(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状に形成された内筒と、前記内筒を外周側から取り囲む外筒と、前記内筒および外筒を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体と、前記外筒および防振基体の間に形成される液室と、前記液室内に配設される粘性体と、前記内筒の外面または前記外筒の内面から径方向へ向けて突出されると共に前記外筒の内面または前記内筒の外面との間に所定の間隔を隔てて配置され前記内筒および前記外筒の径方向における相対変位を規制するストッパ部と、を備える液封入式防振装置において、
ゴム状弾性体からなり前記防振基体に連なると共に前記液室を第1液室及び第2液室に区画するゴム脚と、
前記ゴム脚の外周面側に形成され前記第1液室および第2液室を連通させるオリフィスと、
前記ストッパ部に外嵌される外嵌部材と、を備え、
前記防振基体およびゴム脚のゴム硬度が40度以上かつ65度以下に設定され、
前記外嵌部材は、前記防振基体の内面に面する一対の当接部と、それら一対の当接部どうしを連結する一対の連結部とから筒状に形成されると共に、前記当接部の前記連結部側の縁部が前記連結部よりも外方へ張り出して形成され、
前記外筒に対して前記内筒が径方向へ相対変位され、前記ストッパ部が前記外筒の内面または前記内筒の外面へ近接する際に、弾性変形された前記防振基体が前記外嵌部材に当接されることを特徴とする液封入式防振装置。
前記ストッパ部の突出方向の長さ寸法が、前記突出方向における前記外嵌部材の長さ寸法よりも大きな寸法に設定され、前記ストッパ部に前記外嵌部材が外嵌されると、前記ストッパ部の突出先端側が前記外嵌部材の一側から突出されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図4を参照して第1実施形態について説明する。
図1(a)は、第1実施形態における液封入式防振装置100の上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIb−Ib線における液封式入防振装置100の断面図であり、
図2(a)は、
図1(b)のIIa−IIa線における液封入式防振装置100の断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb部における液封入式防振装置100の部分拡大図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、液封入式防振装置100は、車体フレーム又は懸架部材の一方に固定される円筒状の内筒10と、その内筒10を外周側から(本実施形態では同心状に)取り囲むと共に車体フレーム又は懸架装置の他方に固定される円筒状の外筒20と、その外筒20の軸方向両端の内周面に内嵌される円筒状の一対の中間筒30と、内筒10及び中間筒30の間に加硫成型により介設される防振基体40と、内筒10、外筒20、ゴム脚43、及び防振基体40に区画されて形成される液室50と、その液室50を第1液室50a及び第2液室50bに区画するゴム脚43と、内筒10のストッパ部11に配設される外嵌部材60とを備えて構成される。
【0021】
内筒10は、その軸方向略中央に、径方向外側(軸直角方向)へ突出する一対のストッパ部11が形成される。ストッパ部11は、第1の方向(
図2(a)上下方向、例えば車両前後方向)又は第2の方向(
図2(b)左右方向、例えば車両左右方向)に沿って突出される。
【0022】
ストッパ部11は、外筒20との間に所定の間隔を隔てる突出寸法に設定され、その突出先端が外筒20の内周面に当接するまでは、外筒20に対する内筒10の径方向への相対変位が許容される一方、突出先端が、外筒20の内周面に当接することで、外筒20に対する内筒10の所定の径方向(
図2(a)上下方向)への相対変位が規制される。
【0023】
なお、本実施形態では、ストッパ部11は、その突出方向に垂直な平面で切断した断面が矩形状に形成される。この場合、一対のストッパ部11は、内筒10の軸方向視における幅寸法および内筒10の軸直角方向視における厚み寸法が略同一とされる。また、一対のストッパ部11の突出寸法は、略同一とされる。
【0024】
外筒20には、その軸方向両端を径方向内側へ向けて折り返すことで、かしめ部21が形成される。かしめ部21は、中間筒30が軸方向へ移動して抜け出ることを規制する。なお、外筒20の外周面には貫通孔が穿設されており、かかる貫通孔を介して、シリコンオイルやエチレングリコール等の液体(粘性体)が、公知の真空引きによる充填方法により、液室50に充填される。貫通孔は、液体の充填後にリベットにより封止される。
【0025】
中間筒30は、内筒10及び外筒20と同心状に配設され、外筒20が縮径加工されることで、外筒20の内周面に密着された状態で内嵌される。また、中間筒30は、一対の中間筒30を連結する断面コ字状の接続部31を備える。
【0026】
接続部31は、外筒20の内周面よりも径方向内側に位置し、内筒10を挟んだ両側に形成さる。また、接続部31は、内筒10の軸方向視におけるストッパ部11の突出方向と位相を90度異ならせて配設される。
【0027】
防振基体40は、ゴム硬度が40度以上かつ65度以下に設定され、所定の厚み寸法(
図1(b)左右方向寸法)を有し軸方向視円環状に形成されるゴム状弾性体であり、内筒10の軸方向(
図1(b)左右方向)に所定の間隔を隔てつつ一対が対向配置される。これら一対の防振基体40の対向面(内面)の間に液室50が形成される。
【0028】
ここで、本実施形態では、防振基体40は、内筒10の軸を含む平面での断面視が、ストッパ部11へ向けて円弧状に湾曲した形状に形成される(
図1(b)参照)。即ち防振基体防振基体40は、その内面がストッパ部11へ向けて凸状の円弧状に湾曲されると共に、外面がストッパ部11へ向けて凹む円弧上に湾曲される。よって、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)へ相対変位される際には、内筒10が外筒20へ近接される態様にて、防振基体40を撓ませることができる。
【0029】
覆設ゴム部42は、ストッパ部11の外面に覆設されるゴム状弾性体であり、防振基体40に連なって形成される。覆設ゴム部42は、その側面(防振基体40の内面に対面する側面どうしを接続する側面、
図2(b)左右の側面)に溝部42aが凹設される。溝部42aは、外嵌部材60の突設部62aが嵌合される溝であり、覆設ゴム部42の突出方向先端からストッパ部11の突出方向に沿って直線状に延設される。よって、外嵌部材60のストッパ部11への挿入性を妨げない。
【0030】
ゴム脚43は、防振基体40及び覆設ゴム部42と一体に加硫成型されるゴム状弾性体であり、外筒20の内周面に外周面を密着させると共に上下の防振基体40を連結する。これにより、液室50が第1液室50a及び第2液室50bに区画される。
【0031】
また、ゴム脚43は、一対の中間筒30に形成した接続部31が埋設される。ストッパ部11は、ゴム脚43と位相を90度異ならせて配設されるため、第1液室50a及び第2液室50bへ突出して配設される。
【0032】
ゴム脚43の外周面には、凹状の溝が凹設され、その凹溝と外筒20の内周面との間にオリフィス55が形成される。オリフィス55は、第1液室50aと第2液室50bとを連通させ、これら両液室50a,50b間で液体を流動させるためのオリフィス流路である。
【0033】
液封入式防振装置100は、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位されることで、オリフィス55による第1液室50a及び第2液室50bの間での液体流動効果により、減衰効果を得ることができる。
【0034】
ストッパ部11には、外嵌部材60が配設される。ここで、
図3を参照して、外嵌部材60について説明する。
【0035】
図3(a)は、外嵌部材60の正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb−IIIb線における外嵌部材60の断面図である。
【0036】
図3に示すように、外嵌部材60は、樹脂材料から上面視横長矩形の環状の部材として形成される。即ち、外嵌部材60は、上面視矩形の長辺を形成する一対の当接部61と、その当接部61の端部どうしを連結すると共に上面視矩形を形成する一対の連結部62から断面矩形の環状(筒状)体として形成される。
【0037】
連結部62の内面には、断面矩形の突設部62aが突設される。突設部62aは、覆設ゴム部42の溝部42aにおける溝幅よりも若干幅広に形成される。よって、突設部62aの外側面が覆設ゴム部42の溝部42aの内壁面に密着されることで、ストッパ部11から外嵌部材60が抜けることを防止できる。
【0038】
また、連結部62の内面の両端には、上面視円弧状に湾曲する凹部60bが凹設される。これにより、後述するように、防振基体40の内面により外嵌部材60(当接部61)がストッパ部11へ押圧される動作が繰り返される際に(
図4参照)、外嵌部材60の角部(当接部61及び連結部62の連結部分)における応力集中の発生を抑制して、外嵌部材60の耐久性の向上を図ることができる。
【0039】
外嵌部材60は、環状に形成されるので、ストッパ部11の突出先端から嵌め込むことで、ストッパ部11の周囲に配設することができる。即ち、ストッパ部11に外嵌部材60が外嵌された状態を容易に形成することできる。よって、外嵌部材60のストッパ部11への装着性を向上して、組立コストの削減を図ることができる。
【0040】
この場合、外嵌部材60は、その内形が、ストッパ部11の外形より大きく、かつ、ストッパ部11に覆設される覆設ゴム部42の外形と同等または若干小さく形成される。詳細には、上面視横長矩形の短辺の対向間隔(
図3(a)左右方向間隔)が、ストッパ部11の幅寸法(
図2(b)左右方向寸法)よりも大きく、且つ、該寸法方向における覆設ゴム部42の外形寸法と同等または若干小さくされ、上面視横長矩形の長辺の対向間隔(
図3(a)上下方向間隔)が、ストッパ部11の厚み寸法(
図2(b)左右方向寸法)よりも大きく、且つ、該寸法方向における覆設ゴム部42の外形寸法と同等または若干小さくされる。
【0041】
これにより、外嵌部材60を覆設ゴム部42に密着させ、ストッパ部11に強固に外嵌させることができる。よって、ストッパ部11から外嵌部材60が抜け出ることを防止できる。
【0042】
図1及び
図2に戻って説明する。外嵌部材60は、その側壁(上面視矩形の長辺を形成する側壁、
図3(a)参照)の厚み寸法(
図1(b)左右方向寸法)が、防振基体40の内面との間に所定の間隔を隔てる大きさに設定される。これにより、比較的小振幅の振動入力時には、外嵌部材60に防振基体40の内面が接触することを回避して、動ばね定数を小さくすることができる。
【0043】
外嵌部材60は、その高さ寸法(
図1(b)及び
図2(b)上下方向寸法)が、ストッパ部11の突出寸法よりも小さくされる。これにより、ストッパ部11に外嵌部材60が外嵌された状態では、ストッパ部11の先端を、外嵌部材60の一側の開放端から突出させておくことができる。その結果、内筒10及び外筒20との径方向の相対変位を規制する場合には、ストッパ部の先端のみを外筒20の内面に当接させることができ、外嵌部材60が外筒20の内面に当接して破損することを防止できる。
【0044】
次いで、
図4を参照して、外嵌部材60の機能について説明する。
図4は、液封入式防振装置100の断面図であり、
図2(a)に示す状態から内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)へ相対変位された状態が図示される。
【0045】
図4に示すように、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位されると、内筒10が外筒20に接近される側(
図4右側)では、内筒10及び外筒20の間で防振基体40が圧縮方向に弾性変形される。これにより、圧縮方向に弾性変形された防振基体40の内面の一部が外嵌部材60に当接され、防振基体40の内面のうちの液室50に面する面積を小さくすることができる。
【0046】
ここで、従来の液封入式防振装置では、液室50を区画するためにゴム脚43が形成されると、その分のゴムボリュームが増加して、バネ定数(静ばね定数または動ばね定数)が大きくなる。そのため、ばね定数を所定値以下に抑えるために、ゴム硬度を比較的低い値に設定することが必要とされる。しかしながら、ゴム硬度を低くすると、内筒10が外筒20に対して径方向へ相対変位され、第1液室50a及び第2液室50bの容積が変化される際に、液室50の内圧が逃げやすくなる。即ち、液室50の内圧10が高まり難くなるため、オリフィス55を介して第1液室50a及び第2液室50bで液体を十分に流動させることができず、減衰効果が低減される。
【0047】
これに対し、本実施形態によれば、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位されると、上述したように圧縮方向に弾性変形された防振基体40の内面の一部が外嵌部材60に当接され、防振基体40の内面のうちの液室50に面する面積を小さくすることができる。よって、その分、液室50の内圧を逃げ難く(液圧が緩和され難く)することができ、液室50の内圧を高めることができるので、オリフィス55を介して第1液室50a及び第2液室50bの間で流動する液体を増加させることができる。その結果、防振基体40及びゴム脚43のゴム硬度を比較的低い値に設定可能としつつ、高い減衰効果を得ることができる。
【0048】
例えば、ゴム硬度が45度から70度の範囲で設定される従来の液封入式防振装置に対して、外嵌部材60を装着することで、ゴム硬度を40度から65度の範囲で設定することを可能とでき(即ち、ゴム硬度を5度低い値とすることを可能とでき)、バネ定数を小さくしつつ、高い減衰効果を得ることができる。
【0049】
特に、本実施形態では、外嵌部材60は防振基体40より硬質の樹脂材料から形成されるので、かかる外嵌部材60が液室50の内圧で変形することを抑制できる。よって、液室50の内圧を逃げ難く(液圧が緩和され難く)することができ、その結果、液室50の内圧を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上述したように、防振基体40がストッパ部11へ向けて凸となる円弧状に湾曲した形状に形成されるので(
図1(b)参照)、圧縮方向へ弾性変形された防振基体40の内面をストッパ部11(外嵌部材60)へ近接する態様にて、防振基体40を撓ませることができる。その結果、防振基体40の内面を確実に外嵌部材60の外面に密着させることができる。従って、この点からも、液室50の内圧を逃げ難くして、液室50の内圧を確実に高めることができる。
【0051】
ここで、外嵌部材60に相当する形状を覆設ゴム部42の外面(或いは、防振基体40の内面)にゴム状弾性体により一体に形成し、外嵌部材60を省略することも考えられるが、この場合には、内筒10及び中間筒30の間を防振基体40により連結した加硫成形品を加硫成形するための加硫金型において、液室50の空間を形成するための中子型の先端部分(防振基体40の内面と覆設ゴム部42の外面との対向間に挿入される部分)が極めて薄肉となり、中子型の耐久性の点から現実的でない。
【0052】
一方で、中子型の先端を厚肉としたのでは、防振基体40の内面と覆設ゴム部42の外面(外嵌部材60相当部分)との間の間隔が過大となり、内筒10及び外筒20の所定の径方向(
図2(a)上下方向)へ相対変位時に、防振基体40の内面を外嵌部材60相当部分に当接させることができず、液室50の内圧を高めることができない。
【0053】
これに対し、本実施形態では、外嵌部材60が別体の部品として形成されるので、防振基体40と覆設ゴム部42の外面との間の間隔を十分に確保することができ、中子型の耐久性を確保できる一方で、外嵌部材60を装着した後は、防振基体40の内面が外嵌部材60に当接される状態を形成でき、液室50の内圧を高めることができる。
【0054】
次いで、
図5を参照して、第2実施形態における液封入式防振装置200について説明する。
図5(a)は、第2実施形態における外嵌部材260の上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vb線における外嵌部材260の側面図であり、
図5(c)は、液封入式防振装置200の部分拡大断面図である。なお、
図5(c)は、
図2(b)に対応する。また、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0055】
図5に示すように、第2実施形態における外嵌部材260は、その当接部261の長手方向(
図5(a)左右方向)における長さ寸法が、第1実施形態における外嵌部材60の当接部61の長さ寸法より長く形成され、連結部62の両側(
図5(a)左側および右側)から当接部261が外方へ突出される。よって、その突出部分の分、外嵌部材260は、当接部261の面積が、第1実施形態における外嵌部材60の当接部61の面積よりも大きく形成される。
【0056】
これにより、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位され、圧縮方向に弾性変形された防振基体40の内面の一部が外嵌部材60に当接される際には(
図4参照)、外嵌部材60の当接部261の突出部分の分、当接面積を拡大することができる。即ち、防振基体40の内面のうちの液室50に面する面積をより小さくすることができる。よって、その分、液室50の内圧を逃げ難く(液圧が緩和され難く)することができ、液室50の内圧を高めることができるので、オリフィス55を介して第1液室50a及び第2液室50bの間で流動する液体を増加させることができる。その結果、防振基体40及びゴム脚43のゴム硬度を比較的低い値に設定可能としつつ、高い減衰効果を得ることができる。
【0057】
次いで、
図6を参照して、第3実施形態について説明する。
図6(a)は、第3実施形態における外嵌部材360の斜視図である。なお、上記各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
図6(a)に示すように、第3実施形態における外嵌部材360は、第1実施形態における外嵌部材60に対し、一対の連結部62のうちの一方の連結部62にスリット部363が形成される。スリット部363は、スリット状の切り欠きであり、外嵌部材360の一方の開口端面から他方の開口端面まで直線状に延設される。このように、連結部62にスリット部363が形成されることで、外嵌部材360をストッパ部11(
図1及び
図2参照)の先端から嵌め込む際には、外嵌部材360を拡大方向へ弾性変形させることができる。その結果、外嵌部材のストッパ部11への装着性を向上して、組立コストの削減をはかることができる。
【0059】
また、スリット部363は、外嵌部材360の連結部62に形成される。よって、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位され、圧縮方向に弾性変形された防振基体40の内面の一部が外嵌部材60(当接部61)に当接される際には(
図4参照)、防止基体40の内面がスリット部363の縁部に当接して損傷を受けることを回避できる。その結果、防振基体40に亀裂が発生することを抑制できる。
【0060】
また、外嵌部材360の連結部62にスリット部363が形成されることで、防振基体40の内面により外嵌部材360(当接部61)がストッパ部11へ押圧される際に(
図4参照)、スリット部363の隙間の分、外嵌部材360を弾性変形させることができる。これにより、外嵌部材360に作用される外力を緩和して、破損を抑制できる。その結果、外嵌部材360の耐久性の向上を図ることができる。
【0061】
次いで、
図6(b)を参照して、第4実施形態について説明する。
図6(b)は、第4実施形態における液封入式防振装置400の断面図であり、
図1(b)のVIb−VIb線における断面に対応する。なお、上記各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0062】
図6(b)に示すように、第4実施形態における液封入式防振装置400は、外嵌部材
460が金属製の線材から形成され、かかる外嵌部材460は、覆設ゴム部42を弾性変形させつつその外面に螺旋状に巻き付けられることで、ストッパ部11に装着される。よって、覆設ゴム部42の弾性回復力を利用して外嵌部材460を保持させることができるので、かかる外嵌部材460がストッパ部11から抜けることを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態においても、内筒10が外筒20に対して所定の径方向(
図2(a)上下方向)に相対変位され、圧縮方向に弾性変形された防振基体40の内面の一部が外嵌部材460に当接されることで、防振基体40の内面のうちの液室50に面する面積を小さくすることができる(
図4参照)。よって、その分、液室50の内圧を逃げ難く(液圧が緩和され難く)することができ、液室50の内圧を高めることができるので、オリフィス55を介して第1液室50a及び第2液室50bの間で流動する液体を増加させることができる。その結果、防振基体40及びゴム脚43のゴム硬度を比較的低い値に設定可能としつつ、高い減衰効果を得ることができる。
【0064】
次いで、
図7を参照して、第5実施形態について説明する。
図7(a)は、第5実施形態における外嵌部材560正面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIb線における外嵌部材560の断面図である。また、
図7(c)は、液封入式防振装置500の部分拡大断面図である。
【0065】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第5実施形態における外嵌部材560には、内面ゴム564が配設される。内面ゴム564は、外嵌部材560の内面に覆設されるゴム状弾性体であり、当接部61の内面に覆設される膜部564aと、その膜部564aに連なると共に連結部62の内面から内方へ向けて突設される複数の突設部564bとを備える。なお、突設部564bは、隣り合うものと所定の間隔を隔てつつ縦横に複数(本実施形態では片面に9個)が配設される。
【0066】
図7(c)に示すように、ストッパ部11に覆設される覆設ゴム部42には、その側面(
図7(c)左右の側面)に溝状の溝部542aが凹設される。溝部542aの深さ寸法は、その溝部542aの溝底と外嵌部材560の連結部62との間で内面ゴム564の突設部564bが弾性的に圧縮変形される寸法に設定される。なお、溝部542aは、覆設ゴム部42の突出方向先端面からストッパ部11の突出方向に沿って直線状に延設される。よって、外嵌部材560のストッパ部11への挿入性を妨げない。
【0067】
液封入式防振装置500によれば、ストッパ部11に外嵌部材560が装着された状態では、外嵌部材560の内面ゴム564における膜部564aが覆設ゴム部42の外面に密着されると共に、外嵌部材560の内面ゴム564における各突設部564bの突設先端面が覆設ゴム部42の溝部542aにおける溝底に密着されるので、ストッパ部11から外嵌部材560が抜けることを防止できる。
【0068】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0069】
上記各実施形態における構成の一部または全部を他の実施形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
【0070】
上記各実施形態では、2本のストッパ部11の突出寸法がそれぞれ略同一とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、2本のストッパ部11の突出寸法(即ち、ストッパ部11の突出先端と外筒20の内面との間に形成される2カ所の間隔)をそれぞれ異ならせても良い。
【0071】
上記各実施形態では、2本のストッパ部11に外嵌部材60,260,360,460,560が外嵌される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外嵌部材60,260,360,460,560が、1本のストッパ部11のみに外嵌されていても良い。
【0072】
上記各実施形態では、ストッパ部11aが内筒10の外面から径方向へ向けて突出される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに代えて、或いは、これに加えて、ストッパ部が外筒20の内面から径方向へ向けて突出されても良い。
【0073】
上記第4実施形態では、外嵌部材460が金属製の線材として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、金属製の心材にゴム状弾性体や樹脂などの柔軟性を有する被覆材を被覆して形成される線材を採用しても良い。
【0074】
上記第4実施形態では、外嵌部材460が密に(即ち、線材どうしの間に隙間を有さない状態で)巻き付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、線材どうしの間に所定の間隔が形成される状態で巻き付けられるものであっても良い。
【0075】
上記第4実施形態では、外嵌部材460を線材から形成し、かかる線材をストッパ部11に螺旋状に巻き付ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外嵌部材460を金属材料からなる平板状の板材から形成し、かかる板材をストッパ部11に巻き付けるものであっても良い。この場合、板材の巻き付けは、1周に満たないものであっても良く、1周を越えるもの(即ち、重なり代を有するもの)であっても良い。
【0076】
上記第5実施形態では、ストッパ部11の外面であって外嵌部材560が外嵌される領域に覆設ゴム部42が覆設される(即ち、ストッパ部11と外嵌部材560との間に覆設ゴム部42が介在する)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、少なくとも外嵌部材560が外嵌される領域における覆設ゴム部42の覆設を省略しても良い。即ち、外嵌部材560が外嵌される領域において、ストッパ部11の外面を露出させても良い。この場合でもあっても、外嵌部材560の内面に配設される内面ゴム564(膜部564a及び突設部564b)をストッパ部11の外面に密着させることができるので、ストッパ部11から外嵌部材560が抜け出ることを抑制できる。