(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。また、後述の任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる又は並列に実行できる。
【0035】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1(a)及び(b)は、第1実施形態に係る給電機器1及び電子機器2の概略外観図である。但し、
図1(a)は、給電機器1及び電子機器2が離間状態にあるときのそれらの外観図であり、
図1(b)は、給電機器1及び電子機器2が基準配置状態にあるときのそれらの外観図である。離間状態及び基準配置状態の意義については後に詳説する。給電機器1及び電子機器2によって非接触給電システムが形成される。
【0036】
給電機器1は、商用交流電力を受けるための電源プラグ11と、給電台12と、を備える。
図2に、給電機器1と電子機器2の概略内部構成図を示す。給電機器1は、電源プラグ11を介して入力された商用交流電圧から所定の電圧値を有する直流電圧を生成して出力するAC/DC変換部13と、AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する集積回路である送電側IC100(以下、IC100とも言う)と、IC100に接続された送電側共振回路TT(以下、共振回路TTとも言う)と、を備える。AC/DC変換部13、送電側IC100及び共振回路TTを、給電台12内に配置しておくことができる。AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する回路が、IC100以外にも、給電機器1に設けられうる。
【0037】
電子機器2は、集積回路である受電側IC200(以下、IC200とも言う)と、IC200に接続された受電側共振回路RR(以下、共振回路RRとも言う)と、二次電池であるバッテリ21と、バッテリ21の出力電圧に基づき駆動する機能回路22と、を備える。詳細は後述するが、IC200はバッテリ21に対して充電電力を供給することができる。IC200は、バッテリ21の出力電圧にて駆動しても良いし、バッテリ21以外の電圧源からの電圧に基づき駆動しても良い。或いは、給電機器1から受信したNFC通信(詳細は後述)のための信号を整流することで得た直流電圧が、IC200の駆動電圧となっても良い。この場合、バッテリ21の残容量が無くなってもIC200は駆動可能となる。
【0038】
電子機器2は、任意の電子機器であって良く、例えば、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、携帯情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、MP3プレイヤー、歩数計、又は、Bluetooth(登録商標)ヘッドセットである。機能回路22は、電子機器2が実現すべき任意の機能を実現する。従って例えば、電子機器2がスマートホンであれば、機能回路22は、相手側機器との間の通話を実現するための通話処理部、及び、ネットワーク網を介して他機器と情報を送受信するための通信処理部などを含む。或いは例えば、電子機器2がデジタルカメラであれば、機能回路22は、撮像素子を駆動する駆動回路、撮像素子の出力信号から画像データを生成する画像処理回路などを含む。
【0039】
共振回路TTは、送電側コイルであるコイルT
Lと送電側コンデンサ(送電側容量)であるコンデンサT
Cとの並列回路を有する。共振回路RRは、受電側コイルであるコイルR
Lと受電側コンデンサであるコンデンサR
Cとの並列回路を有する。
【0040】
図1(b)に示す如く、電子機器2を給電台12上の所定範囲内に載置したとき、磁界共鳴方式にて(即ち、磁界共鳴を利用して)、機器1及び2間における通信、送電及び受電が可能となる。磁界共鳴は、磁界共振などとも呼ばれる。
【0041】
機器1及び2間における通信は、NFC(Near field communication)による無線通信(以下、NFC通信と呼ぶ)であり、通信の搬送波の周波数は13.56MHz(メガヘルツ)である。以下では、13.56MHzを基準周波数と呼ぶ。機器1及び2間におけるNFC通信は、共振回路TT及びRRを利用した磁界共鳴方式で行われるため、共振回路TT及びRRの共振周波数は、共に、基準周波数に設定されている。但し、後述されるように、共振回路RRの共振周波数は、一時的に基準周波数から変更され得る。
【0042】
機器1及び2間における送電及び受電は、給電機器1から電子機器2に対するNFCによる送電と、電子機器2におけるNFCによる受電である。この送電と受電をまとめて電力伝送とも呼ぶ。磁界共鳴方式によりコイルT
LからコイルR
Lに対して電力を伝達することで、電力伝送が非接触で実現される。
【0043】
磁界共鳴を利用した電力伝送では、送電側コイルT
Lに交流電流を流すことで送電側コイルT
Lに基準周波数の交番磁界を発生させる。すると、この交番磁界が、基準周波数で共鳴(換言すれば共振)する共振回路RRに伝わって受電側コイルR
Lに交流電流が流れる。つまり、送電側コイルT
Lを含む共振回路TTから受電側コイルR
Lを含む共振回路RRへ電力が伝達される。尚、以下では、記述が省略されることがあるが、NFC通信又は電力伝送においてコイルT
L又はコイルR
Lにより発生する磁界は、特に記述無き限り、基準周波数で振動する交番磁界である。
【0044】
電子機器2が給電台12上の所定範囲内に載置され、上述のNFC通信及び電力伝送が実現できる状態を、基準配置状態と呼ぶ(
図1(b)参照)。磁気共鳴を利用した場合、相手側距離との距離が比較的大きくても通信及び電力伝送が可能であるが、電子機器2が給電台12から相当距離離れれば、NFC通信及び電力伝送は実現できなくなる。電子機器2が給電台12から十分に離れていて、上述のNFC通信及び電力伝送を実現できない状態を、離間状態と呼ぶ(
図1(a)参照)。
【0045】
尚、
図1(a)に示す給電台12では、表面が平らになっているが、載置されるべき電子機器2の形状に合わせた窪み等が給電台12に形成されていても構わない。即ち、例えば、給電台12は、
図3に示すような給電クレードル12aであっても構わない。
【0046】
図4に、IC100の内部ブロック図を含む、給電機器1の一部の構成図を示す。IC100には、端子101及び102に加え、符号110、120、130、140、150及び160によって参照される各部位が設けられる。
図5に、IC200の内部ブロック図を含む、電子機器2の一部の構成図を示す。IC200には、端子201及び202に加え、符号210、220、230、240及び250によって参照される各部位が設けられる。また、IC200に対し、IC200の駆動電圧を出力するコンデンサ23を接続しておくと良い。コンデンサ23は、給電機器1から受信したNFC通信のための信号を整流することで得た直流電圧を出力可能である。
【0047】
端子101には、コンデンサT
C及びコイルT
Lの各一端が接続され、端子102には、コンデンサT
C及びコイルT
Lの各他端が接続される。切り替え回路110は、共振回路TT並びに端子101及び102と、NFC通信回路120及びNFC送電回路130との間に直列に介在するスイッチから成り、回路120及び130の一方を択一的に端子101及び102に接続させることで、回路120及び130の一方を択一的に共振回路TTに接続させる。
【0048】
端子201には、コンデンサR
C及びコイルR
Lの各一端が接続され、端子202には、コンデンサR
C及びコイルR
Lの各他端が接続される。切り替え回路210は、共振回路RR並びに端子201及び202と、NFC通信回路220及びNFC受電回路230との間に直列に介在するスイッチから成り、回路220及び230の一方を択一的に端子201及び202に接続させることで、回路220及び230の一方を択一的に共振回路RRに接続させる。
【0049】
共振回路TT並びに端子101及び102が切り替え回路110を介してNFC通信回路120に接続され、且つ、共振回路RR並びに端子201及び202が切り替え回路210を介してNFC通信回路220に接続されている状態を、通信用接続状態と呼ぶ。
【0050】
通信用接続状態においてIC100が送信側であるとき、NFC通信回路120は、基準周波数の交流信号(交流電流)を端子101及び102を介して共振回路TTに供給することができ、その交流信号に任意の情報信号を重畳させることで、当該情報信号を磁気共鳴方式で共振回路RR(電子機器2)に伝達できる。給電機器1から伝達された情報信号はNFC通信回路220にて抽出される。
【0051】
通信用接続状態においてIC200が送信側であるとき、NFC通信回路220は、基準周波数の交流信号(交流電流)を端子201及び202を介して共振回路RRに供給することができ、その交流信号に任意の情報信号を重畳させることで、当該情報信号を磁気共鳴方式で共振回路TT(給電機器1)に伝達できる。電子機器2から伝達された情報信号はNFC通信回路120にて抽出される。
【0052】
共振回路TT並びに端子101及び102が切り替え回路110を介してNFC送電回路130に接続され、且つ、共振回路RR並びに端子201及び202が切り替え回路210を介してNFC受電回路230に接続されている状態を、給電用接続状態と呼ぶ。
【0053】
給電用接続状態において、NFC送電回路130は送電動作を行うことができ、NFC受電回路230は受電動作を行うことができる。送電動作と受電動作にて電力伝送が実現される。送電動作において、送電回路130は、共振回路TTに基準周波数の交流信号(交流電流)を供給することで送電側コイルT
Lに基準周波数の送電用交番磁界を発生させ、これによって、共振回路TT(送電側コイルT
L)から共振回路RRに対し磁界共鳴方式で電力を送電する。送電動作に基づき受電側コイルR
Lにて受電された電力は受電回路230に送られ、受電動作において、受電回路230は、受電した電力から任意の直流電力を生成する。受電回路230は、生成した直流電力にてバッテリ21を充電することができる。
【0054】
通信用接続状態にてNFC通信を行う場合も、コイルT
L又はR
Lにて磁界が発生するが、NFC通信における磁界強度は、所定の範囲内に収まる。その範囲の下限値及び上限値は、NFCの規格で定められ、夫々、1.5A/m、7.5A/mである。これに対し、電力伝送(即ち送電動作)において送電側コイルT
Lにて発生する磁界の強度は、上記の上限値より大きく、例えば45〜60A/m程度である。機器1及び2を含む非接触給電システムにおいて、NFC通信及び電力伝送(NFC電力伝送)を交互に行うことができ、その時の磁界強度の様子を
図6に示す。
【0055】
負荷検出回路140は、送電回路130から送電側コイルT
Lに交流信号(交流電流)が供給されるときにおける、送電側コイルT
Lにとっての負荷の大きさを検出する。
図7に、給電用接続状態における送電回路130と負荷検出回路140と共振回路TTとの関係を示す。尚、
図7では、切り替え回路110の図示が省略されている。
【0056】
送電回路130は、基準周波数の正弦波信号を生成する信号生成器131と、信号生成器131にて生成された正弦波信号を増幅し、増幅した正弦波信号を、ライン134の電位を基準としてライン134及び135間に出力する増幅器(パワーアンプ)132と、コンデンサ133とを備える。一方、負荷検出回路140は、センス抵抗141、増幅器142、包絡線検波器143及びA/D変換器144を備える。信号生成器131が生成する正弦波信号の信号強度は一定値に固定されているが、増幅器132の増幅率は制御回路160により可変設定される。
【0057】
コンデンサ133の一端はライン135に接続される。給電用接続状態において、コンデンサ133の他端はコンデンサT
C及びコイルT
Lの各一端に共通接続され、且つ、コイルT
Lの他端はセンス抵抗141を介してライン134及びコンデンサT
Cの他端に共通接続される。
【0058】
送電動作は、増幅器132からコンデンサ133を介し共振回路TTに交流信号を供給することで実現される。給電用接続状態において、増幅器132からの交流信号が共振回路TTに供給されるとコイルT
Lに基準周波数の交流電流が流れ、結果、センス抵抗141に交流の電圧降下が発生する。
図8の実線波形は、センス抵抗141における電圧降下の電圧波形である。送電側コイルT
Lの発生磁界強度が一定の下、電子機器2を給電台12に近づけると、送電側コイルT
Lの発生磁界に基づく電流が受電側コイルR
Lに流れる一方で、受電側コイルR
Lに流れた電流に基づく逆起電力が送電側コイルT
Lに発生し、その逆起電力は送電側コイルT
Lに流れる電流を低減するように作用する。このため、
図8に示す如く、基準配置状態におけるセンス抵抗141の電圧降下の振幅は、離間状態におけるそれよりも小さい。
【0059】
増幅器142は、センス抵抗141における電圧降下の信号を増幅する。包絡線検波器143は、増幅器142にて増幅された信号の包絡線を検波することで、
図8の電圧vに比例するアナログの電圧信号を出力する。A/D変換器144は、包絡線検波器143の出力電圧信号をデジタル信号に変換することでデジタルの電圧値V
Dを出力する。上述の説明から理解されるように、電圧値V
Dは、センス抵抗141に流れる電流の振幅(従って、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅)に比例する値を持つ。
【0060】
磁界を発生させる送電側コイルT
Lにとって、受電側コイルR
Lのような、送電側コイルT
Lと磁気結合するコイルは、負荷であると考えることができ、その負荷の大きさに依存して、負荷検出回路140の検出値である電圧値V
Dが変化する。このため、負荷検出回路140は電圧値V
Dの出力によって負荷の大きさを検出している、と考えることができる。
【0061】
尚、
図7のように負荷検出回路140を形成する場合、
図9に示す如く、センス抵抗141をIC100の内部に設けておくことができる。
図9の構成の場合、IC100に更に端子103を設けておいて、端子102及び103間にセンス抵抗141を接続する一方で、コンデンサT
C及びコイルT
Lの各一端を端子101に共通接続し、且つ、コンデンサT
C及びコイルT
Lの他端をそれぞれ端子102及び103に接続すれば良い。但し、センス抵抗141をIC100の外側に設けることも可能である。
【0062】
また、公知の技術であるため詳細は割愛するが、通信用接続状態においてIC200が送信側であるとき、NFC通信回路220は、自身が電波を送信するのではなく、共振回路TTにとっての負荷を変化させることで、任意の情報信号を磁気共鳴方式で共振回路TT(給電機器1)に伝達するようにしても良い。即ち、通信用接続状態においてIC200が送信側であるとき、IC100は基準周波数の無変調波を共振回路TTにて発生させ、このとき、IC200は、IC100に伝達したい情報信号に応じて、共振回路TTから見たIC200の負荷として重さ(例えば、IC200全体の消費電力)を変化させる。そして、IC100内の通信回路120に負荷検出回路140と同等の第2負荷検出回路を設けておき、第2負荷検出回路にて上記負荷の重さを検出することで通信回路120にて上記情報信号を抽出すれば良い。
【0063】
図4の説明に戻る。メモリ150は、不揮発性メモリから成り、後述の基準値などを不揮発的に記憶する。制御回路160は、IC100内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路160が行う制御には、例えば、切り替え回路110の切り替え動作の制御、通信回路120及び送電回路130による通信動作及び送電動作の内容制御及び実行有無制御、負荷検出回路140の動作制御、メモリ150の記憶制御及び読み出し制御が含まれる。
【0064】
図5を参照し、電子機器2における共振周波数変更回路240は、共振回路RRの共振周波数を基準周波数から他の所定周波数f
Mに変更するための回路である。
図10に、変更回路240の一例を示す。
図10において、変更回路240は、コンデンサ241とスイッチ242の直列回路から成り、該直列回路の一端は端子201を介してコンデンサR
C及びコイルR
Lの各一端に共通接続される一方、該直列回路の他端は端子202を介してコンデンサR
C及びコイルR
Lの各他端に共通接続される。スイッチ242は、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子から成り、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。
【0065】
スイッチ242がオフのとき、コンデンサ241はコンデンサR
C及びコイルR
Lから切り離されるため、共振回路RRは、寄生インダクタンス及び寄生容量を無視すれば、コイルR
L及びコンデンサR
Cのみで形成されて、共振回路RRの共振周波数は基準周波数と一致する。即ち、スイッチ242がオフのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、コンデンサR
Cそのものである。スイッチ242がオンのとき、コンデンサR
Cにコンデンサ241が並列接続されることになるため、共振回路RRはコイルR
LとコンデンサR
C及び241の合成容量とで形成され、結果、共振回路RRの共振周波数は基準周波数よりも低い周波数f
Mとなる。即ち、スイッチ242がオンのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、上記の合成容量である。ここでは、スイッチ242がオンのとき共振回路RRが送電側コイルT
Lの負荷として機能しない程度に(即ち、共振回路TT及びRR間で磁気共鳴が十分に発生しない程度に)、周波数f
Mが基準周波数から離れているものとする。例えば、スイッチ242のオンのときにおける共振回路RRの共振周波数(即ち周波数f
M)は、数100kHz〜1MHzとされる。
【0066】
制御回路250は、IC200内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路250が行う制御には、例えば、切り替え回路210の切り替え動作の制御、通信回路220及び受電回路230による通信動作及び受電動作の内容制御及び実行有無制御、変更回路240の動作制御が含まれる。
【0067】
ところで、給電機器1の制御回路160は、給電台12上における異物の存否を判断し、異物が無い場合にのみ送電動作を行うよう送電回路130を制御できる。ここで、異物の意義について説明する。
図11(a)に異物3の概略外形図を示し、
図11(b)に異物3の概略内部構成図を示す。異物3は、コイルJ
L及びコンデンサJ
Cの並列回路から成る共振回路JJと、共振回路JJに接続された異物内回路300と、を備える。共振回路JJの共振周波数は基準周波数に設定されている。異物3は、電子機器2とは異なり、給電機器1に対応しない機器である。例えば、異物3は、NFC通信に応答しない13.56MHzのアンテナコイル(コイルJ
L)を持つ無線ICタグを有した物体(カード等)である。また例えば、異物3は、NFC通信機能自体は有しているものの、その機能がスイッチにより無効とされている電子機器である。例えば、NFC通信機能を有するスマートホンではあるが、ソフトウェア設定で当該機能をオフにされているスマートホンは、異物3となりうる。また、NFC通信機能が有効となっているスマートホンでも、受電機能を持たないスマートホンも異物3に分類される。
【0068】
このような異物3が給電台12上に配置されている状態において、仮に、給電機器1が送電動作を行うと、送電側コイルT
Lが発生した強磁界(例えば、12A/m以上の磁界強度を持つ磁界)にて異物3が破壊されることがある。例えば、送電動作時における強磁界は、給電台12上の異物3のコイルJ
Lの端子電圧を100V〜200Vまで増大させることもあり、そのような高電圧に耐えられるように異物3が形成されていなければ、異物3が破壊される。
【0069】
[初期設定処理]
異物の存否判断を可能とするべく、給電機器1には、予め1以上の基準値がメモリ150に格納される。
図12及び
図13を用いて基準値の設定方法を説明する。
図12は、3つの基準値をメモリ150に格納するための初期設定処理の動作フローチャートであり、
図13は、その初期設定処理の実行時における磁界強度Hと電圧値V
Dとの関係を示している。磁界強度Hは、送電側コイルT
Lが発生した基準周波数で振動する交番磁界の磁界強度を指す。
【0070】
初期設定処理は、以下の初期設定環境の下でIC100により実行される。初期設定環境では、送電側コイルT
Lに対する負荷が全く無く又は無視できる程度に小さく、送電側コイルT
Lに磁気結合するコイルが存在しない。これを担保するべく、受電機器2及び異物3を含む、コイルを含有するような機器が、給電台12から十分に離れるようにしておく。
図1(a)の離間状態は、初期設定環境を満たすと考えても良い。初期設定環境の確保を担保すべく、例えば、給電機器1の製造時又は出荷時などにおいて初期設定処理を行うようにしても良い。但し、初期設定環境が確保できるのであれば、任意のタイミングで初期設定処理を行うことができる。
【0071】
初期設定処理の実行時には、制御回路160が切り替え回路110を制御することで送電回路130を共振回路TTに接続する。そして、磁界強度Hが、第1、第2、・・・、第nテスト強度に順次設定され、各テスト強度における電圧値V
Dがメモリ150に記憶される。磁界強度Hを第iテスト強度に設定するとは、第iテスト強度を有し且つ基準周波数で振動する交番磁界を送電側コイルT
Lに発生させることを指す(iは整数)。制御回路160は、増幅器132(
図7参照)の増幅率を制御することで磁界強度Hを可変設定することができる。第1〜第nテスト強度は互いに異なる所定の磁界強度である。但し、第1〜第nテスト強度は、全て、通信用磁界強度の下限値“1.5A/m”から上限値“7.5A/m”までの範囲内に収まる。nは2以上の任意の整数であるが、
図12及び
図13の例では、n=3になっている。ここでは、第1〜第3テスト強度が、夫々、7.5A/m、5.0A/m、1.5A/mであるとする。何れのテスト強度も、電力伝送(即ち送電動作)における送電側コイルT
Lの発生磁界強度(例えば、45〜60A/m)より小さい。
【0072】
具体的には、初期設定処理において、まず、制御回路160は、磁界強度Hを第1テスト強度に設定し(ステップS11)、その状態でA/D変換器144から取得された電圧値V
Dに基づく基準値V
REF(1)をメモリ150に記憶させる(ステップS12及びS13)。次に、制御回路160は、磁界強度Hを第2テスト強度に設定し(ステップS14)、その状態でA/D変換器144から取得された電圧値V
Dに基づく基準値V
REF(2)をメモリ150に記憶させる(ステップS15及びS16)。最後に、制御回路160は、磁界強度Hを第3テスト強度に設定し(ステップS17)、その状態でA/D変換器144から取得された電圧値V
Dに基づく基準値V
REF(3)をメモリ150に記憶させ(ステップS18及びS19)、初期設定処理を終える。
【0073】
初期設定処理において、磁界強度Hが第iテスト強度であるときに取得された電圧値V
Dを記号V
Diにて表す(iは整数)。例えば、“(V
REF(1),V
REF(2),V
REF(3))=(V
D1−ΔV,V
D2−ΔV,V
D3−ΔV)”、又は、“(V
REF(1),V
REF(2),V
REF(3))=(V
D1×k,V
D2×k,V
D3×k)”とすると良い。ΔVは、所定の正の微小値である(但し、ΔV=0とすることも可能)。kは、1未満の正の所定値を有する係数である。
【0074】
尚、初期設定環境下において磁界強度Hを第1テスト強度に設定したときに得られるであろう電圧値V
Dを、設計段階で見積もることができる。この見積によって導出された値を、
図12の初期設定処理を行うことなく、基準値V
REF(1)として、メモリ150に記憶させるようにしても良い。基準値V
REF(2)及びV
REF(3)についても同様である。
【0075】
[異物検出処理の原理]
給電台12上の異物3の存否を検出するための異物検出処理の原理を説明する。
図14(a)〜
図14(d)に示す第1〜第4ケースを考える。第1ケースでは、給電台12上に電子機器2のみが存在している。第2ケースでは、給電台12上に電子機器2及び異物3が存在している。第3ケースでは、給電台12上に異物3のみが存在している。第4ケースでは、給電台12上に電子機器2も異物3も存在していない。
【0076】
異物検出処理の実行時には送電回路130が共振回路TTに接続される。異物検出処理において、送電回路130は、第iテスト強度を有し且つ基準周波数で振動する第iテスト磁界(第iテスト交番磁界)を送電側コイルT
Lに発生させ、制御回路160は、負荷検出回路140を用いて、第iテスト磁界を発生させているときの電圧値V
Dを電圧値V
D(i)として取得する。また、第iテスト磁界が送電側コイルT
Lにて発生される期間中には、電子機器2において、変更回路240を利用し、共振回路RRの共振周波数が上記周波数f
Mに設定されている。
【0077】
このため、第1ケースでは、共振回路RRの共振周波数が基準周波数のままである場合と比べて、送電側コイルT
Lにとっての負荷が十分に軽くなり(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となり)、電圧値V
D(i)が大きくなって、判定不等式“V
D(i)≧V
REF(i)”が成立する。
【0078】
一方、第2ケースでは、共振回路RRの共振周波数が上記周波数f
Mへと変更されるものの、異物3は送電側コイルT
Lの負荷として存在し続けるため(異物3の共振回路JJの共振周波数は基準周波数のままであるため)、電圧値V
D(i)が小さくなって、判定不等式“V
D(i)≧V
REF(i)”が成立しない。
【0079】
制御回路160は、上記判定不等式が成立する場合、異物3が給電台12上に存在してないと判断して送電回路130による送電動作の実行を許可するが、上記判定不等式が成立しない場合、異物3が給電台12上に存在していると判断して送電回路130による送電動作の実行を禁止する。第iテスト磁界の磁界強度(第iテスト強度)は、送電動作にて送電側コイルT
Lに発生する磁界の強度よりも相当に小さく、通信用磁界強度の上限値(7.5A/m)以下とされるため、第iテスト磁界によって異物3が破損等するおそれは無い又は少ない。
【0080】
第3及び第4ケースでは、NFC通信に応答する電子機器2が給電台12上に存在しないため、そもそも送電動作は不要であり、従って異物検出処理自体が実行されない。給電機器1は、NFC通信により、電力伝送に対応可能な電子機器2が給電台12上に存在しているか否かを判断できる。
【0081】
尚、異物3が給電台12上に存在する状態は、異物3が給電台12に直接接触している状態に限定されない。例えば、
図15に示す如く、給電台12上に電子機器2が直接接触する形で存在し且つ電子機器2の上に異物3が存在しているような状態も、上記判定不等式が成立しないのであれば、異物3が給電台12上に存在する状態に属する。
【0082】
[電力伝送までの信号のやりとり:
図16]
図16を参照して、電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりを説明する。以下では、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(
図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。また、以下では、共振回路RRの共振周波数を記号f
Oによって参照する。
【0083】
機器1及び2間のNFC通信は半二重方式で実行される。まず、給電機器1が送信側且つ電子機器2が受信側となり、給電機器1(IC100)が、NFC通信によって、問い合わせ信号510を給電台2上の機器(以下、給電対象機器とも言う)に送信する。給電対象機器は、電子機器2を含み、異物3を含みうる。問い合わせ信号510は、例えば、給電対象機器の固有識別情報を問い合わせる信号、給電対象機器がNFC通信を実行可能な状態にあるかを問い合わせる信号、及び、給電対象機器が電力を受け取れるか又は電力の送電を求めているかを問い合わせる信号を含む。
【0084】
問い合わせ信号510を受信した電子機器2(IC200)は、問い合わせ信号510の問い合わせ内容に答える応答信号520を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、変更用信号530をNFC通信によって給電対象機器に送信する。変更用信号530を受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200)は、変更用信号530に対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから、速やかに、共振周波数f
Oを基準周波数から上記周波数f
M(例えば1.0MHz)へ変更する。変更用信号530は、例えば、共振周波数f
Oを基準周波数から周波数f
Mに変更することを要求、指示又は示唆する信号であり、電子機器2の制御回路250は、変更用信号530の受信を契機として、共振周波数f
Oを基準周波数から周波数f
Mに変更する。共振周波数f
Oの変更の契機となるならば変更用信号530はどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
【0085】
応答信号540を受信した給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を通信回路120から送電回路130に切り替えて上述の異物検出処理を実行する。異物検出処理の実行期間中、電子機器2(IC200)は、共振周波数f
Oを周波数f
Mに維持する。具体的には、電子機器2(IC200)は、内蔵タイマを用いて、異物検出処理の実行期間の長さに応じた時間だけ共振周波数f
Oを周波数f
Mに維持し、その後、共振周波数f
Oを基準周波数(13.56MHz)に戻す。
【0086】
異物検出処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を送電回路130から通信回路120に切り替えて、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を再び通信回路120から送電回路130に切り替えて送電動作を実行し、これにより、電力伝送570が実現される。
【0087】
図14(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、
図14(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、異物検出処理において上記判定不等式が成立せずに給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。
【0088】
1回分の電力伝送570は所定時間だけ行われるものであっても良く、問い合わせ信号510の送信から電力伝送570までの一連の処理を、繰り返し実行するようにしても良い。
図17に、第1ケースにおいて、この繰り返しが行われるときの、共振周波数f
O、磁界強度H及び電圧値V
Dの時系列変化を、処理の時系列変化と共に示す。
図17の例では、異物検出処理において、第1、第2、第3テスト強度(
図12参照)を有する第1、第2、第3テスト磁界が順次発生せしめられている。尚、
図17は、後述のフローチャートの説明の中でも参照される。
【0089】
[動作フローチャート]
次に、給電機器1の動作の流れを説明する。
図18は、上記初期設定処理を経た後の、給電機器1の動作フローチャートであり、ステップS101から始まる処理は、初期設定処理後に実行される。通信回路120及び送電回路130の動作は、制御回路160の制御の下で実行される。
【0090】
給電機器1が起動すると、まずステップS101において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続する。続くステップS102において、制御回路160は、通信回路120を用いたNFC通信により問い合わせ信号510を給電対象機器に送信し、その後、ステップS103において、応答信号520の受信を待機する。通信回路120にて応答信号520が受信されると、制御回路160は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に送電対象があると判断して(ステップS104のY)ステップS105に進み、そうでない場合(ステップS104のN)、ステップS102に戻る。
【0091】
ステップS105において、制御回路160は、通信回路120を用いたNFC通信により変更用信号530を給電対象機器に送信し、その後、ステップS106において、応答信号540の受信を待機する。通信回路120にて応答信号540が受信されると、ステップS107において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、続くステップS108にて異物検出処理を行う(詳細は後述)。
【0092】
異物検出処理の後、ステップS109にて、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続し、ステップS110に進む。ステップS108の異物検出処理にて、給電台12上に異物3が有る(即ち存在する)と判断された場合には、ステップS110からステップS102に戻るが、給電台12上に異物3が無い(即ち存在しない)と判断された場合にはステップS110からステップS111に進む。ステップS110において、異物3が無いとの判断は、給電対象機器に対する送電を実行可能と判断することと等価であり、異物3が有るとの判断は、給電対象機器に対する送電を実行不能と判断することと等価である。
【0093】
ステップS111において、制御回路160は、通信回路120を用いたNFC通信により認証信号550を給電対象機器に送信し、その後、ステップS112において、応答信号560の受信を待機する。通信回路120にて応答信号560が受信されると、ステップS113において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、続くステップS114にて送電回路130による送電動作を開始させる。
【0094】
制御回路160は、送電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間と所定の時間t
Aとを比較する(ステップS115)。そして、その経過時間が時間t
Aに達すると(ステップS115のY)、ステップS116にて、制御回路160は、送電回路130による送電動作を停止させてステップS101に戻り、上述の処理を繰り返す。但し、第1ケースにおいても、電子機器2のバッテリが満充電状態になると、応答信号520の解析結果に基づきステップS105への移行が発生しなくなる。
【0095】
次に、電子機器2の動作の流れを説明する。
図19は、電子機器2の動作フローチャートであり、ステップS201から始まる処理は、初期設定処理を経た給電機器1の動作に連動して実行される。通信回路220及び受電回路230の動作は、制御回路250の制御の下で実行される。
【0096】
電子機器2が起動すると、まずステップS201において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて通信回路220を共振回路RRに接続する。電子機器2の起動時における共振周波数f
Oは基準周波数である。続くステップS202において、制御回路250は、通信回路220を用い、問い合わせ信号510の受信を待機する。通信回路220にて問い合わせ信号510が受信されると、ステップS203において、制御回路250は、問い合わせ信号510を解析して応答信号520を生成し、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号520を給電機器1に送信する。このとき、制御回路250は、バッテリ21の状態を確認し、バッテリ21が満充電状態でなく且つバッテリ21に異常が認められなければ、電力を受け取れる又は電力の送電を求める信号を応答信号520に含める。一方、バッテリ21が満充電状態あれば又はバッテリ21に異常が認められれば、電力を受け取れない旨の信号を応答信号520に含める。
【0097】
その後のステップS204において変更用信号530が通信回路220にて受信されると、ステップS205に進む。ステップS205において、制御回路250は、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号540を給電機器1に送信し、続くステップS206にて、変更回路240を制御することで共振周波数f
Oを基準周波数から周波数f
Mに変更する。制御回路250は、共振周波数f
Oを周波数f
Mに変更してからの経過時間を計測し(ステップS207)、その経過時間が所定時間t
Mに達すると、共振周波数f
Oを基準周波数に戻してから(ステップS208)、ステップS209に進む。給電機器1にてテスト磁界が発生されている期間中、共振周波数f
Oが周波数f
Mに維持され、その期間が終了すると速やかに共振周波数f
Oが基準周波数に戻されるように、時間t
Mが予め設定されている。変更用信号530の中で時間t
Mが指定されていても良い。
【0098】
ステップS209において、制御回路250は、通信回路220を用い、認証信号550の受信を待機する。通信回路220にて認証信号550が受信されると、ステップS210において、制御回路250は、認証信号550に対する応答信号560を通信回路220を用いたNFC通信により給電機器1へ送信する。尚、異物3が給電台12上に存在する場合には、認証信号550が給電機器1から送信されないので(
図18のステップS110参照)、ステップS209にて認証信号550が一定時間受信されない場合にはステップS201に戻ると良い。
【0099】
応答信号560の送信後、ステップS211において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて受電回路230を共振回路RRに接続し、続くステップS212にて受電回路230を用いた受電動作を開始させる。制御回路250は、受電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間と所定の時間t
Bとを比較する(ステップS213)。そして、その経過時間が時間t
Bに達すると(ステップS213のY)、ステップS214にて、制御回路250は、受電動作を停止させてステップS201に戻る。
【0100】
受電動作の行われる期間が給電機器1にて送電動作が行われている期間と実質的に一致するように、時間t
Bは、予め定められている又は認証信号550の中で指定されている。受電動作の開始後、制御回路250は、バッテリ21への充電電流を監視し、充電電流値が所定値以下になった時点で送電動作が終了したと判断して、受電動作の停止及びステップS201への移行を行うようにしても良い。
【0101】
図20を参照し、異物検出処理の動作の流れを説明する。
図20は、
図18のステップS108における異物検出処理の詳細フローチャートである。異物検出処理では、まずステップS131において、制御回路160が、送電回路130の制御を通じ、第1テスト強度を有し且つ基準周波数で振動する第1テスト磁界を送電側コイルT
Lに発生させ、負荷検出回路140を用いて、第1テスト磁界を発生させているときの電圧値V
Dを電圧値V
D(1)として取得する。次にステップS132において、制御回路160は、送電回路130の制御を通じ、第2テスト強度を有し且つ基準周波数で振動する第2テスト磁界を送電側コイルT
Lに発生させ、負荷検出回路140を用いて、第2テスト磁界を発生させているときの電圧値V
Dを電圧値V
D(2)として取得する。更にステップS133において、制御回路160は、送電回路130の制御を通じ、第3テスト強度を有し且つ基準周波数で振動する第3テスト磁界を送電側コイルT
Lに発生させ、負荷検出回路140を用いて、第3テスト磁界を発生させているときの電圧値V
Dを電圧値V
D(3)として取得する。
【0102】
その後、制御回路160は、電圧値V
D(1)、V
D(2)及びV
D(3)を、夫々、
メモリ150内の基準値V
REF(1)、V
REF(2)及びV
REF(3)と比較し、第1判定不等式“V
D(1)≧V
REF(1)”、第2判定不等式“V
D(1)≧V
REF(2)”及び第3判定不等式“V
D(3)≧V
REF(3)”の成否を判定する(ステップS134〜S136)。そして、制御回路160は、第1〜第3判定不等式が全て成立する場合にのみ、給電台12上に異物が無いと判断し(ステップS137)、そうでない場合、給電台12上に異物があると判断し(ステップS138)、異物検出処理を終える。制御回路160は、異物が無いと判断したとき、給電対象機器に対する送電を実行可能であると判断し、異物があると判断したとき、給電対象機器に対する送電が実行不能であると判断する。尚、第1〜第3判定不等式の内、2以上の判定不等式が成立するのであれば、給電台12上に異物が無いと判断するようにしても良い。
【0103】
第1ケース(
図14(a))に対応する
図17では、第1〜第3判定不等式の全てが成立する様子が示されている。第2ケースでは、
図21に示す如く、異物検出処理にて取得される電圧値V
D(1)〜V
D(3)が、夫々、V
REF(1)〜V
REF(3)を下回ることが期待される。
【0104】
本実施形態によれば、誤って異物3が給電台12上に置かれた場合に、異物検出処理を通じて送電動作が不実行とされるため、送電動作の実行による異物3の破損等を回避することができる。
【0105】
本実施形態では、3つのテスト磁界を用いて異物検出処理を行うことで、検出の確実性を高めているが、1つ又は2つ又は4以上のテスト磁界を用いて異物検出処理を行っても良い。テスト磁界を1つのみ用いる場合、例えば、
図12の初期設定処理においてステップS14〜S19の処理を割愛できると共に、
図20の異物検出処理においてステップS132、S133、S135及びS136の処理を割愛できる。そして、第1判定不等式“V
D(1)≧V
REF(1)”が成立する場合には給電台12上に異物が無いと判断し、第1判定不等式が成立しない場合には給電台12上に異物が有ると判断すればよい。
【0106】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。第2実施形態では、変更回路240の変形構成を例示する。
【0107】
変更回路240として、
図22のスイッチ245から成る変更回路240a又は
図23のスイッチ246から成る変更回路240bを用いても良い。スイッチング素子245及び246の夫々は、例えば、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子である。共振回路RRは、基準周波数にて共振する受電側コイルR
L及び受電側コンデンサR
Cの並列回路を有するが、スイッチ245及び246の夫々は、その並列回路に直列に介在している。
【0108】
即ち、
図22の構成では、コイルR
L、コンデンサR
C及びスイッチ245が互いに直列接続されて、スイッチ245がオンのときにのみ、それらで閉回路が形成される。つまり、スイッチ245がオンのとき、コイルR
L及びコンデンサR
Cの並列回路が形成されて共振周波数f
Oは基準周波数と一致するが、スイッチ245がオフのときには、コイルR
L及びコンデンサR
Cの並列回路が形成されなくなって、共振回路RRはコイルR
Lと寄生容量FCaとで形成されるようになる。従って、スイッチ245がオフのときの共振周波数f
Oは、コイルR
Lのインダクタンス値と寄生容量FCaの静電容量値で決まる。
図22において、寄生容量FCaは、コイルR
Lに直接繋がる配線による寄生容量であり、その静電容量値はコンデンサR
Cのそれよりはるかに小さい。故に、スイッチ245がオフのときの共振周波数f
O(即ち周波数f
M)は基準周波数よりも相当に高くなる。制御回路250は、スイッチ245のオン/オフを制御することで、共振周波数f
Oを基準周波数及び周波数f
M間で切り替えることができる。
【0109】
同様に、
図23の構成では、コイルR
L、コンデンサR
C及びスイッチ246が互いに直列接続されて、スイッチ246がオンのときにのみ、それらで閉回路が形成される。つまり、スイッチ246がオンのとき、コイルR
L及びコンデンサR
Cの並列回路が形成されて共振周波数f
Oは基準周波数と一致するが、スイッチ246がオフのときには、コイルR
L及びコンデンサR
Cの並列回路が形成されなくなって、共振回路RRはコイルR
Lと寄生容量FCbとで形成されるようになる。従って、スイッチ246がオフのときの共振周波数f
Oは、コイルR
Lのインダクタンス値と寄生容量FCbの静電容量値で決まる。
図23において、寄生容量FCbは、コイルR
Lに直接繋がる配線による寄生容量であり、その静電容量値はコンデンサR
Cのそれよりはるかに小さい。故に、スイッチ246がオフのときの共振周波数f
O(即ち周波数f
M)は基準周波数よりも相当に高くなる。制御回路250は、スイッチ246のオン/オフを制御することで、共振周波数f
Oを基準周波数及び周波数f
M間で切り替えることができる。
【0110】
給電用接続状態において、
図23におけるスイッチ246は、コイルR
Lと受電回路230とを接続する一対の配線(即ち、受電電力が受電回路230に送られる一対の配線)上に設けられている一方で、
図22におけるスイッチ245は該一対の配線上ではなく該一対の配線間に設けられた分岐配線上に存在する。
図22の構成では、この分岐配線上にコンデンサR
C及びスイッチ245が直列に介在しているが、
図23の構成では、この分岐配線上にコンデンサR
Cのみが存在する。上記一対の配線上には、受電電力を受電回路230に送るための大電流が流れる。これを考慮すると、スイッチ246の定格を比較的大きなものにする必要がある。故に、
図23の構成よりも
図22の構成を採用する方が望ましい。スイッチ245又は246を、IC200の外部に設けるようにしても良い。
【0111】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第1又は第2実施形態において共振回路TT及びRRの夫々は、直列共振回路に変更されても良い。共振回路TTとしての直列共振回路を記号TT’にて参照し、共振回路RRとしての直列共振回路を記号RR’にて参照する。
図24(a)及び(b)に共振回路TT’及びRR’の回路図を示す。第1又は第2実施形態の記載を第3実施形態に適用する場合、第1又は第2実施形態の記載中における記号TT、RRは、夫々、記号TT’、RR’に読み替えられる。
【0112】
共振回路TT’は、端子101及び102間に直列に設けられたコンデンサT
C及びコイルT
Lの直列回路から成り、共振回路RR’は、端子201及び202間に直列に設けられたコンデンサR
C及びコイルR
Lの直列回路から成る。共振回路TT’におけるコンデンサT
C及びコイルT
Lの共振周波数も共振回路RR’におけるコンデンサR
C及びコイルR
Lの共振周波数も基準周波数と一致する。負荷検出回路140が共振回路TT’に接続されるときも、
図25に示す如く、コイルT
Lに流れる電流をセンス抵抗141に流せば良いが、並列共振回路から直列共振回路への変更に伴って、当然に、上述の各回路構成は適宜変更される。
【0113】
即ち例えば、共振回路RR’を用いる場合、変更回路240として、
図26の変更回路240c又は240dを用いることができる。変更回路240c及び240dの夫々は、
図10の変更回路240と同様、コンデンサ241及びスイッチ242の直列回路から成る。
【0114】
但し、共振回路RR’及び変更回路240cを用いる
図26の構成では、コンデンサR
Cに対してコンデンサ241及びスイッチ242の直列回路が並列接続される。共振回路RR’及び変更回路240dを用いる
図27の構成では、コイルR
Lに対してコンデンサ241及びスイッチ242の直列回路が並列接続される。従って、
図26又は
図27の構成において、スイッチ242がオフのとき、共振回路RR’の共振周波数f
Oを決定する受電側容量はコンデンサR
Cそのものとなって共振周波数f
Oは基準周波数と一致するが、スイッチ242がオンのとき、受電側容量はコンデンサR
C及び241にて形成されることになるため、共振周波数f
Oは基準周波数から周波数f
Mへと変更されることになる。制御回路250は、スイッチ242のオン/オフを制御することで、共振周波数f
Oを基準周波数及び周波数f
M間で切り替えることができる。コンデンサ241及びスイッチ242の何れか一方又は双方をIC200の外部に設けることも可能である。
【0115】
コンデンサ241を含む共振周波数変更回路(240、240c、240d)を、直列共振回路RR又は並列共振回路RR’に適用する回路例を幾つか挙げたが、この他にも様々な変形が可能である。何れにせよ、受電側コイル及び受電側容量を含む受信側共振回路(RR、RR’)の共振周波数を基準周波数から変更するために、共振周波数変更回路は、受電側容量が受電側コンデンサ(R
C)と一致する状態を基準として、他のコンデンサ(241)を用い受電側容量を変化させればよい。
【0116】
或いは例えば、共振回路RR’を用いる場合、
図28に示す如く、スイッチ246から成る変更回路240eを変更回路240として用いても良い。変更回路240eは、
図23の変更回路240bと同様、スイッチ246にて構成される。但し、共振回路RR’及び変更回路240eを用いる
図28の構成では、コイルR
LとコンデンサR
Cとの間にスイッチ246が直列に挿入されている。従って、
図28の構成において、スイッチ246がオンのとき、コイルR
L及びコンデンサR
Cの直列回路が形成されて共振周波数f
Oは基準周波数と一致するが、スイッチ246がオフのときには、コイルR
L及びコンデンサR
Cの直列回路が形成されなくなって、共振回路RR’はコイルR
Lと寄生容量FCbとで形成されるようになる。結果、共振回路RR’の共振周波数f
Oは基準周波数から周波数f
Mに変化せしめられる。制御回路250は、スイッチ246のオン/オフを制御することで、共振周波数f
Oを基準周波数及び周波数f
M間で切り替えることができる。
図28のスイッチ246をIC200の外部に設けることも可能である。
【0117】
更に或いは例えば、
図29に示す共振回路RR’と変更回路240としての変更回路240fを用いても構わない。変更回路240fはスイッチ242から成り、
図29の共振回路RRでは、コンデンサR
CがコンデンサR
CO及びコンデンサ248から成る。スイッチ242がオンのとき、コンデンサR
CO、コンデンサ248及びスイッチ242にて閉回路が形成されて、コンデンサR
CO及び248の並列回路による合成容量(R
C)がコイルR
Lと直列接続され、その合成容量(R
C)とコイルR
Lとの直列共振回路の共振周波数(f
O)が基準周波数と一致する。一方、スイッチ242がオフのとき、コンデンサ248がコイルR
Lから切り離され、コンデンサR
COとコイルR
Lとの直列共振回路の共振周波数が共振回路RR’の共振周波数f
Oとなり、その時の共振周波数f
Oは、基準周波数より高い周波数f
Mとなる。制御回路250は、
図29のスイッチ242のオン/オフを制御することで、共振周波数f
Oを基準周波数及び周波数f
M間で切り替えることができる(
図26等と異なり、スイッチ242をオフとすることで共振周波数f
Oが周波数f
Mに変更せしめられる)。
図29のスイッチ242をIC200の外部に設けることも可能である。
【0118】
まとめると、以下のような技術が本発明に含まれる。本発明において、受電側共振回路は受電側コイル(R
L)と受電側容量の並列回路又は直列回路を有し、NFC通信及び電力伝送の実現時には、受電側容量は所定の基準容量に一致せしめされる。受電側容量が基準容量と一致しているとき、受電側共振回路の共振周波数f
O、即ち、受電側コイル(R
L)と受電側容量の並列回路又は直列回路の共振周波数f
Oは基準周波数と一致する。共振周波数変更回路は、必要なタイミングにおいて、受電側容量を基準容量から増加又は減少させる。これにより、受電側共振回路において、受電側コイル(R
L)と、基準容量より大きい又は小さい受電側容量とで、並列回路又は直列回路が形成され、結果、受電側共振回路の共振周波数f
Oが基準周波数から変更される。
【0119】
<<本発明の第1考察>>
上述の第1〜第3実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0120】
本発明の一側面に係る受電装置(200)は、受電側コイル及び受電側容量を含む受電側共振回路(RR)に接続されるべき回路であって、磁界共鳴を利用して前記受電側コイルにて受電した電力に基づき出力電力を生成する受電回路(230)と、前記電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を、前記受電の際の前記共振周波数である基準周波数から変更する変更回路(240)と、を備えたことを特徴とする。
【0121】
受電装置は、受電側コイルに対応する送電側コイルから送電される電力を、磁界共鳴を利用して受電できる。一方、受電装置と異なる異物も存在し得る。ここにおける異物は、上記基準周波数を共振周波数として持った共振回路を備えるが、受電能力を持たない機器であるとする。このような異物が、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に存在している状況において、電力送電用の磁界が送電側コイルにて発生されたとき、異物が破損等するおそれがある。これを回避するために、異物の有無を検知する必要がある。
【0122】
この検知のために、受電装置に上記変更回路を設ける。そうすると、以下のような作用が得られる。即ち、受電装置のみが存在する第1ケースにおいて、受電側共振回路の共振周波数を基準周波数から変更したとき、受電側共振回路が送電側コイルの発生磁界に対して共鳴しなくなり、送電側コイルにとっての負荷の重さが比較的軽くなる。一方、受電装置及び異物が存在する第2ケースにおいては、受電側共振回路の共振周波数の変更により送電側コイルにとっての負荷の一部は軽くなるものの、異物の共振回路は送電側コイルの発生磁界に共鳴するため、送電側コイルにとっての負荷の重さは第1ケースよりも重くなる。
【0123】
故に、負荷の重さを評価することで第1ケースと第2ケースを区別することが可能となり、第2ケースにおいては送電を行わないといった制御が可能となる。つまり、上記のような構成を持つ受電装置によれば、受電装置及び送電装置を有する非接触給電システム内で、異物の有無判断及び送電の実行可否判断を行うことが可能となり、異物の破損等を回避することが可能となる。
【0124】
本発明の一側面に係る送信装置(100)は、送電側コイル及び送電側容量を含む送電側共振回路(TT)に接続されるべき回路であって、前記送電側共振回路に交流信号を供給して前記送電側コイルに基準周波数の交番磁界を発生させることで前記送電側コイルから磁界共鳴方式で電力を送電させる送電回路(130)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅に応じた値を出力する検出回路(140)と、前記送電回路を制御する制御回路(160)と、を備え、前記制御回路(160)は、前記送電側コイルからの電力を受電可能な受電側コイル及び受電側容量を含む受電側共振回路の共振周波数を、前記受電の際の前記共振周波数である前記基準周波数から変更させることの契機となる特定信号を、前記送電側コイルから前記受電側コイルに送信させる第1処理部と、前記特定信号の送信後、所定のテスト磁界が前記送電側コイルにて発生されるよう前記送電回路を制御する第2処理部と、前記テスト磁界を発生させているときの前記検出回路の出力値を所定の基準値と比較することで前記送電の実行可否を判断する第3処理部と、を有することを特徴とする。
【0125】
受電側共振回路に接続された又は受電側共振回路を備えた受電装置は、送電側コイルから送電される電力を、磁界共鳴を利用して受電できる。一方、受電装置と異なる異物も存在し得る。ここにおける異物は、上記基準周波数を共振周波数として持った共振回路を備えるが、受電能力を持たない機器であるとする。このような異物が、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に存在している状況において、電力送電用の磁界が送電側コイルにて発生されたとき、異物が破損等するおそれがある。これを回避するために、異物の有無を検知する必要がある。
【0126】
この検知のために、まず第1処理部を利用する。送電装置に対応する受電装置は、第1処理部による特定信号に従い、共振周波数を基準周波数から変更できる。これに対し、送電装置に対応しない異物は、特定信号に応答せず、共振周波数を基準周波数から変更しない又は変更できない。この変更による作用を、第1及び第2ケースに分けて考察する。
【0127】
受電装置のみが存在する第1ケースにおいて、受電側共振回路の共振周波数を基準周波数から変更したとき、受電側共振回路が送電側コイルの発生磁界に対して共鳴しなくなり、送電側コイルにとっての負荷の重さが比較的軽くなる。一方、受電装置及び異物が存在する第2ケースにおいては、受電側共振回路の共振周波数の変更により送電側コイルにとっての負荷の一部は軽くなるものの、異物は送電側コイルの発生磁界に共鳴するため、送電側コイルにとっての負荷の重さは第1ケースよりも重くなる。
【0128】
ところで、送電側コイルに流れる電流の振幅は、送電側コイルの負荷の重さに依存するため、その振幅の値を評価することで、負荷の軽重、即ち、第1及び第2ケースの区別が可能となる。これを考慮し、上記第2及び第3処理部を送電装置に設ける。これにより、異物の有無判断を介して送電の実行可否制御を行うことが可能となり、異物の破損等を回避することが可能となる。
【0129】
尚、上述の実施形態では、通信回路120を用いた変更用信号530の送信が特定信号の送信に対応する。変更用信号530は、制御回路160の制御の下で送信されるので制御回路160は第1処理部を含んでいると考えられる。但し、変更用信号530の送信の実行主体は通信回路120である。また、
図20の例では、ステップS131〜S133の処理が第2処理部の処理に対応し、ステップS134〜S138の処理が第3処理部の処理に対応する。
【0130】
また、本発明に係る受電装置は、受電側共振回路に接続された装置であると考えても良いし、受電側共振回路を構成要素として含んだ装置であると考えても良い。本発明に係る送電装置は、送電側共振回路に接続された装置であると考えても良いし、送電側共振回路を構成要素として含んだ装置であると考えても良い。
【0131】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態及び後述の第5〜第11実施形態は第1〜第3実施形態を基礎とする実施形態であり、第4〜第11実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1〜第3実施形態の記載が第4〜第11実施形態にも適用される。また、第1〜第11実施形態で述べた技術の内、任意の2以上の実施形態で述べた技術を組み合わせて実施することもできる。尚、既に述べた事項であるが、以下の説明においても、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(
図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。
【0132】
図30を参照する。電子機器2に設けられる受電側IC200として、
図30の受電側IC200’を用いることもできる。
図30は、受電側IC200’の内部ブロック図を含む、電子機器2の一部の構成図である。
図5のIC200を基準として共振周波数変更回路240をコイル短絡回路260に置換することでIC200’が形成され、当該置換を除きIC200’は第1〜第3実施形態におけるIC200と同様であって良い。
【0133】
並列の共振回路RR(
図2参照)がIC200’に接続されても良いし、直列の共振回路RR’(
図24(b)参照)がIC200’に接続されても良い。即ち、電子機器2における受電側共振回路は、並列の共振回路RRであっても良いし、直列の共振回路RR’であっても良い。コイル短絡回路260は、受電側共振回路(RR又はRR’)における受電側コイルR
Lを短絡可能な回路である。
【0134】
図31に示す短絡回路260aは、並列の共振回路RRに適用されるコイル短絡回路260の例である。短絡回路260aは、共振回路RRにおけるコンデンサR
Cの一端及びコイルR
Lの一端が共通接続されるノードと、共振回路RRにおけるコンデンサR
Cの他端及びコイルR
Lの他端が共通接続されるノードとの間に接続(挿入)されたスイッチ261から成る。スイッチ261は、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子から成り、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ261がオンとなると共振回路RRにおけるコイルR
Lが短絡される(より詳細にはコイルR
Lの両端が短絡される)。
【0135】
図32に示す短絡回路260bは、直列の共振回路RR’に適用されるコイル短絡回路260の例である。短絡回路260bは、コイルR
Lの両端間に接続されたスイッチ262から成る。スイッチ262は、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子から成り、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ262がオンとなると共振回路RR’におけるコイルR
Lが短絡される(より詳細にはコイルR
Lの両端が短絡される)。
【0136】
第1〜第3実施形態で述べた、受電側共振回路(RR又はRR’)の共振周波数f
Oを基準周波数から所定周波数f
Mに変更する動作を、以下、説明の便宜上、共振周波数変更動作と呼ぶ。一方、コイル短絡回路260を用いて受電側コイルR
Lを短絡する動作を、以下、説明の便宜上、コイル短絡動作と呼ぶ。第1〜第3実施形態にて共振周波数変更動作が行われるべきタイミングにおいて、第4実施形態では共振周波数変更動作の代わりにコイル短絡動作を行う。即ち、第1〜第3実施形態にて受電側共振回路(RR又はRR’)の共振周波数f
Oが周波数f
Mに変更されるべき期間において、第4実施形態では受電側コイルR
Lを短絡する。
【0137】
受電側コイルR
Lが短絡された状態では受電側共振回路が存在しなくなる(受電側共振回路が存在しない状態と等価な状態となる)。従って、共振周波数変更動作を実行した場合と同様、コイル短絡動作の実行中では、送電側コイルT
Lにとっての負荷が十分に軽くなり(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となり)、上述の第1ケース(
図14(a)参照)においては、異物検出処理にて上記判定不等式“V
D(i)≧V
REF(i)”が成立する(
図20も参照)。また、上述の第2ケース(
図14(b)参照)においては、コイル短絡動作の実行中においても、異物3は送電側コイルT
Lの負荷として存在し続けるため、電圧値V
D(i)が小さくなり、異物検出処理にて上記判定不等式“V
D(i)≧V
REF(i)”が成立しない。故に、第1〜第3実施形態で述べたものと同様の異物検出処理が可能となる。異物検出処理の結果に基づく給電機器1の動作は、第1〜第3実施形態で述べたものと同様である。
【0138】
図33を参照して、電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりを説明する。問い合わせ信号510及び応答信号520の送受信の流れは第1実施形態で述べた通りである(
図16参照)。上述したように、給電対象機器は、電子機器2を含み、異物3を含みうる。給電対象機器からの応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、短絡用信号530aをNFC通信によって給電対象機器に送信する。短絡用信号530aを受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200’)は、短絡用信号530aに対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから速やかに受電側コイルR
Lを短絡する。短絡用信号530aは、例えば、受電側コイルR
Lを短絡することを要求、指示又は示唆する信号であり、電子機器2の制御回路250は、短絡用信号530aの受信を契機として、受電側コイルR
Lを短絡する。受電側コイルR
Lの短絡の契機となるならば短絡用信号530aはどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
【0139】
応答信号540を受信した給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を通信回路120から送電回路130に切り替えて上述の異物検出処理を実行する。異物検出処理の実行期間中、電子機器2(IC200’)は、受電側コイルR
Lの短絡状態を維持する。具体的には、電子機器2(IC200’)は、内蔵タイマを用いて、異物検出処理の実行期間の長さに応じた時間だけ受電側コイルR
Lを短絡状態で維持し、その後、受電側コイルR
Lの短絡状態を解消する(即ち、受電側コイルR
Lが短絡されていない状態に戻す)。
【0140】
異物検出処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を送電回路130から通信回路120に切り替えて、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200’)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100)は、共振回路TTの接続先を再び通信回路120から送電回路130に切り替えて送電動作を実行し、これにより、電力伝送570が実現される。
【0141】
図14(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、
図14(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、異物検出処理において上記判定不等式が成立せずに給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。
【0142】
尚、共振周波数変更動作とコイル短絡動作の何れを通じても異物検出処理を正しく実行できるため、応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、変更用信号530及び短絡用信号530aの双方の機能を備えた特定要求信号530b(
図34参照)を給電対象機器に送信して良い。共振周波数変更動作を実行できる給電対象機器が特定要求信号530bを受信したならば給電対象機器にて共振周波数変更動作が実行され、コイル短絡動作を実行できる給電対象機器が特定要求信号530bを受信したならば給電対象機器にてコイル短絡動作が実行される。
【0143】
図35は、初期設定処理(
図12参照)の後に実行される給電機器1の動作フローチャートである。第1実施形態(
図18)で述べた給電機器1の動作フローチャートを基準として、第4実施形態ではステップS105がステップS105aに置換され、その置換を除き、給電機器1の動作フローチャートは第1及び第4実施形態間で共通である。共通部分の説明を省略する。
図35のステップS105aにおいて、給電機器1の制御回路160は、通信回路120を用いたNFC通信により、特定要求信号530bを給電対象機器に送信し、その後、ステップS106において、応答信号540の受信を待機する。
【0144】
図36は、電子機器2の動作フローチャートである。第1実施形態(
図19)で述べた電子機器2の動作フローチャートを基準として、第4実施形態ではステップS204、S206及びS208が夫々ステップS204a、S206a及びS208aに置換され、それらの置換を除き、電子機器2の動作フローチャートは第1及び第4実施形態間で共通である。共通部分の説明を省略する。電子機器2が共振周波数変更動作又はコイル短絡動作を実行できるものとして、
図36の動作を説明する。
【0145】
ステップS203にて応答信号520を送信した後、ステップS204aにおいて電子機器2は特定要求信号530bの受信を待機する。ステップS204aにおいて変更用信号530bが通信回路220にて受信されると、ステップS205に進む。ステップS205において、制御回路250は、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号540を給電機器1に送信し、続くステップS206aにて、変更回路240を制御することで受電側共振回路の共振周波数f
Oを基準周波数から周波数f
Mに変更する、又は、短絡回路260を制御することで受電側コイルR
Lを短絡する。制御回路250は、共振周波数f
Oの変更又は受電側コイルR
Lの短絡を開始してからの経過時間を計測し(ステップS207)、その経過時間が所定時間t
Mに達すると、ステップS208aにて、共振周波数f
Oを基準周波数に戻し又は受電側コイルR
Lの短絡状態を解消し、その後、ステップS209に進む。給電機器1にてテスト磁界が発生されている期間中、共振周波数f
Oが周波数f
Mに維持され又は受電側コイルR
Lの短絡状態が維持され、その期間が終了すると速やかに、共振周波数f
Oが基準周波数に戻されるように又は受電側コイルR
Lの短絡状態が解消されるように、時間t
Mが予め設定されている。特定要求信号530bの中で時間t
Mが指定されていても良い。ステップS209以降の動作は第1実施形態と同様である。
【0146】
本実施形態の如く、コイル短絡動作が実現できるように電子機器2を形成しておいても、第1〜第3実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0147】
図37を参照し、並列の共振回路RRに好適な短絡回路260の具体的回路例を説明する。電子機器2又はIC200’に、整流回路DD、トランジスタSS、抵抗R
SS及び平滑コンデンサCC、並びに、配線であるラインLN1〜LN4を設けておくことができる。整流回路DDはダイオード(整流素子)D1〜D4から成る全波整流回路である。トランジスタSSは、Nチャンネル型のMOSFET(MOS電界効果トランジスタ;metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として形成されている。
【0148】
図37の回路において、受電側コイルR
Lの一端及び受電側コンデンサR
Cの一端はラインLN1に共通接続される一方、受電側コイルR
Lの他端及び受電側コンデンサR
Cの他端はラインLN2に共通接続される。ラインLN1は、ダイオードD1のアノード及びダイオードD3のカソードに共通接続され、ラインLN2は、ダイオードD2のアノード及びダイオードD4のカソードに共通接続される。ダイオードD1及びD2のカソードはラインLN3に共通接続され、ダイオードD3及びD4のアノードはラインLN4に共通接続される。トランジスタSSにおいて、ドレインはラインLN3に接続され、ソースはラインLN4に接続され、ゲートは抵抗R
SSを介してラインLN4に接続される。平滑コンデンサCCの正極及び負極は夫々ラインLN3及びLN4に接続される。
【0149】
制御回路250は、トランジスタSSのゲート電圧を制御することで、トランジスタSSをオン又はオフさせる。MOSFETのような電界効果トランジスタにて形成されるトランジスタにおいて、トランジスタのゲート電圧とは、当該トランジスタのソース電位を基準とした当該トランジスタのゲートの電圧を指す。
【0150】
トランジスタSSがオフのとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力が整流回路DDでの整流を通じてラインLN3及びLN4間に伝搬されることで、ラインLN4の電位から見てラインLN3に正の電圧が表れる。このとき、
図37に示す如く、ラインLN3及びLN4間に平滑コンデンサCCを設けておけば、平滑コンデンサCCに電荷が蓄積され、ラインLN3の電位を基準としてラインLN3及びLN4間に正の直流電圧を発生させることができる。この正の直流電圧にてバッテリ21を充電することもできるし、機能回路22を駆動させることもできる(
図30及び
図2参照)。平滑コンデンサCCは、NFC受電回路230の構成要素に含まれると考えても良いし、NFC受電回路230の外に配置されると考えても良い。
【0151】
一方、トランジスタSSがオンのとき、受電側コイルR
Lは整流回路DDを介して(より詳細には、ダイオードD1及びD4の組み合わせ又はダイオードD2及びD3の組み合わせを介して)短絡されるので、ラインLN3及びLN4間には電圧が発生しない(説明の簡略化上、スイッチSSのドレイン−ソース間電圧をゼロと仮定)。
図37の回路においてスイッチSSのオンが上述のコイル短絡動作に相当し、
図37の回路を用いた場合、スイッチSSにてコイル短絡回路260が形成されることになる。
【0152】
例えば、
図22の回路を作成する場合、2つのMOSFETの直列回路にてスイッチ245を形成することでスイッチ245を双方向スイッチとして機能させることができる。この場合、スイッチ245をオフしたとしても、MOSFETの寄生容量とコンデンサR
Cの直列容量が寄生容量FCaに並列接続される状態となり、結果、周波数f
Mが基準周波数から十分に離れることができないおそれがある。これに対し、
図37のような回路を用いれば、このような事態の発生を抑制することが可能となる。
【0153】
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。
図38は、第5実施形態に係る非接触給電システムの概略構成図であり、
図38の非接触給電システムは、給電機器1及び電子機器2として、夫々、給電機器1A及び電子機器2Aを備える。
【0154】
給電機器1Aは、切り替え回路110Aと、NFC通信回路120と、NFC送電回路130と、負荷検出回路140と、メモリ150と、制御回路160Aと、送電側共振回路TTAを備える。ブロック110A、120、130、140、150及び160Aを集積化して形成される半導体集積回路を送電側IC100として給電機器1Aに設けておくことができる。電子機器2Aは、切り替え回路210Aと、NFC通信回路220と、NFC受電回路230と、制御回路250Aと、受電側共振回路RRAを備える。ブロック210A、220、230及び250Aを集積化して形成される半導体集積回路を受電側IC200又は200’として電子機器2Aに設けておくことができる。
【0155】
給電機器1AにおけるNFC通信回路120、NFC送電回路130、負荷検出回路140及びメモリ150は、上述の給電機器1のそれらと同じものであって良い。送電側共振回路TTAは、並列の送電側共振回路TT又は直列の送電側共振回路TT’である(
図2及び
図24(a)参照)。送電側共振回路TTAは、切り替え回路110Aに接続され、切り替え回路110Aを介して通信回路120又は送電回路130に接続される。切り替え回路110Aは、第1実施形態で述べた切り替え回路110(
図4参照)と同じ機能を有し、その切り替え回路110と同じものであって良い。制御回路160Aは、上述の制御回路160の機能を内包するものであり、制御回路160と同じものであって良い。制御回路160Aは、制御回路160と同様、回路110A、120及び130を制御できる。制御回路160Aは、切り替え回路110Aを制御することで、NFC通信回路120又はNFC送電回路130を択一的に送電側共振回路TTAに接続できて良い。
【0156】
電子機器2AにおけるNFC通信回路220及びNFC受電回路230は、上述の電子機器2のそれらと同じものであって良い。切り替え回路210Aは、第1実施形態で述べた切り替え回路210(
図5参照)として機能できるものであって良いが、その具体的回路例については後述する。受電側共振回路RRAは、並列の受電側共振回路RR又は直列の受電側共振回路RR’である(
図2及び
図24(b)参照)。受電側共振回路RRAは、切り替え回路210Aに接続され、切り替え回路210Aを介して通信回路220又は受電回路230に接続される。制御回路250Aは、上述の制御回路250の機能を内包するものであり、制御回路250と同じものであって良い。制御回路250Aは、制御回路250と同様、回路210A、220及び230を制御できる。制御回路250Aは、NFC通信回路220又はNFC受電回路230Aを択一的に受電側共振回路RRAに接続できて良い。
【0157】
―――切り替え回路210Aの第1例―――
図39を参照し、切り替え回路210Aの第1例を説明する。
図39に示す切り替え回路1100を切り替え回路210Aの第1例として利用することができる。
図39では、直列の共振回路RR’に切り替え回路1100が接続されている。切り替え回路1100は、符号1111〜1118及び1121〜1128によって参照される部品とライン1131〜1138を含んで形成される。トランジスタ1115及び1125はNチャンネル型のMOSFETとして形成され、トランジスタ1117及び1127はPチャンネル型のMOSFETとして形成される。
【0158】
図39において、受電側コイルR
Lの一端はライン1132に直接接続される一方で受電側コイルR
Lの他端は受電側コンデンサR
Cを介してライン1131に接続される。ライン1131は、ダイオード1111及び1121のアノード並びにダイオード1113及び1123のカソードに共通接続され、ライン1132は、ダイオード1112及び1122のアノード並びにダイオード1114及び1124のカソードに共通接続される。ダイオード1111及び1112のカソードはライン1133に共通接続され、ダイオード1113及び1114のアノードはライン1134に共通接続される。ダイオード1121及び1122のカソードはライン1135に共通接続され、ダイオード1123及び1124のアノードはライン1136に共通接続される。
【0159】
トランジスタ1115において、ドレインは、トランジスタ1117のゲートに接続されると共に抵抗1118を介してライン1133に接続され、ソースはライン1134に接続され、ゲートは抵抗1116を介してライン1134に接続される。トランジスタ1117のソース、ドレインは、夫々、ライン1133、1137に接続される。トランジスタ1125において、ドレインは、トランジスタ1127のゲートに接続されると共に抵抗1128を介してライン1135に接続され、ソースはライン1136に接続され、ゲートは抵抗1126を介してライン1136に接続される。トランジスタ1127のソース、ドレインは、夫々、ライン1135、1138に接続される。
【0160】
ライン1137及び1134間には平滑コンデンサCCは設けられず、ライン1138及び1136間にのみ平滑コンデンサCCが設けられる。具体的には、平滑コンデンサCCの正極及び負極が夫々ライン1138及び1136に接続される。但し、比較的小さな静電容量を持つコンデンサ(少なくとも平滑コンデンサCCの静電容量よりは小さな静電容量を持つコンデンサ)がライン1137及び1134間に設けられうる。ライン1134及び1137はNFC通信回路220に接続され、ライン1134及び1137間の電圧がNFC通信回路220に与えられる。ライン1138及び1136はNFC受電回路230に接続され、ライン1138及び1136間の電圧がNFC受電回路230に与えられる。
【0161】
制御回路250Aは、トランジスタ1115及び1125のゲート電圧を夫々に制御することで、トランジスタ1115及び1125を個別にオン又はオフさせる。トランジスタ1115がオンのとき、トランジスタ1117のゲート電位の低下を通じてトランジスタ1117もオンとなる。トランジスタ1115がオフのときトランジスタ1117もオフとなる。トランジスタ1125がオンのとき、トランジスタ1127のゲート電位の低下を通じてトランジスタ1127もオンとなる。トランジスタ1125がオフのときトランジスタ1127もオフとなる。
【0162】
以下、通信回路120及び220を用いてNFC通信を行う期間を通信期間と呼び、送電回路130及び受電回路230を用いた電力伝送が行われる期間を電力伝送期間と呼ぶ。異物検出処理が実行される期間を含み、共振周波数変更動作又はコイル短絡動作が行われる期間をテスト期間と呼ぶ。
【0163】
通信期間では通信用接続状態が実現される。即ち、通信期間において、制御回路250Aは、トランジスタ1115、1125を、夫々、オン、オフとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく信号がダイオード1111〜1114から成る整流回路及びトランジスタ1117を通じてライン1137及び1134間に伝搬される。機器1及び2(本実施形態では1A及び2A)は、基準周波数を有する搬送波の振幅変調を利用してNFC通信を実現できる。従って、NFC通信回路220は、通信期間において、ライン1137及び1134間の電圧信号の振幅変化から情報信号を抽出できる。
【0164】
電力伝送期間では給電用接続状態が実現される。即ち、電力伝送期間において、制御回路250Aは、トランジスタ1115、1125を、夫々、オフ、オンとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力がダイオード1121〜1124から成る整流回路及びトランジスタ1127を通じてライン1138及び1136間に伝搬される。結果、ライン1138及び1136間に接続された平滑コンデンサCCにて電荷が蓄積される。平滑コンデンサCCの蓄積電荷に基づき、NFC受電回路230は、任意の電圧を生成及び出力することができ、その出力電圧にてバッテリ21を充電することもできるし、機能回路22を駆動させることもできる(
図2参照:後述の任意の例においても同様)。
【0165】
テスト期間において、制御回路250Aは、トランジスタ1115及び1125を共にオフとする。
図39において、トランジスタ1115及び1125が共にオフとされる状態は、
図28のスイッチ246がオフとされる状態と等価である。即ち、トランジスタ1115及び1125がオフのとき、コイルR
L及びコンデンサR
Cの直列回路が形成されなくなって、コイルR
LとコイルR
Lの両端間の寄生容量(
図28のFCbに相当するが、
図39においては不図示)とで受電側共振回路が形成され、結果、受電側共振回路の共振周波数f
Oは基準周波数から周波数f
Mに変化せしめられる。このように、切り替え回路1100は共振周波数変更動作を実現する共振周波数変更回路(240)を内包している、といえる。
【0166】
―――切り替え回路210Aの第2例―――
図40を参照し、切り替え回路210Aの第2例を説明する。
図40に示す切り替え回路1200を切り替え回路210Aの第2例として利用することができる。
図40では、並列の共振回路RRに切り替え回路1200が接続されている。切り替え回路1200は、符号1211〜1214及び1221〜1226によって参照される部品とライン1231〜1236を含んで形成される。トランジスタ1225はNチャンネル型のMOSFETとして形成される。
図40の部品1221〜1226、CCは、夫々、
図37の部品D1〜D4、SS及びR
SS、CCに相当する。
【0167】
図40において、受電側コイルR
Lの一端及び受電側コンデンサR
Cの一端はライン1231に共通接続され、受電側コイルR
Lの他端及び受電側コンデンサR
Cの他端はライン1232に共通接続される。ライン1231は、ダイオード1211及び1221のアノード並びにダイオード1213及び1223のカソードに共通接続され、ライン1232は、ダイオード1212及び1222のアノード並びにダイオード1214及び1224のカソードに共通接続される。ダイオード1211及び1212のカソードはライン1233に共通接続され、ダイオード1213及び1214のアノードはライン1234に共通接続される。ダイオード1221及び1222のカソードはライン1235に共通接続され、ダイオード1223及び1224のアノードはライン1236に共通接続される。トランジスタ1225において、ドレインはライン1235に接続され、ソースはライン1236に接続され、ゲートは抵抗1226を介してライン1236に接続される。
【0168】
ライン1233及び1234間には平滑コンデンサCCは設けられず、ライン1235及び1236間にのみ平滑コンデンサCCが設けられる。具体的には、平滑コンデンサCCの正極及び負極が夫々ライン1235及び1236に接続される。但し、比較的小さな静電容量を持つコンデンサ(少なくとも平滑コンデンサCCの静電容量よりは小さな静電容量を持つコンデンサ)がライン1233及び1234間に設けられうる。ライン1233及び1234はNFC通信回路220に接続され、ライン1233及び1234間の電圧がNFC通信回路220に与えられる。ライン1235及び1236はNFC受電回路230に接続され、ライン1235及び1236間の電圧がNFC受電回路230に与えられる。
【0169】
制御回路250Aは、トランジスタ1225のゲート電圧を制御することで、トランジスタ1225をオン又はオフさせる。
【0170】
テスト期間において、制御回路250Aは、トランジスタ1225をオンとする。トランジスタ1225がオンのとき、整流回路(1221〜1224)を介してコイルR
Lが短絡される。即ち、コイル短絡動作が実現される。故に、切り替え回路1200はコイル短絡回路(260)を内包している、といえる。
【0171】
通信期間及び電力伝送期間においてトランジスタ1225はオフとされる。
図40は、コイル短絡動作の実現に関与する部分の回路を抽出して示している。切り替え回路1200と共振回路RRとの間に
図30に示すような切り替え回路210を設けておき、通信期間において通信用接続状態を実現し(ダイオード1221〜1224から成る整流回路をライン1231及び1232から遮断し)且つ電力伝送期間において給電用接続状態を実現すれば良い(ダイオード1211〜1214から成る整流回路をライン1231及び1232から遮断すれば良い)。通信期間において、NFC通信回路220は、ライン1233及び1234間の電圧信号の振幅変化から情報信号を抽出できる。電力伝送期間においては、受電側コイルR
Lに流れる交流電流に基づく電力がダイオード1221〜1224から成る整流回路を通じてライン1235及び1236間に伝搬されて、平滑コンデンサCCに電荷が蓄積される。そうすると、平滑コンデンサCCの蓄積電荷による電圧がNFC受電回路230に供給される。
【0172】
<<第6実施形態>>
本発明の第6実施形態を説明する。
図41は、第6実施形態に係る非接触給電システムの概略構成図であり、
図41の非接触給電システムは、給電機器1及び電子機器2として、夫々、給電機器1A及び電子機器2Bを備える。給電機器1Aの構成及び動作は、第5実施形態(
図38)にて示した通りである。
【0173】
電子機器2Bは、2つの切り替え回路210Bと、NFC通信回路220と、NFC受電回路230と、制御回路250Bと、2つの受電側共振回路RRBを備える。2つのブロック210B並びにブロック220、230及び250Bを集積化して形成される半導体集積回路を受電側IC200又は200’として電子機器2Bに設けておくことができる。
【0174】
電子機器2BにおけるNFC通信回路220及びNFC受電回路230は、上述の電子機器2のそれらと同じものであって良い。2つの受電側共振回路RRBの夫々は、並列の受電側共振回路RR又は直列の受電側共振回路RR’である。2つの受電側共振回路RRBの内、一方を記号RRB[1]にて参照し、他方を記号RRB[2]にて参照する。2つの切り替え回路210Bは、共振回路RRB[1]に接続される切り替え回路210B[1]と、共振回路RRB[2]に接続される切り替え回路210B[2]とから成る。通信用の共振回路として設けられた共振回路RRB[1]は切り替え回路210B[1]を介してNFC通信回路220に接続され、受電用の共振回路として設けられた共振回路RRB[2]は切り替え回路210B[2]を介してNFC受電回路230に接続される。このように、電子機器2Bでは、通信用と受電用の共振回路が別個に設けられているので、
図30の切り替え回路210のような機能は電子機器2Bに設けられていない。切り替え回路210B[1]及び210B[2]の具体的回路例については後述する。制御回路250Bは、上述の制御回路250の機能を内包する。制御回路250Bは、回路210B[1]及び210B[2]を制御できると共に、制御回路250と同様に回路220及び230を制御できる。
【0175】
―――切り替え回路210Bの第1例―――
図42及び
図43を参照し、切り替え回路210Bの第1例を説明する。
図42及び
図43に示す切り替え回路2100を切り替え回路210Bの第1例として利用することができる。
【0176】
図42及び
図43では、直列の受電側共振回路に切り替え回路2100が接続されている。
図42では、切り替え回路2100が
図41の切り替え回路210B[1]として利用されているときの回路例が示されており、切り替え回路210B[1]として利用される切り替え回路2100を特に切り替え回路2100[1]と呼ぶ。切り替え回路2100[1]は直列の共振回路RRB[1]とNFC通信回路220との間に配置される。
図43では、切り替え回路2100が
図41の切り替え回路210B[2]として利用されているときの回路例が示されており、切り替え回路210B[2]として利用される切り替え回路2100を特に切り替え回路2100[2]と呼ぶ。切り替え回路2100[2]は直列の共振回路RRB[2]とNFC受電回路230との間に配置される。切り替え回路2100[1]と切り替え回路2100[2]は互いに同じ回路構成を有する。
【0177】
切り替え回路2100(従って回路2100[1]及び2100[2]の夫々)は、符号2111〜2118によって参照される部品とライン2131〜2135を含んで形成される。トランジスタ2115はNチャンネル型のMOSFETとして形成され、トランジスタ2117はPチャンネル型のMOSFETとして形成される。
【0178】
図42及び
図43において、受電側コイルR
Lの一端はライン2132に直接接続される一方で受電側コイルR
Lの他端は受電側コンデンサR
Cを介してライン2131に接続される。ライン2131は、ダイオード2111のアノード及びダイオード2113のカソードに共通接続され、ライン2132は、ダイオード2112のアノード及びダイオード2114のカソードに共通接続される。ダイオード2111及び2112のカソードはライン2133に共通接続され、ダイオード2113及び2114のアノードはライン2134に共通接続される。
【0179】
トランジスタ2115において、ドレインは、トランジスタ2117のゲートに接続されると共に抵抗2118を介してライン2133に接続され、ソースはライン2134に接続され、ゲートは抵抗2116を介してライン2134に接続される。トランジスタ2117のソース、ドレインは、夫々、ライン2133、2135に接続される。
【0180】
切り替え回路2100[1]におけるライン2134及び2135はNFC通信回路220に接続され、切り替え回路2100[1]のライン2134及び2135間の電圧がNFC通信回路220に与えられる。切り替え回路2100[2]におけるライン2134及び2135はNFC受電回路230に接続され、切り替え回路2100[2]のライン2134及び2135間の電圧がNFC受電回路230に与えられる。
【0181】
図42に示す如く、切り替え回路2100[1]におけるライン2134及び2135間には(回路2100[1]と回路220を繋ぐライン2134及び2135間には)平滑コンデンサCCは設けらない。一方、
図43に示す如く、切り替え回路2100[2]におけるライン2134及び2135間には(回路2100[2]と回路230を繋ぐライン2134及び2135間には)平滑コンデンサCCが設けられる。具体的には、平滑コンデンサCCの正極、負極が、夫々、回路2100[2]と回路230を繋ぐライン2135、2134に接続される。尚、比較的小さな静電容量を持つコンデンサ(少なくとも平滑コンデンサCCの静電容量よりは小さな静電容量を持つコンデンサ)が、通信回路220に繋がるライン2134及び2135間に設けられうる。
【0182】
制御回路250Bは、回路2100[1]及び2100[2]のトランジスタ2115のゲート電圧を個別に制御することで、回路2100[1]及び2100[2]のトランジスタ2115を個別にオン又はオフさせる。回路2100[1]又は2100[2]において、トランジスタ2115がオンのとき、トランジスタ2117のゲート電位の低下を通じてトランジスタ2117もオンとなり、トランジスタ2115がオフのときトランジスタ2117もオフとなる。
【0183】
テスト期間において、制御回路250Bは、回路2100[1]及び2100[2]のトランジスタ2115を共にオフとする。
図42及び
図43の夫々の回路において、トランジスタ2115がオフとされる状態は、
図28のスイッチ246がオフとされる状態と等価である。即ち、トランジスタ2115がオフのとき、コイルR
L及びコンデンサR
Cの直列回路が形成されなくなって、コイルR
LとコイルR
Lの両端間の寄生容量(
図28のFCbに相当するが、
図42及び
図43では図示していない)とで受電側共振回路が形成され、結果、受電側共振回路の共振周波数f
Oは基準周波数から周波数f
Mに変化せしめられる。従って、切り替え回路2100[1]及び2100[2]の夫々は共振周波数変更動作を実現する共振周波数変更回路(240)を内包している、といえる。
【0184】
通信期間において、制御回路250Bは、回路2100[1]のトランジスタ2115をオンとし且つ回路2100[2]のトランジスタ2115をオフとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき、
図42の共振回路RRB[1]内の受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく信号が、回路2100[1]における整流回路(2111〜2114)及びトランジスタ2117を通じてライン2134及び2135間に伝搬される。このため、NFC通信回路220は、通信期間において、回路2100[1]のライン2134及び2135間の電圧信号の振幅変化から情報信号を抽出できる。通信期間において回路2100[2]のトランジスタ2115がオフとされることで、実質的に、受電用の共振回路RRB[2]は送電側コイルT
Lの負荷として機能しなくなる。
【0185】
電力伝送期間において、制御回路250Bは、回路2100[1]のトランジスタ2115をオフとし且つ回路2100[2]のトランジスタ2115をオンとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき、
図43の共振回路RRB[2]内の受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力が回路2100[2]における整流回路(2111〜2114)及びトランジスタ2117を通じてライン2134及び2135間に伝搬される。結果、回路2100[2]のライン2134及び2135間に接続された平滑コンデンサCCにて電荷が蓄積され、その蓄積電荷による電圧がNFC受電回路230に供給される。
【0186】
―――切り替え回路210Bの第2例―――
図44及び
図45を参照し、切り替え回路210Bの第2例を説明する。
図44及び
図45に示す切り替え回路2200を切り替え回路210Bの第2例として利用することができる。
【0187】
図44及び
図45では、並列の受電側共振回路に切り替え回路2200が接続されている。
図44では、切り替え回路2200が
図41の切り替え回路210B[1]として利用されているときの回路例が示されており、切り替え回路210B[1]として利用される切り替え回路2200を特に切り替え回路2200[1]と呼ぶ。切り替え回路2200[1]は並列の共振回路RRB[1]とNFC通信回路220との間に配置される。
図45では、切り替え回路2200が
図41の切り替え回路210B[2]として利用されているときの回路例が示されており、切り替え回路210B[2]として利用される切り替え回路2200を特に切り替え回路2200[2]と呼ぶ。切り替え回路2200[2]は並列の共振回路RRB[2]とNFC受電回路230との間に配置される。切り替え回路2200[1]と切り替え回路2200[2]は互いに同じ回路構成を有する。
【0188】
切り替え回路2200(従って回路2200[1]及び2200[2]の夫々)は、符号2211〜2216によって参照される部品とライン2231〜2234を含んで形成される。トランジスタ2215はNチャンネル型のMOSFETとして形成される。
【0189】
図44及び
図45において、受電側コイルR
Lの一端及び受電側コンデンサR
Cの一端はライン2231に共通接続され、受電側コイルR
Lの他端及び受電側コンデンサR
Cの他端はライン2232に共通接続される。ライン2231は、ダイオード2211のアノード及びダイオード2213のカソードに共通接続され、ライン2232は、ダイオード2212のアノード及びダイオード2214のカソードに共通接続される。ダイオード2211及び2212のカソードはライン2233に共通接続され、ダイオード2213及び2214のアノードはライン2234に共通接続される。
【0190】
トランジスタ2215において、ドレインはライン2233に接続され、ソースはライン2234に接続され、ゲートは抵抗2216を介してライン2234に接続される。
【0191】
切り替え回路2200[1]におけるライン2233及び2234はNFC通信回路220に接続され、切り替え回路2200[1]のライン2233及び2234間の電圧がNFC通信回路220に与えられる。切り替え回路2200[2]におけるライン2233及び2234はNFC受電回路230に接続され、切り替え回路2200[2]のライン2233及び2234間の電圧がNFC受電回路230に与えられる。
【0192】
図44に示す如く、切り替え回路2200[1]におけるライン2233及び2234間には(回路2200[1]と回路220を繋ぐライン2233及び2234間には)平滑コンデンサCCは設けらない。一方、
図45に示す如く、切り替え回路2200[2]におけるライン2233及び2234間には(回路2200[2]と回路230を繋ぐライン2233及び2234間には)平滑コンデンサCCが設けられる。具体的には、平滑コンデンサCCの正極、負極が、夫々、回路2200[2]と回路230を繋ぐライン2233、2234に接続される。尚、比較的小さな静電容量を持つコンデンサ(少なくとも平滑コンデンサCCの静電容量よりは小さな静電容量を持つコンデンサ)が、通信回路220に繋がるライン2233及び2234間に設けられうる。
【0193】
制御回路250Bは、回路2200[1]及び2200[2]のトランジスタ2215のゲート電圧を個別に制御することで、回路2200[1]及び2200[2]のトランジスタ2215を個別にオン又はオフさせる。
【0194】
テスト期間において、制御回路250Bは、回路2200[1]及び2200[2]のトランジスタ2215を共にオンとする。回路2200[1]及び2200[2]の夫々において、トランジスタ2215がオンのとき、整流回路(2211〜2214)を介して受電側コイルR
Lが短絡される。即ち、コイル短絡動作が実現される。従って、切り替え回路2200[1]及び2200[2]の夫々はコイル短絡動作を実現するコイル短絡回路(260)を内包している、といえる。
【0195】
通信期間において、制御回路250Bは、回路2200[1]のトランジスタ2215をオフとし且つ回路2200[2]のトランジスタ2215をオンとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき、
図44の共振回路RRB[1]内の受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく信号が、回路2200[1]における整流回路(2211〜2214)を通じてライン2233及び2234間に伝搬される。このため、NFC通信回路220は、通信期間において、回路2200[1]のライン2233及び2234間の電圧信号の振幅変化から情報信号を抽出できる。通信期間において回路2200[2]のトランジスタ2215がオンとされることで、実質的に、受電用の共振回路RRB[2]は送電側コイルT
Lの負荷として機能しなくなる。
【0196】
電力伝送期間において、制御回路250Bは、回路2200[1]のトランジスタ2215をオンとし且つ回路2200[2]のトランジスタ2215をオフとする。このとき、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき、
図45の共振回路RRB[2]内の受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力が回路2200[2]における整流回路(2211〜2214)を通じてライン2233及び2234間に伝搬される。結果、回路2200[2]のライン2233及び2234間に接続された平滑コンデンサCCにて電荷が蓄積され、その蓄積電荷による電圧がNFC受電回路230に供給される。
【0197】
尚、
図41の切り替え回路210B[1]及び210B[2]として、
図42の切り替え回路2100[1]及び
図45の切り替え回路2200[2]を用いるようにしても良いし、或いは、
図44の切り替え回路2200[1]及び
図43の切り替え回路2100[2]を用いるようにしても良い。
【0198】
<<第7実施形態>>
本発明の第7実施形態を説明する。
図46は、第7実施形態に係る非接触給電システムの概略構成図であり、
図46の非接触給電システムは、給電機器1及び電子機器2として、夫々、給電機器1B及び電子機器2Bを備える。電子機器2Bの構成及び動作は、第6実施形態(
図41)にて示した通りである。
【0199】
給電機器1Bは、2つの切り替え回路110Bと、NFC通信回路120と、NFC送電回路130と、負荷検出回路140と、メモリ150と、制御回路160Bと、2つの送電側共振回路TTBを備える。2つのブロック110B並びにブロック120、130、140、150及び160Bを集積化して形成される半導体集積回路を送電側IC100として給電機器1Bに設けておくことができる。
【0200】
給電機器1BにおけるNFC通信回路120、NFC送電回路130、負荷検出回路140及びメモリ150は、上述の給電機器1のそれらと同じものであって良い。2つの送電側共振回路TTBの夫々は、並列の送電側共振回路TT又は直列の送電側共振回路TT’である(
図2及び
図24(a)参照)。
【0201】
2つの送電側共振回路TTBの内、一方を記号TTB[1]にて参照し、他方を記号TTB[2]にて参照する。2つの切り替え回路110Bは、共振回路TTB[1]に接続される切り替え回路110B[1]と、共振回路TTB[2]に接続される切り替え回路110B[2]とから成る。通信用の共振回路として設けられた共振回路TTB[1]は切り替え回路110B[1]を介してNFC通信回路120に接続され、送電用の共振回路として設けられた共振回路TTB[2]は切り替え回路110B[2]を介してNFC送電回路130に接続される。このように、給電機器1Bでは、通信用と送電用の共振回路が別個に設けられているので、
図4の切り替え回路110のような機能は給電機器1Bに設けられていない。制御回路160Bは、上述の制御回路160の機能を内包する。制御回路160Bは、回路110B[1]及び110B[2]を制御できると共に、制御回路160と同様に回路120及び130を制御できる。
【0202】
切り替え回路110B[1]及び110B[2]は互いに同じ機能を持つ。切り替え回路110B[i]は、共振回路TTB[i]の共振周波数を基準周波数である13.56MHzから所定周波数(上述の周波数f
Mと同じであっても良く、例えば数100kHz〜1MHz)に変更するための共振周波数変更動作、又は、共振回路TTB[i]内の送電側コイルT
Lを短絡するコイル短絡動作を実行可能である(ここにおけるiは1又は2)。切り替え回路110B[i]による共振周波数変更動作又はコイル短絡動作の実現方法は、上述の任意の実施形態にて述べた受電側共振回路に対する共振周波数変更動作又はコイル短絡動作の実現方法と同じであって良い。制御回路160Bは、切り替え回路110B[1]における共振周波数変更動作又はコイル短絡動作の実行/非実行、並びに、切り替え回路110B[2]における共振周波数変更動作又はコイル短絡動作の実行/非実行を個別に制御できる。以下、切り替え回路110B[i]において共振周波数変更動作又はコイル短絡動作が実行されることを切り替え回路110B[i]の作動と表現し、切り替え回路110B[i]において共振周波数変更動作もコイル短絡動作も実行されないことを切り替え回路110B[i]の機能の停止と表現する。
【0203】
通信期間において、制御回路160Bは、通信回路120及び送電回路130の内、通信回路120のみを動作させる。通信期間では、通信回路120及び共振回路TTB[1]並びに共振回路RRB[1]及び通信回路220を用いて機器1B及び2B間のNFC通信が実行され、このときにおける通信回路120及び共振回路TTB[1]の動作は、NFC通信における上述の通信回路120及び共振回路TTの動作と同様である。故に、通信期間において制御回路160Bは切り替え回路110B[1]の機能を停止させる。但し、通信期間では、共振回路TTB[1]に対し物理的に非常に近い位置に存在する共振回路TTB[2]が共振回路TTB[1]の回路動作に大きな影響を与えることを防止する必要ある。従って、通信期間において、制御回路160Bは切り替え回路110B[2]を作動させる。
【0204】
電力伝送期間において、制御回路160Bは、通信回路120及び送電回路130の内、送電回路130のみを動作させる。電力伝送期間では、送電回路130及び共振回路TTB[2]並びに共振回路RRB[2]及び受電回路230を用いて機器1B及び2B間の電力伝送が実行され、このときにおける送電回路130及び共振回路TTB[2]の動作は、電力伝送における上述の送電回路130及び共振回路TTの動作と同様である。故に、電力伝送期間において制御回路160Bは切り替え回路110B[2]の機能を停止させる。但し、電力伝送期間では、共振回路TTB[2]に対し物理的に非常に近い位置に存在する共振回路TTB[1]が共振回路TTB[2]の回路動作に大きな影響を与えることを防止する必要がある。また、共振回路TTB[2]の発生強磁界による共振回路TTB[1]に繋がる回路の破壊等を防止する必要がある。従って、電力伝送期間において、制御回路160Bは切り替え回路110B[1]を作動させる。
【0205】
テスト期間において、制御回路160Bは、通信回路120及び送電回路130の内、送電回路130のみを動作させる。テスト期間では、送電回路130及び共振回路TTB[2]によりテスト磁界が発生され、このときにおける送電回路130及び共振回路TTB[2]の動作は、テスト期間における上述の送電回路130及び共振回路TTの動作(換言すれば、異物検出処理における上述の送電回路130及び共振回路TTの動作)と同様である。故に、テスト期間において制御回路160Bは切り替え回路110B[2]の機能を停止させる。但し、テスト期間では、共振回路TTB[2]に対し物理的に非常に近い位置に存在する共振回路TTB[1]が異物検出処理の結果に影響を与えることを防止する必要ある。従って、テスト期間において、制御回路160Bは切り替え回路110B[1]を作動させる。
【0206】
<<第8実施形態>>
本発明の第8実施形態を説明する。
図47は、第8実施形態に係る非接触給電システムの概略構成図であり、
図47の非接触給電システムは、給電機器1及び電子機器2として、夫々、給電機器1B及び電子機器2Aを備える。給電機器1Bの構成及び動作は、第7実施形態(
図46)にて示した通りである。電子機器2Aの構成及び動作は、第5実施形態(
図38)にて示した通りである。
【0207】
<<第9実施形態>>
本発明の第9実施形態を説明する。上述の各実施形態において、電子機器(2、2A、2B)におけるNFC通信回路220を既存のNFC通信ICを用いて実現することもでき、この場合においても、受電側共振回路に対して共振周波数変更動作又はコイル短絡動作が実現できるよう、電子機器(2、2A、2B)を形成しておくと良い。
【0208】
図48を参照し、具体例を説明する。
図48は、既存(即ち市販)のNFC通信IC2500に対して切り替え回路2200[1]を適用したときの回路例を示している。
図48の切り替え回路2200[1]及びNFC通信IC2500を用いて、
図41等に示される切り替え回路210B[1]及びNFC通信回路220を形成しても良い。
【0209】
図48では、並列の受電側共振回路に対して切り替え回路2200[1]が接続されており、それらの接続関係及び切り替え回路2200[1]内の各部品及び各ライン間の接続関係は上述した通りである。NFC通信IC2500はNFC通信回路220を内包すると共に、ダイオード2511〜2514から成る整流回路を備える。具体的には、ダイオード2511のアノード及びダイオード2513のカソードがライン2231に共通接続される一方で、ダイオード2512のアノード及びダイオード2514のカソードがライン2232に共通接続される。NFC通信IC2500におけるNFC通信回路220は、ダイオード2511及び2512のカソードが共通接続されるラインと、ダイオード2513及び2514のアノードが共通接続されるラインとに接続され、通信期間において、それらのライン間の電圧信号の振幅変化から情報信号を抽出できる。
図48のトランジスタ2215は、通信期間ではオフとされているが、電力伝送期間及びテスト期間においてオンとされてコイル短絡動作が実現される。
【0210】
<<第10実施形態>>
本発明の第10実施形態を説明する。第10実施形態に係る非接触給電システムは、給電機器1として上述の給電機器1、1A又は1Bを備えていて良く、電子機器2として上述の電子機器2、2A又は2Bを備えていて良い。但し、以下では、第10実施形態に関わる技術説明の具体化のため、第1〜第4実施形態で述べた給電機器1及び電子機器2にて第10実施形態の非接触給電システムが形成されると考える。
【0211】
通信期間及びテスト期間中における給電機器1及び電子機器2の動作は、上述してきた通りである。本実施形態では、電力伝送期間中における給電機器1及び電子機器2の特徴的な動作を説明し、その動作に関連する構成に注目した説明を設ける。
【0212】
図49は、給電機器1の構成要素の内、本実施形態の特徴的な動作に関与する部分のブロック図である。
図49のNFC送電回路130は、
図7に示したものと同じものである。
図49では、給電機器1に設けられる送電側共振回路として並列の共振回路TT(
図2参照)が示されているが、給電機器1に設けられる送電側共振回路は直列の共振回路TT’であっても良い。第10実施形態に係る給電機器1は、
図2及び
図4に示す送電側IC100と、送電側共振回路(TT又はTT’)を有しているものとする。
【0213】
図50に示す回路4100を負荷検出回路140に含めておくことができる。回路4100は、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅を検出可能な回路であって、部品141及び4111〜4115を備える。
図50のセンス抵抗141は、
図7のセンス抵抗141と同じものであり、送電側コイルT
Lに流れる電流がセンス抵抗141にも流れる。ゼロボルトの基準電位から見た、センス抵抗141の発生電圧がダイオード4111のアノードに加わり、ダイオード4111のカソードにおける電圧は抵抗4112及びコンデンサ4113の並列回路によるローパスフィルタにて平滑されつつコンパレータ4114の非反転入力端子に加わる。つまり、コンパレータ4114の非反転入力端子には、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅に比例した大きさを持つ直流電圧V
Aが加わる。コンパレータ4114の反転入力端子には、直流電圧源4115が発生する直流電圧V
Bが加わっている。コンパレータ4114の出力信号4120は、V
A>V
B”のときハイレベルの電圧信号となり、“V
A<V
B”のときローレベルの電圧信号となる。尚、給電機器1の負荷検出回路140は、
図7で示した増幅器142、包絡線検波器143及びA/D変換器144を有してしても良い。
図50のコンパレータ4114の非反転入力端子に加わる電圧信号は、
図7の包絡線検波器143の出力信号に相当する。
【0214】
図51は、電子機器2の構成要素の内、本実施形態の特徴的な動作に関与する部分のブロック図である。第10実施形態に係る電子機器2は、回路5100、5200、5300、5400及び5500を備える。受電側共振回路5100は、並列の共振回路RR又は直列の共振回路RR’である。
【0215】
第10実施形態における電子機器2は、
図2及び
図5に示す受電側IC200又は
図30に示す受電側IC200’を有していると想定する。この想定の下では(
図5、
図30及び
図51参照)、整流/平滑回路5200は、切り替え回路210とNFC受電回路230の間に挿入されていると考えても良いし、NFC受電回路230に内包されていると考えても良い。負荷回路5300は、NFC受電回路230に内包されていると考えても良いし、NFC受電回路230の後段に配置される(例えば
図2の機能回路22に相当する又は機能回路22を含む)と考えても良い。第10実施形態において異常検出回路5400及び異常応答回路5500が受電側IC200又は200’に追加される。
【0216】
整流/平滑回路5200は、電力伝送において受電側共振回路5100の受電側コイルR
Lにて受電した交流電力を整流し且つ平滑化することで直流電力を生成する。負荷回路5300は、整流/平滑回路5200にて生成された直流電力を消費して、任意の電気的動作を行う。
【0217】
図52に、回路5100、5200及び5300の具体的構成例を説明する。
図52では、受電側共振回路5100が並列の共振回路である場合の例が示されているが、既に述べたように受電側共振回路5100は直列の共振回路でも良い。整流/平滑回路5200は、ダイオード5211〜5214及び平滑コンデンサ5215を備える。負荷回路5300は、レギュレータ5310及び機能回路5320を備える。機能回路5320は、
図2に示す機能回路22に相当するものであっても良い。
【0218】
図52において、受電側共振回路5100における受電側コイルR
Lの一端及び受電側コンデンサR
Cの一端は、ラインLN11を介してダイオード5211のアノード及びダイオード5213のカソードに共通接続され、受電側共振回路5100における受電側コイルR
Lの他端及び受電側コンデンサR
Cの他端は、ラインLN12を介してダイオード5212のアノード及びダイオード5214のカソードに共通接続される。ダイオード5211及び5212のカソードは平滑コンデンサ5215の正極に共通接続され、ダイオード5213及び5214のアノードは平滑コンデンサ5215の負極に共通接続される。このため、電力伝送において、送電側コイルT
Lが発生した交番磁界に基づき受電側コイルR
Lに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力が整流/平滑回路5200における整流回路(5211〜5214)により整流されて、電荷として平滑コンデンサ5215に蓄積される。平滑コンデンサ5215の蓄積電荷による電圧、即ち平滑コンデンサ5215の両極間電圧(理想的には直流電圧)が、一対のラインLN21及びLN22を介し、整流/平滑回路5200の出力電圧としてレギュレータ5310に供給される。
【0219】
レギュレータ5310は、整流/平滑回路5200の出力電圧に対して電力変換を行うことで、整流/平滑回路5200の出力電圧に基づく所定電圧値を有する直流電圧を生成し、生成した直流電圧を一対の電力ラインLN31及びLN32を介して機能回路5320に出力する。機能回路5320は、レギュレータ5310の出力電圧を用いて駆動する任意の負荷である。例えば、電子機器2がスマートホンであれば、機能回路5320は、相手側機器との間の通話を実現するための通話処理部、及び、ネットワーク網を介して他機器と情報を送受信するための通信処理部などを含む。或いは例えば、電子機器2がデジタルカメラであれば、機能回路5320は、撮像素子を駆動する駆動回路、撮像素子の出力信号から画像データを生成する画像処理回路などを含む。
【0220】
異常検出回路5400は、負荷回路5300の異常の有無を検出し(即ち、負荷回路5300に異常が生じているか否かを検出し)、その検出結果を示す信号OUT
5400を出力する。出力信号OUT
5400は異常応答回路5500に与えられる。ここでは、負荷回路5300に異常が有ると検出されたとき、ハイレベルの電圧信号OUT
5400が第1論理値を有する信号OUT
5400として出力され、負荷回路5300に異常は無いと検出されたとき、ローレベルの電圧信号OUT
5400が第2論理値を有する信号OUT
5400として出力されるものとする。尚、以下の説明における異常とは、特に記述無き限り、負荷回路5300の異常を指す。
【0221】
異常検出回路5400は、負荷回路5300の状態を示す物理量の大きさが所定の通常範囲を逸脱しているとき、負荷回路5300に異常が有ると判断して、第1論理値の信号OUT
5400を出力し、そうでないとき、負荷回路5300に異常は無いと判断して、第2論理値の信号OUT
5400を出力する。負荷回路5300の状態を示す物理量は、例えば、電圧、電流又は温度である。異常の有無判断に利用される電圧、電流、温度を、夫々、対象温度、対象電流、対象温度と呼ぶ。
【0222】
対象電圧は、負荷回路5300における所定の電子部品又はノードに加わる電圧であって良く、負荷回路5300の入力電圧及び出力電圧を含む。即ち例えば、対象電圧は、電子機器2内の回路であって且つ負荷回路5300以外の回路(例えば回路5200)から負荷回路5300へ入力される電圧であっても良いし、電子機器2内の回路であって且つ負荷回路5300以外の回路に対して負荷回路5300が出力する電圧であっても良い。或いは例えば、対象電圧は、負荷回路5300内で生成される電圧(例えばレギュレータ5310の出力電圧)であっても良い。
【0223】
対象電流は、負荷回路5300における所定の電子部品又はノードに流れる電流であって良く、負荷回路5300の入力電流及び出力電流を含む。即ち例えば、対象電流は、電子機器2内の回路であって且つ負荷回路5300以外の回路(例えば回路5200)から負荷回路5300へ入力される電流であっても良いし、電子機器2内の回路であって且つ負荷回路5300以外の回路に対して負荷回路5300が出力する電流であっても良い。或いは例えば、対象電流は、レギュレータ5310から機能回路5320への供給電流(即ち機能回路5320の消費電流)であっても良い。
【0224】
対象温度は、負荷回路5300における所定部分の温度であって良い。例えば、対象温度は、レギュレータ5310を形成するトランジスタの温度(より具体的には当該トランジスタのパッケージ又はヒートシンクの温度)であっても良い。或いは例えば、対象温度は、機能回路5320に含まれる集積回路の温度(より具体的には当該集積回路のパッケージ又はヒートシンクの温度)であっても良い。
【0225】
異常検出回路5400は、電圧異常検出回路5400V、電流異常検出回路5400I及び温度異常検出回路5400Tの内、少なくとも1つの検出回路を備える(それらの回路例については後に述べる)。
【0226】
電圧異常検出回路5400Vは、対象電圧が所定の通常電圧範囲を逸脱するとき、例えば対象電圧が通常電圧範囲の上限である所定電圧V
THを超えるとき、負荷回路5300に電圧異常が有ると判断し、そうでないとき電圧異常は無いと判断する。
電流異常検出回路5400Iは、対象電流が所定の通常電流範囲を逸脱するとき、例えば対象電流が通常電流範囲の上限である所定電流I
THを超えるとき、負荷回路5300に電流異常が有ると判断し、そうでないとき電流異常は無いと判断する。
温度異常検出回路5400Tは、対象温度が所定の通常温度範囲を逸脱するとき、例えば対象温度が通常温度範囲の上限である所定温度T
THを超えるとき、負荷回路5300に温度異常が有ると判断し、そうでないとき温度異常は無いと判断する。
【0227】
異常検出回路5400は、3つの検出回路5400V、5400I及び5400Tの内、自身が備える検出回路の何れかにて、負荷回路5300に異常(電圧異常、電流異常又は温度異常)があると判断されている場合には、第1論理値の信号OUT
5400を出力し、自身が備える検出回路の何れにおいても負荷回路5300に異常(電圧異常、電流異常又は温度異常)が無いと判断されている場合には、第2論理値の信号OUT
5400を出力する。例えば、異常検出回路5400が検出回路5400V、5400I及び5400Tを備えている場合、電圧異常、電流異常及び温度異常の内、何れか1以上の異常が負荷回路5300に有ると判断されている場合には、第1論理値の信号OUT
5400を出力し、電圧異常、電流異常及び温度異常の何れもが負荷回路5300に無いと判断されている場合に限って、第2論理値の信号OUT
5400を出力する。
【0228】
図53に、電圧異常検出回路5400Vの回路例を示す。
図53の電圧異常検出回路5400Vはコンパレータ5411及び直流電圧源5412を備え、コンパレータ5411の非反転入力端子、反転入力端子に、夫々、対象電圧、直流電圧源5412の出力電圧V
THが印加される。コンパレータ5411は、対象電圧が電圧V
TH以上ならばハイレベルの電圧信号OUT
5400Vを出力し、そうでないならローレベルの電圧信号OUT
5400Vを出力する。
【0229】
図54に、電流異常検出回路5400Iの回路例を示す。
図54の電流異常検出回路5400Iは、対象電流が流れる抵抗5421と、抵抗5421の電圧降下を増幅して出力する増幅器5422と、コンパレータ5423及び直流電圧源5424を備え、コンパレータ5423の非反転入力端子、反転入力端子に、夫々、増幅器5422の出力電圧、直流電圧源5424の出力電圧V
THが印加される。対象電流(対象電流の大きさ)が所定電流I
TH以上のときに増幅器5422の出力電圧が電圧V
TH以上となってコンパレータ5423からハイレベルの電圧信号OUT
5400Iが出力されるように、且つ、対象電流(対象電流の大きさ)が所定電流I
TH未満のときに増幅器5422の出力電圧が電圧V
TH未満となってコンパレータ5423からローレベルの電圧信号OUT
5400Iが出力されるように、抵抗5421の値及び電圧V
THの値などが決定されている。
【0230】
図55に、温度異常検出回路5400Tの回路例を示す。
図55の温度異常検出回路5400Tは、対象温度を持つ部品と熱結合したダイオード5431と、ダイオード5431に定電流を流す定電流回路5432と、コンパレータ5433及び直流電圧源5434を備え、コンパレータ5433の非反転入力端子、反転入力端子に、夫々、直流電圧源5434の出力電圧V
TH、ダイオード5431の順方向電圧が印加される。ダイオード5431の順方向電圧の温度依存性により、対象温度が高くなるほどダイオード5431の順方向電圧は小さくなる。対象温度が所定温度T
TH以上のときにダイオード5431の順方向電圧が電圧V
TH未満となってコンパレータ5433からハイレベルの電圧信号OUT
5400Tが出力されるように、且つ、対象温度が所定温度T
TH未満のときにダイオード5431の順方向電圧が電圧V
TH以上となってコンパレータ5433からローレベルの電圧信号OUT
5400Tが出力されるように、定電流の値及び電圧V
THの値などが決定されている。
【0231】
信号OUT
5400V、OUT
5400I又はOUT
5400Tが異常検出回路5400の出力信号OUT
5400であって良い。但し、ラッチ回路を利用して、信号OUT
5400V、OUT
5400I又はOUT
5400Tがローレベルからハイレベルに切り替わったとき、一定時間以上、出力信号OUT
5400がハイレベルに維持されるようにしておいても良い。信号OUT
5400V、OUT
5400I及びOUT
5400Tの内、2以上の信号の論理和を異常検出回路5400の出力信号OUT
5400にしても良い。但し、ラッチ回路を利用して、上記論理和の信号がローレベルからハイレベルに切り替わったとき、一定時間以上、出力信号OUT
5400がハイレベルに維持されるようにしておいても良い。
【0232】
異常応答回路5500には、異常検出回路5400の出力信号OUT
5400が入力される。異常検出回路5400が負荷回路5300に異常が有ると検出したとき、即ち、第1論理値の信号OUT
5400(ここではハイレベルの信号OUT
5400)が異常検出回路5400から異常応答回路5500に入力されたとき、異常応答回路5500は、異常応答動作を行う。第2論理値の信号OUT
5400(ここではローレベルの信号OUT
5400)が異常検出回路5400から異常応答回路5500に入力されているときには、異常応答動作は行われない。
【0233】
電力伝送において、送電側コイルT
Lからの電力を受電する電子機器2は、送電側コイルT
Lにとっての負荷となる。異常応答動作は、電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさを変化させる動作である。ここにおける変化は、異常検出回路5400による異常の検出の前後間において、当該負荷の大きさを変化させることを意味する。
【0234】
電力伝送期間において送電動作が行われているとき、給電機器1の制御回路160は、給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさの変化の有無を監視し、その監視結果を用いて送電制御を行う(送電の継続又は停止を制御する)。当該監視は、負荷検出回路140による、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅の検出結果に基づき実現される。
【0235】
―――具体例EX10_1―――
第10実施形態に属する具体例EX10_1を説明する。具体例EX10_1では、異常応答回路5500の一例として
図56の回路5500aを用いる。回路5500aは、スイッチ5511と抵抗5512の直列回路から成り、当該直列回路はラインLN21及びLN22間に配置される。スイッチ5511は、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子から成り、信号OUT
5400に応じてオン又はオフする。第1論理値(ハイレベル)の信号OUT
5400がスイッチ5511に入力されたとき、スイッチ5511はオンし、ラインLN21及びLN22間は抵抗5512を介して接続されることになる。第2論理値(ローレベル)の信号OUT
5400がスイッチ5511に入力されたときスイッチ5511はオフする。
【0236】
図57の回路5500Xは、回路5500aの具体的構成例を示す図である。回路5500Xは、Nチャンネル型のMOSFETとして形成されたトランジスタ5521と、抵抗5522及び5523を備える。トランジスタ5521及び抵抗5522を
図56のスイッチ5511及び抵抗5512として機能させることができ、この場合、トランジスタ5521のドレインを抵抗5522を介してラインLN21に接続し、トランジスタ5521のソースをラインLN22に接続し、トランジスタ5521のゲートに信号OUT
5400を入力すれば良い。抵抗5523にはトランジスタ5521のゲート電圧が加わる。
【0237】
電力伝送期間において、受電側共振回路5100の受電電力は一対の電力ライン(LN21、LN22)を介して負荷回路5300に供給されることになる。電力伝送期間において、負荷回路5300の異常が検出されたとき、異常の検出前と比べ、回路5500aは、受電側共振回路5100から見た一対の電力ライン(LN21、LN22)間のインピーダンスを減少させることになる。電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさは、一対の電力ライン(LN21、LN22)間のインピーダンスが減少すれば増大する。
【0238】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさが増大すれば、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅が減少する(
図8参照)。従って、異常検出時に当該負荷の大きさの増大をもたらす回路5500a(
図56)を異常応答回路5500として用いる場合、制御回路160は、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A<V
B”の成立を示す信号4120が出力されたときに異常の発生を認知して(以下、当該認知を送電側異常発生認知という)送電動作を停止し、一方、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A>V
B”の成立を示す信号4120が出力されているならば送電動作を継続すれば良い。具体例EX10_1では、送電動作中において、
図56のスイッチ5511がオンとなったときにのみ“V
A<V
B”が成立するように、
図50の電圧V
Bの値や
図56の抵抗5512の値などが予め定められる。
【0239】
送電側異常発生認知に基づき送電動作を停止した後は、所定の解除条件が成立しない限り、送電動作の停止を継続するようにしても良い(後述の具体例EX10_2、EX10_3及びEX10_4についても同様)。解除条件は、例えば、給電機器1がユーザから所定の解除操作の入力を受けることで成立する。
【0240】
―――具体例EX10_2―――
第10実施形態に属する具体例EX10_2を説明する。具体例EX10_2では、異常応答回路5500の一例として
図58の回路5500bを用いる。回路5500bは、ラインLN22上に直列に挿入されたスイッチ5541から成る。ラインLN22の内、負荷回路5300とスイッチ5541との間のラインをラインLN22aと呼び、整流/平滑回路5200とスイッチ5541との間のラインをラインLN22bと呼ぶ。スイッチ5541は、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子から成り、信号OUT
5400に応じてオン又はオフする。第1論理値(ハイレベル)の信号OUT
5400がスイッチ5541に入力されたとき、スイッチ5541はオフし、整流/平滑回路5200及び負荷回路5300間が遮断される。第2論理値(ローレベル)の信号OUT
5400がスイッチ5541に入力されたとき、スイッチ5541はオンし、一対の電力ライン(LN21、LN22)を介して整流/平滑回路5200及び負荷回路5300間が接続される。
【0241】
図59の回路5500Yは、回路5500bの具体的構成例を示す図である。回路5500Yは、Nチャンネル型のMOSFETとして形成されたトランジスタ5551と、インバータ5552と抵抗5553を備える。トランジスタ5551を
図58のスイッチ5541として機能させることができ、この場合、トランジスタ5551のドレインをラインLN22aに接続し、トランジスタ5551のソースをラインLN22bに接続し、トランジスタ5551のゲートに信号OUT
5400の反転信号(信号OUT
5400の論理を反転させた信号)を入力すれば良い。インバータ5552は信号OUT
5400の反転信号をトランジスタ5551のゲートに供給する。抵抗5553にはトランジスタ5551のゲート電圧が加わる。
【0242】
電力伝送期間において、受電側共振回路5100の受電電力は一対の電力ライン(LN21、LN22)を介して負荷回路5300に供給されることになる。電力伝送期間において、負荷回路5300の異常が検出されたとき、異常の検出前と比べ、回路5500bは、受電側共振回路5100から見た一対の電力ライン(LN21、LN22)間のインピーダンスを増加させることになる。電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさは、一対の電力ライン(LN21、LN22)間のインピーダンスが増大すれば減少する。
【0243】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさが減少すれば、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅が増大する(
図8参照)。従って、異常検出時に当該負荷の大きさの減少をもたらす回路5500b(
図58)を異常応答回路5500として用いる場合、制御回路160は、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A>V
B”の成立を示す信号4120が出力されたときに異常の発生を認知して(即ち送電側異常発生認知を成して)送電動作を停止し、一方、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A<V
B”の成立を示す信号4120が出力されているならば送電動作を継続すれば良い。具体例EX10_2では、送電動作中において、
図58のスイッチ5541がオフとなったときにのみ“V
A>V
B”が成立するように、
図50の電圧V
Bの値などが予め定められる。
【0244】
―――具体例EX10_3―――
第10実施形態に属する具体例EX10_3を説明する。具体例EX10_3では、電子機器2が、上述の共振周波数変更回路240を備えていることを前提とし、共振周波数変更回路240(
図5等参照)が異常応答回路5500として利用される。尚、共振周波数変更回路240が異常応答回路5500によって制御されると考えても良い。
【0245】
電力伝送期間において、異常検出回路5400から第2論理値の信号OUT
5400が出力されているとき、異常応答回路5500としての共振周波数変更回路240は、共振周波数変更動作を実行せず、結果、受電側共振回路5100の共振周波数f
Oは所定の基準周波数に設定されて所望の受電動作が行われる。一方、電力伝送期間において、異常検出回路5400から第1論理値の信号OUT
5400が出力されているとき、異常応答回路5500としての共振周波数変更回路240は、受電側共振回路5100の共振周波数f
Oを基準周波数から所定周波数f
Mに変更する共振周波数変更動作を実行する。共振周波数変更動作の実現方法及び共振周波数変更回路240の具体的回路構成として、それらについて上述した任意の実施形態中の方法及び構成が具体例EX10_3に適用される。
【0246】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさは、上述してきたように、共振周波数変更動作の実行によって減少する。
【0247】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさが減少すれば、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅が増大する(
図8参照)。従って、異常検出時に当該負荷の大きさの減少をもたらす共振周波数変更回路240を異常応答回路5500として用いる場合、制御回路160は、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A>V
B”の成立を示す信号4120が出力されたときに異常の発生を認知して(即ち送電側異常発生認知を成して)送電動作を停止し、一方、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A<V
B”の成立を示す信号4120が出力されているならば送電動作を継続すれば良い。具体例EX10_3では、送電動作中において、共振周波数変更動作が実行されたときにのみ“V
A>V
B”が成立するように、
図50の電圧V
Bの値などが予め定められる。
【0248】
―――具体例EX10_4―――
第10実施形態に属する具体例EX10_4を説明する。具体例EX10_4では、電子機器2が、上述のコイル短絡回路260を備えていることを前提とし、コイル短絡回路260(
図30等参照)が異常応答回路5500として利用される。尚、コイル短絡回路260が異常応答回路5500によって制御されると考えても良い。
【0249】
電力伝送期間において、異常検出回路5400から第2論理値の信号OUT
5400が出力されているとき、異常応答回路5500としてのコイル短絡回路260は、コイル短絡動作を実行せず、結果、所望の受電動作が行われる。一方、電力伝送期間において、異常検出回路5400から第1論理値の信号OUT
5400が出力されているとき、異常応答回路5500としてのコイル短絡回路260は、受電側共振回路5100の受電側コイルR
Lを短絡するコイル短絡動作を実行する。コイル短絡動作の実現方法及びコイル短絡回路260の具体的回路構成として、それらについて上述した任意の実施形態中の方法及び構成が具体例EX10_4に適用される。
【0250】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさは、上述してきたように、コイル短絡動作の実行によって減少する。
【0251】
電力伝送における給電機器1(送電側コイルT
L)から見た電子機器2の負荷の大きさが減少すれば、送電側コイルT
Lに流れる電流の振幅が増大する(
図8参照)。従って、異常検出時に当該負荷の大きさの減少をもたらすコイル短絡回路260を異常応答回路5500として用いる場合、制御回路160は、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A>V
B”の成立を示す信号4120が出力されたときに異常の発生を認知して(即ち送電側異常発生認知を成して)送電動作を停止し、一方、送電動作中に
図50の回路4100から“V
A<V
B”の成立を示す信号4120が出力されているならば送電動作を継続すれば良い。具体例EX10_4では、送電動作中において、コイル短絡動作が実行されたときにのみ“V
A>V
B”が成立するように、
図50の電圧V
Bの値などが予め定められる。
【0252】
13.56MHzを用いた電力伝送を実現可能な非接触給電システムにおいて、電力伝送中に受電側機器(ここでは電子機器2)で異常が起きた場合、電力伝送を停止することが受電側機器の保護に繋がる。電力伝送を停止するために、異常の発生を通信によって送電側機器(ここでは給電機器1)に伝えるということも検討される。しかし、法規制上、そのような通信の実施は現実的に難しいことも多い。例えば、日本国の電波法(第100条参照)では、一定条件下であれば公的機関の許可を得ずに電力伝送を行うことができると定められており、一定条件外では電力伝送に公的機関の許可が必要になる。そして、この一定条件を満たすためには、電力伝送に用いる13.56MHzの電磁波を無変調にしておく必要がある。つまり、電力伝送期間では、13.56MHzの無変調波を送電側共振回路にて発生させないと上記一定条件を満たせない。しかし、通信にて情報(異常検知情報など)を送受信するためには変調が必須である。一方において、各家庭などで機器1及び2間の電力伝送を行わせようとするユーザに公的機関への許可申請手続きを求めるのは非現実的である。
【0253】
これに鑑み、本実施形態では、電力伝送中に、受電側機器において異常が検知された場合、負荷の大きさの変化を通じて該異常の発生を送電側機器に知らしめる。これにより、電力伝送中において、電力伝送用の電磁波に変調を与えることなく受電側機器での異常の発生を送電側機器に知らせることができ、送電側機器にて必要な措置(送電停止など)をとることができるようになる。
【0254】
<<第11実施形態>>
本発明の第11実施形態を説明する。第11実施形態では、第10実施形態における給電機器1及び電子機器2の動作の流れの例を説明する。
【0255】
図60は、初期設定処理(
図12参照)の後に実行される給電機器1の動作フローチャートである。第4実施形態(
図35)で述べた給電機器1の動作フローチャートを基準として、第11実施形態ではステップS115がステップS115aに置換され、その置換を除き、給電機器1の動作フローチャートは第4及び第11実施形態間で共通である。共通部分の説明を省略する。
【0256】
ステップS114にて送電回路130による送電動作が開始した後、ステップS115aに進む。ステップS115aにおいて、制御回路160は、送電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間を所定の時間t
Aと比較すると共に、上述の送電側異常発生認知が成されたか否かを判定する。例えば、実施例EX10_1では“V
A<V
B”の成立を示す信号4120が
図50の回路4100から出力されたときのみ、送電側異常発生認知が成され、実施例EX10_2〜EX10_4では“V
A>V
B”の成立を示す信号4120が
図50の回路4100から出力されたときのみ、送電側異常発生認知が成される。そして、上記経過時間が時間t
Aに達しておらず且つ送電側異常発生認知が成されていない場合、ステップS116に進まずに送電動作を継続するが、上記経過時間が時間t
Aに達した場合又は送電側異常発生認知が成された場合、ステップS116に進んで、制御回路160は送電回路130による送電動作を停止させ、その後、ステップS101に戻る。
【0257】
図61は、電子機器2の動作フローチャートである。第4実施形態(
図36)で述べた電子機器2の動作フローチャートを基準として、第11実施形態ではステップS213がステップS213aに置換され、その置換を除き、電子機器2の動作フローチャートは第4及び第11実施形態間で共通である。共通部分の説明を省略する。
【0258】
ステップS212にて受電回路230を用いた受電動作を開始した後、ステップS213aに進む。ステップS213aにおいて、制御回路250は、受電動作の開始時点からの経過時間を計測して該経過時間を所定の時間t
Bと比較し、一方で、異常検出回路5400により負荷回路5300における異常の有無が検出される。上記経過時間が時間t
Bに達しておらず、且つ、負荷回路5300の異常が検出されていない(即ち、第2論理値の信号OUT
5400が異常検出回路5400から出力されている)場合、ステップS214に進まずに受電動作を継続するが、上記経過時間が時間t
Bに達した場合又は負荷回路5300の異常が検出された場合(即ち、第1論理値の信号OUT
5400が異常検出回路5400から出力された場合)、ステップS214に進んで受電動作が停止され、その後、ステップS201に戻る。
【0259】
<<本発明の第2考察>>
上述の第1〜第11実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0260】
本発明の一側面に係る受電装置は、受電側コイル及び受電側容量を含む受電側共振回路に接続されるべき回路であって、磁界共鳴を利用して前記受電側コイルにて受電した電力に基づき出力電力を生成する受電回路(230)と、前記電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を、前記受電の際の前記共振周波数である基準周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路(240、260)と、を備えたことを特徴とする。
【0261】
受電装置は、受電側コイルに対応する送電側コイルから送電される電力を、磁界共鳴を利用して受電できる。一方、受電装置と異なる異物も存在し得る。ここにおける異物は、上記基準周波数を共振周波数として持った共振回路を備えるが、受電能力を持たない機器であるとする。このような異物が、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に存在している状況において、電力送電用の磁界が送電側コイルにて発生されたとき、異物が破損等するおそれがある。これを回避するために、異物の有無を検知する必要がある。
【0262】
この検知のために、受電装置に上記変更/短絡回路を設ける。そうすると、以下のような作用が得られる。即ち、受電装置のみが存在する第1ケースにおいて、受電側共振回路の共振周波数を基準周波数から変更したとき又は受電側コイルを短絡したとき、受電側共振回路が送電側コイルの発生磁界に対して共鳴しなくなり、送電側コイルにとっての負荷の重さが比較的軽くなる。一方、受電装置及び異物が存在する第2ケースにおいては、受電側共振回路の共振周波数の変更又は受電側コイルの短絡により送電側コイルにとっての負荷の一部は軽くなるものの、異物の共振回路は送電側コイルの発生磁界に共鳴するため、送電側コイルにとっての負荷の重さは第1ケースよりも重くなる。
【0263】
故に、負荷の重さを評価することで第1ケースと第2ケースを区別することが可能となり、第2ケースにおいては送電を行わないといった制御が可能となる。つまり、上記のような構成を持つ受電装置によれば、受電装置及び送電装置を有する非接触給電システム内で、異物の有無判断及び送電の実行可否判断を行うことが可能となり、異物の破損等を回避することが可能となる。
【0264】
本発明の他の側面に係る送信装置は、送電側コイル及び送電側容量を含む送電側共振回路に接続されるべき回路であって、前記送電側共振回路に交流信号を供給して前記送電側コイルに基準周波数の交番磁界を発生させることで前記送電側コイルから磁界共鳴方式で電力を送電させる送電回路(130)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅に応じた値を出力する検出回路(140)と、前記送電回路を制御する制御回路(160)と、を備え、前記制御回路(160)は、特定信号を前記送電側コイルから前記受電側コイルに送信させる第1処理部と、前記特定信号の送信後、所定のテスト磁界が前記送電側コイルにて発生されるよう前記送電回路を制御する第2処理部と、前記テスト磁界を発生させているときの前記検出回路の出力値を所定の基準値と比較することで前記送電の実行可否を判断する第3処理部と、を有し、前記特定信号は、前記送電側コイルからの電力を受電可能な受電側コイル及び受電側容量を含む受電側共振回路の共振周波数を、前記受電の際の前記共振周波数である前記基準周波数から変更させることの契機となる信号である、又は、前記受電側コイルを短絡させることの契機となる信号であることを特徴とする。
【0265】
受電側共振回路に接続された又は受電側共振回路を備えた受電装置は、送電側コイルから送電される電力を、磁界共鳴を利用して受電できる。一方、受電装置と異なる異物も存在し得る。ここにおける異物は、上記基準周波数を共振周波数として持った共振回路を備えるが、受電能力を持たない機器であるとする。このような異物が、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に存在している状況において、電力送電用の磁界が送電側コイルにて発生されたとき、異物が破損等するおそれがある。これを回避するために、異物の有無を検知する必要がある。
【0266】
この検知のために、まず第1処理部を利用する。送電装置に対応する受電装置は、第1処理部による特定信号に従い、共振周波数を基準周波数から変更できる又は受電側コイルを短絡する。これに対し、送電装置に対応しない異物は、特定信号に応答せず、共振周波数を基準周波数から変更しない又は変更できないし、受電側コイルの短絡も行わない。共振周波数の変更又は受電側コイルの短絡による作用を、第1及び第2ケースに分けて考察する。
【0267】
受電装置のみが存在する第1ケースにおいて、受電側共振回路の共振周波数を基準周波数から変更したとき又は受電側コイルを短絡したとき、受電側共振回路が送電側コイルの発生磁界に対して共鳴しなくなり、送電側コイルにとっての負荷の重さが比較的軽くなる。一方、受電装置及び異物が存在する第2ケースにおいては、受電側共振回路の共振周波数の変更又は受電側コイルの短絡により送電側コイルにとっての負荷の一部は軽くなるものの、異物は送電側コイルの発生磁界に共鳴するため、送電側コイルにとっての負荷の重さは第1ケースよりも重くなる。
【0268】
ところで、送電側コイルに流れる電流の振幅は、送電側コイルの負荷の重さに依存するため、その振幅の値を評価することで、負荷の軽重、即ち、第1及び第2ケースの区別が可能となる。これを考慮し、上記第2及び第3処理部を送電装置に設ける。これにより、異物の有無判断を介して送電の実行可否制御を行うことが可能となり、異物の破損等を回避することが可能となる。
【0269】
尚、上述の実施形態では、通信回路120を用いた変更用信号530、短絡用信号530a又は特定要求信号530bの送信が特定信号の送信に対応する。それらの信号は、制御回路160の制御の下で送信されるので制御回路160は第1処理部を含んでいると考えられる。但し、信号530、530a又は530bの送信の実行主体は通信回路120である。また、
図20の例では、ステップS131〜S133の処理が第2処理部の処理に対応し、ステップS134〜S138の処理が第3処理部の処理に対応する。
【0270】
本発明の他の側面に係る非給電接触システム(例えば
図49〜
図51参照)は、送電側共振回路を備えた送電装置から受電側共振回路を備えた受電装置に対し磁界共鳴方式で電力を送電可能な非接触給電システムにおいて、前記受電装置は、前記受電側共振回路を用いて受電した電力を消費する負荷回路(5300)と、前記負荷回路における異常の有無を検出する異常検出回路(5400)と、前記異常が検出されたとき、前記送電装置から見た前記受電装置の負荷の大きさを変化させる異常応答回路(5500)と、を備え、前記送電装置は、前記送電の実行中に前記変化の有無を監視して(4100)送電制御を行うことを特徴とする。
【0271】
送電中に受電装置側で異常が起きた場合、送電停止などの措置をとることが受電装置の保護に繋がる。送電の停止等を行うために、異常の発生を通信によって送電装置に伝えるということも検討されるが、そのような通信の実施は電磁波の変調を要するため、現実的に難しいことも多い。これに鑑み、受電装置において異常が検知された場合、送電装置から見た受電装置の負荷の大きさを変化させ、送電装置では、その変化の有無を監視するようにする。これにより、電力伝送用の電磁波に変調を与えることなく受電装置での異常の発生を送電装置に知らせることができ、送電装置にて必要な送電制御(送電停止など)を行うことができるようになる。
【0272】
尚、本発明に係る受電装置は、受電側共振回路に接続された装置(例えば受電側IC)であると考えても良いし、受電側共振回路を構成要素として含んだ装置(例えば電子機器2)であると考えても良い。本発明に係る送電装置は、送電側共振回路に接続された装置(例えば送電側IC)であると考えても良いし、送電側共振回路を構成要素として含んだ装置(例えば給電機器1)であると考えても良い。
【0273】
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1〜注釈3を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
【0274】
[注釈1]
上述の実施形態では、各種の信号の周波数や共振周波数を、基準周波数としての13.56MHzに設定することを述べたが、13.56MHzは設定の目標値であって、実際の機器における、それらの周波数には誤差が含まれる。
【0275】
[注釈2]
本発明をNFCの規格に沿って具現化したものを実施形態中に示したため、基準周波数が13.56MHzであると述べたが、基準周波数は13.56MHz以外でも構わない。これに関連するが、本発明が適用される給電機器及び電子機器間の通信及び電力伝送は、NFC以外の規格に沿った通信及び電力伝送であっても良い。
【0276】
[注釈3]
本発明に係る受電装置又は送電装置である対象装置を、集積回路等のハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。対象装置にて実現される機能の全部又は一部である任意の特定の機能をプログラムとして記述して、該プログラムを対象装置に搭載可能なフラッシュメモリに保存しておいても良い。そして、該プログラムをプログラム実行装置(例えば、対象装置に搭載可能なマイクロコンピュータ)上で実行することによって、その特定の機能を実現するようにしてもよい。上記プログラムは任意の記録媒体に記憶及び固定されうる。上記プログラムを記憶及び固定する記録媒体は対象装置と異なる機器(サーバ機器等)に搭載又は接続されても良い。