(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれの前記疎水性置換基が、少なくとも2の炭素原子を含んでなり、そしてO、N、及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなることができ、但し、前記疎水性置換基は少なくとも6の炭素原子を有することを条件とする、請求項1に記載のポリアルキレンイミン誘導体。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のポリアミン誘導体は、カルボキシル化された置換基及び疎水性置換基をポリアミン上に有し、ここにおいて、これらの置換基は、互いに独立に酸素、窒素又は硫黄から選択される一つ、二つ又は三つの異種原子を含んでなることができる。本発明のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、カルボキシアルキル置換基を前記カルボキシル化された置換基として、そしてアルキル置換基を前記疎水性置換基としてポリアミン上に有するポリアミン誘導体である。
【0037】
本発明のポリアミン誘導体は、当技術分野において既知の方法によって得ることが可能である。一つの可能な方法は、ポリアミンのアミノ基によるハロゲンの求核性置換により、前記カルボキシル化された置換基を形成するハロゲン化されたカルボン酸、及びポリアミンのアミノ基によるハロゲンの求核性置換により、前記疎水性置換基を形成するハロゲン化された疎水性化合物によるポリアミンの誘導体化である。本発明のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、類似的に得ることが可能である。一つの可能な方法は、ハロアルカン酸及びハロアルカンによる求核性置換によるポリアミンのアルキル化である。ハロゲン又はハロ置換基は、塩素、臭素又はヨウ素原子であることができ、好ましくは、これらは臭素である。ポリアミン誘導体及びカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンの調製の更なる詳細は、以下に与えられる。
【0038】
ポリアミン
本発明のポリアミン誘導体を製造するための出発物質として使用することができるポリアミンは、複数のアミノ基を形成する複数の窒素原子を有するポリマー化合物である。これらの窒素原子は、プロトン化によって水溶液中で荷電されることができる。殆どの脂肪族アミンは、8又は9より大きいpKを有し、これは、これらが、生理学的pHである概略7.4のpH、又はより小さいpH値を有する水溶液中で実質的に又は完全に荷電されることを意味する。
【0039】
6より小さいpKを有するアミン部分、例えばピリジン又はアニリンは、ポリアミンのあまり好ましくないアミノ基である。各種のアミンのpK値は、これらが、en.wikipedia.orgにおいて見いだされる英文のWikipediaの関連する項目においてしばしば引用されるために容易に入手可能であり、又はこれらは、ソフトウェア、例えばACD/pKa database(Advanced Chemistry Development,Ontario,Canada)を使用して計算することができる。
【0040】
ポリアミンの複数の窒素原子は、第一級、第二級、第三級及び/又は第四級アミノ基であることができ、これらは、更に環系の一部であることができる。第一級、第二級、第三級及び/又は第四級アミノ基は、同じポリアミン分子中に存在することができる。これらは、第一級、第二級、第三級アミノ基が、先に記載したようにアルキル化することができるために好ましい。ポリアミンは、更に末端基(末端基)を含んでなることができ、これも更にアミノ基であることができる;然しながら、このような末端基は、更にポリアミンを製造するために使用される重合反応の開始基又は終止基であることもできる。
【0041】
ある種の直鎖ポリアミンの場合、内部アミノ基は、第二級アミノ基であることができる;このようなポリアミンの例は、ポリアルキレンイミンである。他の直鎖ポリアミンにおいて、アミノ基は、ポリマー骨格の一部ではなく、側鎖の一部であるか、又はこれらは、単独で側鎖を形成する。分枝鎖ポリアミンの場合、分枝点を形成する内部アミノ基は、一般的に第三級アミノ基であり、一方、分枝点ではない内部アミノ基は、一般的に第二級アミノ基である。このようなポリマーの分枝は、しばしば第一級アミノ基によって終止される。
【0042】
以下において、本発明のポリアミン誘導体、特にカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンを製造するために使用することができるポリアミンが記載される。これ以降、本発明のポリアミン誘導体及びカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンが記載される。
【0043】
第1の一般的態様において、本発明のポリアミン誘導体及びカルボキシルアルキル−アルキル−ポリアミンを調製するために使用可能なポリアミンの複数の窒素原子は、ポリアミンのポリマー骨格の一部である。ポリアミンは、ポリマー鎖内に複数の窒素原子を有する直鎖ポリアミンであることができる。このようなポリアミンは、以下の式(1):
(1) −[CH
2−NR
1−(CH
2)
x]−
の複数の単位を含んでなるポリアルキレンイミンであることができ、
式中、xは1から10の整数であり、そしてR
1は水素である。一つの態様において、xは1から5の整数、好ましくは1又は2或いは3であることができる。xの値は、同じポリアミン分子中の異なった(CH
2)
x基において同一であるか、又は異なっていることができる。例えば、xは、ポリアミンのポリマー鎖に沿うxの二つ又は三つの異なった値で、例えば2から3のxの値、2から4の値、又は2から5の値で変動することができる。式(1)のポリアミンにおいて、本質的にポリマー鎖内の全てのアミノ基は、第二級アミノ基である。
【0044】
mが、ポリアルキレンイミン中の式(1)の反復単位の数である場合、mは、12から100000、好ましくは12から20000、更に好ましくは20から10000、最も好ましくは20から5000の整数であることができる。
【0045】
アルキル化によって、特に求核性置換によって、前記ポリアミン誘導体のポリアミン部分になるポリアミンの例は、ポリアルキレンイミン、好ましくはポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン又はオリゴスペルミン或いはこれらの同族体である。ポリアミン部分は、12から20000の窒素原子、更に好ましくは20から10000の窒素原子を、ポリアミン分子当たり、又はmに対して先に定義したように含んでなることができる。
【0046】
別の方法として、アルキル化によって、特に求核性置換によって前記ポリアミン誘導体のポリアミン部分になることができるポリアミンは、分枝鎖ポリアミン、好ましくは分枝鎖ポリアルキレンイミンであることができる。このような分枝鎖ポリアルキレンイミンは、以下の式(2)から(4):
−[CH
2−NR
1−(CH
2)
x]− (2)
−[CH
2−NR
2−(CH
2)
x]− (3)
−(CH
2)
y−NR
32 (4)
のそれぞれの構造単位を有することによって定義することができ、
式中
R
1及びxは、上記で定義したとおりであり;
R
2は、式(2)、(3)及び/又は式(4)の単位を含んでなり;
R
3は、水素であり;そして
yは、1から10の整数であり、ここにおいて、yの値は、異なった(CH
2)
y基において同一であるか又は異なっていることができる。
【0047】
分枝鎖のポリアルキレンイミンにおいて、その主鎖は、第二アミノ基を含んでなる式(2)の二価の単位によって形成されることができる。更に、分枝鎖のポリアルキレンイミン、特にその主鎖は、R
2に結合した、分枝点としての第三窒素を含んでなる少なくとも一つの式(3)の単位を含んでなる。分枝するポリマー鎖は、少なくとも一つ、一般的には複数の式(2)の単位(一つ又は複数)を含んでなり、そして更に、更なる分枝に導く一つ又はそれより多い式(3)の単位を含んでなることができる。従って、分枝鎖のポリアルキレンイミンは、デンドリマー又はデンドリマー化ポリマーであることができる。多くの場合、これらの分枝鎖のポリアルキレンイミンは、不規則な構造又はランダムなポリアミンに導くランダムな配列で構造要素(2)、(3)及び(4)を含んでなる。式(4)の一価の基は、ポリアルキレンイミンの末端基を規定し、これは、主鎖、並びに分枝鎖上に存在することができる。ポリアルキレンイミン中に存在する式(2)、(3)及び(4)のそれぞれの複数の構造は、x、R
2及びR
3に関して同一であるか又は異なっていることができる。
【0048】
分枝鎖のポリアルキレンイミンの分枝の程度は、1から40%、好ましくは10から40%、更に好ましくは15から30%であることができる。当業者は、如何に、ポリマーの分枝を、例えば、pH滴定、及び滴定曲線の異なった区画の定量化又は1H−NMR測定により定量化するかを知っている。
【0049】
分枝鎖のポリアルキレンイミン中の分枝の程度の尺度は、第一級、第二級及び第三級アミノ基の比率である。直鎖のポリアルキレンイミンは、内部アミノ基として第二級アミノ基を排他的に有するが、分枝鎖のポリアルキレンイミンは、式(3)のような第三級アミノ基
を有し、その量は、分枝の程度の増加に伴って増加する。分枝鎖のポリアミン中の第一級アミノ基のモル比は、1から40%、好ましくは15から30%であることができる。第二級アミノ基のモル比は、15から85%、好ましくは30から70%であることができる。第三級アミノ基のモル比は、1から40%、好ましくは15から30%であることができる。
【0050】
前記ポリアミン誘導体又は前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンのポリアミン部分になることができる分枝鎖のポリアミンの例は、分枝鎖のポリアルキレンイミン、好ましくは分枝鎖ポリエチレンイミン、分枝鎖ポリプロピレンイミン、又は分枝鎖ポリブチレンイミンである。分枝鎖のポリアミン、例えば分枝鎖のポリアルキレンイミンは、12から100000の窒素原子、更に好ましくは20から20000の窒素原子を、ポリアミンの分子当たり有することができる。他の態様において、このようなポリマー中の窒素原子の数は、ポリアミンの分子当たり20から5000の窒素原子である。
【0051】
本発明のポリアミン誘導体又はカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンを製造するために使用するための、中性のpHの水性溶媒中で荷電された骨格を有するポリアミンの例は、以下の表1に記載されている:
【0053】
表1において、Mrは、数平均分子量(Mn)に関する相対分子量を意味する。
分枝鎖のポリアミンのもう一つの例は、以下の構造:
【0055】
のポリエチレンイミンであり、
ここでnは、数平均分子量Mnが約10000である整数である。そしてCAS番号9002−98−6を有する。これは、Sigma−Aldrichからカタログ番号408727で商業的に入手可能である。他の分枝鎖のポリアミンは、実施例中に記載されている。
【0056】
ポリアミンは、更に、ポリアミンオリゴマーのマルチマー集合体を形成することができる。マルチマー集合体の例は、Gosselin et al.(2001)Bioconj Chem,
12(6):989−994;Lynn et al(2001)J Am Chem Soc
123(33):8155−8156;Gopfrich等へのWO2007/020060又はTanaka等へのWO2007/120479中に記載されている。
【0057】
第2の一般的な態様において、本発明のポリアミン誘導体又はカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンを製造するために使用可能なポリアミンの荷電された窒素原子は、ポリマー骨格の一部ではなく、ポリアミンの側鎖中に存在する。幾つかの態様において、ポリアミンは、ポリエチレンの誘導体、例えばポリアリルアミン、ポリビニルアミン、カチオン化ポリアクリレート又は以下の構造(5):
(5) −[CH
2−CHR
4]
p−
のポリビニルエーテルであることができ、
式中、
R
4は、−NH
2、−CH
2−NH
2、−O−CH
2−CH
2−NH
2又は−C(=O)O−R
5から選択され、ここにおいて、
R
5は、−CH
2−CH
2−NH
2、−CH
2−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−CH
2−N−(CH
3)
2、及び−CH
2−CH
2−N−(CH
2−CH
3)
2から選択される。
【0058】
変数pは、ポリマーのサイズを示す整数であり、そして20から約50000で変化することが出来る。好ましい態様において、pは、20から5000であり、更に好ましい態様において、pは、100から2000である。
【0059】
他の態様において、ポリアミンは、ポリペプチド、例えばポリリシン、ポリオルニチン、ポリアルギニン等である。これらのポリペプチド中のアミノ酸残基の数は、pに対して上記で定義したとおりであることができる。なお他の態様において、ポリアミンは、キトサンのような糖骨格を有することができる。
【0060】
第1の一般的態様と同様に、第2の一般的態様のポリマーも、更に直鎖、分枝鎖又はデンドリマー型のものであることができ、これらは、更にポリアミンオリゴマーのマルチマー集合体であることもできる。
【0061】
第2の一般的態様のための荷電された側鎖を有するポリアミンの例を、以下の表2に記載する:
【0063】
形質導入を高い性能で達成するために、先に記載したようなポリアミンは、本発明のポリアミン誘導体を得るために、カルボキシル化された置換基及び疎水性置換基の両方で、例えばカルボキシアルキル及びアルキル置換基で改変される。カルボキシル化された置換基は、少なくとも6の炭素原子を含んでなることができる。
【0064】
カルボキシル化された置換基
カルボキシル化された置換基は、疎水性リンカーを経由してポリアミンのアミノ基に結合されたカルボキシル基を含んでなり、前記疎水性リンカーは、前記リンカーの結合をカルボキシル基に、そしてポリアミンのアミノ基を水素原子への結合によって置換することによって、前記リンカーから得ることが可能な化合物に対して決定される、3から20、好ましくは3から10、そして更に好ましくは4から9の分配係数logPを有することができる。logPを決定するための方法は、当業者にとって既知であり、そして水と1−オクタノール間の化合物の分布の実験による決定、又はこのような値を、情報源、例えば英語版のWikipediaから得ること、或いはソフトウェア、例えばACD/Labs 7.0(Advanced Chemistry Development,Ontario,Canada)を使用してlogPを計算することを含んでなる。
【0065】
カルボキシル化された置換基は、一つ又は二つのカルボキシル基、好ましくは一つのカルボキシル基を含んでなることができる。それぞれのカルボキシル化された置換基は、6から40の炭素原子、好ましくは6から20の炭素原子、そして更に好ましくは8から16の炭素原子を含んでなる。前記カルボキシル化された置換基の疎水性リンカーは、O、N、及びSから選択される1から3、好ましくは、1又は2の異種原子を含んでなることができる。好ましくは、異種原子は、O及びSから選択される。一つの態様において、O、N及びS、好ましくはO及びSから選択される1又は2の異種原子は、疎水性リンカー中に含有されることができる。従って、カルボキシル化された置換基は、カルボキシヒドロカルビル基であることができるか、又はこれらは、O、N、及びSから選択される、好ましくはO及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなるカルボキシヘテロヒドロカルビル基であることができる。前記ポリアミン誘導体の分子の複数のカルボキシル化された置換基の中で、排他的にカルボキシヒドロカルビル基が、排他的にカルボキシヘテロヒドロカルビル基が存在することができるか、又はカルボキシヒドロカルビル基及びカルボキシヘテロヒドロカルビル基が存在することができる。一つの態様において、複数のカルボキシル化された置換基は、全てカルボキシヒドロカルビル基である。もう一つの態様において、複数のカルボキシル化された置換基は、全てカルボキシヘテロヒドロカルビル基である。
【0066】
カルボキシル化された置換基がカルボキシヒドロカルビル基である場合、前記カルボキシヒドロカルビル基のヒドロカルビル部分は、飽和の脂肪族ヒドロカルビル部分、不飽和の脂肪族ヒドロカルビル部分、脂環式ヒドロカルビル部分、芳香族ヒドロカルビル部分、又は上述のリストの二つ又はそれより多い部分を含んでなる部分であることができる。
【0067】
カルボキシヒドロカルビル基の例は、カルボキシアルキル基、カルボキシアルケニル基、カルボキシアルキニル基、カルボキシシクロアルキル基、カルボキシシクロアルケニルル基、カルボキシアルキルシクロアルキル基、カルボキシシクロアルキルアルキル基、カルボキシアルキルシクロアルキルアルキル基、カルボキシアリール基、カルボキシアルキルアリール基、カルボキシアリールアルキル基、及びカルボキシアルキルアリールアルキル基である。カルボキシ基が結合するヒドロカルビル基の例及び定義は、更に疎水性置換基の文脈において以下に与えられる。複数の異なったこのようなヒドロカルビル基が結合されることができる。然しながら、先に与えたlogP値及び/又は炭素原子数の定義は適用される。
【0068】
カルボキシル化された置換基のヒドロカルビル部分の1、2又は3、好ましくは1又は2の炭素原子を、酸素、窒素又は硫黄によって置換することは可能であり、これによってカルボキシヘテロヒドロカルビル部分が形成される。異種原子によるいずれものこのような秩序だった置換が、交換された異種原子の原子価に適応するために結合した水素原子の調節を含むものであることは理解されることである。好ましい態様において、このようなカルボキシヘテロヒドロカルビル部分は、−O−、−S−、−N(H)C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)N(H)−、−C(O)−、−C(O)−N(H)−、−N(H)−C(O)−O−、−O−C(O)−、又は−S−S−から選択される一つ又はそれより多い官能基を、疎水性リンカー中に含んでなる。
【0069】
本発明の一つの側面において、疎水性リンカーは、アルキレン基、例えば直鎖若しくは分枝鎖のアルキレン基であるか又はそれを含んでなるか、或いはリンカーは、シクロアルキレン基であるか又はそれを含んでなる。アルキレン基は、n−アルキレン又はイソアルキレン基であることができる。アルキレン基の例は、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、テトラデシレン又はヘキサデシレン基である。シクロアルキレン基の例は、シクロペンチレン、シクロヘキシレン及びシクロヘプチレン基である。アルキルシクロアルキル基の例は、メチルシクロペンチレン、エチルシクロペンチレン、プロピルシクロペンチレン、ブチルシクロペンチレン、ペンチルシクロペンチレン、ヘキシルシクロペンチレン、メチルシクロヘキシレン、エチルシクロヘキシレン、プロピルシクロヘキシレン、ブチルシクロヘキシレン、ペンチルシクロヘキシレン及びヘキシルシクロヘキシレンである。一つ又はそれより多いこれらを疎水性リンカー中に組込むことができる。
【0070】
カルボキシル化された置換基は、カルボキシアルキル又はカルボキシシクロアルキル基であるか或いはこれらを含んでなり、そして6から20を含んでなることができる。このようなカルボキシル化された置換基は、カルボキシ−n−アルキル基、分枝鎖のカルボキシアルキル基又は環式カルボキシアルキル基及びこれらの構造又は配座異性体からなる群から選択することができる。好ましい態様において、カルボキシアルキル基は、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、2−シクロヘキシル酢酸、4−シクロヘキシル酪酸、6−シクロヘキシルヘキサン酸、2−(2’,3’又は4’エチルシクロヘキシル)−酢酸又は4−(2’,3’又は4’エチルシクロヘキシル)−酪酸或いは6−(2’,3’又は4’エチルシクロヘキシル)−ヘキサン酸から選択される酸のラジカルである。
【0071】
本発明のもう一つの側面において、疎水性リンカーは、アリーレン基であるか又はそれを含んでなり、そして6から20の炭素原子を有する。前記アリーレン基を形成するアリール基は、芳香族ヒドロカルビル基(炭素のみのアリール基)及び芳香族ヘテロヒドロカルビル基(ヘテロアリール基)を含む。前者の例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントリルを含む。窒素含有ヘテロアリール基は、中性のpHにおける付加的なカチオン電荷を回避するために、好ましくは<5のpK値を有するべきである。このような窒素含有ヘテロアリール基の例は、インドリル基 ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基及びプリニル基である。ヒドロキシ基を形成する酸素含有ヘテロヒドロカルビル基は、中性のpHにおける負の電荷を回避するために、好ましくはpK>12を有する。
【0072】
アルキルアリール基の例は、メチルフェニル(トリル)、エチルフェニル、4−イソプロピルフェニル、及びキシリル基である。アリールアルキル(アラルキル)基の例は、ベンジル、フェニルエチル及びトリチル基である。アルキルアリールアルキル基の例は、メチルベンジル及び4−イソプロピルベンジル基である。
【0073】
カルボキシアリールアルキル部分は、例えばo、m又はp−メチル安息香酸、或いはo−、m−又はp−エチル安息香酸に由来するラジカルであることができる。カルボキシアルキルアリールアルキル部分は、例えばo−、m−、又はp−メチルフェニル酢酸であることができる。カルボキシアルケニルアリールアルキル部分は、例えばo−、m−又はp−メチル桂皮酸であることができる。
【0074】
複数のカルボキシル化された置換基、例えば本発明のポリアミン誘導体上に存在するカルボキシアルキル基であるか又はそれを含んでなるものは、同一であるか又は異なっていることができる。簡単にするために、これらは同一であることができる。カルボキシル化された置換基のカルボキシ基は、疎水性リンカーのいずれもの炭素原子に結合することができる。好ましくは、カルボキシ基は、炭素原子に、次のように結合する:zが、ポリアミンの窒素原子に結合した炭素原子に対する、カルボキシル化された置換基(例えばカルボキシアルキル基)中の最も長い炭素鎖中の炭素原子の数である場合、カルボキシル基は、ポリアミンの窒素に結合した炭素原子を位置1と数えた場合、ポリアミンの窒素からz/2原子より大きく離れた位置で炭素原子に結合する。z/2の値が整数でない場合、上記の定義は、>z/2の次の整数によって定義される位置に導く。一つの態様において、カルボキシ基は、疎水性リンカー(カルボキシアルキル基の場合、アルキレン鎖)が接続するポリアミンの窒素原子から最も離れた(炭素原子の数に関して)疎水性リンカーの炭素原子に結合する。カルボキシ基は、カルボキシル化された置換基(又はカルボキシアルキル基)内のポリアミンの窒素から最も離れている炭素原子に、例えば、直鎖のカルボキシル化された置換基の場合、カルボキシル化された置換基(又はカルボキシアルキル基)の末端(オメガ位)の炭素原子に結合することができる。
【0075】
疎水性リンカーのために上記に与えた可能な基は置換することができるが、但し、上記に与えたlogP値が満足されることを条件とする。別の方法として、疎水性リンカーのために上記に与えられた可能な基は置換することができるが、但し、炭素原子の数及び上記で定義したとおりの可能な異種原子の数が満足されることを条件とする。
【0076】
疎水性置換基
疎水性置換基は、ポリアミンのアミノ基に結合することができ、そして前記疎水性置換基から、そのポリアミンのアミノ基への結合を、水素原子への結合によって置換することによって得ることが可能な化合物に対して決定される、1.5から20、好ましくは2から15、更に好ましくは2.5から10のlogPを有することができる。logPを決定するための方法は、当業者にとって既知であり、そして水と1−オクタノール間の化合物の分布の実験的決定、又はこのような値を、情報源、例えば英語版のWikipediaから得ること、或いはソフトウェア、例えばACD/Labs 7.0(Advanced Chemistry Development,Ontario,Canada)を使用してlogPを計算することを含んでなる。
【0077】
疎水性置換基は、2から40の炭素原子を、幾つかの側面において3から40の炭素原子を、好ましい側面において6から40の炭素原子を、そして更に好ましい側面において6から20の炭素原子を含んでなる。疎水性置換基は、O、N、及びSから選択される1から3、好ましくは1又は2の異種原子を含んでなることができるが、但し、前記疎水性置換基が6又はそれより多い炭素原子を含んでなることを条件とする。好ましくは、異種原子は、O及びSから選択される。従って、疎水性置換基は、ヒドロカルビル基又はヘテロヒドロカルビル基であることができ、後者は先に記述したように1から3の異種原子を含んでなる。前記ポリアミン誘導体の分子の複数の疎水性置換基の中で、排他的にヒドロカルビル基が、排他的にヘテロヒドロカルビル基が存在することができるか、又はヒドロカルビル基及びヘテロヒドロカルビル基が存在することができる。一つの態様において、複数の疎水性置換基は、全てヒドロカルビル基である。もう一つの態様において、複数の疎水性置換基は、全てヘテロヒドロカルビル基である。
【0078】
疎水性置換基がヒドロカルビル基である場合、これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルシクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、及びアルキルアリールアルキル基、並びに上述のリストの二つ又はそれより多い基を含んでなる基から選択することができる。但し、疎水性置換基が、6又はそれより多い炭素原子を含んでなることを条件とし、前記ヒドロカルビル基の1、2又は3の炭素原子を、酸素、窒素又は硫黄、好ましくは酸素又は硫黄によって置換し、これによってヘテロヒドロカルビル置換基を形成することが可能である。このようなヘテロヒドロカルビル置換基は、−O−、−S−、−N(H)C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)N(H)−、−C(O)−、−C(O)−N(H)−、−N(H)−C(O)−O−、−O−C(O)−、又は−S−S−.から選択される官能基を含んでなることができる。
【0079】
本発明の一つの側面において、疎水性置換基は、アルキル基、例えば直鎖又は分枝鎖アルキル基、或いはシクロアルキル基であるか又はそれを含んでなる。アルキル基は、n−アルキル又はイソアルキル基であることができる。アルキル基の例は、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル又はヘキサデシル基である。シクロアルキル基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル基である。
【0080】
アルケニル基の例は、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル及びヘキサデセニル基である。アルキニル基の例は、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、テロラデシニル及びヘキサデシニル基である。
【0081】
シクロアルケニル基の例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニル基である。
シクロアルキルアルキル基は、シクロアルキル基が、アルキル基に対応するアルキレン基に連結した基である。例えば、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル等である。
【0082】
アルキルシクロアルキル基は、アルキル基が、シクロアルキル基に対応するシクロアルキレン基に連結した基である。アルキルシクロアルキル基の例は、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、プロピルシクロペンチル、ブチルシクロペンチル、ペンチルシクロペンチル、ヘキシルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、ペンチルシクロヘキシル及びヘキシルシクロヘキシルである。
【0083】
アルキルシクロアルキルアルキル基は、アルキル基が、シクロアルキルアルキレン基に連結した基である。
本発明のもう一つの側面において、疎水性置換基は、アリール基を含んでなり、そして6から20、好ましくは7から15の炭素原子を有する。アリール基は、芳香族ヒドロカルビル基(炭素のみのアリール基)及び芳香族ヘテロヒドロカルビル基(ヘテロアリール基)を含む。前者の例は、フェニル、ナフチル及びフェナントリルである。窒素含有ヘテロアリール基は、中性のpHにおける付加的なカチオン電荷を回避するために、好ましくは<5のpK値を有する。このような窒素含有ヘテロアリール基の例は、インドリル基 ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基及びプリニル基である。ヒドロキシ基を形成する酸素含有ヘテロヒドロカルビル基は、中性のpHにおける負の電荷を回避するために、好ましくはpK>12を有する。
【0084】
アルキルアリール基の例は、メチルフェニル(トリル)、エチルフェニル、4−イソプロピルフェニル、メチルインドリル及びキシリル基である。アリールアルキル(アラルキル)基の例は、ベンジル、フェニルエチル、インドリルメチル及びトリチル基である。アルキルアリールアルキル基の例は、メチルベンジル及び4−イソプロピルベンジル基である。
【0085】
ポリアミン誘導体の分子上の異なった疎水性置換基は、同一であることができるか又は異なっていることができる。簡単にするために、これらは同一であることができる。
疎水性置換基のために上記に与えられた可能な基は、置換することができるが、但し、上記で定義したとおりの炭素原子の数及び可能な異種原子の数が、置換された疎水性置換基に対して満足されることを条件とする。
【0086】
好ましいポリアミン誘導体
本発明のポリアミン誘導体は、以下の式(10):
−[CH
2−NR
10−(CH
2)
x]− (10)
[式中、
xは、1から10の整数であり、ここにおいて、xの値は、異なった(CH
2)
x基において同一であるか又は異なっていることができ、
R
10は、水素、
疎水性リンカー(上記で定義したとおりの)を経由して、R
10が結合しているアミノの窒素に結合したカルボキシル基を含んでなるカルボキシル化された置換基、或いは
上記で定義したとおりの疎水性置換基であり、
そのそれぞれは、R
10の異なった出現において前記ポリアルキレンイミンの分子中に存在する;]
の単位を含んでなる直鎖のポリアルキレンイミン誘導体であることができ、
ポリアミン誘導体の前記ポリアルキレンイミン又はもう一つのポリアミン部分の分子当たりの窒素原子の数は、12から100000、好ましくは12から20000、更に好ましくは20から10000、そして最も好ましくは20から5000であることができる。R
10の複数回の繰返しは、同一であるか又は異なっていることができる。
【0087】
ポリマー鎖の繰返し単位によって上記で定義された直鎖のポリアミン誘導体は、一般的に基本的なポリアミンの製造において形成されるような末端基を有する。従って、本発明において、末端基に関する制約は存在しない。直鎖のポリエチレンイミンの場合、ヒドロキシエチル末端基が存在することができる。末端基の例は、以下に定義されるR
8のものである。
【0088】
別の方法として、本発明のポリアミン誘導体は、以下の式(11)、(12)及び(13):
−[CH
2−NR
10−(CH
2)
x]− (11)
−[CH
2−NR
11−(CH
2)
x]− (12)及び
−(CH
2)
y−NR
102 (13)
[式中、
R
10及びxは、上記で定義したとおりであり;
R
11は、式(11)、(12)及び(13)から選択される一つ又はそれより多い単位を含んでなり;
yは、1から10の整数であり、ここにおいて、yの値は、異なった(CH
2)
y基において同一であるか又は異なっていることができ;そして
ここにおいて、前記直鎖又は前記分枝鎖のポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、12から100000である;]
のそれぞれの単位を含んでなる分枝鎖のポリアルキレンイミン誘導体であり、
前記分枝鎖のポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、直鎖のポリアルキレンイミンのために上記で定義したとおりであることができる。末端基の例は、以下に定義されるR
8のものである。分枝鎖のポリアルキレンイミン中の分枝の程度は、1から40%、好ましくは10から40%、更に好ましくは15から30%であることができる。当業者は、如何に、ポリマーの分枝を、例えば、pH滴定及び滴定曲線の異なった区画の定量化又は1H−NMR測定により定量化するかを知っている。
【0089】
ポリアミン誘導体中のカルボキシル化された置換基及び疎水性置換基の組合せは、これらのモル比によって特徴づけることができる。本発明のポリアミン誘導体(例えばポリエチレンイミン誘導体)が、カルボキシル化された置換基及び疎水性置換基が10:1から0.1:1のモル比(C/A比)を有する場合、最良の性能を発揮することが見いだされた。好ましい態様において、これらの基のC/A比は、3:1から0.33:1である。
【0090】
ポリアミンに接合される場合、置換の程度(DOS)は、関連するもう一つの特徴である。DOSは、ポリアミンのアミノ基当たりのカルボキシル化された置換基及び疎水性置換基の合計のモルパーセントとして定義される。DOSは、少なくとも10%、好ましくは25から80%、更に好ましくは30から60%である。当業者は、如何にポリアミン誘導体のDOSを決定するかを知っている。これは、例えばニンヒドリン反応を使用して、ポリマー上の残留窒素原子を測定することによって達成することができる。もう一つの可能性は、1H−NMR分光法の使用である。
【0091】
幾つかの側面において、本発明は、ポリアミン誘導体の分子当たり一つの特定の種類のカルボキシル化された置換基及び一つの特定の種類の疎水性置換基の組合せで実施される。このような側面において、一つのカルボキシル化された置換基の炭素原子と一つの疎水性置換基のそれの合計は、10から30であり、好ましくはこの合計は、15から25である。
【0092】
更なる側面において、特定の組合せは、ポリアミンの種類、ポリアミンの分子量、カルボキシル化された置換基のサイズ及び疎水性置換基のサイズで行われる。このような側面の一つの好ましい態様において、ポリアミン誘導体は、2から500kDa(数平均分子量に関して)の直鎖のポリエチレンイミン部分を有し、カルボキシル化された置換基は、11から16の炭素原子を有し、そしてn−アルキルカルボン酸であり、そして疎水性置換基は、3から12の炭素原子を有し、そしてアルキル、好ましくはn−アルキル、又はアルキルシクロヘキシルである。
【0093】
他の好ましい態様において、ポリアミン誘導体は、0.5から200kDa(数平均分子量に関して)の分枝鎖のポリエチレンイミン部分を有し、カルボキシル化された置換基は、11から16の炭素原子を有し、そしてn−アルキルカルボン酸であり、そして疎水性置換基は、6から12の炭素原子を有し、そしてアルキル、好ましくはn−アルキル、又はアルキルシクロヘキシルである。
【0094】
更なる好ましい態様において、ポリアミン誘導体は、2から500kDa(数平均分子量に関して)の直鎖のポリエチレンイミン部分を有し、カルボキシル化された置換基は、11から16の炭素原子を有し、そしてn−アルキルカルボン酸であり、そして疎水性置換基は、6から12の炭素原子を有し、そしてアリールであり、好ましくはベンジル、イソプロピルベンジル、ナフチル又はインドリル部分を含んでなるアリールから選択される。
【0095】
他の好ましい態様において、ポリアミン誘導体は、0.5から200kDa(数平均分子量に関して)の分枝鎖のポリエチレンイミン部分を有し、カルボキシル化された置換基は、11から16の炭素原子を有し、そしてn−アルキルカルボン酸基であり、そして疎水性置換基は、6から12の炭素原子を有し、そしてアリール含有基であり、好ましくはベンジル、イソプロピルベンジル、ナフチル又はインドリル部分を含んでなる群から選択される。
【0096】
なお他の好ましい態様において、ポリアミン誘導体は、1から10kDa(数平均分子量に関して)の直鎖のオリゴスペルミン又はオリゴスペルミン同族体部分を有し、カルボキシル化された置換基は、11から16の炭素原子を有し、そしてn−アルキルカルボン酸基であり、そして疎水性置換基は、4から10の炭素原子を有し、そしてアルキル、好ましくはn−アルキル基である。
【0097】
一つの態様において、本発明のポリアミン誘導体は、カルボキシアルキル−アルキル ポリアミンである。アルキル部分は、少なくとも2の炭素原子を含んでなる。本発明の幾つかの側面において、アルキル部分は、3から40の炭素原子を有する。好ましい側面において、アルキル部分は、6から40の炭素原子を有する直鎖のアルキル基であり、更に好ましい側面において、炭素原子の数は、6から20である。ポリアミン上に存在する複数のアルキル基は、同一であるか又は異なっていることができる。本発明の他の側面において、アルキル部分は、更に芳香族環を含んでなり、そして6から40の炭素原子を有する。
【0098】
カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミン
カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、以下の式(6):
−[CH
2−NR
6−(CH
2)
x]− (6)
の単位を含んでなる、又は基本的にこれからなる直鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンであることができ、
式中、xは、1から10の整数であり、そしてここにおいて、xの値は、異なった(CH
2)
x基において同一であるか又は異なっていることができ;R
6は、水素、式C
rH
2r+1 のアルキル基又は式C
s−1H
2s−2COOHのカルボキシアルキル基である。R
6のこれらの基のそれぞれは、R
6の異なった出現において前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンの分子中に存在し;rは、2から40の整数であり;そしてsは、4から40の整数である。xに対する好ましい態様は、式(1)の文脈において上記で定義されたとおりである。数字rは、好ましくは6から40、更に好ましくは6から20である。数字sは、好ましくは4から20、更に好ましくは6から20、そしてなお更に好ましくは8から16である。
【0099】
前記直鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、12から100000、好ましくは12から20000、更に好ましくは20から10000、そして最も好ましくは20から5000であることができる。
【0100】
ポリマー鎖の繰返し単位によって上記で定義された直鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、一般的に基本のポリアミンの製造において形成されるような末端基を有する。従って、末端基に関して、本発明に制約は存在しない。末端基の例は、以下に定義されるR
8のものである。
【0101】
別の方法として、前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、分枝鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンである。分枝鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンは、以下の式(7)、(8)及び(9):
−[CH
2−NR
6−(CH
2)
x]− (7)
−[CH
2−NR
7−(CH
2)
x]− (8)
−(CH)
y−NR
62 (9)
のそれぞれの構造単位を含んでなるものであることができ、
式中、
R
6、x、r及びsは、上記で定義したとおりであり;
R
7は、式(7)、(8)及び(9)から選択される一つ又はそれより多い構造を含んでなり;
yは、1から10、好ましくは2から10、更に好ましくは2から6の整数であり、ここにおいて、yの値は、(CH
2)
y基の異なった出現において同一であるか又は異なっていることができる。
【0102】
R
7は、式(9)の基であることができるか、又はR
7は、式(7)及び/又は(8)の一つ又はそれより多い単位を含んでなる。R
7が式(7)の一つ又はそれより多い単位及び式(8)の一つ又はそれより多い単位を含んでなることも更に可能である。カルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンがポリマーであるために、その一分子は、一般的に構造が異なる複数のR
7のグループを含んでなる。
【0103】
前記分枝鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、12から100000、好ましくは20から20000、更に好ましくは20から10000、そして最も好ましくは20から5000であることができる。
【0104】
分枝鎖のポリアルキレンイミン中の分枝の程度は、1から40%、好ましくは10から40%、更に好ましくは15から30%であることができる。当業者は、如何に、ポリマーの分枝を、例えば、pH滴定、及び滴定曲線の異なった区画の定量化により定量化するかを知っている。
【0105】
先に記載したカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミン中のカルボキシアルキルとアルキル基のモル比は、以下に定義されるとおりであることができる。置換の程度(DOS)も、更に以下に定義される。
【0106】
幾つかの側面において、カルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンを使用する本発明は、カルボキシアルキル及びアルキル部分の特定の組合せで実施される。好ましい態様において、カルボキシアルキル基は、脂肪族アルキル基と組合され、そして両方の部分中の炭素原子の合計は、10から30であり、更に好ましい態様において、この合計は、15から25である。これらの態様において、好ましくは一つの種類のカルボキシアルキル基が、一つの種類のアルキル基と組合される。
【0107】
更なる側面において、特定の組合せは、ポリアミンの種類、ポリアミンの分子量、カルボキシアルキル基の長さ及びアルキル基の長さでなされる。このような側面の一つの好ましい態様において、ポリアミンは、2から30kDa(数平均分子量に関して)の直鎖のポリエチレンイミンであり、カルボキシアルキル基は、8から16の炭素原子を有し、そしてアルキルは、6から16の炭素原子を有する。なお更に好ましいものは、カルボキシアルキル基が10から16の炭素原子を有し、そしてアルキルが約9の炭素原子を有する組合せである。もう一つの好ましい態様において、ポリエチレンイミンは、約10kDaの分枝鎖のポリマーであり、そしてカルボキシアルキル基は8から16の炭素原子を有し、そしてアルキルは6から16の炭素原子、更に好ましくは約9の炭素原子を有する。
【0108】
カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミン中のカルボキシアルキル及びアルキル基の組合せは、これらのモル比によって特徴づけることができる。本発明のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミン(例えばカルボキシアルキル−アルキル−ポリエチレンイミン)が、カルボキシアルキル及びアルキル部分が6:1から0.33:1のモル比(C/A比)を有する場合、最良の性能を発揮することが見いだされた。好ましい態様において、これらの基のC/A比は、3:1から0.8:1である。更に好ましい態様において、ポリアミンは、C11カルボキシアルキル基及びC9アルキル基で置換されたポリエチレンイミンであり、ここにおいて、C/A比は、2:1から0.5:1、更に好ましくは約1である。
【0109】
ポリマーに接合された場合、置換の程度(DOS)は、関連するもう一つの特徴である。DOSは、ポリアミンのアミノ基当たりのカルボキシアルキル部分及びアルキル部分の合計のモルパーセントとして定義される。DOSは、少なくとも10%、好ましくは25から80%、更に好ましくは30から60%である。当業者は、如何にポリアミン誘導体のDOSを決定するかを知っている。これは、例えばニンヒドリン反応を使用して、ポリマー上の残留窒素原子を測定することによって達成することができる。もう一つの可能性は、1H−NMR分光法の使用である。
【0110】
特に好ましい実施例において、ポリアミンは、C11カルボン酸及びC9アルキル基で置換されたポリエチレンイミンであり、ここにおいて、C/A比は、2:1から0.5:1であり、そしてDOSは、35から45%である。
【0111】
以下の表3は、ポリアミン誘導体の幾つかの具体的な態様を記載する。略語又は記号名のリストは、実施例11及び15を参照されたい。
【0113】
本記載を通して、構造式は、非荷電の又は非イオン化の形態で与えられる。然しながら、これらの構造の窒素原子が、特に水溶液中でプロトン化されることは当業者にとって明白である。従って、これらの式のいずれかによって定義される化合物は、更に窒素原子のいずれか一つが荷電された状態の化合物又はイオンを含んでなる。
【0114】
ポリアミン誘導体の製造
本発明のポリアミン誘導体は、先に記載したポリアミンのいずれかの、先に記載したカルボキシル化された置換基及び疎水性置換基による改変によって調製することができる。このような方法は、当技術分野において公知であり、そして更に実施例中で例示されている。例えば、カルボキシル化された置換基及び疎水性置換基は、ポリアミンをアルカリ性の条件下で、ハロゲン化されたカルボン酸及びハロゲン化された疎水性化合物で誘導体化することによって、その対応するハロゲン化された化合物を経由して導入される。臭素がこれらの化合物におけるハロ原子として好ましい。好ましい態様において、これは、α,ω−ブロモカルボン酸及びブロモ化合物、例えばハロ化合物としてのブロモアルカン又はブロモアリールの使用によって達成される。これらの二つの誘導体化は、ハロゲン化されたカルボン酸及びハロゲン化された疎水性化合物の混合物を使用して連続して又は並行して行うことができる。ハロゲン化されたカルボン酸とハロゲン化された疎水性化合物の混合比は、調製されるポリアミン誘導体中のカルボキシルと疎水性基の所望のモル比を達成するために適切に選択される。近似的に、並行する改変反応におけるハロゲン化されたカルボン酸とハロゲン化された疎水性化合物のモル混合比は、ポリアミン誘導体中のカルボキシル化された置換基と疎水性置換基のモル比に対応する。得られた生成物中のカルボキシル化された置換基と疎水性部分のモル比は、例えば、1H−NMRによって分析することができる。所望のモル比からの実測モル比の偏差は、所望のモル比のこれらの置換基で置換された改変されたポリアミンを得るために、ハロゲン化されたカルボン酸とハロゲン化された疎水性化合物の混合比を調節するために使用することができる。所望の置換の程度(DOS)を達成することができ、そして必要な場合、一方のハロゲン化されたカルボン酸及びハロゲン化された疎水性化合物の適した相対的モル量を、他方のポリアミンの量に対して使用することによって、類似の方法で調節されることは当業者にとって明白である。反応は、一般的に有機溶媒、好ましくはアルコールのような極性有機溶媒中で行われる。他の態様において、カルボキシル化された置換基及び疎水性置換基の導入は、対応する二カルボン酸、それらの無水物又は塩化物を使用するアシル化によって、或いはカルボン酸及びハロゲン化された疎水性化合物のそれぞれの不飽和誘導体を使用するマイケル付加反応によって達成される。
【0115】
本発明のポリアミン誘導体は、最先端の技術中に記載されている化合物とは異なる。Wakefield et al.(2005)Bioconj Chem 16(5):1204−1208は、一つから四つの炭素原子を持つアルキル基を有するアミノエチル−ビニルエーテル及びアルキル−ビニルエーテルからのコポリマーを報告している。本発明と対照的に、Wakefieldのポリマーは、カルボキシル部分を含まず、従ってこれらは、ポリマー上の必須の種類の官能基を欠損している。本発明のポリアミン誘導体は、更に、Chembiochem,2008,9,1960−1967中でvan Vliet et al.(2008)によって提示されている改変されたポリエチレンイミンとも異なっている。そこでは、ポリエチレンイミンは、ドデシル、ベンジル及びメチル部分で系統的に改変されている。再び、本発明の必須のカルボキシアルキル基は、van Vlietらによって使用されていない。更に、四級化アミノ基の広範な形成が、ヨウ化メチルの使用によって起こっている。
【0116】
Wakefield又はvan Vlietと対照的に、WO08/074488及びOskuee et al.(2010)J Gene Med 12:729−738は、両方共付加的なアルキル基の使用については触れていない。事実、WO08/074488は、カルボキシアルキル基(その中のTEE)の使用とアルキル化によって達成される単なる疎水性改変(A2文書の60頁)を明白に区別している。他方、Oskueeは、カルボキシル化の効果が、アルキル化により仲介される特徴ではなく、減少した表面電荷により仲介されることを教示している。
【0117】
形質導入体としての本発明のポリアミン誘導体の使用
本発明のポリアミン誘導体、例えばカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、細胞へのポリアニオンの形質導入のために使用される。従って、これらのポリアミン誘導体は、本明細書中で本発明の形質導入体とも呼ばれる。
【0118】
ポリアニオンは、ペプチド、タンパク質及び核酸の群から選択することができる。ある態様において、ポリアニオンは、抗体から選択されるタンパク質である。具体的な態様において、抗体は、IgG種のものである。他の態様において、抗体の断片、例えばFab、Fab’、ジスルフィド結合したF(ab’)2断片、又は化学的に結合したF(ab’)2断片、或いはscFv断片が使用される。好ましい態様において、ポリアニオンは、核酸である。
【0119】
核酸は、本明細書中で使用する場合、制約されるものではないが、DNA又はRNA或いはこれらの誘導体又は類似体を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、本明細書中で使用する場合、いずれものポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは、非改変RNA又はDNA或いは改変されたRNA又はDNA、或いは混合されたDNA/RNAのものであることができる。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であることができる。プラスミドは二本鎖ポリヌクレオチドの例であり、mRNAは一本鎖ポリヌクレオチドの例である。オリゴヌクレオチドは、本明細書中で使用する場合、二つ又はそれより多い、しばしば三つより多い、そして通常10より多い、そして100より少ないヌクレオチドを持つ分子として定義され、これらは、非改変RNA又はDNA、或いは混合されたDNA/RNA或いは改変されたRNA又はDNAのものであることができ、ここにおいて、改変は、LNA(ロックド核酸)中に見出されるような環の架橋、ヌクレオシドの2’位における各種の改変、例えば2’Me、2’OMe、2’MOE、2’F等を含み、又はここにおいて、リボース以外の糖、例えば2’FANAヌクレオチド中のアラビノース、アンロックド核酸中のグリセロール又はヘキシトール構造が使用される。オリゴヌクレオチドのサイズは、オリゴヌクレオチドの究極の使用を含む多くの因子に依存する。オリゴヌクレオチドの典型的な例は、siRNA、アンチセンス阻害剤、miRNA、DNAザイム、アプタマー等である。本質的に、その骨格に負の電荷を保有する全ての核酸は、本発明の形質導入体と共に使用するのに適合性しており、これは、各種の骨格改変核酸、例えばホスホチオエート結合又はホスホジチオネート結合を含んでなるものを含む。対照的に、非荷電の核酸、例えばメチルホスホネート又はペプチド−核酸(PNA)から構築されたものは、本発明の形質導入体にあまり適合性していない。
【0120】
核酸又は他のポリアニオンを形質導入するために、核酸(又は他のポリアニオン)と形質導入体の複合体が、一般的には作られる。形質導入試薬とポリアニオンの複合体の形成は、当業者にとって既知である。一般的に、これは、形質導入体を含んでなる第一の溶液及びポリアニオン又は核酸を含んでなる第二の溶液を混合することによって達成することができる。典型的には、形質導入体によって提供されるカチオン性電荷の数は、ポリアニオン上の負の電荷の数より高い。この比は、当技術分野においてN/P比として知られ、ここにおいて、Nは、形質導入体上の窒素の形式電荷の数を意味し、そしてPは、核酸上のリン酸基の数を意味する。幾つかの態様において、核酸との組合せにおけるポリアミン誘導体の使用のためのN/P比は、2から20であり、好ましい態様において、このような比は、5から15であり、そしてなお更に好ましい態様において、N/P比は、約10である。
【0121】
他の態様において、N/P比は、2から6、更に好ましくは概略4である。N/P比によって、核酸とポリアミン誘導体の複合体は、異なった電荷及び異なった粒子サイズを有することができる。約10又はそれより大きいN/P値を有する複合体は、ゼータ電位測定によって決定されるように、中性の又は僅かに正の表面電荷を有する。このような複合体の粒子サイズは、動的光散乱法によって決定されるように、200から1000nm、好ましい態様において、250から500nmである。
【0122】
約6又はそれより低いN/Pを有する複合体は、ゼータ電位測定によって決定されるように、中性から負の表面電荷を有する。約6又はそれより小さいN/Pを有する複合体の粒子サイズは、動的光散乱法によって決定されるように、50から500nmであり、好ましい態様においては、100から200nmである。
【0123】
粒子サイズ及び粒子の表面電荷が、脊椎動物、哺乳類又はヒトの体循環における粒子の分布の決定要素であることは当業者にとって公知である。150nm又はそれより小さいサイズを有する粒子は、血流から肝臓実質に達することが可能である。一方、大きい粒子は排除される。対照的に、腫瘍、炎症の部位又は脾臓の間質細胞は、約500nmまでの大きい粒子サイズによって到達されることができる。
【0124】
本発明の形質導入体と形質導入されるポリアニオンの複合体の形成が、一般的に行われる。ポリアニオン、例えば核酸の複合体の形成は、形質導入体との電荷の相互作用を含む。このような相互作用は、複合体の相手の双方がイオン化される3から9のpHの範囲の水溶液中で達成される。幾つかの態様において、複合体形成のためのpHは、4から8であり、そして好ましい態様において、前記pHは5から7である。複合体形成溶液のpHは、一つ又はそれより多い緩衝物質の使用によって調整される。原理的には、前述の範囲内のpKを有し、そして細胞に対して無毒性であるいずれもの緩衝物質を、使用することができる。好ましい態様において、酢酸、マレイン酸、コハク酸、カルボン酸、リン酸、クエン酸、メチルエチルスルホン酸(MES)、ビス−トリス、ビス−トリス−プロパン、トリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシンに基づく緩衝剤、又はグッドシリーズの緩衝剤、例えばHEPES、TES、MOPS、BES、MOPSO、ACES、PIPES、ADA、HEPPS、が使用される。更に好ましい緩衝剤は、酢酸、リン酸、クエン酸又はHEPESである。
【0125】
その中で複合体の形成が起こる溶液は、これらの物質が複合体形成と競合しないか、又は細胞に対して毒でない限り、塩又は糖のような他の成分を含んでなることができる。好ましい態様において、塩の量は、溶液の全イオン強度が0.2モル/Lより低いように制約され、更に好ましい態様において、イオン強度は、0.1モル/Lより低い。細胞によって良く許容される塩は、塩化ナトリウムである。0.1モル/Lより低いイオン強度が、オリゴヌクレオチドの結合に対して好ましく、一方、ポリヌクレオチド、例えばプラスミド又はmRNA、との複合体形成のためには、イオン強度はより高いことができる。
【0126】
形質導入複合体の細胞への付加中の浸透圧ストレスを回避するために、浸透圧を調節するために、複合体形成溶液に糖を加えることができる。幾つかの態様において、糖の付加は、細胞に加えられる溶液の全浸透圧が、150から500mosm/Lであるように制約され、好ましい態様において、浸透圧は、270から310mosm/Lである。好ましい態様において、形質導入混合物の浸透圧を調節するために、グルコース、スクロース又はトレハロースが使用される。
【0127】
形質導入混合物が、更に未知の組成を持つある種の媒体を使用して調製することができることが驚くべきことに見出された。多くの場合、形質導入混合物は、細胞培養培地、例えばDMEM、Optimem(Life Technologiesの商標)等で調製することができた。
【0128】
本発明の形質導入体は、水又は緩衝液中の制約された溶解性を有し得る。溶解性は、pH及び本発明のポリアミン誘導体に付随するイオン化の関数である。一般的な法則として、これらの化合物は、酸性化により、例えば7又はそれより小さいpHを有する培地中で良好な水中の溶解性を有する。対照的に、ポリアミン誘導体は、例えばエタノール、プロパノール、1,2−ジヒドロキシプロパン又はイソプロパノールのようなアルコール(これらは、更に本明細書中で集合的に“短鎖アルコール”とも呼ばれる)中に、9又はそれより高いpHで容易に溶解する。pHにもよるが、溶媒としての短鎖アルコールの水との混合物、例えば33から100%のエタノール、プロパノール、1,2−ジヒドロキシプロパン又はイソプロパノールを有する混合物を、より少なくイオン化された形態の形質導入体のために、或いは0から66%の前記アルコールを有する混合物を、より多くイオン化された形態の形質導入体のために使用することも可能である。ある態様において、形質導入体は、20から200mM(形質導入体中の窒素原子に基づき)の形質導入体を短鎖アルコールのような低級アルコール中に含有する溶液が、原液として保存される。次いで、約0.1mMから5mMの作業濃度の形質導入体を、水性緩衝溶液中への原液の希釈によって作り出すことができる。典型的には、短鎖アルコールは形質導入混合物から除去する必要はなく、そして細胞によって許容される。
【0129】
具体的な態様において、形質導入体は、以下の形質導入プロトコルの下で使用される:
1)ポリアミン誘導体を、33から100%エタノール、好ましくは70%エタノール中の50mM溶液(窒素含有量に基づき)として供給する。
【0130】
2)10mMのリン酸二水素ナトリウム及び3mMの水酸化ナトリウムを含んでなる形質導入緩衝液を調製する。
3)改変されたポリアミンを形質導入緩衝液中で1mM溶液に希釈する。
【0131】
4)siRNAを形質導入緩衝液中に22μMのsiRNAに希釈する。siRNA上のリン酸の平均数が約45であるため、リンの全濃度は約1mMである。
5)ポリアミン及びsiRNAの作業溶液を10+1の比で混合し、これは、10のN/P比、及び2μMの複合体形成混合物中のsiRNAの濃度をもたらす。
【0132】
6)100μlの培養された細胞の培地当たり20μlまでの(5)で調製された形質導入混合物を加える。
別の態様において、形質導入体は、以下の一般的プロトコルと共に使用される:
1)ポリアミン誘導体を、33から100%、好ましくは70%エタノール中の50mM溶液(モノマー重量に基づき)として供給する。
【0133】
2)10mMのクエン酸及び19mMの水酸化ナトリウムを含んでなる形質導入緩衝液を調製する。
3)改変されたポリアミンを形質導入緩衝液中で1.8mM溶液に希釈する。
【0134】
4)siRNAを形質導入緩衝液中で4μMのsiRNAに希釈する。
5)ポリアミン及びsiRNAの作業溶液を1+1の比で混合し、これは、約10のN/P比、及び2μMの複合体形成中のsiRNAの濃度をもたらす。
【0135】
6)100μlの培養された細胞の培地当たり20μlまでの(5)で調製された形質導入混合物を加える。
小さい粒子サイズを有する形質導入体は、以下の一般的プロトコル3を使用して調製することができる:
1)ポリアミン誘導体を、33から100%エタノール、好ましくは70%エタノール中の56mM溶液(窒素含有量に基づき)として供給する。
【0136】
2)10mMのリン酸二水素ナトリウム及び3mMの水酸化ナトリウムを含んでなる形質導入緩衝液を調製する。
3)siRNAを形質導入緩衝液中で18μMのsiRNAに希釈する。siRNA上のリン酸の平均数が約45であるため、リンの全濃度は約0.75mMとなる。
【0137】
4)siRNAの溶液を、改変されたポリアミンに20+1の比で直接加え、これは、4のN/P比、及び17μMの複合体形成混合物中のsiRNAの濃度をもたらす。
5)100μlの培養された細胞の培地当たり10μlまでの形質導入混合物を加えるか、又は動物に投与する。
【0138】
二つの溶液からの形質導入複合体の調製がしばしば行われるが、これは、形質導入体及び核酸を含有する溶液の別個の調製を必要とする。溶液は、細胞培養駅中でのその作業のために清潔か又は滅菌されている必要がある;これらは、制約された有効期間を有することができる。更なる改良は、使用前に形質導入緩衝液によりもどされる乾燥形質導入体の使用である。この目的のために、形質導入体は、その短鎖アルコール中の溶液から乾燥することができる。このような方法の際立った利益は、非常に長い有効期間を有する形質導入体の小さく、そして限定されたアリコート(aliquot)の提供である。乾燥形質導入体は、形質導入緩衝液で再水和することができる。幾つかの態様において、乾燥形質導入体は、既に核酸を含有する溶液で再水和することもできる。
【0139】
他の態様において、形質導入体は、凍結乾燥された形態で提供される。このような態様の好ましい側面において、形質導入体は、5から7のpHを得るために調整された緩衝液系を含んでなり、そして更にもどした際に100から500mosm/Lの全浸透圧を得るための量の糖、例えば270mMのスクロース又はトレハロース或いはグルコースを含んでなる溶液から凍結乾燥される。この態様において、核酸は、希薄な水溶液として提供され、そして水和及び複合体形成が単一工程で起こるように、凍結乾燥された形質導入体をもどすために直接使用される。次いで得られた形質導入混合物を、形質導入される細胞に直接加えることができる。
【0140】
本発明の形質導入体は、所望により更に対照反応のためのsiRNAを含んでなるキットの形態で市販することができる。
第1の態様において、キットは、以下を含有する:
A)短鎖アルコール中の形質導入体の溶液、ここにおいて、アルコールは、70%エタノールであることができ、そして形質導入体は、約50mMの濃度(形質導入体中の窒素原子に基づき)を有することができ、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0141】
第2の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)第1の態様に記載されるような形質導入体の溶液、ここにおいて、溶液はアリコートに分割される。好ましくは、アリコートの数は、5から100であり、更に好ましくはアリコートの数は、6から20である。それぞれのアリコートが、10から1000ナノモルの形質導入体(モノマーに基づき)を含有することが更に好ましく、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0142】
第3の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)第1の態様に記載されるような形質導入体の溶液、ここにおいて、溶液はアリコートに分割され、そしてここにおいて、このようなアリコートは、6から1576のウェル、好ましくは24、96又は384のウェルを有するマイクロウェル中に整列され、そしてここにおいて、それぞれのアリコートは、10から1000ナノモルの形質導入体を含有し、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0143】
第4の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)アリコートに分割された乾燥形質導入体。好ましくは、アリコートの数は、5から100であり、更に好ましくはアリコートの数は、6から20である。それぞれのアリコートが、10から1000ナノモルの形質導入体(モノマーに基づき)を含有することが更に好ましく、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0144】
第5の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)アリコートに分割された乾燥形質導入体、ここにおいて、このようなアリコートは、6から1576のウェルを有するマイクロプレート中に整列され、好ましくはマイクロプレートは、24、96又は384のウェルを有し、そしてここにおいて、それぞれのアリコートは、10から1000ナノモルの形質導入体(モノマーに基づき)を含有し、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0145】
第6の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)アリコートに分割された凍結乾燥された形質導入体。好ましくは、アリコートの数は、5から100であり、更に好ましくはアリコートの数は、6から20である。それぞれのアリコートは、10から1000ナノモルの形質導入体(モノマーに基づき)を含有することが更に好ましく、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0146】
第7の態様において、このようなキットは、以下を含んでなる:
A)アリコートに分割された凍結乾燥された形質導入体、ここにおいて、このようなアリコートは、6から1576のウェル、好ましくは、24、96又は384のウェルを有するマイクロプレート中に配列され、そしてここにおいて、それぞれのアリコートは、10から1000ナノモルの形質導入体を含有し、
B)4から8のpH及び0.2未満、好ましくは0.1未満のイオン強度を有する緩衝溶液、
C)完全な指示を含むマニュアル、所望により更に縮約された使用説明書を含む短いマニュアル。
【0147】
第3、第5及び第7の態様のある側面において、このようなマイクロプレートの全てのウェルは、同じ量の形質導入体を含有する。他の側面において、ウェルは、異なった量の形質導入体を含有する。このような設計は、隣接するウェルにおける形質導入体の勾配を含むことができ、これは、核酸とのN/P比の最適化の際に有用である。なお他の側面において、例えば、複合体化混合物からの一連の希釈物の作製のために、あるウェルは空であることができる。
図1から4は、96ウェルプレートの例における形質導入体の配列された量のこのような設計を更に例示する。
【0148】
なお他の態様において、本発明のポリアミン誘導体の、一つ又はそれより多い核酸との複合体が形成され、そして凍結乾燥され、そして完全な製品として市販される。この溶液は、現在商品化されている製品と比較して更に高い程度の組込みを提供する。これは、更に製造業者における粒子形成を含む製品の品質管理を集中化する機会を提供する。凍結乾燥された複合体の他の利点は、その長期の貯蔵安定性及び改変されたポリアミンのための溶媒として使用される短鎖アルコールの非存在である。
【0149】
ポリアミン誘導体と一つ又はそれより多い核酸の凍結乾燥された複合体は、動物実験又は治療的使用を含むin vivoでの適用のために際立って有益なものである。
凍結乾燥された複合体は、複合体形成後の凍結乾燥及び再水和工程を包含することにより、先に記載した一般的方法1から3のいずれかにより製造することができる。
【0150】
具体的な態様において、本発明の改変されたポリアミンと一つ又はそれより多い核酸の複合体は、以下のプロトコル4下で調製される:
1)改変されたポリアミンを33から100%エタノール中の50mM溶液(窒素含有量に基づき)として供給する
2)10mMのリン酸二水素ナトリウム及び3mMの水酸化ナトリウムを含んでなる形質導入緩衝液を調製する。
【0151】
3)改変されたポリアミンを形質導入緩衝液中で1mM溶液に希釈する。
4)siRNAを形質導入緩衝液中で22μMのsiRNAに希釈する。siRNA上のリン酸の平均数が約45であるために、リンの全濃度は約1mMである
5)ポリアミン及びsiRNAの作業溶液を10+1の比で混合し、これは、10のN/P比、及び2μMの複合体形成混合物中のsiRNAの濃度をもたらす。
【0152】
6)複合体は、所望によりアリコートに分割され、凍結乾燥され、気密シールで密封され、そして保存される。
7)凍結乾燥された複合体を水で再水和する。
【0153】
8)100μlの培養された細胞の培地当たり20μlまでの再水和された複合体を加えるか、又は再水和された複合体を動物又はヒトに投与する。
具体的な態様において、本発明の改変されたポリアミンと一つ又はそれより多い核酸の複合体は、以下のプロトコル5下で調製される:
1)改変されたポリアミンを33から100%エタノール中の56mM溶液(窒素含有量に基づき)として供給する
2)10mMのリン酸二水素ナトリウム及び3mMの水酸化ナトリウムを含んでなる形質導入緩衝液を調製する。
【0154】
3)siRNAを形質導入緩衝液中で18μMのsiRNAに希釈する。siRNA上のリン酸の平均数が約45であるために、リンの全濃度は約0.75mMである
4)siRNAの溶液を改変されたポリアミンに20+1の比で直接加え、これは、4のN/P比、及び17μMの複合体形成混合物中のsiRNAの濃度をもたらす。
【0155】
5)複合体は、所望によりアリコートに分割され、凍結乾燥され、気密シールで密封され、そして保存される。
6)凍結乾燥された複合体を水で再水和する。
【0156】
7)100μlの培養された細胞の培地当たり10μlまでの再水和された複合体を加えるか、又は再水和された複合体を動物又はヒトに投与する。
複合体化された核酸の動物又はヒトへの投与は、当業者にとって既知であり、そして複合体化された核酸は、具体的な指示に対して必要な投与量で、全身的に又は局所的に投与することができる。投与される核酸の量は、体重のkg当たり0.1μgから100mgで変化することができ、そして一回又は多数回、或いは複雑な又は断続的な投与計画で、例えば毎日投与、一日置き、又は週3回、週一回、或いは月に一回、或いはこのような投与計画の組合せで投与することができる。
【実施例】
【0157】
本発明は、ここに、以下の実施例により、これらに制約されることなく、更に例示される。
実施例1−ポリアミンの改変
2kDa又は25kDaの平均分子量を有する直鎖のPEI(遊離塩基)は、それぞれPolysciencesのカタログ品目24313及び23966であった。10kDaのサイズの分枝鎖のPEI(遊離塩基)は、Aldrichのカタログ品目408727であった。ポリマーを、250mMモノマーの濃度で無水エタノール中に溶解した;即ち、窒素の濃度は250mMであった。臭化プロピル、臭化ヘキシル、臭化ノニル及び臭化ドデシル(全てSIGMAから)を、250mMで無水エタノール中に溶解し、そして3−ブロモプロパン酸メチルエステル、6−ブロモヘキサン酸メチルエステル、8−ブロモオクタン酸エチルエステル、11−ブロモウンデカン酸メチルエステル又は16−ブロモヘキサデカン酸メチルエステルを、500mMで無水エタノール中に溶解した。K
2CO
3を6M水溶液として使用した。
【0158】
100μmolのポリアミン(モノマーに基づく)の改変のために、以下の溶液を反応毎にピペットで入れた:
−400μlのポリアミン溶液
−Xμlのω−ブロモカルボン酸エステル
−Yμlの1−ブロモアルカン
−650μlまでのエタノール(wthanol)
−33μlのK
2CO
3。
【0159】
全ての混合物を密封し、そしてオーブン中で60℃で7日間インキュベートした。次いで、250μlの2NのNaOHを加え、混合物を再び密封し、そして60℃で更に2日間インキュベートした。最初の試験のために、反応混合物の少量のアリコートを採取し、そして75%エタノール/水中で1:100に希釈した。42μlのそれぞれの希釈された試料を96ウェルプレートに移し、そして乾燥した。
【0160】
実施例2−siRNAとの複合体化
改変されたポリアミンを、50μlのpH4の緩衝液(10mMのHAc、10mMのNaH
2PO
4、NaOHでpH4に調整)中で20分間水和した。50μlのsiRNA(pH4の緩衝液中2μM)を加え、そして2−3分後、ポリマー−siRNA溶液を10μlの160mMのNaOHを使用してpH7にした。
【0161】
実施例3−細胞の培養
HeLa細胞を、10%FCS(Sigma−Aldrich)、1×Pen/Strep(PAA lab GmbH)溶液を添加した100μlのRPMI1640培地(PAA Lab GmbH)中で培養(製造業者の説明書により)し、そして96ウェルプレート中に4000細胞/ウェルの密度で播種した。生細胞の密度をCountess Cellカウンター(Invitrogen)を使用して測定した。細胞を、37℃及び5%CO
2の加湿されたインキュベーター中で培養した。プレートに入れてから24時間後、細胞に新鮮な完全培地を供給し、そして同じ日に形質導入した。
【0162】
実施例4−細胞の形質導入
HeLa細胞を、ウェル当たり10μlの、実施例2下で得たとおりの物質を移すことによって、ポリアミン−siRNA複合体で形質導入した。この付加は、細胞培養培地中のPLK−1のsiRNAの100nMの濃度をもたらす。細胞を、加湿されたインキュベーター中で37℃及び5%CO
2で3日間、培養培地の交換を行わずに培養した。
【0163】
実施例5−siRNAの種類
ここで使用されたsiRNAは、PLK−1遺伝子を標的化し、その産物は、細胞周期の必須な成分である。標的タンパク質の下方制御は、有糸分裂停止及びアポトーシスをもたらす。従って、細胞の形質導入は、細胞生存率アッセイを使用してモニターされる。本明細書中で使用されるPLK−1を標的化するsiRNA及び無関係の対照のsiRNAは、Haupenthal et al.(2007)Int J Cancer,121,206−210によって公開されている。
【0164】
実施例6−生存率アッセイ
細胞を、3日後に、Cell Titer Blueアッセイ(CTB,Promega)を使用することによって、生存率に対して試験した。培地を廃棄し、そして細胞に、CTB試薬を添加した(5:1、容量/容量)新鮮な完全培地を供給した。加湿されたインキュベーター中の37℃及び5%CO
2の90−100分のインキュベーション後、試料を黒色の蛍光プレートに移し、そして試料の色の変化を、蛍光リーダーによってEx560nm/Em590nmで測定した。シグナルを、同じ培養プレート上で増殖された未処理の細胞を使用した100%及び細胞が播種されていないウェルでの0%に対して標準化した。
【0165】
実施例7−改変されたポリアミンによる形質導入
以下の表は、細胞の形質導入後の、PLK−1の下方制御のための測定基準としての未処理培養物に対する生細胞の%を示す。実験において、カルボキシル化、アルキル化及び同時改変されたポリアミンを並行して試験した。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
【表6】
【0169】
ここで使用されたポリエチレンイミンは、アッセイ条件下で本質的に不活性な形質導入体であり、分枝鎖のPEIのみが弱い活性を示す。アルキル又はカルボキシル部分のいずれかによる単一の改変のあるものは、改良された活性を与え、そして50%未満への細胞生存率の減少は、表中で強調されている。カルボキシアルキル及びアルキル部分の両方による組合された改変は、細胞に対するはるかに大きい活性を示し、そしてその改良は広い範囲のDOSに対して明白である。
【0170】
実施例8−異なった細胞種に対する形質導入効率
形質導入体: 5mmolの分枝鎖のPEIを、11−ブロモウンデカン酸メチルエステル及び臭化ノニルで、実施例1に記載したように改変し、全ての他の試薬は、規模に合わせられた(were brought to scale)。置換の程度は約40%であり、改変物質の比は約1であった。改変されたPeiを、10mMのNaOH、70%のエタノールでのサイズ排除クロマトグラフィーを使用して反応混合物から精製した。
【0171】
複合体化: 精製された形質導入体を、30%のエタノール及び10mMのNaOHを含有する溶液で用意した。ポリマーを、緩衝液D(10mMのクエン酸塩、NaOHでpH5.0に調整)又は緩衝液F(10mMのリン酸塩、NaOHでpH6.5に調整)中で4mMの濃度に希釈した。10のNP比を得るために、150μlの希釈されたポリマーを、150μlの10μMのsiRNA溶液(Plk1又はスクランブルされた対照)と、緩衝液D又はF中で複合体化した。細胞に対して500nMから2nMの濃度を得るために、これらの複合体の一連の希釈を、96ウェルプレート中のそれぞれの緩衝液中で行った。
【0172】
形質導入: 10μl/ウェルの体積を、“複合体化プレート”から細胞プレートに移す(カラム1−10)ことによって、細胞を、ポリマー−siRNA複合体で形質導入した。細胞を、加湿されたインキュベーター中で37℃及び5%CO2で3日間、培養培地の交換を行わずに培養した。
【0173】
生存率アッセイ: 細胞を、Cell Titer Blueアッセイ(CTB,Promega)を使用することによって3日後に生存率に対して試験した。培地を廃棄し、そして細胞にCTB試薬を添加した新鮮な完全培地(120μl、5:1容量/容量)を供給した。NIH3T3細胞、ジャーカット細胞及びTHP−1細胞に対しては、廃棄することなく、CTB−培地試薬を細胞培地に直接加えた。加湿したインキュベーター中の、37℃及び5%CO
2での90−100分(NIH3T3細胞、ジャーカット細胞及びTHP−1細胞に対しては240分)のインキュベーション後、試料を黒色の蛍光プレートに移し、そして試料の色の変化を、Ex560nm/Em590nmで、蛍光リーダーによって測定した。
【0174】
【表7】
【0175】
改変されたポリアミンの性能を、50%の細胞増殖の阻害のために必要なsiRNAの濃度であるEC50として測定した。並行して、同じ試験を無関係のsiRNAを使用して行い、そしてEC50値を更に計算した。次いで、SN比を、EC50(対照)とEC50(PLK−1)の比として定義した。
【0176】
【表8】
【0177】
データは、懸濁液中で増殖した細胞を含む異なった細胞種へのsiRNAの非常に効率のよい形質導入を示している。形質導入反応は、細胞によって非常によく許容されており、毒性が僅かであるか又は殆ど毒性の徴候がなく、それは3又はそれより高いSN比によって示されている。
【0178】
実施例9−市販試薬の形質導入の効率及びSN比
実施例8に記載したものと同じ実験において、幾つかの市販の形質導入体を、並行して試験し、このような試験の結果を表9に記載する。
【0179】
市販の形質導入体: Interferin(Polyplus,France)、Ribocellin(BioCellChallenge,Germany)、TransIT−TKO(Mirus,US)、siPort NeoFX(Ambion/Life technologies Corp.)、Dharmafect(Dharmacon/Thermo Fisher)及びLipofectamine RNAiMAX(Invitrogen/Life Technologies Corp.)を、製造業者の使用説明書通りに扱い、そしてPlk1及びscr siRNAと複合体化した。一連の希釈を、Optimem I(Gibco/Life Technologies)で行って、細胞に対して100nMから2nMのsiRNA濃度を得た。
【0180】
【表9】
【0181】
形質導入は多くの場合、特に試薬Dharmafect及びRNAiMAXで達成することができたが、SN比は、試験を通して大幅に低い。
実施例10−分析的特徴付け
形質導入体: 5mmolの分枝鎖のPEIを、実施例1に記載したように11−ブロモウンデカン酸メチルエステル及び臭化ノニルで改変し、全ての他の試薬は、規模に合わせられた。アルキル化試薬を標的に加え、置換の程度は約40%であり、改変物質の比は約1であった。改変されたPeiを、10mMのNaOH、70%のエタノールでのサイズ排除クロマトグラフィーを使用して反応混合物から精製した。
【0182】
分析: PEIの推定濃度は、この時点で約60mM(モノマーに基づき)であった。1mLの溶液を、0.5mLの100mMのメトキシ酢酸及び25μlの2NのNaOHと混合した。混合物を真空下で乾燥し、700μlのCD3OD中に溶解し、そして1H NMRによって分析した。シグナル:メトキシ酢酸 4.0ppm;bPEI骨格 2.4−2.7ppm、アルキル部分の末端CH3 0.8ppm及びカルボキシアルキルの末端CH2−COOH 2.1ppm。
【0183】
【表10】
【0184】
実施例11−更なるポリアミン誘導体
以下のポリアミンを、実施例1に概略記載した改変反応にかけた:
【0185】
【表11】
【0186】
ポリマーを250mMモノマーの濃度で無水エタノール中に溶解した;即ち、窒素の濃度は、250mMであった。
ポリアミンの改変のためのカルボキシル化合物を、以下の表12から選択し、そして250mMの濃度で無水エタノール中に溶解した:
【0187】
【表12】
【0188】
ポリアミンの改変のための疎水性化合物を、以下の表13から選択し、そして250mMの濃度で無水エタノール中に溶解した:
【0189】
【表13】
【0190】
K
2CO
3を、6Mの水溶液として使用した。
100μmolのポリアミン(モノマーに基づく)の改変のために、以下の溶液を反応毎にピペットで入れた:
−400μlのポリアミン溶液
−Xμlのω−ブロモカルボン酸エステル
−Yμlの臭素化された炭化水素化合物
−650μlまでの無水エタノール
−33μlのK
2CO
3。
【0191】
X+Yの組合せた量は、0から100%のポリアミンのアミノ基の置換の程度のために選択され、そしてX及びYは、更に互いに補完し、そして0(疎水性置換基のみ)と以下の表でC/A=99として示されるカルボキシル置換基の排他的使用の間での各種のC/A比を得るために選択された。
【0192】
全ての混合物を密封し、そしてオーブン中で60℃で7日間インキュベートした。次いで、250μlの2NのNaOHを加え、混合物を再び密封し、そして60℃で更に2日間インキュベートした。最初の試験のために、反応混合物の少量のアリコートを採取し、そして75%エタノール/水で1:100に希釈した。42μlのそれぞれの希釈された試料を96ウェルプレートに移し、そして乾燥した。
【0193】
実施例12: 改変されたポリアミンを使用するsiRNAの形質導入
実施例11からの改変されたポリアミンを、PLK−1を標的とするsiRNAと複合体化し、そしてsiRNAの複合体化及び形質導入のために、緩衝液F(10mMのNaH2PO4、225mMのスクロース、pH7.2(NaOHで調整))を使用したことを除き、実施例2から6に記載したようにその形質導入特性に対して試験した。
【0194】
疎水性部分が脂肪族又は環式アルキルである改変されたポリアミンに対しての形質導入反応の結果を表14に記載し、そして、前記疎水性基がアリール又はアルキルアリールである場合を表15に記載した。
【0195】
【表14】
【0196】
この表14のデータは、多くの改変されたポリアミンが、細胞をsiRNAで形質導入することが可能であることを証明する。疎水性基は、脂肪族又は環式アルキル部分から選択され、そしてその構造の差にも関わらず、両方とも活性のある担体の形成をもたらした。
【0197】
活性のある担体は、幅広い異なった分子量、及び異なった構造(直鎖又は分枝鎖)を有するポリアミンから形成される。カルボキシル及び疎水性成分が相乗的に作用し、一方単一の改変が、担体の特性に、あったとしても僅かしか寄与しないこともデータから明白である。
【0198】
【表15】
【0199】
表15のデータは、多くの改変されたポリアミンが、細胞をsiRNAで形質導入することが可能であることを証明する。疎水性基は、アリール又はアルキルアリール部分から選択され、そしてその構造の差にも関わらず、全てが活性のある担体の形成をもたらした。
【0200】
活性のある担体は、幅広い異なった分子量、及び異なった構造(直鎖又は分枝鎖)を有するポリアミンから形成される。カルボキシル及び疎水性成分が相乗的に作用し、一方、単一の改変が、担体の特性に、あったとしても僅かしか寄与しないことも更にデータから明白である。
【0201】
実施例13: プラスミドの形質導入
細胞培養物: HeLa細胞を、10%FCS(Sigma−Aldrich)、1×Pen/Strep(PAA lab GmbH)溶液を添加した100μlのRPMI1640培地(PAA Lab GmbH)中で培養(製造業者の使用説明書に従って)し、そして96ウェルプレート中に8000細胞/ウェルで播種した。細胞を、37℃及び5%CO2の加湿されたインキュベーター中で培養した。プレートに入れてから24時間後、細胞に新鮮な完全培地を供給し、そして同じ日に形質導入した。
【0202】
複合体化: ポリアミンを、それぞれのウェルが3mMのポリマーを70%エタノール中に含有する96ウェルプレート中に用意し、プラスミド−DNA(pCMV−Luc)を、緩衝液F(10mMのNaH2PO4、225mMのスクロース、pH7.2(NaOHで調整))中の0.011μg/μlの原液として用意した。10μlのポリアミンを、混合によって90μlのプラスミド−DNAと複合体化した。複合体化の10−15分後、10μlの混合物を、HeLa細胞の形質導入のために使用し、100ngのプラスミド−DNA/ウェルをもたらした。
【0203】
ルシフェラーゼ発現の決定: 細胞を形質導入の24時間後のルシフェラーゼの定量化のために準備した。従って、培養プレートを、約10分間室温に平衡化させた。培地を廃棄した後、細胞をPBSで1回洗浄した。細胞を、100μlの1×Beetle Lysis Juice(PJK GmbH,Germany)を使用して溶解し、そして5分後に発光測定のために準備した。ルシフェラーゼの発現を、TECAN発光プレートリーダーを使用して定量化した。
【0204】
実施例14: プラスミドの形質導入に対する結果
実施例11からの改変されたポリアミンを、プラスミドと複合体化し、そして実施例13に記載したようにその形質導入特性に対して試験した。
【0205】
形質導入反応の結果を、親油性部分が脂肪族又は環式アルキルである改変されたポリアミン対して表16に記載する;前記親油性部分が、アリール又はアルキルアリールである場合を表17に記載し、そして、カルボキシル部分がアリール又はアリールアルキルを含んでなる場合を表18に記載した。
【0206】
【表16-1】
【0207】
【表16-2】
【0208】
【表16-3】
【0209】
この表16のデータは、多くのカルボキシル化され、疎水性化されたポリアミンが、細胞にプラスミドを形質導入することが可能であることを証明する。親水性基は、脂肪族又は環式アルキル部分から選択され、そしてその構造の差にも関わらず、両方とも活性のある担体の形成をもたらした。
【0210】
活性のある担体は、幅広い異なった分子量、異なった構造(直鎖又は分枝鎖)及び異なった化学的性質(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン(polyallymine)、ポリビニルアミン)を有するポリアミンから形成される。カルボキシル及び疎水性成分が相乗的に作用し、一方、単一の改変が、担体の特性に、あったとしても僅かしか寄与しないことも更にデータから明白である。
【0211】
【表17-1】
【0212】
【表17-2】
【0213】
この表17のデータは、多くのカルボキシル化され、疎水性化されたポリアミンが、細胞をプラスミドで形質導入することが可能であることを証明する。疎水性基は、アリール又はアルキルアリール部分から選択され、そしてその構造の差にも関わらず、全ては、活性な担体の形成をもたらした。
【0214】
活性な担体は、幅広い異なった分子量、異なった構造(直鎖又は分枝鎖)及び異なった化学的性質(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン(polyallymine))を有するポリアミンから形成される。カルボキシル及び親水性成分が相乗的に作用し、一方、単一の改変が、担体の特性に、あったとしても僅かしか寄与しないこともデータから明白である。
【0215】
【表18】
【0216】
この表18のデータは、多くのカルボキシル化され、疎水性化されたポリアミンが、細胞をプラスミドで形質導入することが可能であることを証明する。カルボキシル基は、アリール又はアルキルアリール部分を含んでなるカルボン酸から選択され、そしてその構造の差にも関わらず、全ては、活性な担体の形成をもたらした。
【0217】
活性な担体は、幅広い異なった分子量又は異なった構造を有するポリマーから形成される。カルボキシル及び疎水性成分が相乗的に作用し、一方、単一の改変が、担体の特性に、あったとしても僅かしか寄与しないことも更にデータから明白である。
【0218】
実施例15: 各種のカルボキシル化され、疎水性化されたオリゴスペルミン及びその同族体の合成
商業的に入手可能な1,4−ジアミノブタン(
1)から出発して、中心の中間体
21を3工程の合成で得た。
【0219】
スキーム1:中心の中間体
21の合成経路。
【0220】
【化2】
【0221】
化合物
2は、工程aの、1,4−ジアミノブタン(
1)へのアクリロニトリルの付加によって容易に到達可能である。これに続いて、二つのboc保護基を分子に導入して、化合物
3に導いた。次いでニトリル
3を、過剰のブチルアミンの存在中で水素で還元して、
21を得た。
【0222】
スキーム2:オリゴマー化反応
オリゴスペルミンの形成のために、21を、1,4−ジクロロブタ−2−インと標準的なアルキル化条件下で反応させて、ダイマー41、トリマー42及び一連のより長いオリゴマーを得た:
【0223】
【化3】
【0224】
残念ながら、N−CH
2−C≡C部分は、安定ではなく、そして開裂に感受性である。従って、化合物
41、
42又はより高重合度のオリゴマーの三重結合は還元され、続いてBoc基が除去される。
【0225】
類似の反応を、出発物質
1として1,5−ジアミノペンタン又は1,6−ジアミノヘキサンを使用して行い、一連のオリゴスペルミン同族体又はポリアルキレンイミンに導き、ここにおいて、変数xは、2から3、2から4、又は2から5を変動する窒素基間の間隔を意味する。
【0226】
オリゴスペルミン同族体の形成に加えて、疎水性置換基のサイズは、ブチル(本実施例中に例示されるように)、エチル、ヘキシル及びデシルで系統的に変動し、そのアルキレン基、その疎水性置換基及びそのオリゴマー化の程度に変化を有する異なったポリアルキレンイミンの基質を得た。オリゴスペルミン及びその同族体(まとめて本実施例のポリアルキレンイミン)を、セファデックスG25を使用して脱塩し、そして個々のオリゴマーを、CM−セファロースファストフロー及びSP−セファロースファストフローのイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。オリゴスペルミンを、イオン交換カラムからその重合の程度によって溶出し、そしてローマ数字IからXIIで表示し、それによるところのより大きな数字は、より長いオリゴマーを表す。重合の程度は、質量分析で決定し、そしてトリマーから概略エイコサマーまでの範囲であった。
【0227】
分離されたオリゴマーを含有する画分を、ジクロロメタンを使用して塩基性の条件下で緩衝液から抽出し、真空下で乾燥し、そして250mMの窒素の濃度で無水エタノール中に溶解した。
【0228】
その後の工程において、それぞれのオリゴマーの50μmolの試料を、0、10、15、20又は25μmolのC3、C6、C8、C11及びC16ω−ブロモカルボン酸で、実施例11の一般的プロトコルを使用して誘導体化した。
【0229】
実施例16: カルボキシル−炭化水素−オリゴスペルミンを使用する細胞の形質導入
各種のカルボキシル化され、そして疎水性化されたオリゴスペルミン及びその対応する同族体の形質導入化試験を、実施例2から7に記載したsiRNA標的化PLK−1、HeLa細胞並びに細胞培養条件及びアッセイを使用して行った。
【0230】
以下の表19は、siRNAに対する形質導入体としてカルボキシル−炭化水素−オリゴスペルミンを使用して得た結果の記載である。
【0231】
【表19】
【0232】
この表19のデータは、多くのカルボキシル化され、疎水性化されたオリゴスペルミンが、細胞を形質導入することが可能であることを証明する。活性のある担体は、幅広い異なった分子量を有するオリゴスペルミンから形成され、そして窒素原子の間隔が変化に富んだような異なった分子構造である。カルボキシル部分の導入が活性のある担体構造に導く一方、アルキル化されたオリゴスペルミンは細胞の形質導入における活性を、あったとしても僅かしか示さないので、カルボキシル及び疎水性成分が相乗的に作用することもデータから明白である。
【0233】
実施例17:改変されたポリアミン及び核酸からの中性及びアニオン性粒子
280mMのスクロース、10mMのリン酸二水素ナトリウム及び3mMの水酸化ナトリウム(pH6.5)又は7mMの水酸化ナトリウム(pH7.2)を含有する緩衝液を調製した。実施例5からのsiRNAの原液を緩衝液中で調製して、表20に記載した濃度の10倍のものを得た。
【0234】
実施例8の改変されたポリアミンを、70%エタノール、10mM水酸化ナトリウム中の56mMの改変されたポリアミン(mMモノマーとして)の濃度を有する溶液として用意し;50μlの前記改変されたポリアミンの溶液を、4.1mlのいずれかの緩衝液と急速に混合した。コロイドが形成し、そして分散相の粒子サイズ及びゼータ電位を、MALVERN Zetasizer 3000HSAを使用して決定した。
【0235】
900μlの各種のsiRNA溶液を、緩衝液中の改変されたポリアミンの分散物と急速に混合して、表20に記載したN/P比を得て、そしてサイズ及びゼータ電位を再び記録した。
【0236】
【表20】
【0237】
一般的観察:改変されたポリアミンは、約500nmのサイズ及び殆ど中立のゼータ電位を有する粒子からのものである(do)。12又はそれより高いN/P比をもたらす少量のsiRNAの添加は、サイズ又は粒子の表面電荷を実質的に変化させない。然しながら、大量のsiRNAの添加は、概略同じサイズのアニオン性粒子の形成に導いた。中間の量のsiRNAは、中間のゼータ電位及び凝集物の形成に導く。系の挙動は、凝集が、Endert et al.(2004)“Nanocapsules from liposomal templates”,pp.238−248 in Carrier Based Drug Delivery,Oxford University Press中に記載されているような、電荷の中和の条件下で起こる逆の電荷の二つの高分子電解質の相互作用として理解することができる。
【0238】
具体的な観察:pH6.5において、完全なアニオン性状態への電荷の逆転は、4のN/Pを必要とし、一方、同じ過程は、N/P6で7.2のpHで完結する。この観察は、低いpHにおけるPEI骨格のアミンの強力なイオン化と一致する。
【0239】
実施例18: 形質導入体の凍結乾燥
実施例8からの改変されたポリアミンを、56mMの窒素の濃度を有する70%エタノール、10mMの水酸化ナトリウム中の溶液として用意した。各種の量の透明な溶液の形質導入体を、形質導入体の最終濃度が0.15mM又は0.03mMであるようにNaOHでpH6.5に調整された、280mMのスクロース及び20mMのリン酸ナトリウムを含んでなる均一な相に急速に注入した。平均粒子サイズ及び多分散は、それぞれ0.15mM又は0.03mMの窒素を有する試料に対して、389nm(0.09のPI)及び332nm(0.11のPI)であった。
【0240】
それぞれ100μlのアリコートを、96ウェルプレートに入れた。物質を−18℃で4時間冷凍し、そして凍結乾燥器に移した。凍結乾燥は、0.12mbarの一定の圧力で20時間で起こった。凍結乾燥室から出した後、プレートをヒートシーラーを使用して迅速に密封した。
【0241】
翌日、シールを破り、そして試料を水で再水和した。凍結乾燥した産物は、急速に、そして均一に溶解した。粒子サイズ及び多分散を上記のように決定した。
再水和を開始して15分後に、得られたコロイド状形質導入体は、15nmolの形質導入体をそれぞれのウェルに入れた場合、423nm(PI 0.13)の平均粒子サイズを有していた。得られたコロイド状形質導入体は、3nmolの形質導入体をそれぞれのウェルに入れた場合、356nm(PI 0.12)の平均粒子サイズを有していた。
【0242】
その優先権が主張されている2012年10月8日に出願された欧州特許出願1200
6963.8の内容は、全ての特許請求の範囲及び全体の記載を含み、本明細書中に参考
文献として援用される。
すなわち、本出願は以下の発明の開示を包含する。
[1]細胞へのポリアニオンの形質導入のためのポリアミン誘導体の使用であって、前記ポリアミンが:
複数のアミノ基を含んでなるポリアミン部分;
疎水性リンカーを経由して、前記ポリアミン部分のアミノ基に結合したカルボキシル基を含んでなる複数のカルボキシル化された置換基;及び
前記ポリアミン部分のアミノ基に結合した複数の疎水性置換基;
を含んでなり、
前記疎水性リンカーは、前記リンカーのカルボキシル基への結合及び前記ポリアミンのアミノ基への結合を水素原子への結合によって置換することによって、前記リンカーから得ることが可能な化合物に対して決定された3から20のlogPを有し;そして
前記疎水性置換基は、前記疎水性置換基の前記ポリアミン部分のアミノ基への結合を、水素原子への結合によって置換することによって、前記疎水性置換基から得ることが可能な化合物に対して決定された1.5から20のlogPを有する;
前記使用。
[2]それぞれの前記カルボキシル化された置換基が、6から40の炭素原子、好ましくは6から20の炭素原子、そして更に好ましくは8から16の炭素原子を含んでなり、そしてそれぞれの前記疎水性リンカーは、O、N、及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなることができる、[1]に記載の使用。
[3]それぞれの前記疎水性置換基が、少なくとも2の炭素原子、好ましくは6から40の炭素原子を含んでなり、そしてO、N、及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなることができ、但し、前記疎水性置換基は少なくとも6の炭素原子を有することを条件とする、[1]又は[2]のいずれかに記載の使用。
[4]前記ポリアミン誘導体のポリアミン部分が、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン(polyallyamines)、ポリビニルアミン、ポリリシン及びポリオルニチンからなる群から選択され、ここにおいて、前記ポリアルキレンイミンは、好ましくはポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン又はオリゴスペルミン或いはこれらの同族体であり、そしてここにおいて、前記ポリアミン部分は、12から100000の窒素原子、更に好ましくは20から5000の窒素原子を含んでなる、[1]から[3]のいずれかに記載の使用。
[5]前記ポリアミン誘導体が、本質的に以下の式(10):
−[CH2−NR10−(CH2)x]− (10)
[式中、
xは、1から10の整数であり、ここにおいて、xの値は、異なった(CH2)x基において同一であるか又は異なっていることができ、
R10は、水素、
疎水性リンカーを経由して、R10が結合しているアミノの窒素に結合したカルボキシル基を含んでなるカルボキシル化された置換基、或いは
疎水性置換基であり、
そのそれぞれは、R10の異なった出現において、前記ポリアルキレンイミン中に存在する;]
の単位を含んでなる直鎖のポリアルキレンイミン誘導体であることができ、
或いは
ここにおいて、前記ポリアミン誘導体は、以下の式(11)、(12)及び(13):
−[CH2−NR10−(CH2)x]− (11)
−[CH2−NR11−(CH2)x]− (12)及び
−(CH2)y−NR102 (13)
[式中、
R10及びxは、上記で定義したとおりであり;
R11は、式(11)、(12)及び(13)から選択される一つ又はそれより多い単位を含んでなり;
yは、1から10の整数であり、ここにおいて、yの値は、異なった(CH2)y基において同一であるか又は異なっていることができ;そして
ここにおいて、前記直鎖又は前記分枝鎖のポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、12から100000である;]
のそれぞれの単位を含んでなる分枝鎖のポリアルキレンイミン誘導体である;
[1]から[4]のいずれかに記載の使用。
[
6]前記ポリアミン誘導体のそれぞれの前記カルボキシル化された置換基が、次の部分:アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、及びこれらの組合せのいずれか一つ又はそれより多くを、前記疎水性リンカーとして含んでなり;及び/又は
前記ポリアミンのそれぞれの前記疎水性置換基が、次の部分:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、及びこれらの組合せのいずれか一つ又はそれより多くを含んでなる;
[1]から[5]のいずれかに記載の使用。
[7]前記ポリアミン誘導体中のカルボキシル化された置換基と疎水性置換基のモル比が、10:1から0.1:1、好ましくは3:1から0.33:1の範囲内である、[1]から[6]のいずれかに記載の使用。
[8]前記ポリアミン誘導体が、カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンである[1]から[7]のいずれかに記載の使用であって、ここにおいて、前記ポリアミン誘導体の前記カルボキシル化された置換基が、6から40の炭素原子を有するカルボキシアルキル部分であり、そして前記ポリアミン誘導体の前記疎水性置換基がアルキル部分である、前記使用。
[9]アルキル部分が、少なくとも2の炭素原子、好ましくは6から40の炭素原子を有するアルキル部分である、[8]に記載の使用。
[10]前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンの全てのカルボキシアルキル部分が同一であり、そして全てのアルキル部分が同一であり、そしてカルボキシアルキル部分及びアルキル部分の炭素原子の合計が、10から30、好ましくは15から25である、[8]又は[9]のいずれかに記載の使用。
[11]前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンが、本質的に以下の式(6):
−[CH2−NR6−(CH2)x]− (6)
[式中
xは、1から10の整数であり、ここにおいて、xの値は、異なった(CH2)x基において同一であるか又は異なっていることができ、
R6は、水素、CrH2r+1又はCs−1H2s−2COOHであり、そのそれぞれは、R6の異なった出現において、前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミン中に存在し、
rは、2から40の整数であり、
sは、4から40の整数である;]
の単位を含んでなる直鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンであるか;
或いは
ここにおいて、前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンは、以下の式(7)、(8)及び(9):
−[CH2−NR6−(CH2)x]− (7)
−[CH2−NR7−(CH2)x]− (8)及び
−(CH2)y−NR62 (9)
[式中
R6、x、r及びsは、上記で定義したとおりであり;
R7は、式(7)、(8)及び(9)から選択される一つ又はそれより多い単位を含んでなり;
yは、1から10の整数であり、ここにおいて、yの値は、異なった(CH2)y基にで同一であるか又は異なっていることができる;]
のそれぞれの単位を含んでなる、分枝鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンであり;そして
ここにおいて、前記直鎖又は前記分枝鎖のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアルキレンイミンの分子当たりの窒素原子の数は、12から100000である;
[8]から[10]のいずれかに記載の使用。
[12]前記ポリアミンのアミノ基の少なくとも10mol%、好ましくは25から80mol%、更に好ましくは30から60mol%が、前記カルボキシアルキル及び前記アルキル基によって置換されている(置換の程度)、[8]から[10]のいずれかに記載の使用。
[13]ポリアニオンが核酸又はタンパク質である、[1]から[12]のいずれかに記載の使用。
[14]細胞へのポリアニオンの形質導入のためのポリアミン誘導体であって:
複数のアミノ基を含んでなるポリアミン部分;
それぞれが、疎水性リンカーを経由して、前記ポリアミン部分のアミノ基に結合したカルボキシル基を含んでなる複数のカルボキシル化された置換基;及び
それぞれが、前記ポリアミン部分のアミノ基に結合した複数の疎水性置換基;
を含んでなり、
前記疎水性リンカーは、前記リンカーのカルボキシル基への結合及び前記ポリアミンのアミノ基への結合を水素原子への結合によって置換することによって、前記リンカーから得ることが可能な化合物に対して決定された3から20のlogPを有し;そして
前記疎水性置換基は、前記疎水性置換基の前記ポリアミン部分のアミノ基への結合を、水素原子への結合によって置換することによって、前記疎水性置換基から得ることが可能な化合物に対して決定された1.5から20のlogPを有する;
前記ポリアミン誘導体。
[15]細胞へのポリアニオンの形質導入のためのポリアミン誘導体であって:
複数のアミノ基を含んでなるポリアミン部分;
前記ポリアミン部分のアミノ基に疎水性リンカーを経由して結合したカルボキシル基を含んでなる複数のカルボキシル化された置換基であって、ここにおいて、それぞれの前記カルボキシル化された置換基は、6から40の炭素原子、好ましくは6から20の炭素原子、そして更に好ましくは8から16の炭素原子を含んでなり、そしてそれぞれの前記疎水性リンカーは、O、N、及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなることができる、前記カルボキシル化された置換基;及び
前記ポリアミン部分のアミノ基に結合した複数の疎水性置換基であって、ここにおいて、前記疎水性置換基は、少なくとも2の炭素原子、好ましくは6から40の炭素原子を含んでなり、そしてO、N、及びSから選択される1から3の異種原子を含んでなることができ、但し、前記疎水性置換基が、少なくとも6の炭素原子を有することを条件とする、前記疎水性置換基;
を含んでなる、前記ポリアミン。
[16]ポリアルキレンイミン上に、6から40の炭素原子、及び少なくとも2の炭素原子、好ましくは6から40の炭素原子を有する炭化水素置換基から選択される一つ又はそれより多い疎水性置換基を含んでなる一つ又はそれより多いカルボキシアルキル置換基を有するポリアルキレンイミン誘導体であって、ここにおいて、それぞれの前記疎水性置換基は、アルキル基であることができるか、又はそれを含んでなることができ、及び/又はそれぞれの疎水性置換基は、アリール基であることができるか、又はそれを含んでなることができる、前記ポリアルキレンイミン誘導体。
[17]6から40の炭素原子を含んでなる一つ又はそれより多いカルボキシアルキル置換基、並びに、一つ又はそれより多いアルキル置換基、を有するカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミン。
[18]前記カルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンが、一種類のカルボキシアルキル部分及び一種類のアルキル部分を有し、そしてカルボキシアルキル部分の種類及びアルキル部分の種類の炭素原子の合計が、10から30、好ましくは15から25である、[15]又は[16]のいずれかに記載のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミン。
[19]核酸又はタンパク質の、[1]から[18]のいずれかに記載のポリアミン誘導体との複合体。
[20](i) [1]から[18]のいずれかに記載のポリアミン誘導体、
(ii) 4から8のpHを有する緩衝溶液、及び
(iii) 所望により、使用のための使用説明書を伴うマニュアル
を含んでなるキット。
[21]前記ポリアミン誘導体が溶液として提供され、そしてここにおいて、溶媒が、エタノール、プロパノール、1,2−ジヒドロキシプロパン又はイソプロパノールからなる群から選択される低級アルコール、或いは水及びこのような低級アルコールを33から100%含んでなる混合物である、[20]に記載のキット。
[22]前記ポリアミン誘導体が、凍結乾燥された形態のような乾燥形態で提供される、[20]に記載のキット。
[23]核酸又はタンパク質で細胞を形質導入する方法であって、前記核酸又はタンパク質を、[1]から[18]のいずれかで定義されたポリアミン誘導体と、例えば水性緩衝液中で混合し、そして前工程で得られた混合物で前記細胞を処理することを含んでなる、前記方法。
[24]形質導入体を含んでなる凍結乾燥された組成物を含有する複数の区画を含んでなる容器。
[25]前記形質導入体が、[1]から[18]のいずれかに定義されたポリアミン誘導体であるか、又はこれを含んでなり、特に前記形質導入体は、[8]から[12]のいずれかに記載のカルボキシアルキル−アルキル−ポリアミンであるか、又はこれを含んでなり;或いは前記形質導入体は、ヒドロキシアルキル−アルキル−ポリアミンであるか、又はこれを含んでなる、[24]に記載の容器。