(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395603
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】触媒微粒子フィルター及び微粒子フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/85 20060101AFI20180913BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20180913BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20180913BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20180913BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20180913BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20180913BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20180913BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B01J29/85 AZAB
B01D53/86 228
B01D53/94 228
B01J37/02 301C
B01J37/02 301D
F01N3/022 C
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301C
F01N3/28 301P
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-519479(P2014-519479)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-525826(P2014-525826A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012061331
(87)【国際公開番号】WO2013007468
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年6月12日
【審判番号】不服2017-12211(P2017-12211/J1)
【審判請求日】2017年8月17日
(31)【優先権主張番号】PA201100535
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエルソン・ペル・エル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン・ケル
【合議体】
【審判長】
豊永 茂弘
【審判官】
後藤 政博
【審判官】
宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−510606(JP,A)
【文献】
特開平5−131118(JP,A)
【文献】
特開2003−210943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/76
B01D 53/86
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒壁流フィルターの製造方法であって、次の工程:
(a)壁流フィルター本体に、ガス透過性多孔質隔壁によって隔てられた複数の長手入口流路及び出口流路を与え;
(b)窒素酸化物と一酸化炭素及び水素とを反応させてアンモニアにするのに活性のある第1触媒組成物と、アンモニアと反応することにより窒素酸化物を窒素に選択的還元するのに活性のある第2触媒組成物とを含む触媒ウォッシュコートを与え、ここで、該第1触媒組成物は、該多孔質隔壁の平均孔径よりも大きいモード粒径を有し、該第2触媒組成物は、該多孔質隔壁の平均孔径よりも小さいモード粒径を有するものとし;
(c)該触媒ウォッシュコートを該入口流路の入口端に導入することによって該フィルター本体に該ウォッシュコートを被覆し;そして
(d)該被覆フィルター本体を乾燥させ熱処理して触媒微粒子フィルターを得ることを含み、前記第1触媒組成物の触媒がパラジウム、白金、パラジウムとロジウムとの混合物、又はパラジウムと白金とロジウムとの混合物を含み、前記第2触媒組成物の触媒がゼオライト、シリカアルミニウムホスフェート、イオン交換ゼオライト、鉄及び/又は銅で活性の高められたシリカアルミニウムホスフェート、および1種以上の卑金属酸化物、のうちの少なくとも一つを含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記第1触媒組成物の触媒がパラジウムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の工程:
アンモニアの選択的酸化に活性な触媒組成物を含有する第2ウォッシュコートを与え;そして
出口流路の一部に出口端の領域で該第2ウォッシュコートを被覆すること
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能触媒エンジン排気微粒子フィルターに関する。特に、本発明は、三元触媒(TWC)及び既知のNH3−選択接触還元(SCR)方法により窒素酸化物を除去する際に活性である触媒、及び随意に過剰のアンモニアを窒素に酸化する際に活性を有する触媒で触媒される多機能触媒微粒子フィルターの製造方法である。
【背景技術】
【0002】
多機能触媒フィルターは、特に、直噴ガソリン(GDI)エンジンなどのリーンバーンガソリンエンジンからの排気ガスを浄化するのに有用である。
【0003】
GDIエンジンは、ガソリン予備混合噴射エンジンよりも多い炭素状すすを発生する。欧州では、ユーロ5+ディーゼル法は、将来的に、4.5mg/kmの微粒子質量限度を有するGDIについて採用されることが見込まれるところ、これは、上記限度を達成するためにエンジンの濾過を必要とする。
【0004】
典型的には、自動車用途に使用するためのフィルターは、粒状物質をハニカム構造の隔壁上又は隔壁中に捕捉する、ハニカム構造体からなる壁流型フィルターである。これらのフィルターは、ガス透過性隔壁によって隔てられた複数の長手方向流路を有する。ガス入口チャネルは、それらのガス入口側で開き、かつ、反対側の出口端で閉鎖され、ガス出口チャネルは、出口端で開き、かつ、入口端で閉鎖され、それにより、壁流フィルターに入るガス流は、出口チャネルに入る前に隔壁に集中する。
【0005】
すす粒子の他に、ガソリンエンジンからの排気ガスは、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素及び未燃焼炭化水素を含有することろ、これらは、健康及び環境リスクを示す化学化合物であり、排気ガスから減少又は除去されなければならない。
【0006】
NOx、一酸化炭素及び炭化水素を除去する又は無害な化合物に還元するのに活性な触媒は、それ自体当該技術分野において知られている。
【0007】
特許文献には、エンジン排気ガスから有害な化合物を除去するための別個の触媒単位を含む多数の浄化システムが開示されている。
【0008】
また、当該技術分野においては、炭化水素及び粒状物質の酸化を触媒すると共に、排気ガスにそのまま又は先駆物質として添加されるアンモニアとの反応によりNOxを選択接触還元(SCR)する触媒が被覆された排気ガス微粒子フィルターも知られている。
【0009】
また、当該技術分野においては、上記反応を触媒する異なる触媒で被覆された多機能ディーゼル微粒子フィルターも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
既知の多機能フィルターでは、異なる触媒がフィルターの異なる区域に部分又はゾーン被覆される。
【0011】
該フィルター上への異なる触媒の部分又はゾーン被覆は、高価であり、かつ、困難な製造方法である。
【0012】
本発明は、公知技術と比較して、アンモニアによる窒素酸化物の選択的還元と炭化水素、一酸化炭素及び過剰のアンモニアの除去とのための異なる触媒で触媒された微粒子フィルターの容易な製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、触媒壁流フィルターの製造方法であって、次の工程:
(a)壁流フィルター本体に、ガス透過性多孔質隔壁によって隔てられた複数の長手入口流路及び出口流路を与え;
(b)窒素酸化物と一酸化炭素及び水素とを反応させてアンモニアにするのに活性のある第1触媒組成物、および、アンモニアと反応することにより窒素酸化物を窒素に選択的還元するのに活性のある第2触媒組成物を含む触媒ウォッシュコートを与え、ここで、該第1触媒組成物は、該多孔質隔壁の平均孔径よりも大きなモード粒径を有し、該第2触媒組成物は、該多孔質隔壁の平均孔径よりも小さなモード粒径を有するものとし;
(c)該触媒ウォッシュコートを該入口流路の入口端に導入することによって該フィルター本体を該ウォッシュコートで被覆し;そして
(d)該被覆フィルター本体を乾燥させ熱処理して触媒微粒子フィルターを得ること
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第2触媒が隔壁の平均孔径よりも小さなモード粒径を有し、第1触媒粒子が隔壁の平均孔径よりも大きなモード粒径を有することの利点は、第2触媒粒子が隔壁に効果的に分散されること、そして第1触媒が、特定の触媒活性が望まれない流路に分散するのを防ぐことである。
【0015】
続いて、異なる触媒入口及び出口流路を有するフィルター本体を単一のウォッシュコートで被覆することが可能である。
【0016】
次の反応:
NOx+H
2/CO=NH
3+CO
2+H
2O
によってNOxをアンモニアにする反応に有用な触媒は、パラジウム、白金、パラジウムとロジウムとの混合物及びパラジウムと白金とロジウムとの混合物である。
【0017】
これらの触媒は、ガソリンエンジンのリッチ燃焼動作条件下、すなわちλ<1でアンモニア形成を触媒する。パラジウムは、アンモニア形成が最も高い、好ましい触媒である。
【0018】
このようにして上記反応により入口流路内に形成されるアンモニアは、フィルターの隔壁を通して出口流路に透過し、かつ、リッチ動作状態中に出口流路内のSCR触媒に吸収される。
【0019】
アンモニア形成触媒及びSCR触媒の両方は、好ましくは、それぞれ入口流路及び出口流路に面した側の隔壁に被着される。その粒径が隔壁の平均孔径よりも小さいため、SCR触媒も、また、隔壁の孔内に分布する。
【0020】
エンジンのその後のリーン燃焼動作サイクルにおいて、排気ガス中に存在するNOxは、次の反応によりSCR触媒中に保存されたアンモニアと反応する:
NOx+NH
3=N
2+H
2O。
【0021】
既に上で述べたように、SCR触媒は、それ自体当該技術分野において知られているものである。本発明で使用するために、窒素酸化物の選択的還元に活性な好ましい触媒は、ゼオライト、シリカアルミニウムホスフェート、イオン交換ゼオライト、鉄及び/又は銅により活性が高められたシリカアルミニウムホスフェート、1種以上の卑金属酸化物の少なくとも一つを含む。
【0022】
本発明で使用するのにさらに好ましいSCR触媒は、銅及び/又は鉄で活性が高められた、SAPO34などのチャバサイト構造を有するシリカアルミニウムホスフェートである。
【0023】
NOxとは反応しなかった過剰のアンモニアを除去するために、壁流フィルターは、本発明の実施形態では、少なくともフィルターの出口端の領域内にある各出口流路内に配置されるアンモニア酸化触媒をさらに含む。
【0024】
好ましいアンモニア酸化触媒は、パラジウム、白金又はそれらの混合物を含む。
【0025】
アンモニアは、SCR触媒上に被覆された選択的アンモニア酸化触媒との接触により、窒素と水に酸化される。
【0026】
アンモニア酸化触媒は、出口領域内にあるフィルターの出口流路内の隔壁上に直接被着され、又はSCR触媒相の表面上に表層として設けられる場合がある。
【0027】
本発明は、さらに、上記の開示された製造方法により製造された触媒壁流フィルターを提供する。
【0028】
本発明で使用するためのウォッシュコートを製造する場合、通常は粒子の形態である触媒を必要な粒径まで磨砕又は凝集させ、そして水又は有機溶媒に、随意にバインダー、粘度調節剤、発泡剤その他の加工助剤を添加して懸濁する。
【0029】
その後、フィルターを、フィルターに真空を加え、ウォッシュコートを加圧し又は浸漬被覆することを含めて、一般的な方法に従ってウォッシュコートする。
【0030】
フィルターに被覆される第1触媒の量は、典型的には10〜100g/lであり、フィルターに被覆される第2触媒の量は、典型的には10〜140g/lである。フィルター上の全触媒添加量は、典型的には40〜200g/lの範囲である。
【0031】
本発明で使用するのに好適なフィルター材料の例は、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、コーディエライト、アルミナ、ムライト又はそれらの組み合わせである。
【実施例】
【0032】
例
第1触媒組成物の懸濁液を、第1工程で、フィルター壁の平均孔径よりも大きなモード粒径の酸化セリウム及びアルミナ粒子上に被着されたパラジウムおよびロジウムの粉末混合物から調製する。
【0033】
混合第1触媒の懸濁液を、リットルフィルターにつき40mlの脱イオン水にこれらの粉末20gを混合させることによって調製する。分散剤のZephrym PD−7000及び消泡剤を添加する。最終懸濁液のモード粒径は、壁流フィルターの壁部内の孔の平均孔径よりも大きくなければならない。
【0034】
第2触媒の懸濁液を、2%の銅で活性が高められたシリカアルミニウムホスフェートSAPO−34の100gをリットルフィルターにつき200mlの脱イオン水に混合分散させることによって作製する。分散剤Zephrym PD−7000及び消泡剤を添加する。懸濁液をビーズミルにより磨砕する。モード粒径は、壁流フィルターの壁部内の孔の平均孔径よりも小さくなければならない。
【0035】
その後、第1触媒及び第2触媒の懸濁液を混合して一つの懸濁液とする。
【0036】
高い多孔度(約60%及び壁平均孔径約18μm)の従来のプラグSiC壁流フィルターを使用する。
【0037】
第1及び第2触媒の混合懸濁液を、標準的なウォッシュコート方法によってフィルター分散側のフィルター入口端からウォッシュコートし、乾燥させ、そして750℃で焼結させる。