特許第6395597号(P6395597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395597ダイシング用粘着テープおよび半導体チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395597
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ダイシング用粘着テープおよび半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-263574(P2014-263574)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-122812(P2016-122812A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 晃良
(72)【発明者】
【氏名】高城 梨夏
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119395(JP,A)
【文献】 特開2012−169573(JP,A)
【文献】 特開2012−151761(JP,A)
【文献】 特開2012−062372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子が形成され、それぞれの半導体素子が封止樹脂により封止された素子基板、またはそれぞれの半導体素子上にレンズ材が形成された素子基板を、複数の半導体チップに分割する際に使用されるダイシング用粘着テープであって、
基材と、
前記基材上に積層され、硬化型のシリコーン系粘着剤及び硬化剤を含む粘着剤層と
を備え
前記素子基板に対して、官能基としてメチル基およびフェニル基の一方または双方を有するシリコーン樹脂からなる前記封止樹脂側または前記レンズ材側から貼り付けられて使用されることを特徴とするダイシング用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤と、過酸化物からなる開始剤とを含むことを特徴とする請求項記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項3】
前記開始剤の含有量が、前記過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.01重量部〜15重量部の範囲であることを特徴とする請求項記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、付加反応型シリコーン系粘着剤と、架橋剤と、触媒とを含むことを特徴とする請求項記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項5】
前記架橋剤の含有量が、前記付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の範囲であることを特徴とする請求項記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項6】
複数の半導体素子が基板上に形成された素子基板の当該複数の半導体素子をシリコーン樹脂で覆う被覆工程と、
基材と硬化型のシリコーン系粘着剤および硬化剤を含む粘着剤層とを備える粘着テープを、前記素子基板に対して、前記シリコーン樹脂側から貼り付ける貼付工程と、
前記粘着テープが貼り付けられた前記素子基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、
前記複数の半導体チップから、前記粘着テープを剥がす剥離工程と
を含む半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基板のダイシングに用いられるダイシング用粘着テープ、およびダイシング用粘着テープを使用した半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(light emitting diode)等を有する半導体チップを作製するために使用されるダイシング用粘着テープとして、アクリル系樹脂からなる接着剤層を有する粘着テープが知られている(特許文献1参照)。
また、ダイシング用粘着テープを使用して半導体チップを作製する方法としては、複数の半導体素子が形成された半導体素子基板の基板側に粘着テープを貼り付け、ダイサーにより半導体素子基板を切断する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−38408号公報
【特許文献2】特開2005−93503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、半導体素子基板を切断して半導体チップを作製する場合に、半導体素子基板の基板側ではなく半導体素子を封止する封止樹脂や半導体素子上に設けられるレンズ材が形成される側に粘着テープを貼り付けてダイシングを行う技術が提案されている。
このように、半導体素子基板に対して封止樹脂やレンズ材が形成される側から粘着テープを貼り付けた場合、粘着力が不足して、半導体チップの飛散等が生じる場合があった。
【0005】
本発明は、複数の半導体素子が形成された素子基板に対して良好な粘着性を有するダイシング用粘着テープ、およびこれを用いた半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る目的のもと、本発明のダイシング用粘着テープは、複数の半導体素子が形成され、それぞれの半導体素子が封止樹脂により封止された素子基板、またはそれぞれの半導体素子上にレンズ材が形成された素子基板を、複数の半導体チップに分割する際に使用されるダイシング用粘着テープであって、基材と、前記基材上に積層され、硬化型のシリコーン系粘着剤及び硬化剤を含む粘着剤層とを備え、前記素子基板に対して、官能基としてメチル基およびフェニル基の一方または双方を有するシリコーン樹脂からなる前記封止樹脂側または前記レンズ材側から貼り付けられて使用されることを特徴とする。
ここで、前記粘着剤層は、過酸化物硬化型シリコーン粘着剤と、過酸化物からなる開始剤とを含むことを特徴とすることができる。さらに、前記開始剤の含有量が、前記過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.01重量部〜15重量部の範囲であることを特徴とすることができる。さらにまた、前記粘着剤層は、付加反応型シリコーン系粘着剤と、架橋剤と、触媒とを含むことを特徴とすることができる。また、前記架橋剤の含有量が、前記付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の範囲であることを特徴とすることができる。
さらに本発明を半導体チップの製造方法として捉えると、本発明の半導体チップの製造方法は、複数の半導体素子が基板上に形成された素子基板の当該複数の半導体素子をシリコーン樹脂で覆う被覆工程と、基材と硬化型のシリコーン系粘着剤および硬化剤を含む粘着剤層とを備える粘着テープを、前記素子基板に対して、前記シリコーン樹脂側から貼り付ける貼付工程と、前記粘着テープが貼り付けられた前記素子基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、前記複数の半導体チップから、前記粘着テープを剥がす剥離工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、封止樹脂により封止された複数の半導体素子が形成された素子基板に対して良好な粘着性を有するダイシング用粘着テープ、およびこれを用いた半導体チップの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用される粘着テープの構成の一例を示した図である。
図2】(a)〜(d)は、本実施の形態の粘着テープを使用した半導体チップの第1の製造例を示した図である。
図3】(a)〜(d)は、本実施の形態の粘着テープを使用した半導体チップの第2の製造例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[粘着テープの構成]
図1は、本実施の形態が適用される粘着テープ1の構成の一例を示した図である。本実施の形態の粘着テープ1は、封止樹脂で封止された複数の半導体素子が形成された半導体素子基板、またはそれぞれの半導体素子上にレンズ材が形成された半導体素子基板のダイシングの用途に使用される。具体的には、本実施の形態の粘着テープ1は、半導体素子基板に対して、シリコーン樹脂からなる封止樹脂側またはシリコーン樹脂からなるレンズ材が形成された側から貼り付けることで、ダイシングに使用される。なお、粘着テープ1の使用方法については、後段にて詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態の粘着テープ1は、基材2と粘着剤層3とが積層された構造を有している。
なお、図示は省略するが、粘着テープ1は、基材2と粘着剤層3との間に必要に応じてアンカーコート層を備えていてもよい。また、基材2の表面(粘着剤層3に対向する面とは反対側の面)に、表面処理が施されていてもよい。さらに、粘着剤層3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)に、剥離ライナーを備えていてもよい。
【0011】
<基材>
本実施の形態の粘着テープ1に用いる基材2の材料は、特に限定されるものではなく、例えば金属製、プラスチック製等を用いることができる。具体的には、基材2として、例えば、ステンレススチール、軟質アルミニウム等の金属箔や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、ポリイミド、アラミド、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂等の樹脂フィルムを用いることができる。また、用途に応じて基材2には、例えば、アルミニウム箔と樹脂フィルムとをラミネートした複合フィルム、アルミナ、二酸化ケイ素等の金属酸化物薄膜を樹脂フィルムの表面に形成した複合フィルム、およびこれらの複合フィルムをさらに樹脂フィルムとラミネートした複合フィルム等を用いてもよい。
この中でも、基材2としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料を用いることが好ましい。
【0012】
<粘着剤層>
本実施の形態の粘着剤層3は、硬化型のシリコーン系粘着剤と、このシリコーン系粘着剤を硬化させるための硬化剤とを含んで構成されている。また、粘着剤層3は、必要に応じて、着色剤等を含んでいてもよい。
粘着剤層3の厚さは、5μm〜50μmの範囲が好ましく、20μm〜40μmの範囲がより好ましい。粘着剤層3の厚さが5μm未満の場合には、粘着剤層3に含まれるシリコーン系粘着剤が薄くなるため、粘着テープ1の粘着力が低下しやすい。一方、粘着剤層3の厚さが50μmよりも厚い場合には、粘着剤層3の凝集破壊が発生しやすくなり、このような粘着テープ1を用いた場合には、粘着テープ1を剥がした際に、粘着剤が被着物に付着したまま残る糊残りが生じやすくなる。
【0013】
ここで、本実施の形態の粘着剤層3では、硬化型のシリコーン系粘着剤として、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤または付加反応型シリコーン系粘着剤を用いることができる。
以下、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を用いる場合を粘着剤層3の第1形態、付加反応型シリコーン系粘着剤を用いる場合を粘着剤層3の第2形態として、順に説明する。
【0014】
〔第1形態〕
第1形態の粘着剤層3は、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤と、過酸化物から構成される開始剤(硬化剤)とを含んで構成される。
【0015】
(過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤)
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤は、例えば、ポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン共重合体レジンとのオルガノポリシロキサン混合物を主剤とした粘着剤である。
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR−100、KR−101−10、KR−130、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610−SM、XR37−B6722、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH4280等を用いることができる。
【0016】
(添加剤(改質剤))
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤は、添加剤として改質剤を含んでもよい。過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤に用いる添加剤(改質剤)としては、例えばポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン共重合体レジン、オルガノポリシロキサン混合物が用いられる。このような添加剤(改質剤)としては、特に限定されるものではないが、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD−7292、BY15−701A、SD−7226、SE−1886A/B、信越化学工業株式会社製のX−92−128、X−41−3003等を用いることができる。
【0017】
この他、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤に対して、ポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン共重合体レジンおよびオルガノポリシロキサン混合物を併せ持つ、付加反応型シリコーン系粘着剤を混合しても、上記の添加剤(改質剤)を用いる場合と同様の改質効果を得ることができる。付加反応型シリコーン系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR−3700、KR−3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37−B9204、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD4580、SD4584、SD4585、SD4586、SD4587、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593、DC7651ADHESIVE等を用いることができる。
【0018】
(開始剤)
過酸化物からなる開始剤としては、有機過酸化物が用いられる。開始剤として用いられる有機過酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾイールペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1´−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、市販品としては、例えば、日油株式会社製のナイパーK40等が挙げられる。
【0019】
(含有量)
ここで、第1形態の粘着剤層3における開始剤(有機過酸化物)の含有量は、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100質量部に対して、0.01重量部〜15重量部の範囲が好ましく、0.05重量部〜10重量部の範囲がより好ましく、0.05重量部〜3.5重量部の範囲がさらに好ましい。また、第1形態の粘着剤層3における添加剤(改質剤)の含有量は、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0重量部〜50重量部の範囲が好ましく、0重量部〜30重量部の範囲がより好ましい。
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤に対する開始剤および改質剤の含有量を上述した範囲とすることで、粘着剤層3の粘着力および保持力を、ダイシング用の粘着テープ1として好ましい範囲とすることができる。
【0020】
一方、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤に対する開始剤の含有量が過度に小さい場合には、粘着剤層3において過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が十分に硬化されずに、所望の粘着力を得られない場合がある。また、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が十分に硬化しなかった場合には、粘着剤層3において凝集破壊が生じやすくなる。この結果、粘着テープ1を半導体素子基板のダイシングに使用した後、得られた半導体チップから粘着テープ1を剥がした際に、糊残りが生じやすくなる。
【0021】
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤に対する開始剤の含有量が過度に大きい場合には、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤の硬化反応が進行しすぎるため、粘着剤層3が硬くなり、粘着テープ1の粘着力が低下しやすくなる。そして、この粘着テープ1をダイシングに使用した場合には、半導体素子基板を切断する際に、切断片である半導体チップが粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなる。
【0022】
〔第2形態〕
続いて、第2形態の粘着剤層3は、シリコーン系粘着剤として付加反応型シリコーン系粘着剤を含むとともに、硬化剤として、架橋剤および触媒を含んで構成される。また、第2形態の粘着剤層3には、付加反応型シリコーン系粘着剤の急激な付加反応の進行を抑制するための反応制御材を含んで構成してもよい。
【0023】
(付加反応型シリコーン系粘着剤)
付加反応型シリコーン系粘着剤は、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンを主剤とした粘着剤である。なお、付加反応型シリコーン系粘着剤に含まれるオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状が例示される。
また、付加反応型シリコーン系粘着剤に含まれるオルガノポリシロキサンが含有するアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0024】
付加反応型シリコーン系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR3700、KR3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37−B9204、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD4580、SD4584、SD4585、SD4586、SD4587、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593、DC7651ADHESIVE等があげられる。
【0025】
(添加剤(改質剤))
付加反応型シリコーン系粘着剤は、添加剤として改質剤を含んでもよい。付加反応型シリコーン系粘着剤に用いる添加剤(改質剤)としては、例えばポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン共重合体レジン、オルガノポリシロキサン混合物が用いられる。このような添加剤(改質剤)としては、特に限定されるものではないが、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD−7292、BY15−701A、SD7226、SE1886A/B、信越化学工業株式会社製のX−92−128、X−41−3003等を用いることができる。
【0026】
この他、付加反応型シリコーン系粘着剤に対して、ポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンとオルガノポリシロキサン共重合体レジンおよびオルガノポリシロキサン混合物を併せ持つ、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を混合しても、上記の添加剤(改質剤)を用いる場合と同様の改質効果を得ることができる。過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR−100、KR−101−10、KR−130、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610−SM、XR37−B6722、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH4280等を用いることができる。
【0027】
(架橋剤)
付加反応型シリコーン系粘着剤の反応には、架橋剤として、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンが使用される。
架橋剤として使用されるオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示される。
付加反応型シリコーン系粘着剤の反応に使用される架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学株式会社製のX−92−122、東レ・ダウコーニング株式会社製のBY24−741等が挙げられる。
【0028】
(触媒)
付加反応型シリコーン系粘着剤の反応には、付加反応型シリコーン系粘着剤と架橋剤との付加反応(ヒドロシリル化)による硬化を促進させるための触媒が使用される。
触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が使用される。これらの触媒のうち、特に、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系触媒は、反応速度が良好であることから好ましい。
付加反応型シリコーン系粘着剤の反応に使用される触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のCAT−PL−50T、東レ・ダウコーニング株式会社製のSRX−212Cat、NC−25等が挙げられる。
【0029】
(反応制御剤)
第2形態の粘着剤層3において必要に応じて用いられる反応制御剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のCAT−PLR−2や、東レ・ダウコーニング株式会社製のBY24−808等が挙げられる。
【0030】
(含有量)
ここで、第2形態の粘着剤層3における架橋剤の含有量は、付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の範囲が好ましく、0.1重量部〜7重量部の範囲がより好ましく、0.1重量部〜2重量部の範囲がさらに好ましい。
また、第2形態の粘着剤層3における添加剤(改質剤)の含有量は、付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0重量部〜50重量部の範囲が好ましく、0重量部〜30重量部の範囲がより好ましい。
付加反応型シリコーン系粘着剤に対する架橋剤および改質剤の含有量を上述した範囲とすることで、粘着剤層3の粘着力および保持力を、ダイシング用の粘着テープ1として好ましい範囲とすることができる。
【0031】
一方、付加反応型シリコーン系粘着剤に対する架橋剤の含有量が過度に小さい場合には、粘着剤層3において架橋反応が十分に進行せずに、所望の粘着力を得られない場合がある。また、付加反応型シリコーン系粘着剤の架橋反応が十分に進行しなかった場合には、粘着剤層3において凝集破壊が生じやすくなる。この結果、粘着テープ1を半導体素子基板のダイシングに使用した後、得られた半導体チップから粘着テープ1を剥がした際に、糊残りが生じやすくなる。
【0032】
さらに、付加反応型シリコーン系粘着剤に対する架橋剤の含有量が過度に大きい場合には、付加反応型シリコーン系粘着剤の架橋反応が進行しすぎるため、粘着剤層3が硬くなり、粘着テープ1の粘着力が低下しやすくなる。そして、この粘着テープ1をダイシングに使用した場合には、半導体素子基板を切断する際に、切断片である半導体チップが粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなる。
【0033】
また、第2形態の粘着剤層3における触媒の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部程度とすることができる。
【0034】
<アンカーコート層>
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1では、粘着テープ1の製造条件や製造後の粘着テープ1の使用条件等に応じて、基材2と粘着剤層3との間に、基材の種類に合わせたアンカーコート層を設けたり、コロナ処理等の表面処理を施したりしてもよい。これにより、基材2と粘着剤層3との密着力を改善させることが可能になる。
【0035】
<表面処理>
基材2の表面(粘着剤層3に対向する面とは反対側の面)には、剥離性改良処理等の表面処理が施されていてもよい。基材2の表面処理に用いられる処理剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、長鎖アルキルビニルモノマー重合物、フッ化アルキルビニルモノマー重合物、ポリビニルアルコールカルバメート、アミノアルキド系樹脂等の非シリコーン系の剥離処理剤等を用いることができる。このような非シリコーン系の剥離処理剤としては、例えば、一方社油脂工業株式会社製のピーロイル1050、ピーロイル1200等が挙げられる。
【0036】
<剥離ライナー>
また、粘着剤層3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)には、必要に応じて剥離ライナーを設けてもよい。剥離ライナーとしては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムに、粘着剤層3に含まれるシリコーン系粘着剤との離型性を高めるための剥離処理を施したものを用いることができる。剥離ライナーの剥離処理に用いる材料としては、特に限定されないが、例えば、フロロシリコーン、長鎖アルキルビニルモノマー重合物、アミノアルキド系樹脂等の材料を用いることができる。
【0037】
<粘着テープの厚さ>
以上説明したような構成を有する粘着テープ1の全体としての厚さは、20μm〜200μmの範囲が好ましい。
粘着テープ1の厚さが20μmよりも薄い場合には、粘着テープ1を半導体素子基板のダイシングに用いた場合に、形成された半導体チップを粘着テープ1から剥がし取ることが困難になる場合がある。
また、粘着テープ1の厚さが200μmよりも厚い場合には、粘着テープ1を半導体素子基板の封止樹脂側から貼り付ける際に、粘着テープ1が封止樹脂の凹凸に追従しにくくなる。この結果、粘着テープ1と封止樹脂との接着面積が小さくなり、ダイシングの際に半導体チップが飛散しやすくなるおそれがある。
【0038】
[粘着テープの製造方法]
続いて、本実施の形態の粘着テープ1の製造方法について説明する。
なお、上述した第1形態の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を含む粘着剤層3を有する粘着テープ1と、第2形態の付加反応型シリコーン系粘着剤を含む粘着剤層3を有する粘着テープ1とでは、同様の製造方法により製造することができる。
【0039】
粘着テープ1を製造する際には、まず、トルエンや酢酸エチル等の汎用の有機溶剤に、硬化型のシリコーン系粘着剤および硬化剤を溶解させ、粘着剤溶液を得る。続いて、この粘着剤溶液を、必要に応じて表面処理やアンカーコート層の形成を行った基材2の表面に、コンマコータ等を用いて所定の厚さになるように塗布する。
そして、粘着剤溶液が塗布された基材2を、60℃〜160℃の温度で、数分〜数十分程度加熱することで、粘着剤溶液を硬化させ、粘着剤層3を形成する。
以上の工程により、図1に示したように、基材2の上に粘着剤層3が積層された粘着テープ1を得ることができる。
【0040】
[粘着テープの使用方法]
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1は、半導体素子基板のダイシングに用いられる。ここで、半導体素子基板とは、樹脂等の基板上に、LED(Light emitting diode)等の半導体素子が複数形成されたものをいう。なお、このような半導体素子基板では、通常、半導体素子を温度や湿度等の外部環境の変化から保護するために、半導体素子を覆うように封止樹脂が設けられる。また、このような半導体素子基板では、LED等の半導体素子から出射された光を効果的に取り出すために、それぞれの半導体素子上にレンズ材を設ける場合がある。
【0041】
半導体素子基板を切断して複数の半導体チップを得るための方法としては、例えば以下のような方法が従来、知られている。
まず、半導体素子基板の基板側からダイシング用の粘着テープを貼り付けるとともに、ダイサー等により半導体素子基板を、粘着テープを貼り付けた側とは反対側である半導体素子が形成される側から切断する。そして、切断により形成されたそれぞれの半導体チップを粘着テープから剥がし取ることで、複数の半導体チップを得る。
【0042】
しかし、このように半導体素子基板の基板側からダイシング用の粘着テープを貼り付けて、半導体素子基板の切断を行った場合、切断面(半導体チップの基板側面)に欠落が生じる所謂ダレが発生したり、切断面が粗くなったりする等の課題がある。
そこで、近年では、このような課題を解決するために、半導体素子基板に対して、基板側ではなく、半導体素子が形成される側、すなわち半導体素子を封止する封止樹脂やレンズ材が形成される側からダイシング用の粘着テープを貼り付けて、半導体素子基板を切断する方法が提案されている。
【0043】
ここで、従来、半導体素子基板を切断するために使用されるダイシング用の粘着テープとしては、例えばアクリル樹脂から構成される粘着剤層を有するものが使用されている。
しかし、このような従来の粘着テープを、半導体素子基板の半導体素子が形成される側(封止樹脂側、レンズ材側)から貼り付けて半導体素子基板のダイシングを行うと、例えば、封止樹脂と粘着テープとの粘着力やレンズ材と粘着テープとの粘着力が不十分な場合には、ダイシング時に半導体チップが飛散する等の問題が生じるおそれがある。
【0044】
従来、半導体素子用の封止樹脂としては、電気特性や耐熱性に優れるエポキシ樹脂が利用されているが、エポキシ樹脂は、短波長のLEDや高出力のLEDに使用した場合に変色しやすい等の問題がある。
したがって、LED等の半導体素子用の封止樹脂としては、近年では、シリコーン樹脂を用いる場合が多い。
【0045】
半導体素子用の封止樹脂として用いられるシリコーン樹脂としては、官能基としてメチル基およびフェニル基の双方または一方を含有するシリコーン樹脂、すなわち、官能基としてメチル基を含有するシリコーン樹脂、メチル基とフェニル基との双方を含有するシリコーン樹脂、およびフェニル基を含有するシリコーン樹脂が挙げられる。官能基としてメチル基およびフェニル基の双方または一方を含有するシリコーン樹脂は、波長400nm〜800nmの光に対する光透過率が88%以上、屈折率が1.41以上とともに高い。このため、LED等の半導体素子用の封止樹脂として用いた場合、半導体素子から出射された光を効率的にパッケージの外部に取り出すことができ、光取り出し効率が向上する。
これらのシリコーン樹脂の中でも、官能基としてフェニル基を含有するシリコーン樹脂を用いることで、メチル基のみを含有するシリコーン樹脂を用いる場合と比較して、より半導体素子からの光の取り出し効率が向上する。
【0046】
メチル基を含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKER−2300、KER−2460、KER-2500N、KER−2600、KER−2700、KER−2900、X−32−2528、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のIVS4312、IVS4312、XE14−C2042、IVS4542、IVS4546、IVS4622、IVS4632、IVS4742、IVS4752、IVSG3445、IVSG0810、IVSG5778、XE13−C2479、IVSM4500、東レ・ダウコーニング株式会社製のOE−6351、OE−6336、OE−6301等があげられる。
【0047】
メチル基とフェニル基との双方を含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製KER−6075、KER-6150、KER−6020等があげられる。
【0048】
フェニル基を含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKER−6110、KER-6000、KER−6200、ASP−1111、ASP−1060、ASP−1120、ASP−1050P、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のXE14−C2508、東レ・ダウコーニング株式会社製のOE−6520、OE−6550、OE−6631、OE−6636、OE−6635、OE−6630等があげられる。
【0049】
また、上述したように、半導体素子基板では、半導体素子から出射される光の取り出し効率を向上させる等の目的で、それぞれの半導体素子上に、上述したシリコーン樹脂からなるレンズ材を設ける場合がある。半導体素子上にレンズ材を設ける方法としては、例えば、上述したシリコーン樹脂からなりそれぞれの半導体素子を覆う封止樹脂をレンズ形状に成形したり、上述したシリコーン樹脂からなるレンズ材をそれぞれの半導体素子を封止する封止樹脂上にさらに取り付けたりする等が挙げられる。
【0050】
ところで、シリコーン樹脂は、例えばエポキシ樹脂等と比較して離型性が高い性質を有している。したがって、封止樹脂としてシリコーン樹脂を使用した半導体素子基板やシリコーン樹脂からなるレンズ材を形成した半導体素子基板に対して、例えばアクリル樹脂系の粘着テープを封止樹脂またはレンズ材を形成した側から貼り付けた場合には、封止樹脂またはレンズ材であるシリコーン樹脂と粘着テープとの接着力が小さくなりやすい。この結果、半導体素子基板の切断時に、上述した半導体チップの飛散等の問題がより生じやすくなる。
【0051】
これに対し、本実施の形態の粘着テープ1は、上述したように、粘着剤層3が硬化型のシリコーン系粘着剤および硬化剤を含んで構成されることで、半導体素子基板のダイシングを行う場合に封止樹脂またはレンズ材を形成した側から貼り付けて使用した場合であっても、半導体素子基板の封止樹脂との接着力を良好に保つことができる。そして、従来の粘着テープと比較して、半導体素子基板のダイシングを行う場合に、半導体チップの飛散等の発生を抑制することができる。
【0052】
以下、本実施の形態の粘着テープ1の使用方法、および本実施の形態の粘着テープ1を使用した半導体チップの製造方法について、詳細に説明する。
ここでは、まず、複数の半導体素子をまとめて封止樹脂で封止した半導体素子基板を分割して半導体チップを製造する第1の製造例について説明する。図2(a)〜(d)は、本実施の形態の粘着テープを使用した半導体チップの第1の製造例を示した図である。
【0053】
本実施の形態では、まず、例えば樹脂材料等からなる基板101上に、複数の半導体素子102を積載し、半導体素子基板100を作成する。なお、半導体素子102は、例えばLED素子であって、図示は省略するが、例えば通電により発光する発光層等を含む複数の半導体層が積層されて構成され、上部には電極が形成されている。
次に、半導体素子基板100の基板101上に形成された複数の半導体素子102を、シリコーン樹脂からなる封止樹脂103でまとめて封止する(封止工程)。なお、この例では、複数の半導体素子102を封止樹脂103によりまとめて封止しているが、個々の半導体素子102を、封止樹脂103により個別に封止してもよい。なお、この例では、封止工程が、半導体素子102をシリコーン樹脂で覆う被覆工程に対応する。
【0054】
続いて、図2(a)に示すように、粘着テープ1の粘着剤層3が半導体素子基板100の封止樹脂103と対向するように、粘着テープ1と半導体素子基板100とを貼り合わせる(貼付工程)。
次いで、図2(b)、(c)に示すように、粘着テープ1と半導体素子基板100の封止樹脂103とを貼り合わせた状態で、切断予定ラインXに沿って、半導体素子基板100をダイサー等によって切断する(切断工程)。この例では、粘着テープ1が貼り付けられた半導体素子基板100を、基板101側から切断している。また、図2(c)に示すように、この例では、半導体素子基板100を全て切り込む所謂フルカットを行っている。
【0055】
続いて、半導体素子基板100を切断することにより形成された半導体チップ200を粘着テープ1から剥がし取る(ピックアップする)ことで、図2(d)に示すように、個片化された半導体チップ200を得ることができる(剥離工程)。
【0056】
続いて、複数の半導体素子のそれぞれにレンズ材を形成した半導体素子基板を分割して半導体チップを製造する第2の製造例について説明する。図3(a)〜(d)は、本実施の形態の粘着テープを使用した半導体チップの第2の製造例を示した図である。なお、ここでは、図2(a)〜(d)に示した第1の製造例と同様の工程については、説明を省略する。
【0057】
半導体チップの第2の製造例では、図3(a)に示すように、半導体素子基板100の基板101上に形成された複数の半導体素子102のそれぞれの上に、シリコーン樹脂からなるレンズ材104を形成する(レンズ形成工程)。なお、この例では、レンズ形成工程が、半導体素子102をシリコーン樹脂で覆う被覆工程に対応する。
レンズ材104を形成する方法としては、シリコーン樹脂からなりそれぞれの半導体素子102を覆う封止樹脂をレンズ形状に成型してレンズ材104とする方法や、それぞれの半導体素子102を覆う封止樹脂上にシリコーン樹脂からなるレンズ材104を取り付ける方法等が挙げられる。
【0058】
ここで、半導体素子102を覆う封止樹脂をレンズ形状に成型してレンズ材104とする方法としては、特に限定されないが、例えば、圧縮成型、インジェクション成型、トランスファー成型、印刷成型等が挙げられる。
また、それぞれの半導体素子102を覆う封止樹脂上にレンズ材104を取り付ける方法としては、特に限定されないが、例えば、ディスペンス法等が挙げられる。
【0059】
続いて、図3(a)に示すように、粘着テープ1の粘着剤層3が半導体素子基板100に形成されたそれぞれのレンズ材104と対向するように、粘着テープ1と半導体素子基板100とを貼り合わせる(貼付工程)。
続いて、図3(b)、(c)に示すように、粘着テープ1と半導体素子基板100のレンズ材104とを貼り合わせた状態で、切断予定ラインXに沿って、半導体素子基板100をダイサー等によって切断する(切断工程)。この例では、切断予定ラインXは、隣接する半導体素子102上に形成されたレンズ材104同士の間の領域に設定される。
【0060】
続いて、半導体素子基板100を切断することにより形成された半導体チップ200を粘着テープ1から剥がし取る(ピックアップする)ことで、図3(d)に示すように、個片化され、それぞれにレンズ材104が形成された半導体チップ200を得ることができる(剥離工程)。
【0061】
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1では、粘着剤層3が硬化型のシリコーン系粘着剤と硬化剤とを含んで構成される。これにより、粘着テープ1をダイシングに使用する場合に、半導体素子基板100の封止樹脂103またはレンズ材104が形成される側から貼り付けた場合であっても、半導体素子基板100と粘着テープ1との接着力を良好に保つことが可能になる。
特に、近年では、半導体素子102を封止する封止樹脂103や半導体素子102上に設けるレンズ材104として離型性の高いシリコーン樹脂を使用することが多い。これに対し、本実施の形態の粘着テープ1は、上述した構成を有することで、シリコーン樹脂からなる封止樹脂103やレンズ材104に対しても良好な接着力を有する。
この結果、本実施の形態の粘着テープ1は、半導体素子基板100のダイシングに使用した場合に、半導体チップ200の飛散を抑制することができる。
【0062】
特に、図3(a)〜(d)に示すように、レンズ材104は、通常、外表面が球面や非球面等からなり、粘着テープ1をレンズ材104側から貼り付ける場合、粘着テープ1の被着面が曲面となっている。通常、粘着テープ1の被着面が曲面となっている場合、被着面が平面の場合と比較して、粘着テープ1と被着面との接着力が低くなりやすい。これに対し、本実施の形態の粘着テープ1はレンズ材104を構成するシリコーン樹脂に対して良好な接着力を有するため、粘着テープ1を曲面であるレンズ材104側から貼り付けた場合であっても、半導体チップ200の飛散を抑制することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態の粘着テープ1の粘着剤層3に含まれる硬化型のシリコーン系粘着剤は、上述したように封止樹脂103やレンズ材104と良好な粘着力を有する一方で、離型性が高い性質を有している。これにより、本実施の形態では、半導体素子基板100のダイシングにより得られた半導体チップ200を粘着テープ1から剥がす際に、半導体チップ200に粘着剤が付着する所謂糊残りの発生を抑制することができる。
【0064】
通常、例えば粘着剤層がアクリル系の粘着剤で構成される粘着テープを半導体素子基板のダイシングに用いる場合、切断後の半導体チップを粘着テープから剥がし取る際には、予め粘着テープに対して紫外線を照射して、粘着剤層の粘着性を失わせる必要がある。一方、本実施の形態の粘着テープ1の場合には、紫外線を照射する工程を行うことなく、半導体チップ200を粘着テープ1から剥がすことが可能である。
したがって、本実施の形態の粘着テープ1を半導体素子基板100のダイシングに使用することで、半導体チップ200の製造工程を簡易化することが可能になっている。
【0065】
なお、図2(a)〜(d)および図3(a)〜(d)で説明した方法は、粘着テープ1を用いた半導体チップの製造方法の一例であり、粘着テープ1の使用方法は、上記の方法に限定されない。すなわち、本実施の形態の粘着テープ1は、ダイシングに際して、封止樹脂にて封止された複数の半導体素子、またはそれぞれにレンズ材が形成された複数の半導体素子を有する半導体素子基板に貼り付けられるものであれば、上記の方法に限定されることなく使用することができる。
【実施例】
【0066】
続いて、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
本発明者は、粘着剤層3として過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を用いた第1形態、および、粘着剤層3として付加反応型シリコーン系粘着剤を用いた第2形態のそれぞれについて、硬化剤(開始剤、架橋剤)の添加量を異ならせて粘着テープ1の作製を行い、作製した粘着テープ1の評価を行った。
以下、各実施例および各比較例について詳細に説明する。
【0068】
1.粘着テープ1の作製
(実施例1〜実施例4)
トルエンに、オルガノポリシロキサンからなる過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤(信越化学工業株式会社製KR101−1)と、メチル過酸化ベンゾイルからなる開始剤(日油株式会社製ナイパーK40)とを溶解させ、粘着剤溶液を調整した。なお、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤および開始剤の含有量は、表1に示したように調整した。
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した後、160度の温度で3分間、加熱することで、厚さ30μmの粘着剤層3を形成し、総厚105μmの粘着テープ1を得た。
【0069】
(実施例5〜8)
トルエンに、分子内にビニルシリル基を有するオルガノポリシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤(信越化学工業株式会社製X−40−3237−1)と、白金金族系触媒(信越化学工業株式会社製CAT−PL−50T)と、分子内にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンからなる架橋剤(信越化学工業株式会社製X−92−122)とを溶解させ、粘着剤溶液を調整した。なお、付加反応型シリコーン系粘着剤、触媒および架橋剤の含有量は、表1に示したように調整した。
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ75μmのPETフィルムからなる基材2の上に塗布した後、120度の温度で3分間、加熱することで、厚さ30μmの粘着剤層3を形成し、総厚105μmの粘着テープ1を得た。
【0070】
(比較例1)
粘着剤層3における開始剤の含有量を0とした以外は、実施例1〜実施例4と同様にして、粘着テープ1を得た。
【0071】
(比較例2)
粘着剤層3における架橋剤の含有量を0とした以外は、実施例5〜実施例8と同様にして、粘着テープ1を得た。
【0072】
(比較例3)
粘着剤層3として、アクリル系の粘着剤を用いた以外は、実施例1〜8と同様にして、粘着テープ1を得た。
【0073】
2.評価方法
続いて、粘着テープ1の評価方法について説明する。
(1)対研磨SUS粘着力試験
上述した方法にて作製した粘着テープ1について、JIS Z 0237(2000)に記載された方法に準拠して、対研磨SUS粘着力試験(引きはがし粘着力試験)を行った。
具体的には、粘着テープ1を耐水研磨紙で研磨したステンレス板(SUS304)に貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、20〜40分放置した後、引張試験機を用いて、ステンレス板に対して180°方向へ5mm/sの速度で引き剥がし、研磨SUS板に対する粘着力を測定した。
【0074】
(2)保持力試験
作製した粘着テープ1について、保持力試験を行った。
具体的には、粘着テープ1を、耐水研磨紙で研磨したステンレス板(SUS304)に貼り付け、所定の重りを取り付けた状態で40℃の条件下で24時間保持した場合のズレ量(mm)を測定した。ここで、ダイシング用粘着テープとしては、保持力試験で測定されるズレ量が25mm以下であることが好ましい。
また、24時間を経過する前に粘着テープ1がステンレス板から剥離して落下した場合には、測定開始から粘着テープ1が剥離するまでの経過時間(分)を測定した。なお、表1において保持力試験の↓の表示は、24時間を経過する前に粘着テープ1がステンレス板からずれて落下したことを意味する。
【0075】
(3)対シリコーン樹脂粘着力試験
作製した粘着テープ1について、上述した粘着力試験の方法に準拠して、対シリコーン樹脂粘着力試験を行った。
具体的には、粘着テープ1を、シリコーン樹脂を塗布した板(試験片)に貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、20〜40分放置した後、引張試験機を用いて、シリコーン樹脂を塗布した板に対して180°方向へ5mm/sの速度で引き剥がし、シリコーン樹脂に対する粘着力を測定した。
なお、本試験において粘着テープ1を貼り付ける板に塗布したシリコーン樹脂としては、LED封止剤用のシリコーン樹脂を用いた。
【0076】
具体的には、シリコーン樹脂Aとしては、LEDデバイス用シリコーン材料であるメチル基を含有するシリコーン樹脂(信越化学工業製のKER−2500N)を用いた。
試験片は、以下のように作製した。すなわち、KER−2500NのA剤とB剤とを混合比1:1で混合し、混合液を作成した。続いて、混合液をステンレス板(SUS304)に対して塗布し、100℃で1時間加熱した後150℃で2時間加熱することで硬化させた。これにより、ステンレス板上にシリコーン樹脂Aが形成された試験片を得た。
【0077】
また、シリコーン樹脂Bとしては、LEDデバイス用シリコーン材料であるフェニル基を含有するシリコーン樹脂(信越化学工業製のKER−6110)を用いた。
試験片は、以下のように作製した。すなわち、KER−6110のA剤とB剤とを混合比3:7で混合し、混合液を作成した。続いて、混合液をステンレス板(SUS304)に対して塗布し、100℃で2時間加熱した後150℃で5時間加熱することで硬化させた。これにより、ステンレス板上にシリコーン樹脂Bが形成された試験片を得た。
【0078】
3.評価結果
実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例3の粘着テープ1に対する評価結果について、表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、粘着剤層3を、硬化型のシリコーン系粘着剤と硬化剤とを含んで構成した場合(実施例1〜実施例8)には、粘着テープ1の研磨SUS板に対する粘着力、保持力、シリコーン樹脂Aに対する粘着力およびシリコーン樹脂Bに対する粘着力が全て好ましい範囲であることが確認された。
これにより、粘着剤層3を硬化型のシリコーン系粘着剤と硬化剤とを含んで構成した粘着テープ1は、半導体素子基板の封止樹脂またはレンズ材が形成された側から貼り付けてダイシングに使用するダイシング用粘着テープとして有用であることが確認された。
【0081】
続いて、実施例1〜実施例8のうち、シリコーン系粘着剤として過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を用いた場合(実施例1〜実施例4)を比較すると、過酸化物からなる開始剤の含有量が、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の場合(実施例1〜実施例3)に、粘着テープ1の保持力がより良好であることが確認された。
さらに、開始剤の含有量が、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜3.5重量部の場合(実施例1、実施例2)に、粘着テープ1のシリコーン樹脂Aに対する粘着力およびシリコーン樹脂Bに対する粘着力がより良好であることが確認された。
【0082】
したがって、シリコーン系粘着剤として過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を用いた場合には、過酸化物からなる開始剤の含有量が、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の範囲がより好ましく、0.05重量部〜3.5重量部の範囲がさらに好ましいことが確認された。
【0083】
さらに、実施例1〜実施例8のうち、シリコーン系粘着剤として付加反応型シリコーン系粘着剤を用いた場合(実施例5〜実施例8)を比較すると、架橋剤の含有量が、付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.1重量部〜7重量部の場合(実施例5〜実施例7)に、粘着テープ1の研磨SUS板に対する粘着力、シリコーン樹脂Aに対する粘着力およびシリコーン樹脂Bに対する粘着力がより高く、0.1重量部〜2重量部の場合(実施例5、実施例6)に、粘着テープ1の研磨SUS板に対する粘着力、シリコーン樹脂Aに対する粘着力およびシリコーン樹脂Bに対する粘着力がさらに高いことが確認された。
【0084】
したがって、シリコーン系粘着剤として付加反応型シリコーン系粘着剤を用いた場合には、架橋剤の含有量が、付加反応型シリコーン系粘着剤100重量部に対して、0.1重量部〜7重量部の範囲がより好ましく、0.1重量部〜2重量部の範囲がさらに好ましいことが確認された。
【0085】
これに対し、粘着剤層3が硬化剤(開始剤または架橋剤)を含まない場合(比較例1、比較例2)には、粘着テープ1の保持力が著しく低いことが確認された。これは、粘着剤層3が硬化剤を含まない場合には、シリコーン系粘着剤が硬化しなかったためだと考えられる。
そして、このような粘着テープ1をダイシング用粘着テープとして用いた場合には、粘着テープ1を半導体素子基板のダイシングに使用した後、得られた半導体チップから粘着テープ1を剥がした際に、糊残りが生じやすくなることが予測される。
【0086】
また、粘着剤層3としてアクリル系の粘着剤を用いた場合(比較例3)には、粘着テープ1の研磨SUS板に対する粘着力および保持力は良好であるものの、半導体素子の封止樹脂として使用されるシリコーン樹脂Aに対する粘着力およびシリコーン樹脂Bに対する粘着力が著しく低いことが確認された。
このような粘着テープ1を、ダイシング用粘着テープとして半導体素子基板の封止樹脂側から貼り付けて用いた場合には、ダイシングを行う際に、粘着テープ1から半導体素子基板や半導体チップが剥がれやすくなり、半導体チップの飛散が生じやすくなることが予測される。
【符号の説明】
【0087】
1…粘着テープ、2…基材、3…粘着剤層
図1
図2
図3