特許第6395546号(P6395546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395546
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20180913BHJP
   F24C 7/04 20060101ALI20180913BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F24C1/00 370N
   F24C7/04 301Z
   A47J37/06 371
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-203012(P2014-203012)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-70631(P2016-70631A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 広美
(72)【発明者】
【氏名】池村 茂
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 和江
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】横井川 裕司
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−193939(JP,A)
【文献】 特開2001−193941(JP,A)
【文献】 特開2001−254958(JP,A)
【文献】 特開平11−241825(JP,A)
【文献】 特開平03−053485(JP,A)
【文献】 特開2007−232281(JP,A)
【文献】 特開平08−031561(JP,A)
【文献】 特開2010−261654(JP,A)
【文献】 特開2010−054100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
A47J 37/06
F24C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が収容される加熱室と、
前記加熱室に熱風を供給して前記被加熱物を加熱する熱風供給手段と、
交流電源の電源周波数を検出する電源周波数検出手段と、
前記電源周波数検出手段の検出結果に応じて、電源周波数が50Hzのときと比較して、電源周波数が60Hzのときに、前記被加熱物の加熱を行う加熱時間を長くする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記被加熱物の分量を判定するための分量判定時間と、調理メニューに応じて予め設定された調理メニュー係数と、前記電源周波数に応じて予め設定された電源周波数係数とを乗算することによって前記加熱時間を算出する、
加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱室に設置され、前記被加熱物に輻射熱を照射して前記被加熱物を加熱する加熱手段をさらに備えた、
請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記加熱室の上方から、前記被加熱物に輻射熱を照射する、
請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱室の上方に、前記加熱室の空気を排出する排出口が形成された、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記交流電源の電源電圧を検出する電源電圧検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記分量判定時間と、前記調理メニュー係数と、前記電源電圧に応じて予め設定された電源電圧係数とを乗算することによって前記加熱時間を算出し、
前記電源電圧検出手段の検出結果に応じて、電源電圧が低いときと比較して、電源電圧が高いときに、前記加熱時間を短くする、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電源電圧検出手段が検出した電源電圧が、当該加熱調理器の推奨動作電圧範囲よりも低いときに、前記推奨動作電圧範囲における加熱時間よりも長い加熱時間を設定し、前記電源電圧検出手段が検出した電源電圧が、前記推奨動作電圧範囲よりも高いときに、前記推奨動作電圧範囲における加熱時間よりも短い加熱時間を設定する、
請求項5記載の加熱調理器。
【請求項7】
被加熱物が収容される加熱室と、
前記加熱室に熱風を供給して前記被加熱物を加熱する熱風供給手段と、
交流電源の電源電圧を検出する電源電圧検出手段をさらに備え、
前記電源電圧検出手段の検出結果に応じて、電源電圧が低いときと比較して、電源電圧が高いときに、前記被加熱物の加熱を行う加熱時間を短くする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記被加熱物の分量を判定するための分量判定時間と、調理メニューに応じて予め設定された調理メニュー係数と、前記電源電圧に応じて予め設定された電源電圧係数とを乗算することによって前記加熱時間を算出する、
加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱風を供給する熱風供給手段を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファンを駆動するファンモータとヒータとを有し加熱室に熱風を供給する熱風供給装置、を備えた加熱調理器が知られている。従来の加熱調理器では、電源周波数検出手段の検出結果と電源電圧検出手段の検出結果と温度検出手段の検出結果とに基づいて、ファンモータへの給電量を制御して、ファンモータの回転速度をほぼ一定にして、調理の仕上がりの変動を抑制している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−193939号公報(第3頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器では、調理の仕上がりにバラツキが生じる場合があり、簡易な構成で調理の仕上がりのバラツキを低減したいという要請がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、調理の仕上がりのバラツキを低減することができる加熱調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る加熱調理器は、被加熱物が収容される加熱室と、加熱室に熱風を供給して被加熱物を加熱する熱風供給手段と、交流電源の電源周波数を検出する電源周波数検出手段と、電源周波数検出手段の検出結果に応じて、電源周波数が50Hzのときと比較して、電源周波数が60Hzのときに、被加熱物の加熱を行う加熱時間を長くする制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の分量を判定するための分量判定時間と、調理メニューに応じて予め設定された調理メニュー係数と、前記電源周波数に応じて予め設定された電源周波数係数とを乗算することによって前記加熱時間を算出する
【発明の効果】
【0007】
この発明の加熱調理器は、調理の仕上がりのバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係る加熱調理器を備えたシステムキッチンを斜めから見た図である。
図2図1に記載の加熱調理器が組み込まれた調理装置を斜めから見た図である。
図3図2に記載の加熱調理器への被加熱物の設置を説明する図である。
図4図2に記載の加熱調理器の断面を概略的に記載した図である。
図5図2に記載の加熱調理器の構成を概略的に記載した図である。
図6図2に記載の加熱調理器の動作の流れの一例を説明する図である。
図7図6に記載の流れで動作した加熱調理器の動作を説明する図である。
図8】電源周波数と電源周波数補正係数との関係を示す図である。
図9】この発明の実施の形態2に係る加熱調理器の動作の流れの一例を説明する図である。
図10】電源電圧と電源電圧補正係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさおよび配置等は、この発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る加熱調理器を備えたシステムキッチンを斜めから見た図であり、図2は、図1に記載の加熱調理器が組み込まれた調理装置を斜めから見た図であり、図3は、図2に記載の加熱調理器への被加熱物の設置を説明する図であり、図4は、図2に記載の加熱調理器の断面を概略的に記載した図である。図1に示すように、この実施の形態に係る加熱調理器8は、キッチンキャビネット1にビルトインされたビルトインタイプの調理装置5に組み込まれている。なお、調理装置5は、ビルトインタイプのものに限らず、据置タイプのものであってもよい。また、加熱調理器8は、調理装置5に組み込まれたものに限らず、独立した据置タイプのものであってもよい。キッチンキャビネット1は、例えば、前面側にキャビネット扉2を有するキャビネット本体3と、キャビネット本体3の上に設置されたキッチンカウンタートップ4とを有する。
【0011】
図1図3に示すように、調理装置5は、上部ユニット7と下部ユニット10とを有する。上部ユニット7は、天板6および天板6の下側に設置された加熱部(図示を省略)を有しており、天板6の加熱部に対応した位置には、調理容器の載置部12が設けられている。ユーザは、載置部12に、鍋等の調理容器を載置して、調理を行うことができる。なお、加熱部は、例えば誘導加熱コイルである。天板6の後方には、図2および図3に示すように、吸気口24および排気口25が設けられており、これらの上面には、図1に示すように、スリット形状のカバー15が設置されている。
【0012】
下部ユニット10は、加熱調理器8と操作部9と表示部11とを有する。操作部9は、調理装置5および調理装置5に組み込まれた加熱調理器8への指示を行う入力部であり、ユーザは、操作部9を操作して、調理メニューの選択等を行うことができる。表示部11は、調理装置5および加熱調理器8の状態等を表示するものである。なお、操作部および表示部は、これらが一体的に形成されたタッチパネルであってもよい。
【0013】
加熱調理器8は、前面に扉30を有する。図3に示すように、扉30が前方に引き出された状態で、受皿31または焼き網31Aに、被加熱物が設置される。扉30が後方に押し込まれると、受皿31および焼き網31Aが加熱室20に収納され、扉30が加熱室20の前面開口部を閉鎖する。
【0014】
図4に示すように、この実施の形態に係る加熱調理器8は、加熱手段21と加熱室温度検出手段23と熱風供給手段41とを有する。加熱室温度検出手段23は、サーミスタまたは赤外線センサ等で構成されており、加熱室20または加熱室20に設置された被加熱物の温度を検出するものである。
【0015】
加熱手段21は、例えば、抵抗発熱体を含んで構成されたシーズヒータであり、加熱室20および加熱室20に設置された被加熱物の加熱を行うものである。加熱手段21は、加熱室20の上方に設置されており、加熱室20の上方から、被加熱物に輻射熱を照射して、被加熱物を加熱する。なお、加熱室20の上方に設置された加熱手段21の他に、他の加熱手段を備えた構成であってもよい。例えば、他の加熱手段は、加熱室20の下方または側方に設置され、加熱室20の下方または側方から、被加熱物に輻射熱を照射して、被加熱物を加熱する。加熱手段21は、例えば、図示を省略してあるリレーによって、ON状態(通電状態)とOFF状態(非通電状態)とを切り替えて通電率(デューティー比)を変更することによって、火力の調整を行うことができる。また、リレーの代わりにトライアックまたはサイリスタといったスイッチを使用してもよい。加熱手段21は、幅方向および奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、加熱室20の広範囲を加熱することができる。なお、加熱手段21は、単一のヒータによって構成される必要はなく、複数のヒータによって構成されてもよい。
【0016】
熱風供給手段41は、加熱室20に熱風を供給して、加熱室20および加熱室20に設置された被加熱物の加熱を行うものである。熱風供給手段41は、加熱室20の背面側に設置されており、加熱室20の背面側から熱風を供給する。なお、熱風供給手段41は、加熱室20の側方、下方または上方から加熱室20に熱風を供給するように構成されていてもよい。熱風供給手段41は、熱風生成室42と、熱風生成室42の内部に収容されたグリルファン43およびグリルヒータ44と、グリルファン43を回転させるモーター45と、を有する。グリルヒータ44は、熱風生成室42の空気を加熱する加熱手段であり、例えば、抵抗発熱体を含んで構成されたシーズヒータである。グリルヒータ44は、例えば、図示を省略してあるリレーによって、ON状態(通電状態)とOFF状態(非通電状態)とを切り替えて通電率(デューティー比)を変更することによって、火力の調整を行うことができる。また、リレーの代わりにトライアックまたはサイリスタといったスイッチを使用してもよい。
【0017】
グリルファン43は、モーター45の回転軸に取り付けられており、モーター45の動作によって回転する。モーター45は、熱風生成室42の後方に設置されたモーター収容ケース46に収容されている。モーター45は、加熱調理器8に供給される交流電源AC(図4を参照)の電源電圧および電源周波数が変化すると、回転数が変化する。グリルファン43が回転すると、グリルヒータ44で加熱された熱風生成室42の空気が、加熱室20に供給され、熱風が加熱調理器8の内部を循環する。すなわち、グリルファン43が回転すると、グリルヒータ44で加熱された熱風生成室42の空気が、加熱室20の背面板54に形成された吹出口55Bから加熱室20に吹き出される。吹出口55Bから吹き出された熱風は、加熱室20および加熱室20に設置された被加熱物を加熱し、加熱室20の上方に形成された排出口35から排出される。排出口35から排出された空気は、加熱室20の上方で加熱室20の手前側から奥側に向かって延びるダクト32を通って、加熱室20の背面板54に形成された背面吸込口55Aから、熱風生成室42に吸い込まれる。熱風生成室42に吸い込まれた空気は、グリルヒータ44で加熱されて、吹出口55Bから加熱室20に吹き出される。なお、熱風生成室42に吸い込まれた空気の一部は、排気ダクト25Aを介して、排気口25(図2等を参照)から排気されるようになっている。また、熱風生成室42には、加熱調理器8の外部の空気が、吸気口24(図2等を参照)から図示を省略してある給気ダクトを介して、吸入されるようになっている。なお、この実施の形態においては、吸気口24と排気口25とが、上部ユニット7の上面に設けられた例についての説明を行うが、吸気口24は、下部ユニット10の背面側に設けられていてもよい。
【0018】
排出口35の近傍には、触媒27が設けられている。触媒27は、加熱手段21の上方で、加熱手段21と近接するように設置されている。加熱手段21によって、触媒27が加熱されると、触媒27が活性化される。触媒27が活性化されると、排気に含まれる油煙または臭気成分等は、酸化分解によって分解され浄化される。
【0019】
図5は、図2に記載の加熱調理器の構成を概略的に記載した図である。加熱調理器8および調理装置5は、交流電源ACから供給された電力を利用して動作するものであり、制御手段60によって全体の制御が行われる。制御手段60は、CPUまたは専用の電気回路等で構成されており、操作部9、電源周波数検出手段62、電源電圧検出手段64、記憶部66、および加熱室温度検出手段23等からの入力に基づいて、表示部11、加熱手段21、熱風供給手段41、および記憶部66等の制御を行う。記憶部66は、例えば不揮発性メモリであり、加熱調理器8の制御を行うための制御プログラム等を記憶している。電源周波数検出手段62は、加熱調理器8に供給された交流電源ACの電源周波数Fを検出するものであり、電源電圧検出手段64は、加熱調理器8に供給された交流電源ACの電源電圧Vを検出するものである。
【0020】
次に、上記のように構成された加熱調理器8の動作の一例について説明する。図6は、図2に記載の加熱調理器の動作の流れの一例を説明する図であり、図7は、図6に記載の流れで動作した加熱調理器の動作について説明する図であり、図8は、電源周波数Fと電源周波数補正係数との関係を示す図である。なお、図7において、横軸は時間tであり、縦軸は加熱室20の温度uである。まず、図6のステップS01にて、ユーザは、例えば図2に記載の操作部9を操作して、被加熱物に適した調理メニューを選択する。ステップS02にて、図5に示す制御手段60は、電源周波数検出手段62が検出した交流電源ACの電源周波数Fの情報を取得する。
【0021】
ステップS03にて、制御手段60は、分量判定工程を実行する。分量判定工程は、例えば、加熱室20への加熱を開始してから、加熱室20の温度uが分量判定温度u1に到達するまでの時間を利用して、分量判定時間Txを算出することによって行われる。分量判定工程では、加熱手段21および熱風供給手段41を、被加熱物の分量を判定するための分量判定火力で動作させる。分量判定火力は、例えば、対象となる被加熱物を加熱する際の最大火力であり、加熱室20の温度を急速に上昇させることができるため、調理時間を短縮することができる。
【0022】
分量判定時間Txが算出されると、ステップS04にて、制御手段60は、加熱工程の加熱時間Tcを決定する。この実施の形態の例では、加熱時間Tcは、以下の数式(1)にて算出される。
Tc=(M×Tx)×Cf ・・・ (1)
上記の数式(1)において、Tcは被加熱物の加熱工程を行う加熱時間であり、Mは調理メニュー毎に定められた調理メニュー係数であり、TxはステップS03で計測した分量判定時間であり、Cfは交流電源ACの電源周波数Fに対応して定められた電源周波数係数である。調理メニュー係数Mおよび電源周波数係数Cfは、記憶部66に予め記憶されている。
【0023】
電源周波数係数Cfは、図8に示すように、交流電源ACの電源周波数Fが50HzのときはCf1であり、電源周波数Fが60HzのときはCf2である。電源周波数Fが60Hzのときの係数Cf2は、電源周波数Fが50Hzのときの係数Cf1よりも大きく定められている。したがって、電源周波数Fが60Hzのときは、交流電源ACの電源周波数Fが50Hzのときと比較して、調理時間(分量判定時間Tx+加熱時間Tc)が長くなる。なお、電源周波数係数Cfは、加熱室20の大きさ、調理メニュー、加熱手段21および熱風供給手段41の容量等に応じて異なるものであるが、通常は、Cf2は、Cf1と比較して、数%〜十数%程度大きくなるように設定されている。また、調理メニュー係数Mは、電源周波数Fが50Hzまたは60Hzのときに、調理メニュー係数Mと分量判定時間Txの積が、加熱工程の加熱時間Tcになるように設定されている。例えば、調理メニュー係数Mが、電源周波数Fを50Hzとして設定された場合には、Cf1が1.0であり、調理メニュー係数Mが、電源周波数Fを60Hzとして設定された場合には、Cf2が1.1である。
【0024】
ステップS05にて、加熱工程が時間Tcの間に行われ、ステップS06にて、加熱工程が終了する。なお、図7に示すように、時間Tcの間で行われる加熱工程は、時間Tc1の間に行われる調理加熱工程と、時間Tc2の間に行われる仕上げ工程とを含んでいてもよい。例えば、調理加熱工程では、被加熱物にむらなく加熱が行われるように加熱が行われ、仕上げ工程では、被加熱物に焼き色を付けるように加熱が行われる。仕上げ工程では、例えば、加熱手段21の加熱強度を強めることによって、所望の焼き色をつける。
【0025】
上記のように、この実施の形態では、交流電源ACの電源周波数Fが50Hzのときと比較して、電源周波数Fが60Hzのときに、被加熱物の加熱を行う加熱時間Tcを長くするのみで、電源周波数Fが50Hzの場合と60Hzの場合とで、被加熱物の調理の仕上がりを均一化することができる。なぜなら、電源周波数Fが50Hzのときと比較して、電源周波数Fが60Hzのときには、グリルファン43の回転速度が速くなる。グリルファン43の回転速度が速くなると、グリルヒータ44および加熱手段21に当たる空気の風量が増加して、グリルヒータ44および加熱手段21の温度が低下するため、被加熱物への加熱が弱まる。そこで、この実施の形態では、被加熱物を加熱する加熱時間Tcを調整して、調理の仕上がりのバラツキを抑制している。
【0026】
なお、この実施の形態では、熱風供給手段41と加熱手段21とを備えた加熱調理器8についての説明を行ったが、加熱手段21を省略しても、調理の仕上がりのバラツキを抑制するという効果は得られる。しかしながら、加熱手段21を有する構成の場合には、調理の仕上がりのバラツキを抑制するという効果が顕著になる。加熱手段21の温度の変動は、被加熱物の焼き色への影響が大きいからである。
【0027】
また、この実施の形態では、ユーザによって被加熱物に適した調理メニューが選択され、その後に分量判定工程によって被加熱物の分量が判定され、さらに、交流電源ACの電源周波数Fに基づいた加熱時間Tcの補正を行っているため、被加熱物の加熱を正確に行うことができる。
【0028】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係る加熱調理器の動作の流れの一例を説明する図であり、図10は、電源電圧と電源電圧補正係数との関係を示す図である。なお、図6に記載の実施の形態1では、交流電源ACの電源周波数Fに応じて加熱時間Tcの変更を行ったが、図9に記載の実施の形態2では、交流電源ACの電源電圧Vに応じて加熱時間Tcを変更する。以下の説明では、実施の形態1と重複する部分については、詳細の説明は省略する。
【0029】
ステップS01にて、調理メニューが選択されると、ステップS02Aにて、制御手段60は、電源電圧検出手段64が検出した交流電源ACの電源電圧Vの情報を取得する。なお、この実施の形態では、負荷となるグリルヒータ44および加熱手段21等を動作させる前の電源電圧Vを検出することによって、電源電圧Vを正確に取得することができる。交流電源ACは、交流電源ACに接続された負荷の状態に応じて、電源電圧Vが変動するからである。そこで、この実施の形態では、例えば、調理メニューが選択される前の、数秒間の電源電圧Vの平均値を取得する。なお、調理メニューが選択される前の、交流電源ACの電源電圧Vは、記憶部66に記憶されている。
【0030】
ステップS03にて、分量判定工程が実行され、ステップS04Aにて、加熱工程の加熱時間Tcを決定し、ステップS05にて、加熱工程が時間Tcの間に行われ、ステップS06にて、加熱工程が終了する。この実施の形態の例では、加熱時間Tcは、以下の数式(2)にて算出される。
Tc=(M×Tx)×Cv ・・・ (2)
上記の数式(2)において、Cvは交流電源ACの電源電圧Vに対応して定められた電源電圧係数である。電源電圧係数Cvは、記憶部66に予め記憶されている。
【0031】
加熱調理器8に供給される交流電源ACの電源電圧V(実効値)は、理想的には推奨動作電圧E(V)である。そして、調理メニュー係数Mは、電源電圧Vが推奨動作電圧E(V)のときに、調理メニュー係数Mと分量判定時間Txの積が、加熱工程の加熱時間Tcになるように設定されている。一方、交流電源ACの電源電圧Vは、交流電源ACに接続された負荷の状態等に応じて変動するため、電源電圧Vが推奨動作電圧E(V)とは異なる場合に、何らの補正を行わないと、調理の仕上がりにバラツキが生じてしまう。交流電源ACの電源電圧Vが変動すると、グリルファン43の回転数、グリルヒータ44が発生する熱量、および加熱手段21が発生する熱量等が変動するからである。そこで、この実施の形態では、交流電源ACの電源電圧Vに応じて、加熱時間Tcの補正を行う。すなわち、上記の数式(2)に示すように、電源電圧係数Cvを用いて、加熱時間Tcを調整する。
【0032】
図10に示すように、例えば、電源電圧係数Cvは、電源電圧Vが推奨動作電圧Eの95%よりも大きく推奨動作電圧Eの105%以下である推奨動作電圧範囲にある場合には1である。また、例えば、電源電圧係数Cvは、電源電圧Vが推奨動作電圧Eの85%よりも大きく推奨動作電圧Eの90%以下の場合にはCv1であり、電源電圧Vが推奨動作電圧Eの90%よりも大きく推奨動作電圧Eの95%以下の場合にはCv2であり、電源電圧Vが推奨動作電圧Eの105%よりも大きく推奨動作電圧Eの115%以下の場合にはCv3であり、電源電圧Vが推奨動作電圧Eの115%よりも大きく推奨動作電圧Eの120%以下の場合にはCv4である。電源電圧係数Cvは、Cv1>Cv2>1>Cv3>Cv4のように定められており、電源電圧Vが小さいときは加熱時間Tcが長くなり、電源電圧Vが大きいときは加熱時間Tcが短くなるようになっている。なお、電源電圧係数Cvは、加熱室20の大きさ、調理メニュー、加熱手段21および熱風供給手段41の容量等に応じて異なるものであるが、通常は、Cv1は加熱時間が10%程度長くなるように定められ、Cv2は加熱時間が5%程度長くなるように定められ、Cv3は加熱時間が5%程度短くなるように定められ、Cv4は加熱時間が10%程度短くなるように定められている。被加熱物の加熱に対する影響は、グリルファン43の回転速度の変化の影響(被加熱物への加熱が弱まる傾向)と比較して、グリルヒータ44が発生する熱量および加熱手段21が発生する熱量の影響(被加熱物への加熱が強まる傾向)の方が大きいため、上記のように、電源電圧Vが小さいときは加熱時間Tcを長くして、電源電圧Vが大きいときは加熱時間Tcを短くする調整を行うことによって、調理の仕上がりを均一化することができる。
【0033】
この発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々に改変することができる。すなわち、上記の実施の形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施の形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【0034】
例えば、実施の形態1では、交流電源ACの電源周波数Fに応じて加熱時間Tcを調整する例についての説明を行い、実施の形態2では、交流電源ACの電源電圧に応じて加熱時間Tcを調整する例についての説明を行ったが、交流電源ACの電源周波数Fおよび電源電圧に応じて、加熱時間Tcの調整を行ってもよい。交流電源ACの電源周波数Fおよび電源電圧に応じて、加熱時間Tcの調整を行う場合には、電源周波数係数Cfおよび電源電圧係数Cvを用いて、加熱時間Tcの補正を行えばよい。交流電源ACの電源周波数Fおよび電源電圧に応じて、加熱時間Tcの調整を行うことによって、調理の仕上がりのバラツキをさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 キッチンキャビネット、2 キャビネット扉、3 キャビネット本体、4 キッチンカウンタートップ、5 調理装置、6 天板、7 上部ユニット、8 加熱調理器、9 操作部、10 下部ユニット、11 表示部、12 載置部、15 カバー、20 加熱室、21 加熱手段、23 加熱室温度検出手段、24 吸気口、25 排気口、25A 排気ダクト、27 触媒、30 扉、31 受皿、31A 焼き網、32 ダクト、35 吸込口、41 熱風供給手段、42 熱風生成室、43 グリルファン、44 グリルヒータ、45 モーター、46 モーター収容ケース、54 背面板、55A 背面吸込口、55B 吹出口、60 制御手段、62 電源周波数検出手段、64 電源電圧検出手段、66 記憶部、AC 交流電源、Cf 電源周波数係数、Cf1 係数、Cf2 係数、Cv 電源電圧係数、E 推奨動作電圧、F 電源周波数、M 調理メニュー係数、Tc 加熱時間、Tx 分量判定時間、U1 分量判定温度、V 電源電圧、u 温度。
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