【実施例】
【0071】
概論
すべての化学薬品は、特に明記しない限り、商業的供給業者から試薬グレードとして購入し、さらなる精製なしに使用する。ルテニウム錯体を含むすべての反応は、アルゴンの雰囲気下で行う。CH
2Cl
2(99.5%)およびペンタン(99%)は、Gruessing GmbHから、トルエンは、Sigma−Aldrich(Lab.Reagentグレード、99.3%)から入手する。これらの溶媒は、カラム精製システムを用いることによって乾燥させ、脱気する。このシステムでは、溶媒をスパージングし、アルゴンで加圧し(0.1〜1バール)、引き続き、活性アルミナを充填したカラムおよび、担持銅触媒(ペンタン)か、再び活性アルミナ(CH
2Cl
2)かのどちらかを充填した第2カラムを逐次通過させる。ジメチルホルムアミドは、水素化カルシウム上で還流させ、アルゴン雰囲気下で蒸留する。テトラヒドロフランは、ナトリウム上で乾燥させ、アルゴン雰囲気下で蒸留する。すべての溶媒は、モレキュラーシーブ(4Å)上で貯蔵する。
【0072】
1Hおよび
13C核磁気共鳴スペクトルは、Bruker DRX300スペクトロメーターで記録する。ケミカルシフトは、デルタスケール(δ)で百万当たりの部(ppm)単位で与えられ、テトラメチルシラン(
1H−、
13C−NMR=0.0ppm)またはCHCl
3の残存ピーク(
1H−NMR=7.26ppm、
13C−NMR=77.16ppm)を基準とする。NMRデータについての省略形:s=一重線;d=二重線;t=三重線;q=四重線;sep=七重線;m=多重線;bs=幅広い信号。分取クロマトグラフィーは、Merckシリカ 60(0.063〜0.02メッシュ)を使用して行う。GC実験は、オートサンプラーおよびFID検出器付きのClarus 500 GCで行う。カラム:Varian CP−Sil 8 CB(長さ=15m、d
i=0.25mm、d
F=1.0 lm)、N
2(フロー:17cm s
−1;スプリット 1:50);注入器温度:270℃、検出基温度:350℃。
【0073】
実施例1
スチレンベースの前駆体(Ia)〜(Id)の製造
この製造は、(式(Ia)〜(Ic)のスチレンベースの前駆体を製造するためには)4−置換フェノールから出発して、または式(Id)のスチレンベースの前駆体を製造するためには4−置換1−フルオロベンゼンから出発して実施する。第1反応工程では、それぞれのベンズアルデヒド中間体を製造する。ベンズアルデヒド中間体は次に、第2反応工程でそれぞれの前駆体(Ia)〜(Id)に転化される。
【0074】
a)2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒド、2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドの製造
ベンズアルデヒド中間体は、修正を加えた文献手順に従って合成する。アルゴン雰囲気下の乾燥Schlenkフラスコ中へ、相当するフェノール(17.7ミリモル)、2−フルオロベンズアルデヒド(2.0g、16.1ミリモル)、炭酸カリウム(5.6g、40.3ミリモル)および無水DMF(40mL)を室温で添加する。この混合物を170℃に密封フラスコ中で温め、(2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)この温度で2時間、または(2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)150℃で1.5時間攪拌する。次に、混合物を室温に放冷し、水(200mL)で処理し、生成物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層をNaOH(1M、50mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、無水MgSO
4上で乾燥させ、真空で蒸発させる。残留物を、(2−フェノキシ−ベンズアルデヒドおよび2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドを製造するためには)カラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 10:1、v/vによって精製するか、または(2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)−ベンズアルデヒドの場合には)精製なしに次反応に使用する。
【0075】
2−(4−(ジメチルアミノ)フェノキシ)ベンズアルデヒドは、白色固体として得られる(3.07g、79%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 10.59(d,J=0.8Hz,1H),7.90(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.44(ddd,J=8.5,7.3,1.8Hz,1H),7.12〜7.05(m,1H),7.03〜6.97(m,2H),6.84〜6.74(m,3H),2.96(s,6H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 189.85,161.75,148.14,145.47,135.76,128.33,126.05,122.23,121.25,116.90,114.18,41.34.
【0076】
2−フェノキシベンズアルデヒドは、黄色オイルとして得られる(2.52g、79%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 10.52(d,J=0.8Hz,1H),7.94(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.51(ddd,J=8.4,7.3,1.8Hz,1H),7.43〜7.35(m,2H),7.22〜7.15(m,2H),7.10〜7.04(m,2H),6.90(dd,J=8.4,0.8Hz,1H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 189.45,160.10,156.53,135.85,130.22,128.55,127.03,124.44,123.44,119.51,118.60.
【0077】
2−(4−クロロフェノキシ)ベンズアルデヒドは、黄色固体として得られる(3.07g、82%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 10.48(d,J=0.7Hz,1H),7.94(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.53(ddd,J=8.4,7.3,1.8Hz,1H),7.37〜7.33(m,2H),7.24〜7.19(m,1H),7.03〜6.99(m,2H),6.89(dd,J=8.4,0.7Hz,1H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 189.14,159.62,155.20,135.95,130.26,129.65,128.85,127.13,123.91,120.72,118.60.
【0078】
b)2−(4−ニトロフェノキシ)ベンズアルデヒドの合成
アルゴン雰囲気下の乾燥Schlenkフラスコ中へ1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(2.0g、14.2ミリモル)、サリチルアルデヒド(2.1g、17.0ミリモル)、炭酸カリウム(4.9g、35.5ミリモル)および無水DMF(40mL)を添加する。この混合物を100℃に密封フラスコ中で温め、この温度で一晩攪拌する。次に混合物を室温に放冷し、水(200mL)で処理し、生成物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層をNaOH(水中1M、50mL)およびブライン(150mL)で洗浄し、無水MgSO
4上で乾燥させ、真空で蒸発させる。残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 4:1、v/v)によって精製する。
【0079】
2−(4−ニトロフェノキシ)ベンズアルデヒドは、黄色固体として得られる(2.40g、69%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 10.34(d,J=0.7Hz,1H),8.28〜8.23(m,2H),8.00(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.66(dd,J=8.3,7.4,1.8Hz,1H),7.41〜7.35(m,1H),7.13〜7.06(m,3H).
【0080】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 188.36,162.64,157.14,143.61,136.26,129.71,128.14,126.31,125.85,120.93,117.87.HRMS:m/z C
13H
9NO
4に対する計算値 243.0542;実測値:243.0531.分析 C
13H
9NO
4(243.05)に対する計算値:C 64.18,H 3.73,N 5.76;実測値:C 64.23,H 3.72,N 5.88.
【0081】
c)ベンズアルデヒド中間体のビニル化
ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム(3.0g、7.42ミリモル)を含有するSchlenkフラスコを3回排気し、アルゴンで満たし戻す。無水テトラヒドロフラン(50mL)を注射器によって添加し、形成された懸濁液を−10℃に冷却する。KOtBu(902mg、8.04ミリモル)を、アルゴンの流れ下で分割して添加し、攪拌を−10℃で20分間続行する。その後、ベンズアルデヒド中間体の1つ(6.18ミリモル)を添加する。混合物を室温に温まるに任せ、一晩攪拌し、水(500mL)中へ注ぐ。生成物をジエチルエーテル(3×100mL)で抽出する。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させる。溶媒を真空で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 20:1、v/v)によって精製する。
【0082】
前駆体(Ia)は、無色固体として得られる(1.18g、80%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 7.58(dd,J=7.7,1.8Hz,1H),7.20〜7.01(m,3H),6.96〜6.89(m,2H),6.80(dd,J=8.2,1.2Hz,1H),6.76(d,J=9.0Hz,2H),5.82(dd,J=17.7,1.4Hz,1H),5.30(dd,J=11.1,1.4Hz,1H),2.93(s,6H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 155.69,147.37,131.49,128.89,128.66,126.61,122.78,120.11,117.92,115.02,114.34,41.51.HRMS:m/z C
16H
17NOに対する計算値 239.1304;実測値:239.1310.分析 C
16H
17NO(239.13)に対する計算値:C 80.30,H 7.16,N 5.85;実測値 C 79.88,H 7.11,N 5.83.
【0083】
前駆体(Ib)は、無色固体として得られる(0.99g、82%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 7.62(dd,J=7.8,1.7Hz,1H),7.34〜7.30(m,2H),7.24(dd,1H),7.16〜7.13(m,1H),7.07(tt,J=7.6,1.1Hz,1H),7.01(dd,J=17.7,11.1Hz,1H),6.97〜6.94(m,2H),6.92(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),5.81(dd,J=17.7,1.3Hz,1H),5.29(dd,J=11.1,1.3Hz,1H).
【0084】
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 158.05,153.75,131.12,129.97,129.83,129.14,126.77,124.21,122.81,120.23,117.91,115.51.元素分析 C
14H
12O(196.09)に対する計算値 C 85.68,H 6.16;実測値 C 85.49,H 6.11.
【0085】
前駆体(Ic)は、無色液体として得られる(1.20g、84%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 7.60(dd,J=7.7,1.8Hz,1H),7.28〜7.20(m,3H),7.18〜7.12(m,1H),6.99〜6.87(m,2H),6.87〜6.82(m,2H),5.78(dd,J=17.7,1.3Hz,1H),5.27(dd,J=11.1,1.2Hz,1H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 156.76,153.32,130.85,130.07,129.79,129.26,127.77,126.93,124.66,120.33,118.97,115.86.HRMS:m/z C
14H
11ClOに対する計算値 230.0494;実測値 230.04815.元素分析 C
14H
11ClO(230.69)に対する計算値:C 72.89,H 4.81;実測値 C 72.82,H 4.92.
【0086】
前駆体(Id)は、黄色固体として得られる(1.15g、77%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ 8.22〜8.16(m,2H),7.68〜7.64(m,2H),7.38〜7.24(m,1H),7.04〜7.00(m,1H),6.97〜6.91(m,2H),6.79(dd,J=17.7,11.1Hz,1H),5.79(dd,J=17.7,1.1Hz,1H),5.29(dd,J=11.1,1.1Hz,1H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 163.61,151.47,142.67,130.74,130.20,129.65,127.31,126.21,126.14,121.73,116.81,116.51.HRMS:m/z C
14H
11NO
3に対する計算値 241.0739;実測値:241.0714.元素分析 C
14H
11NO
3(241.25)に対する計算値 C 69.70,H 4.60,N 5.81;実測値 C 69.93,H 4.68,N 5.69.
【0087】
実施例2
a)触媒(IIa)〜(IIc)および(IIe)〜(IIh)の製造
(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには)[RuCl
2(SIMes)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.27ミリモル;Umicore AG & Co.KG,Hanau,Germany)かまたは(触媒(IIe)〜(IIh)を製造するためには)[RuCl
2(SIPr)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.24ミリモル;Umicore AG & Co. KG,Hanau,Germany)を含有する火炎乾燥Schlenkチューブを、3回排気し、アルゴンで満たし返す。塩化メチレンン(4mL)、それぞれのスチレンベースの前駆体(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには0.30ミリモル、または触媒(IIe)〜(IIh)を製造するために0.26ミリモル)およびAmberlyst樹脂(触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには275mg、または触媒(IIe)〜(IIh)を製造するためには250mg、乾燥形態、4.70ミリモル H
+/g)を、アルゴン雰囲気下で添加する。この混合物を、触媒(IIa)〜(IIc)を製造するためには30分間、または触媒(IIf)〜(IIh)を製造するために60分間40℃で、触媒(IIe)を製造するために1時間室温で攪拌し、次に濾過して樹脂を分離する。濾液を真空で蒸発させ、残った固体をペンタン(10mL)で処理し、得られた懸濁液を1分間超音波浴中に保つ。固体残渣を濾過し、メタノール(5mL)およびペンタン(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させる。
【0088】
触媒(IIa)は、緑色固体として得られる(135mg、71%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.71(s,1H),7.37(t,J=7.5Hz,1H),7.13(d,J=8.3Hz,2H),7.03(s,4H),7.00〜6.88(m,3H),6.61(d,J=8.0Hz,3H),4.15(s,4H),2.93(s,6H),2.47(s,12H),2.37(s,6H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 292.65,210.50,154.24,143.89,138.79,136.22,129.54,129.46,128.74,127.69,123.66,122.90,122.53,113.86,113.13,51.81,41.20,21.24,19.43.HRMS:m/z C
36H
41N
3O
4Cl
2Ruに対する計算値 703.16809;実測値:703.1661.
【0089】
触媒(IIb)は、緑色固体として得られる(142mg、80%収率)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ 16.71(d,J=0.9Hz,1H),7.44〜7.36(m,1H),7.25〜7.14(m,5H),7.03(s,4H),7.00(d,J=1.8Hz,1H),6.94(td,J=7.5,0.8Hz,1H),6.66(d,J=8.3Hz,1H),4.16(s,4H),2.46(s,12H),2.37(s,6H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 292.53,210.04,153.24,153.04,144.21,138.85,136.03,129.52,129.44,126.03,124.21,122.82,122.08,51.79,21.22,19.44.HRMS:m/z C
34H
36N
2OCl
2Ruに対する計算値 660.1253;実測値:660.1239.
【0090】
触媒(IIc)は、緑色固体として得られる(129mg、69%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.70(s,1H),7.42(t,J=7.1Hz,1H),7.24〜7.18(m,4H),7.06〜6.94(m,6H),6.65(d,J=8.1Hz,1H),4.16(s,4H),2.45(s,12H),2.38(s,6H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 292.09,209.55,152.61,151.71,144.10,138.98,138.83,135.94,131.40,129.55,124.60,123.43,122.96,114.00,51.80,21.23,19.41.HRMS:m/z C
34H
35N
2OCl
3Ruに対する計算値 694.0820;実測値:694.0845.
【0091】
触媒(IIe)は、緑色固体として得られる(139mg、73%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.59(s,1H),7.49(t,J=7.6Hz,2H),7.32(d,J=7.6Hz,5H),7.22(d,J=8.1Hz,2H),6.95〜6.83(m,2H),6.64〜6.52(m,3H),4.13(s,4H),3.64(sep,J=6.2Hz,4H),2.92(s,6H),1.27(d,J=6.7Hz,12H),1.19(d,J=6.4Hz,12H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 287.86,213.42,148.85,142.88,137.25,129.67,129.33,124.67,123.74,123.46,121.94,113.73,113.04,54.77,41.10,28.70,26.49,24.07.HRMS:m/z C
42H
53N
3OCl
2Ruに対する計算値 787.2567;実測値:787.2600.元素分析 C
42H
53N
3OCl
2Ru(787.88)に対する計算値:C 64.03,H 6.78,N 5.33;実測値 C 64.56,H 6.96,N 5.12.
【0092】
触媒(IIf)は、緑色固体として得られる(151mg、84%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.59(d,J=0.5Hz,1H),7.49(t,J=7.7Hz,2H),7.39〜7.24(m,9H),7.23〜7.18(m,1H),6.95(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),6.89(t,J=7.4Hz,1H),6.56(d,J=8.3Hz,1H),4.14(s,4H),3.63(sep,J=6.7Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.17(d,J=6.6Hz,12H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 287.38,212.79,154.03,153.04,148.87,143.08,137.11,129.74,129.50,129.33,126.46,124.66,123.93,123.16,122.19,113.85,54.76,28.71,26.51,23.97.HRMS:m/z C
40H
48N
2OCl
2Ruに対する計算値 744.2185;実測値:744.2178.
【0093】
触媒(IIg)は、緑色固体として得られる(141mg、75%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.57(s,1H),7.50(t,J=7.7Hz,2H),7.39〜7.35(m,1H),7.34〜7.29(m,6H),7.26〜7.23(m,2H),7.00〜6.88(m,2H),6.55(d,J=8.3Hz,1H),4.15(s,4H),3.61(sep,J=6.8Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.18(d,J=6.6Hz,12H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 286.85,212.24,153.61,151.49,148.85,142.93,137.00,131.91,129.82,129.62,129.37,124.69,124.51,124.32,122.34,113.69,54.76,28.73,26.49,23.97.HRMS:m/z C
40H
47N
2OCl
3Ruに対する計算値 778.17584;実測値:778.1784.元素分析 C
40H
47N
2OCl
3Ru(778.80)に対する計算値 C 61.63,H 6.08,N 3.60;実測値 C 61.19,H 6.16,N 3.68.
【0094】
触媒(IIh)は、緑色固体として得られる(125mg、66%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.55(s,1H),8.18〜8.14(m,2H),7.53〜7.47(m,4H),7.45〜7.40(m,1H),7.33(d,J=7.7Hz,4H),7.00〜6.98(m,2H),6.63(d,J=8.3Hz,1H),4.16(s,4H),3.57(sep,J=6.7Hz,4H),1.27(d,J=6.9Hz,12H),1.17(d,J=6.6Hz,12H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 285.70,211.08,157.97,152.17,148.89,145.60,143.22,136.77,129.97,129.39,126.16,125.35,124.71,123.29,122.80,116.78,114.27,54.77,28.79,26.51,23.89.HRMS:m/z C
40H
74N
3O
3Cl
2Ruに対する計算値 789.2032;実測値:789.2029.
【0095】
a)触媒(IId)の製造
[RuCl
2(SIMes)(3−フェニルインデンイリデン)(py)](200mg、0.27ミリモル;Umicore AG & Co.KG,Hanau,Germany)を含有する火炎乾燥Schlenkチューブを、3回排気し、アルゴンで満たし返す。テトラヒドロフラン(5mL)を添加し、結果として生じる懸濁液を0℃に冷却する。次にスチレンベースの前駆体(Id)(65.7mg、0.27ミリモル)およびAmberlyst樹脂(275mg、乾燥形態、4.70ミリモル H
+/g)を添加し、この混合物を−5℃で30分間攪拌し、濾過し、真空で蒸発させる。固体残留物をメタノール(5mL)、ペンタン(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させる。
【0096】
触媒(IId)は、緑色固体として得られる(141mg、75%収率)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ 16.69(s,1H),8.12(d,J=7.2Hz,2H),7.49(s,1H),7.35(d,J=7.4Hz,2H),7.04(s,6H),6.79(d,J=7.3Hz,1H),4.18(s,4H),2.43(s,12H),2.40(s,6H).
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ 291.42,208.52,158.38,150.86,145.17,144.58,139.16,138.94,129.59,129.46,125.78,125.30,123.47,121.80,114.94,51.79,21.28,19.43.
【0097】
実施例3
触媒試験
新規Ruベースの触媒を、閉環メタセシス反応(RCM)で例示的に評価する。さらに、活性を、先行技術から公知の従来型触媒、すなわち、式(a)、(c)および(d)の触媒と比較する。
【0098】
RCMの結果
式(IIa)〜(IIh)の触媒を、N−複素環化合物をもたらす多数の閉環メタセシス反応について系統的に試験する。先行技術触媒(a)との比較を行う。
【0099】
閉環反応は、15分の反応時間で、50℃で、トルエン中で実施する。基質は、0.5モル/Lの量で存在する。反応は、密封した10mLのSchlenkチューブ中でアルゴンの雰囲気下で実施する。10mLのSchlenkチューブ中で、基質をアルゴンの雰囲気下で乾燥トルエンに溶解させる。この溶液を50℃に加熱し、トルエン中の原液(0.75ミリモル/L)からの触媒(0.0025〜0.02モル%)(25〜200ppm)を添加する。この原液は、4.0・10
−6モルの触媒(IIa)〜(IIh)を10mLのSchlenkチューブ中へ添加し、チューブを排気し、チューブをアルゴンで満たし、アルゴンの流れ下での5.34mLの乾燥トルエンのその後の添加によって調製する。Schlenkチューブを、本発明の触媒の完全な溶解のために1分間超音波浴中に保つ。
【0100】
基質濃度は、c(S)=n(S)/(V(S)+V(トルエン)+V(原液))と定義される。基質転化率の測定のために、試料(10μL、基質濃度0.5M)を、アルゴンの流れ下で規定時間後に採取し、トルエン中の25%(v/v)のエチルビニルエーテルの250μLを含有するGCバイアル中へ注入する。転化率はGCによって測定する。転化の程度は、2つの実験の平均転化率である。結果を表1に示す。
【0101】
本発明による触媒は、間の低い触媒使用量でおよび低い〜中位の温度で15分未満の反応時間内に60%以上の優れた基質転化率を可能にする。ほとんどのRCM基質について15分の反応時間内に約90%以上さえの転化率が測定される。
【0102】
これに関連して、本発明の新規Ruベースの触媒は、ジまたはトリ置換環状オレフィンをもたらすRCM反応においてとりわけ効率的であるように思われる(表1、エントリー6および表2を参照されたい)。
【0103】
【表1】
【0104】
低い触媒使用量は別として、そのような反応のために必要とされる短い反応時間が最も注目に値する−研究された反応のすべてが、15分未満内にほぼ完了する。
【0105】
TONおよびTOFを、エントリー番号4の基質および触媒(IIf)について計算する。その結果、触媒(IIf)を使用することによって、6.4×10
4のTONおよび2.56×10
5h
−1のTOFが観察される。これは、先行技術に対して著しい改善である。
【0106】
式(IIb)の触媒を、先行技術から公知の式(c)および(d)の式のN−キレートGrubbs−Hoveyda型触媒と比較して、より複雑なおよび決定的に重要な置換オレフィン基質での閉環メタセシス反応について上述の条件下で試験する。
【0107】
【表2】
【0108】
先行技術触媒との比較試験
0℃でのN,N−ジアリルトシルアミドのRCMにおいて、式(IIb)および(IIf)の触媒は、先行技術触媒(a)よりも著しく速い。低温で速い開始は、かなりよりゆっくりと開始する、当該技術から公知の触媒(a)と比べて、優れた触媒活性につながる。
図1は、RCM反応の結果を示す。触媒(IIb)および(IIf)については、120分後に完全な転化がほぼ得られるが、それほど迅速に開始しない触媒(a)については、はるかにより長い時間を要する。触媒(IIb)および(IIf)のより速い活性化は、それぞれのRCM生成物への基質のより速い初期変換から明らかである。
【0109】
速い開始および基質転化はまた、
図2から明らかであり、
図2は、触媒(IIb)および(IIf)については最初の20分以内にN,N−ジアリルトシルアミドの転化率(%単位)に関する詳細な見通しを与える。その結果、20%超の転化率は、0℃で9分以内にさえも得られる。図はまた、触媒(IIb)が触媒(IIf)よりも速く開始することを示す。
【0110】
先行技術触媒(a)と比較して本発明による触媒の触媒活性の増加はまた、表1においても確認される。表1によれば、本発明の触媒は、異なる基質でのRCM反応においてかなりより高い活性を示す。
【0111】
さらに、触媒性能への温度の強い影響が指摘される。0℃でのN,N−ジアリルトシルアミドのRCMにおいて約85%の収率を得るために、約250ppmの式(IIf)の触媒が約180分の反応時間で必要とされる。50℃では、96%の収率が、たった15ppmの式(IIf)の触媒を使用して15分以内に得られる(表1を参照されたい)。
【0112】
もっとさらに、表2から、触媒(IIb)は、先行技術から公知のN−キレート触媒と比較してアリル−(2−メチルアリル)マロン酸ジエチルなどの重要なおよびより決定的に重要な基質の秀でた転化速度を可能にすることが明らかである。N−キレート触媒のより複雑な合成ならびに通常限定されている、N−キレートGrubbs−Hoveyda型触媒の安定性を考慮すると、本発明によるRuベースの触媒は、既知の触媒を考慮して並外れた利点を提供する。