(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395589
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】靴用ヒール
(51)【国際特許分類】
A43B 21/47 20060101AFI20180913BHJP
A43B 21/42 20060101ALI20180913BHJP
A43B 21/52 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
A43B21/47
A43B21/42
A43B21/52
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-254676(P2014-254676)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112271(P2016-112271A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514321703
【氏名又は名称】株式会社ニューワールドカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】亀山 和直
(72)【発明者】
【氏名】小野 智広
(72)【発明者】
【氏名】溝口 一輝
【審査官】
一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−215914(JP,A)
【文献】
特開昭57−89801(JP,A)
【文献】
実開昭61−144804(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0298685(US,A1)
【文献】
米国特許第6021586(US,A)
【文献】
実開昭63−13008(JP,U)
【文献】
特開平8−66204(JP,A)
【文献】
特開平7−204007(JP,A)
【文献】
特開2015−109921(JP,A)
【文献】
実開昭58−196604(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 21/47
A43B 21/42
A43B 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底部に設置されるヒール基部と、
前記ヒール基部の下面に設置される接地部と、
を備え、
前記ヒール基部および接地部のいずれか一方に嵌合凹部が設けられ、いずれか他方に前記嵌合凹部に挿入されることにより、ぴったりと嵌合される嵌合凸部が設けられ、
前記嵌合凹部と嵌合凸部をはめ込むことにより、前記ヒール基部と接地部は一体化する構造の靴用ヒールであって、
前記嵌合凹部と嵌合凸部とが隙間なく嵌り込むことで、当該靴用ヒールは歩行により加わる前後、左右及び垂直圧縮方向の力を前記ヒール基部と接地部のぴったりとした接触面全体で負担し、
前記ヒール基部と接地部とを着脱自在な着脱手段を備え、
前記着脱手段は、前記ヒール基部と接地部のうち、前記嵌合凸部が形成されたいずれか一方に、はめ込む方向の側方へ進退可能に突出する固定ピンが設置され、前記嵌合凹部が設けられたいずれか他方に嵌合された際にその固定ピン先端と対応する位置に設けられた、該固定ピンがガタツキなく挿入される固定孔と、該固定孔開口の反対側外側面より押圧することにより、前記固定孔内に挿入された固定ピン頭部を少なくとも嵌合凹部壁面面一にまで押し出し可能な解除ピンと、を備え、
前記嵌合凹部の開口部は、前記固定ピンと対応する位置にテーパを有していることを特徴とする靴用ヒール。
【請求項2】
請求項1の靴用ヒールであって、
前記嵌合凹部は略鉛直方向へ深さを有しており、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部を略鉛直方向へ挿入することにより、前記ヒール基部と接地部が一体化することを特徴とする靴用ヒール。
【請求項3】
請求項1の靴用ヒールであって、
前記嵌合凸部は、ヒール基部と接地部が対向する面のいずれか一方から突出し、靴用ヒール後方に向かって略水平方向への奥行きを有しており、突出先端部が拡幅しているT字型の形状であって、
前記嵌合凹部は、ヒール基部または接地部のいずれか他方に設けられ、前記嵌合凸部を略水平方向に挿入可能な孔穴であって、
前記嵌合凸部を前記嵌合凹部に挿入することにより、前記ヒール基部と接地部が一体化することを特徴とする靴用ヒール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴用ヒール、特にそのヒール交換機能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
靴用のヒールは摩耗、破損を生じやすく、また女性用のハイヒール靴はそのヒール部分の形態、装飾など、ファッション性にも大きな配慮が払われる。このため、靴のヒール部分は、経時、あるいは靴の使用場面によってその交換が頻繁に要求される部分であり、従来より各種のヒール交換機構が考えられている。
例えば先行特許文献1にはハイヒールとローヒールの切替機構が開示されており、先行特許文献2にはヒールの交換機構が開示されており、先行特許文献3にはヒールの部分交換機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4840949号
【特許文献2】特開平10−66607
【特許文献3】特開2005−237615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のヒール交換、あるいは切替機構では、歩行時に躓いた場合などに接合部分に応力が集中し、ヒールが外れてしまうことがあり、安全上の観点からも改善が望まれていた。
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は容易にヒール接地部の交換が可能で、且つ歩行時に不意に外れることのない靴用ヒールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明にかかる靴用ヒールは、
靴底部に設置されるヒール基部と、
前記ヒール基部の下面に設置される接地部と、
を備え、
前記ヒール基部および接地部のいずれか一方に嵌合凹部を設けられ、いずれか他方に前記嵌合凹部に挿入されることにより、ぴったりと嵌合される嵌合凸部を設けられ、
前記嵌合凹部と嵌合凸部をはめ込むことにより、前記ヒール基部と接地部が一体化する構造の靴用ヒールであって、
前記ヒール基部と接地部とを着脱自在な着脱手段を備え、
前記着脱手段は、前記ヒール基部と接地部のいずれか一方に、はめ込む方向の側方へ進退可能に突出する固定ピンが設置され、いずれか他方に嵌合された際にその固定ピン先端と対応する位置に設けられた、該固定ピンがガタツキなく挿入される固定孔と、該固定孔開口の反対側外側面より押圧することにより、前記固定孔内に挿入された固定ピン頭部を少なくとも嵌合凹部壁面面一にまで押し出し可能な解除ピンと、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明にかかる靴用ヒールは、
前記嵌合凹部は略鉛直方向へ深さを有しており、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部を略鉛直方向へ挿入することにより、前記ヒール基部と接地部が一体化することを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる靴用ヒールは、
前記嵌合凸部は、ヒール基部と接地部が対向する面のいずれか一方から突出し、靴用ヒール後方に向かって略水平方向への奥行きを有しており、突出先端部が拡幅しているT字型の形状であって、
前記嵌合凹部は、ヒール基部または接地部のいずれか他方に設けられ、前記嵌合凸部を略水平方向に挿入可能な孔穴であって、
前記嵌合凸部を前記嵌合凹部に挿入することにより、前記ヒール基部と接地部が一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる靴用ヒールによれば、ヒール基部と、該ヒール基部下面に取り付けられる接地部が、いずれかに設けられた嵌合凸部及び他方に設けられた嵌合凹部のはめ込みにより取り付けられるため、ヒールにかかる前後、左右及び圧縮方向の力は嵌合凸部と嵌合凹部の接触面を含めたヒール基部と接地部の接触面全体で分散して支えられる。
そして、固定ピンと固定孔による固定は、ヒール基部から接地部が抜け出ることを防止するのみであり、応力の集中が生じず、固定部破損による事故も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかる靴用ヒールが適用された婦人用ハイヒール靴の説明図である。
【
図2】本発明の第一実施形態にかかる靴用ヒールの構造説明図である。
【
図3】本発明の第一実施形態にかかる靴用ヒールの、基部への接地部の取付過程の説明図である。
【
図4】本発明の第一実施形態にかかる靴用ヒールの、基部への接地部取付状態の説明図である。
【
図5】本発明の第一実施形態にかかる靴用ヒールの、基部から接地部の取外し過程の説明図である。
【
図6】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールが適用された紳士用靴の説明図である。
【
図7】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの基部と接地部の概略図である。
【
図8】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの、ヒール基部と接地部の嵌合図である。
【
図9】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの、構造説明図である。
【
図10】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの基部への接地部取付過程の説明図である。
【
図11】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの基部への接地部取付状態の説明図である。
【
図12】本発明の第二実施形態にかかる靴用ヒールの、基部から接地部の取外し過程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。
<第一実施形態>
図1は本発明の靴用ヒール10が適用された女性用ハイヒール靴12を示している。
同図に示すように、靴用ヒール10は、靴12の底面に設置されたヒール基部14と、該ヒール基部14下面に設置され、その下方に延伸する接地部16と、を備える。
図2に本発明において特徴的な靴用ヒール10の部分断面図が示されている。
同図に示すように、ヒール基部14には、その底面(接地部16との接合部)に角柱状嵌合凹部18が設けられている。該嵌合凹部18の図中左方(靴12の前方)壁面には固定孔20が設けられている。
該固定孔20の奥(図中左方)は開口径が拡大し、リリースボタン22と、該リリースボタン22の解除ピン24を狭径固定孔20から退避させる方向へ付勢するバネ26と、を備える。
また、前記接地部16は、その頂部に嵌合凸部30を備え、該嵌合凸部30は前記嵌合凹部18にぴったりと嵌る形状を有している。そして、該嵌合凸部30は、先端に突出自在な固定ピン32を備えたねじ込み部材34を有し、嵌合凸部30が嵌合凹部18に嵌合された状態で該固定ピン32は前記固定孔20に対応する。
本実施形態にかかる靴用ヒール10は概略以上のように構成され、以下にヒール基部14への接地部16の取付状態と取外し状態を説明する。
前記
図2に示した、ヒール基部14と接地部16を分離した状態より、接地部16の嵌合凸部30をヒール基部14の嵌合凹部18に挿入する(
図3)。この際、嵌合凹部18の開口部には、固定ピン32に対応する位置にテーパ36が設けられており、固定ピン32はテーパ36に従ってねじ込み部材34内へ後退し、挿入の妨げになることはない。
さらに嵌合凸部30を嵌合凹部18へ押し込むと、
図4に示すように嵌合凸部30は嵌合凹部18にぴったりと嵌まり込み、この状態で固定ピン32は固定孔20に位置し、ねじ込み部材34内の付勢バネにより、固定孔20内へ突出する。したがって、ヒール基部14より接地部16が抜け落ちてしまうことはない。
また、嵌合凸部30と嵌合凹部18とはほぼ隙間なく嵌まり込むため、気密状態となり嵌合凸部30を押し込むことが困難となる場合もある。このため、本実施形態においては、嵌合凹部18の頂部に空気抜け孔38を設けている。なお、本実施形態では空気抜け孔38を靴底面方向に設けているが、側方に抜けるようにしてもよい。
本実施形態において、歩行時には接地部16に前後、左右及び垂直圧縮方向へ大きな力が加わるが、これらは基本的に嵌合凸部30、嵌合凹部18を含めた、ヒール基部14と接地部16のぴったりとした接触面全体で負担し、嵌合凸部30ないし嵌合凹部18に破損を生じない限り、前後、左右及び垂直圧縮方向の力が固定ピン32に集中することはなく、安定した歩行が可能である。嵌合凸部30を嵌合凹部18より引き抜く方向に力が加わった場合にのみピン32に力がかかるが、本発明者らの試験によっても、実際の歩行時にこのような力が加わることはなく、極めて安定した歩行が可能である。
次に、接地部16を交換する際には、
図5に示すようにリリースボタン22をバネ26に抗して押し込む。そうすると、該リリースボタン22先端の解除ピン24は固定孔20内に押し込まれ、固定ピン32を固定孔20より押し出す。この状態で接地部16を引き出せば、容易に接地部16の取外しを行うことができる。このように、リリースボタン22の押し込みと接地部16の引き抜きという、通常の歩行状態では同時に起こりえない作業を同時に行うことによってのみ、接地部16の取外しが可能となる。
なお、前記実施形態においては、嵌合凹部を基部に、また嵌合凸部を接地部に設けたが、ヒール基部に嵌合凸部を、また接地部に嵌合凹部を設けてもよい。
また、接地部は、ヒール基部に対して設置方向に設けられる部材という意味であり、接地面には他の部材をさらに設けてもよい。
【0011】
以上が本発明の女性用ハイヒール靴であって、以下、本発明の第二実施形態として男性用靴について説明する。
<第二実施形態>
図6は本発明の靴用ヒール110が適用された男性用靴112を示している。
同図に示すように、靴用ヒール110は、靴112の底面に設置されたヒール基部114と、該ヒール基部114下面に設置された接地部116と、を備える。
図7にヒール基部114と接地部116の概略図を示す。
同図に示すように、ヒール基部114には嵌合凸部130が設けられており、接地部116には嵌合凹部118が設けられている。嵌合凸部130はヒール基部114の下面(接地部116と対向する面)から略鉛直方向に突出しており、且つヒール基部後方へ向かって奥行きを有している。また突出先端部は板状であり、横方向に広がりをもった逆T字型の形状となっている。嵌合凹部118は水平方向への深さをもっており、嵌合凸部130を水平方向へ挿入可能な孔穴となっている。嵌合凸部130はヒール基部114に比べてひとまわり小さい形状となっており、嵌合凹部118に嵌合凸部130を水平方向へはめ込むことにより、一体化する(
図8)。
男性用靴において、基本的には第一実施形態と同じ構造でも本発明は成立するが、男性用靴は女性用ハイヒール靴に比べてヒール部分が低く、仮に女性用ハイヒール靴と同じ構造にした場合、嵌合凹部118と嵌合凸部130の深さが十分に取れないため、歩行時に力をささえる接触面が小さくなり、使用環境によっては破損を招く恐れがある。そこで本実施形態では、接地部116が垂直方向に落下するのを防止し、かつ嵌合凹部118と嵌合凸部130の接触面が十分に得られる水平方向へ嵌合する形状としている。
図9に本発明において特徴的な靴用ヒール110の部分断面図を示す。
嵌合凹部118の図中右方壁面には固定孔120が設けられている。該固定孔120の奥は開口径が拡大し、リリースボタン122と、該リリースボタン122の解除ピン124を狭径固定孔120から退避させる方向へ付勢するバネ126と、を備える。嵌合凸部130は、先端に突出自在な固定ピン132を備えたねじ込み部材134を有し、嵌合凸部130が嵌合凹部118に嵌合された状態で該固定ピン132は前記固定孔120に対応する。
本実施形態にかかる靴用ヒール110は概略以上のように構成され、以下にヒール基部114への接地部116の取付状態と取外し状態を説明する。
前記
図9に示した、ヒール基部114と接地部116を分離した状態より、接地部116の嵌合凹部118へヒール基部114の嵌合凸部130を挿入する(
図10)。
この際、嵌合凹部118の開口部には固定ピン132に対応する位置にテーパ136が設けられており、固定ピン132はテーパ136に従ってねじ込み部材134へ後退し、挿入の妨げになることはない。
さらに嵌合凸部130を嵌合凹部118へ押し込むと、
図11に示すように嵌合凸部130は嵌合凹部118にぴったりと嵌まり込み、この状態で固定ピン132は固定孔120に位置し、ねじ込み部材134内の付勢バネにより、固定孔120内へ突出する。したがって、ヒール基部114より接地部116が抜け落ちてしまうことはない。
本実施形態において、歩行時には接地部116に前後、左右及び垂直圧力方向へ大きな力が加わるが、これらは基本的に嵌合凸部130、嵌合凹部118を含めた、ヒール基部114と接地部116のぴったりとした接触面全体で負担し、嵌合凸部130ないし、嵌合凹部118に破損を生じない限り、前後、左右及び垂直圧縮方向の力が固定ピン132に集中することなく、安定した歩行が可能である。
嵌合凸部130を嵌合凹部118より引き抜く方向に力が加わった場合にのみピン132に力がかかるが、本発明者らの試験によっても、実際に歩行時にこのような力が加わることはなく、極めて安定した歩行が可能である。
次に、接地部116を交換する際には、
図12に示すようにリリースボタン122をバネ126に抗して押し込む。そうすると、該リリースボタン122先端の解除ピン124は固定孔120内に押し込まれ、固定ピン132を固定孔120より押し出す。この状態でヒール基部114を引き出せば、容易に接地部116の取外しを行うことができる。このように、リリースボタン122の押し込みと接地部116の引き抜きという、通常の歩行状態では同時に起こりえない作業を同時に行うことによってのみ、接地部116の取外しが可能となる。
なお、前記実施形態においては、嵌合凸部をヒール基部に、また嵌合凹部を接地部に設けたが、ヒール基部に嵌合凹部を、また接地部に嵌合凸部を設けてもよい。
また、接地部は、ヒール基部に対して設置方向に設けられる部材という意味であり、接地面には他の部材をさらに設けてもよい。
【符号の説明】
【0012】
10、110 靴用ヒール
12、112 靴
14、114 ヒール基部
16、116 接地部
18、118 嵌合凹部
20、120 固定孔
22、122 リリースボタン
24、240 解除ピン
26、126 バネ
30、130 嵌合凸部
32、132 固定ピン
34、134 ねじ込み部材
36、136 テーパ
38、 空気孔