特許第6395708号(P6395708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395708複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理方法及び管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395708
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理方法及び管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20180913BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20180913BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04
   H05K13/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-530652(P2015-530652)
(86)(22)【出願日】2013年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2013071708
(87)【国際公開番号】WO2015019500
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】安井 義博
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−324664(JP,A)
【文献】 特開平05−138467(JP,A)
【文献】 特開2012−242950(JP,A)
【文献】 特開2001−337712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理装置が前記電子部品装着システムを管理する管理方法であって、
前記管理装置が、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、前記複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備えており、
前記割り付けることは、前記ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを選択し、前記ジョブグループとそのジョブグループに対して選択された最優先の生産ラインの組合せについての前記予定終了時刻を前記ジョブグループ毎に特定し、前記ジョブグループ毎に特定された前記予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係る前記ジョブグループをその最優先の生産ラインに割り付ける、ことを有する管理方法。
【請求項2】
前記割り付けることは、
(1)前記複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと前記複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を特定することと、
(2)前記未割り付けのジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻のなかから最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定することと、
(3)前記未割り付けのジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付けること、を有する請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記複数のジョブグループの全てが割り付けられるまで、前記(1)〜(3)のステップを繰返す請求項2に記載の管理方法。
【請求項4】
(1)のステップでは、(3)のステップで直前に割り付けられた生産ラインについての予定終了時刻のみを更新する請求項3に記載の管理方法。
【請求項5】
複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理装置が前記電子部品装着システムを管理する管理方法であって、
前記管理装置が、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、前記複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備えており、
前記割り付けることは、
(1)前記複数の生産ラインのなかで予定開始時刻が最も早い生産ラインを特定することと、
(2)前記複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループの各々について、前記予定開始時刻が最も早い生産ラインによる予定終了時刻を特定することと、
(3)前記未割り付けのジョブグループ毎に特定された前記予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付けること、を有する管理方法。
【請求項6】
前記複数のジョブグループの全てが割り付けられるまで、前記(1)〜(3)のステップを繰返す請求項5に記載の管理方法。
【請求項7】
複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理装置であって、
複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、前記複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付ける割付装置、を備えており、
前記割付装置は、前記ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを選択し、前記ジョブグループとそのジョブグループに対して選択された最優先の生産ラインの組合せについての前記予定終了時刻を前記ジョブグループ毎に特定し、前記ジョブグループ毎に特定された前記予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係る前記ジョブグループをその最優先の生産ラインに割り付ける、ように構成されている管理装置。
【請求項8】
前記割付装置は、
前記複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと前記複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を特定する第1特定処理部と、
前記未割り付けのジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻のなかから最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定する第2特定処理部と、
前記未割り付けのジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付ける第1割付処理部と、を有する請求項7に記載の管理装置。
【請求項9】
前記割付装置は、
前記複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと前記複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を記憶する記憶装置をさらに有する請求項8に記載の管理装置。
【請求項10】
前記第1特定処理部は、前記第1割付処理部が直前に割り付けた生産ラインについての予定終了時刻のみを更新する請求項9に記載の管理装置。
【請求項11】
複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理装置であって、
複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、前記複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付ける割付装置、を備えており、
前記割付装置は、
前記複数の生産ラインのなかで予定開始時刻が最も早い生産ラインを特定する第3特定処理部と、
前記複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループの各々について、前記予定開始時刻が最も早い生産ラインによる予定終了時刻を特定する第4特定処理部と、
前記未割り付けのジョブグループ毎に特定された前記予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付ける第2割付処理部と、を有する管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムの管理方法及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の生産ラインを有する電子部品装着システムは、複数のジョブグループの各々をどの生産ラインで行うかが割り付けられた生産順序計画によって管理されている。
【0003】
特開2001−337712号公報は、同一の生産納期のジョブグループを生産ラインに割り付けるときに、生産順序計画を作成する者の経験及びノウハウに基づいて特定のジョブグループに優先情報を付与する管理方法を開示する。この管理方法は、優先情報が付与されたジョブグループを優先的に生産ラインに割り付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2001−337712号公報の管理方法は、優先情報が付与されたジョブグループを優先的に割り付けるので、優先情報が付与されていないジョブグループの生産順序が遅くなる。このため、生産順序の遅いジョブグループのなかで装着作業に要する時間が長いものが残存することがある。この場合、生産ラインの生産終了時刻を複数の生産ライン間で均一化させることが困難となる。このような複数の生産ライン間の生産終了時刻の不均一は、電子部品装着システムの生産効率を低下させる。
【0005】
本明細書は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムにおいて、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化する管理方法及び管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される管理方法は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムに適用される。本明細書で開示される管理方法は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備える。予定終了時刻の遅い、即ち、装着作業に要する時間が長いジョブグループを生産ラインに優先的に割り付けると、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、本明細書で開示される管理方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【0007】
本明細書で開示される管理装置は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムに適用される。本明細書で開示される管理装置は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付ける割付装置、を備える。割付装置が、予定終了時刻の遅い、即ち、装着作業に要する時間が長いジョブグループを生産ラインに優先的に割り付けると、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。割付装置は、装着作業に要する時間の短いジョブグループを用いて、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、本明細書で開示される管理装置は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子部品装着システムの構成を示す。
図2】ホストコンピュータが有する管理装置の構成を示す。
図3】生産順序計画データを作成する第1の割付方法に係るフローチャートを示す。
図4】第1の割付方法で作成される予定終了時刻データを表すテーブルを示す。
図5】予定終了時刻データのテーブルを更新する様子を示す。
図6】複数の生産ラインに割り付けられた複数のジョブグループの生産順序の様子を模式的に示す。
図7】生産順序計画データを作成する第2の割付方法に係るフローチャートを示す。
図8】第2の方法で作成される予定終了時刻データを表すテーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で開示される電子部品装着システムは、複数の生産ラインを有する。ここで、生産ラインの各々は、プリント基板を搬送し、そのプリント基板に複数の電子部品を装着するように構成されている。典型的には、生産ラインの各々は、はんだ印刷機、複数の電子部品装着機、基板外観検査機及びリフロー炉等を含む装着関連機を備えていてもよい。生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序は、複数の生産ライン間で同一であってもよく、異なっていてもよい。生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序は、その生産ラインがプリント基板に複数の電子部品を装着する作業の処理能力において重要である。このため、生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序が複数の生産ライン間で異なる場合、ジョブグループの装着作業に要する時間は、生産ライン毎の処理能力に依存して異なる。ここで、ジョブとは、生産品目及び生産枚数についての生産条件を含む指令であり、必要に応じて他の生産条件(例えば、生産納期)を含んでいてもよい。また、ジョブグループとは、このようなジョブを少なくとも1つ以上含んだジョブの集合をいう。例えば、ジョブ「A」に指定されている生産品目に対応するプリント基板とジョブ「B」に指定されている生産品目に対応するプリント基板の各々に装着する電子部品の種類が概ね共通する場合、ジョブ「A」とジョブ「B」の装着作業をまとめて実行すれば、必要な電子部品を電子部品装着機にセットする作業(段取り作業ともいう)を省略することができる。このようなジョブ「A」とジョブ「B」が、ジョブグループを構成してもよい。
【0010】
本明細書で開示される管理方法は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備える。好ましくは、本明細書で開示される管理方法は、最優先の生産ラインによるジョブグループの終了予定時刻をジョブグループ毎に特定し、ジョブグループ毎に特定された予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその最優先の生産ラインに割り付けること、を備える。ここで、最優先の生産ラインとは、ジョブグループ毎に選択された生産ラインでもよく、全てのジョブグループに共通して選択された生産ラインでもよい。例えば、ジョブグループ毎に選択される最優先の生産ラインとは、対象のジョブグループを生産ラインに割り付けたときに、他の生産ラインのいずれよりも予定終了時刻が早い生産ラインであってもよい。全てのジョブグループに共通して選択される最優先の生産ラインとは、他の生産ラインのいずれよりも予定開始時刻が早い生産ラインであってもよい。このような最優先の生産ラインは、複数のジョブグループのうちの1つのジョブグループが割り付けられる毎に、異なるものとなる。このため、管理方法は、ジョブグループを最優先の生産ラインに割り付けることで、1つの生産ラインのみにジョブグループが割り付けられることを防止し、複数のジョブグループを複数の生産ライン間でバランスよく割り付けることができる。
【0011】
本明細書で開示される第1の管理方法では、割り付けることが、(1)複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を特定することと、(2)未割り付けのジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻のなかから最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定することと、(3)未割り付けのジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付けること、を有していてもよい。第1の管理方法は、(1)及び(2)のステップを実行することにより、ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを特定することができる。さらに、第1の管理方法は、(3)のステップを実行することにより、装着作業に要する時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。この結果、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、第1の管理方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。第1の管理方法では、複数のジョブグループの全てが割り付けられるまで、(1)〜(3)のステップを繰返してもよい。
【0012】
第1の管理方法の(1)のステップでは、(3)のステップで直前に割り付けられた生産ラインについての予定終了時刻のみを更新してもよい。予定終了時刻を算出するための計算量が抑えられるので、管理方法の処理が簡単化される。
【0013】
本明細書で開示される第2の管理方法では、割り付けることが、(1)複数の生産ラインのなかで予定開始時刻が最も早い生産ラインを特定することと、(2)複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループの各々について、予定開始時刻が最も早い生産ラインによる予定終了時刻を特定することと、(3)未割り付けのジョブグループ毎に特定された予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付けること、を有していてもよい。第2の管理方法は、(1)のステップを実行することにより、全てのジョブグループに共通する最優先の生産ラインを特定することができる。さらに、第2の管理方法は、(2)及び(3)のステップを実行することにより、装着作業に要する時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。この結果、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、第2の管理方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。第2の管理方法では、複数のジョブグループの全てが割り付けられるまで、(1)〜(3)のステップを繰返してもよい。
【0014】
本明細書で開示される管理装置は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付ける割付装置、を備える。好ましくは、本明細書で開示される管理装置の割付装置は、最優先の生産ラインによるジョブグループの終了予定時刻をジョブグループ毎に特定し、ジョブグループ毎に特定された予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその最優先の生産ラインに割り付ける。
【0015】
本明細書で開示される第1の管理装置では、割付装置が、第1特定処理部、第2特定処理部及び第1割付処理部を有していてもよい。第1特定処理部は、複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を特定する。第2特定処理部は、未割り付けのジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻のなかから最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定する。第1割付処理部は、未割り付けのジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付ける。第1の管理装置は、第1特定処理部及び第2特定処理部を有しているので、ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを特定することができる。さらに、第1の管理装置は、第1割付処理部を有しているので、装着作業に要する時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。この結果、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、第1の管理装置は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【0016】
第1の管理装置では、割付装置が、複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループと複数の生産ラインの全ての組合せについての予定終了時刻を記憶する記憶装置を有していてもよい。
【0017】
第1の管理装置では、第1特定処理部が、第1割付処理部が直前に割り付けた生産ラインについての予定終了時刻のみを更新してもよい。予定終了時刻を算出するための計算量が抑えられるので、管理装置の処理速度が速くなる。
【0018】
本明細書で開示される第2の管理装置では、割付装置が、第3特定処理部、第4特定処理部及び第2割付処理部を有していてもよい。第3特定処理部は、複数の生産ラインのなかで予定開始時刻が最も早い生産ラインを特定する。第4特定処理部は、複数のジョブグループのなかで未割り付けのジョブグループの各々について、予定開始時刻が最も早い生産ラインによる予定終了時刻を特定する。第2割付処理部は、未割り付けのジョブグループ毎に特定された予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループをその生産ラインに割り付ける。第2の管理装置は、第3特定処理部を有しているので、全てのジョブグループに共通する最優先の生産ラインを特定することができる。さらに、第2の管理装置は、第4特定処理部及び第2割付処理部を有しているので、装着作業に要する時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。この結果、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、第2の管理装置は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【実施例】
【0019】
図1に示されるように、電子部品装着システム1は、複数の生産ライン2及び複数の生産ライン2と通信可能なホストコンピュータ3を備える。電子部品装着システム1は、生産納期を順守しながら、複数の生産ライン2を利用してジョブグループを実行する。
【0020】
生産ライン2の各々は、プリント基板の搬送経路に沿って配置されている複数の装着関連機を備える。複数の装着関連機は、はんだ印刷機、複数の電子部品装着機、基板外観検査機及びリフロー炉を含む。生産ライン2は、搬送経路に沿ってプリント基板を搬送し、これらの装着関連機を利用して複数の電子部品をプリント基板に装着する。
【0021】
ホストコンピュータ3は、複数の生産ライン2を総括制御する。ホストコンピュータ3の1つの機能は、ジョブグループをどの生産ライン2で行うかの割り付け作業を行うことである。この割付作業は、ホストコンピュータ3が有する割付装置が実行する。図2に示されるように、ホストコンピュータ3が有する割付装置100は、入力装置12、表示装置14及び管理装置20を備える。
【0022】
入力装置12は、ユーザインターフェースであり、例えば、マウス及びキーボードを有する。表示装置14は、ディスプレイを有しており、後述する生産順序計画データが表す生産順序計画をディスプレイに表示する。作業者は、必要に応じて、表示装置14のディスプレイに表示された生産順序計画を、入力装置12を介して修正することができる。
【0023】
管理装置20は、処理装置21及び記憶装置22を有する。処理装置21は、中央演算装置を有しており、記憶装置22に記憶されている複数のデータを所定のプログラムに沿って演算処理する。処理装置21は、特許請求の範囲に記載の特定処理部及び割付処理部を含む。
【0024】
管理装置20の記憶装置22は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25、生産ライン能力データ26、予定終了時刻データ27及び生産順序計画データ28を記憶可能に構成されている。
【0025】
ジョブグループデータ23は、生産納期、生産品目及び生産数量に係る情報を含むデータである。生産予定の複数のジョブグループの情報を、作業者が入力装置12を介して管理装置20に入力すると、ジョブグループデータ23が記憶装置22に記憶される。
【0026】
生産プログラムデータ24は、プリント基板に装着すべき複数の電子部品の種類とその個数及び各々の電子部品を装着すべきプリント基板上の位置に係る情報を含むデータであり、それらの情報が生産品目毎に特定されている。
【0027】
パートデータ25は、電子部品装着機が電子部品を装着するときの動作条件に係る情報を含むデータであり、その情報が電子部品の種類毎に特定されている。
【0028】
生産ライン能力データ26は、生産ラインに配置されている装着関連機の種類、台数及び配置順序等に係る情報を含むデータであり、その情報が生産ライン毎に特定されている。
【0029】
予定終了時刻データ27は、ジョブグループを生産ラインに割り付けたと仮定したときに、そのジョブグループの装着作業が終了する予定の時刻に係る情報を含むデータであり、後述するように、生産順序計画データ28を作成するときに一時的に計算されるデータである。
【0030】
生産順序計画データ28は、ジョブグループをどの生産ラインでどのような順序で実行するかの情報を含むデータである。生産順序計画データ28は、管理装置20によって作成されるデータである。管理装置20は、後述する第1の割付方法又は第2の割付方法を実施することによって、生産順序計画データ28を作成(又は更新)する。
【0031】
以下では、管理装置20が、同一の生産納期の複数のジョブグープを生産ラインに割り付けるときに実行する割付方法について説明する。本実施例の管理装置20は、作業者の指示に基づいて、下記する第1の割付方法及び第2の割付方法のいずれかを、選択的に実行することができる。なお、他の実施形態として、管理装置20は、第1の割付方法と第2の割付方法の一方のみを実行可能であってもよい。
【0032】
(第1の割付方法)
先ず、第1の割付方法について説明する。図3に示されるように、ステップS11において、管理装置20の処理装置21は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25及び生産ライン能力データ26に基づいて、予定終了時刻データ27を作成する。図4に、予定終了時刻データ27を表すテーブルを例示する。第1の割付方法で作成される予定終了時刻データ27は、ジョブグループを生産ラインに割り付けたと仮定したときに、そのジョブグループの装着作業が終了する予定の時刻を、ジョブグループと生産ラインの全ての組合せについて記述するデータである。例えば、ジョブグループ1を生産ライン1に割り付けた仮定した場合、予定終了時刻は次のように計算される。まず、処理装置21は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25及び生産ライン能力データ26に基づいて、ジョブグループ1で指定されている装着作業を生産ライン1で実行したときに要する作業時間(サイクルタイムともいう)を計算する。次に、処理装置21は、生産ライン1が生産を開始することが可能な予定開始時刻に計算された作業時間を加算し、予定終了時刻T(1,1)を計算する。処理装置21は、このような計算をジョブグループと生産ラインの全ての組合せについて実行することで、予定終了時刻データ27を作成する。
【0033】
次に、ステップS12において、処理装置21は、ジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻を早い順にソートする。ソート順の結果に基づいて、処理装置21は、ジョブグループの各々について、最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定する。これにより、処理装置21は、ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを特定することができる。
【0034】
次に、ステップS13において、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻を遅い順にソートする。ソート順の結果に基づいて、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループとその生産ラインを特定する。
【0035】
次に、ステップS14において、処理装置21は、ステップS13で特定されたジョブグループとその生産ラインを割り付け、生産順序計画データ28に記述する。これにより、処理装置21は、作業時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。
【0036】
次に、ステップS15において、処理装置21は、ステップS14で割り付けられた生産ラインにおけるジョブグループ毎の予定終了時刻を再計算し、予定終了時刻を更新する。例えば、図5に示されるように、ステップS14でジョブグループ2が生産ラインbに割り付けられたとする。この場合、処理装置21は、ジョブグループ2についてのデータを予定終了時刻データ27のテーブルから削除し、生産ラインbにおけるジョブグループ2以外のジョブグループの予定終了時刻を再計算し、計算された予定終了時刻を更新する。このように、割り付けられた生産ラインについての予定終了時刻のみを再計算することで、割付作業の処理速度が向上する。
【0037】
次に、ステップS16において、処理装置21は、全てのジョブグループの割り付けが完了したか否かを判定する。全てのジョブグループの割り付けが完了していれば、割り付け作業が終了する。全てのジョブグループの割り付けが完了していなければ、ステップS12に戻る。
【0038】
上記したように、第1の割付方法は、ステップS12を行うことで、ジョブグループ毎に装着作業を最も早く完了できる最優先の生産ラインを特定することができる。このような最優先の生産ラインを割付対象の条件とすることで、第1の割付方法は、1つの生産ラインのみにジョブグループが割り付けられることを防止し、複数のジョブグループを複数の生産ライン間でバランスよく割り付けることができる。さらに、第1の割付方法は、ステップ13を行うことで、特定されたジョブグループと最優先の生産ラインの組合せのなかで予定終了時刻の最も遅いものを特定することができる。第1の割付方法は、ステップ14において、このようにして特定されたジョブグループと最優先の生産ラインの組合せを優先的に割り付けることができる。図6に、複数のジョブグループが生産ラインに割り付けられた様子を示す。ハッチングが施された矢印は、割付方法を実行するのに先立って割り付けが完了していたジョブグループを示す。ハッチングが施されていない矢印が、上記の割付方法で割り付けられたジョブグループを示す。図6に示されるように、上記の割付方法によれば、予定終了時刻の遅い、即ち、作業時間が長いジョブグループが最優先の生産ラインに優先的に割り付けられるので、割り付け作業が進むにつれて、作業時間が短いジョブグループが残存する。作業時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、上記の割付方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【0039】
(第2の割付方法)
次に、第2の割付方法について説明する。図7に示されるように、ステップS21において、管理装置20の処理装置21は、複数の生産ラインの予定開始時刻を早い順にソートする。このソート順の結果に基づいて、処理装置21は、複数の生産ラインのなかで予定開始時刻が最も早い生産ラインを特定する。これにより、処理装置21は、全てのジョブグループに共通する最優先の生産ラインを特定することができる。
【0040】
次に、ステップS22において、処理装置21は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25及び生産ライン能力データ26を利用して、ステップS21で特定された生産ラインにおける予定終了時刻データ27を作成する。図8に、予定終了時刻データ27を表すテーブルを例示する。第2の割付方法で作成される予定終了時刻データ27は、ジョブグループを特定された生産ライン(この例では、生産ラインX)に割り付けたと仮定したときに、そのジョブグループの装着作業が終了する予定の時刻を、ジョブグループと特定された生産ラインの全ての組合せについて記述するデータである。
【0041】
次に、ステップS23において、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された予定終了時刻を遅い順にソートする。このソート順の結果に基づいて、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループとその生産ラインを特定する。
【0042】
次に、ステップS24において、処理装置21は、ステップS23で特定されたジョブグループとその生産ラインを割り付け、生産順序計画データ28に記述する。これにより、処理装置21は、作業時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。
【0043】
次に、ステップS25において、管理装置20は、全てのジョブグループの割り付けが完了したか否かを判定する。全てのジョブグループの割り付けが完了していれば、割り付け作業が終了する。全てのジョブグループの割り付けが完了していなければ、ステップS21に戻る。
【0044】
上記したように、第2の割付方法は、ステップS21を行うことで、予定開始時刻が最も早い最優先の生産ラインを特定することができる。このような最優先の生産ラインを割付対象の条件とすることで、第2の割付方法は、1つの生産ラインのみにジョブグループが割り付けられることを防止し、複数のジョブグループを複数の生産ライン間でバランスよく割り付けることができる。さらに、第2の割付方法は、ステップS22及びステップS23を行うことで、特定された最優先の生産ラインで予定終了時刻の最も遅いジョブグループを特定することができる。第2の割付方法は、ステップS24において、このようにして特定されたジョブグループと最優先の生産ラインの組合せを優先的に割り付けることができる。第2の割付方法によれば、予定終了時刻の遅い、即ち、作業時間が長いジョブグループが最優先の生産ラインに優先的に割り付けられるので、割り付け作業が進むにつれて、作業時間が短いジョブグループが残存する。作業時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、第2の割付方法は、生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
1:電子部品装着システム
2:生産ライン
3:ホストコンピュータ
12:入力装置
14:表示装置
20:管理装置
21:処理装置
22:記憶装置
23:ジョブグループデータ
24:生産プログラムデータ
25:パートデータ
26:生産ライン能力データ
27:予定終了時刻データ
28:生産順序計画データ
100:割付装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8