(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395566
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】傾倒作動装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/38 20060101AFI20180913BHJP
H01F 7/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B65G47/38
H01F7/14 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-229547(P2014-229547)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-94261(P2016-94261A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】松永 光一
(72)【発明者】
【氏名】村田 究
(72)【発明者】
【氏名】小山 真太郎
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−118723(JP,A)
【文献】
特開2000−331824(JP,A)
【文献】
特開2009−018902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/34−47/51
B65G 17/00−17/48
B07C 1/00−99/00
H01F 7/06− 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って進行する台車に設けられたトレーを傾倒させ、前記トレーに保持された搬送物品を前記搬送路の側方に送り出す傾倒作動装置であって、
所定の軸を中心として回動可能に設けられ、前記トレーを傾倒させるための作動部材と、前記作動部材の回動領域を第1位置および第2位置の間の領域に制限する回動規制部と、前記作動部材を駆動するロータリソレノイドとを備え、
前記ロータリソレノイドは、前記作動部材に連結されるマグネットロータと、前記マグネットロータに対して軸方向に対向配置されるコイルを有したステータとから構成され、
前記ロータリソレノイドは、前記コイルの正通電時に、前記作動部材によって前記トレーを傾倒させる第1位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるとともに、前記コイルの逆通電時に、前記作動部材を退避させる第2位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じ、前記コイルの非通電時において、前記第1位置に前記マグネットロータを位置させた状態で、前記第2位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるように構成されていることを特徴とする傾倒作動装置。
【請求項2】
前記ステータは、前記コイル内に挿入される芯部材を備え、
前記マグネットロータに対向する前記芯部材のロータ対向面は、前記第1位置に前記マグネットロータを位置させた状態で、前記軸方向において前記マグネットロータに対向しない非対向部を有していることを特徴とする請求項1に記載の傾倒作動装置。
【請求項3】
前記作動部材の回動領域には、前記第1位置寄りの、前記作動部材によって前記トレーを傾倒させる傾倒領域と、前記第2位置寄りの、前記作動部材によって前記トレーを傾倒させない退避領域とが含まれ、
前記ロータリソレノイドは、前記コイルの非通電時において、前記マグネットロータを回動させる磁力によるトルクを生じない中立位置が、前記退避領域内に形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の傾倒作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾倒作動装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送物品を搬送するとともに搬送物品の仕分けを行う搬送物品仕分け装置に組み込まれ、搬送路に沿って進行する台車に設けられたトレーを傾倒させ、トレーに保持された搬送物品Wを搬送路の側方に設けたシュートに送り出す傾倒作動装置が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載の傾倒作動装置は、先端にローラが取り付けられた揺動レバーを回動させ、トレーを支持するトレー支持体を前記ローラによって押し上げることにより、トレーを傾倒させるように構成され、前記揺動レバーは、揺動レバーの他端に設けられた平歯車に噛み合うラックギアを有した直動アクチュエータによって回動駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−18902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の傾倒作動装置のように、上述した直動アクチュエータを電動式のアクチュエータとして構成した場合、トレーを傾倒させる位置に揺動レバーを移動させた状態で停電が発生すると、搬送路上を走行する台車については惰性で走行を続けてしまうのに対して、揺動レバーについてはトレーを傾倒させる位置で停止してしまうため、送り出す必要のない搬送物品を含めた全ての搬送物品がシュートに送り出されてしまうという問題がある。
また、アクチュエータの電動化を考えた場合、ロータリソレノイドを用いることも考えられるが、一般的なロータリソレノイドはラジアルギャップ型が多く、このようなラジアルギャップ型のロータリソレノイドは軸方向に大きくなる。そのため、トレーがアクチュエータ側にも傾倒する場合には、設置スペースの関係で、ラジアルギャップ型のロータリソレノイドを使用することが難しい場合があるという問題があった。
【0006】
また、上述した直動アクチュエータをエア駆動式のアクチュエータとして構成することも考えられるが、この場合、コンプレッサを必要とする等、装置構成が大掛かりなものになり、装置コストや設置工数が増加する他、不使用時における待機電力を必要とするという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、装置コストが低く、停電時発生時における誤作動を確実に防止する傾倒作動装
置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の傾倒作動装置は、搬送路に沿って進行する台車に設けられたトレーを傾倒させ、前記トレーに保持された搬送物品を前記搬送路の側方に送り出す傾倒作動装置であって、所定の軸を中心として回動可能に設けられ、前記トレーを傾倒させるための作動部材と、前記作動部材の回動領域を第1位置および第2位置の間の領域に制限する回動規制部と、前記作動部材を駆動するロータリソレノイドとを備え、前記ロータリソレノイドは、前記作動部材に連結されるマグネットロータと、前記マグネットロータに対して軸方向に対向配置されるコイルを有したステータとから構成され、前記ロータリソレノイドは、前記コイルの正通電時に、前記作動部材によって前記トレーを傾倒させる第1位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるとともに、前記コイルの逆通電時に、前記作動部材を退避させる第2位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じ、前記コイルの非通電時において、前記第1位置に前記マグネットロータを位置させた状態で、前記第2位置側に前記マグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるように構成されていることにより、前記課題を解決するものである
。
なお、本明細書内における「正通電」とは、通電のプラス・マイナスを意味するものではなく、第1位置側にマグネットロータを回動させるようにコイルに通電を行うことを意味し、また、「逆通電」とは、第2位置側にマグネットロータを回動させるようにコイルに通電を行うことを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、作動部材を駆動するロータリソレノイドが、コイルの正通電時に、作動部材によってトレーを傾倒させる第1位置側にマグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるとともに、コイルの逆通電時に、作動部材を退避させる第2位置側にマグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じ、コイルの非通電時において、第1位置にマグネットロータを位置させた状態で、第2位置側にマグネットロータを回動させるトルクを磁力によって生じるように構成されていることにより、コイルへの通電を制御することによって、作動部材を第1位置および第2位置に良好に移動させることができるばかりでなく、コイルの非通電時において、トレーを傾倒させない第2位置側に作動部材を移動させることが可能であるため、停電が発生した場合でも、搬送物品の誤仕分けが発生することを確実に防止することができる。
【0010】
また、上述したような停電発生時における誤仕分けを抑制するために、第1位置にマグネットロータを位置させた状態で第2位置側にマグネットロータを回動させるトルクを付与するバネ等の付勢部材を設置することも考えられるが、このような付勢部材は、通常使用時においても、マグネットロータの動作に負荷を与えてしまうため、ロータリソレノイドおよび作動部材の応答性が遅くなってしまう。
これに対して、本請求項1に係る発明では、コイルの非通電時に第2位置側に向けて作動部材を磁力によって移動させるため、通常使用時におけるロータリソレノイドおよび作動部材の応答性に悪影響を与えることを回避することができる。
【0011】
また、マグネットロータとステータとを軸方向に対向させる構造を採用することにより、半径方向にマグネットロータとステータとを対向させるラジアルギャップ型でロータリソレノイドを構成した場合と比較して、軸方向にマグネットロータおよびステータの厚みを薄くした場合であっても、マグネットロータとステータとの対向面積を大きく確保し、マグネットロータのトルクを充分に得ることが可能であるため、傾倒作動装置を軸方向に小型化することができる。
【0012】
本請求項2に係る発明によれば、コイル内に挿入される芯部材のロータ対向面に、第1位置にマグネットロータを位置させた状態で軸方向においてマグネットロータに対向しない非対向部を形成することにより、簡単な構成で、コイルの非通電時において第1位置に位置するマグネットロータに、第2位置側に向けた充分な大きさのトルクを付与することができる。
本請求項3に係る発明によれば、ロータリソレノイドが、コイルの非通電時においてマグネットロータを回動させる磁力によるトルクを生じない中立位置が退避領域内に形成されるように構成されていることにより、停電が発生した場合でも、作動部材によってトレーを傾倒させることのない退避領域に作動部材を確実に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る傾倒作動装置の使用態様を示す平面図。
【
図4】作動部材を第1位置に移動させた状態を示す説明図。
【
図5】作動部材を第2位置に移動させた状態を示す説明図。
【
図6】作動部材を中立位置に移動させた状態を示す説明図。
【
図7】コイルの正通電時における、マグネットロータの回動位置とマグネットロータに作用するトルクとの関係を示すグラフ。
【
図8】コイルの非通電時における、マグネットロータの回動位置とマグネットロータに作用するトルクとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態である傾倒作動装置10について、図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、傾倒作動装置10は、搬送物品Wを搬送するとともに搬送物品Wの仕分けを行う搬送物品仕分け装置に組み込まれるものであり、
図1に示すように、搬送路Aに沿って進行する台車Cに傾倒可能に設けられた作動対象としてのトレーTを傾倒させ、トレーTに保持された搬送物品Wを搬送路Aの側方に設けたシュート(図示しない)に送り出すものである。
【0016】
傾倒作動装置10は、
図2に示すように、所定の軸を中心として回動可能に設けられた作動部材20と、作動部材20の回動領域Rを制限する回動規制部30と、各構成部品を支持・収容するケース40と、作動部材20を駆動するロータリソレノイド50とを備えている。
【0017】
作動部材20は、
図1〜
図3に示すように、ベアリング41を介してケース40に回転可能に取り付けられた回転軸部材80に固定されたアーム21と、アーム21の先端に回転可能に取り付けられ、トレー支持体Sを押し上げるためのローラ22とから構成されている。
【0018】
回動規制部30は、
図2や
図4〜
図6に示すように、作動部材20によってトレーTを傾倒させる第1位置P1と、作動部材20によってトレーTを傾倒させない位置である第2位置P2との間の領域に、作動部材20の回動領域Rを制限するものであり、具体的には、第1位置P1側に配置された第1ストッパ31と、第2位置P2側に配置された第2ストッパ32とから構成されている。
【0019】
ロータリソレノイド50は、
図2に示すように、回動可能に配置されたマグネットロータ60と、マグネットロータ60に対して軸方向に対向配置されたステータ70とから構成されている。
【0020】
マグネットロータ60は、
図2〜
図6に示すように、一対の永久磁石61から構成され、軸方向に見た場合に、八角形の全体形状を有している。マグネットロータ60を構成する一方の永久磁石61は、N極をステータ70側に対向させ、他方の永久磁石61は、S極をステータ70側に対向させた状態で配置されている。マグネットロータ60は、
図3に示すように、回転軸部材80を介して作動部材20に連結され、ケース40によって回動可能に支持されている。マグネットロータ60の出力軸として機能する回転軸部材80は、
図3に示すように、マグネットロータ60からステータ70とは反対側に向けて延びており、これにより、ステータ構造の設計自由度を確保することができ、傾倒作動装置10の性能の向上および小型化を良好に図ることができる。
【0021】
ステータ70は、
図2や
図3に示すように、ケース40に取り付けられたヨーク73と、ヨーク73から軸方向に突出するように取り付けられた上下の芯部材72と、各芯部材72の周囲に巻かれたコイル71とから構成されている。コイル71、芯部材72、およびヨーク73は、鉄等の磁性体材料から形成されている。また、ヨーク73は、傾倒作動装置10の筐体の一部としても機能する。なお、
図2においては、コイル71の図示を省略している。
【0022】
コイル71の正通電時には、ロータリソレノイド50は、
図4や
図7に示すように、第1位置P1側にマグネットロータ60を回動させるトルクを磁力によって生じ、これにより、マグネットロータ60に連結された作動部材20を第1位置P1側に移動させ、作動部材20によってトレーTを傾倒させる。
【0023】
また、反対に、コイル71の逆通電時には、ロータリソレノイド50は、第2位置P2側にマグネットロータ60を回動させるトルクを磁力によって生じ、これにより、
図5に示すように、トレーTを傾倒させない位置である第2位置P2側に作動部材20を移動させる。
【0024】
また、本実施形態のロータリソレノイド50では、
図6や
図8に示すように、コイル71の非通電時に、マグネットロータ60を回動させる磁力によるトルクを生じない中立位置P3が、作動部材20の回動領域R内に形成されており、これにより、コイル71の非通電時には、マグネットロータ60が中立位置P3に移動する。
そして、作動部材20の回動領域Rには、第1位置P1寄りの、作動部材20によってトレーTを傾倒させる傾倒領域R1と、第2位置P2寄りの、作動部材20によってトレーTを傾倒させない退避領域R2とが含まれ、中立位置P3は退避領域R2内に位置するため、中立位置P3に移動した作動部材20はトレーTを傾倒させることはない。
【0025】
また、本実施形態では、マグネットロータ60に対向する芯部材72のロータ対向面72aには、
図4に示すように、第1位置P1にマグネットロータ60を位置させた状態で、軸方向においてマグネットロータ60に対向しない非対向部72bが形成されている。
この非対向部72bを形成することにより、
図8に示すように、第1位置P1にマグネットロータ60を位置させた状態で、コイル71への通電が止まった場合、第2位置P2側にマグネットロータ60を回動させるトルクを磁力によって生じさせ、コイル71の非通電時に、作動部材20を中立位置P3に移動させることができ、また、マグネットロータ60に作用するトルクを大きくすることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、マグネットロータ60を構成する各永久磁石61の一辺を斜めに傾斜させることにより、マグネットロータ60の軸方向に見た場合の全体形状を調整し、上述した非対向部72bを形成したが、非対向部72bを形成する方法については上記に限定されず、例えば、各永久磁石61の一辺の高さ(回動軸からの距離)を低くしたり、上下の芯部材72のロータ対向面72aの配置を水平方向にずらす等、如何なるものでもよい。
【0027】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、マグネットロータを2つの永久磁石から構成したが、永久磁石の個数や形状や配置等は、上記に限定されない。
また、ステータの具体的構成についても、マグネットロータを磁力によって良好に回動させるものであれば如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、第1位置において、作動部材がトレー支持体を介してトレーを押し上げることでトレーを傾倒させるものとして説明したが、作動部材の具体的態様は、第1位置に移動することでトレーを傾倒させるものであれば如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、作動装置による作動対象がトレーであるものとして説明したが、作動対象の具体的態様は、トレーに限定されず、ロータリソレノイドによって作動部材を回動させた際に、回動する作動部材によって作動されるものであれば如何なるものでもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 ・・・ 傾倒作動装置
20 ・・・ 作動部材
21 ・・・ アーム
22 ・・・ ローラ
30 ・・・ 回動規制部
31 ・・・ 第1ストッパ
32 ・・・ 第2ストッパ
40 ・・・ ケース
41 ・・・ ベアリング
50 ・・・ ロータリソレノイド
60 ・・・ マグネットロータ
61 ・・・ 永久磁石
70 ・・・ ステータ
71 ・・・ コイル
72 ・・・ 芯部材
72a ・・・ ロータ対向面
72b ・・・ 非対向部
73 ・・・ ヨーク
80 ・・・ 回転軸部材
P1 ・・・ 第1位置
P2 ・・・ 第2位置
P3 ・・・ 中立位置
R ・・・ 回動領域
R1 ・・・ 傾倒領域
R2 ・・・ 退避領域
A ・・・ 搬送路
C ・・・ 台車
T ・・・ トレー(作動対象)
S ・・・ トレー支持体
W ・・・ 搬送物品