(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイを挿入した状態のカード用コネクタセットを示す斜視図、
図2は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイを挿入した状態のカード用コネクタセットを示す図、
図3は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイを挿入する直前の状態のカード用コネクタセットを示す上面図であってシェルを取外した状態を示す図、
図4は本発明の第1の実施の形態におけるカード用トレイを示す図、
図5は本発明の第1の実施の形態におけるカード用トレイの分解図である。なお、
図1において、(a)は第1の斜視図、(b)は第2の斜視図であり、
図2において、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB−B矢視断面拡大図、(c)は(a)におけるC−C矢視断面図であり、
図4において、(a)は上面図、(b)は後面図、(c)は第1の斜視図、(d)は第2の斜視図である。
【0021】
図において、160は本実施の形態におけるカード保持部材としてのカード用トレイであり、
図3に示されるように、カード101を収容して保持した状態で、図示されない電子機器の基板91に実装されたカード用コネクタ1に挿入される。つまり、カード101は、その側面と対向する枠部材によって前記側面を囲繞(にょう)された状態でカード用トレイ160に収容され、カード用コネクタ1を介して、電子機器に装着される。なお、
図3においては、説明の都合上、カード用コネクタ1のシェル61を取外した状態が示されている。
【0022】
また、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話機、通信モデム、タブレットコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。さらに、前記基板91は、前記電子機器が備える配線基板等の基板であるが、いかなる種類の基板であってもよい。
【0023】
ところで、例えば、電子機器にカード用コネクタ1以外のカード用コネクタが実装されているような場合には、ユーザがカード用コネクタ1を使用しないこともあり得る。そして、このような場合に、ユーザは、カード101を収容していないカード用トレイ160、すなわち、空のカード用トレイ160をカード用コネクタ1に挿入した状態で保管することができる。
【0024】
前記カード101は、例えば、SIMカード、マイクロSIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード等のメモリカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、4FF(4th Form Factor)カード、いわゆる、ナノSIM(nanoSIM)カードであるものとして説明する。なお、カードの規格であるETSI TS 102 221 V11.00によると、ナノSIMカードの大きさは、前後長12.3〔mm〕、幅8.8〔mm〕、厚さ0.67〔mm〕と規定されている。
【0025】
本実施の形態において、前記カード101は、全体的に略矩(く)形の板状の形状を有し、その下面に、端子部材である図示されない電極パッドが、複数、前端及び後端に沿って並ぶように、例えば、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、電極パッドは、カード101の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。なお、下面の反対側の面、すなわち、上面には、電極パッドが配設されていない。
【0026】
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1、カード用トレイ160及びカード101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1、カード用トレイ160、カード101又はそれらの部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1、カード用トレイ160、カード101又はそれらの部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0027】
ここで、前記カード用トレイ160は、
図5に示されるように、金属から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施して一体的に形成された金属部151と、該金属部151の周囲の少なくとも一部を被覆して一体化するように、インサートモールド成形乃至オーバーモールド成形と称される成形方法によって成形された絶縁性の樹脂から成る第1部としての第1樹脂部161及び第2部としての第2樹脂部165とを含む部材である。前記第1樹脂部161及び第2樹脂部165とは、互いに独立した別個の部材である。
【0028】
前記金属部151は、金属板から成る部材であって、略矩形の第1金属枠部152及び第2金属枠部153を含んでいる。なお、前記第1金属枠部152と第2金属枠部153とは一体的に形成されている。
【0029】
そして、前記第1金属枠部152は、カード101の電極パッドが露出可能な略矩形の開口152dの四辺を囲繞する枠部材であって、幅方向に延在する互いに平行な第1金属横桟部152a及び中間金属横桟部152cと、前後方向に延在し、第1金属横桟部152aの両端と中間金属横桟部152cの両端とを連結する左右一対の第1金属縦桁部152bとを含んでいる。
【0030】
また、前記第2金属枠部153は、略矩形の開口153dの四辺を囲繞する枠部材であって、幅方向に延在する互いに平行な第2金属横桟部153a及び中間金属横桟部153cと、前後方向に延在し、第2金属横桟部153aの両端と中間金属横桟部153cの両端とを連結する左右一対の第2金属縦桁部153bとを含んでいる。なお、前記第2金属枠部153の中間金属横桟部153cは第1金属枠部152の中間金属横桟部152cと一体化されており、第2金属横桟部153aは第1金属横桟部152aと平行である。
【0031】
前記第1樹脂部161は、略矩形のカード保持枠部162と、第1連結部としての雌連結部163とを含んでいる。なお、前記カード保持枠部162と雌連結部163とは一体的に形成されている。また、インサートモールド成形乃至オーバーモールド成形と称される成形方法により、カード保持枠部162が第1金属枠部152と一体化し、雌連結部163が第2金属枠部153と一体化するように形成される。なお、第1金属枠部152及び第2金属枠部153は、必ずしもその全表面がカード保持枠部162及び雌連結部163によって覆われる必要はなく、その表面の一部がカード保持枠部162及び雌連結部163の表面に露出していてもよい。
【0032】
そして、前記カード保持枠部162は、カード101の電極パッドが露出可能な略矩形の開口としての空間部162dの四辺を囲繞してカード101の側面と対向する枠部材であって、幅方向に延在する互いに平行な第1横桟部162a及び第2横桟部162cと、前後方向に延在し、第1横桟部162aの両端と第2横桟部162cの両端とを連結する左右一対の第1縦桁部162bとを含んでいる。なお、該第1縦桁部162bの内側下端からは、庇(ひさし)部162eが空間部162dの内側に向けて延出する。前記庇部162eは、空間部162d内に収容されたカード101の下面の少なくとも一部、例えば、側端近傍等を支持するカード支持部として機能する。さらに、前記第1縦桁部162bの外側面には、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ160が保持されて固定されるための保持用凹部161aが形成されている。
【0033】
また、前記雌連結部163は、略T字状の開口163dの周囲を、一部を残して囲繞する部材であって、幅方向に延在する互いに平行な係合横桟部163a及び第2横桟部163cと、前後方向に延在し、係合横桟部163aの両端と第2横桟部163cの両端とを連結する左右一対の係合縦桁部163bとを含んでいる。なお、前記係合横桟部163aは、第2金属枠部153の第2金属横桟部153aと一体化する部分であるが、その中央部分は欠落している。したがって、前記係合横桟部163aと係合縦桁部163bとは、左右一対の略L字状の係合腕を形成する。また、前記雌連結部163の第2横桟部163cはカード保持枠部162の第2横桟部162cと一体化されている。
【0034】
前記第2樹脂部165は、本体部としての操作部166と、第2連結部としての雄連結部167とを含んでいる。なお、前記操作部166と雄連結部167とは一体的に形成されている。また、インサートモールド成形乃至オーバーモールド成形と称される成形方法により、雄連結部167が第2金属枠部153の第2金属横桟部153aと一体化するように成形される。
【0035】
そして、前記操作部166は、長軸が幅方向に延在する略楕(だ)円乃至略長円状の断面を備える柱状部材であって、周壁面を囲繞するように形成された凹溝部166aと、長軸が幅方向に延在する略楕円乃至略長円状の板状の部材であって後端に接続された後板部166bと、幅方向の一端近傍から前方に向って突出する円柱状のガイド部166cとを含んでいる。なお、該ガイド部166cには、後端が後板部166bの後面に開口し、前端がガイド部166cの前面に開口するように前後方向に直線的に延在する断面が円形の挿通孔168が形成されている。
【0036】
また、前記雄連結部167は、雌連結部163と相補的な関係を有する略T字状の板状の部材であって、前方に向けて延出する柱部167aと、該柱部167aの前端から左右両側に向って突出する一対の係合凸部167bとを含んでいる。前記柱部167aは、雌連結部163の係合横桟部163aにおける欠落した中央部分に対応する部分であって、第2金属枠部153の第2金属横桟部153aと一体化する。なお、前記柱部167aの後端は、前記操作部166の前端に一体的に接続されている。そして、前記雄連結部167は、
図2に示されるように、雌連結部163の開口163d内に収容され、これにより、第2樹脂部165が第1樹脂部161と連結される。
【0037】
さらに、前記カード用トレイ160には、第1弾性部材171と、第2弾性部材172と、第3弾性部材175と、排出操作部材181とが取付けられる。
【0038】
前記第1弾性部材171は、シリコーンゴム等の柔軟性を有する弾性材料から成る環状の部材であり、第2樹脂部165の凹溝部166aに嵌(はめ)込まれる。また、前記第2弾性部材172は、第1弾性部材171と同様に、シリコーンゴム等の柔軟性を有する弾性材料から成り、略Ω字状の帯状乃至紐(ひも)状の部材であって、
図2に示されるように、雄連結部167と雌連結部163との間の空間に嵌込まれる。なお、前記第1弾性部材171及び第2弾性部材172は、手作業によって前記凹溝部166a及び雄連結部167と雌連結部163との間の空間に嵌込まれてもよいが、複数種類の樹脂を単一の金型内に充填する2色成形乃至多色成形と称される成形方法を採用することによって、第1樹脂部161及び第2樹脂部165とともに成形され、凹溝部166a及び雄連結部167と雌連結部163との間の空間に嵌込まれた状態とされたものであってもよい。
【0039】
このように、本実施の形態におけるカード用トレイ160では、第1樹脂部161と第2樹脂部165とは、相互に分離し、第2弾性部材172を介して相互に連結されているので、該第2弾性部材172が変形可能な量に対応する量だけ、相対的に変位可能となっている。なお、第1樹脂部161の雌連結部163が第2金属枠部153と一体化し、かつ、第2樹脂部165の雄連結部167の柱部167aが第2金属枠部153の第2金属横桟部153aと一体化しているが、該第2金属横桟部153aがある程度の弾性変形が可能な部材であるから、第1樹脂部161と第2樹脂部165とは相対的に変位可能である。
【0040】
前記第3弾性部材175は、第1弾性部材171及び第2弾性部材172と同様に、シリコーンゴム等の柔軟性を有する弾性材料から成る部材であって、前記第2樹脂部165の挿通孔168と、該挿通孔168に挿入された排出操作部材181との間の空間に嵌込まれる。また、前記排出操作部材181は、カード用トレイ160をカード用コネクタ1から排出させる排出機構を作動させる補助部材として機能する部材であって、直線的な円柱状のロッド部181aと、該ロッド部181aの後端に一体的に接続された円板状の頭部181bとを含んでいる。
【0041】
そして、前記第3弾性部材175は、直線的な円筒部175aと、該円筒部175aの先端に一体的に接続されたコーン部175bと、前記円筒部175aの外周に形成された鰭(ひれ)部175dとを備える。なお、前記第3弾性部材175には、後面が円筒部175aの後端に開口し、前端がコーン部175bの前面に開口するに前後方向に延在する内径が一定で断面が円形の中央孔176が形成されている。また、前記コーン部175bは、外面が円錐(すい)面状のテーパ面であって、少なくとも後端の外径が円筒部175aの外径よりも大きく、前記後端と円筒部175aの先端との境界が段部175cとなっている。さらに、前記鰭部175dは、円筒部175aの外周を囲繞するように形成された環状の突出部であって、外径が円筒部175aの外径よりも大きい。なお、図に示される例において、鰭部175dの数は2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0042】
前記排出操作部材181は、
図2(b)に示されるように、第3弾性部材175を介して、カード用トレイ160の挿通孔168に挿通されて取付けられる。なお、該挿通孔168は、後端寄りの大径部168aと、前端寄りの小径部168bと、前記大径部168aと小径部168bとの境界に形成された段部168cとを備える。前記大径部168aの径は、排出操作部材181の頭部181bの外径よりも大きく、小径部168bの径は、排出操作部材181の頭部181bの外径よりも小さく設定されている。
【0043】
そして、第3弾性部材175の円筒部175aは、全体が挿通孔168内に収容され、鰭部175dは、中央孔176内に排出操作部材181のロッド部181aが挿入されていることにより、大径部168aの内面に押付けられた状態となっている。また、段部175cがガイド部166cの前端に当接し、これにより、第3弾性部材175のガイド部166cに対する前後方向の位置が規定され、第3弾性部材175はガイド部166cに対して、それ以上後方へ変位することが不能となっている。なお、前記第3弾性部材175は排出操作部材181の前進に伴ってガイド部166cに対して前進することができるが、排出操作部材181は頭部181bが段部168cに当接するとそれ以上前方へ変位することが不能となるので、第3弾性部材175もそれ以上前進することがない。
【0044】
なお、第3弾性部材175は柔軟性を有し、コーン部175bは大きく変形することができるので、例えば、中央孔176内に排出操作部材181のロッド部181aが挿入されている状態の第3弾性部材175を、手作業によって後板部166bの後面の開口から挿通孔168内に押込むことにより、
図2(b)に示されるような状態すること、すなわち、カード用トレイ160に第3弾性部材175と排出操作部材181とを取付けることは、可能である。
【0045】
本実施の形態において、カード用コネクタ1は、樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、導電性の金属から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有する。該シェル61は、ハウジング11及びカード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ160の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器が有する基板91に実装され、後方(
図1(a)における右下方)の挿入口18から、ハウジング11にカード用トレイ160が挿入される。具体的には、ハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内にカード用トレイ160が、その前端161fから挿入される。
【0046】
図3に示されるように、ハウジング11は、略矩形の平板状部材である底壁部11b、及び、ハウジング11におけるカード用トレイ160の挿入方向前方の端部、すなわち、前端部11fに沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。なお、ハウジング11におけるカード用トレイ160の挿入方向後方の端部は、後端部11rと称する。
【0047】
ここで、底壁部11bは、接続端子としての端子51を保持する端子保持凹部11cを備える。該端子保持凹部11cは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口であり、ハウジング11の幅方向に延在する列を成すように、並んで配設されている。図に示される例では、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、端子保持凹部11c、及び、各端子保持凹部11c内に1つずつ保持される端子51は、ハウジング11の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。前記端子51は、少なくとも一部が底壁部11bに埋込まれ、また、少なくとも接触部51aが端子保持凹部11c内に露出している。前記接触部51aは、端子51の腕部が備えるばね性によって上方に向けて付勢され、カード用コネクタ1内に保持されたカード用トレイ160内のカード101の電極パッドの各々に接触する。なお、端子51の数及び配置の形態は、カード101の電極パッドの数及び配置の形態に適合するように、適宜変更される。
【0048】
また、底壁部11bには、該底壁部11bを板厚方向に貫通するソルダーテール用開口11dが形成されている。そして、該ソルダーテール用開口11dには、各端子51の基板接続部としてのソルダーテール部51dが露出している。該ソルダーテール部51dの各々は、底壁部11bに埋込まれた図示されない連結部を介して、各端子51に連結されている。前記ソルダーテール部51dは、前記基板91に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等に、はんだ付等によって電気的に接続される。
【0049】
そして、ハウジング11は、側縁に沿って前後方向に延在する左右一対の側壁部11eを有し、各側壁部11eの内側には、カード用トレイ160を保持して固定するための保持用ばね部材75が配設されている。該保持用ばね部材75は、前後方向に延在する細長い板状のばね部材であって、その中央部付近にハウジング11の幅方向内側に向って突出する保持用凸部75aが形成されている。該保持用凸部75aは、カード用トレイ160の保持用凹部161aと係合し、これにより、
図1及び2に示されるようにカード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ160を保持して固定する。
【0050】
また、前記側壁部11eの一方の内側には、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ160を排出するためのトレイ排出機構におけるトレイ排出操作部材としてのプッシュロッド22が前後方向にスライド可能に取付けられている。該プッシュロッド22は、概略直線的な棒状又は帯板状の部材であるが、その後端部には、屈曲した操作部22aが一体的に接続されている。該操作部22aは、前記排出操作部材181の先端が当接しやすいような形状に形成されている。
【0051】
また、前記プッシュロッド22の前端部には、イジェクトレバー21の力点部21bと係合する係合部22bが形成されている。前記イジェクトレバー21は、奥壁部11aの近傍に配設されたレバー状の部材であってトレイ排出機構におけるトレイ排出梃子(てこ)部材として機能する。そのため、イジェクトレバー21は、支点部21cにおいて枢動可能に底壁部11bに取付けられている。そして、イジェクトレバー21における前記支点部21cを挟んで力点部21bと反対側の端部は、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ160の前端161fに当接して、カード用トレイ160に排出方向の力を付与する作用点部21aとして機能する。
【0052】
前記シェル61は、概略矩形の天板部62と、該天板部62の側縁から立設する側板部63とを有する。該側板部63には、複数の掛止開口63aが形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の側壁部11eの外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口63aが掛止され、これにより、シェル61がハウジング11に固定される。また、前記側板部63の下端の任意の箇所には、側板部63から立設し、シェル61の幅方向外側に向けて延出するソルダーテール部64が形成されている。該ソルダーテール部64は、前記基板91の表面に形成された固定用パッド等に、はんだ付等によって固定される。
【0053】
さらに、カード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ160を検出する検出スイッチの第1接点部材57及び第2接点部材58を有する。カード用トレイ160が挿入されていない状態においては、
図3に示されるように、第1接点部材57と第2接点部材58とは接触しておらず、トレイ検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になっている。しかし、カード用トレイ160がカード用コネクタ1に挿入されて所定位置に到達すると、カード用トレイ160の前端161fによって第1接点部材57が前端部11fの方向に向けて押されて変位し、第2接点部材58に接触し、トレイ検出スイッチが導通状態、すなわち、オン(ON)になるので、カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達したことが検出される。
【0054】
次に、前記構成のカード用トレイ160をカード用コネクタ1に挿入し、その後カード用コネクタ1から排出する動作について説明する。
【0055】
図6は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイを挿入する動作を示す斜視図、
図7は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイが挿入された状態を示す縦断面図、
図8は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタからカード用トレイを排出する動作を示す図である。なお、
図6において、(a)はカード用コネクタにカード用トレイを挿入する直前の状態を示す図、(b)はカード用コネクタにカード用トレイの前端近傍が挿入された状態を示す図であり、
図8において、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB−B矢視断面拡大図である。
【0056】
まず、カード用トレイ160を挿入する場合の動作について説明する。前述のように、カード用トレイ160は、カード101を収容していない状態であっても、カード用コネクタ1に挿入及び排出することができるが、ここでは、カード101を収容している場合についてのみ説明する。
【0057】
また、ここでは、カード用コネクタ1が実装された基板91は、電子機器の筐(きょう)体内に取付けられ、
図7に示されるように、壁部材としての筐体の外壁95には該外壁95を貫通する挿入開口95aが形成され、カード用トレイ160は、外壁95の外側(
図7における左側)から前記挿入開口95aを通して、挿入口18からカード用コネクタ1に挿入されるものとする。なお、
図7以外の図面においては、便宜上、外壁95の描画が省略されている。
【0058】
まず、ユーザは、手指等によって、カード101が収容されたカード用トレイ160をカード用コネクタ1の後方に位置する筐体の外壁95の外側から該外壁95の挿入開口95aに接近させる。なお、カード用コネクタ1と外壁95とは、互いに独立した別個の部材であるが、相対的位置関係が変化しないように、かつ、カード用コネクタ1の挿入口18と外壁95の挿入開口95aとが整列するように、相互に固定されている。
【0059】
また、
図6(a)に示されるように、カード用トレイ160は、その上面が上を向き、すなわち、シェル61の天板部62と向合い、前端161fがハウジング11の前端部11fの方を向くような姿勢となっている。そのため、カード用トレイ160内に収容されているカード101は、電極パッドが配設されている下面が開放された状態で下を向き、端子51が配設されているハウジング11の底壁部11bと向合い、その前端がハウジング11の前端部11fの方を向くような姿勢となっている。
【0060】
そして、カード用コネクタ1の挿入口18と外壁95の挿入開口95aとが整列しているので、カード用トレイ160を前記挿入開口95aに挿入して更に進行させると、前記カード用トレイ160は、
図6(b)に示されるように、前記挿入口18からハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内に挿入される。
【0061】
続いて、ユーザがカード用トレイ160をプッシュして更に押込むと、
図2及び7に示されるように、カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達する。このとき、前端161fに押され、第1接点部材57が第2接点部材58に接触し、カード検出スイッチがオンになるので、カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達したことが検出される。
【0062】
また、カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置にまで前進することにより、イジェクトレバー21の作用点部21aが、前端161fに押されて前端部11fの方向に向けて更に変位するので、イジェクトレバー21の力点部21bは、後端部11rの方向に向けて更に変位し、プッシュロッド22は、後方に最も突出した位置にまでスライドした状態となる。
【0063】
そして、カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達すると、イジェクトレバー21の作用点部21aは、ハウジング11の奥壁部11aと干渉するので、それ以上前端部11fの方向に向けて変位不能となる。したがって、カード用トレイ160も、それ以上前進不能となる。
【0064】
さらに、該カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達すると、左右一対の保持用ばね部材75の保持用凸部75aが、カード用トレイ160の第1樹脂部161における第1縦桁部162bの外側面に形成された保持用凹部161aと係合する。これにより、カード用トレイ160は、所定位置において安定的に保持されてロックされ、該所定位置から後方に向けて変位することが防止される。
【0065】
そして、カード用トレイ160内に収容されているカード101は、カード用トレイ160とともに、所定位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード101が所定位置に保持されているとき、カード用コネクタ1の端子51は、その接触部51aが、カード101の電極パッドの各々に接触して導通している。
【0066】
また、カード用トレイ160の挿入が完了し、該カード用トレイ160がカード用コネクタ1の所定位置に到達すると、
図7に示されるように、外壁95の挿入開口95aの内周面に第1弾性部材171が押付けられ、前記挿入開口95aの内周面とカード用トレイ160の第2樹脂部165における操作部166の周壁面との間の間隙を第1弾性部材171が閉鎖する。これにより、外部からの水、埃等の異物の筐体内への侵入が防止される。さらに、カード用トレイ160の挿通孔168の内周面と排出操作部材181のロッド部181aの周壁面との間の間隙が第3弾性部材175によって閉鎖されているので、外部からの異物が挿通孔168を通って筐体内へ侵入することも防止される。
【0067】
なお、ここでは、カード用コネクタ1の挿入口18と外壁95の挿入開口95aとが整列しているものとして説明したが、電子機器の筐体への基板91の取付誤差、カード用コネクタ1の基板91への実装誤差、挿入開口95aの寸法誤差、基板91、外壁95等各種部材の変形等の各種の要因により、前記挿入口18と挿入開口95aとの間に位置ずれが生じている場合、すなわち、挿入口18と挿入開口95aとが整列していない場合が起こり得る。
【0068】
しかしながら、本実施の形態におけるカード用トレイ160は第1弾性部材171及び第2弾性部材172を備え、前記第1弾性部材171が第2樹脂部165の操作部166に取付けられ、前記第2弾性部材172が第1樹脂部161の雌連結部163と第2樹脂部165の雄連結部167との間に介在するので、挿入口18と挿入開口95aとが整列していない場合であっても、前記カード用トレイ160を、前記挿入開口95aを通して、挿入口18からカード用コネクタ1に挿入することができる。
【0069】
具体的には、
図7に示されるように、挿入開口95aに挿入される部分である第2樹脂部165の操作部166の周壁面と前記挿入開口95aの内周面との間に第1弾性部材171が介在するので、挿入口18と挿入開口95aとの不整列に起因して挿入開口95aと操作部166との位置関係が正規の位置関係からずれてしまっても、かかる位置ずれは、第1弾性部材171の変形によって吸収される。また、挿入口18に挿入される部分である第1樹脂部161と挿入開口95aに挿入される部分である第2樹脂部165との間に第2弾性部材172が介在するので、挿入口18と挿入開口95aとの不整列に起因して第1樹脂部161と第2樹脂部165との位置関係が正規の位置関係からずれてしまっても、かかる位置ずれは、第2弾性部材172の変形によって吸収される。
【0070】
つまり、挿入口18と挿入開口95aとの不整列に起因する各部の位置ずれは、第1弾性部材171及び第2弾性部材172という複数の弾性部材が複数箇所で変形することによって複数箇所で吸収される。この場合、各弾性部材の変形量は、他の弾性部材が変形することによって減殺されるので、比較的少なくなり、変形の限界を超えることがない。したがって、前記カード用トレイ160は、挿入口18と挿入開口95aとの不整列の程度が大きくても、かかる不整列に起因する各部の位置ずれを、各弾性部材が少しずつ変形することによって吸収することができ、その結果、挿入開口95aを通して、挿入口18からカード用コネクタ1に容易に、かつ、確実に挿入される。
【0071】
また、挿入口18と挿入開口95aとが不整列の場合でも、第1弾性部材171の変形量は、第2弾性部材172の変形によって減殺され、比較的少ないので、挿入開口95aの内周面と操作部166の周壁面との間の間隙は、第1弾性部材171によって確実に閉鎖される。したがって、外部からの水、埃等の異物の筐体内への侵入が防止される。
【0072】
次に、カード用トレイ160をカード用コネクタ1から排出させる動作について説明する。
【0073】
本実施の形態においては、ユーザは、排出操作部材181の頭部181bを押圧操作するために、図示されない補助部材を使用するものとする。該補助部材は、ピン、ロッド等の細長い棒状の部材であればいかなる部材であってもよいが、ここでは、金属から成る円柱状の直線的な棒状部材であるものとして説明する。
【0074】
まず、ユーザは、手指等によって補助部材を操作し、該補助部材を、カード用トレイ160の後方から、後板部166bに形成された挿通孔168に挿入し、該挿通孔168に収容された排出操作部材181の頭部181bに当接させる。
【0075】
続いて、ユーザが排出操作部材181を前方に向けて押すと、該排出操作部材181のロッド部181aの中心軸上、すなわち、ロッド部181aの進路上に、プッシュロッド22の操作部22aが位置するので、前記ロッド部181aの先端は操作部22aに当接する。
【0076】
そして、ユーザが排出操作部材181をプッシュして更に押込むと、プッシュロッド22はその最も前進可能な位置に到達し、イジェクトレバー21の操作部22aは、
図8に示されるような位置にまで変位する。この際、頭部181bが挿通孔168の段部168cに当接するので、排出操作部材181もその最も前進可能な位置に到達する。
【0077】
これにより、イジェクトレバー21の作用点部21aに前端161fが押されて、カード用トレイ160は、所定位置から後方に向けて変位する。この際、カード用トレイ160の第1樹脂部161における第1縦桁部162bの外側面に形成された保持用凹部161aと保持用ばね部材75の保持用凸部75aとの係合が解除されるので、排出操作部材181及びプッシュロッド22は、カード用トレイ160及びイジェクトレバー21を介して、弾性的に変形させられる保持用ばね部材75が発揮するばね力を主因とする抵抗を受けるが、該抵抗がユーザの手指等が発揮する押圧力よりも小さいので、前記抵抗に抗して前方に移動する。
【0078】
これにより、カード用トレイ160の後板部166bは、外壁95から十分に大きく後方へ突出した状態となる。したがって、ユーザは、手指等によって後板部166bを把持することにより、カード用トレイ160をカード用コネクタ1から引出して排出させ、さらに、挿入開口95aから抜出すことができる。
【0079】
なお、本実施の形態においては、カード用トレイ160が金属部151を含む場合について説明したが、該金属部151は必ずしも含まれる必要はなく、カード用トレイ160の強度が十分に高い場合には、前記金属部151を省略することができる。
【0080】
このように、本実施の形態において、カード用トレイ160は、電極パッドを備えるカード101を保持可能、かつ、カード用コネクタ1に挿入可能である。そして、カード用トレイ160は、カード101の側面と対向するカード保持枠部162と、雌連結部163とを含む第1樹脂部161と、操作部166と、雌連結部163と連結される雄連結部167とを含む第2樹脂部165と、操作部166の外周に取付けられる第1弾性部材171と、雌連結部163と雄連結部167との間に取付けられる第2弾性部材172とを備える。
【0081】
これにより、カード用トレイ160は、カード用コネクタ1への挿入及び排出を容易に、かつ、確実に行うことができるとともに、外部から水、埃等の異物が侵入することを確実に防止することができる。したがって、高い信頼性を得ることができる。
【0082】
また、カード用トレイ160は、外壁95の挿入開口95aを通してカード用コネクタ1に挿入可能であり、操作部166は、第1弾性部材171が取付けられた部分が挿入開口95a内に挿入可能であり、当該部分が挿入開口95a内に挿入されると、第1弾性部材171は、当該部分と挿入開口95aとの間に介在する。したがって、挿入開口95aと操作部166の当該部分との間の間隙が第1弾性部材171によって閉鎖されるので、外部からの水、埃等の異物の侵入が防止される。また、カード用コネクタ1と挿入開口95aとが完全に整列していなくても、第1弾性部材171及び第2弾性部材172が変形することによって位置ずれが吸収されるので、カード用トレイ160は、挿入開口95aを通して、カード用コネクタ1に容易に、かつ、確実に挿入される。
【0083】
さらに、雌連結部163と雄連結部167とは、直接的には連結されず、第2弾性部材172を介して連結される。したがって、カード用コネクタ1と挿入開口95aとの不整列に起因する各部の位置ずれは、第1弾性部材171及び第2弾性部材172という複数の弾性部材が複数箇所で変形することによって複数箇所で吸収される。しかも、各弾性部材の変形量は、他の弾性部材が変形することによって減殺されるので、変形の限界のずれ許容が大きい。したがって、カード用コネクタ1と挿入開口95aとの不整列が大きくても、カード用トレイ160は、挿入開口95aを通して、カード用コネクタ1に容易に、かつ、確実に挿入されるとともに、第1弾性部材171の変形量が小さいので、外部からの異物の侵入を確実に防止することができる。
【0084】
さらに、操作部166には、カード用トレイ160をカード用コネクタ1から排出させる排出機構を作動させる排出操作部材181が、第3弾性部材175を介して、スライド可能に取付けられる。そして、操作部166は、排出操作部材181が挿入される挿通孔168を含み、第3弾性部材175は、排出操作部材181と挿通孔168との間に介在する。したがって、外部からの異物が挿通孔168から侵入することを確実に防止することができる。
【0085】
さらに、カード用トレイ160は、金属から成る板材から一体的に形成された金属部151を更に備え、第1樹脂部161及び第2樹脂部165は、樹脂から成り、金属部151の周囲の少なくとも一部を被覆して一体化するように形成されるる。これにより、カード用トレイ160の強度が向上する。
【0086】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0087】
図9は本発明の第2の実施の形態におけるカード用トレイの統合弾性部材を示す図である。なお、図において、(a)は上面図、(b)は第1の斜視図、(c)は第2の斜視図である。
【0088】
前記第1の実施の形態においては、第1弾性部材171と第2弾性部材172とが、それぞれ独立した別個の部材として形成されているのに対し、本実施の形態においては、第1弾性部材171と第2弾性部材172とが結合され、一つの統合弾性部材170として一体的に形成されている点で、本実施の形態は、前記第1の実施の形態と相違する。
【0089】
具体的には、略Ω字状の帯状乃至紐状の部材である第2弾性部材172の両端が、第1結合部173a及び第2結合部173bを介して、楕円乃至長円状の環状部材である第1弾性部材171に結合されている。なお、第1結合部173aは、楕円乃至長円状である第1弾性部材171の長軸の一端に相当する部分に結合されているのに対し、第2結合部173bは前記長軸の他端よりも中心寄りの部分に結合されている。これにより、第1弾性部材171の楕円乃至長円状の穴は、細長い第1部171aと短い第2部171bとに区分される。そして、該第2部171bには、第2樹脂部165のガイド部166cが挿通される。
【0090】
なお、本実施の形態における第1弾性部材171及び第2弾性部材172のその他の点の構成、材質、作用、成形方法、カード用トレイ160への取付方法等については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。また、本実施の形態におけるカード101、カード用トレイ160及びカード用コネクタ1の構成及び動作についても、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。さらに、本実施の形態におけるカード用トレイ160をカード用コネクタ1に挿入し、その後カード用コネクタ1から排出する動作についても、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。さらに、効果の点についても、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。