沿って間隔を空けてなされるから、組付け状態が安定化され、倒れ及び脱落防止機能が的確に発揮される。さらに、複数の小突起部32…は、周方向aに沿って千鳥状に配列されているから、隆起部31の隆起面31aには深さ方向cにも幅を持った状態で小突起部が存在することになるから、当該複数の小突起部32…の環状溝21の内側溝壁21aに対する略点接触の弾接が2次元的になされ、組付け状態がより安定化され、倒れ及び脱落防止機能がより的確に発揮される。ガスケット本体30の幅寸法d1、及び隆起部31の隆起高さ寸法d2及び小突起部32…の突出高さ寸法d3は、
図1〜
図3に示す例と同様の寸法関係に設定されている。従って、この寸法関係による作用・効果は前記例と同様である。その他の構成は、
図1〜
図3に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明は割愛する。
【0020】
図6及び
図7は、同実施形態の変形例を示す。この例では、
図4及び
図5に示す例と同様に、複数(図例では3個)の小突起部32…が、いずれも略半円球形状であるが、ガスケット本体30の周方向aに沿って1列に配列されている。この例でも、小突起部32…が略半円球形状であることから、環状溝21の内側溝壁21aに対する弾接が略点接触でなされ、そのため、当該シリンダヘッドガスケット3の環状溝21に対する嵌め入れ時の嵌合力が大きくならず組付け性が悪くなることもない。また、隆起部31毎の複数の小突起部32…の内側溝壁21aに対する点接触の弾接が周方向aに沿って間隔を空けて1列になされるから、組付け状態が安定化され、倒れ及び脱落防止機能が的確に発揮される。その他の構成は、
図4及び
図5に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明は割愛する。
【0021】
図8及び
図9は、本発明に係るガスケットのさらに別の実施形態と、その変形例を示す。本実施形態では、複数の隆起部31が、ガスケット本体30の内外両側部30a,30bに周方向aに沿って間隔を空けて形成されている。さらに、内外両側部30a,30bの各隆起部31はガスケット本体30のシールラインLに対して対称関係となるよう形成されている。
【0022】
図8に示す例では、内外の各隆起部31の隆起面31aに各3個の小突起部32…がガスケット本体30の幅方向bに突出するよう形成され、内外の小突起部32…もシールラインLに対して対称関係となるよう形成されている。この場合の小突起部32…の形状及び配置態様は、
図1〜
図7に示す例のいずれかと同様とされる。そして、ガスケット本体30の幅寸法d1及び隆起部31の隆起高さ寸法d2の合計(d1+d2×2)が環状溝21の溝幅寸法dより小さく、且つ、ガスケット本体30の幅寸法d1、隆起部の隆起高さ寸法d2及び小突起部32…の突出高さ寸法d3の合計(d1+d2×2+d3×2)が環状溝21の溝幅寸法dより大とされている。このような寸法関係によって、ヘッドカバーガスケット3が、環状溝21に嵌め入れられた状態では、小突起部32…が環状溝21の内側溝壁21a及び外側溝壁21bに弾接する。
【0023】
図9に示す例では、ガスケット本体30の内側部30aに形成される隆起部31の隆起面31aに前記と同様に複数の小突起部32…が形成されているが、外側部30bに形成される隆起部31には小突起部32が形成されていない。そして、ガスケット本体30の幅寸法d1及び隆起部31の隆起高さ寸法d2の合計(d1+d2×2)が環状溝21の溝幅寸法dより小さく、且つ、ガスケット本体30の幅寸法d1、隆起部の隆起高さ寸法d2及び小突起部32…の突出高さ寸法d3の合計(d1+d2×2+d3)が環状溝21の溝幅寸法dより大とされている。このような寸法関係によって、ヘッドカバーガスケット3が、環状溝21に嵌め入れられた状態では、小突起部32…が環状溝21の内側溝壁21aに弾接する。
【0024】
本実施形態においては、複数の隆起部31が、前記ガスケット本体30の両側部30a,30bに形成されているから、内外両側の隆起部31,31による拮抗した作用によって、倒れ防止機能がより効果的に発揮される。また、
図8に示す例のように、小突起部32…が、前記両側部30a,30bの隆起部31,31に形成されている場合、脱落防止機能がより効果的に発揮される。一方、
図9に示す例のように、小突起部32…が、内側部30a側の隆起部31に形成されている場合、ヘッドカバーガスケット3の環状溝21に対する嵌め入れが、嵌合力を増大させることなくなされる。その他の構成は前記各実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明は割愛する。
【0025】
なお、実施形態では、本発明に係るガスケットが、自動車用エンジンのシリンダヘッド1及びヘッドカバー2間をシールするヘッドカバーガスケット3である例について述べたが、これに限定されず、一方の部材に形成された環状溝に嵌め入れられた状態で2部材間に介在されて当該2部材間をシールするものであれば、他のガスケットであっても良い。例えば、シリンダブロックとオイルパンとの間に介在されるオイルパンガスケット等が挙げられる。また、自動車用エンジンに限らず、他の産業分野において同様に構成されているシール対象の2部材間に介在されるガスケットであれば、本発明が等しく適用可能である。また、ガスケット本体30、隆起部31及び小突起部32の平面形状や断面形状は、図例のものに限定されず、対象部位の形状等に応じて適宜変更が可能である。さらに、隆起部31及び小突起部32の個数や間隔等も、脱落防止、横倒れ防止及び装着性等も勘案して適宜定められる。
【符号の説明】
【0026】
1 シリンダヘッド(シール対象2部材の他方の部材)
2 ヘッドカバー(シール対象2部材の一方の部材)
21 環状溝
21a,21b 溝壁
3 ヘッドカバーガスケット(ガスケット)
30 ガスケット本体
30a、30b 側部
31 隆起部
31a 隆起面
32 小突起部
a 周方向
b 幅方向
c 深さ方向
d 溝幅寸法
d1 ガスケット本体の幅寸法
d2 隆起部の隆起高さ寸法
d3 小突起部の突出高さ寸法