特許第6395715号(P6395715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395715半結晶性ポリアミドで作られた熱可塑性複合材料およびこれの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395715
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】半結晶性ポリアミドで作られた熱可塑性複合材料およびこれの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20180913BHJP
   B29C 70/52 20060101ALI20180913BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20180913BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20180913BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20180913BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20180913BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   C08L77/00
   B29C70/52
   C08G69/26
   C08J5/04CFG
   C08K7/14
   B29K77:00
   B29K105:08
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-538529(P2015-538529)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公表番号】特表2015-533908(P2015-533908A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】FR2013052508
(87)【国際公開番号】WO2014064375
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年6月10日
【審判番号】不服2017-3007(P2017-3007/J1)
【審判請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】1260058
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】オシュステテール,ジル
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 井上 猛
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/024593(WO,A1)
【文献】 特開2008−274288(JP,A)
【文献】 特開2002−220461(JP,A)
【文献】 特表2012−532943(JP,A)
【文献】 特開2012−025954(JP,A)
【文献】 特表2009−524711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/16
C08G69/00-69/50
CAPLUS(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性複合材料の組成物であって、前記複合材料は強化用繊維または繊維強化材および前記繊維(または前記繊維強化材)に含浸する熱可塑性マトリクスを含み、前記熱可塑性マトリクスが少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをベースとして含み、
前記熱可塑性ポリマーが
少なくとも90℃のガラス転移温度Tgおよび280℃以下の溶融温度Tmを有する半結晶性ポリアミドポリマーであり、かつ、
溶融温度Tmと結晶化温度Tcとの間の差Tm−Tcが50℃を超えず、かつ、
下のように選択される、異なるアミド単位Aおよび単位Bならびに任意にアミド単位Cおよび単位Dを含む、
A:は55%から95%の範囲に及ぶモル含有率で存在し、x.T単位より選ばれる、主アミド単位であって、xはC−C18直鎖脂肪族ジアミンであり、およびTはテレフタル酸であり、
B:はAとは異なるアミド単位であって、前記単位Bは、単位AをベースとするポリアミドのTmに従って、5%から45%の範囲に及ぶモル含有率で存在し、ならびに前記アミド単位Bがx’.T単位より選ばれ、x’は:
B1)単一のメチルまたはエチル分枝を持ち、および前記結合単位Aのジアミンxの主鎖長と比べて少なくとも2炭素原子だけ異なる主鎖長を有する分枝脂肪族ジアミン、または
B2)m−キシリルジアミン(MXD)または
B3)単位Aにおいて、前記ジアミンxがC11−C18直鎖脂肪族ジアミンである場合、C−C18直鎖脂肪族ジアミン、および単位Aにおいて、前記ジアミンxがCまたはC10ジアミンである場合、x’がC−C18ジアミンより選ばれ、
C:任意選択のアミド単位であって、AおよびBとは異なり、脂環式および/もしくは芳香族構造をベースとするかまたはBについて上で定義されたようなx’Tをベースとするアミド単位より選ばれ、ただしx’は単位Bのx’とは異なり、
D:任意選択のアミド単位であって、Aとは、Bとは、および存在するときにはCとは異なり:
−C12である、アミノ酸もしくはラクタムまたはこれの混合物、
−C18,直鎖脂肪族二酸とC−C18,直鎖脂肪族ジアミンとの反応物またはこれの混合物より誘導される脂肪族アミド単位より選ばれ、
A+B+C+Dのモル含有率の和が100%に等しいという条件であり、
単位Aが9Tである場合、前記単位Bは:10T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は30%から45%の範囲に及び、
単位Aが10Tである場合、前記単位Bは:9T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は25%から45%の範囲に及び、
単位Aが11Tである場合、前記単位Bは:9T、10T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は20%から45%の範囲に及び、
単位Aが12Tである場合、前記単位Bは:9T、10T、11T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.Tより選択され、Bのモル含有率が20%から45%に及ぶ、
ことを特徴とする、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、アミド単位Cが存在し、および前記単位Bに対して25%までの範囲に及ぶモル含有率でBを一部置換する組成物。
【請求項3】
請求項1および2のどちらかに記載の組成物であって、単位Dが存在し、および単位Bに対して70%までの範囲に及ぶモル含有率でBを一部置換する組成物。
【請求項4】
請求項1から3の一項に記載の組成物であって、ISO11357−3規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した結晶化のエンタルピーが40J/gより大きい組成物。
【請求項5】
請求項1から4の一項に記載の組成物であって、アミド単位Aが前記ポリマーのすべての単位に対して、55%から80%の範囲に及ぶモル含有率で存在する組成物。
【請求項6】
請求項1から5の一項に記載の組成物であって、単位Bがx’Tに相当し、x’が選択肢B1)によって選ばれ、特にx’がMPMDである組成物。
【請求項7】
請求項1から5の一項に記載の組成物であって、単位Bがx’Tに相当し、x’が選択肢B2)によって選ばれ、特にx’がMXDである組成物。
【請求項8】
請求項1から5の一項に記載の組成物であって、単位Bが選択肢B3)による直鎖脂肪族ジアミンに相当する組成物。
【請求項9】
請求項6からの一項に記載の組成物であって、Bに対して70mol%までの単位Bの一部が請求項1から3の一項に記載の単位Cおよび/またはDで置換されている組成物。
【請求項10】
請求項1からの一項に記載の組成物であって、L/Dが1000を超える、長繊維を有する繊維強化材を含む組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を有する、熱可塑性複合材料を製造する方法であって、請求項1に記載の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを成形もしくは加工するステップを含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、以下の:
i)請求項1から10の一項に記載の組成物を得るための、オープンもしくはクローズドモールドでのまたはモールド外での、請求項1から10の一項に記載の、しかし繊維強化材を含まない組成物による、繊維強化材の溶融状態での含浸のステップ、
ii)モールド内でまたは別の加工システムで最終複合部品を形成するための、ステップi)の前記組成物の加工または成形のステップ
含む方法。
【請求項13】
半結晶性ポリアミドポリマーであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材料の熱可塑性マトリクスのポリマーに相当し(またはポリマーであり)、前記ポリマーが請求項1定義された熱可塑ポリマーである半結晶性アミドポリマー。
【請求項14】
請求項1から10の一項に記載の組成物のまたは請求項13に記載のポリマーの使用であって、複合材料をベースとする機械部品または構造部品を製造するための使用。
【請求項15】
請求項14に記載の使用であって、複合材料で作られた機械部品または構造部品が以下の分野:自動車産業、鉄道産業、海洋または海運産業、風力、光起電力、ソーラーパネルおよびソーラー発電所用構成要素を含むソーラー産業、スポーツ、航空宇宙、トラックに関わる道路輸送、建築産業、土木工学、パネルまたはレジャーにおける用途に関わる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも90℃のガラス転移温度および280℃以下の溶融温度Tmを有する半結晶性ポリアミド(PA)で作られたマトリクスを有する熱可塑性複合材料のまたは熱可塑性複合材料のための組成物に関し、前記複合材料、特に前記材料をベースとする機械部品または構造部品を製造する方法も含み、複合材料で作られた部品およびまた複合材料より生じる複合部品のための、ならびに以下の分野:自動車産業、鉄道産業、海洋産業、道路交通、風力、スポーツ、航空宇宙、建築産業、パネルおよびレジャーの用途のための、本発明の組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP0261020は、プルトルージョン法によって熱可塑性複合材を製造するための、PA6、11および12をベースとする反応性半結晶性プレポリマーの使用について記載している。記載したような脂肪族構造プレポリマーは、低いTgを有し、高温条件下での力学性能は不十分である。
【0003】
EP550314は、これの実施例の中でコポリアミド(非反応性)組成物について記載し、250℃を超える溶融温度および限定されたTgを得ようとしながら、引用された実施例のほとんどが低すぎるTg(80℃未満)または高すぎるTm(300℃超)を有している。
【0004】
EP1988113は、
40から95mol%の10T、
5から40%の6T
を有する、10T/6Tコポリアミドをベースとする成形組成物について記載している。
【0005】
270℃を超える高い溶融温度を有するポリアミドが特に対象とされている。示されている実施例および図1は、これらの組成物の溶融温度が少なくともおよそ280℃であることを教示している。
【0006】
WO2011/003973は、50から95mol%の、9から12個の炭素原子を含む直鎖脂肪族ジアミンおよびテレフタル酸をベースとする単位ならびに5から50%の、テレフタル酸を2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサンジアミンの混合物と組み合わせた単位を含む組成物について記載している。
【0007】
US2011306718は、複数の(および多くは2を超える)無水またはエポキシド官能基を有するポリマー系構造の鎖延長剤と組み合わされた、低いTgを有する反応性脂肪族ポリアミドのプルトルージョン方法について記載している。この文書は、非ポリマー系延長剤について記載していない。
【0008】
より短い生産サイクル時間でのより低い温度における、力学性能レベルと加工能(変形のしやすさ)を良好に兼ね備えていない従来技術の欠点は、微結晶性PA組成物に関する本発明の解決策によって克服され、前記ポリアミドポリマーが迅速に結晶化する能力によって、加工方法の総エネルギーバランスに関する節減、生産サイクル時間の短縮および生産性の改善と共に、より低温での加工が容易となり、この間ずっと前記最終材料の力学性能レベルが高レベルにて維持される。より詳細には、反応性組成物の場合、より高い、形成されるポリマーのための結晶化速度および/または温度も有すると同時に、より速い反応速度を有することが求められる。
【0009】
本発明の複合材料のマトリクスとして半結晶性ポリアミドポリマーを選ぶことは、アモルファスポリアミドと比べて、特に高温条件下での力学性能レベル、例えばクリープ耐性および疲労耐性が著しく改善されるという利点を有する。加えて、200℃を超える融点を有することは、自動車産業において、アモルファスPA型の構造では不可能である、電気泳動による処理に適合するという利点を有する。アモルファスポリアミドに関しては、使用のための全温度範囲にわたって、例えば風力では90℃まで、自動車産業では100℃まで、および航空宇宙では120℃まで、良好な機械特性を備えた複合材を提供するために、90℃以上のTgが求められる。一方、高すぎる、特に280℃を超える融点が有害であるのは、使用される成形材料(および関連する加熱システム)に関する制限、加えて、前記ポリアミドの溶融温度より高い温度での加熱による熱分解のリスクを伴って、複合材をより高温で処理することが必要であり、結果として、最終熱可塑性マトリクスのおよびこれから生じる複合材の特性が影響を受けるためである。前記ポリマーの結晶性は、できるだけ高い必要があるが、力学性能レベルならびに結晶化速度および/または結晶化温度をできるだけ高く最適化するように、溶融温度Tm(280℃以下、より詳細には270℃以下のTm)は高すぎず、このことは前記半結晶性ポリアミドの組成の選択的選択による成形複合部品の取り出し前の成形時間を短縮するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0261020号明細書
【特許文献2】欧州特許第0550314号明細書
【特許文献3】欧州特許第1988113号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/003973号
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/0306718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の主題は、特に高温条件下での高い力学性能レベル(力学強度)および容易な加工を良好に兼ね備えた半結晶性ポリアミドをベースとする、熱可塑性複合材の新規な特定の組成物の加工である。このことは、目的が、より好ましい総加工エネルギーバランス、より短いサイクル時間およびより高い生産性を備えた、従来技術の他の組成物よりも低い変形および加工温度での加工が容易である組成物であることを意味する。より詳細には、本発明の解決策により、反応性組成物の場合、半結晶性反応性ポリアミドプレポリマーをベースとする組成物を使用することにより、迅速な反応速度および迅速な結晶化速度の両方がより短いサイクル時間で可能となる。より詳細には、ポリアミドポリマーマトリクスは、定義されるような高いTgおよび限定されたTmを有し、前記複合材の加工が容易であると共に、高い結晶化速度も有する必要があり、最初に、50℃を超えない、好ましくは40℃を超えない、より詳細には30℃を超えない溶融温度と結晶化温度との間の差Tm−Tcを特徴としている。より優先的には、このTm−Tcの差は、Tm−Tgが150℃未満でない限り30℃を超えず、この場合(Tm−Tg<150℃)には、差Tm−Tcは50℃まで変化することがある。複合材の高温条件下での力学性能レベルまたは力学強度は、周囲温度(23℃)と100℃との間の力学弾性率の変化によって評価することができ、弾性率については、周囲温度(23℃)の弾性率と比較して少なくとも75%に維持される。従って、本発明の目的は、これらの要求を満足するポリアミド組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の第1の主題は、少なくとも90℃のTgおよび280℃以下の、好ましくは280℃より低いTmを有する熱可塑性マトリクスを有する、熱可塑性複合材料または熱可塑性複合材料組成物のための半結晶性ポリアミド(PA)の特定の組成物に関する。この組成物は、縮合によって相互に、または重付加によっておよび揮発性副生成物を除去せずに鎖延長剤と反応性であるプレポリマーによって反応性であってよい。組成物は、代替として、熱可塑性マトリクスの最終ポリマーに相当するポリアミドポリマーをベースとする非反応性組成物であってよい。前記特定の組成物は、少なくとも2つのアミド単位AおよびBを選択的に選ぶことをベースとし、単位AおよびBは異なっていて、特定のモル比にて、任意選択の少なくとも第3の(C)アミド単位および場合により第4の(D)アミド単位が存在し、これらの単位は相互に異なっている。
【0013】
本発明の第2の主題は、前記熱可塑性複合材料を製造するための、より詳細には、前記複合材料をベースとする機械部品または構造部品を製造するための特定の方法に関する。
【0014】
本発明は、前記複合材料の熱可塑性マトリクスの熱可塑性ポリマーにも関する。
【0015】
本発明の別の主題は、同じ組成の熱可塑性複合材料を、より詳細には、この材料をベースとする機械部品または構造部品を製造するための、本発明のPAの特定の組成物の使用に関する。
【0016】
本発明の別の主題は、複合材料のための前記組成物より生じる熱可塑性複合材料に関する。
【0017】
最後に、本発明は、本発明の特定の方法によって得られる、または本発明のPAの特定の組成物の使用より生じる複合材料をベースとする機械部品または構造部品を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従って、第1の主題は、熱可塑性複合材料のための組成物または熱可塑性複合材料の組成物に関し、前記複合材料は、強化用繊維または言い換えれば繊維強化材および前記繊維(または前記繊維強化材)に含浸する熱可塑性マトリクスを含み、前記マトリクスは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをベースとし、前記組成物に関して:
前記マトリクス熱可塑性ポリマーは、少なくとも90℃の、好ましくは少なくとも100℃、より優先的には少なくとも110℃の、なおより優先的には120℃のガラス転移温度Tgおよび280℃以下の、特に280℃より低い、好ましくは270℃以下の、特に220から270℃の範囲に及ぶ溶融温度Tmを有する、半結晶性ポリアミドポリマーであり、
前記組成物は、前記強化用繊維に加えて:
a)少なくとも1つの反応性ポリアミドプレポリマー(またはオリゴマー、オリゴマーおよびプレポリマーは、本文の以下で同じものを意味する。)を含み、または反応性ポリアミドプレポリマーより成る反応性組成物であって、前記マトリクスの前記ポリアミドポリマーの前駆体である組成物である組成物、またはa)の代替として、
b)少なくとも1つのポリアミドポリマーの非反応性組成物であって、上で定義されたようなTgおよびTmを有する前記熱可塑性マトリクスの組成物である組成物を含み、ならびに:
前記組成物a)またはb)は、ランダムまたはブロックコポリアミドを含む1つ以上のポリアミドを含み、または1つ以上のポリアミドより成り、該ポリアミドは、a)によるプレポリマー(もしくはオリゴマー)であるか、またはb)によるポリマーであり、以下のように選択される、異なるアミド単位AおよびBならびに場合により異なるアミド単位CおよびDを含み、:
Aは:55%から95%の、好ましくは55%から85%の、より優先的には55%から80%の、なおより優先的には55%から75%の、特に55%から70%の範囲に及ぶモル含有率で存在し、x.T単位より選ばれる、主アミド単位であり、xは、C−C18、好ましくはC、C10、C11、C12直鎖脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸であり、
Bは:Aとは異なるアミド単位であり、単位Bは、単位AをベースとするポリアミドのTmに従って、5%から45%の、好ましくは15%から45%の、より優先的には20%から45%の、なおより優先的には25%から45%の、特に30%から45%の範囲に及ぶモル含有率で存在し、前記アミド単位Bは、x’.T単位より選ばれ、x’は:
B1)分枝脂肪族ジアミンであって、単一のメチルまたはエチル、好ましくはメチル分枝を有し、特に2−メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)もしくは2−メチルオクタメチレンジアミン(MOMD)であり、前記結合単位Aのジアミンxの主鎖長と比べて少なくとも2炭素原子だけ異なる主鎖長を有し、好ましくは((B1)による)x’がMPMDである、分枝脂肪族ジアミン、または
B2)m−キシリレンジアミン(MXD)または
B3)前記単位Aにおいて、前記ジアミンxがC11−C18直鎖脂肪族ジアミンである場合にC−C18直鎖脂肪族ジアミンであり、前記単位Aにおいて、前記ジアミンxがCまたはC10ジアミンである場合にx’がC−C18ジアミンであり、好ましくは前記単位Aのジアミンxの鎖と前記単位Bのジアミンx’の鎖との間に少なくとも2個の炭素原子の差があり、
ならびに好ましくは前記単位Bはx’.T単位より選ばれ、x’は、選択肢B1)によるMPMDもしくは選択肢B2)によるMXDもしくは選択肢B3)による上で定義されたような直鎖脂肪族ジアミンであり、またはより優先的にはx’はB1)によるMPMDもしくはB2)によるMXDであり、なおより優先的にはx’は、B2)によるMXDであり、
C:任意選択のアミド単位であって、AおよびBとは異なり、脂環式および/もしくは芳香族構造をベースとする(を含むことを意味する)またはBについて上で定義されたような、しかしx’が単位Bのx’とは異なるx’Tをベースとするアミド単位より選ばれ、
D:任意選択のアミド単位であって、Aとは、BとはおよびCが存在する場合にCとは異なり:
−C12、好ましくはC、C11およびC12であるアミノ酸もしくはラクタムまたはこれの混合物、または
−C18、好ましくはC−C12直鎖脂肪族二酸およびC−C18、好ましくはC−C12直鎖脂肪族ジアミンの反応物もしくはこれの混合物
より誘導される脂肪族アミド単位より選ばれ、
A+B+C+Dのモル含有率の和が100%に等しいという条件下である。
【0019】
CおよびDの非存在下でのモル含有率の和はA+B=100%に達し、AおよびBは補完的に100%となる。Cが存在してDが存在しないならば、この場合、和はA+B+C=100%に達する。Dのみが存在してCが存在しないならば、100%の前記和はA+B+Dに相当する。
【0020】
前記組成物は、より詳細には、熱可塑性複合材料のための組成物である。このことは、前記組成物によって熱可塑性複合材料を得ることが可能なことを意味する。
【0021】
本発明の前記組成物における第1の可能性により、ポリマーまたはプレポリマーである前記ポリアミドは、AもしくはBとは異なるCによる前記アミド単位を含み、または上で定義されたような単位Cが存在して、Bを一部置換して、前記単位Bに対して25%までの、好ましくは20%までの、より優先的には15%までの範囲に及ぶモル含有率である。
【0022】
単位Cが存在して、x’Tに相当し、x’が単位Bについて上で定義された通りであれば、この場合、Cは定義によるBとは異なり、前記単位CはB1によって定義されるx’をベースとしてよく、この場合、前記単位Bは、B2またはB3によって定義されたx’を有することができる。CがB2によるx’をベースとするならば、この場合、単位Bは、B1またはB3に従うx’をベースとすることができる。CがB3によるx’をベースとするならば、この場合、単位Bは、B1またはB2に従って定義されたx’をベースとすることができる。
【0023】
より詳細には、前記組成のこの単位Cにおいて、前記芳香族構造は、例えばイソフタルおよび/またはナフタレン構造より選ぶことができる。テレフタル構造は、ジアミンが脂環式であるときの二酸構成成分について特に可能である。前記脂環式構造は、シクロヘキサン環をベースとする構造または構造またはデカヒドロナフタレン環をベースとする構造(水素添加ナフタレン系構造)より選ぶことができる。
【0024】
好ましくは、Cの構造は、脂肪族アミンからならびに例えば上で定義されたような脂環式および/もしくは芳香族二酸、または例えば上で定義されたような二酸からおよび脂環式ジアミンから誘導される。より詳細には、前記単位Cは:
脂環式ジアミンよりおよびテレフタル酸よりまたは
イソフタル酸およびナフテン酸より選ばれる、もしくはシクロヘキサンを、ならびに単位AおよびBについてそれぞれ上で定義されたようなジアミンxおよびx’をベースとする二酸より誘導される
単位より選ばれる。
【0025】
本発明の組成物の別の変形により、前記単位Dが存在して、前記単位Bに対して70%までの、好ましくは15%までの範囲に及ぶことができるモル含有率でBを一部置換する。従って、この変形により、前記組成物は、特に:C−C12、好ましくはC、C11およびC12であるアミノ酸もしくはラクタムまたはこれの混合物より選ばれるアミノ酸もしくはラクタムより選ばれる上で定義されたような前記単位D、またはC−C18、好ましくはC−C12直鎖脂肪族二酸とC−C18、好ましくはC−C12直鎖脂肪族ジアミンとの反応から生じる単位を含み、好ましくは単位AおよびBは、上で定義されたようなジアミンxおよびx’をそれぞれベースとしている。
【0026】
好ましくは、単位Cおよび/またはDは、これが存在する場合、単位Bを一部置換し、(C+D)モル含有率は、本発明により定義されるような前記単位Bのモル含有率に対して、70%まで、好ましくは40%未満である。従って、Bに対して50mol%未満に、好ましくは40mol%未満に相当する、本発明により定義されるような単位Bの一部は、本発明により定義されるような単位Cおよび/またはDと置換することができる。
【0027】
より詳細には、前記マトリクス(ポリアミド)ポリマーの溶融温度Tmと結晶化温度Tcとの間の差Tm−Tcは、50℃を超えず、好ましくは40℃を超えず、より詳細には30℃を超えない。
【0028】
特に、Tm−Tcは、Tm−Tgが150℃未満でなければ30℃を超えず、この場合、Tm−Tcは、50℃までの範囲に及ぶことができる。
【0029】
1つの詳細な選択肢により、ISO11357−3規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した前記マトリクスポリマーの結晶化のエンタルピーは、40J/gより大きく、好ましくは45J/gより大きい。
【0030】
好ましくは、上および下で本発明により定義されたような前記アミド単位Aは、本発明により上で定義されたような前記(ポリアミド)マトリクスポリマーのすべての単位に対して、55%から80%の、より優先的には55%から75%の、なおより優先的には55%から70%の範囲に及ぶモル含有率で存在する。
【0031】
上記の本発明による組成物の第1の好ましい選択肢により、前記組成物は、上記の選択肢B1によって定義されたx’を有する単位Bを有し、特にMPMDは、前記単位Bにより好ましいジアミンである。単位Aは、上記の、即ちx.Tのままであり、xはC−C18、好ましくはC、C10、C11またはC12直鎖脂肪族ジアミンである。
【0032】
前記組成物の第2の好ましい選択肢により、後者は、上で定義された選択肢B2によるMXDAである単位Bを有する。単位Aは、記載した第1の選択肢で定義されたままである。この第2の選択肢は上述の第1と共に、本発明の最も好ましいものを構成し、特に第2の選択肢は、本発明の最も好ましいものである。
【0033】
第3の好ましい選択肢は、上で定義されたような選択肢B1またはB2またはB3によってBが定義され、Bの置換物として上で定義されたような、25mol%までの、好ましくは20mol%までの、より優先的には15mol%までの単位Cが存在し、特にBが上で定義されたような第1または第2の選択肢によって定義されるものである。
【0034】
なおより優先的には、前記ポリアミド組成物は、以下のように選択される単位AおよびBをベースとしている:
単位Aが9Tである場合、前記単位Bは:10T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は30%から45%の範囲に及び、
単位Aが10Tである場合、前記単位Bは:9T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は25%から45%の範囲に及び、
単位Aが11Tである場合、前記単位Bは:9T、10T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは9T、13T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は20%から45%の範囲に及び、
単位Aが12Tである場合、前記単位Bは:9T、10T、11T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは9T、10T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は20%から45%の範囲に及ぶ。
【0035】
この選択に従って、本発明の第1のより詳細な組成物を定義することができ、単位Aは9T単位であり、単位Bは:10T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択され、Bのモル含有率は30%から45%の範囲に及ぶ。第2の詳細な組成物は、10T単位である単位Aならびに単位Bであって:9T、11T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択される単位Bに相当し、Bのモル含有率は25%から45%の範囲に及ぶ。第3の詳細な組成物は、11T単位である単位Aならびに単位Bであって:9T、10T、12T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは9T、13T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択される単位Bに相当し、Bのモル含有率は20%から45%の範囲に及ぶ。最後に、別の詳細な組成物は、12T単位である単位Aならびに単位Bであって:9T、10T、11T、13T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、好ましくは9T、10T、14T、15T、16T、17Tおよび18T、MPMD.TおよびMXD.T、より優先的にはMPMD.TまたはMXD.Tより選択される単位Bに相当し、Bのモル含有率は20%から45%の範囲に及ぶ。
【0036】
第1の選択肢による前記ポリアミド組成物の反応性または非反応性に関して、前記ポリアミド組成物は、b)による非反応性組成物であってよい。このことは、前記組成物が前記複合材のマトリクス(ポリアミド)ポリマーの組成物と同じであるのは、この組成物に反応が存在せず、本発明の複合材料の加工のために加熱される場合に安定なままであり、分子量に関して変化しないためであることを意味する。この組成物中のポリアミドポリマーの特性は、すでに上で定義されたようなTgおよびTmを有し、反応性組成物a)によって得た半結晶性ポリアミドである最終ポリマーの特性と同じであり(下を参照)、前記ポリマーは定義により、前記複合材の前記熱可塑性マトリクスを構成している。b)によるポリアミドは、ジアミン、二酸および場合によりアミノ酸またはラクタムであるモノマー構成成分より従来の縮重合反応によって得られ、モノマーの割合および性質は、本発明の選択される単位、AおよびBならびに場合によりCおよびDに従って選ばれる。
【0037】
前記複合材の熱可塑性マトリクスの前記最終(ポリアミド)ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000から40000の、好ましくは12000から30000の範囲である。これらのMnは、0.8以上の固有粘度に相当することができる。組成物b)によるこれらのポリアミドが非反応性であるのは、存在する反応性(残留)官能基の含有率が低いため、特に前記官能基含有率が120meq/kg未満であるため、または鎖の末端に同じ種類の末端官能基が存在して、従って相互に反応性でないため、または1官能性反応性構成成分によって、例えばアミン官能基では一酸またはモノイソシアネートとの修飾反応によって、およびカルボキシ官能基ではモノアミンとの反応によって前記反応性官能基が修飾およびブロックされるためのいずれかである。前記最終マトリクスポリマーが反応性前駆体組成物a)中の反応性プレポリマーから誘導される場合、この反応性プレポリマーは、前記最終マトリクスポリマーのMnの少なくとも2分の1未満のMnを有する。
【0038】
第2の選択肢により、前記ポリアミド組成物は、a)によるおよび複合材の前記マトリクスの前記ポリアミドポリマーの前駆体または前駆体組成物である、プレポリマーの反応性組成物である。
【0039】
反応性組成物a)により、この第2の選択肢において、さらに3つの詳細な可能性を識別することが可能である。第1の可能性により、前記組成物a)は、同じ鎖上(即ち同じプレポリマー上)に2個の末端官能基X’および(et)Y’を持つ少なくとも1つの反応性(ポリアミド)プレポリマーを含んでよく、または反応性(ポリアミド)プレポリマーより成ってよく、前記官能基はそれぞれ縮合によって相互に共反応性であり、X’およびY’はそれぞれアミンおよびカルボキシまたはカルボキシまたはアミンである。第2の可能性により、前記反応性組成物a)は、相互に反応性であり、同一である(同じプレポリマーで同一であり、2つのプレポリマー間では異なる)それぞれ2個の末端官能基X’またはY’をそれぞれ持つ、少なくとも2つのポリアミドプレポリマーを含むまたはポリアミドプレポリマーより成ることができ、プレポリマーの前記官能基X’が他方のプレポリマーの前記官能基Y’のみと、特に縮合によって反応することが可能であり、より詳細にはX’およびY’はそれぞれアミンおよびカルボキシまたはカルボキシおよびアミンである。この縮合(または重縮合)反応は、副生成物の排除を引き起こすことができる。副生成物は、好ましくはオープンモールド技術を使用する方法に従った作業によって排除できる。好ましくは真空下でのクローズドモールド法、脱気のステップの場合、反応によって排除された副生成物が存在し、最終複合材料中での副生成物の微小気泡の形成を回避するために、これ(微小気泡)は、このように排除されないと、前記材料の力学性能レベルに影響を及ぼすことがある。反応性組成物a)の第3の選択肢により、前記組成物a)または前駆体組成物a)は:
a1)上ですでに定義されたような(マトリクスの)前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも1つのプレポリマーであって、このプレポリマーは:−NH(アミン)、−COH(カルボキシ)および−OH(ヒドロキシル)、好ましくは−NH(アミン)および−COH(カルボキシ)より選ばれるn個の同一の反応性末端官能基Xを持ち、nは1から3、好ましくは1から2、より優先的には1または2、より詳細には2である、プレポリマー;
a2)少なくとも1つの鎖延長剤Y−A’−Yであって、A’は、非ポリマー系構造(ポリマーでも、オリゴマーでも、プレポリマーでもない。)の炭化水素ベースジラジカルであり、前記プレポリマーa1)の少なくとも1個の官能基Xと重付加によって(反応副生成物の排除なしに)反応性である、2個の同一の反応性末端官能基Yを持ち、好ましくは500未満の、より優先的に400未満の分子量を有する、鎖延長剤;を含む、またはこれらより成ることができる。
【0040】
NH(アミン)は、第1級および第2級アミンを示す。
【0041】
後者の場合(第3の選択肢)において、前記複合材のマトリクスの前記ポリアミドポリマーの半結晶性構造は、同様に半結晶性である前記プレポリマーa1)の構造によって本質的に提供される。
【0042】
前記半結晶性ポリアミドプレポリマーa1)が持つ官能基Xによる延長剤a2)の好適な例として、以下が挙げられる:
XがNHまたはOH、好ましくはNHである場合:
鎖延長剤Y−A’−Yが
基:マレイミド、場合によりブロックされたイソシアネート、オキサジノンおよびオキサゾリノン、好ましくはオキサジノンおよびオキサゾリノンより選ばれるYならびに
A’は、反応性官能基または基Yを持つ、炭素ベーススペーサまたは炭素ベース基であって:
Y=オキサジノンおよびオキサゾリノンの場合、2個の官能基(基)Yの間の共有結合、または
脂肪族炭化水素ベース鎖または芳香族および/もしくは脂環式炭化水素ベース鎖であって、後者の2つは場合により置換される5または6個の炭化水素を含有する少なくとも1個の環を含み、場合により前記脂肪族炭化水素ベース鎖は場合により14から200g・mol−1の分子量を有する脂肪族炭化水素ベース鎖または芳香族および/もしくは脂環式炭化水素ベース鎖;
より選ばれる炭素ベーススペーサまたは炭素ベース基に相当するか、
または鎖延長剤Y−A’−Yは、カプロラクタム基であるYにおよびおそらくカルボニル基、例えばカルボニルビスカプロラクタムであるA’またはおそらくテレフタロイルまたはイソフタロイルであるA’に相当するか;
または前記鎖延長剤Y−A’−Yは、環式無水物基Yを持ち、この延長剤が好ましくは脂環式および/もしくは芳香族カルボキシル二無水物より選ばれ、より優先的にはこれは:エチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物またはこれの混合物より選ばれる、のいずれかであり、
ならびに
XがCOOHである場合:
前記鎖延長剤Y−A’−Yは:
群:オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリンまたはアジリジン、例えば1,1’−イソ−またはテレ−フタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)より選択されるY、
上で定義されたような炭素ベーススペーサ(基)であるA’
に相当する。
【0043】
より詳細には、前記延長剤Y−A’−Yにおいて、前記官能基Yがオキサジノン、オキサゾリノン、オキサジン、オキサゾリンまたはイミダゾリンより選ばれるとき、この場合、Y−A’−Yによって表される鎖延長剤において、A’はアルキレン、例えば−(CH−を表すことができ、mは1から14、好ましくは2から10の範囲に及び、またはA’はシクロアルキレンおよび/もしくは置換(アルキル)もしくは非置換であるアリーレン、例えばベンゼン系アリーレン、例えばo−、m−、p−フェニレンもしくはナフタレンアリーレンを表すことができ、好ましくはA’はアリーレンおよび/もしくはシクロアルキレンである。
【0044】
鎖延長剤Y−A’−Yとしてのカルボニル−またはテレフタロイル−またはイソフタロイル−ビスカプロラクタムの場合、好ましい条件によって、前記重合および溶融状態での加工中の副生成物、例えばカプロラクタムの排除が防止される。
【0045】
Yがブロックされたイソシアネート官能基を表す、上記の任意選択の場合において、このブロッキングは、イソシアネート官能基のためのブロッキング剤、例えばイプシロン−カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、ジメチルピラゾールまたはジエチルマロネートによって得ることができる。
【0046】
同様に、延長剤がX=NHであるプレポリマーP(X)と反応する二無水物である場合、好ましい条件により、重合中および溶融状態での加工中のイミド環のいずれの形成も防止される。
【0047】
X=OHまたはNHでは、Y基は好ましくは:(非ブロック)イソシアネート、オキサジノンおよびオキサゾリノン、より優先的にはオキサジノンおよびオキサゾリノンより選ばれ、A’はスペーサ(基)として上で定義された通りである。
【0048】
本発明の実施に好適なオキサゾリンまたはオキサジン反応性官能基Yを持つ鎖延長剤の例として、出願EP0581642の7頁の参考「A」、「B」、「C」および「D」で記載されたものならびにこれで述べられているこれらの調製方法およびこれらの反応方式も挙げられる。前記文書の「A」はビスオキサゾリンであり、「B」はビスオキサジンであり、「C」は1,3−フェニレンビスオキサゾリンであり、「D」は1,4−フェニレンビスオキサゾリンである。
【0049】
本発明の実施に好適なイミダゾリン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例として、出願EP0739924の7−8頁および10頁の表1に記載されたもの(「A」から「F」)ならびにこれで述べられているこれらの調製方法およびこれらの反応方式も挙げられる。
【0050】
本発明の実施に好適な反応性官能基Y=オキサジノンまたはオキサゾリノンを有する鎖延長剤の例として、出願EP0581641の頁7−8の参考「A」から「D」に記載されたものならびにこれで述べられているこれらの調製方法およびこれらの反応方式も挙げられる。
【0051】
好適なオキサジノン(6個の原子を含む環)およびオキサゾリノン(5個の原子を含む環)Y基の例として:ベンゾオキサジノン、オキサジノンまたはオキサゾリノンから誘導されるY基が挙げられ、スペーサA’が単一の共有結合であることが可能であり、それぞれ対応する延長剤は:ビス(ベンゾオキサジノン)、ビスオキサジノンおよびビスオキサゾリノンである。
【0052】
A’はC−C14、好ましくはC−C10アルキレンであることも可能であるが、A’は好ましくはアリーレンであり、より詳細にはA’はフェニレン(1,2もしくは1,3もしくは1,4位にてYによって置換)もしくはナフタレン基(Yによって二置換)もしくはフタロイル(イソ−もしくはテレフタロイル)であることができるか、またはA’はシクロアルキレンであることができる。
【0053】
オキサジン(6員環)、オキサゾリン(5員環)およびイミダゾリン(5員環)より選ばれるY官能基では、A’基は上記の通りであってよく、A’が単一の共有結合であることが可能であり、それぞれ対応する延長剤は:ビスオキサジン、ビスオキサゾリンおよびビスイミダゾリンである。A’はC−C14、好ましくはC−C10アルキレンでもよい。A’基は好ましくはアリーレンであり、より詳細にはA’基はフェニレン(1,2もしくは1,3もしくは1,4位にてYによって置換)もしくはナフタレン基(Yによって二置換)もしくはフタロイル(イソ−もしくはテレフタロイル)であってよいか、またはA’はシクロアルキレンであってよい。
【0054】
Y=アジリジン(エーテル−O−が−NH−で置換された、エチレンオキシドと同等の3個の原子を含む窒素含有複素環)である場合、A’基はフタロイル(1,1’−イソ−またはテレフタロイル)であってよく、この種の延長剤の例としては、1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)である。
【0055】
前記プレポリマーP(X)nと前記延長剤Y−A’−Yとの間の反応に、2つの言及した共反応物質の総重量に対して0.001%から2%の、好ましくは0.01%から0.5%の含有率の触媒が存在することによって、(重)付加反応を加速し、ゆえに生産サイクルを短縮することができる。このような触媒は:4,4’−ジメチルアミノピリジン、p−トルエンスルホン酸、ホスホン酸、NaOHおよび場合によりEP0425341、9頁、1−7行に記載されているような重縮合またはエステル交換について記載されているものより選ぶことができる。
【0056】
前記延長剤を選ぶより特定な場合により、A’はアルキレン、例えば−(CH−を表してよく、mは1から14の、好ましくは2から10の範囲に及び、またはアルキル置換もしくは非置換アリーレン、例えばベンゼン系アリーレン(例えばo−、m−もしくはp−フェニレン)もしくはナフタレン系アリーレン(アリーレン:ナフチレンを有する。)を表す。好ましくは、A’はベンゼン系またはナフタレン系であることができる置換または非置換アリーレンを表す。
【0057】
すでに特定したように、前記鎖延長剤(a2)は、非ポリマー系構造および好ましくは500未満の、より優先的には400未満の分子量を有する。
【0058】
上記の3つの選択肢による前記反応性組成物a)の前記反応性プレポリマーは、500から10000の、好ましくは1000から6000の範囲に及ぶ数平均分子量Mnを有する。すべてのMn重量は、溶解状態での電位差滴定および前記プレポリマーの官能価によって決定した末端官能基含有率からの計算によって決定する。
【0059】
定義a)による本発明の反応性組成物の場合、前記反応性プレポリマーは、本発明による単位AおよびBならびに場合によりCおよびDの性質および割合に従って、対応するジアミンおよび二酸構成成分ならびに場合により(単位Dによる)アミノ酸またはラクタム構成成分の間の従来の重縮合反応によって調製される。アミンおよびカルボキシ官能基X’およびY’を同じ鎖上に持つプレポリマーは、例えば合計で等量のアミン単位およびカルボキシ単位を有するモノマー(アミノ酸、ジアミン、二酸)の組合せを添加することによって得られる。官能基X’およびY’を持つこれらのプレポリマーを得るための別の経路は、例えば2個の同一の官能基X’=アミンを持つプレポリマーをY’:カルボキシを持つ二酸プレポリマーと組み合わせることによるものであり、酸官能基の全モル含有率は出発アミン官能基X’のモル含有率に等しい。
【0060】
同じ鎖上で同一の(アミンまたはカルボキシ)官能基によって官能化されたプレポリマーを得るためには、アミン末端官能基を有するために過剰のジアミン(または全アミン官能基)を有すること、またはカルボキシ末端官能基を有するために過剰の二酸(または全カルボキシ官能基)を有することで十分である。
【0061】
n個の同一の官能基Xを有するプレポリマーP(X)nの場合、官能価1は、ブロッキング1官能性構成成分(X=アミンまたはカルボキシの性質に応じて、一酸またはモノアミン)の存在下で得ることができる。
【0062】
官能価n=2は、一方が過剰であり、この過剰によりXを固定するための、2官能性構成成分:ジアミンおよび二酸から得ることができる。
【0063】
n=3では、例えばプレポリマーP(X)nでは、3官能性構成成分の存在、例えば、二酸との反応におけるジアミンと共にトリアミン(プレポリマー鎖当たり1モル)の存在が必要である。P(X)nの好ましい官能価は、n=2である。
【0064】
強化用繊維または繊維強化材は、即ちこれらの繊維が円形断面を有することを意味する、1000を超える、好ましくは2000を超える、繊維の長さの直径に対する比によって定義される縦横比を有する繊維、好ましくは長繊維の集合体であってよい。この集合体において、繊維は、一方向性(UD)または多方向性(2D、3D)強化材の形態で連続的であってよい。特にこれらは、布、シート、ストリップまたは編地の形態であってよく、例えば不織布(マット)の形態またはフェルトの形態で切り分けることもできる。
【0065】
これらの強化用繊維は:
鉱物繊維であって、本発明の前記半結晶性ポリアミドの溶融温度Tmを超えるならびに重合および/または加工温度を超える高い溶融温度Tm’を有する鉱物繊維、
重合温度を超えるもしくは複合材の前記マトリクスを構成する前記半結晶性ポリアミドの溶融温度Tmを超えるおよび加工温度を超える、溶融温度Tm’を、またはTm’がない場合にはガラス転移温度Tg’を有する、ポリマー系もしくはポリマー繊維
または上記の繊維の混合物より選ぶことができる。
【0066】
本発明に好適な鉱物繊維としては、ナノチューブもしくはカーボンナノチューブ(CNT)の繊維、炭素ナノ繊維もしくはグラフェンを含む、炭素繊維;シリカ繊維、例えば特にE、RもしくはS2型のガラス繊維;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、玄武岩繊維;金属および/もしくはこれの合金をベースとする繊維もしくはフィラメント;金属酸化物の、特にアルミナ(Al)の繊維;金属被覆繊維、例えば金属被覆ガラス繊維および金属被覆炭素繊維または上記の繊維の混合物が挙げられる。
【0067】
より詳細にはこれらの繊維は、以下のように選ぶことができる:
鉱物繊維は:炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、特にE、RもしくはS2型のガラス繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、玄武岩繊維、金属および/もしくはこれの合金をベースとする繊維もしくはフィラメント、金属酸化物、例えばAlをベースとする繊維、金属被覆繊維、例えば金属被覆ガラス繊維および金属被覆炭素繊維または上記の繊維の混合物より選ぶことができ、ならびに
上述の条件下で、ポリマー繊維またはポリマー系繊維が以下より選ばれる:
硬化性ポリマーの繊維であって、より詳細には:不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール系樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビスマレイミド樹脂、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとの反応より生じるアミノプラストより選ばれる繊維、
熱可塑性ポリマーの繊維であって、より詳細には:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、高密度ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PET)、ポリプロピレン(PP)およびPET/PPコポリマー、PVOH(ポリビニルアルコール)より選ばれる繊維、
ポリアミドの繊維であって、式:6、11、12、6.10、6.12、6.6、4.6の1つに相当する繊維、
アラミド(例えばケブラー(R))および芳香族ポリアミドの繊維であって、例えば式:PPD.T、MPD.I、PAAおよびPPAの1つに相当し、PPDおよびMPDはそれぞれp−およびm−フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドであり、PPAはポリフタルアミドである繊維、
ポリアミドのブロックコポリマーの繊維、例えばポリアミド/ポリエーテルまたはポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の繊維。
【0068】
好ましい強化用繊維は:金属被覆炭素繊維を含む炭素繊維、E、RもしくはS2型の金属被覆ガラス繊維を含むガラス繊維、アラミド(例えばケブラー(R))または芳香族ポリアミドの繊維、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の繊維またはこれの混合物より選ばれる(円形断面を有する)長繊維である。
【0069】
より詳細に好ましい繊維は:ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびアラミド(例えばケブラー(R))繊維またはこれの混合物より選ばれる。これらの繊維は円形断面を有する。
【0070】
前記繊維は、前記複合材料の40体積%から70体積%の、好ましくは50体積%から65体積%の含有率に相当することができる。
【0071】
繊維の集合体は、ランダム(マット)、一方向(UD)または多方向(2D、3Dなど)であることができる。これの坪量、即ちこれの平方メートル当たりの重量は、100から1000g/mの、好ましくは200から700g/mの範囲に及ぶことができる。繊維は、製織形態または不織形態、特に強化布および織物の形態であることができる。繊維は、特に、最終部品の形状をすでに有するプリフォームの形態で集合させる、および結合することができる。好適な結合剤として、a)またはb)による組成物、該組成物がない場合には、前記組成物(組成物a)またはb))と適合性の結合剤を使用してよい。
【0072】
本発明による組成物は、繊維、好ましくは長繊維をベースとして、特に1000を超える、好ましくは2000を超えるL/Dを有する、より詳細にはガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維またはこれの混合物より選択される繊維強化材を含む。
【0073】
より詳細には、本発明による組成物は、成形組成物である。このようなものとして、該組成物は、好ましくは長い強化用繊維に加えて、他の充填剤および添加剤を含んでよい。
【0074】
好適な充填剤の中でも、例えば:無機または有機充填剤:カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノフィブリル、ガラスビーズ、粉末形態の粉砕リサイクルポリマーが挙げられる。
【0075】
好適な添加剤の中でも:(UVまたはIR)レーザ技術によって得られた複合材の溶融を可能とするようなUVまたはIR範囲で吸収する添加剤および立体障害フェノールまたは立体障害アミン型の酸化防止剤より選ばれる熱安定剤(HALS)が挙げられる。これらの安定剤の機能は、得られた複合材のマトリクスポリアミドの熱酸化およびかなりの光酸化および分解を防止することである。
【0076】
本発明の第2の主題は、上で述べた本発明により定義された組成物を有する、熱可塑性複合材料、特に前記材料をベースとする機械部品または構造部品を製造する方法に関し、前記方法は、本発明により上で定義されたような少なくとも1つの反応性組成物a)の重合の少なくとも1つのステップまたは本発明により上で定義されたような少なくとも1つの非反応性組成物b)を成形もしくは加工するステップを含む。
【0077】
より詳細には、前記方法は、以下のステップを含んでよい:
i)本発明により定義されたような、即ち含浸繊維強化材を有する組成物を得るための、オープンもしくはクローズドモールドでのまたはモールド外での、本発明により上で定義されたが、前記繊維強化材を含まない組成物による、繊維強化材の溶融状態での含浸のステップ、
ii)溶融状態におけるバルクでの、重縮合反応(同じプレポリマーの自己縮合を含む。)による、または重付加反応による、必要に応じて鎖延長(分子量の増加)を伴う、本発明により定義されたようなポリアミド反応性組成物a)の場合の、ステップi)の前記組成物を加熱することによる重合反応のステップであって、重縮合の場合、クローズドモールドが含まれるときには、真空抽出システムを用いて縮合生成物が真空下で排除され、さもなければ好ましくは重縮合がオープンモールドまたはモールド外で行われるステップ、
iii)本発明により定義されたような非反応性ポリアミド組成物b)の場合には、モールド内でまたは別の加工システムで最終複合部品を形成するための、ステップi)の前記組成物の加工もしくは成形のステップ、および反応性組成物a)の場合には、成形による、または別の加工システムによる、重合ステップii)と同時の加工ステップ。
【0078】
本発明による前記方法において、前記加工は、好ましくはRTM、S−RIM、射出圧縮もしくはプルトルージョン法に従って、または特に反応性組成物a)の場合には注入によって行うことができる。
【0079】
本発明にまた含まれている別の主題は、半結晶性ポリアミド熱可塑性ポリマー、特に本発明の前記熱可塑性複合材料の熱可塑性マトリクスのポリマーに相当する(または該ポリマーである)ポリマーに関し、前記ポリマーは、上で定義された組成物b)により定義されたような非反応性ポリマーまたは本発明により上で定義されような前記反応性組成物a)より得られるポリマーである。この熱可塑性ポリマーは、定義により、本発明の熱可塑性複合材料の組成物の必須構成成分の1つであり、従って解決される同じ技術上の課題に直面した同じ共通の発明の概念によって本発明に関連付けられた生成物として、本発明の一部である。従って、本発明は、上記の繊維強化材をベースとする熱可塑性複合材の熱可塑性マトリクスとしての、本発明による前記熱可塑性ポリマーの使用も含む。より詳細には、Bが選択肢B1)によって定義された第1の好ましい組成物の選択肢に従って、またはBが選択肢B2)によって定義された第2の選択肢、またはBが選択肢B1)もしくはB2)によって定義され、Cが上で定義されたように存在する第3の好ましい組成物の選択肢に従って定義されるポリアミド組成物に相当するポリマーが好ましい。
【0080】
本発明の別の主題は、本発明により上で定義されたような組成物の使用または本発明による半結晶性ポリアミドポリマーの使用であって、熱可塑性複合材料、より詳細には前記組成物または前記複合材料をベースとする機械部品または構造部品(構造および準構造部品を含む。)を製造するための使用に関する。
【0081】
より詳細な使用により、前記複合材料で作られた前記機械部品または構造部品は、以下の分野:自動車産業、鉄道産業、海洋産業、風力、光起電力、ソーラーパネルおよびソーラー発電所用構成要素を含むソーラー産業、スポーツ、航空宇宙、(トラックに関わる)道路輸送、建築産業、土木工学、パネルまたはレジャーにおける用途に関わる。
【0082】
より詳細には、3つのより好ましい用途が、本発明による複合材料で作られた前記部品の使用のための温度により:
少なくとも90℃の前記熱可塑性マトリクスポリアミドのTgを有する、風力において、
少なくとも100℃の前記ポリアミドのTgを有する、自動車産業において、
少なくとも120℃の前記ポリアミドのTgを有する、航空学において、
分類することができる。
【0083】
このことは、少なくとも100℃のTgでは、2つの考えられる用途:自動車産業および風力があり、Tgが少なくとも120℃である場合、用途としての航空に加えて、風力および自動車産業もあってよいことを意味する。
【0084】
本発明は、本発明による上で定義されたような熱可塑性複合材料のための少なくとも1つの組成物の使用から生じる熱可塑性複合材料も含む。
【0085】
最後に、本発明は、上で定義されたような本発明の少なくとも1つの組成物の使用によりまたは本発明により定義されたような半結晶性ポリアミドポリマーのもしくは上で定義されたような熱可塑性複合材料の使用により得られる熱可塑性複合材料で作られた、機械部品または構造部品に関し、または部品は本発明により上で定義されたような方法によって得られる。
【0086】
より詳細には、前記構造部品は、特に少なくとも90℃のTgを有する、電気泳動によって後処理された自動車部品である。
【0087】
別の選択肢により、前記構造部品は、特に少なくとも100℃のTgを有する、風力用部品である。
【0088】
第3の詳細な選択肢により、前記構造部品は、特に少なくとも120℃のTgを有する、航空用部品である。
【0089】
示された特性を判定する方法
プレポリマーまたは前駆体組成物の溶融粘度は、直径50mmの2枚の平行な平面間で100秒−1の剪断下にて、所与の温度での窒素フラッシング中で使用した測定装置、即ちフィジカMCR301レオメータの製造者のリファレンスマニュアルに従って測定する。
【0090】
熱可塑性プレポリマーまたはポリマーのMnは、電位差測定法(NHまたはカルボキシの直接定量)による末端官能基の滴定(定量)からならびに直鎖プレポリマーおよび2官能性モノマーのみから調製したポリマーでは(末端官能基において)2である理論的官能価から決定する。
【0091】
固有またはインヘレント粘度の測定は、m−クレゾール中で行う。方法は、当業者に周知である。ISO937規格に従うが、溶媒を変更する(chainged)(硫酸の代わりにm−クレゾールを使用、温度は20℃である。)。
【0092】
使用した熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgは、第2の加熱工程後に、ISO11357−2規格に従って示差走査熱量計(DSC)を使用して測定する。加熱および冷却速度は、20℃/分である。
【0093】
溶融温度Tmおよび結晶化温度Tcは、第1の加熱後に、ISO11357−3規格に従ってDSCによって測定する。加熱および冷却速度は、20℃/分である。
【0094】
前記マトリクスポリマーの結晶化のエンタルピーは、示差走査熱量測定(DSC)によって、ISO11357−3規格に従って測定する。
【実施例】
【0095】
A−直接経路によるポリアミドポリマーの調製(反応性プレポリマーの鎖延長なし)
以下の出発物質5kgを14リットルのオートクレーブ反応装置に入れる:
水500g、
ジアミン、
(場合により)アミノ酸、
二酸、
1官能性鎖調節剤:目標とするMnに好適な量で、(安息香酸)50から100gまで変化する安息香酸、
溶解状態のホスフィン酸ナトリウム35g、
ワッカーAK1000消泡剤0.1g(ワッカーシリコーン社)。
【0096】
ポリアミドの分子単位の性質およびモル比ならびに構造(参照試験による。)を下の表1に示す。
【0097】
閉鎖した反応装置をこれの残留酸素で置換して、次に導入される物質に対して230℃の温度で加熱する。これらの条件下で30分間撹拌した後、反応装置内で形成される加圧蒸気の圧力を、60分間にわたって徐々に低下させ、この間、同時に物質の温度を、大気圧にてTm+10℃を達成するように徐々に上昇させる。
【0098】
次に、重合を窒素フラッシング下で20l/時にて、特性表に示した目標重量Mnが達成されるまで継続する。
【0099】
次に、ポリマーを底部バルブから排出し、次に水タンク中で冷却し、次に小粒を形成する。
【0100】
結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明を表す試験は、特にTm−Tcの小さい差(30℃未満)に関して、およびTm−Tgの差が150℃未満で30から50℃の範囲に及ぶTm−Tcについて、引用された従来技術を表す幾つかを含む、本発明以外の比較試験と比較してより高い性能レベルを示す。
【0103】
B−反応性プレポリマー(またはオリゴマー)の鎖延長によるポリアミドポリマーの調製
B−1 反応性プレポリマーP(X)nの調製
以下の出発物質5kgを14リットルのオートクレーブ反応装置に入れる:
水500g、
ジアミン、
(場合により)アミノ酸、
テレフタル酸、
溶解状態のホスフィン酸ナトリウム35g、
ワッカーAK1000消泡剤0.1g(ワッカーシリコーン社)。
【0104】
反応性プレポリマーポリアミドの分子単位および構造の性質およびモル比(参照試験による。)を下の表2に示す。
【0105】
閉鎖した反応装置をこれの残留酸素で置換して、次に物質の230℃の温度で加熱する。これらの条件下で30分間撹拌した後、反応装置内で形成された加圧蒸気の圧力を、60分間にわたって徐々に低下させ、この間、同時に物質の温度を、大気圧にてTm+10℃を達成するように徐々に上昇させる。
【0106】
次に、オリゴマー(プレポリマー)を底部バルブから排出し、次に水浴中で冷却し、次に粉砕する。
【0107】
特性を以下の表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
B−2 Y−A−Y型の延長剤を用いた鎖延長によるポリアミドポリマーの調製
上の乾燥粉砕オリゴマー10gを化学量論量の1,3−フェニレンビスオキサゾリン(PBO)と混合する。混合物を窒素フラッシング下で、スクリュー回転100rpmにて280℃まで予熱した(容積15mlを有する)DSM共回転コニカルスクリューマイクロ押出機に導入する。混合物をマイクロ押出機内で再循環させたままにして垂直力を測定することによって、粘度の上昇を監視する。およそ2分後、プラトーに達して、マイクロ押出機からロッドの形態で排出する。空冷した生成物から小粒を形成する。
【0110】
生成物分析の結果を下の表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
C−短繊維を含む複合材処方物
C−1 処方物の調製
ステップAから生じた小粒を、280℃の平坦温度特性に従って、Evolum32二軸押出機で混合する。流速は40kg/時であり、速度は300rpmである。ポリマー(49.65重量%)および添加剤(0.3%のステアリン酸カルシウムおよび0.4%のイルガノックス1010)をメインホッパーに導入する。旭CS 692 FTガラス繊維(49.65重量%)をサイドフィーダーから押出機の第2部に導入する。ロッドを水中で冷却し、小粒を形成する。
【0113】
得られた生成物分析結果を下の表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
10.T/MXDTをベースとする組成物は、非常に高いTgおよび特に小さいTm−
Tgと関連した、より高い結晶化能力をなお示している。
【0116】
C−2 温度による力学的特性(高温強度)
以下の処方物の小粒を、直径φ30mmのスクリューを装備したクラウス・マッファイ60メートルトンB2装置を使用して射出成形によって80×10×4mmのバーに形成する。サンプルを260℃にて、90℃のモールドに130rpm(833バールの測定材料圧)にて射出した。材料を611バールの圧力下で15秒間保持してから、モールドを20秒間にわたって冷却した。
【0117】
ISO178規格に従う3点曲げ試験を各種温度でズウィック1動力計にて行う。パンチおよび支持体の半径は5mmである。速度は2mm/分であり、弾性率は0.05%から0.25%の変形で計算する。
【0118】
結果を下の表5に示す。
【0119】
【表5】
【0120】
著しくより高く、本発明による組成物にとって好ましい、弾性率としての力学強度が認められ、100℃における性能損失は、本発明以外の組成物の5分の1未満である。