特許第6395646号(P6395646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395646
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20180913BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180913BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61Q19/00
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-53675(P2015-53675)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-172703(P2016-172703A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 晋弥
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/051746(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/114653(WO,A1)
【文献】 特開2012−087084(JP,A)
【文献】 特開2009−256625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールと、平均粒子径が1〜20μmの親水性樹脂粒子と、水とを含有する化粧料であって、
前記親水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位及び脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体単位を有するもので、かつグリセリン吸収量が50〜120mL/100g、残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量が100ppm以下、粒度分布が20〜40であることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記多価アルコールの含有率が1〜30重量%、前記親水性樹脂粒子の含有率が1〜20重量%である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記多価アルコールは、グリセリン及び/又は1,3ブチレングリコールである請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
前記脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体は、下記式(I)及び/又は(II)で示される化合物である請求項1〜のいずれか1つに記載の化粧料。
【化1】
【請求項5】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体を1〜50重量部含有する単量体混合物を重合した後、水溶性重合開始剤で処理し、前記親水性樹脂粒子を得る工程を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記単量体混合物は、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、更に架橋性単量体を1〜20重量部含有するものである請求項5記載の化粧料の製造方法。
【請求項7】
前記工程は、前記水溶性重合開始剤での処理の後、粒子の平均粒子径及び/又は粒度分布を調整し、前記親水性樹脂粒子を得るものである請求項5又は6記載の化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い保湿性かつ、べたつきがなく、優れた再分散性、塗布時の使用感(触感、伸び)、及び肌への刺激性が少ない化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品では、光拡散効果による肌の欠点補正(シミ、そばかす、しわなどを隠蔽する)、滑り性の向上、滑らかな感触の付与、等の多様な目的で、樹脂粒子が使用されており、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法など、公知の重合方法を用いて、球状の樹脂粒子が作製されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表面が親水性マクロモノマーを含む重合性ビニルモノマーで変性されたアルキル(メタ)アクリレートの多層ポリマー微粒子が開示されているが、ここに記載の製法では、粒子に残存モノマーが多く、化粧品への臭気の移行、肌への刺激性、等の問題がある。また、コア/シェル構造であるため、生産性が悪く、高コストにもなる。
【0004】
特許文献2には、樹脂粒子を含む水相、油相、所定の界面活性剤を含む水中油型皮膚外用剤が開示されているが、ここで記載の樹脂粒子の製法でも残存モノマーが多く、同様の問題がある。加えて、従来の樹脂粒子を用いた化粧品では、肌への刺激性等の他、保湿性、べたつき、再分散性、塗布時の使用感(触感、伸び)、等についても更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3628489号公報
【特許文献2】特許第5095799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、高い保湿性かつ、べたつきがなく、優れた再分散性、塗布時の使用感、及び肌への刺激性が少ない化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、平均粒子径が1〜20μmの親水性樹脂粒子、多価アルコール等を含む化粧料において、該親水性樹脂粒子として、所定のグリセリン吸収量、粒度分布を有し、かつ残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を一定量以下に低減したものを用いることで、保湿性、べたつき、再分散性、塗布時の使用感(触感、伸び)、肌への刺激性が特に顕著に改善されることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0008】
本発明は、多価アルコールと、平均粒子径が1〜20μmの親水性樹脂粒子と、水とを含有する化粧料であって、前記親水性樹脂粒子は、グリセリン吸収量が50〜120mL/100g、残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量が100ppm以下、粒度分布が20〜40であることを特徴とする化粧料に関する。
【0009】
前記多価アルコールの含有率は、1〜30重量%であることが好ましく、前記親水性樹脂粒子の含有率は、1〜20重量%であることが好ましい。
前記多価アルコールは、グリセリン及び/又は1,3−ブチレングリコールであることが好ましい。
【0010】
前記親水性樹脂粒子は、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体を1〜50重量部含有する単量体混合物を重合した後、水溶性重合開始剤で処理して得られるものであることが好ましい。
【0011】
前記単量体混合物は、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、更に架橋性単量体を1〜20重量部含有するものであることが好ましい。
前記親水性樹脂粒子は、前記水溶性重合開始剤での処理の後、粒子の平均粒子径及び/又は粒度分布を調整して得られるものであることが好ましい。
【0012】
前記脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体は、下記式(I)及び/又は(II)で示される化合物であることが好ましい。
【化1】
【発明の効果】
【0013】
本発明は、所定の平均粒子径、グリセリン吸収量、残存(メタ)アクリル酸エステル系単量体量及び粒度分布を有する親水性樹脂粒子と、多価アルコールと、水とを含有する化粧料であるので、保湿性、べたつき、再分散性、塗布時の使用感(触感、伸び)、及び肌への刺激性に優れた化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧料は、所定の平均粒子径、グリセリン吸収量、残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量及び粒度分布を有する親水性樹脂粒子と、多価アルコールと、水とを含有する。
【0015】
化粧料成分として、このような特性を持つ特定親水性樹脂粒子を、多価アルコールとともに併用することにより、保湿性、べたつき、再分散性、塗布時の使用感(触感、伸び)、肌への刺激性、等の性能が特に顕著に改善される。例えば、多価アルコールと汎用樹脂粒子を含む化粧料で粒子の残存モノマー量を低減する場合に比べ、多価アルコールと親水性樹脂粒子を含むもので残存モノマー量を低減する方が、性能が効率的に改善され、前記性能が相乗的に改善される。
【0016】
親水性樹脂粒子の平均粒子径は、1〜20μmである。1μm未満であると、再分散性が悪く、また、塗布時の使用感(触感、伸び)が悪いため、感触改良剤としての効果が得られない。20μmを超えると、塗布時の使用感(触感、伸び)が悪くなる、等の問題が生じる。好ましくは、3〜15μm、より好ましくは4〜12μmである。
【0017】
親水性樹脂粒子のグリセリン吸収量は、50〜120mL/100gである。50mL/100g未満であると、グリセリンへの分散性が悪くなり、期待されるべたつき低減効果が発現しない。120mL/100gを超えると、べたつき低減効果が軽減する。好ましくは、60〜100mL/100g、より好ましくは70〜90mL/100gである。
【0018】
親水性樹脂粒子は、残存する未反応の(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量が100ppm(重量基準)以下である。100ppmを超えると、肌荒れ(皮膚刺激性)、臭いの問題が生じる。好ましくは、50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
【0019】
親水性樹脂粒子の粒度分布(粒子径の変動係数(CV値))は、20〜40である。20未満であると、化粧料への分散性が悪い。40を超えると、粗大粒子によるざらつきが生じ、塗布時の使用感(触感、伸び)が悪い。好ましくは、20〜38、より好ましくは25〜38である。
【0020】
なお、親水性樹脂粒子の平均粒子径、グリセリン吸収量、残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量、粒度分布は、後述の実施例の測定方法により得られる。
【0021】
親水性樹脂粒子の含有率は、化粧料100重量%中、1〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。1重量%未満であると、配合時に期待される効果が発現しないおそれがある。20重量%を超えると、化粧料の経時安定性、期待する保湿効果が悪化するおそれがある。
【0022】
本発明における親水性樹脂粒子は、例えば、水性媒体中で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体を含む単量体混合物のモノマー成分を重合させる工程1と、該工程1で得られた重合体混合物に水溶性重合開始剤による処理を施す工程2とを含む製造方法により作製できる。
【0023】
脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体としては、本発明の効果が得られる点から、(1)エーテル基と水酸基又は1価の炭化水素基とを有する、又は、(2)エステル基と水酸基又は1価の炭化水素基とを有する、脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体が好適である。エーテル基としては、エチレングリコール、プロピレングリコールに由来する基などが挙げられる。エステル基としては、ラクトンに由来する基などが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
中でも、下記式(I)、(II)で示される脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体が特に好ましい。このような特定単量体を使用しているため、粒子表面に親水部位が出やすく、より親水性の高い粒子が得られる。また、特定単量体由来の成分が粒子表面に存在するために、これが立体反発を引き起こし、樹脂粒子の媒体中での分散性も向上する。
【化2】
【0025】
式(I)、(II)において、R12、R22の水素、1価の炭化水素基のなかでは、所望の本発明の効果が得られるという点から、水素が好ましい。R12、R22が1価の炭化水素基の場合、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、飽和炭化水素基の方が望ましい。R12、R22の1価の炭化水素基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい。該炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基等が挙げられる。
【0026】
式(I)において、mが50より大きい場合や、nが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生するおそれがある。好ましいm及びnの範囲は1〜30である。一方、式(II)において、pが50より大きい場合にも、重合安定性が低下して合着粒子が発生するおそれがある。好ましいpの範囲は1〜30である。
【0027】
なお、式(I)における[(CO)−(CO)]の構造単位は、ブロック状、ランダム状、交互に結合したもののいすれでもよく、それらの組み合わせでよい。
【0028】
脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体には、市販品を利用できる。例えば、日油社製のブレンマーシリーズ、ダイセル化学社製のプラクセルFMシリーズが挙げられる。特に、ブレンマーシリーズでは、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーPME−400、プラクセルFMシリーズでは、プラクセルFM2Dが好適である。
【0029】
脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、1〜50重量部の範囲で混合することが好ましい。1重量部未満の場合、樹脂粒子の分散性が低下しやすくなるおそれがある。50重量部より多い場合、粒子表面で多重膜を形成し粒子間で凝集を引き起こすことがあるため好ましくない。より好ましくは、10〜30重量部である。
【0030】
脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体は、水性媒体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体に分散させて重合系に供給し、重合を進行させることができる。中でも、単量体混合物の油滴の表面に脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体を存在させやすいという点から、水性媒体に分散させることが好ましい。
【0031】
水性媒体は特に限定されず、水、水と水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール等の低級アルコール等)との混合媒体等が挙げられる。水性媒体は、後述のビニル系単量体100重量部に対して、100〜1000重量部の範囲で混合することが好ましく、より好ましくは150〜500重量部の範囲である。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリルエステル;メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等のメタクリル酸エステル;等が挙げられる。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外に、更に架橋性単量体を配合してもよく、例えば、重合性二重結合を2個以上有するモノマーを使用できる。
具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル系単量体;等が挙げられる。
【0034】
上記架橋性単量体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、1〜20重量部の範囲で混合することが好ましい。1重量部未満であると、生産性が著しく悪くなり生産コストが高くなる恐れがある。20重量部を超えると、粒子が硬くなるおそれがあり、使用感が劣るおそれがある。より好ましくは、3〜10重量部である。
【0035】
前述の各種(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用できる。なお、本発明における(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、上記脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を意味する。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体混合物の重合は、重合開始剤を用いて実施できる。
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。なお、重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して、0.05〜1.0重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0037】
前記工程1の重合は、特に限定されず、懸濁重合、乳化重合、シード重合等の公知の方法を使用できる。中でも、前述の特性を持つ親水性樹脂粒子が容易に得られるという点から、懸濁重合、乳化重合が好ましい。
【0038】
懸濁重合、乳化重合は、例えば、公知の条件で単量体混合物を懸濁又は乳化し、次いで、重合させることで実施できる。重合の際、脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に溶解しても、水性媒体に分散してもよい。また、公知の懸濁安定剤又は乳化剤を使用してもよい。
【0039】
懸濁液、乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散することで作製できる。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に予め混合した後、水性媒体中に分散させてもよいし、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは別に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。
【0040】
そして、各材料を用いて作製した(メタ)アクリル酸エステル系単量体、脂肪族(メタ)アクリレート系マクロ単量体及び重合開始剤を含む単量体混合物のモノマー成分を、懸濁重合や乳化重合することで、樹脂粒子が得られる。なお、重合温度は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択すればよい。
【0041】
重合時に、樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、界面活性剤や高分子分散安定剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上併用してもよい。界面活性剤の添加量は、単量体混合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0042】
高分子分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用できる。高分子分散安定剤の添加量は、重合性単量体100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0043】
前記工程1で得られた懸濁液(スラリー)中の樹脂粒子を、遠心脱水機等の公知の手段で、水性溶媒の除去、洗浄をし、得られたケーキを一旦単離した後、分散安定剤を含有する水性媒体中に分散させ、この系に水溶性重合開始剤を加えて処理することにより、工程2を実施できる。また、懸濁重合や乳化重合などに引き続いて、同じ水性媒体中に水溶性重合開始剤を添加して処理することもできる。このような水溶性重合開始剤による処理により、樹脂中に残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量が100ppm以下に低減され、結果、肌への刺激性や臭いが抑制される。
【0044】
工程2の水溶性重合開始剤による処理は、残存モノマーや重合体に水溶性重合開始剤が接触する方法であれば特にされない。例えば、前記水性媒体、重合体及び残存モノマーを含む混合物に、水溶性重合開始剤を添加し、所定温度で所定時間撹拌することで実施できる。
【0045】
水溶性重合開始剤としては公知のものを使用でき、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物類重合開始剤;2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・二硫酸・二水和物、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、2,2−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}・二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)・二塩酸塩、2、2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤類等が挙げられる。また、過硫酸塩類や有機過酸化物類の重合開始剤にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤なども挙げられる。
【0046】
水溶性重合開始剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量部である。0.01重量部未満では、残存する単量体の低減量が十分でなく、10重量部を超えても、更なる効果の向上は望めないおそれがある。
【0047】
処理温度は、使用する水溶性重合開始剤の半減期温度にもよるが、通常20〜110℃、好ましくは50〜90℃程度である。20℃未満では、樹脂中に残存する単量体を減少させるのに長時間を要し、110℃を超えると、樹脂成分が分解しやすくなるおそれがある。処理時間は、開始剤を添加する時期や処理温度にもよるが、通常0.5〜5時間程度であり、10時間も処理すれば十分である。0.5時間より短いと、単量体の十分な減少効果が得られず、10時間より長くてもそれ以上の効果が望めないし、生産効率が悪くなるおそれがある。
【0048】
次いで、前記工程2で得られた懸濁液中の樹脂粒子を、遠心脱水機等の公知の手段で、水性溶媒の除去、洗浄をして単離し、真空乾燥等で乾燥することで、乾燥粒子が得られる。更に必要に応じて、所定目開きの篩いに通す、高圧ホモジナイザー等のホモジナイザーで処理する、等の公知の手段により、作製された粒子を所望の平均粒子径や粒度分布に調整する工程3を実施することで、本発明における親水性樹脂粒子を製造できる。
【0049】
なお、親水性樹脂粒子は、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料、有機溶剤等を含んでもよい。
【0050】
本発明の化粧料に用いる多価アルコールとしては、2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(キシリトール等);6価アルコール(ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン等);2価アルコールアルキルエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等);グリセリンモノアルキルエーテル(キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等)等が挙げられる。なかでも、所望の本発明の効果が得られるという点から、2価、3価アルコールが好ましく、グリセリン、1,3−ブチレングリコールがより好ましく、グリセリンが特に好ましい。
【0051】
多価アルコールの含有率は、化粧料100重量%中、1〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましく、10〜20重量%がより好ましい。1重量%未満であると、保湿効果が失われ、肌荒れ防止効果等の付与にも問題が生じるおそれがある。30重量%を超えると、多価アルコール特有のべたつき感が過剰に現れるおそれがある。
【0052】
また、水の含有率は、化粧料100重量%中、30〜90重量%が好ましく、50〜80重量%がより好ましく、60〜80重量が更に好ましい。
【0053】
本発明の化粧料は、上記樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;等が挙げられる。
【0054】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている添加物を目的に応じて配合できる。そのような添加剤としては、例えば、界面活性剤、高分子化合物、色材原料(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、酸化チタン、粘土鉱物類(タルク、マイカ等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等のその他の樹脂粒子、特殊配合添加物等が挙げられる。また、油性成分を添加してもよい。
【0055】
油性成分は、化粧料に通常使用されているものが挙げられる。
例えば、液状油分としては、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シリコーン油等)等が挙げられる。また、極性油分としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油等、非極性油としては、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油等が挙げられる。更に、固形油分としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油などの固体油脂;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類;ミツロウ、カルナバワックスなどのロウ類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール等が挙げられる。
【0056】
なお、油性成分の含有率は、化粧料100重量%中、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例、比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
先ず、実施例、比較例における平均粒子径、粒度分布、グリセリン吸収量、残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量の測定法、保湿性、べたつき、皮膚刺激性、使用感(触感、伸び)、再分散性の評価方法を記載する。
【0058】
〔樹脂粒子の体積平均粒子径、粒度分布(CV値)〕
樹脂粒子の体積平均粒子径、粒度分布(CV値)は、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター(株)製測定装置)により測定する。測定は、ベックマンコールター(株)発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに規定されたサイズ(径)を有するアパチャーを用いて実施する。
【0059】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μm、10μmより大きく30μm以下の場合は100μm、30μmより大きく90μm以下の場合は280μm、90μmより大きく150μm以下の場合は400μm、のサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。
【0060】
また、アパチャーのサイズに適したCurrent(アパチャー電流)、Gain(ゲイン)をベックマンコールター(株)発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って設定する。
【0061】
測定用試料としては、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤10mL中にタッチミキサー(ヤマト科学(株)製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器((株)ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON II(ベックマンコールター(株)製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。
【0062】
体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0063】
樹脂粒子の粒度分布(粒子径の変動係数(CV値))は、以下の数式で算出する。
樹脂粒子の粒度分布(CV値)
=(樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差/樹脂粒子の体積平均粒子径)×100
【0064】
〔樹脂粒子のグリセリン吸収量〕
樹脂粒子のグリセリン吸収量は、JIS K 5101−13−2の測定方法をベースとして、煮アマニ油に代えてグリセリンを使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板をたてても、試料が流動しない」時点に変更した)方法によって、測定した。グリセリン吸収量の測定の詳細は、以下の通りである。
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器):10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505に規定する容量10mLのもの
(B)試薬:グリセリン(和光純薬工業(株)製)
(C)測定方法
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、グリセリンをビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子およびグリセリンの全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子およびグリセリンの全体が硬いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、蒸留水の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子およびグリセリンの混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
グリセリンの最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更にグリセリンを1滴加える。
(4)終点に達したときのグリセリンの消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
(D)グリセリン吸収量の計算
下記式により試料100g当たりのグリセリン吸収量を計算する。
W=(V/m)×100
ここで、W:グリセリン吸収量(mL/100g)、m:樹脂粒子の重量(g)、V:消費したグリセリンの容積(mL)
【0065】
〔残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量〕
(1)試料液の調製
試験管に、測定対象となる樹脂粒子1gと、二硫化炭素25mLと、内部標準液1mLとを投入し、室温にて12時間抽出した。得られた抽出液を1.8μL採取し、注入した。なお、内部標準液は、二硫化炭素75mLにトルエン0.1mLを加えたものとした。
【0066】
(2)残存(メタ)アクリル酸エステル系単量体の測定
上記試料液について、ガスクロマトグラフ装置((株)島津製作所製、商品名「GC−14A」)にて下記測定条件で測定を行い、メタクリル酸系モノマー量を内部標準法で定量した。
【0067】
<測定条件>
カラム充填剤:液相 PEG−20M
担体: Chromosorb W
カラムサイズ:3mmI.D.×3000mmL
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
キャリアーガス:窒素、空気、ヘリウム
キャリア―ガス流量:30mL/min(窒素)、300mL/min(空気)、35mL/min(ヘリウム)
カラム温度:105℃
注入口温度:110℃
【0068】
〔保湿性(しっとり感)の評価〕
化粧料を手首に塗布した際、指で触った際のしっとり感について、パネラー10名により官能評価を実施した。官能評価結果は、下記5段階評価の平均値で算出した。
5 非常にしっとりしている
4 しっとりしている
3 ややしっとりしている
2 少し、しっとりしている
1 全くしっとりしていない
【0069】
〔べたつきの評価〕
パネラー10名により、化粧料を顔に塗布した際に、頬のべたつきのなさを官能評価した。官能評価結果は、下記5段階評価の平均値で算出した。
5 べたつきがない
4 べたつきがほとんどない
3 若干べたつきを感じる
2 少しべたつきがある
1 かなりべたつきを感じる
【0070】
〔皮膚刺激性の評価〕
パネラー10名により、化粧料を肌に塗布した際に、皮膚への刺激感の判定を行った。評価基準は以下の通りである。
5 9名以上が、刺激が感じられないと回答。
4 7名以上9名未満が、刺激が感じられないと回答。
3 5名以上7名未満が、刺激が感じられないと回答。
2 3名以上5名未満が、刺激が感じられないと回答。
1 3名未満が、刺激が感じられないと回答。
【0071】
〔使用感の評価〕
試料を肌に塗布した際の使用感(触感、伸び)をパネラー10名により評価した。評価基準は以下の通りである。
5 9名以上が、使用感が良好
4 7名以上9名未満が、使用感が良好であると認めた。
3 5名以上7名未満が、使用感が良好であると認めた。
2 3名以上5名未満が、使用感が良好であると認めた。
1 3名未満が、使用感が良好であると認めた。
【0072】
〔再分散性の評価〕
化粧料を40℃で30日間放置した後、手で振り混ぜ、沈降した樹脂粒子全てが均一に分散するまでの振り混ぜた回数により、下記基準で評価した。
5 5回未満
4 5〜19回
3 20〜39回
2 40〜59回
1 60回以上
【0073】
(樹脂粒子1の製造)
攪拌機及び温度計を備えた容量5Lの反応容器に、ラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させた水2375gを入れ、分散安定剤としての、複分解生成法により生成させたピロリン酸マグネシウム48gを分散させた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル1079gとエチレングリコールジメタクリレート67gの混合物に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))228gと2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8gとを溶解させた混合液を入れて高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)で混合することで液滴径を8μm程度に調製した。次に、反応容器を50℃に加温し、引き続き105℃で2時間攪拌しながら懸濁重合を行い、スラリー(懸濁液)を得た。
【0074】
次いで、前記反応容器内の前記スラリーを冷却し、前記スラリーのpHがpH2以下になるまで、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解した。遠心脱水機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、脱水ケーキを得た。攪拌機及び温度計を備えた反応器に、前記脱水ケーキ100重量部と、水2500重量部と過硫酸カリウム7.5重量を加えた後で、前記スラリーを70℃にて5時間に亘って攪拌した後に冷却した。その後、遠心脱水機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、脱水ケーキを得た。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて80℃で真空乾燥させた後、目開き32μmの篩いに通し、樹脂粒子1を得た。
【0075】
(樹脂粒子2の製造)
前記単量体混合液を前記反応容器の前記分散液(水相)に入れ、前記オートクレーブの内容物を高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)にて、前記単量体混合液の液滴径14μm程度の懸濁液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子2を得た。
【0076】
(樹脂粒子3の製造)
攪拌機及び温度計を備えた容量5Lの反応容器に、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.30gと、両性界面活性剤としてのラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(純分35%)1.71gとを水3000gに溶解した水溶液を入れた。そして、分散安定剤としての、複分解生成法により生成させたピロリン酸マグネシウム60gを前記反応容器内の前記水溶液中に分散させ、分散液(水相)を得た。
また、メタクリル酸メチル(MMA)250gと、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))62gと、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)313gと、多孔化剤としての酢酸エチル375g、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.75gとを混合し、互いに溶解させて単量体混合液を調製した。
前記の予め調製した単量体混合液を前記反応容器内の前記分散液(水相)に入れ、前記オートクレーブの内容物を高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)にて、前記単量体混合液の液滴径8μm程度の懸濁液を調製した。次に、前記反応容器の内部温度を50℃に加温して前記オートクレーブの内容物を攪拌しながら、前記単量体混合液の懸濁重合を開始した。引き続いて、70℃で2時間加温処理を行いながら前記単量体混合液の懸濁重合を行い、スラリーを得た。
その後、前記反応器内のジャケットを70℃に保ちつつ、内圧を−500mmHgに減圧し、前記スラリーから酢酸エチルを除去した。次いで、前記反応器内の前記スラリーを冷却し、前記スラリーのpHがpH2以下になるまで、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解した。その後、遠心脱水機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、ケーキを得た。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて80℃で真空乾燥させた後、目開き32μmの篩いに通し、目的の樹脂粒子3を得た。
【0077】
(樹脂粒子4の製造)
前記単量体混合液を前記反応容器の前記分散液(水相)に入れ、前記オートクレーブの内容物を高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)を用いて4000rpmで10分間に亘って攪拌、分散させて一次懸濁液を作製した。
そして、懸濁液分散具(ナノマイザー社製 商品名「LNP−20/300」)を取り付けた高圧型分散装置(ナノマイザー社製 商品名「ナノマイザーLA−33」)に一次水性懸濁液の半分を供給し、一次水性懸濁液に29.4MPaの高圧下にて衝撃力を加えて重合性モノマーを微細化させて第二次懸濁液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子4を得た。
【0078】
(樹脂粒子5の製造)
前記単量体混合液を前記反応容器の前記分散液(水相)に入れ、前記オートクレーブの内容物を高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)にて、前記単量体混合液の液滴径30μm程度の懸濁液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子5を得た。
【0079】
(樹脂粒子6の製造)
メタクリル酸メチル(MMA)の使用量を200g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の使用量を250g、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))50g、多孔化剤としての酢酸エチル500gに変更した以外は実施例3と同様にして樹脂粒子6を得た。
【0080】
(樹脂粒子7の製造)
実施例1と同様にして懸濁重合を行い、スラリー(懸濁液)を得た後に、前記反応器内の前記スラリーを冷却し、前記スラリーのpHがpH2以下になるまで、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解した。遠心脱水機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、脱水ケーキを得た。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて80℃で真空乾燥させた後、目開き32μmの篩いに通し、樹脂粒子7を得た。
【0081】
(樹脂粒子8の製造)
〔種粒子の製造例1〕攪拌機、温度計を備えた容量5Lの反応容器に、水性媒体としてのイオン交換水3020gと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸エチル64gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン10.4gとを仕込み、反応容器の内容物を攪拌しながら内部を窒素置換し、内温を55℃に昇温した。さらに反応容器の内温を55℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム1.8gを、反応容器内の内容物に添加した後、15時間重合反応させた。重合後の反応液を400メッシュ(目開き32μm)の金網で濾過し、固形分としてポリメタクリル酸エチルからなる種粒子(種粒子(1)という)を14重量%含有するスラリーを作製した。このスラリーに含まれる種粒子(1)は、体積平均粒子径が0.75μmの真球状粒子であった。
【0082】
〔種粒子の製造例2〕
攪拌機及び温度計を備えた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン鎖を有しないアニオン性界面活性剤としてのジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日油株式会社製、製品名「ラピゾール(登録商標)A−80」)5.5gを溶解させたイオン交換水2200gと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル550gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン5.5gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル5.5gとを仕込み、高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサー」)を用いて8000rpmで10分間処理して乳化液を得た。この乳化液に、種粒子の製造例1で得られた種粒子(1)のスラリーを、固形分(種粒子)として300gとなるように加え、30℃で2.5時間撹拌後、分散安定剤としてポリビニルピロリドン(PVP K−30)20gを溶解させたイオン交換水1100gを加え、内容物を攪拌しながら内部を窒素置換した。次に、反応容器を55℃に加温し、引き続き70℃で1.5時間攪拌しながら懸濁重合を行い、スラリー(懸濁液)を得た。
重合後の反応液を400メッシュ(目開き32μm)の金網で濾過し、固形分としてポリメタクリル酸メチルからなる種粒子(以下、種粒子(2)という)を14重量%含有するスラリーを作製した。このスラリーに含まれる種粒子(2)は、体積平均粒子径が1.5μmの真球状粒子であった。
【0083】
〔重合体粒子の製造例〕
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル(MMA)650gと、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))50gと、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)300gに、重合開始剤としてのアゾイソビスブチロニトリル6g、過酸化ベンゾイル6gを溶解して得られた単量体混合物を、水性媒体としてのイオン交換水1100gにポリオキシエチレン鎖を有しないアニオン性界面活性剤としてのジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日油株式会社製、製品名「ラピゾール(登録商標)A−80」、液温25℃の水に対する溶解度;1.5g/100ml)を5g添加したものと混合し、ホモミキサー(プライミクス株式会社製の「T.K.ホモミキサーMARKII 2.5型」)に入れて回転数8000rpmで10分間処理して乳化液を得た。この乳化液に、種粒子の製造例2で得られた種粒子(2)のスラリーを、固形分(種粒子)として6.7gとなるように加え、30℃で2.5時間撹拌し、分散液を得た。
この分散液に、分散安定剤としてのポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工業株式会社製、製品名「ゴーセノールGM−14L」)を40g、重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.60gとを溶解させた水溶液2000gを加え、その後60℃で2時間、次いで100℃で2.5時間攪拌して重合反応を行い、重合体粒子のスラリーを得た。
加圧濾過機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、脱水ケーキを得た。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて80℃で真空乾燥させた後、目開き32μmの篩いに通し、樹脂粒子8を得た。
【0084】
(樹脂粒子9の製造)
実施例1と同様にして懸濁重合、脱水、洗浄、乾燥を行った後、目開き32μmの篩いに通せずに、樹脂粒子9を得た。
【0085】
(樹脂粒子10の製造)
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))を使用せずに、メタクリル酸メチル1305gとエチレングリコールジメタクリレート70gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂粒子10を得た。
【0086】
(樹脂粒子11の製造)
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME400:日油社製(式(I):R11=CH、R12=CH、m=0、n=9))を使用せずに、メタクリル酸メチル1305gとエチレングリコールジメタクリレート70gの混合物を、実施例1と同様にして懸濁重合を行い、スラリー(懸濁液)を得た後に、前記反応器内の前記スラリーを冷却し、前記スラリーのpHがpH2以下になるまで、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解した。遠心脱水機を用いて前記スラリーを水洗および脱水して、脱水ケーキを得た。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて80℃で真空乾燥させた後、目開き32μmの篩いに通し、樹脂粒子11を得た。
【0087】
上記で製造した樹脂粒子の平均粒子径、グリセリン吸収量、残存メタクリル酸エステル系単量体量、粒度分布(CV値)は、表1に示すとおりである。また、表1中の残存メタクリル酸エステル系単量体量について、「ND」との表記は、検出限界(5ppm)未満であることを意味する。
なお、樹脂粒子9に関しては、上記方法では測定できないが、化粧料とした時に、使用感(触感が悪く、ざらつく)が悪く、実質C.V.が非常に高い(50%以上)。
【0088】
【表1】
【0089】
(化粧料の製造)
上記で製造した各樹脂粒子、多価アルコール(グリセリン、1,3−ブチレングリコール)、水の各成分を表2、3に示す配合に従い、ミキサーで充分混合して、ボディローションを得た。各試料の保湿性、べたつき、皮膚刺激性、使用感(触感、伸び)、再分散性を評価し、結果を示した。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
表2により、所定の平均粒子径、グリセリン吸収量、残存(メタ)アクリル酸エステル系モノマー量、粒度分布を持つ特定親水性樹脂粒子、多価アルコール、水を含むことで、化粧料の保湿性、べたつき、皮膚刺激性、使用感(触感、伸び)、再分散性が顕著に改善されることが明らかとなった。
【0093】
表3により、親水性樹脂粒子とグリセリンを含む化粧料で該粒子の残存モノマーを低減した実施例1は、残存モノマーを含む比較例3に比べ、性能が顕著に改善されたのに対し、汎用樹脂粒子の樹脂粒子10、11を用いた比較例7、8では、残存モノマーの有無にかかわらず、性能評価できないほど、各性能が非常に悪かった。また、グリセリン配合の実施例1の方が、1,3−ブチレングリコール配合の実施例5に比べて、性能が優れていた。以上の結果から、多価アルコール、特にグリセリンと、残存モノマー量を低減した特定親水性樹脂粒子とを併用することにより、性能が相乗的に改善されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、各種化粧料に適用できる。