特許第6395721号(P6395721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395721固着用途用エポキシ系コンパウンド、その使用及び特定成分の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395721
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】固着用途用エポキシ系コンパウンド、その使用及び特定成分の使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20180913BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20180913BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C08G59/50
   C09J11/06
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-546891(P2015-546891)
(86)(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-508162(P2016-508162A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2013003655
(87)【国際公開番号】WO2014090382
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】102012112053.6
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン グリューン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュレンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァイネルト
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0172493(US,A1)
【文献】 特開2008−088348(JP,A)
【文献】 特開2011−006499(JP,A)
【文献】 特開昭57−195119(JP,A)
【文献】 万雄衛他,甲基環戌二安的曼尼希改性研究,中国膠粘剤,2012年,第21巻第5期,第61−62頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C08G 59/50
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固着用途用の硬化性コンパウンドとしての、アンカー要素の固着のための多成分系キットの形態での組成物の使用であって、前記組成物が、硬化性エポキシドを含有するエポキシ成分(a)と硬化剤成分(b)とを含み、前記硬化剤成分(b)が、以下:
(i)1種以上の特定のアミン類とフェノール類とアルデヒド類との反応下に得られるマンニッヒ塩基調合物であって、ここで、前記特定のアミン類は、式
【化1】
[式中、
「CYC」は、3〜12個の環原子を有する単環式飽和環、又は6〜12個の環原子を有する縮合二環式飽和環系を表し、その際、前記環原子はそれぞれ、0〜2個の窒素原子、0〜1個の酸素原子及び0〜1個の硫黄原子、そして炭素原子から選択され;
Xは、CH2を表し、その際、1つの基−[X]n−NH2につき1つのXが、NH、O又はSを表すことができるが、但し、
当該基−[X]n−NH2において、ある1つのXがO又はSである場合には、nは少なくとも2であり、かつこのO又はSは窒素原子に直接結合しておらず、
ある1つのXがNHである場合には、nは少なくとも2であり、かつこのX、つまりNHは、窒素環原子に直接結合しておらず、また当該基−[X]n−NH2中に存在する窒素原子にも直接結合しておらず;
nは、0〜5を表すが、但し、少なくとも前記基−[X]n−NH2のうちの1つにおいて、nは1〜5を表し;かつ
mは、2以上の正の整数を表す]
のアミン類又はその塩であるか、あるいは4−(2−アミノエチル)ピペラジンであるものとする、
及び/又は
(ii)スチレン化フェノール類と1種以上の低分子アミン類との混合物
を含んでおり、その際、前記低分子アミン類は、ジアミン又はポリアミン又はそれらの塩であるものとし、ここで、前記ジアミン又はポリアミンは、(i)に示されている式のアミン類であるか、又はキシリレンジアミン、脂肪族ポリアミン、式H2N−(CH2i−NH−[(CH2j−NH]k−(CH2l−NH2のオリゴマージアミン[式中、i、j及びlは、それぞれ独立して2〜4を表し、かつkは、0、1又は2を表す]、脂環式アミン、又はそれら2種以上の混合物であるものとする、
前記組成物の1種以上の成分において、充填材が存在するものとし、
前記組成物の成分を混合し、母材の表面凹部に挿入し、かつ同時に又は引き続き前記アンカー要素を挿入することを特徴とする、前記使用
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、表面凹部がボアホールであり、かつ(i)において、mが2〜3である、前記使用。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使用であって、(ii)において、前記1種以上の低分子アミン類が、請求項1において(i)に示されている式のアミン類である、前記使用。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の使用であって、(ii)において、前記1種以上の低分子アミン類が、キシリレンジアミン、又は式H2N−(CH2i−NH−[(CH2j−NH]k−(CH2l−NH2のオリゴマージアミン[式中、i、j及びlは、それぞれ独立して2〜4を表し、かつkは、0、1又は2を表す];又はそれらの混合物である、前記使用。
【請求項5】
請求項1に記載の使用であって、(ii)において、前記1種以上の低分子アミン類が、m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、トリエチレンテトラアミン及びイソホロンジアミン又はそれら2種以上の混合物から選択される、前記使用
【請求項6】
請求項5に記載の使用であって、(ii)において、前記1種以上の低分子アミン類が、BAC及びm−キシリレンジアミン又はそれらの混合物から選択される、前記使用。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の使用であって、(i)において、前記1種以上の特定のアミン類が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、4−(2−アミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(3−アミノ−n−プロピル)ピペラジン及びそれら2種以上の混合物から選択される、前記使用
【請求項8】
請求項7に記載の使用であって、(i)において、前記特定のアミン類がBACである、前記使用。
【請求項9】
ボアホール用コンパウンドとしての、請求項1からまでのいずれか1項に記載の使用
【請求項10】
請求項1、2、7又は8に記載の使用であって、(i)において、前記マンニッヒ塩基の製造の際に、フェノール類としてスチレン化フェノール又はフェノールが使用され、かつ、アルデヒド類としてホルムアルデヒド又はその前駆体が使用される、前記使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用であって、遊離フェノールの含有率が1質量%未満である、前記使用。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物が、二成分系キットの形態であり、その際、少なくとも1種のエポキシ成分(a)と硬化剤成分(b)とが、1つの共通のパッケージにおいて、1つの容器内の異なる区画内に、又は複数の容器内に収容されている、前記使用
【請求項13】
請求項12に記載の使用であって、前記成分(a)対前記成分(b)の質量比が3:1〜1:1であることを特徴とする、前記使用
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用であって、(i)において、充填される前記成分(b)の総質量に対する前記マンニッヒ塩基の割合が、30〜75質量%の割合であることを特徴とする、前記使用
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用であって、(ii)において、充填される前記成分(b)の総質量に対するスチレン化フェノール類と低分子アミン類とからの前記混合物の割合が、30〜75質量%の割合であることを特徴とする、前記使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固着用途用の硬化性コンパウンド用組成物であって、硬化性エポキシドを含有するエポキシ成分(a)と硬化剤成分(b)とを含む組成物において、前記硬化剤成分(b)が、特定のアミン類の反応下に得られるマンニッヒ塩基調合物及び/又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物を含む前記組成物;新規のマンニッヒ塩基調合物、又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類との新規の混合物、並びに、特にエポキシ樹脂用硬化剤成分における、前記マンニッヒ塩基調合物及び/又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類とその都度特にさらなる添加剤との前記混合物の使用に関する。
【0002】
エポキシ系の硬化性多(例えば二)成分系コンパウンドは、基本的に公知である。前記コンパウンドは、例えば塗料やコーティングの製造に、また成形用コンパウンド等として使用可能である。
【0003】
例えばアンカーボルトのようなアンカー手段を固着させるための防御工事の分野においても、エポキシ樹脂とアミン硬化剤をベースとするレジンモルタルコンパウンドが知られている。
【0004】
法規制によって、固着分野における、特に土木建築におけるエポキシ樹脂用硬化剤の調合に使用可能なアミン類はますます少なくなってきている。残留アミン類によって、完成製品において達成されるべき所望の特性(高い接合応力、高い引抜値、急速な硬化、高い耐熱性、低温時硬化性、湿潤した母材(例えば湿潤したコンクリート)における使用のための耐水性、化学的耐久性など)を調整する余地がごく僅か乃至は不十分にしか許容されなくなることが往々にしてある。
【0005】
従って、新規の成分、特に新規のアミン成分を硬化剤として提供することにより、特に、高い接合応力を達成し、さらには上述の残りの特性のうち1つ以上を向上させることが、目指すべき課題としてなおも課されている。
【0006】
従って本発明の課題は、従来公知であるエポキシ樹脂に対して有利な特性、特に公知のコンパウンドに対して改善された特性として上述した特性のうち1つ以上、特に高い引抜値及び高い接合応力を、特に高められた温度であっても可能にする、特に土木建築における固着用途用の新規のエポキシ樹脂を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、前記課題は、アミン硬化剤として特定のマンニッヒ塩基調合物を使用することにより解決され、ここで、このマンニッヒ塩基調合物は極めて特定のアミン類の使用下に製造可能であるものとし;かつ/又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物の使用により解決されうることが見出された。
【0008】
本発明により使用すべき「特定のアミン類」とは、特に、脂環式又は複素脂環式ジ−又はポリアミンであり、ここで、少なくとも1つの、しかしより好ましくは全てのアミノ基が、直接ではなくリンカーを介して1つ以上の原子(炭素原子及び/又はヘテロ原子)の距離を介して脂環式又は複素脂環式の核に結合しているものとする。
【0009】
この説明に拘束されることを望むものではないが、より良好な反応性を可能にしうる短鎖状/それほど極端に長くはない鎖状のリンカー分子部分と、安定な、多少なりとも硬質の構造に寄与するアミン分子の環式成分とを組み合わせることによるさらなる運動の自由性が、見出された利点に、例えば特に良好な接合応力に寄与しているものと考えられる。
【0010】
本発明により使用可能な「特定のアミン類」とは、特に、式
【化1】
[式中、
「CYC」は、3〜12個の環原子を有する単環式飽和環、又は6〜12個の環原子を有する縮合二環式−若しくは(さらに)多環式飽和環系を表し、その際、前記環原子はそれぞれ、0〜3個の窒素原子、0〜3個の酸素原子及び0〜1個の硫黄原子、そして炭素原子から選択され;
Xは、CH2を表し、その際、1つの基−[X]n−NH2につき1つのXが、NH、O又はSを表すことができるが、但し、
XがO又はSである場合には、nは少なくとも2であり、かつこのO又はSは基−[X]n−NH2中に存在する窒素原子に直接結合しておらず、
XがNHである場合には、nは少なくとも2であり、かつこのX、つまりNHは、窒素環原子に直接結合しておらず、また当該基−[X]n−NH2中に存在する窒素原子にも直接結合しておらず;
nは、0〜5を表すが、但し、少なくとも前記基−[X]n−NH2のうちの1つにおいて、nは1〜5を表し;その際、総じてnは1〜3であり、特にnが1であるのが好ましく;かつ
mは、2以上の正の整数、特に2〜3を表す]
のアミン類又はその塩である。
【0011】
ここで、上述のリンカーのうちの1つが、前記成分[X]nである。
【0012】
このタイプの好ましい化合物は、N,N’−ビス(3−アミノ−n−プロピル)−ピペラジン(BAPP)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)またさらにはN−(2−アミノエチル)ピペラジン(AEP)又は3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン=IPDA)である。
【0013】
特に好ましいものは、式
【化2】
の1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)である。
【0014】
従来使用されている従来技術からのマンニッヒ塩基調合物であって、上述のパラメータのうち少なくとも1つ、好ましくは2つ、特に全てが異なることによってこの定義に含まれない前記マンニッヒ塩基調合物に対して、本発明により製造可能な多成分系モルタルは、例えば80℃といった比較的高温で硬化させた後であっても明らかに高い接合応力を有するため、この本発明により製造可能な多成分系モルタルはこの温度でもなおも使用可能である。さらに、この本発明により製造可能な多成分系モルタルは、−5℃で硬化させた場合であっても、従来使用されている従来技術からのマンニッヒ塩基調合物を使用して製造されるモルタルと比較して、通常はより良好な、又は少なくとも同等に良好な接合応力を有する。
【0015】
本発明により使用可能なマンニッヒ塩基は、例えばフェノール、ブレンツカテキン、レゾルシン、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシン、ピロガロール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールといったフェノール類、又は例えばビスフェノールFやビスフェノールAといったビスフェノール類、特にフェノール、又は以下に定義されるようなスチレン化フェノール類と、上に定義された「特定のアミン類」と、アルデヒド類、又はアルデヒド類の分解により生じる化合物、とりわけ、例えば特にホルムアルデヒドのような脂肪族アルデヒド類(ここで、この定義には、例えばトリオキサンやパラホルムアルデヒドといった、ホルムアルデヒドの分解により生じる化合物も包含されうる)との反応生成物であり、その際、前記アルデヒド類は、好ましくは水溶液として(特に、例えば50〜90℃といった高められた温度で)添加され、かつ反応が行われる。
【0016】
そのための前記マンニッヒ塩基の製造は、本発明によれば、上で定義された「特定のアミン類」を使用して自体公知の方法により行われてよい。
【0017】
例えば、前記マンニッヒ塩基の製造は、例えば実施例に記載されたアミンを使用して、以下のように実施されてよい(具体的なデータ(「例えば」により示されるもの)は、実施例で使用されるマンニッヒ塩基に関するものである)。
【0018】
アミン(例えば2モル)を、(例えば、温度計、滴下漏斗及び撹拌装置を具備した250ml三ツ口フラスコ内に)装入する。撹拌下に、この装入したアミンを、フェノール又はスチレン化フェノール(例えば1モル)と混合する。これを(例えば80℃に)加熱する。この温度に達したら、(例えば45分以内に)ホルムアルデヒドを、特に強力な撹拌下に滴加する(例えば37%ホルムアルデヒド溶液として、0.7モル)。この添加の終了後に、さらに(例えば105℃に)加熱し、この反応条件を数時間(例えば120分間)保持する。次いで、 −例えば真空度を高めながら− 適した温度(例えば約110℃)で水を留去し、その際、圧力が極めて十分に(例えば50mbarに)低下したらすぐに、温度をさらに(例えば130℃に)高め、その後、しばらくの間(例えば60分間)保持する。得られた生成物が前記マンニッヒ塩基調合物であり、このマンニッヒ塩基調合物はさらに、ベンジルアルコール、さらなる(スチレン化)フェノール、さらなるアミンから選択されるさらなる添加剤を、希釈のために含むことができる。このマンニッヒ塩基調合物全体のこうしたさらなる成分は、このマンニッヒ塩基調合物の質量に対して、最高で15質量%までのベンジルアルコール、最高で30質量%までの遊離フェノール成分(例えばスチレン化フェノールも)、そして最高で75質量%までの遊離アミンであってよい。
【0019】
前記混合物においてスチレン化フェノール類と共に使用可能な「低分子アミン類」(これは、そのままで存在していてもよいし、塩形で存在していてもよい)は、上述の「特定のアミン類」であって、特に好ましいものとして挙げられたものであるか、又は、他の低分子ポリアミン(ここで、「ポリアミン」にはジアミンも含まれる)、特にオリゴマー又はモノマーの脂肪族、脂環式、複素脂環式、芳香族又はアラリファティックジアミン、例えば特にキシリレンジアミン、特にm−キシリレンジアミン(1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、MXDA);脂肪族ポリアミン、例えばC1〜C10−アルカンジ−又は−ポリアミン、例えば1,2−ジアミノエタン、トリメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラアミン;式H2N−(CH2i−NH−[(CH2j−NH]k−(CH2l−NH2のオリゴマージアミン[式中、i、j及びlは、それぞれ独立して2〜4を表し、かつkは、0、1又は2を表す]、特に「トリエチレンテトラミン」(TETA=N,N’−ビス(2−アミノエチル)エチレンジアミン)又はテトラエチレンペンタミン(TEPA);脂環式アミン、例えば1,2−ジアミノシクロヘキサン又はビス(アミノメチル)トリシクロデカン(TCD)又はビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)又はアミン付加物;又はそれらの2種以上の混合物;特に、1種以上のアラリファティックジアミン、特にm−キシリレンジアミンと、1種以上の他のポリアミン、特にBACとの混合物、又は特に、1種以上のアラリファティックジアミン、特にm−キシリレンジアミン自体か、又はBACとm−キシリレンジアミンとの混合物である。
【0020】
驚くべきことに、製造時にフェノール類と「特定のアミン類」との反応が行われるマンニッヒ塩基調合物に代えて、(i)スチレン化フェノール類と(ii)「低分子アミン類」との混合物のみを使用できることが見出された。この場合にも、上述の利点が得られる。前記混合物は、前記成分(i)と(ii)又はこれらとさらなる添加剤とを含む混合物を、現場で初めて混合することによっても製造可能である。さらに、マンニッヒ塩基を有する混合物に対してさらに有利であることが判明した。何故ならば、さらなる措置を行うことなく、より低い粘度を達成しうるためである。
【0021】
スチレン化フェノール類とは、フェノール類(例えばフェノール、ブレンツカテキン、レゾルシン、ヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシン、ピロガロール、o−クレゾール、m−クレゾール又はp−クレゾール、特にフェノール)とスチレン又はスチレン類似体、例えばビニルトルエン、ジビニルベンゼン又は4−ビニルピリジン、特にスチレンとの反応生成物(求電子置換反応生成物)であると解釈されるべきであり、特に、例示的に次式
【化3】
で示される化合物の混合物又は個々の化合物が含まれうる「スチレン化フェノール」自体(スチレンとフェノールとの反応生成物;CAS登録番号61788−44−1);又は2,6−ジスチリルフェノール、またさらにオリゴ−及びポリスチレン化合物部分又は−化合物(フェノール中でのスチレンのカチオン重合から得られたオリゴマー又はポリマー生成物であって、例えば次式
【化4】
[式中、
aは、1以上の整数を表す]
で示されるもの)、又は分岐状生成物 −通常、これは反応の際に生じる複数の生成物(これには、複数箇所で置換された生成物も含まれる)の混合物である− と解釈されるべきである。従って、上記式は場合により例示的に解釈されるべきであり、 −少なくとも全てのものが− 必ずしもそれ自体で存在するわけではない。
【0022】
パラメータは、本発明の範囲内で記載される限り、当業者に公知の方法により以下のように求められる:
圧力及び引張試験用の試験体を製造するために、エポキシ樹脂成分(本発明により使用可能な成分(a)の例)と、相応するマンニッヒ塩基、又はスチレン化フェノールと低分子アミンとの混合物(本発明により使用可能な成分(b)の例)とを、化学量論的に((例えば製造元の指示からの)エポキシ当量値及びH当量により、混合化学量論量を算出する)混合し、室温(約23℃)で24時間硬化させる。ここで、このエポキシ樹脂成分は、実施例ではビスフェノールA/F−ジグリシジルエーテル40質量%と、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル15質量%とポルトランドセメント45質量%とからの混合物である。さらなる添加剤も可能である。
【0023】
圧縮強さを(DIN EN ISO 604により)測定するために、円筒状の試験体を製造する。この試験体は、直径12mm、長さ40mmの寸法を有する。十分に硬化させた後で、この試験体をその主軸と平行に、1mm/分の一定速度で、この試験体が破断するまで、又は応力若しくは長さの減少が所定値に達するまで圧縮する。その過程で、この試験体にかけられた力を測定する。圧縮強さは、圧力試験の間に試験体にかけられた最大圧縮応力である。
【0024】
引張特性(DIN EN ISO 527による引張強さ)を測定するために、DIN EN ISO 527−2 タイプ1BAに従って肩付き片を製造した。試験のために、この試験体を装置にクランプ留めし、その主軸に沿って5mm/分の一定速度で、この試験体が破断するまで引っ張る。この過程で、この試験体にかけられた荷重と長さ変化を測定する。引張強さは、引張試験の間にこの試験体にかけられた最大応力である。
【0025】
ねじボルトM12を用いた引抜試験のために、ETAG 001 PART 5に従って以下の通り行う:
まず、水平に置かれたコンクリート試験体(C20/25型コンクリート)内に、穿孔ハンマー及びハンマードリルを用いてボアホール(直径14mm;深さ72mm)をあける。このボアホールを、ハンドブロワ及びハンドブラシを用いて清掃する。次いで、このボアホールに、ホール底部から手前へ向かって、固着用途用の試験すべきそれぞれの硬化性コンパウンド(マンニッヒ塩基及び/又はスチレン化フェノール類と特定のアミン類との混合物、エポキシ樹脂成分として、ビスフェノールA/F−ジグリシジルエーテル40質量%、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル15質量%及びポルトランドセメント45質量%からの混合物)を3分の2まで充填する。ボアホール1つにつきねじボルトを1つ、手で押込む。モルタルの余剰分をコテで取り除く。室温で24時間(最短硬化時間)経過した後、破壊荷重を測定しながら、破壊するまでこのねじボルトを引っ張る。
【0026】
ここで、粘度の測定を、スピンドル3を備えたブルックフィールド回転粘度計を用いて、23℃で、10〜50rpm、好ましくは10rpmで行う。
【0027】
ガラス転移温度(特に熱形状安定性についての間接的な尺度の一つ)の測定を、24時間硬化させる試験体について、ISO 11357−2に準拠して、動的示差熱分析(DSC)により行う。
【0028】
硬化されたモルタルの高温での可使性についての尺度の一つであるガラス転移温度(この温度を上回ると、ガラス状の固体の材料が、より軟らかいゴム状の材料へと移行する)は本発明により高められ、それにより高温時での可使性をもさらに向上させることができる。
【0029】
硬化された生成物についての許容可能な温度範囲も同様に、種々の温度での処理(例えば、室温での、50℃での及び/又は80℃での24時間硬化)を行った後の引抜試験により決定することができる。
【0030】
「硬化性コンパウンド」という概念に代えて、以下では部分的に「モルタル」という概念も用いる。
【0031】
本発明による混合物は、単一成分系として使用することもでき、また好ましくは多成分系として(特に、硬化剤(=本発明により使用可能なマンニッヒ塩基、又はスチレン化フェノールと低分子アミンとの混合物)を有する成分(b)と、エポキシ化合物を有する成分(a)とは、固着用途での使用前に互いに反応できないように、例えば1つの共通のパッケージにおいて、1つの容器内の異なる区画内に、又は複数の容器内に分かれている)、例えば多成分系キットとして使用することもできる。
【0032】
多成分系キット(又は多成分系セット)とは、特に二成分系キット(好ましくは、前記成分(a)及び(b)を有する二成分系キット)、好ましくは二チャンバ器具、またさらには多チャンバ器具と解釈されるべきであり、その中には、相互に反応可能である成分(a)及び(b)が、これらが貯蔵の間に互いに反応できないように、好ましくはこれらが使用前に互いに接触しないようにして含まれている。カートリッジが可能である。しかしながら、2つ以上のチャンバを有するカートリッジ若しくはフィルムパック、又は複数のチャンバを有する容器、例えばペール若しくはタブ、又は2つ以上のこのような容器のセット(例えばパック)が特に好ましく、その際、それぞれの硬化性コンパウンドの2つ以上の成分、特に上記及び下記に定義されるような2種の成分(a)及び(b)は、それぞれ空間的に互いに分かれてキット又はセットとして存在しており、その際、内容物は、混合後又は混合下に、(特に、コテ、ブラシ、スタティックミキサーのような施与用器具を用いて)使用箇所へ、例えば繊維、レイドスクリム、織物、複合材等を固着させるためには平面へ、又は特に例えばアンカーボルトなどのアンカー手段を固着させるためにはボアホールのような凹部へと移送されるものとする;並びに、多成分系又は特に二成分系カートリッジであって、そのチャンバ内に、使用前に保存するために上記及び下記の組成を有する固着用途用硬化性コンパウンドのための複数又は好ましくは2種の成分(特に(a)及び(b))を含んでいるカートリッジが特に好ましく、その際、好ましくは、相応するキットにはスタティックミキサーも付属している。フィルムパックや多成分系カートリッジの場合には、空にするための器具が多成分系キットに付属していてもよいが、これは好ましくは(例えば複数回の使用のために)キットから独立していてもよい。
【0033】
上記及び下記において、別段の記載がない限り、割合や含有率のパーセント表記はそれぞれ質量パーセントを意味する。
【0034】
例えば、上記及び特に下記の通りの単一成分系キット又は多成分系キット、特に二成分系キットは、可能な好ましく使用可能な実施形態の一つであり、その際、充填されるモルタルの成分(b)の総質量に対して、前記マンニッヒ塩基調合物は10〜100質量%、好ましくは30〜75質量%の割合を有する。
【0035】
単一成分系キット又は多成分系キット、特に二成分系キットであって、スチレン化フェノール類と低分子アミン類とからの前記混合物が、充填されるモルタルの成分(b)の総質量に対して0〜100質量%、好ましくは30〜75質量%の割合を有する前記キットとその使用も同様に、好ましい一実施形態である。
【0036】
前記マンニッヒ塩基調合物又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類とからの前記混合物が、30〜105の範囲内のH当量を有し、かつ50〜10,000mPa・sの範囲内の粘度を有し、かつ好ましくは、該マンニッヒ塩基調合物又はスチレン化フェノール類と低分子アミン類とからの該混合物に対して20質量%以下の、例えば1質量%未満の、例えば0.1質量%以下の遊離フェノール含有率を有する上記及び下記の多成分系キット、及び特にその本発明による使用も、特に好ましい。
【0037】
H当量(1モルの反応性Hを含有する樹脂の量)の測定を、当業者に公知の方法で、反応混合物の調合物をもとにして、使用する出発材料や原材料の公知のH当量から行い、これからH当量を求める。
【0038】
単純なアミンに関して、例えばメタキシリレンジアミン単独のH当量の算出について例示的に説明する:
【化5】
【0039】
エポキシ当量値は、通常は、出発材料について、製造元により示されているか、又は公知の方法により測定若しくは算出される。エポキシ当量値は、エポキシ基1モルを含む樹脂の量(g)を示す。
【0040】
本発明による、又は本発明により使用可能な多成分系キット、特に上記及び下記の二成分系キットは、本発明の有利な一実施形態においては、前記成分(a)対成分(b)の体積比が10:「1以下」、特に5:「1以下」、好ましくは3:「1以下」であり、その際、好ましくは、それぞれ下限は1である。
【0041】
(多成分系において成分(a)に含まれる)硬化性エポキシ樹脂は、好ましくは、少なくとも1種の多価アルコール又はフェノール、例えばノボラック、又は特にビスフェノールF又はビスフェノールAのポリグリシジルエーテル、又はこれらの化合物の2種以上の混合物、又は少なくとも2個のエポキシ官能基を有する別の芳香族若しくは複素芳香族グリシジルエーテル、又は特にトリグリシジルエーテル又は高級グリシジルエーテル、又は同様に全ての上記選択肢のうち2種以上の混合物である。このエポキシ樹脂は、例えば100〜2000、好ましくは120〜400のエポキシ当量を有する。前記エポキシ成分(a)の割合は、0%超〜100%、好ましくは10%〜60%である。
【0042】
上述の成分に加えて、本発明による、又は本発明により使用可能なモルタル(特に多成分系キット)は、上述及び後述の通り、その成分のうち1種以上(特に、成分(a)か、又は成分(b)か、又は成分(a)及び(b))において、さらなる通常の添加剤を含有することができる(その際、当業者は、そのような成分と、本発明による多成分キットの成分との、特に前記成分(a)及び(b)を有する二成分系キットの成分との、使用時の混合前の接触がどの程度まで許容されないかを熟知している)。
【0043】
(硬化剤成分中に存在すべきではない、従って好ましくは(二成分系の場合には専ら)成分(a)中に一緒に含まれている)反応性希釈剤として、脂肪族、脂環式、アラリファティック又は芳香族モノ−又は特にポリアルコールのグリシジルエーテル、例えばモノグリシジルエーテル、例えばo−クレシルグリシジルエーテル及び/又は特に少なくとも2個のエポキシ官能基を有するグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及び/又は特にトリ−又は高級グリシジルエーテル、例えばグリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリットテトラグリシジルエーテル、又はトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、又はこれらの反応性希釈剤のうち2種以上の混合物を使用することができる。例えばWO2011/113533に記載のグリシジルシランも特に好ましい。前記反応性希釈剤は、前記エポキシ成分(a)の総質量に対して、好ましくは0〜60質量%、特に1〜30質量%の量で存在する。
【0044】
充填材は、例えば本発明による多成分キットの1種以上の成分中に、例えば相応する二成分系キットの一方又は双方の成分中に存在していてよく;充填材の割合は、好ましくは0〜90質量%、例えば10〜90質量%である。
【0045】
充填材として、通常の充填材、例えば水硬性充填材、例えばセッコウ、生石灰、水ガラス又は活性アルミナ又は特にセメント、例えばポルトランドセメント又はアルミナセメント、チョーク、石英粉、コランダム等が使用され、これらは粉末として、粒状で、又は成形体の形態で添加されていてよく、また、例えばWO 02/079341及びWO 02/079293に記載されているような他の充填材(ここで、これを本明細書に援用するものとする)又はその混合物が使用され;その際、前記充填材はさらに又は特にシラン化されていてもよく、例えばアミノ−又はエポキシシランで処理された石英粉、例えばQuarzwerke GmbH社製Silbond AST又はEST(R)として、アミノ−又はグリシジルシランで処理されたシリカ、例えばHoffmann Mineral社製 Aktisil AM又はEM(R)として、又はアミノ−又はグリシジルシランで処理された高熱法シリカとしてシラン化されていてもよい。前記充填材は、本発明による多成分系キットの1種以上の成分において、例えば相応する二成分系キットの成分(a)及び(b)の一方又は双方において存在していてよく;前記硬化性コンパウンドの総質量に対するその割合は、例えば0〜70質量%、好ましくは5〜60質量%である。
【0046】
本発明による、又は本発明により使用可能な組成物の個々の又は複数の成分のためのさらなる添加剤として、可塑剤、非反応性希釈剤又は可撓化剤、安定剤、触媒、例えば硬化触媒(例えばサリチル酸)、レオロジー助剤、チキソトロープ剤、反応速度のための制御剤、例えば促進剤、湿潤剤、着色添加剤、例えば染料又は特に顔料(例えば、前記成分の完全混合をより良好に制御するために該成分を異なる色に染めるため)、又は添加物等、又はそれらの2種以上の混合物が含まれていてよい。このようなさらなる添加剤は、好ましくは、全体として、前記硬化性コンパウンド全体に対して合計で0〜30質量%、例えば0〜5質量%の質量割合で存在してよい。このようなさらなる添加剤は、個々の又は複数の成分に、例えば(a)及び/又は(b)に添加されていてもよいし、また前記マンニッヒ塩基調合物に添加されていてもよいし(これに伴い、このマンニッヒ塩基調合物を「拡張されたマンニッヒ塩基」と称することができる)、スチレン化フェノール類と低分子アミン類との前記混合物自体に添加されていてもよい。
【0047】
本発明は、特別な一実施形態においては、特に拡大された加工温度範囲を有するエポキシ樹脂用硬化剤を製造するための、室温を上回る、又は50℃を上回る温度での耐久性を向上させるための、及び/又は、硬化された状態で、例えば70〜80℃といった高温においても、例えば特にアミンとして1,2−ジアミノシクロヘキサンを用いて製造されているような他のマンニッヒ塩基に対して接合応力を高めるための、上記のマンニッヒ塩基の使用に関する。
【0048】
本発明の一別形は、上記及び下記で好ましいものとして示された多成分系キットにおける、上記の(特に上記で好ましいものとして記載された)、又は実施例で挙げられたマンニッヒ塩基の使用に関する。
【0049】
本発明は、もう一つの実施形態においては、硬化性コンパウンド、又は固着のための該硬化性コンパウンドの使用にも関し、その際、該硬化性コンパウンドは、硬化性エポキシドを含むエポキシ成分(a)と、スチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物を含む硬化剤成分(b)とを含む。
【0050】
本発明は、もう一つの実施形態においては、固着用途用の硬化性エポキシド含有硬化性コンパウンドを製造する際の、硬化剤成分としてのスチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物の使用にも関する。ここで、このスチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物と、前記硬化性エポキシドとを、互いに、好ましくは現場で、例えばアンカー要素のような固着要素の固定を同時に行いながら混合するか、又は混合した直後にこのような固着要素の固定を行い、かつ反応させる。
【0051】
本発明の一実施形態は、ボアホール内にアンカー要素を固着させるための組成物を製造するための、特にこのような組成物の成分を含む多成分系キットの硬化剤成分を製造するための、上記及び下記のマンニッヒ塩基の使用にも関する。
【0052】
本発明の一実施形態は、ボアホール内にアンカー要素を固着させるための組成物を製造するための、特にこのような組成物の成分を含む多成分系キットの硬化剤成分を製造するための、上記及び下記の1種以上のスチレン化フェノール類と1種以上の低分子アミン類との混合物の使用にも関する。
【0053】
さらなる実施形態においては、本発明は、室温を上回る温度、又は50℃を上回る温度での耐久性を向上させるための、及び/又は、硬化された状態で、スチレン化フェノール類不含の相応する硬化性コンパウンドに対して接合応力を高めるための、固着用途用の硬化性エポキシド含有硬化性コンパウンドを製造する際の硬化剤成分としてのスチレン化フェノール類と低分子アミン類との混合物の使用にも関する。
【0054】
高められた耐熱性によって、例えば、強い直射日光やその他の高められた温度に曝されるファサードのアンカー固着部のボアホール範囲において比較的高温が生じた場合であっても、固着用途でのより良好な可使性が生じる。
【0055】
さらなる添加剤が可能であり、これは例えば第三級アミノ化合物、有機酸、例えばカルボン酸、例えばサリチル酸又はスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸であり、好ましくはtert−アミノフェノール(これは、好ましくは成分(b)に添加されている)特に2,4,6−トリス(ジ−C1〜C6−アルキルアミノ)フェノール、好ましくは2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノールであって、これは(特に多成分系、例えば二成分系)エポキシモルタルの成分としての(特に本発明により使用されるマンニッヒ塩基調合物を含む)硬化剤成分(b)中に存在する。
【0056】
本発明は、目的に応じたさらなる実施形態において、特に多成分系キット、特に二成分系キットの形態での、特に、例えば壁や天井や床といった建造物の補強用の繊維、レイドスクリム、織物、又は、特に高弾性繊維からの、好ましくは炭素繊維からの複合材を固着させるための;またさらには、例えば石やガラスやプラスチックからの板材やブロックといった建築構成材の固着のための;また特に、例えばアンカーボルトやボルトなどのアンカー手段を例えばボアホールのような凹部内で固着させるための、本発明による硬化性コンパウンドの使用にも関し、その際、前記多成分系キットの成分は、予め混合した後に、及び/又は、混合しながら(例えばスタティックミキサーを用いて、又はカートリッジやフィルムパックの破壊により、又は多チャンバペールやペールのセットからの成分を混合することにより)、表面へ、又はアンカー手段の場合には母材(例えば煉瓦積みやコンクリート、また木材や金属)の例えばボアホールのような凹部へと移送される。
【0057】
本発明は特に、前記組成物が脂肪族モノアミンを含まないか、若しくは前記組成物が(メタ)アクリレートコポリマーを含まないか、若しくは前記組成物が非水性であるという本発明の実施形態の別形か、又は、これらの特性のうち2つ以上が実現される別形に関する。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、その範囲を制限するものではない。
【0059】
使用される略称:
AEP N−(2−アミノエチル)ピペラジン
BAC 1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
BAPP N,N’−ビス(3−アミノ−n−プロピル)−ピペラジン
DCH(対照) 1,2−ジアミノシクロヘキサン
IPDA 3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン
MXDA m−キシリレンジアミン
TETA トリエチレンテトラミン
g ガラス転移温度
実施例1:本発明により使用可能なマンニッヒ塩基調合物を用いて得られたモルタルと、対照試験として、防御工事においてすでに知られているアミンを用いて得られたマンニッヒ塩基調合物を用いて得られたモルタル:
アミンAEP、BAC、BAPP、IPDAと、対照としてDCHを使用して、冒頭に記載した通り、相応するマンニッヒ塩基調合物を製造した。これらを、化学量論的量で、エポキシ樹脂成分及びポルトランドセメントと、以下の表に従って混合した。
【0060】
表に示した量の、粘度6000〜8000mPa・s/25℃及びエポキシ当量175のビスフェノールA/Fをベースとするエポキシ樹脂を、同様に同表に示した量の、粘度120〜180mPa・s/25℃及びエポキシ当量140のトリメチロールプロパンをベースとするさらなるエポキシ樹脂と混合した。双方のエポキシ樹脂とその中に分散されている充填材とからなる混合物を、以下の表に示した水素当量に応じた量のそれぞれのマンニッヒ塩基を用いて(例えばここでは化学量論量であるが、過剰又は過少の架橋も選択可能である)、室温で24時間硬化させた。
【0061】
モルタル成分A(一般の部における(a)に相当)を以下の調合に従って製造した:
【表1】
【0062】
(1)相応して、成分A 50gに対して以下の量の成分Bを量り入れた(フェノールと相応するアミン(括弧内)とをベースとするマンニッヒ塩基):
【表2】
【0063】
(2)代替的に、成分A 50gに対して以下の量の成分Bを量り入れた(スチレン化フェノールと相応するアミン(括弧内)とをベースとするマンニッヒ塩基):
【表3】
【0064】
ここで表に挙げた成分を順に量り入れ、かつ慎重に混合する。それに引き続き、この混合物を相応する金型に充填し、室温で24時間硬化させ、その後試験する。
【0065】
以下の測定値を得る:
上記(1)に従ってフェノール自体とそれぞれ記載したアミンとからのマンニッヒ塩基を有する成分Bを有する混合物の場合:
【表4】
【0066】
本発明によらないDCHを用いた対照に対して、ほぼ同等の粘度で、引抜値及び接合応力値が高まり、かつ(高められた熱形状安定性についての間接的な尺度の一つとしての)Tg値が高まり、かつ全てのケースで引張強さが高まり、かつほぼ全てのケースで圧縮強さが高まることが判明した。
【0067】
上記(2)に従ってスチレン化フェノールとそれぞれ記載したアミンとからのマンニッヒ塩基を有する成分Bを有する混合物の場合:
【表5】
【0068】
本発明によらないDCHを用いた対照に対して、ほぼ同等の粘度で、引抜値及び接合応力値が高まり、かつ(高められた熱形状安定性についての間接的な尺度の一つとしての)Tg値が高まり、かつ全てのケースで引張強さが高まるか又は同等であり、かつほぼ全てのケースで圧縮強さが高まることが判明した。
【0069】
実施例2:本発明による、及び本発明により使用可能なスチレン化フェノールと低分子アミンとからの混合物を用いて得られたモルタル:
(3)代替的に、上記の成分A 50gに対して以下の量の成分Bを量り入れた:(マンニッヒ塩基不含の硬化剤)
【表6】
【0070】
アミンBACとMXDAとの混合物(MXDA 1質量部に対してBAC 14質量部);BAC;MXDA;IPDA;及びTETAを使用して、それぞれのアミン(マンニッヒ塩基不在)とスチレン化フェノール(Novares LS 500)とサリチル酸とからの混合物(混合比75:20:5(w/w))をそれぞれ製造した。これを、(アミノ官能価及びエポキシ官能価に関して)化学量論量で成分A(実施例1の表を参照のこと)と混合し、上記の通り「硬化性コンパウンド」としてパラメータ測定に使用した。
【0071】
冒頭に記載したパラメータ測定のための方法を用いて、以下の結果を得た:
【表7】
【0072】
ここで、上記混合物に関して極めて良好な値が認められ、その上、これらの値の大部分は、実施例1においてマンニッヒ塩基を使用した場合よりも高い値である。