特許第6395616号(P6395616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395616
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】播種機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/12 20060101AFI20180913BHJP
   A01C 7/06 20060101ALI20180913BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20180913BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A01C7/12 B
   A01C7/06 A
   A01C15/00 G
   A01M9/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-4398(P2015-4398)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-129496(P2016-129496A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴原 藍
(72)【発明者】
【氏名】中川 善清
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−059501(JP,A)
【文献】 特開2014−233286(JP,A)
【文献】 特開平09−285206(JP,A)
【文献】 実開昭63−109718(JP,U)
【文献】 特開平09−074821(JP,A)
【文献】 特開2004−000071(JP,A)
【文献】 特開2007−252289(JP,A)
【文献】 米国特許第04664043(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00−7/20
A01C 15/00−15/18
A01C 19/00−19/04
A01M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子を貯留する種子貯留部、及び、走行機体から伝えられる駆動力により前記種子貯留部の種子を繰り出す種子繰出部を有した播種装置と、
農用の粉粒体を貯留する粉粒体貯留部、及び、前記種子繰出部から伝動機構を介して伝えられる駆動力により前記粉粒体貯留部の粉粒体を繰り出す粉粒体繰出部を有した粉粒体供給装置とを備えると共に、
前記播種装置が、前記粉粒体供給装置より後方で最も後端に配置され、前記伝動機構が、第1調節部と第2調節部とで構成され、
前記第1調節部が、前記種子繰出部の駆動に伴って作動する第1作動体と、当該第1作動体の駆動力を前記粉粒体繰出部に伝える往復作動型の伝動体とを備え、前記伝動体の前記第1作動体に対する連係位置の調節により、前記第1作動体の単位作動量に対する前記伝動体の作動量を調節するように構成され、
前記第2調節部が、前記粉粒体繰出部に連動して作動する第2作動体に対する前記伝動体の連係位置の調節により前記伝動体の単位作動量に対する前記第2作動体の作動量を調節するように構成され、
前記播種装置と前記粉粒体供給装置とが前記走行機体の後端に連結され、前記第1調節部が、前記播種装置の後面に露出する位置に配置されている播種機。
【請求項2】
前記第1調節部が、前記第1作動体に対して揺動自在に支持され前記伝動体が連係する第1調節部材と、当該第1調節部材の揺動姿勢を複数の揺動姿勢の何れかに固定することにより前記第1作動体の作動中心を基準にした前記伝動体の連係位置を異なる複数の距離の何れかに設定可能な第1固定部材とを備えている請求項に記載の播種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後端に播種装置と粉粒体供給装置とを備え、走行機体の走行に同期して播種装置で種子の播種を行い、粉粒体供給装置で圃場面への粉粒体の供給を行う播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような播種機と類似するものとして、特許文献1には、走行機体の後端に播種装置と、施肥装置(粉粒体供給装置)と、薬剤供給装置(粉粒体供給装置)とを備えた技術が示されている。
【0003】
この特許文献1では、播種装置が種子を貯留する播種タンクに貯留された種子を種子繰出部により繰り出す構成と、肥料タンクに貯留された肥料を肥料繰出部により繰り出す構成とを有し、播種と施肥とを走行機体の走行と連動して行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−121301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される播種装置は、走行機体から駆動力がギヤ伝動機構を介して播種装置の種子繰出部に伝えられる伝動構成を備えている。また、この特許文献1では、クランクアームの作動により動力を伝える2種の駆動機構を備えており、一方の駆動機構の駆動力を施肥装置の肥料繰出部に伝え、他方の駆動機構の駆動力を薬剤供給装置の薬剤繰出部に伝えるように構成されている。
【0006】
特に、肥料繰出部を駆動する伝動構成と、薬剤繰出部を駆動する伝動構成には、クランクアームの1回転に対する薬剤繰出部の繰出量を調節する調節部を備えている。
【0007】
例えば、走行機体の後端に播種装置と、薬剤散布装置とを備えたものでは、圃場の条件や、種子の種類、あるいは、薬剤の種類により、播種装置での種子の播種量に対する薬剤散布装置での薬剤の供給量の比率の変更も必要となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載される播種機では、走行機体の後端に対して、施肥装置が配置され、この後方に薬剤供給装置が配置され、更に後方に播種装置が配置されるため、播種装置が最も後端に配置される。このような配置から、播種装置における単位播種量に対する、施肥装置や薬剤供給装置での供給量の比率を変更する場合には、播種装置より前側の繰出部を駆動する伝動構成の調節部の操作を必要とするものとなるものの、この操作を播種装置が妨げるため調節部の操作が困難になり改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、播種装置の単位作動量に対する粉粒体供給装置の作動量の調節を容易に行える播種機を構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、種子を貯留する種子貯留部、及び、走行機体から伝えられる駆動力により前記種子貯留部の種子を繰り出す種子繰出部を有した播種装置と、
農用の粉粒体を貯留する粉粒体貯留部、及び、前記種子繰出部から伝動機構を介して伝えられる駆動力により前記粉粒体貯留部の粉粒体を繰り出す粉粒体繰出部を有した粉粒体供給装置とを備えると共に、
前記播種装置が、前記粉粒体供給装置より後方で最も後端に配置され、前記伝動機構が、第1調節部と第2調節部とで構成され、
前記第1調節部が、前記種子繰出部の駆動に伴って作動する第1作動体と、当該第1作動体の駆動力を前記粉粒体繰出部に伝える往復作動型の伝動体とを備え、前記伝動体の前記第1作動体に対する連係位置の調節により、前記第1作動体の単位作動量に対する前記伝動体の作動量を調節するように構成され、
前記第2調節部が、前記粉粒体繰出部に連動して作動する第2作動体に対する前記伝動体の連係位置の調節により前記伝動体の単位作動量に対する前記第2作動体の作動量を調節するように構成され、
前記播種装置と前記粉粒体供給装置とが前記走行機体の後端に連結され、前記第1調節部が、前記播種装置の後面に露出する位置に配置された点にある。
【0011】
この構成によると、第1調節部の調節を容易に播種装置の後面に露出する位置に配置されているため、作業者が播種装置の後方位置から第1作動体と伝動体との連係位置の調節を容易に行える。これにより、播種装置の種子繰出部での種子の単位繰出量に対する、粉粒体供給装置の粉粒体繰出部での繰出量の調節に手間が掛かることもない。
従って、播種装置の単位作動量に対する粉粒体供給装置の作動量の調節を容易に行える播種機が構成された。
これによると、作業者が第1作動体と伝動体との連係位置の調節を容易に行える。
また、第1調節部での調節と、第2調節部での調節とを行うことにより種子繰出部での種子の繰出量を基準にした粉粒体繰出部での粉粒体の繰出量の比率を広い調節領域において設定できる。
【0016】
本発明は、前記第1調節部が、前記第1作動体に対して揺動自在に支持され前記伝動体が連係する第1調節部材と、当該第1調節部材の揺動姿勢を複数の揺動姿勢の何れかに固定することにより前記第1作動体の作動中心を基準にした前記伝動体の連係位置を異なる複数の距離の何れかに設定可能な第1固定部材とを備えても良い。
【0017】
これによると、第1作動体の単位作動量に対する伝動体の作動量を調節する場合には、第1調節部材を所定の揺動姿勢に設定して第1固定部材で固定することで済む。その結果、播種装置の単位作動量に対する粉粒体供給装置の作動量の調節を比較的簡単な構成により容易に行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】乗用直播機の左側面図である。
図2】乗用直播機の平面図である。
図3】作業ユニットの左側面図である。
図4】作業ユニットの縦断左側面図である。
図5】作業ユニットの背面図である。
図6】施肥装置の構成を示す作業ユニットの縦断背面図である。
図7】施薬装置の構成を示す作業ユニットの縦断背面図である。
図8】整地フロートと各作溝器の配置とを示す平面図である。
図9】整地フロートと各作溝器の配置との要部の縦断側面図である。
図10】整地フロートの支持構造を示す要部の縦断側面図である。
図11】整地フロートの支持構造を示す要部の分解斜視図である。
図12】作業ユニットの伝動構成を示す概略図である。
図13】直播装置と施薬装置との連動構造などを示す要部の縦断側面図である。
図14】直播装置と施薬装置との連動構造などを示す要部の横断平面図である。
図15】薬剤繰出部の保持アームを示す側面図である。
図16】薬剤繰出部の縦断側面図である。
図17】薬剤繰出部のスクレーパの斜視図である。
図18】センターフレームと補強リブとを示す側面図である。
図19】作業ユニットのフレーム構造を示す斜視図である。
図20】保持ロッドを示す側面図である。
図21】保持ロッドの斜視図である。
図22】第1調節部と第2調節部との連係を示す側面図である。
図23】第1調節部で第1ロッドの作動量を最大に設定した状態での第1調節部と第2調節部とを示す側面図である。
図24】中間部材と中継部材との連係を示す断面図である。
図25】中間部材と中継部材との連係構成の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び図2に示すように、4輪駆動型の走行機体1の後部に昇降シリンダ2により上下揺動するリンク機構3を介して、作業ユニットAを昇降可能に連結して播種機として乗用直播機が構成されている。
【0020】
走行機体1は、前部に搭載したエンジン4からの動力をギア式変速装置(図示せず)から左右の前車輪5と左右の後車輪6とに伝達する走行駆動機構を備えている。走行機体1の後部側には、搭乗ステップ7、前輪操舵用のステアリングホイール8、及び、運転座席9を有した搭乗運転部10が備えられている。
【0021】
走行機体1の左右には、搭乗面積を左右に拡張する左右の拡張ステップ11が形成されている。搭乗運転部10の後方には、リンク機構3及び左右の後車輪6の上方から走行機体1の後部から作業ユニットAに向けて延出する後部ステップ12、及び、後部ステップ12への搭乗時に作業者の補助となる手摺13が形成されている。
【0022】
〔作業ユニット〕
図1〜5に示すように、作業ユニットAは、リンク機構3の後端部にローリング自在に連結する播種フレーム14に対して、圃場面に播種を行う6条用の播種装置15と、圃場に肥料を供給する6条用の施肥装置16と、圃場に薬剤(農用の粉粒体の一例)を供給する6条用の薬剤供給装置17(粉粒体供給装置の一例)と、これらに駆動力を伝達する伝動ユニットBとを備えている。この作業ユニットAは、前進走行時に圃場泥面を整地する3つの整地フロート19、及び、作業用の前進走行に伴って圃場に排水溝を形成する左右の溝切具20を備えたユニットとして構成されている。
【0023】
図3〜7及び図18,19に示すように、播種フレーム14は、リンク機構3の後端部に連結する主フレーム21と、主フレーム21の前部側に配置される前支持フレーム22、及び、主フレーム21の後部側に配置される後支持フレーム23を備えている。この播種フレーム14では、左右方向の中央位置にセンタフレーム18を立設しており、このセンタフレーム18には補強リブ18Aが形成されている。また、播種フレーム14の左右両端には支柱フレーム78を備えており、この左右の支柱フレーム78とセンタフレーム18との上端に前支持フレーム22が連結することにより、この前支持フレーム22が支持されている。
【0024】
〔作業ユニット:播種装置〕
図1〜5及び図8に示すように、播種装置15は、透明樹脂タンクで成る2つの種子貯留部24と、種子貯留部24の種子を繰り出す6つの種子繰出部25と、各々の種子繰出部25から繰り出された種子の落下空間を形成する種子供給部26とを備えている。
【0025】
1つの種子貯留部24は、鉄コーティング処理が施された3条分の種籾を貯留する。左右の種子貯留部24は、上端部に種子補給口を有する種子ホッパ24Aと、種子補給口を開閉する種子ホッパ用蓋体24Bとを備えている。
【0026】
つまり、1つの種子ホッパ24Aに対して3つの種子繰出部25を備えることにより、播種装置15には、6条に対応する6つの種子繰出部25を備えている。これらが走行機体1の走行に同期して繰出作動することにより所定量の種籾が間歇的に下方に繰り出され種子供給部26の内部を落下して圃場面に達し泥面点播を実現する。
【0027】
種子ホッパ用蓋体24Bは、種子ホッパ24Aの種子補給口の前側の開口縁に対しヒンジを介して開閉自在に支持されている。種子ホッパ用蓋体24Bの後端部には、種子ホッパ24Aに係合することにより種子ホッパ用蓋体24Bを閉じ姿勢に保持する種子ホッパ用保持部24Cを備えている。尚、種子ホッパ用蓋体24Bの内面には、図20に示すように、開放時に内部への雨水等の侵入を抑制する透明の樹脂シート24Sが備えられている。
【0028】
この作業ユニットでは、図20,21に示すように種子ホッパ用蓋体24Bを開放姿勢に操作した場合に開放姿勢に維持するため、種子ホッパ用蓋体24Bの外周縁に係合する保持ロッド71を備えている。この保持ロッド71は、施肥装置16より前方のフレームから後方に延出されるピアノ線で構成され、延出端を折り曲げた形状の係止部71Aを備えている。この保持ロッド71を備えたことにより、種子ホッパ用蓋体24Bを開放姿勢に操作した場合には、開放操作に伴い保持ロッド71の係止部71Aが、自動的に係合して種子ホッパ用蓋体24Bが開放姿勢に保持される。
【0029】
種子繰出部25は、播種駆動軸25Aとともに回転する種子繰出ロールを内装している。この種子繰出ロールは、外周に複数の凹部を備えており、播種駆動軸25Aの回転に伴い凹部に嵌り込んだ種子を繰り出す。
【0030】
〔作業ユニット:施肥装置〕
図1〜8に示すように、施肥装置16は、透明樹脂タンクで成る2つの肥料貯留部28と、肥料貯留部28から肥料を繰り出す6つの肥料繰出部29と、各々の肥料繰出部29からの肥料を流下案内する施肥ホース30と、施肥ホース30からの肥料が供給される施肥用作溝器32とを備えている。
【0031】
1つの肥料貯留部28は、3条分の粒状の肥料を貯留する。各々の肥料貯留部28は、上端部に肥料補給口を有する肥料ホッパ28Aと、肥料補給口を開閉する肥料ホッパ用蓋体28Bとを備えている。
【0032】
つまり、1つの肥料ホッパ28Aに対して3つの肥料繰出部29を備えることにより、施肥装置16には6条に対応する6つの肥料繰出部29が備えられている。これらが走行機体1の走行に同期して繰出作動することにより所定量の肥料が間歇的に施肥ホース30から下方に送られ、施肥用作溝器32から圃場面下に供給される。
【0033】
肥料ホッパ用蓋体28Bは、肥料ホッパ28Aの肥料補給口の後側の開口縁に対しヒンジを介して開閉自在に支持されている。肥料ホッパ用蓋体28Bの前端部には、肥料ホッパ28Aに係合することにより肥料ホッパ用蓋体28Bを閉じ姿勢に保持する肥料ホッパ用保持部28Cを備えている。
【0034】
肥料繰出部29は、施肥駆動軸29Aの回転とともに回転する肥料繰出ロールを内装している。この肥料繰出ロールは、外周に複数の凹部を備えており、施肥駆動軸29Aの回転に伴い凹部に嵌り込んだ肥料を繰り出す。
【0035】
施肥用作溝器32は、平面視でU字状に成形され、整地フロート19の前端側の底面に備えられた施肥用作溝板38の後端に支持されている。この構成により走行機体1の走行に伴い施肥用作溝板38が圃場面に溝を作り、この溝に対して施肥用作溝器32が圃場面下に対する肥料の供給を可能にする。
【0036】
〔作業ユニット:薬剤供給装置〕
薬剤供給装置17は、透明樹脂タンクで成る3つの薬剤貯留部33(粉粒体貯留部の一例)と、薬剤貯留部33から薬剤を繰り出す6つの薬剤繰出部34(粉粒体繰出部の一例)と、各々の薬剤繰出部34からの薬剤を流下案内する施薬ホース35と、施薬ホース35から薬剤が供給される施薬用作溝器37とを備えている。
【0037】
薬剤貯留部33は、2条分の薬剤を貯留する。各々の薬剤貯留部33は、上端部に薬剤補給口を有する薬剤ホッパ33Aと、薬剤補給口を開閉する薬剤ホッパ用蓋体33Bとを備えている。
【0038】
つまり、1つの薬剤貯留部33に対して2つの薬剤繰出部34を備えることにより、薬剤供給装置17には6条に対応する6つの薬剤繰出部34が備えられている。これらが走行機体1の走行に同期して繰出作動することにより所定量の薬剤が間歇的に施薬ホース35から下方に送られ、施薬用作溝器37から圃場縁下に供給される。
【0039】
薬剤ホッパ用蓋体33Bは、薬剤ホッパ33Aの薬剤補給口前側の開口縁にヒンジを介して開閉自在に支持されている。薬剤ホッパ用蓋体33Bの後端部には、薬剤ホッパ33Aに係合することにより薬剤ホッパ用蓋体33Bを閉じ姿勢に保持する薬剤ホッパ用保持部33Cを備えている。更に、薬剤ホッパ用蓋体33Bを開放姿勢に保持するトーションスプリング33Dがヒンジ部分に備えられている。尚、薬剤ホッパ用蓋体33Bの内面には、図20に示すように、開放時に内部への雨水等の侵入を抑制する透明の樹脂シート33Sが備えられている。
【0040】
図16に示すように、薬剤繰出部34は、施薬駆動軸34Aの回転により回転する薬剤繰出ロール34Rを内装している。この34Rは、外周に複数の凹部を備えており、施薬駆動軸34Aの回転に伴い凹部に嵌り込んだ薬剤を繰り出す。また、薬剤繰出部34の内部には薬剤繰出ロール34Rの外周に接触する樹脂製のスクレーパ34Sを備えている。このスクレーパ34Sは、図17に示すように複数の樹脂製のシート状の突起部分が形成され、このシート状の突起部分に密接することにより、粒径が小さい薬剤であっても凹部から外部にある余剰の薬剤を除去し、適正な量の薬剤の供給を可能にしている。
【0041】
図15に示すように、薬剤繰出部34の外部には、アーム支持軸34Caを中心に揺動自在に保持アーム34Cを備えている。この保持アーム34Cは、図15(a)に示すように、施薬ホース35の上端部に形成した係止ピン35Aに係合して施薬ホース35を薬剤繰出部34に保持する保持姿勢と、図15(b)に示すように、係止ピン35Aから分離して、薬剤繰出部34から施薬ホース35の取り外しを可能にする解除姿勢とに切換自在に構成されている。
【0042】
また、薬剤繰出部34の一方の側面には開口が形成され、この開口を閉じるカバー体34Dが開口に嵌め込む状態で備えられている。保持アーム34Cの揺動端部分には、保持体34Cbを一体形成しており、この保持アーム34Cを図15(a)示す保持姿勢に設定した場合には保持体34Cbがカバー体34Dの外面側に重なり合う位置に達し、カバー体34Dを保持する。また、保持アーム34Cを図15(c)示す解除姿勢に設定した場合には保持体34Cbがカバー体34Dから離間し、カバー体34Dの取り外しを可能にする。
【0043】
図16に示すように、薬剤繰出部34の上面には、薬剤ホッパ33Aから薬剤が供給される嵌合筒部34Bが上方に延出する形態で形成されている。薬剤ホッパ33Aには、薬剤を自重で送り出す孔状の空間を取り囲む位置に内嵌筒部33Eが下方に突出して形成され、これより外方には、内嵌筒部33Eと同軸芯で外嵌筒部33Fが下方に突出して形成されている。この内嵌筒部33Eと外嵌筒部33Fとの中間に嵌合筒部34Bが嵌り込む空間が形成されている。
【0044】
これにより、薬剤繰出部34に薬剤ホッパ33Aを支持した状態では、嵌合筒部34Bに内嵌筒部33Eが内嵌すると同時に、嵌合筒部34Bに外嵌筒部33Fが外嵌する。その結果、薬剤ホッパ33Aからの薬剤を、内嵌筒部33Eを介して薬剤繰出部34に供給し、外嵌筒部33Fが雨水等の薬剤繰出部34への浸入を抑制する。
【0045】
施薬用作溝器37は、平面視でU字状に成形され、整地フロート19の前端側の底面に備えられた施薬用作溝板39の後端に支持されている。走行機体1の走行に伴い圃場面に溝を作り出し、圃場面下に対する薬剤の供給を可能にする。
【0046】
〔作業ユニット:整地フロート〕
図8〜11に示すように、作業ユニットAの下部には、平面視でT字状となる3つの整地フロート19が備えられている。各々の整地フロート19の前後方向の中間位置にブラケット68を備え、主フレーム21から後方に延出したフロート支持部21Aの下部にフロート支持部材40を備えている。
【0047】
また、左右位置の整地フロート19と中央の整地フロート19との中間位置の前側には、圃場面を整地するレーキ状の整地板76を配置し、左右の整地フロート19の直前位置には後車輪6で跳ね上げられた泥土が整地フロート19の上面に堆積する不都合を防止する泥除カバー77を配置している。尚、これら整地板76と泥除カバー77とは作業ユニットAに支持されている。
【0048】
フロート支持部材40は、その前端がフロート支持部21Aに対して吊り下げ状態で支持され、その後端がフロート支持部21Aの後端部に軸連結している。このフロート支持部材40とブラケット68とに左右向き姿勢の支軸41が貫通することにより整地フロート19が揺動自在に支持される。また、フロート支持部材40に上昇制限部40Aを備え、フロート支持部21Aの後端位置に下方に突出する下降阻止部21Bを備えている。
【0049】
つまり、左右のフロート支持部材40に上昇制限部40Aを備えたことにより、左右の整地フロート19が大きく上昇揺動することに起因した整地不良の発生を防止する。また、フロート支持部21Aに下降阻止部21Bを備えたことにより、整地フロート19の下降揺動に伴って溝切具20が上昇することに起因した排水溝の形成不良を防止する。
【0050】
前述したように各々の整地フロート19の底面には、施肥用作溝板38と施薬用作溝板39とが下方に突出する姿勢で備えられ、施肥用作溝板38に対して施肥用作溝器32が支持され、施薬用作溝板39に対して施薬用作溝器37が支持されている。
【0051】
平面視において施肥用作溝器32と施肥用作溝板38とが整地フロート19の左右方向の中央側に配置されている。また、施薬用作溝器37と施薬用作溝板39とが整地フロート19の左右方向で施肥用作溝器32より外側で、かつ、施肥用作溝器32より前側に配置されている。
【0052】
施肥用作溝器32より後方位置には、施肥用作溝器32により泥面に形成される溝を埋め戻す施肥用覆土体43が配置されている。また、施薬用作溝器37より後方位置には、施薬用作溝器37により泥面に形成される溝を埋め戻す施薬用覆土体42が配置されている。更に、施薬用作溝器37より後方で施薬用覆土体42より更に後方位置に種子供給部26から送り出される種子が供給される播種位置Pが設定されている。
【0053】
施肥用覆土体43は、左右方向で施肥用作溝器32より整地フロート19の中央側に基端部が連結され、延出端が後方外方に延びる姿勢で支持されている。施薬用覆土体42は、左右方向で施薬用作溝器37より整地フロート19の中央側に基端部が連結され、延出端が後方外方に延びる姿勢で支持されている。
【0054】
つまり、整地フロート19に対して、一対の施薬用作溝器37が整地フロート19の左右方向の中央位置を基準に対称となる位置関係で支持され、これと同様に、一対の施薬用覆土体42が整地フロート19の左右方向の中央位置を基準に対称する位置関係で支持されている。また、整地フロート19は、施薬用作溝器37が備えられた部位を基準にして、左右方向での外方位置を取り除いた形状に成形されている。
【0055】
このような構造から、走行機体1の走行に伴い施薬用覆土体42と施肥用覆土体43とで泥土の流れが作り出された場合でも、泥土の流れは整地フロート19の左右方向の中央を基準に外方に押し出されることになり、整地フロート19の近傍に土塊を作り出すことはない。
【0056】
作業ユニットAでは、施薬用作溝器37による施薬位置と、施肥用作溝器32による施肥位置と、種子供給部26による播種位置Pとが、この順序で前方位置から後方位置に設定されている。支軸41は整地フロート19の揺動支点であり、支軸41は、播種位置Pより前側に配置されている。
【0057】
溝切具20は、左右両端位置の整地フロート19の後端部の下面側に配置され、この溝切具20はフロート支持部材40に支持されている。
【0058】
〔作業形態〕
このような構成から、播種作業を行う場合には、作業ユニットAを作動させて走行機体1を前進させることにより、走行に伴い整地フロート19により圃場の泥面が整地される。このように整地された泥面に対して施薬用作溝器37が溝を形成し、この溝に対して薬剤繰出部34で繰り出された薬剤が施薬ホース35を介して供給され、この直後に施薬用覆土体42により溝が埋め戻される。これと同様に、整地された泥面に対して施肥用作溝器32が溝を形成し、この溝に対して肥料繰出部29で繰り出された肥料が施肥ホース30を介して供給され、この直後に施肥用覆土体43により溝が埋め戻される。
【0059】
このように圃場の泥面下に薬剤と肥料とが供給された後の泥面に対して種子繰出部25で繰り出された種子が種子供給部26を介して落下供給され泥面点播が実現する。また、圃場の泥面には、溝切具20により排水溝が形成される。
【0060】
〔伝動ユニット〕
図12に示すように、伝動ユニットBは、外部伝動軸27を介して走行機体1の駆動力を受ける入力部46と、入力部46からの駆動力を分配する動力分配軸47とを備えている。伝動ユニットBは、動力分配軸47の左端部から直播装置15の種子繰出部25に低速の動力を伝達する低速伝動系48と、動力分配軸47の右端部から施肥装置16の複数の肥料繰出部29に高速の動力を伝達する高速伝動系49とを備えている。
【0061】
低速伝動系48は、動力分配軸47からの動力を減速するチェーン式減速機構51と、チェーン式減速機構51からの動力を取り出す左右向きの第1中継軸52と、第1中継軸52に備えた6つの第1端数条クラッチ53、及び、対応する第1端数条クラッチ53から種子繰出部25に伝動する6つの第1ギヤ式伝動機構54を備えている。
【0062】
直播装置15及び薬剤供給装置17において対応する2つの種子繰出部25と2つの薬剤繰出部34とを連動連結する3つの伝動機構50を備えている。
【0063】
この伝動ユニットBでは高速伝動系49が、動力分配軸47の回転運動を揺動運動に変換する第1変換機構55と、第1変換機構55の揺動運動を回転運動に変換する第2変換機構56と、第2変換機構56による回転運動を取り出す左右向きの第2中継軸57とを備えている。第2中継軸57には3つの第2端数条クラッチ58、及び、各々の第2端数条クラッチ58から対応する2つの肥料繰出部29に伝動する3つの第2ギヤ式伝動機構59を備えている。
【0064】
伝動機構50は図13,14に示すように、対応する第1ギヤ式伝動機構54の回転運動を揺動運動に変換する第1変換部60、及び、第1変換部60による変換後の揺動運動を回転運動に変換する第2変換部61を備えている。これにより、第2変換部61による変換後の回転運動を対応する2つの薬剤繰出部34に伝達する。この第1変換部60と第2変換部61とは、伝動比を調節できるように構成され、この調節のための構成は後述する。
【0065】
伝動ユニットBでは、左側の2つの種子繰出部25と、中央の2つの種子繰出部25と、右側の2つの種子繰出部25との各々に対して第1中継軸52からの伝動を断続するために第1端数条クラッチ53を備えている。更に、左側と、中央と、右側とにおいて隣接する2つの種子繰出部25を連係して作動させる第1連係機構62を備えている。
【0066】
また、左側の2つの薬剤繰出部34と、中央の2つの薬剤繰出部34と、右側の2つの薬剤繰出部34とは、対応する2つの種子繰出部25と伝動機構50を介して連動するため、何れかの第1端数条クラッチ53が操作された場合には対応する2つの種子繰出部25と2つの薬剤繰出部34とに対する伝動が断続する。
【0067】
左側の2つの肥料繰出部29と、中央の2つの肥料繰出部29と、右側の2つの肥料繰出部29との各々に対する第2中継軸57からの伝動を断続するために第2端数条クラッチ58を備えている。更に、左側と中央と右側との第2端数条クラッチ58と、これに対応する左側と中央と右側との第1端数条クラッチ53とが第2連係機構63により連係している。
【0068】
作業ユニットAは、左右方向への揺動操作が可能な3本の操作レバー64を、播種フレーム14の前上部に配備している。3つの操作レバー64は、第2端数条クラッチ58を操作するように構成されている。従って、3つの操作レバー64の何れかが操作された場合には対応する第2端数条クラッチ58の状態が切換わると共に、第1端数条クラッチ53の状態が切換わり、その結果、対応する肥料繰出部29と種子繰出部25と薬剤供給装置17とに対する伝動が断続する。
【0069】
つまり、走行機体1から任意の操作レバー64を操作することにより、全ての種子繰出部25と肥料繰出部29と薬剤繰出部34とを作動させる6条作業状態と、任意の4条又は2条の種子繰出部25と肥料繰出部29と薬剤繰出部34とを作動させる状態とを作り出すことが可能となる。因みに、3つの操作レバー64を操作することにより全ての種子繰出部25と肥料繰出部29と薬剤繰出部34とを停止させることも可能である。
【0070】
伝動ユニットBでは、各々の種子繰出部25での種子の繰出量を調節する繰出量調節機構を備えている。前述したように種子繰出部25は、播種駆動軸25Aの回転により回転する種子繰出ロールを内装しており、種子繰出ロールの外周に形成された凹部の容量を調節するための調節ギヤ25Bが、播種駆動軸25Aと同軸芯で、第1ギヤ式伝動機構54と反対側に備えられている。
【0071】
繰出量調節機構は、第1中継軸52と平行姿勢となる調節軸65と、この調節軸65と一体回転する6つの作動ギヤ66と、を備えている。調節軸65の外端部にはクランク状のハンドル65Aを備えている。
【0072】
6つの作動ギヤ66は、調節軸65のシフト操作により、対応する6つの調節ギヤ25Bと咬合する状態と分離する状態とに切換自在に構成されている。この構成から、エンジン4を停止し、第1端数条クラッチ53を切り状態に設定し、作動ギヤ66を調節ギヤ25Bに咬合させ、調節軸65のハンドル65Aを回転操作することで6つの種子繰出部25の繰出量の調節が実現する。
【0073】
特に、エンジン4を停止した状態で第1端数条クラッチ53を切り状態に設定して調節軸65のハンドル65Aを回転操作した場合には、種子繰出部25で繰出量の調節は行われないものの、播種駆動軸25Aが自由に回転するため、種子繰出部25から種子の繰り出しを行うことが可能となる。更に、調節軸65の回転力が第1変換部60と第2変換部61とを介して施薬駆動軸34Aに伝えられるため、施薬駆動軸34Aを回転させ薬剤繰出部34から薬剤を繰り出すことも可能となる。これにより、これらの作動を確認できるだけでなく、施肥装置16と薬剤供給装置17とにおける繰出量の比率等の確認も容易に行える。
【0074】
〔連動機構〕
図13,14及び図22〜25に示すように伝動機構50は、第1変換部60と第2変換部61とを備えている。第1変換部60は、第1ギヤ式伝動機構54のうち、播種駆動軸25Aと一体回転する駆動ギヤ54Aに咬合する中間ギヤ81と、中間部材82(第1作動体の一例)と、調節アーム83(第1調節部材の一例)と、ロック部材84(第1固定部材の一例)と、ロックスプリング85と、第1ロッド86(伝動体の一例)とを備えている。この第1変換部60のうち、中間部材82(第1作動体の一例)と、調節アーム83(第1調節部材の一例)と、ロック部材84(第1固定部材の一例)とロックスプリング85とで本発明の第1調節部M1が構成されている。この第1調節部M1は3箇所に配置され、何れの第1調節部M1も中間部材82(第1作動体の一例)の単位作動量に対する第1ロッド86(伝動体の一例)の作動量を調節するように機能する。
【0075】
中間部材82は、中間ギヤ81と一体形成された構成を有し、外端縁に複数の係合凹部82Aが形成されている。これら中間部材82と中間ギヤ81とは、中間支軸82Sを介して中間フレーム87に支持されている。また、図24,25に示すように、中間支軸82Sの長手方向の中間の領域に小径部82Saを形成することにより、この小径部82Saの外周位置にグリス溜まりが形成されている。尚、中間フレーム87は、播種装置15のフレームに支持されている。
【0076】
調節アーム83は、その基端部が中間部材82に対してアーム軸83Aを介して揺動自在に支持され、この調節アーム83の中間部に対して基端側ピン86Aを介して第1ロッド86(伝動体の一例)が揺動自在に支持されている。
【0077】
ロック部材84は、調節アーム83の揺動端に対して揺動支軸84Aを介して揺動自在に支持されるものであり、このロック部材84の揺動端には中間部材82の係合凹部82Aに係合可能は係合部84Bと、人為操作されるノブ82Cと、中間部材82の側面に近接する保持片84Dとが形成されている。ロックスプリング85は、ロック部材84の係合部84Bを係合凹部82Aに係合させる付勢力を与える。
【0078】
つまり、第1調節部M1(第1変換部60)は、中間部材82の複数の係合凹部82Aの何れかに対してロック部材84の係合部84Bを係合させることにより、図22,23に示す方向視において、中間ギヤ81の回転中心(作動中心:中間支軸82Sの軸芯)から第1ロッド86の基端側ピン86A(連係位置の一例)までの距離が変更可能に構成されている。これにより、中間ギヤ81が1回転する場合における第1ロッド86の往復作動量の調節を実現する。
【0079】
このロック部材84の係合部84Bが、中間部材82の係合凹部82Aに係合した状態では、保持片84Dが、中間部材82を基準にしてロック部材84の反対側に近接配置されるため、ロック部材84が中間部材82の厚み方向への変位を規制し、係合状態を保持する。
【0080】
3箇所の第1調節部M1は、一対の種子繰出部25の中間位置で、播種装置15の後面に露出する位置に配置されることになり、何れの第1調節部M1も播種装置15の後方から容易に人為的に操作できるように構成されている。
【0081】
第2変換部61は、中間フレーム87に対して中継軸91Aを介して揺動自在に支持される中継部材91(第2作動体の一例)を備えると共に、第1ロッド86の連結位置の調節が可能な位置調節部92と、中継部材91の揺動力を取り出す第2ロッド93、及び、第3ロッド94と、この第2ロッド93、及び、第3ロッド94が個別に連結する一対の一方向クラッチ95とを備えている。
【0082】
位置調節部92は、中継部材91に穿設された複数の係合孔91Bと、この複数の係合孔91Bが並列する方向に移動自在となるように中継部材91に支持されたスライド体91Cと、係合孔91Bからスライド体91Cの孔部に亘って挿通する位置設定軸91Dと、この位置設定軸91Dを係合方向に付勢する保持スプリング91Eとを有している。また、スライド体91Cには第1ロッド86の先端側ピン86Bが揺動自在に連結する。この位置調節部92が本発明の第2調節部M2が構成されている。
【0083】
この第2調節部M2は、中継部材91(第2作動体の一例)に対する第1ロッド86(伝動体の一例)の作動量を調節するように機能する。つまり、保持スプリング91Eの付勢力に抗して位置設定軸91Dを係合孔91Bから人為的に抜き出し、複数の係合孔91Bの何れかを選択して挿通することで、保持スプリング91Eの付勢力で係合状態が保持され、第1ロッド86の作動量に対する中継部材91の揺動量の調節が可能となる。
【0084】
第2ロッド93と第3ロッド94とを備えたことにより中継部材91が何れの方向に揺動したものうち、一対の一方向クラッチ95の何れかで回転力に変換して施薬駆動軸34Aに伝えることが可能となる。
【0085】
この伝動機構50では、第1調節部M1における伝動比の調節範囲が、第2調節部M2における伝動比の調節範囲より大きく設定されている。これにより、第1調節部M1を調節するだけで過不足のない調節が可能となる。尚、本実施形態に代えて、第1調節部M1における伝動比の調節範囲より、第2調節部M2における伝動比の調節範囲を大きく設定しても良い。
【0086】
このような構成から、伝動機構50では、第1中継軸52の回転に伴い種子繰出部25の種子繰出ロールが回転して種子の繰出が行われる。このように第1中継軸52が回転する際には、駆動ギヤ54Aの回転に連動して中間ギヤ81と一体的に中間部材82が回転し、調節アーム83が回転する。調節アーム83には基端側ピン86Aを介して第1ロッド86が連係するため、中間部材82の回転に伴うクランクモーションにより調節アーム83に連係する第1ロッド86が往復作動を行う。
【0087】
この第1ロッド86の往復作動は、位置調節部92を介して中継部材91を、中継軸91Aを中心に揺動させる。この中継部材91の揺動作動が第2ロッド93と第3ロッド94とから対応する一方向クラッチ95で回転力に変換されて施薬駆動軸34Aに伝えられ、これにより施薬駆動軸34Aは所定の方向に回転し、薬剤繰出ロール34Rを回転させ薬剤が繰り出される。
【0088】
〔実施形態の作用・効果〕
この構成では、施肥装置16と薬剤供給装置17と播種装置15が、この順序で前から並ぶ形態で走行機体1の後端に対して連結されているため、播種装置15が最も後端に配置される。従って、第1調節部M1が一対の種子繰出部25の中間位置で、播種装置15の後面に露出することになり、何れの第1調節部M1も播種装置15の後方から容易に人為的に操作して播種装置15による単位播種量に対する薬剤供給装置17による肥料の散布量を容易に設定できる。
【0089】
特に、第1調節部M1は、薬剤の種類により調節されることになり、この第1調節部M1を調節することにより、単位播種量に対する薬剤の供給量が変更される。更に、第2調節部M2は、播種装置15における点播の間隔に対応して変更されるものである。尚、播種装置15での点播の間隔は伝動系に介装された変速機構を人為的に調節することにより実現する。
【0090】
また、第1調節部M1と第2調節部M2とを備えているため、播種装置15による播種量に対する薬剤供給装置17による肥料の散布量を広い調節範囲での設定できる。しかも、第1調節部M1における伝動比の調節範囲が、第2調節部M2における伝動比の調節範囲より大きく設定されているため、第1調節部M1だけを操作しても必要とする調節が可能となる。
【0091】
第1調節部M1で伝動比を調節する場合には、ロック部材84のノブ82Cの操作で係合凹部82Aに対する係合部84Bの係合を解除し、これらの位置関係を変更した後に係合させる操作形態となる。この操作形態は、例えば、ベータピンを取り外すものと比較して操作が簡単となる。
【0092】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0093】
(a)第1変換部60と第1調節部M1との構成を変更することなく、播種装置15からの駆動力を施肥装置16に伝えるように第2変換部61と第2調節部M2とを構成しても良い。つまり、この構成では、施肥装置16が、本発明の粉粒体供給装置に相当するものであり、第1調節部M1の調節により単位播種量に対する施肥量の調節が可能となり、更に、第2調節部M2の調節により点播の間隔に対する施肥量の調節が可能となる。
【0094】
(b)第1調節部M1として、中間部材82に対し、この中間部材82の回転中心から異なる距離に複数の係合孔を形成し、複数の係合孔の何れかに対して人為操作により第1ロッド86の端部を直接的に係合させることや、第1ロッド86に備えた係合ピン等を係合させるように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、走行機体からの駆動力により播種を行う播種装置と、播種装置から伝動機構を介して伝えられる駆動力により粉粒体を供給する流体供給装置とを備えている播種機に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 走行機体
15 播種装置
17 粉粒体供給装置(薬剤供給装置)
24 種子貯留部
25 種子繰出部
33 粉粒体貯留部(薬剤貯留部)
34 粉粒体繰出部(薬剤繰出部)
50 伝動機構
82 第1作動体(中間部材)
83 第1調節部材(調節アーム)
84 第1固定部材(ロック部材)
86 伝動体(第1ロッド)
91 第2作動体(中継部材)
B 伝動機構
M1 第1調節部
M2 第2調節部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図24
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