特許第6395714号(P6395714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフトの特許一覧

特許6395714ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用
<>
  • 特許6395714-ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用 図000032
  • 特許6395714-ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用 図000033
  • 特許6395714-ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用 図000034
  • 特許6395714-ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用 図000035
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395714
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ルテニウムベースのメタセシス触媒、それらの製造用の前駆体およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20180913BHJP
   C08G 61/06 20060101ALI20180913BHJP
   C07C 6/04 20060101ALI20180913BHJP
   C07C 6/06 20060101ALI20180913BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180913BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   B01J31/22 Z
   C08G61/06
   C07C6/04
   C07C6/06
   C07B61/00 300
   !C07F15/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-538367(P2015-538367)
(86)(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公表番号】特表2016-501834(P2016-501834A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013071332
(87)【国際公開番号】WO2014067767
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】12190416.3
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・プレニオ
(72)【発明者】
【氏名】パヴロ・コス
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・サフカ
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−201916(JP,A)
【文献】 特表2004−536153(JP,A)
【文献】 特開2007−224303(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0156766(US,A1)
【文献】 RODNIKOWA, I. V., SURNINA, O. K.,ZHURNAL FIZICHESKOI KHIMII [ONLINE],1962年,Vol. 36,P. 1287-1292
【文献】 YIN, Hang, et al.,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY [ONLINE],2005年 4月 1日,Vol. 127, No. 15,P. 5463-5468
【文献】 JUNG, Jong-Wha, et al.,TETRAHEDRON,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS,2010年 8月21日,Vol. 66, No. 34,P. 6826-6831
【文献】 SEO, Seung-Yong, et al.,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY [ONLINE],米国,ACS,2006年12月14日,Vol. 72, No. 2,P.666-668
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】
[式中、
− Lは、式(III)または(IV)
【化2】
(式中、
は、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジ−イソプロピルフェニル、3,5−ジ−第三ブチルフェニル、2−メチルフェニルおよびそれらの組み合わせの群から選択される)
を有するN−複素環カルベン配位子であり、
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリール、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Xは、ハロゲンアニオン(Cl、Br、I)、テトラフルオロボレート(BF)またはアセテート(CHCOO)の群から独立して選択されるアニオン性配位子である]
のルテニウムベースの触媒。
【請求項2】
− Lが、1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIMes」)、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIPr」)または1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリン−2−イリデン(「IPr」)の群から選択される配位子であり;
− XがClであり;
− a、b、cおよびdがそれぞれ水素であり;
− Rが、水素、ジメチルアミノ(NMe)、ニトロ(NO)および塩素(Cl)から選択される、
請求項に記載の触媒。
【請求項3】
式(II)
【化3】
[式中、
Lが、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリシクロペンチルホスフィン、ならびに9−シクロヘキシル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「シクロヘキシルホバン」)、9−(2,2,4−トリメチルペンチル)−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「2,2,4−トリメチルペンチルホバン」)および9−イソブチル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「イソブチルホバン」)の群から選択されるホスフィン配位子であり、
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリール、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Xは、ハロゲンアニオン(Cl、Br、I)、テトラフルオロボレート(BF)またはアセテート(CHCOO)の群から独立して選択されるアニオン性配位子である]
のルテニウムベースの触媒。
【請求項4】
式(IIa)
【化4】
を有する、請求項に記載の触媒。
【請求項5】
式(IIb)
【化5】
を有する、請求項に記載の触媒。
【請求項6】
式(IIe)
【化6】
を有する、請求項に記載の触媒。
【請求項7】
式(IIf)
【化7】
を有する、請求項に記載の触媒。
【請求項8】
下記式(I)
【化8】
[式中
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリール、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、直鎖もしくは分岐C〜C10アルキル基から選択される]
の化合物を、クロスメタセシス反応において式(V):
【化9】
[式中、
− Lは、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリシクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホバン、2,2,4−トリメチルペンチルホバンもしくはイソブチル−ホバンの群から選択されるホスフィン配位子、または1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIMes」)、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIPr」)もしくは1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリン−2−イリデン(「IPr」)の群から選択されるN−複素環カルベン配位子であり、そして
− L’は、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリシクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホバン、2,2,4−トリメチルペンチル−ホバン、イソブチルホバンまたは置換もしくは非置換ピリジン配位子の群から選択される脱離配位子であり;
− Xは、ハロゲンアニオン(Cl、Br、I)の群から選択されるアニオン性配位子である]
を有するRu出発化合物と反応させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
下記式(I)
【化10】
[式中
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリール、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環、またはハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、及びニトリル(−CN)から選択される電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、直鎖もしくは分岐C〜C10アルキル基から選択される]
の化合物を、クロスメタセシス反応において式(V):
【化11】
[式中、
− Lは、1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIMes」)、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIPr」)もしくは1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリン−2−イリデン(「IPr」)の群から選択されるN−複素環カルベン配位子であり、
− L’はピリジンであり、
− XはClである]
を有するRu出発化合物と反応させる工程を含む、請求項1、2、及び4〜7のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項10】
前記式(I)において、
− a、b、cおよびdがそれぞれ水素であり;
− Rが、ジメチルアミノ(NMe−)、ニトロ(NO−)または塩素(Cl)であり;
− Rが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルまたはイソブチルである、
請求項に記載の製造方法
【請求項11】
前記式(I)の化合物が下記式(Ia)
【化12】
で表される、請求項に記載の製造方法
【請求項12】
前記式(I)の化合物が下記式(Ib)
【化13】
で表される、請求項に記載の製造方法
【請求項13】
オレフィンメタセシス反応における請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒の使用。
【請求項14】
前記オレフィンメタセシス反応が、閉環メタセシス(RCM)、クロスメタセシス(CM)または開環メタセシス重合(ROMP)である、請求項13に記載の触媒の使用。
【請求項15】
オレフィンメタセシス反応における請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒の使用であって、前記オレフィンメタセシスが0.1モル%未満の触媒使用量で55℃未満の温度で実施される使用。
【請求項16】
閉環メタセシス(RCM)における請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒の使用であって、前記メタセシス反応における前記触媒の活性(ターンオーバー頻度、TOF)が1×10−1超である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Grubbs−Hoveyda型のものである、ルテニウムベースのメタセシス触媒を指向する。本明細書に記載される新規2−アリールオキシ置換O−キレートRuベースの触媒は、低温および短い反応時間でなどの穏和な反応条件でさえも迅速なメタセシス反応を可能にする。それらは、迅速な開始挙動を明らかにする。
【0002】
さらなる態様では、本発明は、本発明のルテニウムベースの触媒の製造用の中間生成物である、新規スチレンベースの前駆体を指向する。これらのスチレンベースの前駆体は、費用効率が高いおよび時間効率が高い方法で製造することができ、本明細書に記載される新規メタセシス触媒の経済的な、かつ、直接的な製造を可能にする。
【0003】
本発明はさらに、スチレンベースの前駆体から出発する新規ルテニウムベースの触媒の製造方法を提供し、そしてまたオレフィンメタセシスのための新規Ruベースの触媒の使用にも関する。本発明による方法は、少ない反応工程で特徴づけられ、優れた収率でのRuベースの触媒の合成を可能にする。したがって本方法は、商業的な生産規模で本発明による触媒を直接合成するために採用されるのに好適である。
【0004】
ルテニウムベースの触媒は、閉環メタセシス(RCM)、クロスメタセシス(CM)および開環メタセシス重合(ROMP)を触媒するのにとりわけ好適である。本新規触媒は、オレフィンメタセシス反応における速い触媒開始を並外れた活性と組み合わせる。低い触媒使用量がメタセシス反応によって広範囲の基質を転化するのに十分である。
【背景技術】
【0005】
オレフィンメタセシス反応のためのRuベースの触媒は、先行技術から公知であり、過去10年にわたってますます重要性を増している。一般に、オレフィンメタセシス反応は、炭素−炭素二重結合の金属触媒転位を含み、複雑な天然産物およびポリマーの製造においてとりわけ重要である。しかし、そのような反応は、その開始速度によって制限される傾向がある。その結果として、速いオレフィンメタセシス変換は、高温または迅速に開始するプレ触媒を必要とする。
【0006】
Ruベースの触媒は、そのような反応を触媒するのに特に好適である。これは、それらの高い安定性と様々な官能基に対する幅広い許容度とのためである。それらの最初の導入以来、これらの触媒は、それぞれの配位子の様々な修正によってそれらの安定性および反応性が高められてきた。先行技術から公知のHoveyda−Grubbs型触媒は典型的には、ベンジリデン配位子の2−イソプロポキシ基で特徴づけられる(式(a)を参照されたい)。酸素原子は、キレート様式でルテニウム原子と結合している。
【0007】
各メタセシス触媒は、国際公開第02/14376 A2号パンフレットに記載されている。約1モル%〜5モル%の触媒使用量、中位の〜高い反応温度および44時間までの反応時間が、それぞれの基質に依存してRCM反応生成物の十分な収率を得るために必要であった。
【化1】
【0008】
より最近の進展では、修正は、Ru=CHR結合にも同様に影響を及ぼす電子吸引性基および電子供与性基(Y、Z)を6員環の4位および5位に導入することによってベンジリデン基に関して行われている(式(b)を参照されたい)。
【化2】
【0009】
そのような修正メタセシス触媒は、Lemcoff、Tzurらによって製造されている。これらの触媒は閉環メタセシスおよびクロスメタセシスに対して活性を示すと述べられている。それぞれの実験データは、1モル%〜2.5モル%の触媒使用量でそれぞれの反応生成物の十分な収率を明らかにした。前述の触媒をクロスメタセシスなどのより困難なメタセシス反応に使用した場合、より低い収率が得られた(Tzur,E.,Szadkowska,A.,Ben−Asuly,A.,Makal,A.,Goldberg,I.,Wozniak,K.,Grela,K.,Lemcoff,N.G.,Chem.Eur.J.2010,16,8726−8737を参照されたい)。
【0010】
さらに、窒素、硫黄、セレンおよびリンをキレート原子として提案する、様々なオレフィンメタセシス触媒がまた、Lemcoffらによって報告されている(Diesendruck,C.E.,Tzur,E.,Ben−Asuly,A.,Goldberg,I.,Straub,B.F.,Lemcoff,N.G.,Inorg.Chem.2009,48,10819−10825を参照されたい)。Grelaらは、キレート窒素原子を有するピリジンベースのルテニウム触媒を報告している。アミンキレート配位子を含有するルテニウム触媒はまた、Grelaらによって報告されている(Zukowska,K.,Szadkowska,A.,Pazio,A.E.,Wozniak,K.,Grela,K.,Organometallics 2012,31,462−469を参照されたい)。高温、数日までの数時間の長い反応時間ならびに中位の〜高い触媒使用量が、それぞれのメタセシス反応生成物の十分な収率を得るために必要であった。
【0011】
N−キレートGrubbs−Hoveyda型触媒はまた、Plenio、Peeckらによって提供されている(式(c)および(d)を参照されたい)。しかし、N−キレート触媒の製造は、いくつかの反応工程を含む労力を要し、かつ、費用のかかる製造方法によって得ることができるにすぎないという事実のためにとりわけ、費用がかかり、かつ、時間がかかる(Peek,L.H.,Savka,R.D.,Plenio,H.,Chem.Eur.J.2012,18,12845−12853を参照されたい)。
【化3】
【0012】
要約すれば、先行技術から公知のルテニウムベースの触媒は、メタセシス反応生成物の十分な収率を得るために高められた反応温度を必要とするおよび/または中位の〜高い触媒使用量を要求する遅い開始速度という欠点を有する。このように、先行技術から公知の触媒は通常、低い〜中位の活性を有する。さらに、上に概説されたように、Peek、SavkaおよびPlenioによって最近記載された、触媒(c)および(d)は、労力を要し、かつ、費用のかかる製造工程を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
先行技術から公知のメタセシス触媒の欠点を克服することが本発明の1つの目的である。したがって、安定した、かつ、迅速に開始するRuベースの触媒であって、Grubbs−Hoveyda型のものであり、そしてメタセシス反応に好適である触媒が本発明で提供される。トリ置換オレフィン基質でのRCMにおいてなどの、立体的に厳しい基質でさえのメタセシス反応において高い基質転化率を可能にする、触媒を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0014】
さらに、本発明のRuベースの触媒の合成に好適であり、そして商業的に入手可能な原材料から出発して少ない反応工程で、高収率で高い費用効率で通常製造することができる、新規スチレンベースの前駆体が提示される。もっとさらに、本発明はまた、本明細書に報告される相当するスチレンベースの前駆体から出発して高収率での新規Ruベースの触媒の費用効率が高い製造を可能にする方法もまた提供される。本新規触媒は、低い触媒使用量でさえも高収率でオレフィンメタセシス反応を触媒するのに好適であるべきである。本触媒はまた、短い反応時間内に低い〜中位の温度下でオレフィンメタセシス反応を触媒することができるべきである。したがって、本触媒は、当該技術から公知の触媒の活性と比べて増加した触媒活性を有するべきである。本触媒は、広範囲の様々な基質の異なるタイプのオレフィンメタセシス反応を触媒するのに好適であるべきである。最後に、本Hoveyda−Grubbs型触媒は、特別な予防措置の必要性なしにSchlenk技法などの標準的な不活性技法下でメタセシス反応を可能にするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、特許請求の範囲の主題によって解決される。本目的はとりわけ、Grubbs−Hoveyda型の新規Ruベースの触媒の提供によって、およびそれらの製造用のスチレンベースの前駆体の提供によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】0.025モル%(250ppm)の式(a)、(IIb)および(IIf)の触媒を使用するトルエン中0℃での210分の反応期間にわたるRCM反応中のN,N−ジアリルトシルアミド(0.1モル/L)の転化率(%単位)を示す。
図2】0.025モル%(250ppm)の式(IIb)および(IIf)の触媒を使用するトルエン中0℃での20分の反応期間にわたるRCM反応中のN,N−ジアリルトシルアミド(0.1モル/L)の転化率(%単位)を示す。
図3】触媒(IIb)の結晶構造のORTEPプロットを示す。重要な結合長さ(pm)および角度(°)は、次の通りである(分子の残りに対してフェニル基の配向に関して異なる、触媒(IIb)の2つの独立した分子が固体の状態で観察され、第1の数は分子1に相当し、これに分子2についてのそれぞれのデータが続く):Ru−O 226.6(4)、230.5(3);Ru−C(NHC) 198.4(5)、197.0(6);Ru=CHR 182.1(5)、180.9(5)、Ru−Cl 230.7(2)、232.3(2)、232.1(2)、234.0(2);Cl−Ru−Cl 153.71(6)、158.31(6)。触媒(IIb)の2つの観察される分子におけるRu−O距離の著しい変動は、Ru−O結合についての浅いエネルギーポテンシャル曲線があること、したがって、小さい外乱に関してこの結合の感受性の増加を示唆する。
図4】30℃でのトルエン中ブチルビニルエーテル(0.01M)との反応中の触媒(IId)(1×10−4モル/L)の吸光度−時間曲線を示す。データは、(y=A1・exp(−x/t1)+y0)および(kobs=1/t)を用いて適合する。おそらく配位子−金属電荷移動(LMCTバンド)によって生じる触媒(IId)の吸光度は、370nmで測定される。触媒(IId)の吸光度の速い減少が観察された。この解離反応は、ブチルビニルエーテルの非常に低い濃度(0.01モル/L)でおよび、周囲温度よりもわずかに上である、温度(30℃)でさえも20秒未満を要した。このことから、Ru−O結合がオレフィンの存在下で迅速に壊れることが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本触媒は、単一反応工程でRuベースの出発錯体とのクロスメタセシス反応によって本発明によるスチレンベースの前駆体から出発して得られる。
【0018】
本発明の新規Ruベースの触媒を製造するためのスチレンベースの前駆体は、式(I)
【化4】
[式中
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10シリルオキシ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリールまたは電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10シリルオキシ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環または電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、直鎖もしくは分岐C〜C10アルキル基から選択される]
で特徴づけられる。
【0019】
EWGは、隣接原子から電子密度を吸引する原子または官能基である。本発明による好適なEWGは、ハロゲン原子、トリフルオロメチル(−CF)、ニトロ(−NO)、スルフィニル(−SO−)、スルホニル(−SO−)、ホルミル(−CHO)、C〜C10カルボニル、C〜C10カルボキシル、C〜C10アルキルアミド、C〜C10アミノカルボニル、ニトリル(−CN)またはC〜C10スルホンアミド基から選択される。
【0020】
式(I)におけるRは好ましくは、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10シリルオキシ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環または電子吸引性基(EWG)から選択される。式(I)におけるRは、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、ハロゲン原子またはニトロ(−NO)から選択されることがさらに好ましい。最も好ましくは、式(I)におけるRは、ジメチルアミノ(−NMe)、ニトロ(−NO)および塩素(−Cl)から選択される。
【0021】
は、水素または直鎖もしくは分岐C〜C10アルキル基から選択される。好ましくは、Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルまたはイソブチルである。最も好ましいバージョンでは、Rは、水素またはメチルである。
【0022】
好ましくは、a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシまたはEWGから選択される。好ましい実施形態では、a、b、cおよびdはそれぞれ水素である。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、本新規Ruベースの触媒の製造用のスチレンベースの前駆体は、式(Ia):
【化5】
で特徴づけられる。
【0024】
代わりの実施形態によれば、スチレンベースの前駆体は、式(Ib):
【化6】
で特徴づけられる。
【0025】
さらなる実施形態によれば、スチレンベースの前駆体は、式(Ic):
【化7】
で特徴づけられる。
【0026】
さらなる実施形態では、スチレンベースの前駆体は、式(Id):
【化8】
で特徴づけられる。
【0027】
本発明のスチレンベースの前駆体は、求核置換による単一段階反応によって相当するベンズアルデヒド中間体から容易に得られ得る。
【0028】
ベンズアルデヒド中間体の製造のための条件は、実施例セクションに例示的に提示される。それらは、60%超の収率で高い費用効率で得ることができる。ベンズアルデヒド中間体は、1〜12時間の範囲の期間、それぞれの出発原料に依存して50℃〜200℃の範囲の温度で、出発原料と塩素化炭化水素溶媒などの反応溶媒とを含む混合物を攪拌することによって、例えば、得られる。攪拌後に、ベンズアルデヒド中間体は通常単離され、従来法によってさらに精製される。
【0029】
本ベンズアルデヒド中間体を製造するための低コスト原材料は、商業的に入手可能であり、4−置換フェノールおよび2−フルオロ−ベンズアルデヒドを含んでもよい。あるいはまた、原材料は、4−置換1−フルオロ−ベンゼンおよび2−ヒドロキシベンズアルデヒドを含んでもよい。
【0030】
本発明のスチレンベースの前駆体は、単一段階反応によってWittig反応剤との反応によりベンズアルデヒド中間体から容易に得られ得る。この反応のための条件は、実施例セクションに例示的に提示される。
【0031】
本発明のRuベースの触媒は、Ruベースの出発錯体とのクロスメタセシス反応によって本発明によるスチレンベースの前駆体から出発して得られる。本明細書に記載されるRuベースの触媒は、低い触媒使用量および低い〜中位の温度でさえも秀でた活性でオレフィンメタセシスを触媒するのにとりわけ好適である。
【0032】
本発明のRuベースの触媒は、2つのアリール基がキレート酸素原子に直接結合している、すなわち、Ruベースの触媒が2−アリールオキシ置換Grubbs−Hoveyda型触媒であることを特徴とする。2−アリールオキシ置換基のアリール基は、それが結合した酸素原子に対してパラ位にある1つの置換基を有することを特徴とする。これは予想外にも、本Ruベースの触媒の秀でた触媒活性および速い開始速度を可能にする。本発明のRuベースの触媒は、式(II):
【化9】
[式中、
− Lは、中性2電子ドナー配位子であり;
− a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10シリルオキシ、C〜C10アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC〜C14アリール、任意選択的に置換されたC〜C14アリールオキシ、任意選択的に置換されたC〜C14ヘテロアリールまたは電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Rは、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、C〜C10シリルオキシ、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、C〜C14アリール、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環または電子吸引性基(EWG)から選択され;
− Xは、ハロゲンアニオン(すなわち、クロリド、ブロミドもしくはヨージド)、テトラフルオロボレート(BF)またはアセテート(CHCOO)の群から独立して選択されるアニオン性配位子である]
で示される。
【0033】
この式中、Lは、中性2電子ドナー配位子を表す。一般に、中性2電子ドナー配位子は、ホスフィン配位子の群およびN−複素環カルベン配位子(NHC配位子)の群から選択される。好ましくは、中性2電子ドナー配位子は、N−複素環カルベン配位子(NHC配位子)の群から選択される。
【0034】
ホスフィン配位子は、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)およびトリシクロペンチルホスフィンなどのアルキルホスフィンの群から選択されてもよい。さらに、ホスフィン配位子は、9−ホスファビシクロ−[3.3.1]−ノナンまたは9−ホスファビシクロ−[4.2.1]−ノナン(「ホバン類」とまた名前を付けられる)などのホスファ−ビシクロアルカン化合物であってもよい。好ましくは、ホスファ−ビシクロアルカン化合物は、9−シクロヘキシル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「シクロヘキシルホバン」)、9−(2,2,4−トリメチルペンチル)−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「2,2,4−トリメチルペンチルホバン」)および9−イソブチル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「イソブチルホバン」)の群から選択される。
【0035】
好ましい実施形態では、Lは、N−複素環カルベン配位子(NHC配位子)である。本発明によれば、NHC配位子は、ルテニウムに向けて優れた2電子ドナー配位子として働く安定した一重項カルベンを含むN含有複素環化合物である。NHC配位子は、環原子として少なくとも1個の窒素原子および炭素原子(複数)を含む。少なくとも1個の窒素環原子は、複素環構造の一部ではないさらなる部分と結合している。NHC配位子は、少なくとも2個の窒素原子を環原子として好ましくは含み、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0036】
NHC配位子は好ましくは、式(III)または(IV):
【化10】
から選択される。
【0037】
式(III)および(IV)中、Rは、2,4,6−トリメチルフェニル(「メシチル」)、2,6−ジ−イソプロピルフェニル、3,5−ジ−第三ブチルフェニルおよび2−メチルフェニルならびにそれらの組み合わせから選択される置換アリール基である。
【0038】
好ましくは、NHC配位子は、1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIMes」)、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIPr」)または1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリン−2−イリデン(不飽和NHC、「IPr」)の群から選択される。
【0039】
Xは、好ましくはクロリド、ブロミドもしくはヨージドなどのハロゲンアニオンの群からの、アニオン性配位子であり;最も好ましい実施形態では、XはClである。
【0040】
基a、b、cおよびdならびにEWG置換基は、式(I)のスチレンベースの前駆体について上に記載されたように定義される。
【0041】
式(II)中のRは好ましくは、水素、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ、ハロゲン原子またはニトロ(−NO)から選択される。最も好ましくは、式(II)中のRは、水素、ジメチルアミノ(−NMe)、ニトロ(−NO)および塩素(−Cl)から選択される。
【0042】
好ましくは、a、b、cおよびdは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキルなどの直鎖もしくは分岐アルキル基、C〜C10アルコキシまたは電子吸引性基(EWG)から選択される。さらに好ましい実施形態では、a、b、cおよびdはそれぞれ水素である。a、b、cおよびdがそれぞれ水素である場合に、秀でた触媒活性を有するRuベースの触媒が得られる。そのような触媒では、Ru−O結合が第一に影響を及ぼされる。
【0043】
特有の実施形態では、本発明によるRuベースの触媒は、式(IIa):
【化11】
で特徴づけられる。
【0044】
さらなる特有の実施形態では、本発明のRuベースの触媒は、式(IIb):
【化12】
で特徴づけられる。
【0045】
さらなる特有の実施形態では、本発明のRuベースの触媒は、式(IIc)または式(IId):
【化13】
で特徴づけられる。
【0046】
さらなる代わりの実施形態では、提供されるRuベースの触媒は、式(IIe)、(IIf)、(IIg)または(IIh)の1つで、おそらく式(IIe)でまたは式(IIf):
【化14】
で特徴づけられる。
【0047】
上に記載されたRuベースの触媒に加えて、本発明はまた、これらの新規Ruベースの触媒の製造方法に関する。一般に、本触媒は、一段階反応によって式(I)の新規スチレンベースの前駆体から得られる。本発明による一段階反応は、中間体単離または中間体精製工程を必要とせずに進行する反応である(本明細書では以下「ワンポット合成」と呼ばれる)。
【0048】
一般式LRu=CR(式中、RおよびRは、独立して水素、アルキルまたはアリールであってもよく、そして式中、RおよびRは環を形成してもよい)の様々なRuベースの出発錯体を、本発明の触媒の製造用の出発原料として用いることができる。好適なRuベースの出発錯体の例は、Grubbs第1世代の周知のRu−ベンジリデン錯体(ホスフィン配位子を含有する)かまたはGrubbs第2世代Ru錯体(NHC配位子を含有する)である。
【0049】
本発明の好ましい方法では、式(I)のスチレンベースの前駆体は、式(II)のRuベースの触媒を生成するためにクロスメタセシス反応において式(V)のRuベースの出発錯体と反応させられる。この反応は、スキームIに示される。
【化15】
スキーム1
【0050】
式(V)のRuベースの出発錯体において、Lは、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリシクロペンチルホスフィンならびに9−シクロヘキシル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「シクロヘキシルホバン」)、9−(2,2,4−トリメチルペンチル)−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「2,2,4−トリメチルペンチルホバン」)および9−イソブチル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「イソブチルホバン」)などのホスファ−ビシクロアルカン化合物の群から選択されるホスフィン配位子であってもよい。
【0051】
本方法の好ましいバージョンでは、Lは、1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIMes」)、1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン(「SIPr」)もしくは1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−イミダゾリン−2−イリデン(不飽和NHC、「IPr」)の群から選択されるNHC配位子である。
【0052】
さらに、上の式(V)のRuベースの出発錯体において、L’は、トリ−イソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリシクロペンチルホスフィン、9−シクロヘキシル−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「シクロヘキシルホバン」)、9−(2,2,4−トリメチルペンチル)−9−ホスファ−ビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「2,2,4−トリメチルペンチルホバン」)、9−イソブチル−9−ホスファビシクロ−[3.3.1]−ノナン(「イソブチルホバン」)の群から選択されるホスフィン配位子または、置換されていても置換されていなくてもよい、ピリジン配位子を表す脱離配位子である。例は、ピリジンまたはブロモ−ピリジンである。最も好ましい実施形態では、L’はピリジンである。
【0053】
Xは、好ましくは、クロリド、ブロミドもしくはヨージドなどのハロゲンアニオンの群からの、アニオン性配位子であり;最も好ましい実施形態では、Xはクロリド(Cl)である。
【0054】
好ましくは、本発明によるRuベースの触媒の製造方法は、次の反応工程:
a)式(I)のスチレンベースの前駆体、式(V)のRuベースの出発錯体および反応溶媒を含む、反応混合物を提供する工程;
b)混合物を任意選択的に攪拌する工程;
c)反応溶媒を蒸発させる工程;
d)残った反応生成物を任意選択的に精製する工程。
を含む。
【0055】
好ましくは、式(I)のスチレンベースの前駆体対式(V)のRuベースの出発錯体のモル比は、少なくとも1.00、より好ましくは少なくとも1.01、さらに好ましくは少なくとも1.05である。このモル比が余りにも低い場合には、本発明の触媒は、高収率で得ることができない。式(I)のスチレンベースの前駆体対式(V)のRuベースの出発錯体のモル比は1.5の値を超えるべきではなく;好ましくはこのモル比は1.2の値を超えるべきではない。式(I)のスチレンベースの前駆体対式(V)のRuベースの出発錯体のモル比は1.05〜1.15であることが特に好ましい。
【0056】
使用される式(V)のRuベースの出発錯体に依存して、クロスメタセシス反応についての反応条件は変更されてもよく;特に、反応工程a)の反応混合物は、例えば、(PCyClRu−フェニルインデンリデンなどのホスフィン含有Ru出発錯体を使用する場合、ホスフィン捕捉剤としてCu塩(CuClまたはCuBrなどの)をさらに含んでもよい。しかし、Cu塩の添加は、脱離配位子L’がホスフィンではない場合には、必要ではないことが指摘されるべきである。
【0057】
反応工程a)の反応混合物は、好ましくは脱離配位子L’がピリジンまたはトリシクロヘキシルホスフィン配位子である場合には、酸性イオン交換樹脂をさらに含むことが好ましい。この樹脂の好ましい存在は意外にも、本発明の触媒の収率の向上を可能にする。これは、本発明のスチレンベースの前駆体による脱離配位子の置換を容易にすると推測される。好ましくは、この樹脂は、官能基化スチレンジビニルベンゼンコポリマーをベースとする。官能基は好ましくは硫酸型のものである。より好ましくは、この樹脂は、Amberlyst(登録商標)樹脂を含み;最も好ましくは、この樹脂はAmberlyst(登録商標)樹脂である。好適なイオン交換樹脂は、国際公開第2011/091980 A1号パンフレットに開示されている。
【0058】
反応混合物は、反応溶媒、好ましくは、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルムもしくは1,2−ジクロロエタン(DCE)などの塩素化炭化水素溶媒またはテトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサンなどの環状エーテルを含む。あるいはまた、ベンゼンもしくはトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒ならびにエステルおよびリストされた溶媒の混合物が用いられてもよい。最も好ましくは、反応溶媒は、DCMおよびTHFから選択される。
【0059】
工程b)のための好適な反応時間は、出発原料の種類に依存する。典型的には、混合物は、反応を完結するために0.25〜2時間、好ましくは0.25〜1.5時間、最も好ましくは0.5〜1時間の範囲で攪拌される。反応温度は、攪拌中の原材料に依存して変わってもよい。典型的には、100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲の反応温度が適切である。より好ましくは、反応温度は50℃を越えないし、とりわけ好ましくは、それらは45℃を越えない。反応は好ましくは、窒素またはアルゴン、最も好ましくはアルゴンなどの不活性ガス下で実施される。
【0060】
任意選択的に、樹脂は、反応工程b)の後に濾過によって分離される。
【0061】
反応工程b)の後でまたは任意選択的に酸性イオン交換樹脂の後続の濾過の後で、反応溶媒は、好ましくは真空で、除去される。残った反応生成物はさらに精製されてもよい。これは好ましくは、反応生成物を好適な溶媒で洗浄することによって行われる。好適な溶媒としては、脂肪族アルコール、アルカン、アルケンおよびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、この溶媒は、メタノール、n−ペンタンまたはそれらの混合物から選択される。さらなる精製工程が行われてもよい。
【0062】
本発明によるRuベースの触媒は、穏和な〜中位の反応条件下で短い反応時間内に、記載された方法によって式(I)の前駆体から得られる。これは、高収率で高純度の改善されたメタセシス触媒をもたらす費用効率が高く、かつ、時間を節約する製造ルートを確実にする。好ましくは、本Ruベースの触媒は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも70%の収率で記載された方法によって得られる。
【0063】
本発明によるRuベースの触媒は、広範囲の基質でのメタセシス反応を触媒するために使用され得る。既に記載されたように、これらの触媒は、閉環メタセシス(RCM)、クロスメタセシス(CM)、開環メタセシス重合(ROMP)および他のメタセシス反応を触媒するのに特に好適である。一般に、メタセシス反応は均一相で行われる。あるいはまた、反応は、固定化または担持触媒を使って;例えばカチオン交換樹脂の存在下で、不均一様式で実施されてもよい。メタセシス反応のための反応条件は、当業者に周知である。反応は、例えば、1,2−ジクロロエタン、ヘキサフルオロベンゼンまたはトルエンであってもよい、好適な反応溶媒中で実施される。好ましくは、反応溶媒はトルエンを含む。最も好ましくは、反応溶媒はトルエンである。好ましくは、メタセシス反応は、窒素またはアルゴン、好ましくはアルゴンなどの保護不活性ガス下で行われる。
【0064】
本発明のRuベースの触媒は、60℃よりも下、好ましくは55℃よりも下のメタセシス反応中の反応温度を可能にする。そのような低い温度は、温度に敏感な基質材料を用いる場合に重要である。さらに、本発明による触媒はまた、約0℃の温度でさえも反応生成物の優れた収率を可能にする。これは、図1および図2から明らかである。
【0065】
さらに、本発明のRu触媒は、並外れた低い触媒使用量を可能にする。好ましくは、触媒使用量は、1,000ppmよりも下、すなわち、0.1モル%よりも下である。さらに好ましくは、250ppm以下の、より好ましくは100ppm以下の触媒使用量が、高い転化率を得るために十分である。したがって、メタセシス反応は、費用効率が高い方法で行うことができる。
【0066】
本発明のRu触媒は、短い反応時間のメタセシス反応を可能にする。典型的には、実験セクションに示されるように、基質の60%超が15分後に転化される。これは、公知の方法によって、好ましくはガスクロマトグラフィー(GC)によって測定される。ほとんどの場合に、70%以上の、好ましくは75モル%以上の転化率が、上述の条件下で少なくとも15分の反応温度後に本発明のRuベースの触媒で得られる。様々なメタセシス反応において、転化率は、15分の反応時間後に90%または99%さえに達する。いくつかの場合には、80%超、より好ましくは90%以上の単離最終生成物の収率を得ることができる。
【0067】
本発明のRuベースの触媒は、速い開始速度を示し、したがって、低い〜中位の反応温度でさえも優れた触媒活性を持ちながら速い、かつ、効率的なオレフィンメタセシス反応につながる。好ましくは3×10超、さらに好ましくは5×10以上、もっとさらに好ましくは8×10以上、とりわけ好ましくは3×10以上のTON(「ターンオーバー数」;すなわち、転化された基質対触媒のモル比)が本発明の新規Ruベースの触媒で得られ得る。触媒活性についての尺度であるTOF(時間当たりのTON;ターンオーバー頻度)は、好ましくは1×10−1超まで、さらに好ましくは2×10−1以上、最も好ましくは7×10−1以上に達する。特有の実施形態では、1×10−1以上のTOFが得られる。
【0068】
本発明の触媒の活性をあつらえるためにキレート酸素原子に結合した置換基の立体効果と電子効果との間の適切なバランスを提供することが必要であることが本発明者らによって見いだされた。したがって、式(a)のルテニウムベースの触媒と比べて本Ruベースの触媒の優れた活性は、Oドナーの性質の修正によって、すなわち、酸素原子の減少したドナー特性によってならびにより低い立体障害によって生じている可能性があると推定される。ベンジリデン配位子におけるOドナー原子の性質のこの修正は、Ru−O相互作用の弱化、より高いRu−O距離に寄与し、その結果として触媒の開始速度の著しい増加をもたらし得る。これは、本新規Ruベースの触媒を使用することによって速い、かつ、効率的なメタセシス反応に寄与していると推測される。これまで、そのような2−フェノキシ置換Ru触媒は文献に記載されていない。
【0069】
要約すれば、本発明の新規Ruベースの触媒は、オレフィンメタセシス反応において速い触媒開始および高い安定性を並外れた活性と組み合わせる。低い触媒使用量が、短い反応時間内でおよび低い〜中位の反応温度でさえもメタセシス反応生成物の優れた収率を得るのに十分である。本新規触媒は、新規スチレンベースの前駆体から一段反応で高純度および高収率で容易に得られる。スチレンベースの前駆体は一般に、費用効率が高い方法で市販の原材料から高収率で得られる。したがって本新規Ruベースの触媒は、工業的規模で経済的に製造することができる。
【0070】
本発明は、保護の範囲を限定するまたは狭めることなく以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0071】
概論
すべての化学薬品は、特に明記しない限り、商業的供給業者から試薬グレードとして購入し、さらなる精製なしに使用する。ルテニウム錯体を含むすべての反応は、アルゴンの雰囲気下で行う。CHCl(99.5%)およびペンタン(99%)は、Gruessing GmbHから、トルエンは、Sigma−Aldrich(Lab.Reagentグレード、99.3%)から入手する。これらの溶媒は、カラム精製システムを用いることによって乾燥させ、脱気する。このシステムでは、溶媒をスパージングし、アルゴンで加圧し(0.1〜1バール)、引き続き、活性アルミナを充填したカラムおよび、担持銅触媒(ペンタン)か、再び活性アルミナ(CHCl)かのどちらかを充填した第2カラムを逐次通過させる。ジメチルホルムアミドは、水素化カルシウム上で還流させ、アルゴン雰囲気下で蒸留する。テトラヒドロフランは、ナトリウム上で乾燥させ、アルゴン雰囲気下で蒸留する。すべての溶媒は、モレキュラーシーブ(4Å)上で貯蔵する。
【0072】
Hおよび13C核磁気共鳴スペクトルは、Bruker DRX300スペクトロメーターで記録する。ケミカルシフトは、デルタスケール(δ)で百万当たりの部(ppm)単位で与えられ、テトラメチルシラン(H−、13C−NMR=0.0ppm)またはCHClの残存ピーク(H−NMR=7.26ppm、13C−NMR=77.16ppm)を基準とする。NMRデータについての省略形:s=一重線;d=二重線;t=三重線;q=四重線;sep=七重線;m=多重線;bs=幅広い信号。分取クロマトグラフィーは、Merckシリカ 60(0.063〜0.02メッシュ)を使用して行う。GC実験は、オートサンプラーおよびFID検出器付きのClarus 500 GCで行う。カラム:Varian CP−Sil 8 CB(長さ=15m、d=0.25mm、d=1.0 lm)、N(フロー:17cm s−1;スプリット 1:50);注入器温度:270℃、検出基温度:350℃。
【0073】
実施例1
スチレンベースの前駆体(Ia)〜(Id)の製造
この製造は、(式(Ia)〜(Ic)のスチレンベースの前駆体を製造するためには)4−置換フェノールから出発して、または式(Id)のスチレンベースの前駆体を製造するためには4−置換1−フルオロベンゼンから出発して実施する。第1反応工程では、それぞれのベンズアルデヒド中間体を製造する。ベンズアルデヒド中間体は次に、第2反応工程でそれぞれの前駆体(Ia)〜(Id)に転化される。
【0074】
a)2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒド、2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドの製造
ベンズアルデヒド中間体は、修正を加えた文献手順に従って合成する。アルゴン雰囲気下の乾燥Schlenkフラスコ中へ、相当するフェノール(17.7ミリモル)、2−フルオロベンズアルデヒド(2.0g、16.1ミリモル)、炭酸カリウム(5.6g、40.3ミリモル)および無水DMF(40mL)を室温で添加する。この混合物を170℃に密封フラスコ中で温め、(2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)この温度で2時間、または(2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)150℃で1.5時間攪拌する。次に、混合物を室温に放冷し、水(200mL)で処理し、生成物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層をNaOH(1M、50mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、真空で蒸発させる。残留物を、(2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)カラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 10:1、v/vによって精製するか、または(2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)−ベンズアルデヒドの場合には)精製なしに次反応に使用する。
【0075】
2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒドは、白色固体として得られる(3.07g、79%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 10.59(d,J=0.8Hz,1H),7.90(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.44(ddd,J=8.5,7.3,1.8Hz,1H),7.12〜7.05(m,1H),7.03〜6.97(m,2H),6.84〜6.74(m,3H),2.96(s,6H).
13C NMR(75MHz,CDCl)δ 189.85,161.75,148.14,145.47,135.76,128.33,126.05,122.23,121.25,116.90,114.18,41.34.
【0076】
2−フェノキシベンズアルデヒドは、黄色オイルとして得られる(2.52g、79%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 10.52(d,J=0.8Hz,1H),7.94(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.51(ddd,J=8.4,7.3,1.8Hz,1H),7.43〜7.35(m,2H),7.22〜7.15(m,2H),7.10〜7.04(m,2H),6.90(dd,J=8.4,0.8Hz,1H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 189.45,160.10,156.53,135.85,130.22,128.55,127.03,124.44,123.44,119.51,118.60.
【0077】
2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドは、黄色固体として得られる(3.07g、82%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 10.48(d,J=0.7Hz,1H),7.94(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.53(ddd,J=8.4,7.3,1.8Hz,1H),7.37〜7.33(m,2H),7.24〜7.19(m,1H),7.03〜6.99(m,2H),6.89(dd,J=8.4,0.7Hz,1H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 189.14,159.62,155.20,135.95,130.26,129.65,128.85,127.13,123.91,120.72,118.60.
【0078】
b)2−(4−ニトロフェノキシ)ベンズアルデヒドの合成
アルゴン雰囲気下の乾燥Schlenkフラスコ中へ1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(2.0g、14.2ミリモル)、サリチルアルデヒド(2.1g、17.0ミリモル)、炭酸カリウム(4.9g、35.5ミリモル)および無水DMF(40mL)を添加する。この混合物を100℃に密封フラスコ中で温め、この温度で一晩攪拌する。次に混合物を室温に放冷し、水(200mL)で処理し、生成物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層をNaOH(水中1M、50mL)およびブライン(150mL)で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、真空で蒸発させる。残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 4:1、v/v)によって精製する。
【0079】
2−(4−ニトロフェノキシ)ベンズアルデヒドは、黄色固体として得られる(2.40g、69%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 10.34(d,J=0.7Hz,1H),8.28〜8.23(m,2H),8.00(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.66(dd,J=8.3,7.4,1.8Hz,1H),7.41〜7.35(m,1H),7.13〜7.06(m,3H).
【0080】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 188.36,162.64,157.14,143.61,136.26,129.71,128.14,126.31,125.85,120.93,117.87.HRMS:m/z C13NOに対する計算値 243.0542;実測値:243.0531.分析 C13NO(243.05)に対する計算値:C 64.18,H 3.73,N 5.76;実測値:C 64.23,H 3.72,N 5.88.
【0081】
c)ベンズアルデヒド中間体のビニル化
ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム(3.0g、7.42ミリモル)を含有するSchlenkフラスコを3回排気し、アルゴンで満たし戻す。無水テトラヒドロフラン(50mL)を注射器によって添加し、形成された懸濁液を−10℃に冷却する。KOtBu(902mg、8.04ミリモル)を、アルゴンの流れ下で分割して添加し、攪拌を−10℃で20分間続行する。その後、ベンズアルデヒド中間体の1つ(6.18ミリモル)を添加する。混合物を室温に温まるに任せ、一晩攪拌し、水(500mL)中へ注ぐ。生成物をジエチルエーテル(3×100mL)で抽出する。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させる。溶媒を真空で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 20:1、v/v)によって精製する。
【0082】
前駆体(Ia)は、無色固体として得られる(1.18g、80%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.58(dd,J=7.7,1.8Hz,1H),7.20〜7.01(m,3H),6.96〜6.89(m,2H),6.80(dd,J=8.2,1.2Hz,1H),6.76(d,J=9.0Hz,2H),5.82(dd,J=17.7,1.4Hz,1H),5.30(dd,J=11.1,1.4Hz,1H),2.93(s,6H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 155.69,147.37,131.49,128.89,128.66,126.61,122.78,120.11,117.92,115.02,114.34,41.51.HRMS:m/z C1617NOに対する計算値 239.1304;実測値:239.1310.分析 C1617NO(239.13)に対する計算値:C 80.30,H 7.16,N 5.85;実測値 C 79.88,H 7.11,N 5.83.
【0083】
前駆体(Ib)は、無色固体として得られる(0.99g、82%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.62(dd,J=7.8,1.7Hz,1H),7.34〜7.30(m,2H),7.24(dd,1H),7.16〜7.13(m,1H),7.07(tt,J=7.6,1.1Hz,1H),7.01(dd,J=17.7,11.1Hz,1H),6.97〜6.94(m,2H),6.92(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),5.81(dd,J=17.7,1.3Hz,1H),5.29(dd,J=11.1,1.3Hz,1H).
【0084】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ 158.05,153.75,131.12,129.97,129.83,129.14,126.77,124.21,122.81,120.23,117.91,115.51.元素分析 C1412O(196.09)に対する計算値 C 85.68,H 6.16;実測値 C 85.49,H 6.11.
【0085】
前駆体(Ic)は、無色液体として得られる(1.20g、84%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.60(dd,J=7.7,1.8Hz,1H),7.28〜7.20(m,3H),7.18〜7.12(m,1H),6.99〜6.87(m,2H),6.87〜6.82(m,2H),5.78(dd,J=17.7,1.3Hz,1H),5.27(dd,J=11.1,1.2Hz,1H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 156.76,153.32,130.85,130.07,129.79,129.26,127.77,126.93,124.66,120.33,118.97,115.86.HRMS:m/z C1411ClOに対する計算値 230.0494;実測値 230.04815.元素分析 C1411ClO(230.69)に対する計算値:C 72.89,H 4.81;実測値 C 72.82,H 4.92.
【0086】
前駆体(Id)は、黄色固体として得られる(1.15g、77%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 8.22〜8.16(m,2H),7.68〜7.64(m,2H),7.38〜7.24(m,1H),7.04〜7.00(m,1H),6.97〜6.91(m,2H),6.79(dd,J=17.7,11.1Hz,1H),5.79(dd,J=17.7,1.1Hz,1H),5.29(dd,J=11.1,1.1Hz,1H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 163.61,151.47,142.67,130.74,130.20,129.65,127.31,126.21,126.14,121.73,116.81,116.51.HRMS:m/z C1411NOに対する計算値 241.0739;実測値:241.0714.元素分析 C1411NO(241.25)に対する計算値 C 69.70,H 4.60,N 5.81;実測値 C 69.93,H 4.68,N 5.69.
【0087】
実施例2
a)触媒(IIa)〜(IIc)および(IIe)〜(IIh)の製造
(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには)[RuCl(SIMes)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.27ミリモル;Umicore AG & Co.KG,Hanau,Germany)かまたは(触媒(IIe)〜(IIh)を製造するためには)[RuCl(SIPr)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.24ミリモル;Umicore AG & Co. KG,Hanau,Germany)を含有する火炎乾燥Schlenkチューブを、3回排気し、アルゴンで満たし返す。塩化メチレンン(4mL)、それぞれのスチレンベースの前駆体(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには0.30ミリモル、または触媒(IIe)〜(IIh)を製造するために0.26ミリモル)およびAmberlyst樹脂(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには275mg、または触媒(IIe)〜(IIh)を製造するためには250mg、乾燥形態、4.70ミリモル H/g)を、アルゴン雰囲気下で添加する。この混合物を、触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには30分間、または触媒(IIf)〜(IIh)を製造するために60分間40℃で、触媒(IIe)を製造するために1時間室温で攪拌し、次に濾過して樹脂を分離する。濾液を真空で蒸発させ、残った固体をペンタン(10mL)で処理し、得られた懸濁液を1分間超音波浴中に保つ。固体残渣を濾過し、メタノール(5mL)およびペンタン(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させる。
【0088】
触媒(IIa)は、緑色固体として得られる(135mg、71%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.71(s,1H),7.37(t,J=7.5Hz,1H),7.13(d,J=8.3Hz,2H),7.03(s,4H),7.00〜6.88(m,3H),6.61(d,J=8.0Hz,3H),4.15(s,4H),2.93(s,6H),2.47(s,12H),2.37(s,6H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 292.65,210.50,154.24,143.89,138.79,136.22,129.54,129.46,128.74,127.69,123.66,122.90,122.53,113.86,113.13,51.81,41.20,21.24,19.43.HRMS:m/z C3641ClRuに対する計算値 703.16809;実測値:703.1661.
【0089】
触媒(IIb)は、緑色固体として得られる(142mg、80%収率)。H NMR(300MHz,CDCl):δ 16.71(d,J=0.9Hz,1H),7.44〜7.36(m,1H),7.25〜7.14(m,5H),7.03(s,4H),7.00(d,J=1.8Hz,1H),6.94(td,J=7.5,0.8Hz,1H),6.66(d,J=8.3Hz,1H),4.16(s,4H),2.46(s,12H),2.37(s,6H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 292.53,210.04,153.24,153.04,144.21,138.85,136.03,129.52,129.44,126.03,124.21,122.82,122.08,51.79,21.22,19.44.HRMS:m/z C3436OClRuに対する計算値 660.1253;実測値:660.1239.
【0090】
触媒(IIc)は、緑色固体として得られる(129mg、69%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.70(s,1H),7.42(t,J=7.1Hz,1H),7.24〜7.18(m,4H),7.06〜6.94(m,6H),6.65(d,J=8.1Hz,1H),4.16(s,4H),2.45(s,12H),2.38(s,6H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ 292.09,209.55,152.61,151.71,144.10,138.98,138.83,135.94,131.40,129.55,124.60,123.43,122.96,114.00,51.80,21.23,19.41.HRMS:m/z C3435OClRuに対する計算値 694.0820;実測値:694.0845.
【0091】
触媒(IIe)は、緑色固体として得られる(139mg、73%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.59(s,1H),7.49(t,J=7.6Hz,2H),7.32(d,J=7.6Hz,5H),7.22(d,J=8.1Hz,2H),6.95〜6.83(m,2H),6.64〜6.52(m,3H),4.13(s,4H),3.64(sep,J=6.2Hz,4H),2.92(s,6H),1.27(d,J=6.7Hz,12H),1.19(d,J=6.4Hz,12H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 287.86,213.42,148.85,142.88,137.25,129.67,129.33,124.67,123.74,123.46,121.94,113.73,113.04,54.77,41.10,28.70,26.49,24.07.HRMS:m/z C4253OClRuに対する計算値 787.2567;実測値:787.2600.元素分析 C4253OClRu(787.88)に対する計算値:C 64.03,H 6.78,N 5.33;実測値 C 64.56,H 6.96,N 5.12.
【0092】
触媒(IIf)は、緑色固体として得られる(151mg、84%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.59(d,J=0.5Hz,1H),7.49(t,J=7.7Hz,2H),7.39〜7.24(m,9H),7.23〜7.18(m,1H),6.95(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),6.89(t,J=7.4Hz,1H),6.56(d,J=8.3Hz,1H),4.14(s,4H),3.63(sep,J=6.7Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.17(d,J=6.6Hz,12H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 287.38,212.79,154.03,153.04,148.87,143.08,137.11,129.74,129.50,129.33,126.46,124.66,123.93,123.16,122.19,113.85,54.76,28.71,26.51,23.97.HRMS:m/z C4048OClRuに対する計算値 744.2185;実測値:744.2178.
【0093】
触媒(IIg)は、緑色固体として得られる(141mg、75%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.57(s,1H),7.50(t,J=7.7Hz,2H),7.39〜7.35(m,1H),7.34〜7.29(m,6H),7.26〜7.23(m,2H),7.00〜6.88(m,2H),6.55(d,J=8.3Hz,1H),4.15(s,4H),3.61(sep,J=6.8Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.18(d,J=6.6Hz,12H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 286.85,212.24,153.61,151.49,148.85,142.93,137.00,131.91,129.82,129.62,129.37,124.69,124.51,124.32,122.34,113.69,54.76,28.73,26.49,23.97.HRMS:m/z C4047OClRuに対する計算値 778.17584;実測値:778.1784.元素分析 C4047OClRu(778.80)に対する計算値 C 61.63,H 6.08,N 3.60;実測値 C 61.19,H 6.16,N 3.68.
【0094】
触媒(IIh)は、緑色固体として得られる(125mg、66%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.55(s,1H),8.18〜8.14(m,2H),7.53〜7.47(m,4H),7.45〜7.40(m,1H),7.33(d,J=7.7Hz,4H),7.00〜6.98(m,2H),6.63(d,J=8.3Hz,1H),4.16(s,4H),3.57(sep,J=6.7Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.17(d,J=6.6Hz,12H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 285.70,211.08,157.97,152.17,148.89,145.60,143.22,136.77,129.97,129.39,126.16,125.35,124.71,123.29,122.80,116.78,114.27,54.77,28.79,26.51,23.89.HRMS:m/z C4074ClRuに対する計算値 789.2032;実測値:789.2029.
【0095】
a)触媒(IId)の製造
[RuCl(SIMes)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.27ミリモル;Umicore AG & Co.KG,Hanau,Germany)を含有する火炎乾燥Schlenkチューブを、3回排気し、アルゴンで満たし返す。テトラヒドロフラン(5mL)を添加し、結果として生じる懸濁液を0℃に冷却する。次にスチレンベースの前駆体(Id)(65.7mg、0.27ミリモル)およびAmberlyst樹脂(275mg、乾燥形態、4.70ミリモル H/g)を添加し、この混合物を−5℃で30分間攪拌し、濾過し、真空で蒸発させる。固体残留物をメタノール(5mL)、ペンタン(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させる。
【0096】
触媒(IId)は、緑色固体として得られる(141mg、75%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 16.69(s,1H),8.12(d,J=7.2Hz,2H),7.49(s,1H),7.35(d,J=7.4Hz,2H),7.04(s,6H),6.79(d,J=7.3Hz,1H),4.18(s,4H),2.43(s,12H),2.40(s,6H).13C NMR(126MHz,CDCl)δ 291.42,208.52,158.38,150.86,145.17,144.58,139.16,138.94,129.59,129.46,125.78,125.30,123.47,121.80,114.94,51.79,21.28,19.43.
【0097】
実施例3
触媒試験
新規Ruベースの触媒を、閉環メタセシス反応(RCM)で例示的に評価する。さらに、活性を、先行技術から公知の従来型触媒、すなわち、式(a)、(c)および(d)の触媒と比較する。
【0098】
RCMの結果
式(IIa)〜(IIh)の触媒を、N−複素環化合物をもたらす多数の閉環メタセシス反応について系統的に試験する。先行技術触媒(a)との比較を行う。
【0099】
閉環反応は、15分の反応時間で、50℃で、トルエン中で実施する。基質は、0.5モル/Lの量で存在する。反応は、密封した10mLのSchlenkチューブ中でアルゴンの雰囲気下で実施する。10mLのSchlenkチューブ中で、基質をアルゴンの雰囲気下で乾燥トルエンに溶解させる。この溶液を50℃に加熱し、トルエン中の原液(0.75ミリモル/L)からの触媒(0.0025〜0.02モル%)(25〜200ppm)を添加する。この原液は、4.0・10−6モルの触媒(IIa)〜(IIh)を10mLのSchlenkチューブ中へ添加し、チューブを排気し、チューブをアルゴンで満たし、アルゴンの流れ下での5.34mLの乾燥トルエンのその後の添加によって調製する。Schlenkチューブを、本発明の触媒の完全な溶解のために1分間超音波浴中に保つ。
【0100】
基質濃度は、c(S)=n(S)/(V(S)+V(トルエン)+V(原液))と定義される。基質転化率の測定のために、試料(10μL、基質濃度0.5M)を、アルゴンの流れ下で規定時間後に採取し、トルエン中の25%(v/v)のエチルビニルエーテルの250μLを含有するGCバイアル中へ注入する。転化率はGCによって測定する。転化の程度は、2つの実験の平均転化率である。結果を表1に示す。
【0101】
本発明による触媒は、間の低い触媒使用量でおよび低い〜中位の温度で15分未満の反応時間内に60%以上の優れた基質転化率を可能にする。ほとんどのRCM基質について15分の反応時間内に約90%以上さえの転化率が測定される。
【0102】
これに関連して、本発明の新規Ruベースの触媒は、ジまたはトリ置換環状オレフィンをもたらすRCM反応においてとりわけ効率的であるように思われる(表1、エントリー6および表2を参照されたい)。
【0103】
【表1】
【0104】
低い触媒使用量は別として、そのような反応のために必要とされる短い反応時間が最も注目に値する−研究された反応のすべてが、15分未満内にほぼ完了する。
【0105】
TONおよびTOFを、エントリー番号4の基質および触媒(IIf)について計算する。その結果、触媒(IIf)を使用することによって、6.4×10のTONおよび2.56×10−1のTOFが観察される。これは、先行技術に対して著しい改善である。
【0106】
式(IIb)の触媒を、先行技術から公知の式(c)および(d)の式のN−キレートGrubbs−Hoveyda型触媒と比較して、より複雑なおよび決定的に重要な置換オレフィン基質での閉環メタセシス反応について上述の条件下で試験する。
【0107】
【表2】
【0108】
先行技術触媒との比較試験
0℃でのN,N−ジアリルトシルアミドのRCMにおいて、式(IIb)および(IIf)の触媒は、先行技術触媒(a)よりも著しく速い。低温で速い開始は、かなりよりゆっくりと開始する、当該技術から公知の触媒(a)と比べて、優れた触媒活性につながる。図1は、RCM反応の結果を示す。触媒(IIb)および(IIf)については、120分後に完全な転化がほぼ得られるが、それほど迅速に開始しない触媒(a)については、はるかにより長い時間を要する。触媒(IIb)および(IIf)のより速い活性化は、それぞれのRCM生成物への基質のより速い初期変換から明らかである。
【0109】
速い開始および基質転化はまた、図2から明らかであり、図2は、触媒(IIb)および(IIf)については最初の20分以内にN,N−ジアリルトシルアミドの転化率(%単位)に関する詳細な見通しを与える。その結果、20%超の転化率は、0℃で9分以内にさえも得られる。図はまた、触媒(IIb)が触媒(IIf)よりも速く開始することを示す。
【0110】
先行技術触媒(a)と比較して本発明による触媒の触媒活性の増加はまた、表1においても確認される。表1によれば、本発明の触媒は、異なる基質でのRCM反応においてかなりより高い活性を示す。
【0111】
さらに、触媒性能への温度の強い影響が指摘される。0℃でのN,N−ジアリルトシルアミドのRCMにおいて約85%の収率を得るために、約250ppmの式(IIf)の触媒が約180分の反応時間で必要とされる。50℃では、96%の収率が、たった15ppmの式(IIf)の触媒を使用して15分以内に得られる(表1を参照されたい)。
【0112】
もっとさらに、表2から、触媒(IIb)は、先行技術から公知のN−キレート触媒と比較してアリル−(2−メチルアリル)マロン酸ジエチルなどの重要なおよびより決定的に重要な基質の秀でた転化速度を可能にすることが明らかである。N−キレート触媒のより複雑な合成ならびに通常限定されている、N−キレートGrubbs−Hoveyda型触媒の安定性を考慮すると、本発明によるRuベースの触媒は、既知の触媒を考慮して並外れた利点を提供する。
図1
図2
図3
図4