特許第6395719号(P6395719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエアの特許一覧

特許6395719カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法
<>
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000007
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000008
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000009
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000010
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000011
  • 特許6395719-カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395719
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】カチオン化可能なレオロジー改質および硬化手段、その組成物、およびその両方の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/12 20060101AFI20180913BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20180913BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20180913BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180913BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20180913BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180913BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20180913BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C08F220/12
   C08L33/08
   C08K5/00
   A61K8/81
   A61Q19/00
   A61Q5/12
   A61Q5/06
   A01N25/04 101
   A01N25/28
【請求項の数】5
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-544413(P2015-544413)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2016-501295(P2016-501295A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2013074245
(87)【国際公開番号】WO2014082904
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】61/731,585
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12195180.0
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510015257
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】ゾン・グエン−キム
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・グレアム
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・トゥルク
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−081739(JP,A)
【文献】 特表2002−523532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−220/70
C08L 33/00−33/26
C08K 5/00−5/59
A01N 25/00−25/34
A61Q 5/00−5/12
A61Q 19/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)モノマーAとしての、30〜50重量%のtert−ブチルアクリレート;
b)モノマーBとしての、3〜20重量%の、COO-C1〜C14直鎖アルキルであるエステル部分を有する直鎖アクリル酸エステル;
c)モノマーCとしての、15〜35重量%のN−ビニルピロリドン;
d)モノマーDである、15〜30重量%のN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド;
e)モノマーEとしての、0.1〜10重量%のメタクリル酸
を含んでなるレオロジー改質組成物または化粧品組成物のためのコポリマーであって、ホモ重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達し、
総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、
モノマーBおよびモノマーEの和は総コポリマー重量の20重量%を超えず、
モノマーCおよびモノマーDの和は総コポリマー重量の45重量%〜65重量%の範囲であり、
モノマーDはモノマーEに対して過剰の重量で用い、この過剰の重量はモノマーEの重量の少なくとも3.5倍である、
コポリマー。
【請求項2】
・水および/または
・VOC(揮発性有機化合物)
・および請求項1に記載のコポリマー
を少なくとも含んでなる組成物であって、使用されるコポリマーの量は、組成物の総重量に対して0.001〜50重量%の範囲であり、総重量は100%に相当する、組成物。
【請求項3】
・ヘアスタイリングおよび/またはヘアコンディショニングに有効である、
・ボディケア製品に有効である、あるいは、
・構造物材料における、または農業用組成物もしくは植物保護組成物におけるレオロジー改質剤として有効である、
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
モノマーBのエステル部分がCOO-C2〜C12直鎖アルキルである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
エステルモノマーBが、n−ブチルアクリレート、n−ラウリルアクリレートおよびエチルアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマー、コポリマーの製造方法、コポリマーの組成物、および組成物の製造方法に関する。本発明の範囲では、本発明のコポリマーまたは組成物の選択された使用方法に相当する、コポリマーまたはその組成物の使用も選択される。
【背景技術】
【0002】
近年のレオロジー改質剤または化粧品用ポリマーの複数の要求を満たすコポリマーおよび化粧品組成物を提供する技術は、既にかなり進歩している。
【0003】
WO 01/62809 A1には、
a)5〜50重量%の式(I):
【化1】
[式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、XはOまたはNRであり、Rは水素、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルである]
で示される少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和モノマー、
b)25〜90重量%の少なくとも1つのN−ビニルアミドおよび/またはN−ビニルラクタム、
c)0.5〜30重量%の、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および一分子あたり少なくとも1つのカチオノゲン性および/またはカチオン性基を有する少なくとも1つの化合物、
d)0〜30重量%の式(II):
【化2】
[式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、XはOまたはNRであり、Rは水素、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり、Rは水素または直鎖C〜C22アルキル基である]
で示される少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和モノマー
を組み込まれた状態で含む少なくとも1つの水溶性または水分散性ポリマーまたはその塩を含んでなる化粧品用手段が記載されている。
【0004】
同文献の1つのポリマーは、30重量%のtert−ブチルアクリレート、19重量%のn−ブチルアクリレート、27重量%のN−ビニルピロリドン、17重量%の約90%プロトン化状態のN−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)アクリルアミド、5重量%のメタクリル酸、および2重量%のエトキシル化ポリシロキサン(Belsil(登録商標)DMC 6031、Wacker)を含んでなる。
【0005】
しかしながら、前記ポリマーはその性能および価格特性に関してなお最適化されるべきである。第一に、追加のエトキシル化ポリシロキサンを使用することは製造コストを上昇させる。更に、前記モノマーはポリマーに柔軟性を付与し、これは、より軟質であるが故に幾分安定性が低いポリマーフィルムをもたらす。n−ブチルアクリレートのようなアクリル酸エステルは軟質特性を有するので、これと同様の影響がこの化合物によってもたらされることが知られている。しかしながら、ケラチン表面または皮膚上の軟弱かつ高度に軟質なポリマーフィルムは、特に風雨時、時間がたつとより不安定なヘアスタイルまたはクリーム層をもたらし、最悪の場合、整えられたヘアスタイルまたは塗布されたクリーム層は完全にくずれる。この影響は、各化粧品用手段により多量のポリマーを適用することによって、またはそれを繰り返し塗布することによって、ある程度は小さくなるが、1回の塗布あたりまたは所望される1回の効果あたりのコストは高くなる。
【0006】
WO 01/62809 A1の態様に記載されているような、上記したa)、b)、c)およびd)の組み合わせを含んでなる化粧品用手段の水溶性または水分散性ポリマーからn−ブチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレートとエトキシル化ポリシロキサンとの両方を完全に除外すると、毛髪または皮膚上に硬質ポリマーフィルムが形成されるので、いずれの状況も改善されない。ヘアスタイルが機械的に影響を受けないままであるか、またはほぼ影響を受けないままであるならば、この硬質フィルムはヘアスタイルの形状を相応に保持することができる。しかしながら、繰り返し毛髪を櫛でとかしたり、ブラッシングしたり、手櫛で整えたりすると、或いは風が強いと、幾分硬質のポリマーフィルムは曲げられて、部分的に壊される。その結果、コンディショニングおよびスタイリング性能は低下し、ポリマーフレークがヘアスタイル或いは他のケラチン表面または皮膚から少しずつ生じ、これは、特に黒髪のヒトにとって不快な困った状況をまねく。透明であればポリマー由来フレークの認知が低減されるが、そのようなポリマーは溶液中で自体既に濁って透明ではないので、上記の結果は残念ながら無視することはできない。低減されてもポリマーフレーク化には、十分かつ長期のコンディショニング、スタイリングまたは硬化効果を得るために、1回の適用あたりのより多いポリマー量または単位時間あたりのより多い適用回数が必然的に必要とされるという別の欠点が存在する。これによりやはり、化粧品用手段はより高価になる。
【0007】
これらは、先行技術の克服すべき欠点の一部にすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 01/62809 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、良好な硬化特性とコンディショニング特性の両方を有し、噴射剤と高度に適合性であるコポリマーを提供することである。コポリマーは、溶媒に、または多量の水を含む溶媒にも易溶解性であると同時に、溶媒を除去するとケラチン表面または皮膚に均一に付着する。この付着は、少量の水、即ち雨粒によって変化せず、好ましくは洗浄剤含有製品、例えばボディウォッシュによってもっぱら壊される。本発明のコポリマーは更に、増粘剤とスタイリングポリマーとの調整物質として作用することが求められる。そうでなければ、増粘剤とスタイリングポリマーは均一に混合されない。本発明のコポリマーはコスト効果が高い。これは、コポリマー自体が安価に得られること、或いは処理されるケラチン表面または皮膚上でのスタイリングおよび/またはコンディショニング性能の低下を伴わずに先行技術のコポリマーと比べて少量で使用されることを意味する。しかしながら、本発明のコポリマーは、先行技術のコポリマーと比べて少量で使用された場合でも、滑らかで光沢があり、べたつかない感触、および塊状または不格好なコポリマー凝集体またはコポリマー由来フレークによって阻害されない良好な外観を、ケラチン表面に付与する。
【0010】
また、化粧品に許容されているキャリヤーと本発明のコポリマーとを少なくとも含んでなる化粧品組成物は同時に、コンディショナーおよびスタイリングまたは硬化手段としても作用する。この組成物は、高い適合性が要求され、化粧品に許容されているキャリヤーとしての噴射剤が添加された場合でも曇らずほぼ透明な外観を有する。この組成物は、使用される溶媒と、または多量の水を含む溶媒とも均一な相を形成する。この組成物はまた、均一な噴霧パターン、即ち小さなサイズの滴しか見られないパターンを形成することも要求される。組成物は更に、かなりの量の水によってまたはより好ましくは洗浄剤含有水溶液によってしか除去されないように、例えば毛髪や爪のようなケラチン表面および皮膚に易適合性、即ちそれらに易付着性である。ケラチン表面上での組成物のフレーク化、またはべたつき感は回避される。本発明の更なる目的は、例えば組成物全体の性能、特に組成物中のコポリマーの性能の阻害を伴わずに追加コポリマー(例えばスタイリング、増粘および/またはコンディショニングコポリマー)の量を減らすことにより、コスト効果が高い化粧品組成物を提供することである。
【0011】
本発明のコポリマーおよび本発明の化粧品組成物はいずれも、微分散スプレーに適用された場合でも無害であることも要求される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
「噴射剤と高度に適合性である」とは、噴射剤が添加された場合に本発明のコポリマーまたは組成物が充填された容器が、コポリマー−噴射剤混合物または組成物の濁った外観を示さないことを意味する。また、「高度に適合性である」とは、コポリマー−噴射剤混合物または組成物が例えばノズルのような噴霧手段(それにより、コポリマー−噴射剤混合物または組成物が例えばヘアスタイル、皮膚または爪表面のような表面の上に微分散される)を閉塞しないことも意味する。本出願において、毛髪および/または爪はケラチン表面を形成していると理解される。
【0013】
多くの実験から、請求項1に記載のコポリマーまたはポリマー(本明細書では用語「ポリマー」と「コポリマー」とはほぼ同じ意味で使用される)が先に記載した要件を満たすことが分かった。
【0014】
本明細書では、用語「コポリマー」または「本発明のコポリマー」並びに「ポリマー」および「本発明のポリマー」並びにそれらの複数形は、特に記載が無い限りほぼ同じ意味で使用される。
【0015】
化合物のタイプが記載されるとき、メタクリレートまたはメタクリルアミドにおける用語「メタ」が(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドのように括弧内に記載されている場合は、アクリレートおよびメタクリレートの両方またはアクリルアミドおよびメタクリルアミドの両方を意味する。
【0016】
本発明の組成物は化粧品組成物とも称され、本発明の化粧品組成物は水および/または有機溶媒および/またはVOC(VOCは揮発性有機化合物を意味する)および本発明のコポリマーを少なくとも含んでなる。同じことはレオロジー組成物または本発明のレオロジー組成物にも当てはまり、これらも本発明の組成物である。
【0017】
本発明の主要な特徴は請求項1、13、14および15に記載されており、本発明の更なる態様は、請求項2〜12並びに後続の特許請求の範囲の詳細な説明から読み取ることができる。
【0018】
本発明は、モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;およびモノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーを記載する。本発明では、重合されたときに24℃以下のガラス転移温度を示す化合物をもっぱらモノマーBとして使用し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する量でモノマーBを使用することが重要である。
【0019】
24℃より高いガラス転移温度を有するモノマーBを選択すると、生成されるコポリマーはより脆くなり、その化粧品組成物から得られるフィルムは少なくとも部分的に壊れやすく、従ってフレークが発現し、レオロジーまたは化粧品の効果のために必要とされるコポリマーの量は増大する。しかしながら一方で、モノマーBの重量がモノマーAの重量の3分の1を超えると、コポリマーのモノマー側鎖の柔軟性は高まるので、その化粧品組成物はヘアスタイルまたはケラチン表面上でかなり軟質なコポリマーフィルムを形成する。従って、そのようなコポリマーのスタイリング性能は低下しやすい。また、これは化粧品組成物の粒度にも、従ってケラチン表面または皮膚に適用される組成物のコポリマーの必要とされる均一な分布にも悪影響を与える。
【発明の効果】
【0020】
これらの欠点は全て、本発明のコポリマーによって克服される。本発明のコポリマーを用いると最良のスタイリング性能が得られるので、本発明の化粧品組成物において必要とされるコポリマー量は低減され、従って、本発明の化粧品組成物の製造コストおよび消費コストは低減する。更に、先に記載したような要件は、以下に更に詳述されるように本発明のコポリマーによって完全に満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、噴射剤が添加されたポリマー溶液試料の外観を示す。
図2a図2aは、白色人種の未処理の毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2b図2bは、Amphomer(登録商標)で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2c図2cは、比較例V3またはV4に記載されているコポリマーを含んでなる組成物で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2d図2dは、本発明のコポリマーを含んでなる組成物で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2e図2eは、図2a〜2dを集めたものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のモノマーA、即ち分岐アクリル酸エステルは、第二級または第三級アルコールに、好ましくは第三級アルコールに由来するエステル部分を有する。この分岐アクリル酸エステルは好ましくは、イソプロピルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、3−メチルブチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、2−ヘプチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−メチル−7−エチル−4−ウンデシルアクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。tert−ブチルアクリレート、またはtert−ブチルアクリレートを含む混合物が特に好ましい。最も好ましい態様では、モノマーAは、その嵩高いtert−ブチル基がモノマーBに最適に対応するので、tert−ブチルアクリレートである。
【0023】
モノマーBは、直鎖アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの更なるアクリル酸エステルである。本発明の範囲において「直鎖」とは、アクリル酸またはアクリル酸ハライドとn−アルキルアルコール(即ち、1つのヒドロキシル基とn−アルキル基とを有するアルコール)との反応により得られたモノマーBが使用されることを意味する。各アルコールとアクリル酸またはアクリル酸ハライドとから生成される対応のアクリル酸エステルが24℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーをもたらす限り、n−アルキルは、構成要素であるメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルまたはカプリル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルまたはラウリル、n−トリデシル、n−テトラデシルまたはミリスチル、n−ペンタデシルおよびより高級のn−アルキル同族体を包含する。
【0024】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは10℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する。
【0025】
本発明のより好ましい態様は、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーであって、重合状態のモノマーBは0℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達するコポリマーである。
【0026】
非常に好ましい態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは−3℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する。
【0027】
非常に好ましい態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは−18℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する。
【0028】
同様に好ましい態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは−50℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する。
【0029】
ここで留意すべきは、適当なモノマーBの選択に十分な注意を払わなければならないことである。なぜなら、(重合状態の)各ホモポリマーのガラス転移温度は、モノマーBの直鎖状アルキル鎖のn−アルキル部分における炭素原子数に伴って低下し、ある長さのn−アルキル部分から、即ちその中のある炭素数からガラス転移温度が再び上昇するからである。本発明では、本発明のコポリマーの微細構造を適当に調節し、従ってコポリマーを含んでなる組成物の機械的性能および安定性能を最適化するために、ガラス転移温度を範囲内に収めることは必須である。
【0030】
その結果、モノマーBは、COO-C〜C14アルキルからなる、好ましくはCOO-C〜C14アルキルからなる、より好ましくはCOO-C〜C12アルキルからなる、特に好ましくはCOO-C〜C12アルキルからなる群から選択されるエステル部分を有する。明確性のためだけに記載すると、「COO-Cアルキル」とは-COO-CHを意味し、「COO-C〜C12アルキル」は、-COO-(CH11-CHまでの構成要素である-COO-(CH)-CH、-COO-(CH-CH、-COO-(CH-CHなどを包含する。
【0031】
モノマーBの使用によるかなり意外な効果は、本発明のコポリマーにおけるその挙動である。重合状態のモノマーBのガラス転移温度が低いほど、モノマーBは先に記載したようにかなり軟質のコポリマーをもたらす。これは、モノマー混合物にかなりの量のモノマーBを添加して重合させると実際に観察される。しかしながら、上記モノマーBが本発明のコポリマーにおいてモノマーAの重量の最大3分の1に達するならば、本発明のコポリマーは軟質ではなくより硬質になる一方で、表2の曲げ強度の上昇した値から分かるように可撓性になる。これは意外であるが、コポリマー或いはレオロジーまたは化粧品組成物がより良好なスタイリング、コンディショニングまたはレオロジー改質性能を示すという要件を満たす。
【0032】
本発明の範囲のレオロジー組成物は、本発明のコポリマーが組成物の機械的性質、例えば、その粘度、その流動性、またはその崩壊しにくい傾向を調節するために役立つ組成物である。
【0033】
本発明の化粧品組成物は、ヒトまたは動物のケラチン表面または皮膚を変えたり改善したり清浄化するためにヒトまたは動物の身体に適用される組成物である。そのような化粧品組成物を以下において更に説明する。
【0034】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大2/7に達する。
【0035】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大1/7に達する。
【0036】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは0℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大2/7に達する。
【0037】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは0℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大1/7に達する。
【0038】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは−18℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大2/7に達する。
【0039】
本発明の別の態様では、レオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは−18℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大1/7に達する。
【0040】
本発明の別の態様は、上記6つの態様からなる群から選択される。しかしながら、それぞれのモノマーBは、モノマーAの重量の最大1/8に達する。
【0041】
モノマーCとしての環式N−ビニルアミドは、水における、従って多量の水を含む溶媒における本発明のコポリマーの溶解性をかなり高めるので、本発明のコポリマーの重要な部分を構成する。好ましくは、環式N−ビニルアミドはN−ビニルラクタムである。より広範な態様では、環式N−ビニルアミドは、その誘導体、例えば1つ以上のC〜Cアルキル置換基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどを有する誘導体も包含する。
【0042】
より好ましい態様では、モノマーCは、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタムからなる群から選択される化合物を含んでなる。
【0043】
別の態様では、モノマーCは、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。ただし、N−ビニルホルムアミドは常に、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムの少なくとも1つと組み合わされる。
【0044】
本発明のコポリマーは、その全体の電荷が負であるケラチン表面と、特に毛髪と良好に接触する構成要素も必要とする。本発明のコポリマーに良好なコンディショニング能を付与するこの要件は、モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物によって満たされる。
【0045】
1つの態様では、モノマーDのカチオン性および/またはカチオノゲン性基は窒素含有基である。もしある程度本発明のコポリマーに電子供与体を持たせたい場合は、当業者は選択的に行うことができる。
【0046】
別の態様では、カチオン性および/またはカチオノゲン性基は、第一級、第二級および第三級アミノ基からなる群から選択される。
【0047】
別の態様では、カチオン性および/またはカチオノゲン性基は第四級アンモニウム基である。しかしながら、モノマーDが第四級アンモニウム基を有するならば、そのような本発明のコポリマーは、液状または固体状化粧品組成物において、ヒトまたは動物の身体に無害な方法でもっぱら適用することができる。本発明の範囲において「第四級アンモニウム基」とは、4つのアルキル基(これらの基は、同じまたは異なっており、それぞれ少なくとも1個の炭素原子を有する)によって囲まれた中心窒素原子を有する構成要素であると理解される。
【0048】
カチオン性および/またはカチオノゲン性基は、好ましくは第三級アミノ基である。
【0049】
荷電カチオン性基は、例えばカルボン酸(例えば乳酸)または鉱酸(例えば、リン酸、硫酸および塩酸)を用いたプロトン化によって、或いは例えばアルキル化剤(例えばC〜Cアルキルハライドまたはスルフェート)を用いた四級化によって、アミン窒素から形成される。そのようなアルキル化剤の例は、塩化エチル、臭化エチル、塩化メチル、臭化メチル、ジメチルスルフェートおよびジエチルスルフェートである。
【0050】
適当なモノマーDは、α,β−エチレン性不飽和モノおよびジカルボン酸とC〜C12アミノアルコールとのエステルからなる群から選択され、C〜C12アミノアルコールはアミン窒素でC〜Cジアルキル化されている。「C〜C12アミノアルコール」とは、2〜12個の炭素原子を有する炭素主鎖を有するアミノアルコールを意味する。用語「C〜Cジアルキル化」とは、2つのアルキル基がアミン窒素に結合し、アルキル基がそれぞれ1〜8個の炭素原子を有することを意味する。
【0051】
これらのエステルの適当なα,β−エチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、無水マレイン酸、モノブチルマレエートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物を使用することが好ましい。
【0052】
幾分好ましい態様では、適当なモノマーDはアクリル酸とC〜C12アミノアルコールとのエステルからなる群から選択され、C〜C12アミノアルコールはアミン窒素でC〜Cジアルキル化されている。同様に好ましい本発明の態様では、適当なモノマーDはメタクリル酸とC〜C12アミノアルコールとのエステルからなる群から選択され、C〜C12アミノアルコールはアミン窒素でC〜Cジアルキル化されている。
【0053】
好ましいモノマーDは、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。これらのうち好ましく使用されるものは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物である。
【0054】
適当なモノマーDは、第三級アミノ基および第一級または第二級アミノ基を有するジアミンとラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和モノおよびジカルボン酸とのアミドからも選択される。非環式ジアミンは特別に扱われる。そのような適当なモノマーDは好ましくは、第三級アミノ基および第一級または第二級アミノ基を有する非環式ジアミンと前記ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和モノおよびジカルボン酸とのアミドから選択される。「前記」とは、14個のラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和モノおよびジカルボン酸およびそれらの各混合物からなる先に記載した群を意味する。そのようなモノマーDの付加的作用は、負荷電性表面、負荷電性ケラチン表面(例えば毛髪)との相互作用能だけでなく、アミド基に起因するペプチド結合との高適合性能である。従って、タンパク質表面、即ちケラチン表面との魅力ある相互作用が改善される。
【0055】
本発明の別の好ましい態様では、適当なモノマーDは、第三級アミノ基および第一級または第二級アミノ基を有するジアミンとアクリル酸および/またはメタクリル酸とのアミドから選択される。この態様では、非環式ジアミンがより好ましい。
【0056】
モノマーDの非常に好ましい態様は、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]メタクリルアミドからなる群から選択される。
【0057】
本発明の最も好ましい態様では、モノマーDはN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドである。
【0058】
本発明のコポリマーの別の必須要素は、モノマーEとしての、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸である。「モノエチレン性不飽和」とは、分子内に1つの不飽和構成要素しか存在せず、この構成要素がカルボン酸基のα近傍にあることを意味する。このタイプのモノマーに起因して、本発明のコポリマーの水溶液中溶解性が増加する。
【0059】
モノマーEは、アニオノゲン性またはアニオン性化合物である。本発明の範囲において、「アニオノゲン性化合物」とは、通常の、好ましくは化粧品に許容されている、有機または無機塩基による脱プロトン化によって対応するアニオン性形態に転化され得る化合物を意味すると理解される。これは、本発明の範囲において、モノマーEとしてのモノエチレン性不飽和カルボン酸がその非荷電性形態および負荷電性形態の両方を含むことを意味する。
【0060】
「モノマーEとしてのモノエチレン性不飽和カルボン酸」も同様に、オレフィン性不飽和ラジカル重合性カルボン酸並びにその有機および無機塩からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0061】
モノマーEは、モノカルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸無水物、およびジカルボン酸半エステルからなる群から選択される。
【0062】
好ましくはモノマーEは、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フマル酸、4〜10個、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和ジカルボン酸の半エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される。
【0063】
より好ましくはモノマーEは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸およびそれらの塩およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
【0064】
最も好ましい態様では、モノマーEはメタクリル酸である。このモノマー自体、本発明のコポリマーに幾つかの利点をもたらす。それは易入手性およびコスト効果である。更に、メタクリル酸の性質の故に、これは、本発明のコポリマーにある程度のしかしながら適度な剛性をもたらすと同時に、コポリマーの水溶液中溶解性の増加に役立つ。
【0065】
モノマーBおよびEは本発明のコポリマーの、従ってその本発明の組成物の機械的性質の微調整にある程度関与すると考えられる。モノマーEはより硬質にするのに役立ち、モノマーBはより可撓性にするのに役立つ。いずれの性質も微調整のために必要とされるが、そのような作用は、本発明のコポリマーまたはその本発明の組成物が適用される基材との十分な相互作用の要件を覆してはならない。
【0066】
本発明の範囲において「基材」とは、本発明のコポリマーまたはその本発明の組成物が適用される液体または固体を意味する。そのような基材は、好ましくは皮膚およびケラチン表面を包含し、その中でも毛髪が特に好ましい。別の態様におけるそのような基材は、建築材料を包含する。更に別の態様では、そのような基材は種子、天然土壌および腐植土を包含する。
【0067】
ある程度のコポリマー−基材または組成物−基材相互作用を確実にするため、総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、モノマーBおよびモノマーEの和は、総コポリマー重量の20重量%を超えず、好ましくは最大18重量%、より好ましくは最大13重量%、最も好ましくは最大8重量%である。これらの量を守ることにより、よりタンパク質親和性またはペプチド親和性、特によりケラチン親和性のモノマーCおよびDに十分な空間がなお残され、これにより、より高濃度で使用した際にケラチン表面または皮膚との幾分より強い相互作用が促進される。これはまた、実際に観察されるフレーク化低減にも寄与し、先行技術のコポリマーより優れている。モノマーA〜Eの各重量は、それぞれのモノマーの各重量であると見なされる。
【0068】
本発明の最も好ましい態様では、モノマーCはN−ビニルピロリドンである。なぜなら、このモノマーはいったん重合すると本発明のコポリマーにおいて個々の特徴を統合するからである。第一に、N−ビニルピロリドンは毒性がなく、広く、医薬品であっても使用することができる。第二に、N−ビニルピロリドンは、本発明のコポリマーに高度の水溶液中溶解性をもたらす。しかしながら、例えばヘアスタイルに適用した後、このコポリマーの組成物をいったん乾燥すると、重合状態のモノマーCは、ペプチドまたはタンパク質構造、例えば皮膚のペプチドまたはタンパク質構造或いは毛髪のケラチンと相互作用する性質を発揮する。その中程度の大きさのラクタム環の故に、共重合状態のモノマーCの相互作用は著しすぎることも弱すぎることもない。
【0069】
本発明の別の態様では、モノマーDは、非四級化化合物、好ましくは非四級化アクリルアミドまたは非四級化メタクリルアミドである。スプレーまたはエーロゾルの形態で適用するために設計された化粧品組成物において本発明のコポリマーを使用する場合、この態様が重視される。非四級化状態であれば、そのような組成物は無害であることが知られている。本発明の範囲において「四級化」とは、先に記載したアルキル化剤に曝されることにより、自体または共重合状態のモノマーDの非荷電アミン窒素が正荷電性構成要素に転化されることを意味する。従って、「非四級化」とは、アミン窒素が、アルキル化剤の作用に起因して正荷電性とはならないが、有機または無機酸に由来するプロトンの作用に起因して正荷電性となるか、或いは電荷を持たないことを意味する。
【0070】
非四級化(メタ)アクリルアミドが、タンパク質またはペプチド構造に対してより大きい親和性を示すので、非四級化(メタ)アクリレートより好ましい。
【0071】
本発明の別の態様では、モノマーEが170℃以上、より好ましくは190℃以上のガラス転移温度Tgを有するコポリマーの保護を求める。より好ましくは、ガラス転移温度Tgは210℃以上または220℃以上である。モノマーEが210℃〜230℃のガラス転移温度範囲を有することも好ましい。実際、ガラス転移温度が高いほど、前記モノマーはより硬質になる。本発明のモノマー集合体にモノマーBを少なくとも制御せずに添加すると、そのコポリマーはより軟質になり、低いガラス転移温度を有するモノマーEは同じ方向を向く(同じ傾向にある)ので、このモノマーEが上昇したガラス転移温度を有すべきことを示す。
【0072】
高い負の総正味電荷を有するコポリマーは、同様に負荷電性である毛髪のケラチン表面と著しくは相互作用せず、ケラチン表面をコポリマー自体によって予め決められた構造にするので、スタイリングポリマーとして役立つために良好に適用される。従って、本発明の別の態様は、非中性化および非四級化形態で負の正味電荷を有するコポリマーを提供する。本発明の範囲において「負の正味電荷」とは、本発明のコポリマーが、共重合反応前、共重合反応中または共重合反応後にプロトンによる中和およびアルキル化剤による四級化が確認されない条件下にある場合に負に荷電されていることを意味すると理解される。本発明のコポリマーの非中性化形態は、6〜8、好ましくは7のpHとならない形態である。モノマーEの非中性化形態は、酸または塩基による処理を伴わずにモノマーEが取る形態である。「非四級化」とは、アミン窒素原子が、アルキル化剤の作用に起因して正荷電性とはならないが、先に記載したように、有機または無機酸に由来するプロトンの作用に起因して正荷電性となるか、或いは電荷を持たないことを意味する。
【0073】
本発明のコポリマーには、負の正味電荷が好ましい。しかしながら、前記正味電荷が大きすぎれば、コポリマーのコンディショニング能は損なわれる。特に、負荷電性ケラチン表面とコポリマーの間に斥力が存在するので、そのコンディショニング作用は非常に低い。この要求に対応すると同時にある程度のスタイリング作用をもたらすために、本発明の1つの態様では、本発明のコポリマーの負の正味電荷を5より小さく、好ましくは4より小さく、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2〜3に調節する。
【0074】
コポリマーを適用する皮膚におよび/またはケラチン表面(例えば毛髪)に良好な相互作用を付与するコポリマーまたはその化粧品組成物は、ペプチドまたはタンパク質構造との良好な相互作用能を有する。ケラチン表面の場合、これには、正荷電性構造、並びにタンパク質(例えばケラチン)のペプチド結合と相互作用できる電子受容体および電子供与体として作用する構造が必要とされる。前記した同様の相互作用能は、本発明のレオロジー組成物の機械的性質(例えば、粘度、流動性、または崩壊しにくい傾向)を改善するのにも有用である。更に、そのような本発明のレオロジー組成物の相互作用能は、構造物材料におけるレオロジー改質剤またはカプセル化手段としての;或いは農業用組成物または植物保護組成物における乳化手段または適用量決定手段としての使用に有利である。前記した相互作用能は、本発明の別の態様において、総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、本発明のコポリマーのモノマーCおよびモノマーDの和が総コポリマー重量の45重量%〜75重量%、好ましくは47重量%〜75重量%、より好ましくは50重量%〜70重量%、より好ましくは50重量%〜65重量%、より好ましくは52重量%〜65重量%、最も好ましくは52重量%〜60重量%の範囲である場合に著しいことが分かった。モノマーCがそのアミド構造に起因してペプチド結合と相互作用する性質を示すのに対し、モノマーDはプロトン化されると負荷電性表面と強度に相互作用する。しかしながら、本発明のコポリマーの良好な水溶液中溶解性、およびスタイリング作用のために必須のある程度のコポリマー剛性も必要とされるので、ペプチドまたはタンパク質構造とのコポリマーの相互作用能のみを利用しないことに注意すべきである。これらの要件の全ては、先に記載した態様によって満たされる。
【0075】
モノマーDは、ケラチン表面へのコポリマーの結合能に実質的に寄与するので、そのコンディショニング性能を高める。モノマーEは、本発明のコポリマーを水性溶媒中でより安定にし、より硬質にし、その負特性の故にそのスタイリング作用を改善する。しかしながら、本発明のコポリマーは、乾燥状態で部分的フレーク化をまねく脆すぎる性質を有すべきでない。やはり、コポリマーは良好な剛化効果および高い曲げ強度を有すべきである。また、本発明のコポリマーの溶液、即ちその化粧品組成物は、澄明な外観、および噴射剤との高い適合性を有すべきである。全ての要件を満たすために、本発明の別の態様は、モノマーDをモノマーEに対して過剰の重量で用い、その重量過剰は、総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、少なくとも、モノマーEの重量の3.5倍、モノマーEの重量の好ましくは5倍、モノマーEの重量のより好ましくは7倍、モノマーEの重量のより好ましくは8倍、モノマーEの重量の最も好ましくは25/3倍である、コポリマーを提供する。
【0076】
先に記載した要求を満たすレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーは、以下からなる群から選択される:30〜50重量%のモノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;3〜20重量%のモノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしての環式N−ビニルアミド;15〜30重量%の、モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;0.1〜10重量%のモノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する、コポリマー。
【0077】
先に記載した要求を満たすレオロジーまたは化粧品組成物のための別の有利なコポリマーは、以下からなる群から選択される:30〜50重量%のモノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;4〜15重量%のモノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしての環式N−ビニルアミド;15〜30重量%の、モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;0.1〜10重量%のモノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する、コポリマー。
【0078】
先に記載した要求を満たすレオロジーまたは化粧品組成物のための別のコポリマーは、以下からなる群から選択される:30〜50重量%のモノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;3〜20重量%のモノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしての環式N−ビニルアミド;15〜30重量%の、モノマーDであるN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド;0.1〜10重量%のモノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する、コポリマー。
【0079】
先に記載した要求を満たす本発明の別の態様は、以下からなる群から選択されるレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーを提供する:30〜50重量%のモノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;3〜20重量%のモノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしての環式N−ビニルアミド;15〜30重量%の、モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;0.1〜10重量%のモノマーEとしてのメタクリル酸を含んでなるコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する、コポリマー。
【0080】
先に記載した要求を満たす本発明の別の態様は、以下からなる群から選択されるレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーを提供する:30〜50重量%のモノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;5〜10重量%のモノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしての環式N−ビニルアミド;15〜30重量%の、モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;0.1〜10重量%のモノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなるコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する、コポリマー。
【0081】
非常に好ましい態様では、本発明のコポリマーは、30〜50重量%のモノマーAとしてのtert−ブチルアクリレート;3〜20のモノマーBとしての、n−エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよびn−ラウリルアクリレートからなる群から選択される直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;15〜35重量%のモノマーCとしてのN−ビニルピロリドン;15〜30重量%のモノマーDとしてのN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド;0.1〜10重量%のモノマーEとしてのメタクリル酸からなり、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、総コポリマー重量がモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件にモノマーAの重量の最大3分の1に達する。
【0082】
本発明の別の態様は、上記6つの態様からなる群から選択される。しかしながら、重合状態のモノマーBは、10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−18℃以下、更には−50℃以下のガラス転移温度を有する。
【0083】
別の態様は、上記7つの態様からなる群から選択される。しかしながら、それぞれのモノマーBは、モノマーAの重量の最大2/7、好ましくは1/7、更には1/8に達する。
【0084】
本発明のコポリマーの製造方法の保護も求める。前記コポリマーは、下記工程:i)モノマーC、モノマーDおよびモノマーEの混合物2〜60重量%を含有する水溶液を調製する工程;ii)モノマーA、モノマーBおよびモノマーDの混合物2〜60重量%を含有する水溶液を調製する工程;iii)一定量の工程i)の水溶液に一定量の工程ii)の水溶液を添加する工程;iv)一定量の開始剤Yの溶液を添加する工程;v)工程i)〜iv)から得た混合物を60℃〜120℃の範囲の温度に加熱する工程;vi)撹拌しながら工程i)、ii)およびiv)の水溶液の残余を添加する工程;vii)冷却後に混合物を中和する工程;viii)70〜120℃の範囲の温度で溶媒をストリップする工程を含む、溶液中での重合によって得られる。
【0085】
この方法の非常に好ましい態様では、工程i)およびii)の水溶液は共溶媒としてのイソプロパノールを含んでなる水溶液である。最も好ましい態様では、工程i)およびii)の水溶液は溶媒として水およびイソプロパノールをもっぱら含有する。前記水溶液中の溶媒として水およびイソプロパノールをもっぱら使用することにより、当業者は、本発明のモノマーの全てを適切に、即ちいかなる問題も伴わずに親水性モノマーおよび疎水性モノマーを溶解することができる。
【0086】
本発明の範囲において「モノマーC、モノマーDおよびモノマーEの混合物」とは、合成される本発明のコポリマーにおける各モノマーの重量または重量パーセント値が総コポリマー重量に関係し、総コポリマー重量をもたらす限りは各モノマーの割合を問わず、前記モノマーのあらゆる混合物であると理解される。
【0087】
好ましい態様では、モノマーC、モノマーDおよびモノマーEの混合物において使用されるモノマーDの重量は、全体で使用されるモノマーDの重量の半分である。
【0088】
本発明の範囲において「モノマーA、モノマーBおよびモノマーDの混合物」とは、合成される本発明のコポリマーにおける各モノマーの重量または重量パーセント値が総コポリマー重量に関係し、総コポリマー重量をもたらす限りは各モノマーの割合を問わず、前記モノマーのあらゆる混合物であると理解される。
【0089】
好ましい態様では、モノマーA、モノマーBおよびモノマーDの混合物において使用されるモノマーDの重量は、全体で使用されるモノマーDの重量の半分である。
【0090】
モノマーDは、疎水性および親水性の両方を有する。従って、モノマーDは、疎水性化合物とも親水性化合物とも良好に混ざる。共重合中のモノマーDの混合を均一かつ完全なものとするために、モノマーDは、モノマーC、モノマーDおよびモノマーEの混合物を含有する水溶液およびモノマーA、モノマーBおよびモノマーDの混合物を含有する水溶液に等しく分配する。
【0091】
工程i)の水溶液の一定分量は、工程i)の溶液の一部であると見なされる。同様に、工程ii)の水溶液の一定分量は、工程ii)の溶液の一部であると見なされる。工程i)の水溶液の一定量のみを使用する主要な態様では、適当かつ均一に重合反応が達成される。従って、本発明の好ましい態様では、工程i)の水溶液の一定量は、この水溶液の1/10〜1/3、好ましくは1/8〜1/4、最も好ましくは1/7〜1/5である。同じ理由から、本発明の好ましい別の態様では、工程ii)の水溶液の一定量は、この水溶液の1/20〜1/4、好ましくは1/16〜1/8、最も好ましくは1/12〜1/10である。
【0092】
工程i)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/10〜1/3であり、工程ii)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/20〜1/4であるように、工程ii)の水溶液の一定量を工程i)の水溶液の一定量に添加するならば、非常に円滑かつ均一な共重合が達成される。工程i)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/8〜1/4であり、工程ii)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/16〜1/8であるように、工程ii)の水溶液の一定量を工程i)の水溶液の一定量に添加するならば、なお良好な結果が得られる。工程i)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/7〜1/5であり、工程ii)の水溶液の一定量がこの水溶液の1/12〜1/10であるように、工程ii)の水溶液の一定量を工程i)の水溶液の一定量に添加するならば、非常に満足のいく共重合結果が得られる。
【0093】
本発明のコポリマーのための共重合は、開始剤Yによって開始される。開始剤Yは、ペルオキソ化合物からなる群から選択される。具体的には開始剤Yは、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルピバレート、tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルマレエート、ジイソプロピルペルオキシジカルバメート、ビス(o−トルオイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロリルペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルアセテート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンを含む群から選択される。
【0094】
別の態様では、開始剤Yは、脂肪族または脂環式アゾ化合物からなる群から選択される。具体的には開始剤Yは、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(Wako V-59.RTM.)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル−)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド(Wako V-50@)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)およびそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、例えばナトリウム塩、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](Wako VA-061 .RTM.)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)およびその酸付加塩、例えばジヒドロクロリド、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(Wako V-601 .RTM.)から選択される。
【0095】
開始剤Yは、過酸化水素、還元剤と組み合わせたヒドロペルオキシド、および過酸塩からなる群からも選択される。具体的には開始剤Yは、それぞれの場合に例えばヒドロキシメタンスルフィン酸塩、鉄(II)塩またはアスコルビン酸と組み合わせた、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシドからなる群からも選択される。適当な過酸塩は、具体的にはアルカリ金属ペルオキソジスルフェートである。
【0096】
前記開始剤Yの別の詳細な態様は、アスコルビン酸/鉄(II)スルフェート/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、H/CuおよびH/アスコルビン酸を包含する。
【0097】
開始剤Yは、可溶化形態で溶液i)の一定量および溶液ii)の一定量に添加される。開始剤Yの溶液は、開始剤を溶解できる溶媒を含んでなる。開始剤Yの溶液の溶媒は、好ましくは少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒またはその混合物である。別の好ましい態様では、開始剤Yの溶液の溶媒は、少なくとも1つのアルコールまたはその混合物であり、非常に好ましい態様では、開始剤Yの溶液の溶媒はイソプロパノールである。
【0098】
使用される開始剤Yの量は、一般に、総コポリマー重量に基づいて約0.1〜2重量%の範囲である。
【0099】
開始剤Yの溶液の一定量は、開始剤の溶液の総量の最大1/2である。より好ましい態様では、開始剤Yの溶液の一定量は、開始剤の溶液の総量の1/40〜1/3、好ましくは1/20〜1/7、より好ましくは1/16〜1/10、最も好ましくは1/15.125〜1/12の範囲である。非常に迅速かつ均一な共重合が、開始剤Yの溶液の一定量について最も好ましい範囲を考慮することによって達成されることが分かった。
【0100】
工程i)〜iv)から得られた混合物を60℃〜120℃、好ましくは70℃〜100℃、最も好ましくは75℃〜90℃の範囲の温度に加熱すると、相応の時間内に高い共重合収率が実現される。
【0101】
好ましくは工程v)の後に、共重合が開始した時点で、撹拌しながら工程i)、ii)およびiv)の水溶液の残余を添加する。共重合の過程において反応混合物の粘度が更に上昇することを解決するために、撹拌は激しくなければならない。「工程i)の残余」とは、工程iii)に記載の工程i)の水溶液の一定量に関して導かれる工程i)の水溶液であると理解される。「工程ii)の残余」とは、工程iii)に記載の工程ii)の水溶液の一定量に関して導かれる工程ii)の水溶液であると理解される。「工程iv)の残余」とは、工程iv)に記載の開始剤Yの溶液の一定量に関して導かれる開始剤Yの溶液であると理解される。
【0102】
好ましい態様では、工程i)の水溶液の残余は、それぞれ撹拌しながら20分〜3時間、好ましくは40分〜150分、最も好ましくは1時間〜2時間の範囲の時間内に添加する。
【0103】
別の好ましい態様では、工程ii)の水溶液の残余は、それぞれ撹拌しながら2時間〜7時間、好ましくは3時間〜6時間、最も好ましくは4時間〜5時間の範囲の時間内に添加する。
【0104】
別の好ましい態様では、工程iv)の水溶液の残余を、それぞれ撹拌しながら3時間〜8時間、好ましくは4時間〜7時間、最も好ましくは5時間〜6時間の範囲の時間内に添加することが必要とされる。
【0105】
本発明の別の態様では、「撹拌しながら工程i)、ii)およびiv)の水溶液の残余を添加する」ことは、同一時点に実施される。これは、共重合の円滑なランに寄与し、かなり均一なコポリマーを生成する。
【0106】
非常に好ましい製造方法では、1時間〜2時間の範囲の時間内に工程i)の水溶液の残余を添加し、4時間〜5時間の範囲の時間内に工程ii)の水溶液の残余を添加し、5時間〜6時間の範囲の時間内に工程iv)の水溶液の残余を添加するように、撹拌しながら工程i)、ii)およびiv)の水溶液の残余を同時に添加する。残留未重合モノマー量がかなり低減するので、実際は、開始剤Yの水溶液の残余の添加に、即ち工程iv)に時間(この時間は、工程i)およびii)のモノマー水溶液の残余を添加するのに要する時間より長い)をかけることが有利である。また、工程ii)の水溶液のモノマーは工程i)の水溶液のモノマーより水性環境下でおそらく溶解できないので、工程ii)の水溶液の残余の添加時間より工程i)の水溶液の残余の添加時間がより短くなるよう選択することが非常に有利である。従って、特に工程ii)のモノマーAおよびBと共重合混合物とを均一に混合するのに、より長い時間が必要とされる。
【0107】
より詳細な態様では、工程vi)の後に、1時間〜4時間、好ましくは2時間〜3時間の間、更に混合物を反応させることが必要とされる。これにより、共重合反応の完了が促進される。
【0108】
別の好ましい態様では、本発明の方法は、工程vi)の後に、混合物の温度を2〜15℃、好ましくは5〜10℃上昇させることを必要とする。これにより更に、共重合の反応速度が促進される。
【0109】
より好ましくは、工程vi)の後に、1時間〜4時間、好ましくは2時間〜3時間の間、混合物を更に反応させ、混合物の温度を2〜15℃、好ましくは5〜10℃上昇させる。このような上記2つの手段の組み合わせにより、本発明のコポリマーの収率および反応速度に関して累積した効果が得られる。
【0110】
本発明の方法の別の態様では、調整剤Rの添加が必要とされる。調整剤Rは、本発明の方法の工程i)または工程ii)または工程iii)または工程iv)または工程v)または工程vi)の後、好ましくは工程i)または工程ii)または工程iii)または工程iv)の後に添加される。そのような調整剤Rは、本発明のコポリマーの所望のK値を得るためまたは微調整するために作用する。この添加は、モノマーA,B、C、DおよびEの特定の組み合わせに使用されるエマルション(共)重合法または懸濁(共)重合法の場合に、特に有利である。
【0111】
前記調整剤は、アルデヒド、ギ酸、ギ酸アンモニウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウムおよびリン酸ヒドロキシルアンモニウム、有機的に結合した形態で硫黄を有する化合物、SH基の形態で硫黄を有する化合物、水溶性硫黄含有重合調整剤、アリル化合物、ベンジル化合物またはハロゲン化アルキルからなる群から選択される。
【0112】
アルデヒドの中では、調整剤は好ましくは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒドおよびイソブチルアルデヒドから選択される。有機的に結合した形態で硫黄を有する化合物の中では、調整剤は好ましくは、ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−n−オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィドから選択される。SH基の形態で硫黄を有する化合物の中では、調整剤は好ましくは、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンまたはn−ドデシルメルカプタンから選択される。水溶性硫黄含有重合調整剤の中では、調整剤は好ましくは、少なくとも亜硫酸水素塩および/または二亜硫酸水素塩から選択される。好ましいアリル化合物はアリルアルコールまたは臭化アリルである。好ましいベンジル化合物は塩化ベンジルである。好ましいハロゲン化アルキルはクロロホルムまたはテトラクロロメタンである。
【0113】
本発明の方法の別の態様では、共重合されないモノマーの量を更に低減し、より高い転化率(例えば99.9%)まで共重合反応を実施することが意図される。
【0114】
これは、工程vi)の後の混合物に、上記の、しかしながら工程iv)で使用したものとは異なる1つ以上の重合開始剤Yを添加することにより達成される。より好ましくは、工程vi)の後の混合物に、上記の、しかしながら工程iv)で使用したものとは異なる1つ以上の重合開始剤Yを添加し、重合温度または重合温度より高い温度に混合物を加熱する。
【0115】
上記の開始剤Yの他に、別の態様として、工程vi)の後の混合物に、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソジスルフェート、ペルカーボネート、ペルオキソエステルおよび過酸化水素からなる群から選択される、水溶液におけるラジカル重合に適した他の全ての市販開始剤の少なくとも1つを添加する。
【0116】
共重合されないモノマーA〜Eの量を低減するための別の態様では、酸を使用する。この態様では、工程vi)の後に得た混合物を水および酸と混合する。更に好ましくは、工程vi)の後に得た混合物を水および酸と混合し、次いでそれを加熱する。非常に好ましくは、工程vi)の後に得た混合物を水および酸と混合し、次いでそれを100℃以下の温度に加熱する。最も好ましい態様では、工程vi)の後に得た混合物を水および酸と混合し、次いでそれを50℃〜100℃の範囲の温度に加熱する。この方法により、未反応モノマーA〜Eの非常に多くの量が、ポリマー形態またはコポリマー形態に容易に転化される。
【0117】
前記酸は、有機酸または鉱酸からなる群から選択される。有機酸の中では、酸は、好ましくは乳酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、ニコチン酸からなる群から選択される。鉱酸の中では、酸は、好ましくは硫酸、塩酸またはリン酸から選択される。
【0118】
開始剤Yまたは別の開始剤または酸を添加すると、反応混合物を更に5〜15時間、好ましくは更に8〜12時間、最も好ましくは更に9〜10時間反応させる。
【0119】
工程vi)および続く可能な更なる前記工程の後、混合物を冷却して中和する。「冷却」とは、本発明のコポリマーを含んでなる混合物を40℃未満、好ましくは室温に冷却することを意味する。本発明の範囲において「中和」とは、本発明のコポリマーを、その全体の電荷が0近傍または0となるようにすることを意味する。これは、モノマーEのアニオン性またはアニオノゲン性基およびモノマーDのカチオン性またはカチオノゲン性基の両方に作用しなければならないことを意味する。実際に実現されるべきことは、モノマーDがプロトン化またはアルキル化され、従って正に荷電される程度にモノマーEが負に荷電されている本発明のコポリマーの双性イオン性を得ることである。これは、モノマーDが非荷電性のままであると同時にモノマーEが完全にプロトン化されることも含む。
【0120】
そのような中和は、少なくとも1つの有機酸または少なくとも1つの鉱酸またはそれらの混合物によって実施または完了される。少なくとも1つの有機は前記有機酸から選択され、少なくとも1つの鉱酸は前記鉱酸から選択される。
【0121】
「完了」とは、共重合されないモノマーA〜Eの量を更に低減または除去するために酸を使用するという条件で、既に開始された中和の達成を意味する。
【0122】
少なくとも1つの有機酸の量、または少なくとも1つの鉱酸の量、またはそれらの混合物の量は、好ましくはpH範囲が6〜7に達するように選択する。この方法によって、即ち本発明のコポリマーの混合物をこのpH範囲に調整することによって、最適なスタイリングおよびコンディショニング性能を示すコポリマーが得られる。その組成物は、良好な曲げ強度をもたらすと同時に、コンディショニング特性を維持する。また、それらは、本発明の組成物のために消費されるコポリマーの量、または適用において使用される本発明の組成物の量に悪影響を与える無視できないフレーク化を示さない。
【0123】
本発明の非常に好ましい態様では、50重量%のエタノール中またはイソプロパノール中またはそれらの混合物中のリン酸を用いて、中和を実施または完了する。中和は最も好ましくは、50重量%のイソプロパノール中リン酸を用いて実施または完了される。この非常に好ましい態様では、短時間で、優れたスタイリングおよびコンディショニング特性並びに低減されたフレーク化を示す本発明のコポリマーが得られる。
【0124】
冷却後の混合物の中和は、10分〜3時間、好ましくは20分〜2時間、最も好ましくは30分〜1時間、撹拌しながら少なくとも1つの有機酸または少なくとも1つの鉱酸またはそれらの混合物を用いることにより促進される。
【0125】
工程ii)の後、70〜140℃の範囲の温度、好ましくは70℃〜120℃の範囲の温度、最も好ましくは80℃〜110℃の範囲の温度で溶媒をストリップオフする。ストリップオフは、好ましくは蒸気蒸留、より好ましくは水蒸気蒸留を用いて実施される。そのような蒸気蒸留によって、蒸気揮発性残留モノマーまたはその水解物、および場合により揮発性溶媒は効果的に留去されるので、より澄明な本発明のコポリマーがもたらされる。好ましくは蒸気蒸留は、塔頂温度が約110℃に達するまで行う。「塔頂温度」とは、蒸留塔の塔頂での温度を表す。
【0126】
本発明の必須部分は、水および/またはVOC、並びにコポリマーを記載している特許請求の範囲に少なくとも記載されたおよび/または所定の明細書に少なくとも記載されたコポリマーを少なくとも含んでなる組成物である。この組成物では特に、使用されるコポリマーの量は、100%に相当する組成物の総重量に対して0.001〜50重量%、好ましくは0.005〜30重量%、より好ましくは0.01〜20重量%、更に好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、最も好ましくは0.1〜15重量%である。先に記載し、後の表1〜3並びに図1および図2に記載されている本発明のコポリマーの特有のスタイリングおよびコンディショニング特性の故に、本発明の組成物は、同等のスタイリングまたはコンディショニング作用を得るために、本発明のコポリマーをかなり少量でしか必要としない。これは、同程度のスタイリングまたはコンディショニング作用を得るために、比較例のコポリマーの約3/4しか、好ましくは1/2しか、より好ましくは1/3しか必要とされないことを意味する。また、本発明の組成物中のコポリマーのこの少ない量は、後に更に詳述する表および図から得られる不格好なまたは濁った微細構造の形成またはフレーク化という望ましくない結果を回避するのにかなり寄与している。そのような結果、即ち、良好な微細構造、小さい滴径、および噴射剤との良好な適合性と組み合わされたそのような高い曲げ強度値は、化粧品組成物において組成物の総重量に対して0.2〜20重量%の範囲の濃度で一般的に使用されている先行技術のコポリマーを用いて得ることはできない。
【0127】
本発明において「VOC」とは、ガイドライン2004/42/ECに従って101.3kPaの標準圧力で最大250℃の初期沸点を有する揮発性有機化合物であると理解される。
【0128】
「組成物の総重量」は、組成物の全成分の重量の和と定義される。
【0129】
本発明の組成物のより好ましい態様ではVOCはVOC80であり、これは、本発明の組成物が最大80重量%のVOCを含むことを意味する。別の好ましい態様では、組成物はVOC55を含み、これは、組成物が最大55重量%のVOCを含むことを意味する。別の好ましい態様では、本発明の組成物はVOC35を含み、これは、組成物の35重量%以下だけがVOCであることを意味する。VOC55を含む本発明の組成物およびVOC35を含む別の組成物は、多量の水を含む溶媒を、即ちVOC55および少なくとも45重量%の水を含むと考えられる。この高濃度の水にもかかわらず、組成物はなお本発明のコポリマーを許容し、良好に可溶化し、これは先行技術のポリマーを用いて容易に実現することはできない。
【0130】
本発明の組成物に使用されるVOCの量が少ないほど、この組成物はより容易に、例えば化粧品組成物中のVOCが非常に少ない量でしか認められていない国における使用に採用される。米国の多くの州では、VOC55またはVOC35の使用しか認められていない。
【0131】
VOCは、ジメトキシメタン、アセトン、ジクロロメタン、ジオキサン、C〜C一価アルコール、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、2−メトキシプロパン−1−オール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどを含むVOC1の群から、また、C〜Cポリオール、例えばグリセロール、グリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、イノシトール、ソルビトール、マンニトールから、二価アルコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、約3000の数平均分子量を有するポリエチレングリコール)のメチルまたはエチルエーテルなどから、また、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンのような炭化水素から、或いはこれら化合物の2つ以上の混合物から選択される。
【0132】
別の好ましい態様では、VOCは、溶媒、例えば、ジメトキシメタン、C〜C一価アルコール、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、2−メトキシプロパン−1−オール、C〜Cポリオール、例えばグリセロール、グリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、炭化水素、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、或いはこれら化合物の2つ以上の混合物からなるVOC1から選択される。
【0133】
非常に好ましくは、VOCは、ジメトキシメタン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イノシトール、ソルビトールおよびマンニトールまたはこれらの2つ以上の混合物からなるVOC1の群から選択される。そのような化合物は、非常に顧客適合性(customer compatible)であることが知られており、適用される表面(ケラチン表面、皮膚)とのアレルギー反応をほとんどまたは全く起こさない。
【0134】
別の態様では、VOCは、噴射剤および指定の噴射剤ガスまたは易揮発性噴射剤液、例えば、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、イソブタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル、ジフルオロエタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、HFC−152 A(1,1−ジフルオロエタン)、HFC−134a(1,1,2,2−テトラフルオロエタン)、ヘキサフルオロエタン、噴射剤混合物に基づいて20%までの少量での特定の塩素化炭化水素、圧縮ガス、例えば、窒素、亜酸化窒素(例えばNO)、CO圧縮空気または二酸化炭素を含むVOC2の群から、または前記噴射剤の群の混合物から選択される。
【0135】
より好ましくは、VOCは、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、イソブテン、n−ペンタン、ジメチルエーテル、圧縮空気、二酸化炭素またはそれらの混合物を含むVOC2の群から選択される。VOC2は、皮膚およびケラチン表面と高度に適合性であり、環境に優しいことが知られている。
【0136】
非常に好ましい態様では、VOCは、VOC1の少なくとも1つとVOC2の少なくとも1つとの組み合わせの群から選択される。別の好ましい態様では、VOCは、VOC1の1つとVOC2の1つとの組み合わせの群から選択される。VOCの態様の選択は、揮発性手段、例えば揮発性化粧品用手段で使用される組成物にとって高度に推奨される。
【0137】
本発明の組成物、好ましくは化粧品組成物、より好ましくは毛髪化粧品組成物の別の態様では、組成物はVOCとしてもっぱらVOC1を含み、ポンプスプレー組成物にも適している。
【0138】
組成物の1つの態様は、水と、エタノール、イソプロパノール、ジメトキシメタン、アセトン、n−プロパノール、n−ブタノール、2−メトキシプロパン−1−オール、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1つのVOCと、本発明のコポリマーとを含んでなり、使用されるコポリマーの量は、100%に相当する組成物の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲である。本発明のコポリマーは中和され、請求項13の工程vii)に記載され、定義されているように中和される。
【0139】
本発明の別の態様は、水および/またはVOCおよびコポリマーを少なくとも含んでなる組成物を提供する。使用されるコポリマーの量は100%に相当する組成物の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲であり、使用されるコポリマーの量はコポリマーAmphomer(登録商標)の3/4以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下である。
【0140】
より改善された形態では、本発明は、水および/またはVOCおよび本発明のコポリマーを少なくとも含んでなる組成物を提供する。使用されるコポリマーの量は100%に相当する組成物の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲であり、使用されるコポリマーの量はコポリマーAmphomer(登録商標)の3/4以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下である。
【0141】
別の態様では、本発明の組成物は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは50〜80重量%の水、VOC、i)油、脂肪、ワックス、ii)ii)とは異なる一価、二価、三価アルコールとC〜C30モノカルボン酸とのエステル、非環式および環式飽和炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコールおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの化粧品に許容されているキャリヤーB)を含んでなる水性組成物である。使用されるコポリマーの量は、100%に相当する組成物の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲である。この態様は、多量の水を含むので、VOC濃度に関する非常に厳しい法律が制定されている米国の州においても許容される組成物を提供する。
【0142】
本発明の非常に好ましい態様では、組成物は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは50〜80重量%の水、VOC、i)油、脂肪、ワックス、ii)ii)とは異なる一価、二価、三価アルコールとC〜C30モノカルボン酸とのエステル、非環式および環式飽和炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコールおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの化粧品に許容されているキャリヤーB)を含んでなる水性組成物である。使用されるコポリマーの量は、100%に相当する組成物の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲であり、使用されるコポリマーの量は、コポリマーAmphomer(登録商標)の3/4以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下である。
【0143】
上記した4つの態様で使用される最も好ましいコポリマーは、本発明のコポリマーである。使用されるコポリマーが本発明のコポリマーであれば、その量は、Amphomer(登録商標)に対して低減される。従って、その低減された量を溶解するために、より少ないVOCが必要とされる。これにより、より多量の水が使用され、組成物がより環境適合性になる。
【0144】
1つの態様において化粧品に許容されているキャリヤーB)は、油、脂肪およびワックスからなる群から選択される。油、脂肪およびワックスは、Fundamentals and formulations of cosmetics、第2版、Verlag Huethig, ハイデルベルク、第319〜355頁に記載されている構成要素を包含し、それを参照してここに明確に組み込む。
【0145】
具体的には、油は、鉱油;パラフィン油;ワセリン;好ましくは8個より多い炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素、例えば、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカンおよびポリデセン;分岐炭化水素、例えば、水素化ポリイソブテン、スクアランおよびスクアレン、環式炭化水素、例えば、デカヒドロナフタレンシクロパラフィン、動物油および植物油、合成または半合成油、シリコーン油からなる群から選択される。
【0146】
適当なシリコーン油は、直鎖ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、環式シロキサンおよびそれらの混合物である。ポリジメチルシロキサンおよびポリ(メチルフェニルシロキサン)の数平均分子量は、好ましくは約1000〜150000g/molの範囲である。好ましい環式シロキサンは、4員環〜8員環を有する。適当な環式シロキサンは、例えばシクロメチコン(登録商標)の商品名で市販されている。
【0147】
動物油および植物油は、天然油脂、例えば、菜種油、ヒマシ油、大豆油、小麦胚芽油、落花生油、マカダミアナッツ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ゴマ油、ホホバ油、アボカド油、ココアバター、アーモンド油、パーム油、ココナツ油、ブドウ種子油、アザミ油、月見草油、杏仁油、トウゴマ油、タラ肝油、ラード、鯨蝋、鯨脳油、鯨油からなる群から選択される。動物油および植物油は、多くの場合アロマ成分または香油として使用される低揮発性精油からも選択される。具体的には、精油は、セージ油、クラリーセージ油、カモミール油、丁子油、メリッサ油、ミント油、ユーカリ油、シナモン葉油、リンデン花油、ジュニパーベリー油、ベチベル油、オリバナム油、ガルバヌム油、ラボラナム(labolanum)油、ローズヒップ油、ベルガモット油、レモン油、マンダリン油、オレンジ油およびラバンジン油からなる群から選択される。
【0148】
半合成油は、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレンフォルテ(boisambrene forte)、アンブロキサン、インドール、へジオン、サンデリス(sandelice)、アリルアミルグリコレート、シクロベルタル、□−ダマスコン、ゼラニウム油バーボン、シクロヘキシルサリチレート、ヴェルトフィックスセウール、イソ−E−スーパー、Fixolide NP、エベルニル、イラルデインガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラト(romillat)、イロチルおよびフロラマト(floramat)からなる群から選択される。
【0149】
脂肪はまた、記載した化粧品に許容されているキャリヤーB)に含まれていると理解される。脂肪は、レシチンおよび脂肪酸トリグリセリド、即ち、8〜24個、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐および/または非分岐アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルの群を包含する。脂肪酸トリグリセリドの1つの供給源は、前記した動物油および植物油を包含する合成、半合成または天然油である。
【0150】
脂肪は、化学修飾脂肪、例えば水素化植物油、例えば水素化ヒマシ油および/または水素化ココナツ脂肪グリセリド、トリグリセリド、例えば水素化ソイグリセリド、トリヒドロキシステアリン、シアバター、尾羽脂も包含する。
【0151】
しばしば使用される脂肪は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。
【0152】
化粧品に許容されているキャリヤーB)のワックスは、20℃で固体または脆弱であり、混練の影響を受けやすく、粗いまたは密な粒状構造を有する化合物である。その外観は、半透明または不透明であるがガラス質ではない。ワックスは、40℃を超えると分解を伴わずに溶融し、40℃より少し高い温度では液体で僅かに粘稠である。その粘稠度および溶解度は温度にかなり依存する。化合物は中圧で研磨されやすい。
【0153】
典型的なワックスは、3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐および/または非分岐アルカンカルボン酸と、3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐および/または非分岐アルコールとのエステルを含む群から、並びに芳香族カルボン酸と3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐および/または非分岐アルコールとのエステルの群から選択される。より好ましいものは、C〜C24モノアルコールとC〜C22モノカルボン酸とのエステル、例えば、C20〜C40アルキルステアレート、C20〜C40アルキルヒドロキシステアロイルステアレートである。
【0154】
好ましい態様では、ワックスは、イソノニルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、n−ヘキシルラウレート、2−エチルヘキシルラウレート、n−プロピルミリステート、イソプロピルミリステート、n−プロピルパルミテート、2−エチルヘキシルパルミテート、イソプロピルパルミテート、ヘキサコサニルパルミテート、2−オクチルドデシルパルミテート、オクタコサニルパルミテート、セチルパルミテート、トリアコンタニルパルミテート、ドトリアコンタニルパルミテート、テトラトリアコンタニルパルミテート、n−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、イソプロピルイソステアレート、イソオクチルステアレート、イソノニルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、2−エチルヘキシルイソステアレート、ヘキサコサニルステアレート、オクタコサニルステアレート、トリアコンタニルステアレート、ドトリアコンタニルステアレート、テトラトリアコンタニルステアレート、イソプロピルオレエート、n−デシルオレエート、オレイルオレエート、オレイルエルケート、エルシルオレエート、エルシルエルケート、ジカプリリルカーボネート(Cetiol CC)、ジブチルアジペート、2−エチルヘキシルココエート、ココグリセリド(Myritol 331)、グリコールエステル、例えばブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ジカプリリルエーテル、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、グリコールモンタネート、オクチルドデカノール、イソエイコサン、C10〜C15アルキルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、C〜C10サリチレート、例えばオクチルサリチレート、C10〜C15アルキルラクテートまたはそれらの混合物からなる群から選択される
【0155】
別の好ましい態様では、ワックスは、C12〜C15アルキルベンゾエートと2−エチルヘキシルイソステアレートとの混合物、C12〜C15アルキルベンゾエートと2−エチルヘキシルイソステアレートとイソトリデシルイソノナノエートとの混合物、C12〜C15アルキルベンゾエートとイソトリデシルイソノナノエートとの混合物、C12〜C15アルキルベンゾエートと2−エチルヘキシルイソステアレートとイソトリデシルイソノナノエートとの混合物、オクチルドデカノールとジカプリリルエーテルとジカプリリルカーボネートとココグリセリドとの混合物、C12〜C15アルキルベンゾエートとブチレングリコールジカプリレート/ジカプレートとの混合物からなる群から選択される。
【0156】
化粧品に許容されているキャリヤーB)において使用される植物性ワックス、動物性ワックス、ミネラルワックスおよび石油化学ワックスからなる群から選択される好ましいワックスは、蜜蝋、ベリーワックス、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、セレシン、コルク蝋、アフリカハネガヤ蝋、グアルマ蝋、木蝋、ホホバワックス、ラノリン(羊毛脂)、マイクロワックス、モンタン蝋、オウリカリワックス、オゾケライト(地蝋)、パラフィンワックス、米胚芽油ワックス、セラック蝋、鯨蝋、サトウキビ蝋、および前記化合物の混合物である。
【0157】
化粧品に許容されているキャリヤーB)のワックスは、化学修飾ワックスおよび合成ワックス、例えばSyncrowax(登録商標)HRC(グリセリルトリベヘネート)、Syncrowax(登録商標)AW 1 C(C18〜C36脂肪酸)およびモンタンエステルワックス、サソールワックス、水素化ホホバワックス、合成または修飾蜜蝋(例えば、ジメチコンコポリオール蜜蝋および/またはC30〜C50アルキル蜜蝋)、セチルリシノレエート、例えばTegosoft(登録商標)CR、ポリアルキレンワックス、ポリエチレングリコールワックスからも選択される。
【0158】
化粧品に許容されているキャリヤーB)は少なくとも1つの脂肪酸も包含し、これは、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸からなる群から、およびそれらの飽和、不飽和および置換修飾品から選択される。
【0159】
別の態様では、キャリヤーB)は、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、2−ブチルオクタノール(例えばIsofol(登録商標)12(Condea)のような市販品)、2−ヘキシルデカノール(例えばIsofol(登録商標)16(Condea)のような市販品)からなる群から選択される少なくとも1つの脂肪アルコールである。
【0160】
本発明の更なる対象は、ヘアスタイリング手段および/またはヘアコンディショニング手段における;ボディケア製品における;構造物材料におけるレオロジー改質剤またはカプセル化手段としての;農業用組成物または植物保護組成物における乳化手段または適用量決定手段としての、本発明のコポリマーまたは本発明の組成物の使用に関する。
【0161】
本明細書において「ヘアスタイリング手段および/またはヘアコンディショニング手段」とは、ヘアスタイルを整えるまたは成形するために適用されるあらゆる手段を意味する。そのような手段は、ヘアスプレー、液状ジェルを含むヘアスタイリングおよび/またはヘアコンディショニング用ジェル、フォームジェルおよび揮発性ジェル、乾いたまたは濡れた毛髪に適用されるフォーム、毛髪または頭皮をトリートメントするためのクリーム、ヘアスタイルおよび/または頭皮に塗り込まれて適用されるエマルションまたは懸濁液、同様の目的のためのローション、異なった粘度のラティス(lattice)、およびペーストを包含する。そのようなヘアスタイリングまたはヘアコンディショニング手段における本発明のコポリマーまたは本発明の組成物の使用は、そのような各手段に本発明のコポリマーまたは本発明の組成物を添加すること、または本発明のコポリマーまたは組成物を含有するそのような手段を調製すること、およびそのようにして得た手段をヘアスタイルに適用することと理解される。
【0162】
ボディケア製品は、先に記載された、しかしながらボディケアに使用されることが決められている液状、固体状または気体状のもの或いはスプレー可能なものを包含する。化粧品に許容されているキャリヤーB)に関してこれらの組成物は全て、身体への適当な使用に適用される。先に記載した態様以外の例は、日焼け止めジェルおよびローション、シャワージェルおよびリフレッシュ用ジェルである。
【0163】
レオロジー改質剤としての本発明のコポリマーまたはその組成物の使用は、巨視的に考慮するのかまたは微視的に考慮するのかに応じてより硬質またはより軟質にするために本発明のコポリマーまたはその組成物とキャリヤーとを混合することを意味する。これは特に、構造物材料、例えば、コンクリート、モルタル、しっくい、構造物フォーム、接着剤、ビチューメンおよび糊に有用である。そのようなコポリマーまたは組成物は、温度が変化しても物質の状態が維持され、突然かつ相当な変化の後にだけ別の状態となるように、構造物材料をカプセル化するためにも適用される。
【0164】
本発明のコポリマーは、農業用組成物における適用量決定手段として使用するのにも適している。これは、コポリマーがその構造の故に、種子、肥料または栄養分を固定し、本発明のコポリマーまたはコポリマーフィルムから形成されたケージ様またはカプセル様構造からのもっぱら緩慢な放出を可能にすることを意味する。これと同様に、本発明のコポリマーは、上記した肥料、種子または栄養分が様々な極性の液状キャリヤーに均一に分散されることが必要とされる乳化手段として使用される。植物保護組成物における本発明のコポリマーおよびその組成物の使用とは、本発明のコポリマーまたは組成物で作られた保護層またはシールドを種子または植物全体に付与することと理解される。別の態様では、本発明のコポリマーまたはその組成物は、農薬が所定の時間かけて放出されるよう調節するためのカバーまたはケースであると理解される。
【0165】
本発明の更なる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲および後述の態様および図面
に由来する。
【0166】
図1は、噴射剤が添加されたポリマー溶液試料の外観を示す。
図2aは、白色人種の未処理の毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2bは、Amphomer(登録商標)で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2cは、比較例V3またはV4に記載されているコポリマーを含んでなる組成物で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2dは、本発明のコポリマーを含んでなる組成物で処理された毛髪の顕微鏡観察による表面構造を示す。
図2eは、図2a〜2dを集めたものである。
【実施例】
【0167】
コポリマーの調製:
典型的な本発明のコポリマーの調製は、後述の表1の実施例1に記載されており、イソプロパノール/水混合物中の溶液重合によって実施した。
【0168】
フィード1:
640gの1−ビニル−2−ピロリドン
296gのN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド
71gのメタクリル酸
フィード2:
948gのtert−ブチルアクリレート
296gのN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド
1185gのn−ブチルアクリレート
フィード3:
エタノール300g中2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.5g
フィード4:
エタノール500g中、Trigonox(登録商標)101(Akzo Nobel社製)の商品名を有する2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサン)7.5g
フィード5:
104gのリン酸(イソプロパノール中50%w/v)
【0169】
フィード1の1/5即ち201.4g、フィード2の1/13即ち104.8g、フィード3の1/15.125即ち20g、および1:1v/vの比を有するイソプロパノール/水混合物300gを、還流冷却器とフィード1〜3のための3つの別個の入口とを備えた撹拌手段に導入し、混合物を撹拌しながら75℃に加熱した。共重合が開始した時点で(これは混合物粘度の初期上昇から分かる)、手段の内部温度を80℃まで上昇させながら、フィード1の残余を1時間以内に添加し、フィード2の残余を4時間以内に添加し、フィード3の残余を5時間以内に添加した。フィードが完了すると、前記温度で更に2時間共重合を継続した。
【0170】
次いで、フィード4を2時間以内に添加し、残留モノマー量を低減するために固有圧力下130℃で更に10時間、更なる共重合を実施した。(別の態様では、水およびリン酸を混合物に添加し、次いで100℃まで加熱することにより残留モノマーを低減した。リン酸は、pHが4.5〜5.5に達する様な量で添加した。これは、使用されるN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドの中和度が80〜120mol%となることに相当する。)その後、蒸気蒸留を実施した。
【0171】
混合物が冷却した時点で、フィード5を用いて混合物を中和した。フィード5は、連続的に撹拌しながら30分以内に添加した。
【0172】
本発明のコポリマーの水性(微)分散体を生成するために、このようにして得たコポリマー溶液に更なる水を添加し、その後イソプロパノールを留去することができる。本発明のコポリマーの粉状態様は、噴霧乾燥または凍結乾燥によって得られる。
【0173】
本発明のコポリマーはまた、特に後述の表1に示されている必要なモノマーおよび量に関して予め定めた手順によって得られる。
【0174】
本発明の化粧品組成物の調製:
そのような本発明の組成物の中で典型的な本発明の化粧品組成物は、以下のように調製される:本発明のコポリマーを必要量のエタノールに溶解して5重量%溶液を得る。従って、コポリマー溶液自体も本発明の組成物であると理解される。
【0175】
コポリマー溶液の特徴を5人の試験調査団によってモニターした。彼らは、レオロジーまたは化粧品組成物の外観、均一性および色を評価した。
【0176】
外観を、澄明(1)、ほぼ澄明(2)、曇り(3)または濁り(4)として評価した。
【0177】
コポリマーフィルムとしてガラス板上で乾燥させたコポリマー溶液の均一性を、5人の試験調査団が調べて1〜4の尺度で評価した。
1=非常に均一なフィルム、封入物なし
2=極めて小規模な不規則を伴った均一なフィルム
3=既に多少の異常を示す均一なフィルム
4=不規則な構造、ほぼ非連続のフィルム
【0178】
噴射剤との適合性は、図1に示されているように、本発明のポリマーを含有する溶液に噴射剤ガスを適用し、それを参考試料と比べることにより評価した。選択した溶液、およびそれに含まれている本発明のポリマーの濃度は、本発明のコポリマーおよび参考試料について同じであった。同様に、使用した噴射剤ガスのタイプおよび圧力も同じであった。以下のように適合性を評価した。
1=優れた適合性、溶液は澄明かつ流動性のままであった。図1の左の瓶を参照。
2=良好な適合性、溶液は幾分濁ったが流動性であった。図1の左から2番目の瓶を参照。
3=中程度に適合性、溶液は濁って流動性が低かった。図1の左から3番面の瓶を参照。
4=乏しい適合性、溶液は不透明で高い粘度を有していた。図1の右の瓶を参照。
【0179】
コポリマー溶液で処理した毛髪束の剛化効果の評価:
約23cmの長さを有する毛髪束に1gのコポリマー溶液を適用し、毛髪束の方向に指で広げた。毛髪束を室温で一晩乾かし、翌日5人の試験調査団がそれを評価した。結果は、以下のように分類した。
1=非常に良好な剛化効果
2=良好な剛化効果
3=まだ良好な剛化効果
4=乏しい剛化効果
【0180】
以下のように水洗性を評価した。本発明の各コポリマー溶液で処理した毛髪束を、37℃のTexapon-NSO(CAS:68891-38-3)含有溶液に浸漬して15秒間絞ることにより洗浄した。これを5回繰り返した。次いで、毛髪束を水道水で15秒間濯いだ。この浸漬、絞りおよび濯ぎを1回繰り返した。その後、毛髪束を濾紙で絞り、一晩乾かした。翌日、水洗性を評価した。5人の試験調査団によって評価されたパラメーターは、櫛通り、べたつく傾向、握ったときの感覚、および組成物残渣量である。
【0181】
得られた結果は以下のように分類した。
非常に良好(1):全パラメーターが優良
良好(2):4つのパラメーターの少なくとも3つが優良
まだ良好(3):パラメーターの2つが優良
不良(4):上記基準を満たさず
【0182】
本発明のヘアスタイリング組成物で処理された毛髪束の曲げ強度Btの測定:
長さ24cmの乾燥毛髪束を秤量した。その3gを、予め調製しておいたコポリマー溶液に浸漬し、取り出し、過剰の溶液をストリップした。毛髪束に溶液が均一に分配されるように、浸漬、取り出し、およびストリップを3回実施した。
【0183】
過剰な溶液の最後のストリップは、親指と人差し指を用いて行った。溶液の更なる除去は、毛髪束の重量が(毛髪束の初期重量に対して)1〜1.4g増加するように、濾紙の間に毛髪束を挟むことにより実施した。このようにして得た毛髪束を、円形断面を有するように整え、20℃および65%相対湿度の人工気候室に一晩投入した。
【0184】
上記気候条件を有する人工気候室において引張圧縮分析装置(Easytest 86 8002, Fa. Frank)を用いて、調製した毛髪束の分析を実施した。試料ホルダーの2つの円筒状ロール上に対称に毛髪束を配置した。円筒状ロールは4mmの直径を有しており、9cmの間隔を空けて互いに分離されていた。毛髪束のちょうど中央部の上側から近づけた円形スタンプによって毛髪束を40mm曲げ、毛髪束上に形成されたコポリマーフィルムを破砕した。そのために要した力(単位:cN)を、ロードセルで測定した。
【0185】
微細構造、フレーク化:
毛髪束を電子顕微鏡(光学顕微鏡)で分析した。得られた結果は、以下のように分類した。
塊状/不格好:毛髪上に嵩高コポリマー凝集体が生成
フレーク状:毛髪表面または毛髪外皮上にコポリマーフレークが発現
規則的:処理された毛髪の表面微細構造を維持できる毛髪上の微分散コポリマーフィルム
【0186】
【表1】
【0187】
MMA:メチルメタクリレート
OAM:オクチルアクリルアミド
tBAEMA:2−(tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート
AS:アクリル酸
HPMA:ヒドロキシプロピルメタクリレート
TBA:tert−ブチルアクリレート
VP:1−ビニル−2−ピロリドン
DMAPAM:N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド
DMAPMAM:N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド
MAS:メタクリル酸
nBA:n−ブチルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
EA:エチルアクリレート
シロキサン:エトキシル化ポリシロキサン(Belsil(登録商標)DMC 6031、Wacker Chemie GmbH)、INCI名:PEG/PPG-25/25 Dimethicone、即ち平均25モルのエチレンオキシドおよび25モルのプロピレンオキシドを有するジメチコンアルコキシル化誘導体(q.v.)
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【0190】
本発明のコポリマーの本発明の組成物において典型的に使用された全溶媒(水および/またはVOC)は組成物に澄明な外観をもたらし、これは、表2の第2欄から分かる。この結果は、先に記載したように本発明のコポリマーのエタノール溶液を用いて得られた。この結果が、比較実験の結果より良好または少なくとも同等であることが分かる。比較例V4の結果はかなり劣ることが分かる。メタノールまたはイソプロパノールを用いた場合も同様の結果が得られた。
【0191】
本発明の全てのコポリマーは、ガラス板上に非常に規則的なフィルムを形成する傾向を示した(表2の第3欄参照)。例示したコポリマーの1つを除く全てについて封入物を含まない極めて均一なフィルムが得られ、その1つは極めて小規模な不規則を伴った均一なフィルムをもたらした。このように、比較例の要件は容易に満たされ、一部の例ではより優れた結果さえ得られた。
【0192】
別の極めて重要なことは、本発明の組成物の噴射剤に対する適合性である。そのような適合性の目に見える印象は図1に示されており、特に透明容器において、または黒髪について、図1の右側の瓶に見られる組成物は許容できないことが分かる。表2の第4欄は、各加圧溶液が澄明かつ流動性なままであることから、例示したコポリマーの全てが極めて優れていることを示している。これは、比較例の一部と少なくとも同等であるが、ほとんどははるかに優れていることを示している。これに関して、比較例V4はかなり悪い結果を示した。
【0193】
本発明の組成物のヘアスタイル剛化能は良好または非常に良好であり、比較例V3より優れていた(表2の第5欄参照)。
【0194】
その水洗性は、比較例V1〜V4の1つより良好または少なくとも同等であることが分かった。これにより、暴風雨または雨天であっても長時間のスタイリングおよびコンディショニング効果は確保される。
【0195】
その曲げ強度は、ヘアスタイル上に形成されたコポリマーフィルムまたは化粧品組成物(例えばクリーム)内のコポリマー層の剛性または可撓性をモニターするための手段をもたらす。その値が高いほど、フィルムまたは層は、その部分的または全体的な破砕を伴わずにより曲げられる。従って、フィルムまたは層により処理された表面または化粧品組成物またはヘアスタイルが、機械的にもたらされる損傷から保護されるので、この値が高いことが非常に好ましい。表2の第7欄は、例示した化粧品組成物の全てが比較例より優れていることを示している。
【0196】
表3の第2欄における可塑性については、一部の実施例および比較例の値しか記録または入手しなかった。しかしながら、これらのデータの不完全さにもかかわらず、本発明の組成物について得られた結果が比較例と比べて10倍以上大きいことが分かる。
【0197】
同様に、本発明の化粧品組成物から形成されるフィルムまたは表面の弾性は、ほとんどが比較例より約20%以上高く、少なくとも比較例と同等であった。
【0198】
ケラチン表面(例えば毛髪)または皮膚上に均一で規則的で薄いコポリマーフィルムを形成するための1つの前提条件は、対象の表面上に各化粧品組成物を良好に広げることである。これは、エマルションまたは噴霧スプレーにおいて小滴を形成することによって確保される。しかしながら、この滴径は、化粧品組成物、特にそれに含まれる本発明のコポリマーに依存する。これに関して、33および41の粒度を有する滴を形成する本発明の組成物は比較例より優れており、実施例2のみが比較例3よりやや大きい粒度または滴径を示した(表3の第4欄参照)。
【0199】
本願発明において、黒髪で容易に観察されるフレーク化を回避することは極めて重要である。同様に、処理された毛髪、ケラチン表面または皮膚の塊状または不格好な外観は、毛髪、ケラチン表面または皮膚に滑らかな光沢のある、べたつかない感触、および塊状または不格好なコポリマー凝集体により妨げられない良好な外観をもたらすことを妨げるので、回避されなければならない。これに関して、本発明の組成物の能力を確かめるために、LM顕微鏡写真を記録した(図2a〜2e参照)。
【0200】
図2aは、白色人種の未処理の毛髪のLM顕微鏡写真である。ケラチンブロックの正常かつ良好な層状スレート屋根構造が見られる。
【0201】
図2bは、先行技術の化粧品組成物として市販コポリマーAmphomer(登録商標)(CAS番号:70801-07-9)のエタノール溶液を前記した白色人種の毛髪に適用した場合のLM顕微鏡写真である。この図の右部分から、不格好なポリマー凝集体が未処理の毛髪のスレート屋根構造を完全に覆っていることが分かる。そのような不均一なポリマー分配は、べたつく感覚およびヘアスタイルの曖昧で光沢のない外観をもたらす。スタイリングは有効なものではなく、従って、同等のスタイリング効果を得るためには、より多量の化粧品組成物、特にポリマーが必要とされる。更に、そのような顕微鏡観察による巨大な凝集体は、機械的応力に起因して少なくとも部分的に分解する傾向があり、これは少なくともある程度のフレーク化をまねく。
【0202】
図2cは、比較例V3またはV4のコポリマーを含んでなる組成物で白色人種の未処理の毛髪を処理した場合のLM顕微鏡写真である。そのようなポリマーを含んでなる組成物が未処理の毛髪のスレート屋根構造を維持できることは注目に値する。しかしながら、多量のフレークが観察され、これにより、特に黒髪のヒトはこの化粧品組成物の使用を幾分不快に感じる。これはなお改善されるべき点である。
【0203】
図2dは、本発明のコポリマーの化粧品組成物で処理した毛髪束のLM顕微鏡写真である。図2cと同様に、未処理の毛髪のスレート屋根構造は適当に維持されている。しかしながらこれは、有害なフレーク化現象を伴わずに実現されている。従って、新規に開発された本発明のコポリマーを含んでなる化粧品組成物は、大勢の黒髪のヒトにとっても容易に許容できるものである。
【0204】
これらの結果は、図2a〜2cをまとめた図2eからも分かる。また、表3の第5欄にも示す。
【0205】
本発明の別の重要な態様は、スタイリング目的で使用されるコポリマーのコストに関して先行技術を改善することである。表3の第6欄は、同じスタイリング結果を得るため1回あたりに必要とされるコポリマーの量が本発明の態様について激減したことを示す。本発明の態様を使用する場合、比較例で必要とされる量の最大3/4、最善では1/3しか必要とされない。
【0206】
本発明がレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマー、その製造方法、その組成物、前記組成物の製造方法に関することが分かる。また本発明の範囲では、コポリマーまたはその組成物の使用も選択される。コポリマーは、a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでなり、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達する。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)a)モノマーAとしての、分岐アクリル酸エステルである第一アクリル酸エステル;
b)モノマーBとしての、直鎖アクリル酸エステルである少なくとも1つの更なるアクリル酸エステル;
c)モノマーCとしての環式N−ビニルアミド;
d)モノマーDであり、ラジカル重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つのカチオン性および/またはカチオノゲン性基を有する少なくとも1つの化合物;
e)モノマーEとしての少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸
を含んでなるレオロジーまたは化粧品組成物のためのコポリマーであって、重合状態のモノマーBは24℃以下のガラス転移温度を有し、モノマーAの重量の最大3分の1に達するコポリマー。
(2)モノマーAは第二級または第三級アルコールに、好ましくは第三級アルコールに由来するエステル部分を有する、(1)に記載のコポリマー。
(3)モノマーBは、COO-C1〜C14アルキルからなる、好ましくはCOO-C2〜C14アルキルからなる、より好ましくはCOO-C2〜C12アルキルからなる、特に好ましくはCOO-C4〜C12アルキルからなる群から選択されるエステル部分を有する、(1)または(2)に記載のコポリマー。
(4)総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、モノマーBおよびモノマーEの和は総コポリマー重量の20重量%を超えない、好ましくは最大18重量%、より好ましくは最大13重量%、最も好ましくは最大8重量%である、(1)〜(3)のいずれかに記載のコポリマー。
(5)モノマーCはN−ビニルピロリドンである、(1)〜(4)のいずれかに記載のコポリマー。
(6)モノマーDは非四級化化合物、好ましくは非四級化アクリルアミドまたは非四級化メタクリルアミドである、(1)〜(5)のいずれかに記載のコポリマー。
(7)モノマーEは170℃以上、好ましくは190℃以上のガラス転移温度Tgを有する、(1)〜(6)のいずれかに記載のコポリマー。
(8)非中性化および非四級化状態で負の正味電荷を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載のコポリマー。
(9)負の正味電荷は5より小さい、好ましくは4より小さい、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2〜3である、(8)に記載のコポリマー。
(10)総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、モノマーCおよびモノマーDの和は総コポリマー重量の45重量%〜75重量%、好ましくは47重量%〜75重量%、より好ましくは50重量%〜70重量%、より好ましくは50重量%〜65重量%、より好ましくは52重量%〜65重量%、最も好ましくは52重量%〜60重量%の範囲である、(1)〜(9)のいずれかに記載のコポリマー。
(11)総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、モノマーDはモノマーEに対して過剰の重量で用い、この重量過剰は少なくともモノマーEの重量の3.5倍、好ましくはモノマーEの重量の5倍、より好ましくはモノマーEの重量の7倍、より好ましくはモノマーEの重量の8倍、最も好ましくはモノマーEの重量の25/3倍である、(1)〜(10)のいずれかに記載のコポリマー。
(12)総コポリマー重量はモノマーA〜Eの重量の和であり、100重量%に相当することを条件に、
・30〜50重量%のモノマーA;
・3〜20重量%のモノマーB;
・15〜35重量%のモノマーC;
・15〜30重量%のモノマーD;
・0.1〜10重量%のモノマーE
を含んでなる、(1)〜(11)のいずれかに記載のコポリマー。
(13)i)モノマーC、モノマーDおよびモノマーEの混合物2〜60重量%を含有する水溶液を調製する工程;
ii)モノマーA、モノマーBおよびモノマーDの混合物2〜60重量%を含有する水溶液を調製する工程;
iii)一定量の工程i)の水溶液に一定量の工程ii)の水溶液を添加する工程;
iv)一定量の開始剤Yの溶液を添加する工程;
v)工程i)〜iv)から得た混合物を60℃〜120℃の範囲の温度に加熱する工程;
vi)撹拌しながら工程i)、ii)およびiv)の水溶液の残余を添加する工程;
vii)冷却後に混合物を中和する工程;
viii)70〜120℃の範囲の温度で溶媒をストリップオフする工程
を含む、溶液中での重合による、(1)〜(12)のいずれかに記載のコポリマーの製造方法。
(14)・水および/または
・VOC(揮発性有機化合物)
・および(1)〜(12)のいずれかに記載のコポリマー
を少なくとも含んでなる組成物であって、使用されるコポリマーの量は、組成物の総重量に対して0.001〜50重量%、好ましくは0.005〜30重量%、より好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、最も好ましくは0.1〜15重量%の範囲であり、総重量は100%に相当する、組成物。
(15)・ヘアスタイリング手段および/またはヘアコンディショニング手段における、
・ボディケア製品における、
・構造物材料におけるレオロジー改質剤またはカプセル化手段としての、
・農業用組成物または植物保護組成物における乳化手段または適用量決定手段としての、
(1)〜(12)のいずれかに記載のコポリマーまたは(14)に記載の組成物の使用。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e