(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0015】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
以下、代表的な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
さらに、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを省略する場合もある。
【0019】
また、以下の実施の形態において、A〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0020】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
実施の形態1の半導体装置は、電界効果トランジスタを有する半導体装置であり、電界効果トランジスタとして高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)を有する半導体装置である。
【0021】
図1は、実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
図2は、実施の形態1の第1変形例の半導体装置の要部断面図である。
図3は、実施の形態1の第2変形例の半導体装置の要部断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態1の半導体装置は、基板SUBと、基板SUBに形成された電界効果トランジスタとしてのHEMTであるトランジスタTR1と、を備えている。
【0023】
トランジスタTR1は、基板SUB上に形成された窒化物半導体層からなるバッファ層BUFと、バッファ層BUF上に形成されたp型の窒化物半導体層からなる半導体層SL1と、を有する。また、トランジスタTR1は、半導体層SL1上に形成された窒化物半導体層からなるチャネル層CHと、チャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる電子供給層ESと、を有する。
【0024】
トランジスタTR1は、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に形成された窒化物半導体層からなる半導体領域としてのソース領域SR1を有する。また、トランジスタTR1は、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に、平面視においてソース領域SR1と離れて形成された窒化物半導体層からなる半導体領域としてのドレイン領域DR1を有する。ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESの上面から電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1に達しており、半導体層SL1と接触している。
【0025】
なお、本願明細書では、「平面視において」とは、基板SUBの上面に垂直な方向から見た場合を意味する。
【0026】
また、トランジスタTR1は、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分の電子供給層ES上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に形成されたゲート電極GEと、を有する。
【0027】
本実施の形態1では、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとソース領域SR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC1を含む。また、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC2を含む。一方、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC3を含む。窒化物半導体領域SC1、窒化物半導体領域SC3および窒化物半導体領域SC2は、一体的に形成されている。また、窒化物半導体領域SC3と、ゲート絶縁膜GIと、により膜部FP1が形成されている。
【0028】
このとき、膜部FP1は、窒化物半導体からなる膜部FP11としての窒化物半導体領域SC3と、絶縁体からなる膜部FP12としてのゲート絶縁膜GIと、からなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されていることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP1を介して形成されていることになる。
【0029】
また、トランジスタTR1は、ソース領域SR1と電気的に接続されたソース電極SEと、ドレイン領域DR1と電気的に接続されたドレイン電極DEと、を有する。
【0030】
基板SUBは、好適には、シリコン(Si)からなる半導体基板、すなわち単結晶シリコン基板である。これにより、基板SUBとして大面積の単結晶基板を用いつつ、基板SUB上に窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができ、半導体装置の製造コストを低減することができる。ただし、基板SUBとしては、シリコン(Si)からなる半導体基板の他、基板SUB上に形成される窒化物半導体層が、所望の特性を得るために必要な結晶性を有する各種の基板を用いることもできる。したがって、基板SUBとして、例えばサファイア基板、炭化シリコン(SiC)基板または窒化ガリウム(GaN)基板などを用いることもできる。また、基板SUBが単結晶シリコン基板であるとき、好適には、面方位が(111)である。
【0031】
基板SUB上には、バッファ層BUFが形成されている。バッファ層BUFは、基板SUBとチャネル層CHとの格子定数差を緩和するために形成されている。バッファ層BUFは、半導体層SL1が基板SUB上にエピタキシャル成長する際に、基板SUB上で半導体層SL1の核が形成される層、すなわち核形成層である。あるいは、基板SUBに含まれるシリコン(Si)の格子定数と、半導体層SL1に含まれる例えば窒化ガリウム(GaN)の格子定数との間の差を、緩和する緩和層である。バッファ層BUFとして、例えば窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)とからなる超格子構造を有する窒化物半導体層からなるバッファ層を用いることができる。
【0032】
シリコン(Si)からなる基板SUB上に、直接窒化ガリウム(GaN)からなる半導体層SL1を形成した場合には、半導体層SL1に多くのクラックが発生し、良好なエピタキシャル成長層が得られず、HEMTの作製が難しくなるおそれがある。このため、基板SUBと半導体層SL1との間に、バッファ層BUFを挿入する。これにより、基板SUB上にバッファ層BUFが容易にエピタキシャル成長し、バッファ層BUF上に半導体層SL1が容易にエピタキシャル成長するので、HEMTの作製が容易となる。すなわち、基板SUB上にバッファ層BUFを介して半導体層SL1が容易にエピタキシャル成長するので、HEMTの作製が容易となる。
【0033】
バッファ層BUFの材質については、バッファ層BUF上に形成される半導体層SL1、およびチャネル層CHおよび電子供給層ESの各々が、所望の特性を得るために必要な結晶性を有していればよく、特に限定されない。したがって、バッファ層BUFとして、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)もしくは窒化アルミニウム(AlN)からなる窒化物半導体層、または、これらを積層した積層膜などを用いることができる。あるいは、バッファ層BUFとして、例えば窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)とからなる超格子構造を有する窒化物半導体層からなるバッファ層を用いることができる。バッファ層BUFが、このような超格子構造を有する場合には、バッファ層BUFの厚さを、例えば2〜3μm程度とすることができる。
【0034】
なお、基板SUBが例えば窒化ガリウム基板である場合には、バッファ層BUFを用いなくても、半導体層SL1、およびチャネル層CHおよび電子供給層ESの各々の結晶性が保たれる。そのため、基板SUBと半導体層SL1との間に、バッファ層BUFが介在しなくてもよい。
【0035】
バッファ層BUF上には、半導体層SL1が形成されており、半導体層SL1上には、チャネル層CHが形成されている。半導体層SL1およびチャネル層CHの各々は、窒化物半導体層からなり、好ましくは、窒化ガリウム(GaN)からなる。半導体層SL1の厚さを、例えば1〜3μm程度とすることができ、チャネル層CHの厚さを、例えば20〜200nm程度とすることができる。
【0036】
半導体層SL1に含まれる窒化ガリウムは、好適には、例えばマグネシウム(Mg)からなるp型不純物が導入され、p型の導電性を示すp型の窒化ガリウム(p−GaN)からなる。言い換えれば、半導体層SL1の導電型は、p型である。
【0037】
一方、チャネル層CHに含まれる窒化ガリウムは、好適には、例えばアンドープの窒化ガリウム、すなわち、n型の導電性およびp型の導電性のいずれをも示さないイントリンシック状態の窒化ガリウム(i−GaN)からなる。つまり、チャネル層CHに含まれる窒化ガリウムの導電型は、n型でもなく、p型でもない。あるいは、チャネル層CHに含まれる窒化ガリウムは、n型の半導体でもなく、p型の半導体でもない。また、アンドープの窒化ガリウムには、例えば意図的にドーピングを施さずに成長した窒化ガリウムが含まれる。
【0038】
ここで、「半導体がn型の導電性を示す」、「半導体の導電型がn型である」および「n型の半導体である」とは、その半導体における多数キャリアが電子であることを意味する。また、「半導体がp型の導電性を示す」、「半導体の導電型がp型である」および「p型の半導体である」とは、その半導体における多数キャリアが正孔であることを意味する。
【0039】
半導体中にキャリアとして電子と正孔との両者が存在する場合は、電子濃度と正孔濃度との差が、実効的なキャリア濃度となる。本願明細書中では、「多数キャリアが電子である」とは、電子濃度が正孔濃度よりも大きく、かつ、実効的なキャリア濃度が1×10
16cm
−3よりも大きい状態を意味するものとする。また、「多数キャリアが正孔である」とは、正孔濃度が電子濃度よりも大きく、かつ、実効的なキャリア濃度が1×10
16cm
−3よりも大きい状態を意味するものとする。
【0040】
例えば、半導体層SL1におけるp型の不純物濃度を、1×10
16cm
−3を超える不純物濃度とすることができる。これにより、半導体層SL1における実効的なキャリア濃度を、1×10
16cm
−3よりも大きくすることができる。
【0041】
一方、イントリンシック状態とは、電子濃度と正孔濃度とがほぼ等しい状態、または、キャリアとしての電子または正孔が発生していない状態を示す。本願明細書中では、イントリンシック状態とは、実効的なキャリア濃度が1×10
16cm
−3以下の状態を意味するものとする。
【0042】
チャネル層CHに含まれる窒化ガリウムがイントリンシック状態であることにより、チャネル層CHにおいて不純物に起因した電子移動度の劣化が発生せず、HEMTとしての電界効果トランジスタからなるトランジスタTR1を流れる電流を容易に増加させることができる。
【0043】
なお、半導体層SL1およびチャネル層CHの各々として、窒化ガリウム(GaN)の他、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化リン化ガリウム(GaNP)または窒化リン化インジウムガリウム(InGaNP)などの窒化物半導体層を用いることができる。
【0044】
なお、半導体層SL1とバッファ層BUFとの間に、例えばアンドープの窒化ガリウム(GaN)からなる別の半導体層が形成されていてもよい。
【0045】
チャネル層CH上には、電子供給層ESが形成されている。電子供給層ESは、チャネル層CHを構成する窒化物半導体層とは異なる窒化物半導体層からなり、例えばチャネル層CHのバンドギャップと異なるバンドギャップを有する窒化物半導体層からなる。電子供給層ESの厚さを、例えば10〜100nm程度とすることができる。
【0046】
好適には、電子供給層ESのバンドギャップは、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きい。すなわち、窒化物半導体領域SC1のバンドギャップ、窒化物半導体領域SC2のバンドギャップ、および、窒化物半導体領域SC3のバンドギャップのいずれも、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きい。したがって、チャネル層CHとして窒化ガリウム(GaN)からなる窒化物半導体層を用いるときは、好適には、電子供給層ESとして窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる窒化物半導体層を用いることができる。また、窒化アルミニウムガリウムの組成を組成式Al
xGa
(1−x)Nにより表す場合、より好適には、xは0.1〜0.5である。すなわち、電子供給層ESにおける、アルミニウムとガリウムとの和に対するアルミニウムの組成比は、0.1〜0.5である。
【0047】
xが0.1未満の場合、電子供給層ESのバンドギャップと、チャネル層CHのバンドギャップとの差が小さく、チャネル層CHのうち、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分に発生する2次元電子ガス2DEGの密度が、小さくなるおそれがある。一方、xが0.5を超える場合、電子供給層ESとチャネル層CHとの間の格子不整合が大きくなるおそれがある。
【0048】
電子供給層ESとして、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の他、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)または窒化リン化ガリウム(GaNP)などの窒化物半導体層を用いることができる。ただし、チャネル層CHに含まれる窒化物半導体層の材料と、電子供給層ESに含まれる窒化物半導体層の材料とを、電子供給層ESに含まれる窒化物半導体層のバンドギャップが、チャネル層CHに含まれる窒化物半導体層の材料のバンドギャップよりも大きくなるように組み合わせることが好ましい。
【0049】
電子供給層ESは、チャネル層CH上に直接接触して形成されており、チャネル層CHと電子供給層ESとの間には、界面で伝導帯が不連続に変化するヘテロ接合が形成されている。電子供給層ESは、キャリア発生領域として機能することができる。なお、電子供給層ESには、例えばシリコン(Si)などのn型不純物が導入されていてもよい。
【0050】
電子供給層ES中およびチャネル層CH中には、窒化物半導体層からなるソース領域SR1、および、窒化物半導体層からなるドレイン領域DR1が、平面視において、互いに離れて形成されている。ソース領域SR1のうち電子供給層ES中に形成された部分、および、ドレイン領域DR1のうち電子供給層ES中に形成された部分は、例えばシリコン(Si)からなるn型不純物が導入され、n型の導電性を示すn型の窒化アルミニウムガリウム(n−AlGaN)からなる。また、ソース領域SR1のうちチャネル層CH中に形成された部分、および、ドレイン領域DR1のうちチャネル層CH中に形成された部分は、例えばシリコン(Si)からなるn型不純物が導入され、n型の導電性を示すn型の窒化アルミニウムガリウム(n−AlGaN)からなる。言い換えれば、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々の導電型は、n型である。ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図1の紙面に略垂直な方向に延在している。
【0051】
ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1と接触している。これにより、HEMTからなる電界トランジスタとしてのトランジスタTR1の下に、n型のソース領域SR1と、p型の半導体層SL1と、n型のドレイン領域DR1とを含むnpnダイオードからなる保護ダイオードPDが、設けられる。そのため、半導体装置の面積を増加させることなく、HEMTからなる電界トランジスタとしてのトランジスタTR1を保護する保護ダイオードPDを、トランジスタTR1と混載することができる。また、シリコン(Si)などの製造コストの低い基板上に高い耐圧の半導体素子を形成しつつ、保護ダイオードPDを、シリコンのバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体中に形成することにより、保護ダイオードの耐圧を向上させることができる。
【0052】
n型のソース領域SR1におけるn型の不純物濃度を、1×10
16cm
−3を超える不純物濃度とすることができる。これにより、n型のソース領域SR1における実効的なキャリア濃度を、1×10
16cm
−3よりも大きくすることができる。また、ソース電極SEとn型のソース領域SR1とを電気的に低抵抗で接続することができる。
【0053】
n型のドレイン領域DR1におけるn型の不純物濃度を、1×10
16cm
−3を超える不純物濃度とすることができる。これにより、n型のドレイン領域DR1における実効的なキャリア濃度を、1×10
16cm
−3よりも大きくすることができる。また、ドレイン電極DEとn型のドレイン領域DR1とを電気的に低抵抗で接続することができる。
【0054】
また、npnダイオードのうちp型の部分として、エピタキシャル成長されたp型窒化ガリウム(p−GaN)からなる半導体層SL1を用いるため、p型の不純物濃度を精度よく制御することができる。これにより、npnダイオードに含まれる2つのpn接合のうちいずれかに大きな逆バイアス電圧が印加され、そのpn接合においてアバランシェ降伏が発生して大電流が流れる場合における印加電圧、すなわち、アバランシェ降伏電圧を、所望の値に容易に調整することができる。
【0055】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図1に示すように、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されてもよい。
図1に示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々が、半導体層SL1の途中まで達するように形成される場合には、例えばシリコン(Si)などのn型不純物をイオン注入法により電子供給層ESおよびチャネル層CHに導入する際のイオン注入の条件をそれほど高精度で制御する必要がない。そのため、半導体装置の製造歩留りを向上させることができ、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0056】
あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ES、チャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通してバッファ層BUFの途中まで達するように形成されてもよい。このとき、ソース領域SR1と半導体層SL1との接触面積を最大にすることができ、ドレイン領域DR1と半導体層SL1との接触面積を最大にすることができる。
【0057】
ソース領域SR1上には、ソース電極SEが形成されており、ドレイン領域DR1上には、ドレイン電極DEが形成されている。ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、いずれも導電体からなり、例えばチタン(Ti)膜と、チタン膜上に形成された金(Au)膜との積層膜などの金属膜からなる。ソース電極SEおよびドレイン電極DEの各々は、
図1の紙面に略垂直な方向に延在している。
【0058】
ソース電極SEは、ソース領域SR1とオーミック接続されており、ドレイン電極DEは、ドレイン領域DR1とオーミック接続されている。すなわち、ソース電極SEは、ソース領域SR1と電気的に接続されており、ドレイン電極DEは、ドレイン領域DR1と電気的に接続されている。
【0059】
ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分の電子供給層ES上には、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1のいずれからも離れてゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、導電体からなり、例えばニッケル(Ni)膜と、ニッケル膜上に形成された金(Au)膜との積層膜などの金属膜からなる。ゲート電極GEは、
図1の紙面に略垂直な方向に延在している。
【0060】
図1に示す例では、ゲート電極GEは、電子供給層ES上に、ゲート絶縁膜GIを介して形成されている。前述したように、電子供給層ESが、窒化物半導体領域SC1と、窒化物半導体領域SC2と、窒化物半導体領域SC3と、を含む場合、ゲート電極GEは、窒化物半導体領域SC3上に、ゲート絶縁膜GIを介して形成されることになる。これにより、ゲート電極GEが窒化物半導体領域SC3に直接接触している場合に比べ、トランジスタTR1におけるゲートリーク電流を低減することができる。
【0061】
好適には、ゲート絶縁膜GIのバンドギャップは、電子供給層ESのバンドギャップよりも大きい。これにより、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間においてゲート絶縁膜GIがエネルギー障壁となり、ゲート電極GEとゲート絶縁膜GIとの間のエネルギー障壁を越えてゲート電極GEとゲート絶縁膜GIとの間で電流がさらに流れにくくなるため、トランジスタTR1におけるゲートリーク電流をさらに低減することができる。このようなゲート絶縁膜GI用の絶縁膜として、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)または酸化シリコン(SiO
2)などからなる絶縁膜を用いることができる。
【0062】
好適には、ゲート電極GEとして、仕事関数が大きい金属膜が用いられる。これにより、ゲート電極GEとチャネル層CHとの間のフラットバンド電圧が大きくなり、トランジスタTR1の閾値電圧を高くすることができる。このようなゲート電極GE用の金属膜として、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)または白金(Pt)などからなる金属膜を用いることができる。
【0063】
一方、ゲート電極GEの材料と電子供給層ESとの材料とを調整することにより、ゲート電極GEと電子供給層ESとがショットキー接続される場合には、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間にゲート絶縁膜GIが形成されていなくてもよい。このような場合には、ゲート電極GEは、電子供給層ES上に直接接触するように形成されることになるが、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間のショットキー障壁を越えてゲート電極GEと電子供給層ESとの間で電流が流れにくくなるため、トランジスタTR1におけるゲートリーク電流を低減することができる。
【0064】
なお、
図1に示すように、好適には、ゲート電極GEの幅方向、すなわちゲート長方向におけるゲート電極GEとドレイン電極DEとの間隔は、ゲート長方向におけるゲート電極GEとソース電極SEとの間隔よりも大きい。これにより、ゲート長方向におけるゲート電極GEとドレイン電極DEとの間隔が、ゲート長方向におけるゲート電極GEとソース電極SEとの間隔以下である場合に比べ、ソース電極SEよりも高電圧が印加されるドレイン電極DEと、ゲート電極GEとの間の耐圧を、向上させることができる。
【0065】
図1に示す例では、電子供給層ES上、ソース領域SR1上、および、ドレイン領域DR1上には、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを覆うように、保護絶縁膜PIFが形成されている。保護絶縁膜PIFには、保護絶縁膜PIFを貫通してソース領域SR1の上面に達するコンタクトホールCNT1と、保護絶縁膜PIFを貫通してドレイン領域DR1の上面に達するコンタクトホールCNT2と、が形成されている。そして、コンタクトホールCNT1の底部に露出したソース領域SR1上に、コンタクトホールCNT1を埋め込むように、ソース電極SEが形成され、コンタクトホールCNT2の底部に露出したドレイン領域DR1上に、コンタクトホールCNT2を埋め込むように、ドレイン電極DEが形成されている。
【0066】
一方、保護絶縁膜PIFには、保護絶縁膜PIFを貫通してゲート電極GEの上面に達するコンタクトホールCNT3が形成されている。そして、コンタクトホールCNT3の底部に露出したゲート電極GE上に、コンタクトホールCNT3を埋め込むように、ゲート電極配線GWが形成されている。
【0067】
<HEMTとしてのトランジスタの動作>
次に、本実施の形態1の半導体装置のうちHEMTとしてのトランジスタの動作について説明する。
【0068】
図1に示す、HEMTとしてのトランジスタTR1においては、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに、2次元電子ガス2DEGが形成される。具体的には、チャネル層CHを構成する例えば窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップと、電子供給層ESを構成する例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)のバンドギャップとは、相違している。このため、バンドギャップの相違に基づく伝導帯オフセットの影響により、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに、底のエネルギーがフェルミ準位よりも低いポテンシャル井戸が形成される。その結果、ゲート電極GEの下に位置する部分以外の部分のチャネル層CHのうち、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分には、2次元電子ガス2DEGが形成され、この2次元電子ガス2DEGが、ソース領域SR1とドレイン領域DR1との間の電子の伝導経路、すなわち伝導パスとして機能する。なお、
図1において、2次元電子ガス2DEGは、破線で模式的に示してある。
【0069】
一方、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに形成される2次元電子ガス2DEGの密度は、ゲート電極GEに印加される電圧によって変化する。したがって、トランジスタTR1は、HEMTとして動作する。
【0070】
なお、ゲート電極GEに電圧を印加していないときに、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに、2次元電子ガス2DEGが形成される場合には、トランジスタTR1の閾値電圧が低下し、トランジスタTR1は、ノーマリオン型デバイスとして動作する。
【0071】
一方、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CHにおいて、チャネル層CHの伝導帯のエネルギーが上昇し、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分に形成されるポテンシャル井戸のエネルギーがフェルミ準位よりも高くなる場合がある。このような場合には、ゲート電極GEに電圧を印加していないときに、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに、2次元電子ガス2DEGは形成されないようにすることができる。これにより、トランジスタTR1の閾値電圧が上昇し、トランジスタTR1はノーマリオフ型デバイスとして動作する。
【0072】
<保護ダイオードの動作>
次に、本実施の形態1の半導体装置における保護ダイオードの動作について説明する。
図4は、実施の形態1の半導体装置の等価回路図である。
図5は、実施の形態1の半導体装置の保護ダイオードの電流電圧特性を模式的に示すグラフである。
図5の横軸は、ソース電極SEに対するドレイン電極DEの電圧Vを示し、
図5の縦軸は、ゲート電極GEに印加される電圧が0Vのときに、ドレイン電極DEからソース電極SEに流れる電流Iを示す。
【0073】
図4に示すように、本実施の形態1の半導体装置では、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを有するトランジスタTR1と、npnダイオードからなる保護ダイオードPDと、が電気的に並列に接続されている。すなわち、npnダイオードからなる保護ダイオードPDは、トランジスタTR1のソース電極SEとドレイン電極DEとの間に接続されている。npnダイオードからなる保護ダイオードPDは、2つのpn接合ダイオードを含む。2つのpn接合ダイオードのうち、ソース電極SE側に配置されたものを、pn接合ダイオードJD1と称し、ドレイン電極DE側に配置されたものを、pn接合ダイオードJD2と称する。2つのpn接合ダイオードJD1およびJD2は、それぞれのp型の半導体を共通としつつ、電気的に直列に接続されている。
【0074】
2つのpn接合ダイオードJD1およびJD2は、それぞれのpn接合に大きな逆バイアス電圧が印加されたときにアバランシェ降伏が発生して大電流が流れるダイオード、すなわちアバランシェダイオードである。したがって、2つのpn接合ダイオードJD1およびJD2を含むnpnダイオードからなる保護ダイオードPDも、アバランシェダイオードである。
【0075】
ここでは、ドレイン電極DEに、ソース電極SEよりも高電圧が印加される場合を例示して説明する。また、ドレイン電極DE側に配置されたpn接合ダイオードJD2のアバランシェ降伏電圧を、アバランシェ降伏電圧Vbdとする。
【0076】
図5に示すように、電圧Vがpn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbd以下の場合、電流Iは0である。このとき、pn接合ダイオードJD2には逆バイアスとしての電圧Vが印加されるため、pn接合ダイオードJD2を通って電流Iは流れない。すなわち、保護ダイオードPDを通って電流Iは流れない。
【0077】
一方、
図5に示すように、電圧Vがpn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdを超えた場合、電圧Vの増加に伴って電流Iは急激に増加する。このとき、pn接合ダイオードJD2に逆バイアスとしての過大な電圧Vが印加されるため、pn接合ダイオードJD2でアバランシェ降伏が起こり、pn接合ダイオードJD2を通って大電流としての電流Iが流れる。すなわち、保護ダイオードPDを通って大電流としての電流Iが流れる。
【0078】
トランジスタTR1において例えば絶縁破壊などの破壊が発生する電圧を破壊電圧とする。このとき、pn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdが、例えばトランジスタTR1の破壊電圧よりも低く、かつ、トランジスタTR1の通常の動作電圧の上限値よりも1割程度高くなるように、半導体層SL1におけるp型の不純物濃度、および、ドレイン領域DR1におけるn型の不純物濃度を調整する。
【0079】
これにより、pn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdよりも高い電圧がドレイン電極DEに印加された場合には、ドレイン領域DR1から保護ダイオードPDを通してソース領域SR1に電流を流すことにより、トランジスタTR1において例えば絶縁破壊などの破壊が発生することを防止することができる。なお、ドレイン電極DEに、通常の動作電圧の範囲内の電圧が印加された場合には、HEMTとしてのトランジスタTR1の動作には、影響が及ぼされない。したがって、npnダイオードからなる保護ダイオードPDは、HEMTからなるトランジスタTR1を保護する保護素子として機能する。
【0080】
同様に、pn接合ダイオードJD1におけるアバランシェ降伏電圧が、例えばトランジスタTR1の破壊電圧よりも低くなるように、半導体層SL1におけるp型の不純物濃度、および、ソース領域SR1におけるn型の不純物濃度を調整する。これにより、pn接合ダイオードJD1におけるアバランシェ降伏電圧Vbdよりも高い電圧がソース電極SEに印加された場合にも、ソース領域SR1から保護ダイオードPDを通してドレイン領域DR1に電流を流すことにより、トランジスタTR1において例えば絶縁破壊などの破壊が発生することを防止することができる。
【0081】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。
図6〜
図12は、実施の形態1の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0082】
初めに、
図6に示すように、例えば、(111)面が露出しているシリコンからなる半導体基板である基板SUB上に、例えば有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により、複数の窒化物半導体層を積層する。
【0083】
まず、基板SUB上に、バッファ層BUFを形成する。このバッファ層BUFを形成する工程では、例えば窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)とからなる超格子構造を有する窒化物半導体層からなるバッファ層BUFを、エピタキシャル成長により形成する。バッファ層BUFの厚さを、例えば2〜3μm程度とすることができる。
【0084】
次に、
図6に示すように、バッファ層BUF上に、例えばp型の窒化物半導体層からなる半導体層SL1を形成する。この半導体層SL1を形成する工程では、バッファ層BUF上に、例えばp型の窒化ガリウムからなる半導体層SL1を、マグネシウム(Mg)などのp型不純物を導入しながら、エピタキシャル成長により形成する。半導体層SL1の厚さを、例えば1〜3μm程度とすることができる。また、例えば、半導体層SL1におけるp型の不純物濃度を、1×10
16cm
−3を超える不純物濃度とすることができる。
【0085】
なお、イオン注入法によりp型の窒化ガリウムを形成する場合には、p型不純物の活性化率を高めることが困難であり、所望の不純物濃度を得るために、p型不純物を過剰に導入する必要がある。また、活性化率のばらつきも大きく、p型不純物濃度の制御が困難である。しかし、本実施の形態1では、p型の窒化ガリウムからなる半導体層SL1をエピタキシャル成長により形成するため、p型不純物の活性化率を高くすることができ、所望の不純物濃度を得るために、p型不純物を過剰に導入する必要がなく、p型の不純物濃度を精度よく制御することができる。したがって、保護ダイオードのアバランシェ降伏電圧を所望の値に容易に制御することができる。
【0086】
p型不純物としてマグネシウム(Mg)を用いる場合、工場内における他の半導体装置の製造工程においては、マグネシウムが半導体装置を汚染する物質となるおそれがある。しかし、半導体層SL1をエピタキシャル成長により形成する際に、マグネシウムを導入する場合、半導体層SL1を形成した後、イオン注入法によりマグネシウムを導入する場合に比べ、例えば、表面にマグネシウムが付着した状態の基板を、複数の製造装置の間で搬送する必要がない。これにより、工場内におけるマグネシウムによる汚染のおそれを低減することができる。
【0087】
次に、
図6に示すように、半導体層SL1上に、窒化物半導体層であるチャネル層CHを形成する。このチャネル層CHを形成する工程では、半導体層SL1上に、例えばアンドープの窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層CHを、エピタキシャル成長により形成する。チャネル層CHの厚さを、例えば20〜200nm程度とすることができる。
【0088】
次に、
図6に示すように、チャネル層CH上に、電子供給層ESを形成する。この電子供給層ESを形成する工程では、チャネル層CH上に、例えばアンドープの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる電子供給層ESを、エピタキシャル成長により形成する。電子供給層ESの厚さを、例えば10〜100nm程度とすることができる。また、前述したように、窒化アルミニウムガリウムの組成を組成式Al
xGa
(1−x)Nにより表す場合、好適には、xを0.1〜0.5とすることができる。
【0089】
このようにして、
図6に示すように、基板SUB上に、バッファ層BUF、半導体層SL1、チャネル層CHおよび電子供給層ESからなる半導体層構造が形成される。この半導体層構造は、例えば[0001]結晶軸(C軸)方向に積層するIII族面成長により形成される。また、チャネル層CHのうち、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分に、2次元電子ガス2DEG(
図1参照)が形成される。
【0090】
なお、半導体層SL1とバッファ層BUFとの間に、例えばアンドープの窒化ガリウム(GaN)からなる別の半導体層を形成してもよい。
【0091】
次に、
図7および
図8に示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する。
【0092】
このソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する工程では、まず、
図7に示すように、電子供給層ES上にフォトレジストを塗布してレジスト膜RF1を形成した後、パターン露光を行い、現像する。これにより、レジスト膜RF1を貫通する開口部OP1およびOP2が形成され、開口部OP1およびOP2が形成されたレジスト膜RF1からなるレジストパターンRP1が形成される。開口部OP1は、レジスト膜RF1を貫通してソース領域SR1(
図8参照)が形成される部分の電子供給層ESの上面に達する。開口部OP2は、レジスト膜RF1を貫通してドレイン領域DR1(
図8参照)が形成される部分の電子供給層ESの上面に達する。
【0093】
次に、
図7に示すように、レジストパターンRP1をマスクとしたイオン注入を行って、レジストパターンRP1の開口部OP1およびOP2の底部に露出した部分の電子供給層ESに、例えばシリコン(Si)などのn型不純物IM1を注入する。このとき、注入されるイオンのエネルギーなどイオン注入の条件を調整することにより、開口部OP1の底部に露出した部分の電子供給層ESのみならず、平面視において開口部OP1と重なる部分のチャネル層CHにまで、n型不純物としてのイオンを注入することができる。また、開口部OP2の底部に露出した部分の電子供給層ESのみならず、平面視において開口部OP2と重なる部分のチャネル層CHにまで、n型不純物としてのイオンを注入することができる。
【0094】
次に、レジストパターンRP1、すなわちレジスト膜RF1を除去し、例えば850℃程度の温度で20分程度の時間の間、熱処理を行って、注入されたn型不純物を活性化させる。これにより、
図8に示すように、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に、n型の窒化物半導体層からなるソース領域SR1、および、n型の窒化物半導体層からなるドレイン領域DR1が、平面視において、互いに離れて形成される。また、n型のソース領域SR1と、p型の半導体層SL1と、n型のドレイン領域DR1と、によりnpnダイオードからなる保護ダイオードPDが形成される。
【0095】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図8に示すように、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示したように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されてもよい。
図8に示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々が、半導体層SL1の途中まで達するように形成される場合には、例えばシリコン(Si)などのn型不純物をイオン注入法により電子供給層ESおよびチャネル層CHに導入する際のイオン注入の条件をそれほど高精度で制御する必要がない。そのため、半導体装置の製造歩留りを向上させることができ、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0096】
あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示したように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ES、チャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通してバッファ層BUFの途中まで達するように形成されてもよい。このとき、ソース領域SR1と半導体層SL1との接触面積を最大にすることができ、ドレイン領域DR1と半導体層SL1との接触面積を最大にすることができる。
【0097】
次に、
図9および
図10に示すように、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを形成する。
【0098】
まず、
図9に示すように、電子供給層ES上、ソース領域SR1上、および、ドレイン領域DR1上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜5を形成し、絶縁膜5上に、ゲート電極GE用の金属膜6を形成する。
【0099】
次に、金属膜6上にフォトレジストを塗布してレジスト膜(図示は省略)を形成した後、パターン露光を行い、現像することにより、パターニングされたレジスト膜からなるレジストパターン(図示は省略)を形成する。レジスト膜のパターニングは、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIが形成される領域以外の領域で、金属膜6が露出されるように行われる。
【0100】
次に、レジストパターンをマスクとするドライエッチングにより、金属膜6および絶縁膜5をパターニングする。これにより、
図10に示すように、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分の電子供給層ES上に残された部分の絶縁膜5からなるゲート絶縁膜GIを形成し、ゲート絶縁膜GI上に残された部分の金属膜6からなるゲート電極GEを形成する。このとき、半導体層SL1と、チャネル層CHと、電子供給層ESと、ソース領域SR1と、ドレイン領域DR1と、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、によりトランジスタTR1が形成される。その後、レジスト膜を除去する。
【0101】
前述したように、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとソース領域SR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC1を含む。また、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC2を含む。一方、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC3を含む。また、窒化物半導体領域SC3と、ゲート絶縁膜GIと、により膜部FP1が形成される。
【0102】
このとき、膜部FP1は、窒化物半導体からなる膜部FP11としての窒化物半導体領域SC3と、絶縁体からなる膜部FP12としてのゲート絶縁膜GIと、からなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP1を介して形成されることになる。
【0103】
なお、金属膜6をパターニングする際に、金属膜6と同一のレジストパターンを用いて絶縁膜5をパターニングしてもよいが、金属膜6をパターニングし、レジスト膜を除去した後、別のレジスト膜からなるレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを用いて絶縁膜5をパターニングしてもよい。あるいは、ゲート電極GEを形成する際には、絶縁膜5をパターニングせず、後述する
図12に示すように、保護絶縁膜PIFをパターニングする際に、絶縁膜5をパターニングしてもよい。
【0104】
好適には、絶縁膜5のバンドギャップは、電子供給層ESのバンドギャップよりも大きい。これにより、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間においてゲート絶縁膜GIがエネルギー障壁となり、ゲート電極GEとゲート絶縁膜GIとの間のエネルギー障壁を越えてゲート電極GEとゲート絶縁膜GIとの間で電流がさらに流れにくくなるため、トランジスタTR1におけるゲートリーク電流をさらに低減することができる。このような絶縁膜5として、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)または酸化シリコン(SiO
2)などからなる絶縁膜を用いることができる。
【0105】
好適には、金属膜6として、仕事関数が大きい金属膜が用いられる。これにより、金属膜6からなるゲート電極GEが、チャネル層CHとの間のフラットバンド電圧が大きくなり、トランジスタTR1の閾値電圧を高くすることができる。このような金属膜6として、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)または白金(Pt)などからなる金属膜を用いることができる。
【0106】
なお、ゲート電極GEの材料と電子供給層ESとの材料とを調整することにより、ゲート電極GEと電子供給層ESとがショットキー接続される場合には、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間にゲート絶縁膜GIが形成されなくてもよい。このような場合には、ゲート電極GEは、電子供給層ES上に直接接触するように形成されることになるが、ゲート電極GEと電子供給層ESとの間のショットキー障壁を越えてゲート電極GEと電子供給層ESとの間で電流が流れにくくなるため、トランジスタTR1におけるゲートリーク電流を低減することができる。
【0107】
次に、
図11に示すように、保護絶縁膜PIFを形成する。この保護絶縁膜PIFを形成する工程では、電子供給層ES上、ソース領域SR1上、および、ドレイン領域DR1上に、ゲート電極GEおよびゲート絶縁膜GIを覆うように、保護絶縁膜PIFを形成する。保護絶縁膜PIFとして、例えば酸化シリコン(SiO
2)膜、窒化シリコン(SiN)膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜などからなる絶縁膜を用いることができる。
【0108】
次に、
図12に示すように、コンタクトホールCNT1、CNT2およびCNT3を形成する。まず、保護絶縁膜PIF上にレジスト膜(図示は省略)を形成した後、パターン露光を行い、現像することにより、パターニングされたレジスト膜からなるレジストパターン(図示は省略)を形成する。レジスト膜のパターニングは、平面視において、ソース領域SR1、ドレイン領域DR1およびゲート電極GEと重なる領域が露出されるように行われる。次に、レジストパターンをマスクとするドライエッチングにより、保護絶縁膜PIFをパターニングする。これにより、
図12に示すように、保護絶縁膜PIFを貫通してソース領域SR1の上面に達するコンタクトホールCNT1が形成され、保護絶縁膜PIFを貫通してドレイン領域DR1の上面に達するコンタクトホールCNT2が形成される。また、保護絶縁膜PIFを貫通してゲート電極GEの上面に達するコンタクトホールCNT3が形成される。その後、レジスト膜を除去する。
【0109】
次に、
図1に示すように、ソース電極SE、ドレイン電極DEおよびゲート電極配線GWを形成する。このソース電極SE、ドレイン電極DEおよびゲート電極配線GWを形成する工程では、コンタクトホールCNT1の内部、コンタクトホールCNT2の内部、コンタクトホールCNT3の内部、および、保護絶縁膜PIF上に、ソース電極SE用、ドレイン電極DE用、および、ゲート電極配線GW用の金属膜を形成する。このとき、金属膜は、コンタクトホールCNT1の底部に露出した部分のソース領域SR1上に、コンタクトホールCNT1を埋め込むように形成され、コンタクトホールCNT2の底部に露出した部分のドレイン領域DR1上に、コンタクトホールCNT2を埋め込むように形成される。また、金属膜は、コンタクトホールCNT3の底部に露出した部分のゲート電極GE上に、コンタクトホールCNT3を埋め込むように形成される。なお、金属膜として、例えばアルミニウム(Al)膜、または、アルミニウム膜と窒化チタン膜との積層膜など、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々とオーミック接続され、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々と低い電気的に低抵抗で接続される材料からなる金属膜を用いることが望ましい。
【0110】
次に、金属膜を例えばフォトリソグラフィおよびエッチングを用いてパターニングすることにより、
図1に示すように、ソース電極SE、ドレイン電極DEおよびゲート電極配線GWが形成される。以上のようにして、
図1に示すように、トランジスタTR1を製造することができる。
【0111】
<電界効果トランジスタの耐圧について>
電界効果トランジスタが例えばHEMTからなる場合、HEMT中にはpn接合が存在しないため、ドレイン電極に高電圧が印加された場合における耐圧を高くすることは、困難である。そのため、電界効果トランジスタとして例えば窒化ガリウム(GaN)からなるHEMTを備えた半導体装置において、基板上に、HEMTからなる電界効果トランジスタと、保護ダイオードと、を混載する場合がある。
【0112】
ここで、
図5を用いて説明したように、保護ダイオードPDとして、pn接合に大きな逆バイアス電圧が印加されたときにアバランシェ降伏が発生して大電流が流れるダイオード、すなわちアバランシェダイオードを用いることができる。このとき、アバランシェダイオードのpn接合に大きな逆バイアス電圧が印加され、そのpn接合においてアバランシェ降伏が発生して大電流が流れる場合における印加電圧、すなわち、アバランシェ降伏電圧を高くする。これにより、例えばドレイン電極など、電界効果トランジスタのいずれかの電極に過大な電圧が印加された場合でも、電界効果トランジスタが破壊されないように、電界効果トランジスタを確実に保護することができる。
【0113】
上記特許文献1および特許文献2に記載された技術では、シリコン(Si)からなる基板上には、HEMTからなる電界効果トランジスタが形成され、シリコンからなる基板中には、保護ダイオードとしてのnpnバイポーラトランジスタまたはpinダイオードが形成される。しかし、例えば窒化ガリウムなどの窒化物半導体のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有するシリコン中に形成されたバイポーラトランジスタおよびダイオードの耐圧を高くすることは、困難である。このような場合、例えば窒化ガリウムからなるHEMTが高電圧用の電界効果トランジスタであっても、保護ダイオードのアバランシェ降伏電圧が低い。そのため、電界効果トランジスタを高電圧用として用いる場合に、保護ダイオードを、電界効果トランジスタを保護する保護素子として用いることができない。
【0114】
上記特許文献1に記載された技術では、シリコン(Si)に代え、窒化ガリウム(GaN)または炭化シリコン(SiC)からなる基板上に、HEMTからなる電界効果トランジスタが形成され、窒化ガリウムまたは炭化シリコンからなる基板中に、保護ダイオードとしてのnpnバイポーラトランジスタが形成されることもできる。このような場合、保護ダイオードのアバランシェ降伏電圧を高くすることができ、電界効果トランジスタを高電圧用として用いる場合でも、保護ダイオードを、電界効果トランジスタを保護する保護素子として用いることはできる。しかし、窒化ガリウムからなる基板の製造コスト、および、炭化シリコンからなる基板の製造コストのいずれも、シリコンからなる基板の製造コストに比べて高いので、半導体装置の製造コストが高くなる。
【0115】
一方、上記特許文献3に記載された技術では、HEMTからなる電界効果トランジスタの側方に、保護ダイオードとしての縦型のpnpダイオードが形成される。このような場合、保護ダイオードのアバランシェ降伏電圧を高くすることにより、電界効果トランジスタを高電圧用として用いる場合でも、保護ダイオードを、電界効果トランジスタを保護する保護素子として用いることはできる。しかし、半導体装置の面積が増加するため、半導体装置の製造コストが高くなる。
【0116】
このように、製造コストの低いシリコンからなる基板上の窒化物半導体層に形成されたHEMTからなる電界効果トランジスタを備えた半導体装置において、半導体装置の面積を増加させずに、高いアバランシェ降伏電圧を有する保護ダイオードを電界効果トランジスタと混載することは、困難である。
【0117】
また、電界効果トランジスタがMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)からなる場合を考える。このような場合でも、製造コストの低いシリコンからなる基板上の窒化物半導体層に形成された電界効果トランジスタを備えた半導体装置において、半導体装置の面積を増加させずに、高いアバランシェ降伏電圧を有する保護ダイオードを電界効果トランジスタと混載することは、困難である。
【0118】
このような場合、窒化物半導体からなる電界効果トランジスタが高電圧用のものであっても、その電界効果トランジスタを備えた半導体装置を使用する電圧の範囲を高く設定することができず、半導体装置の性能が低下する。
【0119】
なお、上記特許文献4に記載された技術では、イオン注入法によりp型の窒化ガリウム(GaN)を形成する。しかし、イオン注入法により導入されたp型不純物を活性化することは困難である。そのため、所望の不純物濃度を得るために、p型不純物を過剰に導入する必要があり、p型の窒化ガリウムにおける電子移動度が低下するおそれがある。
【0120】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態1の半導体装置は、シリコンからなる基板SUBと、基板SUB上に形成されたp型の窒化物半導体層からなる半導体層SL1と、半導体層SL1上に形成された窒化物半導体からなるチャネル層CHを含む電界効果トランジスタとしてのトランジスタTR1と、を有する。また、本実施の形態1の半導体装置は、チャネル層CH中に形成されたn型のソース領域SR1と、チャネル層CH中に、平面視においてソース領域SR1と離れて形成された、n型のドレイン領域DR1と、を有する。ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、半導体層SL1と接触している。
【0121】
すなわち、本実施の形態1の半導体装置では、基板SUB上に、ソース領域SR1と、半導体層SL1と、ドレイン領域DR1と、からなる保護ダイオードPDが形成され、保護ダイオードPD上に、電界効果トランジスタとしてのトランジスタTR1が形成されている。
【0122】
これにより、保護ダイオードを、シリコンのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体中に形成することができるので、保護ダイオードのアバランシェ降伏電圧を高くすることができる。そのため、電界効果トランジスタを高電圧用として用いる場合にも、保護ダイオードを、電界効果トランジスタを保護する保護素子として用いることができる。
【0123】
また、保護ダイオードを、電界効果トランジスタの下に形成することができる。そのため、半導体装置の面積を増加させることなく、保護ダイオードを電界効果トランジスタと混載することができる。あるいは、電界効果トランジスタが形成された基板とは別の基板に形成された保護ダイオードを、電界効果トランジスタが形成された基板とは別に外付けにより実装する方法に比べ、半導体装置を実装する面積を削減することができ、半導体装置に含まれる部品の数を削減することができる。
【0124】
すなわち、本実施の形態1によれば、製造コストの低いシリコンからなる基板上の窒化物半導体層に形成されたHEMTからなる電界効果トランジスタを備えた半導体装置において、半導体装置の面積を増加させずに、高いアバランシェ降伏電圧を有する保護ダイオードを電界効果トランジスタと混載することができる。このような場合、電界効果トランジスタを備えた半導体装置を使用する電圧の範囲を高く設定することができるので、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0125】
(実施の形態2)
実施の形態1では、電界効果トランジスタの下に保護ダイオードが設けられた構造を、電界効果トランジスタとして、ゲート電極の下に位置する部分も含めて、ソース電極とドレイン電極とで挟まれた部分のチャネル層の上面全面に電子供給層が形成された通常の積層構造を有するHEMTが用いられた場合に適用した例について説明した。すなわち、実施の形態1では、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、電子供給層ESの一部としての窒化物半導体からなる窒化物半導体領域SC3を含む膜部FP1を介して形成されていた。
【0126】
一方、本発明者らは、電界効果トランジスタの下に保護ダイオードが設けられた構造を、電界効果トランジスタとして、上述の通常の積層構造を有するHEMTに代え、ゲート電極の下に位置する部分の電子供給層に凹部が形成された、いわゆるリセス構造を有するHEMTが用いられた場合に適用しても、何ら問題がないことを見出した。したがって、実施の形態2では、電界効果トランジスタの下に保護ダイオードが設けられた構造を、電界効果トランジスタとして、リセス構造を有するHEMTが用いられた場合に適用した例について説明する。すなわち、実施の形態2の半導体装置では、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、ゲート絶縁膜GIからなる膜部FP2を介して形成されている。
【0127】
<半導体装置の構造および半導体装置の動作>
実施の形態2の半導体装置も、実施の形態1の半導体装置と同様に、電界効果トランジスタとしてHEMTを有する半導体装置である。したがって、以下では、実施の形態2の半導体装置のうち、実施の形態1と同様の部分についての説明を省略し、主として、実施の形態1と異なる部分について、説明する。
【0128】
図13は、実施の形態2の半導体装置の要部断面図である。
図13に示すように、本実施の形態2の半導体装置は、基板SUBと、基板SUBに形成された電界効果トランジスタとしてのHEMTであるトランジスタTR1と、を備えている。
【0129】
トランジスタTR1は、基板SUB上に形成された窒化物半導体層からなるバッファ層BUFと、バッファ層BUF上に形成されたp型の窒化物半導体層からなる半導体層SL1と、を有する。また、トランジスタTR1は、半導体層SL1上に形成された窒化物半導体層からなるチャネル層CHと、チャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる電子供給層ESと、を有する。
【0130】
トランジスタTR1は、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に形成された窒化物半導体層からなるソース領域SR1を有する。また、トランジスタTR1は、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に、平面視においてソース領域SR1と離れて形成された窒化物半導体層からなるドレイン領域DR1を有する。ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、チャネル層CHの上面からチャネル層CHを貫通して半導体層SL1に達しており、半導体層SL1と接触している。n型のソース領域SR1と、p型の半導体層SL1と、n型のドレイン領域DR1と、によりnpnダイオードからなる保護ダイオードPDが形成されている。
【0131】
本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、ソース領域SR1の上面からソース領域SR1の途中まで達する開口部OPS1が形成され、ドレイン領域DR1の上面からドレイン領域DR1の途中まで達する開口部OPS2が形成されている。開口部OPS1は、コンタクトホールCNT1と連通し、開口部OPS2は、コンタクトホールCNT2と連通する。したがって、ソース電極SEは、開口部OPS1の底部に露出したソース領域SR1上に、コンタクトホールCNT1および開口部OPS1を埋め込むように、形成されている。また、ドレイン電極DEは、開口部OPS2の底部に露出したドレイン領域DR1上に、コンタクトホールCNT2および開口部OPS2を埋め込むように、形成されている。
【0132】
好適には、ソース電極SEが、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する電子供給層ES中に形成された部分のソース領域SR1を介さずに、チャネル層CH中に形成された部分のソース領域SR1と電気的に直接接続される。これにより、ソース電極SEとソース領域SR1とを電気的に低抵抗で接続することができる。
【0133】
また、好適には、ドレイン電極DEが、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する電子供給層ES中に形成された部分のドレイン領域DR1を介さずに、チャネル層CH中に形成された部分のドレイン領域DR1と電気的に直接接続される。これにより、ドレイン電極DEとドレイン領域DR1とを電気的に低抵抗で接続することができる。
【0134】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図13に示すように、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されていてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されていてもよい。あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ES、チャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通してバッファ層BUFの途中まで達するように形成されていてもよい。
【0135】
本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、トランジスタTR1は、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分の電子供給層ESを貫通してチャネル層CHの上面に達する開口部OPS3を有する。そして、トランジスタTR1は、開口部OPS3の底部に露出した部分のチャネル層CH上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に形成されたゲート電極GEと、を有する。
【0136】
すなわち開口部OPS3が形成された領域では、チャネル層CH上に電子供給層ESが形成されていない。
【0137】
本実施の形態2では、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとソース領域SR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC1を含む。また、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC2を含む。一方、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC3(
図1参照)を含まない。また、ゲート絶縁膜GIにより膜部FP2が形成されている。
【0138】
このとき、膜部FP2は、絶縁体からなる膜部FP21としてのゲート絶縁膜GIかららなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されていることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP2を介して形成されていることになる。
【0139】
好適には、電子供給層ESのバンドギャップは、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きい。すなわち、窒化物半導体領域SC1のバンドギャップ、および、窒化物半導体領域SC2のバンドギャップのいずれも、チャネル層CHのバンドギャップよりも大きい。
【0140】
また、トランジスタTR1は、ソース領域SR1と電気的に接続されたソース電極SEと、ドレイン領域DR1と電気的に接続されたドレイン電極DEと、を有する。
【0141】
本実施の形態2の半導体装置のうちHEMTとしてのトランジスタTR1の動作については、実施の形態1の半導体装置のうちHEMTとしてのトランジスタTR1の動作と同様である。
【0142】
一方、本実施の形態2では、HEMTとしてのトランジスタTR1は、ゲート電極GEの下に位置する部分の電子供給層ESに開口部OPS3が形成された、いわゆるリセス構造を有する。すなわち、本実施の形態2では、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分の電子供給層ESが除去されており、ゲート電極GEが、チャネル層CH上にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。これにより、本実施の形態2では、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CHでは、実施の形態1に比べ、2次元電子ガス2DEGの形成が抑制される。すなわち、本実施の形態2では、実施の形態1に比べ、平面視において、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHとゲート絶縁膜GIとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに発生する2次元電子ガス2DEGの密度が減少する。そのため、本実施の形態2では、実施の形態1に比べ、トランジスタTR1の閾値電圧を上昇させやすくなり、トランジスタTR1をノーマリオフ型デバイスとして動作させやすくなる。
【0143】
したがって、HEMTからなる電界効果トランジスタを備えた半導体装置を、例えばモータやエンジン制御などの高電力用の電気機器で用いる場合において、ゲート電極GEに入力される制御信号が停止した場合でも、半導体装置を含む電気機器を自動的に停止させることができるので、電気機器の安全性をより高めることができる。
【0144】
<保護ダイオードの動作>
本実施の形態2における保護ダイオードPDの動作も、実施の形態1において
図4および
図5を用いて説明した保護ダイオードPDの動作と同様である。すなわち、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、pn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdよりも高い電圧が印加された場合にも、保護ダイオードPDを通して電流を流すことにより、トランジスタTR1が物理的に破壊されることを防止することができる。
【0145】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態2の半導体装置の製造方法について説明する。
図14〜
図18は、実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0146】
初めに、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程と同様の工程を行って、例えば、シリコンからなる半導体基板である基板SUB上に、複数の窒化物半導体層を積層する。なお、バッファ層BUF、半導体層SL1、チャネル層CHおよび電子供給層ESの各窒化物半導体層を形成する際の、形成方法、材料および厚さは、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程のうち各窒化物半導体層を形成する際の、形成方法、材料および厚さと同様にすることができる。
【0147】
次に、実施の形態1で
図7および
図8を用いて説明した工程と同様の工程を行って、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する。これにより、電子供給層ES中およびチャネル層CH中に、n型の窒化物半導体層からなるソース領域SR1、および、窒化物半導体層からなるドレイン領域DR1が、平面視において、互いに離れて形成される。また、n型のソース領域SR1と、p型の半導体層SL1と、n型のドレイン領域DR1と、によりnpnダイオードからなる保護ダイオードPDが形成される。
【0148】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図8を用いて実施の形態1として示した例と同様に、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されてもよい。あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ES、チャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通してバッファ層BUFの途中まで達するように形成されてもよい。
【0149】
次に、
図14に示すように、開口部OPS1、OPS2およびOPS3を形成する。まず、ソース領域SR1上、ドレイン領域DR1上、および、電子供給層ES上に、レジスト膜(図示は省略)を形成した後、パターン露光を行い、現像することにより、パターニングされたレジスト膜からなるレジストパターン(図示は省略)を形成する。レジスト膜のパターニングは、平面視において、開口部OPS1、OPS2およびOPS3の各々と重なる領域が露出されるように行われる。次に、レジストパターンをマスクとするドライエッチングにより、ソース領域SR1、ドレイン領域DR1および電子供給層ESをパターニングする。これにより、
図14に示すように、ソース領域SR1の上面からソース領域SR1の途中まで達する開口部OPS1が形成され、ドレイン領域DR1の上面からドレイン領域DR1の途中まで達する開口部OPS2が形成され、電子供給層ESを貫通してチャネル層CHの上面に達する開口部OPS3が形成される。その後、レジスト膜を除去する。
【0150】
次に、
図15および
図16に示すように、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを形成する。
【0151】
まず、実施の形態1で
図9を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図15に示すように、開口部OPS1の底部に露出した部分のソース領域SR1上、および、開口部OPS2の底部に露出した部分のドレイン領域DR1上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜5を形成する。また、開口部OPS3の底部に露出した部分のチャネル層CH上、および、電子供給層ES上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜5を形成する。そして、絶縁膜5上に、ゲート電極GE用の金属膜6を形成する。
【0152】
次に、実施の形態1で
図10を用いて説明した工程と同様の工程を行って、金属膜6および絶縁膜5をパターニングする。これにより、
図16に示すように、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれ、かつ、開口部OPS3の底部に露出した部分のチャネル層CH上に残された部分の絶縁膜5からなるゲート絶縁膜GIを形成し、ゲート絶縁膜GI上に残された部分の金属膜6からなるゲート電極GEを形成する。このとき、半導体層SL1と、チャネル層CHと、電子供給層ESと、ソース領域SR1と、ドレイン領域DR1と、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、によりトランジスタTR1が形成される。その後、レジスト膜を除去する。
【0153】
前述したように、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとソース領域SR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC1を含む。また、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEとドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC2を含む。一方、電子供給層ESは、平面視において、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CH上に形成された窒化物半導体層からなる窒化物半導体領域SC3(
図1参照)を含まない。また、ゲート絶縁膜GIにより膜部FP2が形成される。
【0154】
このとき、膜部FP2は、絶縁体からなる膜部FP21としてのゲート絶縁膜GIからなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP2を介して形成されることになる。
【0155】
次に、実施の形態1で
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図17に示すように、保護絶縁膜PIFを形成する。
【0156】
次に、実施の形態1で
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図18に示すように、コンタクトホールCNT1、CNT2およびCNT3を形成する。このとき、開口部OPS1およびOPS2の各々の内部の保護絶縁膜PIFも除去される。
【0157】
次に、実施の形態1で
図1を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図13に示すように、ソース電極SE、ドレイン電極DEおよびゲート電極配線GWを形成する。以上のようにして、
図13に示すように、トランジスタTR1を製造することができる。
【0158】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、基板SUB上に、ソース領域SR1と、半導体層SL1と、ドレイン領域DR1と、からなる保護ダイオードPDが形成され、保護ダイオードPD上に、電界効果トランジスタとしてのトランジスタTR1が形成されている。これにより、本実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様の効果を有する。
【0159】
一方、本実施の形態2では、電界効果トランジスタがいわゆるリセス構造のHEMTからなり、ゲート電極GEが、チャネル層CH上に、絶縁体からなる膜部FP2を介して形成されている。これにより、本実施の形態2では、実施の形態1に比べ、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと膜部FP2との界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに発生する2次元電子ガス2DEGの密度が減少する。そのため、本実施の形態2では、実施の形態1に比べ、トランジスタTR1の閾値電圧を上昇させやすくなり、トランジスタTR1からなる電界効果トランジスタをノーマリオフ型デバイスとして動作させやすくなる。
【0160】
(実施の形態3)
実施の形態3の半導体装置は、実施の形態2の半導体装置において、バッファ層BUF(
図13参照)と半導体層SL1(
図13参照)との間に、自発分極を有する窒化物半導体層が形成されたものである。
【0161】
<半導体装置の構造および半導体装置の動作>
実施の形態3の半導体装置も、実施の形態2の半導体装置と同様に、電界効果トランジスタとしてリセス構造のHEMTを有する半導体装置である。
【0162】
図19は、実施の形態3の半導体装置の要部断面図である。
図19に示すように、本実施の形態3の半導体装置は、バッファ層BUFと半導体層SL1との間に、自発分極を有する窒化物半導体層からなる半導体層SL2が形成されている点を除き、
図13に示した実施の形態2の半導体装置と同様の構造を有する。
【0163】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図19に示すように、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されていてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ESおよびチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されていてもよい。あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、電子供給層ES、チャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通して、例えば半導体層SL2またはバッファ層BUFの途中まで達するように形成されていてもよい。
【0164】
本実施の形態3では、実施の形態2と異なり、バッファ層BUF上には、半導体層SL2が形成されており、半導体層SL1は、半導体層SL2上に、形成されている。半導体層SL2の厚さを、例えば1〜2μm程度とすることができる。
【0165】
好適には、半導体層SL2の自発分極量は、チャネル層CHの自発分極量よりも大きい。したがって、チャネル層CHとして窒化ガリウム(GaN)からなる窒化物半導体層を用いるときは、好適には、半導体層SL2として窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる窒化物半導体層を用いることができる。また、窒化アルミニウムガリウムの組成を組成式Al
yGa
(1−y)Nにより表す場合、より好適には、yは0.005〜0.1である。すなわち、半導体層SL2における、アルミニウムとガリウムとの和に対するアルミニウムの組成比は、0.005〜0.1である。
【0166】
yが0.005未満の場合、半導体層SL2の自発分極量と、チャネル層CHの自発分極量との差が小さく、半導体層SL2を形成する効果が得られなくなるおそれがある。一方、yが0.1を超える場合、半導体層SL2と半導体層SL1との間の格子不整合が大きくなるおそれがある。
【0167】
また、半導体層SL2には、p型不純物が導入されていてもよい。半導体層SL2にp型不純物が導入されている場合、半導体層SL2を、半導体層SL2の自発分極により2次元電子ガス2DEGの形成を抑制するために機能させることができ、かつ、npnダイオードからなる保護ダイオードPDのp型の半導体層SL1の一部としても機能させることができる。
【0168】
本実施の形態3の半導体装置のうちHEMTとしてのトランジスタTR1の動作については、実施の形態2の半導体装置のうちHEMTとしてのトランジスタTR1の動作と同様である。
【0169】
一方、本実施の形態3では、半導体層SL2の自発分極の効果により、平面視において、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHでは、実施の形態2に比べ、2次元電子ガス2DEGの形成が抑制される。すなわち、本実施の形態3では、実施の形態2に比べ、平面視において、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと電子供給層ESとの界面近傍に位置する部分のチャネル層CHで発生する2次元電子ガス2DEGの密度が減少する。そのため、本実施の形態3では、実施の形態2に比べ、トランジスタTR1の閾値電圧をさらに上昇させやすくなり、トランジスタTR1をさらにノーマリオフ型デバイスとして動作させやすくなる。
【0170】
なお、アルミニウムとガリウムとの和に対するアルミニウムの組成比が大きいほど、自発分極量が大きくなるので、閾値電圧を上昇させることができる。また、チャネル層CHの厚さが厚くなると、半導体層SL2の自発分極による2次元電子ガス2DEGの密度を減少させる効果が小さくなるため、半導体層SL1の厚さとチャネル層CHの厚さとの合計が200nm以下であることが望ましい。
【0171】
<保護ダイオードの動作>
本実施の形態3における保護ダイオードPDの動作も、実施の形態1において
図4および
図5を用いて説明した保護ダイオードPDの動作と同様である。すなわち、本実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、pn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdよりも高い電圧が印加された場合にも、保護ダイオードPDを通して電流を流すことにより、トランジスタTR1が物理的に破壊されることを防止することができる。
【0172】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態3の半導体装置の製造方法について説明する。
図20は、実施の形態3の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0173】
初めに、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程のうち一部の工程と同様の工程を行って、
図20に示すように、例えば、シリコンからなる半導体基板である基板SUB上に、複数の窒化物半導体層を積層する。
図20に示す工程では、バッファ層BUF、半導体層SL1、チャネル層CHおよび電子供給層ESに加えて、さらに、半導体層SL2を形成する。なお、バッファ層BUF、半導体層SL1およびチャネル層CHおよび電子供給層ESの各窒化物半導体層を形成する際の、形成方法、材料および厚さは、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程のうち各窒化物半導体層を形成する際の、形成方法、材料および厚さと同様にすることができる。
【0174】
具体的には、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程の一部の工程と同様の工程を行って、基板SUB上にバッファ層BUFを形成した後、バッファ層BUF上に、自発分極を有する窒化物半導体層からなる半導体層SL2を形成する。この半導体層SL2を形成する工程では、バッファ層BUF上に、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる半導体層SL2を、エピタキシャル成長により形成する。半導体層SL2の厚さを、例えば1〜2μm程度とすることができる。また、前述したように、窒化アルミニウムガリウムの組成を組成式Al
yGa
(1−y)Nにより表す場合、好適には、yを0.005〜0.1とすることができる。
【0175】
次に、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程の一部の工程と同様の工程を行って、半導体層SL2上に半導体層SL1を形成した後、半導体層SL1上にチャネル層CHを形成し、チャネル層CH上に電子供給層ESを形成する。
【0176】
その後、実施の形態2で
図14〜
図18を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図19に示すように、トランジスタTR1を製造することができる。
【0177】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、基板SUB上に、ソース領域SR1と、半導体層SL1と、ドレイン領域DR1と、からなる保護ダイオードPDが形成され、保護ダイオードPD上に、電界効果トランジスタとしてのトランジスタTR1が形成されている。これにより、本実施の形態3の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様の効果を有する。
【0178】
また、本実施の形態3では、実施の形態2と同様に、電界効果トランジスタがいわゆるリセス構造のHEMTからなり、ゲート電極GEが、チャネル層CH上に、絶縁体からなる膜部FP2を介して形成されている。これにより、本実施の形態3でも、実施の形態2と同様に、実施の形態1に比べ、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと膜部FP2との界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに発生する2次元電子ガス2DEGの密度が減少する。
【0179】
一方、本実施の形態3では、バッファ層BUFと半導体層SL1との間に、自発分極を有する窒化物半導体層からなる半導体層SL2が形成されている。半導体層SL2の自発分極量は、チャネル層CHの自発分極量よりも大きい。これにより、本実施の形態3では、実施の形態2に比べ、ゲート電極GEの下に位置し、かつ、チャネル層CHと膜部FP2との界面近傍に位置する部分のチャネル層CHに発生する2次元電子ガス2DEGの密度が、さらに減少する。そのため、本実施の形態3では、実施の形態2に比べ、トランジスタTR1の閾値電圧をさらに上昇させやすくなり、トランジスタTR1からなる電界効果トランジスタをさらにノーマリオフ型デバイスとして動作させやすくなる。
【0180】
(実施の形態4)
実施の形態1では、電界効果トランジスタの下に保護ダイオードが設けられた構造を、電界効果トランジスタとして、チャネル層に2次元電子ガスが形成されるHEMTが用いられた場合に適用した例について説明した。それに対して、実施の形態4では、電界効果トランジスタの下に保護ダイオードが設けられた構造を、電界効果トランジスタとして、チャネル層にチャネル領域が形成されるMISFETが用いられた場合に適用した例について説明する。
【0181】
<半導体装置の構造および半導体装置の動作>
実施の形態4の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と異なり、電界効果トランジスタとしてMISFETを有する半導体装置である。
【0182】
図21は、実施の形態4の半導体装置の要部断面図である。
図21に示すように、本実施の形態4の半導体装置は、基板SUBと、基板SUBに形成された電界効果トランジスタとしてのMISFETであるトランジスタTR2と、を備えている。
【0183】
トランジスタTR2は、基板SUB上に形成された窒化物半導体層からなるバッファ層BUFと、バッファ層BUF上に形成されたp型の窒化物半導体層からなる半導体層SL1と、半導体層SL1上に形成された窒化物半導体層からなるチャネル層CHと、を有する。
【0184】
また、トランジスタTR2は、チャネル層CH中に形成された窒化物半導体層からなるソース領域SR1と、チャネル層CH中に、平面視においてソース領域SR1と離れて形成された窒化物半導体層からなるドレイン領域DR1と、を有する。ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、チャネル層CHの上面からチャネル層CHを貫通して半導体層SL1に達しており、半導体層SL1と接触している。n型のソース領域SR1と、p型の半導体層SL1と、n型のドレイン領域DR1と、によりnpnダイオードからなる保護ダイオードPDが形成されている。
【0185】
なお、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、
図21に示すように、チャネル層CHの上面からチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の途中まで達するように形成されていてもよい。または、
図2を用いて実施の形態1の第1変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、チャネル層CHの上面からチャネル層CHを貫通して半導体層SL1の上面に達するように形成されていてもよい。あるいは、
図3を用いて実施の形態1の第2変形例として示した例と同様に、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1の各々は、チャネル層CHの上面からチャネル層CHおよび半導体層SL1を貫通してバッファ層BUFの途中まで達するように形成されていてもよい。
【0186】
また、トランジスタTR2は、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に形成されたゲート電極GEと、を有する。
【0187】
本実施の形態4では、ゲート絶縁膜GIにより膜部FP3が形成されている。このとき、膜部FP3は、絶縁体からなる膜部FP31としてのゲート絶縁膜GIからなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されていることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP3を介して形成されていることになる。
【0188】
また、トランジスタTR2は、ソース領域SR1と電気的に接続されたソース電極SEと、ドレイン領域DR1と電気的に接続されたドレイン電極DEと、を有する。
【0189】
本実施の形態4では、実施の形態1と異なり、トランジスタTR2は、平面視において、ゲート電極GEのソース領域SR1側の側面SS1と隣り合う部分のチャネル層CHの上層部に形成されたn型の半導体領域SR2を有する。また、トランジスタTR2は、平面視において、ゲート電極GEのドレイン領域DR1側の側面SS2と隣り合う部分のチャネル層CHの上層部に形成されたn型の半導体領域DR2を有する。
【0190】
半導体領域SR2は、ソース領域SR1と接触し、半導体領域DR2は、ドレイン領域DR1と接触している。また、半導体領域SR2におけるn型の不純物濃度は、ソース領域SR1におけるn型の不純物濃度よりも小さく、半導体領域DR2におけるn型の不純物濃度は、ドレイン領域DR1におけるn型の不純物濃度よりも小さい。これにより、LDD(Lightly Doped Drain)領域としての半導体領域SR2と、ソース領域SR1とからなるLDD構造が形成されており、LDD領域としての半導体領域DR2と、ドレイン領域DR1とからなるLDD構造が形成されている。
【0191】
図21に示す、MISFETとしてのトランジスタTR2においては、ゲート電極GEに閾値電圧を超える電圧が印加されることにより、ゲート電極GEの下に位置する部分のチャネル層CHの上面付近に反転層が形成される。この反転層が、ソース領域SR1とドレイン領域DR1との間の電子の伝導経路、すなわち伝導パスとして機能することにより、トランジスタTR2がオン状態になる。
【0192】
<保護ダイオードの動作>
本実施の形態4における保護ダイオードPDの動作も、実施の形態1において
図4および
図5を用いて説明した保護ダイオードPDの動作と同様である。すなわち、本実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、pn接合ダイオードJD2におけるアバランシェ降伏電圧Vbdよりも高い電圧が印加された場合にも、保護ダイオードPDを通して電流を流すことにより、トランジスタTR2が物理的に破壊されることを防止することができる。
【0193】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態4の半導体装置の製造方法について説明する。
図22〜
図28は、実施の形態4の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0194】
初めに、実施の形態1で
図6を用いて説明した工程のうち一部の工程と同様の工程を行って、
図22に示すように、例えば、シリコンからなる半導体基板である基板SUB上に、バッファ層BUF、半導体層SL1およびチャネル層CHを形成する。
【0195】
次に、
図23〜
図26に示すように、半導体領域SR2およびDR2、ならびに、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する。
【0196】
この半導体領域SR2およびDR2、ならびに、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する工程では、まず、
図23に示すように、チャネル層CH上にフォトレジストを塗布してレジスト膜RF2を形成した後、パターン露光を行い、現像する。これにより、レジスト膜RF2を貫通する開口部OP3およびOP4が形成され、開口部OP3およびOP4が形成されたレジスト膜RF2からなるレジストパターンRP2が形成される。開口部OP3は、レジスト膜RF2を貫通して半導体領域13(
図24参照)が形成される部分のチャネル層CHの上面に達する。開口部OP4は、レジスト膜RF2を貫通して半導体領域14(
図24参照)が形成される部分のチャネル層CHの上面に達する。
【0197】
次に、
図23に示すように、レジストパターンRP2をマスクとしたイオン注入を行って、レジストパターンRP2の開口部OP3およびOP4の底部に露出した部分のチャネル層CHに、例えばシリコン(Si)などのn型不純物IM2を注入した後、レジストパターンRP2、すなわちレジスト膜RF2を除去する。これにより、
図24に示すように、平面視において、ソース領域SR1および半導体領域SR2(
図26参照)と重なる部分のチャネル層CHの上層部に、n型不純物が導入された半導体領域13が形成される。また、平面視において、ドレイン領域DR1および半導体領域DR2(
図26参照)が形成される部分のチャネル層CHの上層部に、n型不純物が導入された半導体領域14が形成される。
【0198】
次に、
図25および
図26に示すように、ソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する。
【0199】
このソース領域SR1およびドレイン領域DR1を形成する工程では、まず、
図25に示すように、半導体領域13上、半導体領域14上、および、チャネル層CH上に、フォトレジストを塗布してレジスト膜RF3を形成した後、パターン露光を行い、現像する。これにより、レジスト膜RF3を貫通する開口部OP5およびOP6が形成され、開口部OP5およびOP6が形成されたレジスト膜RF3からなるレジストパターンRP3が形成される。開口部OP5は、レジスト膜RF3を貫通してソース領域SR1(
図26参照)が形成される部分の半導体領域13の上面に達する。開口部OP6は、レジスト膜RF3を貫通してドレイン領域DR1(
図26参照)が形成される部分の半導体領域14の上面に達する。
【0200】
次に、
図25に示すように、レジストパターンRP3をマスクとしたイオン注入を行って、レジストパターンRP3の開口部OP5の底部に露出した部分の半導体領域13、および、レジストパターンRP3の開口部OP6の底部に露出した部分の半導体領域14に、例えばシリコン(Si)などのn型不純物IM3を注入する。このとき、注入されるイオンのエネルギーなどイオン注入の条件を調整することにより、開口部OP5の底部に露出した部分の半導体領域13のみならず、平面視において開口部OP5と重なる部分のチャネル層CHにまで、n型不純物としてのイオンを注入することができる。また、開口部OP6の底部に露出した部分の半導体領域14のみならず、平面視において開口部OP6と重なる部分のチャネル層CHにまで、n型不純物としてのイオンを注入することができる。
【0201】
次に、レジストパターンRP3、すなわちレジスト膜RF3を除去し、例えば850℃程度の温度で20分程度の時間の間、熱処理を行って、注入されたn型不純物を活性化させる。これにより、
図26に示すように、チャネル層CH中に、窒化物半導体層からなるn型のソース領域SR1が形成され、チャネル層CH中に、窒化物半導体層からなるn型のドレイン領域DR1が、平面視においてソース領域SR1と離れて形成される。一方、平面視において、ゲート電極GEのソース領域SR1側の側面SS1(後述する
図28参照)と隣り合う部分のチャネル層CHの上層部に、n型の半導体領域SR2が形成される。また、平面視において、ゲート電極GEのドレイン領域DR1側の側面SS2(後述する
図28参照)と隣り合う部分のチャネル層CHの上層部に、n型の半導体領域DR2が形成される。
【0202】
次に、
図27および
図28に示すように、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを形成する。
【0203】
まず、実施の形態1で
図9を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図27に示すように、ソース領域SR1上、ドレイン領域DR1上、半導体領域SR2上、半導体領域DR2上、および、チャネル層CH上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜5を形成し、絶縁膜5上に、ゲート電極GE用の金属膜6を形成する。
【0204】
次に、実施の形態1で
図10を用いて説明した工程と同様の工程を行って、金属膜6および絶縁膜5をパターニングする。これにより、
図28に示すように、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に残された部分の絶縁膜5からなるゲート絶縁膜GIを形成し、ゲート絶縁膜GI上に残された部分の金属膜6からなるゲート電極GEを形成する。このとき、半導体層SL1と、チャネル層CHと、ソース領域SR1と、ドレイン領域DR1と、半導体領域SR2と、半導体領域DR2と、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、によりトランジスタTR2が形成される。
【0205】
前述したように、ゲート絶縁膜GIにより膜部FP3が形成される。このとき、膜部FP3は、絶縁体からなる膜部FP31としてのゲート絶縁膜GIからなり、平面視において、ソース領域SR1とドレイン領域DR1とで挟まれた部分のチャネル層CH上に形成されることになる。また、ゲート電極GEは、チャネル層CH上に、膜部FP3を介して形成されることになる。
【0206】
次に、実施の形態1で
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行って、保護絶縁膜PIFを形成し、実施の形態1で
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行って、コンタクトホールCNT1、CNT2およびCNT3を形成する。次に、実施の形態1で
図1を用いて説明した工程と同様の工程を行って、
図21に示すように、ソース電極SE、ドレイン電極DEおよびゲート電極配線GWを形成する。以上のようにして、
図21に示すように、トランジスタTR2を製造することができる。
【0207】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、基板SUB上に、ソース領域SR1と、半導体層SL1と、ドレイン領域DR1と、からなる保護ダイオードPDが形成され、保護ダイオードPD上に、電界効果トランジスタとしてのトランジスタTR2が形成されている。これにより、本実施の形態4の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様の効果を有する。
【0208】
一方、本実施の形態4では、電界効果トランジスタがMISFETからなり、ゲート電極GEが、チャネル層CH上に、絶縁体からなる膜部FP3を介して形成されている。電界効果トランジスタがMISFETからなる場合、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)などの窒化物半導体層からなる電子供給層ESを、例えば窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体層からなるチャネル層CH上にエピタキシャル成長させる必要がない。そのため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0209】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。