【実施例】
【0039】
ガスタービン用途
ガスタービン空気圧縮機グレード材料に対する腐食効果を、実験室において、2つの連結多電極アレイ(「CMA」)プローブ、プローブ1(P1番)及びプローブ2(P2番)を使用して模倣した。プローブ電極は、17−4PHステンレス鋼、ガスタービン空気圧縮機グレード材料でできていた。
【0040】
CMAセンサを備えたnanoCorr(商標)フィールドモニタに、プローブを接続した。CMAセンサは、腐食電極から陰極への電子の流量を測定する。CMAプローブでの腐食電極は、腐食材料における陽極部位のように作用する。したがって、腐食電極からの電子の流量を使用して、電極材料、この場合は17−4PHについて腐食速度を算出することができる。
【0041】
下記の項において記述する通り、傷をつけたプローブを複数の溶液に浸漬するのに応答して、17−4PHの腐食速度を監視した。試験は、プローブを異なる溶液に順次に曝露することによって実施した。使用した溶液を表3に収載する。
【0042】
【表3】
プローブを、
図1に示す通り、溶液に順次に曝露した。各溶液曝露間に、プローブを脱イオン(DI)水で濯ぎ、乾燥させた(図示せず)。プローブ表面を研磨しないで、溶液曝露間に表面を新しくした。腐食シミュレーション試験を実施する前に、各プローブから1つの電極に傷をつけて、腐食孔核形成を促進した。傷つけ後かつ溶液のいずれかへの曝露前のプローブの写真を、
図2に示す。
【0043】
図1に示す通り、塩水溶液を試験全体を通して数回使用して、ガスタービン空気圧縮機周囲の環境条件及びプロセス条件を模倣した。電極腐食を加速させるために、プローブをエージングステップにも供した。エージングステップの後、H
2O
2洗浄ステップの効果を決定した。H
2O
2溶液を使用して、センサ上に存在するあらゆる油性堆積物を破壊し、それにより、曝露効率を改善した。次いで、プローブを酸洗浄プロセスに供して、プローブ上に存在するあらゆる錆を除去し、膜形成効率を改善した。酸洗浄は、クエン酸溶液を含んでいた。最後に、プローブの腐食速度に対する、ポリアミンブレンドの効果を測定した。例1については、配合4(表2を参照)を脱イオン(DI)水で希釈した。
【0044】
図3は、エージングステップ中におけるプローブの腐食速度(μm/年)のチャートを示す。エージングステップは、プローブを、室温の塩水に約4日間、次いで、75℃に加熱した塩水に約24時間浸漬することを含んでいた。次いで、電極腐食を加速させるために、プローブを、HCl及びH
2SO
4水溶液を含むエージング溶液に約10時間浸漬した。
図3は、とりわけプローブをHCl及びH
2SO
4水溶液に曝露した場合の、プローブの測定可能な腐食を示す。次いで、プローブを75℃塩水中に戻して約2時間置いた。エージング後のプローブの写真を
図4に示す。
図4に示す通り、エージングステップ後、プローブ上には目に見える腐食がある。
図3中のポイントAは、
図2中の写真を撮影した時間軸におけるポイントを指定する。
図3中のポイントBは、
図4中の写真を撮影した時間軸におけるポイントを表す。
【0045】
エージングステップの後、プローブをH
2O
2中で洗浄した効果を観察した。
図5は、プローブの腐食速度(μm/年)に対するH
2O
2洗浄の効果を示す。
図5に示す通り、プローブを75℃塩水に約3.5時間浸漬した。次いで、プローブをH
2O
2溶液に室温で約20分間入れた。次いで、プローブを75℃塩水中に戻して約1時間置いて、H
2O
2洗浄前後のプローブの腐食挙動を比較した。H
2O
2洗浄後及び1時間の75℃塩水曝露中のプローブの腐食挙動を、クエン酸洗浄のための新たな基準点として使用した。
図5において見られる通り、プローブを塩水に曝露した場合、測定可能な腐食がある。H
2O
2で清浄することにより、プローブを塩水に再度曝露した場合の腐食の量をわずかに低減させると思われる。
【0046】
クエン酸洗浄を使用して、いくらかの不動態化効果を提供し、センサ表面上に存在するあらゆる錆を清浄し、それにより、膜形成効率を改善した。最初に、プローブを室温クエン酸溶液に約20分間浸漬した。次いで、プローブを75℃塩水に約3.5時間入れ、次いで、75℃クエン酸溶液に約20分間移した。次いで、プローブを75℃塩水中に戻し、クエン酸洗浄前後のプローブの腐食挙動を比較した。プローブの腐食速度(μm/年)に対するクエン酸洗浄の効果を、
図6に示す。
図6中のX軸は、時間(分)である。
図7は、
図6中でポイントCによって表されている、プローブを室温クエン酸で洗浄した後、かつ75℃塩水中に戻す前の、プローブの写真を示す。腐食は、
図7中のプローブ上で目に見える。
図6中のポイントDは、75℃クエン酸洗浄後、プローブを75℃塩水中に戻す前のポイントである。ポイントDにおけるプローブの写真を、
図8に示す。75℃クエン酸洗浄後のプローブ上には、室温クエン酸洗浄後よりも少ない腐食が目に見える。75℃クエン酸洗浄及び75℃塩水への曝露両方の後の、ポイントEにおけるプローブの写真を、
図9に示す。プローブ上のいくらかの腐食が、
図9において目に見える。
図6において見られる通り、プローブをクエン酸で洗浄した場合、とりわけ75℃クエン酸で洗浄した場合、腐食の量は低減したと思われる。
【0047】
次に、プローブの腐食速度に対するポリアミンブレンド、例1(Ex1)の効果を測定した。Ex1は、250mlのDI水中5mlの配合4を含む防食液であった。ポリアミンブレンドは、複数の中和アミン及び膜形成性アミンを約4:1の重量比で含んでいた。プローブに対するEx1の効果を測定するために、プローブを再度75℃クエン酸洗浄に入れた。次いで、プローブをEx1に5分間浸漬した。希釈剤、この場合はDI水に対するポリアミンブレンドの濃度は、水に対して体積で約20400ppmのアミンであった(5mlのポリアミンブレンド/250mlのDI水、ここで、ポリアミンブレンドの密度は1.02g/mlである)。より低濃度の活性物質が、ガスタービン空気圧縮機システムでの腐食を防止するのに依然として有効であろうと予測される。有効濃度は、約0.1〜約2000ppmである。別の実施形態では、有効濃度は、約0.1〜約100ppmである。また別の実施形態では、有効濃度は、約0.1〜約50ppmである。代替として、有効濃度は、希釈剤に対して、体積で、約1〜約20ppmの活性物質であってよい。プローブをEx1に沈めた後、再度75℃塩水に2時間沈めた。
【0048】
図10は、プローブの平均及び最大腐食速度(μm/年)の両方に対するEx1の効果を示す。ポイントEを
図10に再度示す。
図11は、平均腐食速度に対するEx1の効果だけを示す。
図10及び11において見られる通り、ポリアミン処理は、プローブ上での腐食の量を著しく低減させた。
図12は、75℃クエン酸洗浄後、かつプローブをEx1に沈める前の、ポイントF(
図10)におけるプローブを示す。
図13は、Ex1に、及び75℃塩水に2時間沈めた後の、
図10中のポイントGのプローブを示す。
図12及び13を比較すると、ポリアミン処理後に塩水に曝露したプローブにおいて、目に見える腐食はほとんど又は全くない。
【0049】
図14は、
図1に示す通りの試験シーケンス全体について平均腐食速度を示す。
図14中の卵形領域は、プローブの平均腐食速度を示す。卵形Hは、エージング前の塩水中におけるプローブの腐食速度を包囲する。卵形Iは、エージング後かつEx1での処理後の塩水中での腐食速度を包囲する。
図14において見られる通り、ポリアミン処理後の平均腐食速度は、約3.0μm/年未満であった。
【0050】
高速空気中でのポリアミン性能
下記の例は、高速空気流が存在する場合のガスタービン空気圧縮機用途における防食組成物を実証する。該例の目標は、防食組成物によって形成された膜が、高速空気流に曝露された場合、動作している圧縮機内の処理された金属表面上に残るか否かを決定することであった。
【0051】
高速空気試験は、ポリアミンを含む防食組成物で処理した12枚の翼形クーポン「箔」及び1枚の未処理の箔に対して実施した。「箔」は、17−4PHステンレス鋼からできており、翼が受けるのと同じ表面整羽圧縮機に供した。次いで、箔をプロパノールで清浄して、あらゆる残留油を除去した。12枚の箔のうち六(6)枚を、22ppmの配合4を含む防食組成物に12分間浸漬した(表2を参照)。配合4で処理した箔を「A群」として分類した。12枚の箔のうち六(6)枚を、温クエン酸に13分間浸し、濯ぎ、次いで、22ppmの配合5を含む防食組成物に16分間浸漬した(表2を参照)。配合5で処理した箔を「B群」として分類した。最後の箔、対照を、プロパノールで清浄して、あらゆる残留油を除去したが、いかなる防食処理にも供さなかった。
【0052】
次いで、水ビーズ試験を13枚すべての箔に対して実施した。水ビーズ試験は、DI水を充填した噴霧ボトルを使用して、各箔の左から右に、一定流を噴霧することを含んでいた。次いで、各箔の写真を撮った。対照箔は、水ビーズ形成をほとんど又は全く呈さなかった。12枚の処理した箔は、対照よりも多くの水ビーズ形成を呈した。
図15は、2枚の箔についての水ビーズ試験結果を示す。左側の箔は、防食組成物で処理したA群からの箔であり、箔の表面上に水ビーズ形成を示す。右側の箔は防食処理なしの対照であり、最小限の水ビーズ形成を示す。
【0053】
次いで、箔を空気流較正リグ(Aerodyne Research社、米国マサチューセッツ州ビルリカ)に装填した。各箔を、空気流試験中、箔の片側が正流に供され、一方、反対側が該流から遮蔽されるように装填した。各箔を、特定のマッハ数に600±5秒間供した。試験条件は、複数の迎え角及び気流速度を包含していた。マッハ試験の後、箔を空気流較正リグから除去し、第二の水ビーズ試験を実施した。再度箔の写真を撮り、膜劣化の兆候について観察した。
図16は、水ビーズ試験結果の例示的な写真である。左側の群は、試験前、かつ0.5のマッハ数で試験した後の、45°の迎え角で配向された「A群」箔を示す。
図16の右側の群は、0.5のマッハ数前後の、45°の迎え角で配向された「B群」箔を示す。A群及びB群の箔はいずれも、高速空気流試験前後に実質的な水ビーズ形成を示す。表4は、試験したすべての箔についてビーズ水試験結果を示す。「レ」を付けた試験結果は、箔が高速空気に曝露される前のビーズ試験結果と比較して、高速空気試験後の膜劣化がないことを示す。「−」を付けた試験結果は、膜劣化を示す。
【0054】
【表4】
ボイラー用途−比較例
ボイラー用途におけるポリアミンの性能を試験する実験を実施した。実験は、実験用流水式腐食試験システム装置を使用して完了させた。装置は、一連の検出器、化学注入ポンプ、高圧ポンプ及びクーポンラックホルダからなるものであった。
図17は、流水式試験システムの概略図である。腐食は、試験クーポンを装置に入れ、各クーポンの重量損失を測定することによって測定した。
【0055】
腐食試験装置コンポーネントはいずれも、304又は316型いずれかのオーステナイトステンレス鋼構造ものであった。装置は、脱イオン水(DI)源と、又は脱イオン水及び脱酸素水と接続されていてよい。DI水は、100ppbより大きい酸素含有量を有していた。脱酸素は、膜接触器カートリッジによって遂行した。脱酸素水は、正しく動作している圧力脱気器を出る水に相当する、8〜12ppb(mg/l)の酸素という酸素含有量を有していた。装置の入口には、混床式イオン交換ポリッシャーがあった。高圧ポンプは、560〜580ml/分の流量を維持していた。化学物質マニホールドは、化学物質の導入が、システム内における水質及び所望の化学的性質を取得することを可能にした。化学注入ポンプは、Eldex(商標)(Eldex Laboratories社、米国カリフォルニア州ナパ)精密注入ポンプであり、処理組成物(組成物1、組成物2及びEx2)は、Isco HPLC噴射ポンプ(Teledyne Technologies社、米国ネブラスカ州リンカーン)を使用して適用した。サーモスタットでオン/オフ制御された流水式加熱器によって、温度を実現し、維持した。装置内の圧力は、120psig(9.3bar、0.93MPa)に維持した。この圧力は、すべての場合において、液相のみ(蒸気なし)が存在することを保証するために、システムの温度における飽和沸騰圧力を上回っていた。システム内の圧力は、高流量ドーム圧力調整器によって一定に保った。
【0056】
入口溶存酸素、pH及び伝導度は、インライン加熱器後に、冷却した側流試料中で測定した。故に、pH及び伝導度は、室温で測定した。クーポンラックは4つのクーポンを含有しており、システム及び化学的パラメータを調整及び平衡化している間に、必要ならばバイパスさせてよい。ドーム圧力調整器の前に、腐食クーポンラックの下流の溶存酸素出口測定のために、別の冷却した側流試料が利用可能であった。
【0057】
酸素の濃度は、曝気されたDI水を脱酸素水流に送給することによって実現した。典型的な実行は、室温ですべての所望の化学パラメータを確立することによって開始し、クーポンラックをバイパスさせた。クーポンを清浄し、秤量し、テフロン(登録商標)洗浄機を使用してクーポンホルダ内にセットして、電解腐食を最小化した。この測定された重量が、初期クーポン重量である。通常、各実行において、4つのクーポン−2つの低炭素鋼合金(LCS)、1つのアドミラルティ黄銅合金(ADM)及び1つの銅(Cu)がある。ラック内の鋼クーポンの下流には、あらゆる潜在的な銅が低炭素鋼をめっきするのを回避するために、金クーポンが位置していた。
【0058】
高温Corrater(商標)(Rohrback Cosasco Systems社、米国カリフォルニア州サンタフェスプリングズ)直線偏光プローブを、即時腐食決定に使用した。一方のプローブはLCS電極を、他方はADM電極を有していた。実験の経過中に、Corrater(商標)機器を介して為された即時腐食速度測定と標準的なクーポン重量損失法によって測定された重量測定腐食速度との間に相関の欠如があったことに着目された。これは、使用した試験水の比較的低い伝導度に部分的に起因すると考えられた。
【0059】
クーポンラックを窒素ガスでパージして、空気を排除した後、ラックを試験システムに組み込んだ。バイパス弁を使用して、給水にクーポンラックを通過させた。加熱器を実行の温度に設定し、システムが温度に到達するのに15〜25分を要した。1セットを除いてすべての実行について、標準的な曝露時間は、7日間であった。560ml/分の流量で、クーポンラックにおける線形速度は、約3.64フィート/分(毎分1.1メートル)であった。
【0060】
クーポンを7日間曝露させた後、加熱器を外し、装置を給水流で冷却させた。バイパス弁を使用して、クーポンラックを装置から外した。クーポンを除去し、DI水及びイソプロパノールで濯ぎ、風乾させ、写真を撮り、清浄し、秤量した。清浄後の重量が、最終クーポン重量であった。実行のそれぞれを2連で実施した。2連の実行間の再現性は、およそ0.2mpy(5.08μm又は0.005mm年)又はそれよりわずかに低かった。
【0061】
試験前のクーポン重量(初期重量)マイナス試験後の重量(最終重量)を使用して、クーポン重量損失を決定し、標準的な様式にて腐食速度を1年当たりのミル(mpy)で算出した。
【0062】
評価したポリアミン配合物(Ex2)は、アルカリ培地を提供するための中和アミンのブレンドであるポリアミン構成要素と、少量の合成ポリマー分散剤とを包含していた。より具体的には、Ex2は、配合4と同じ構成要素(表2を参照)をその中に含んでいたが、幾分異なる比率であった。2つの標準、又は比較例(組成物1及び組成物2)も試験した。組成物1は、10ppmの慣習的な亜硫酸ナトリウム処理を含む水溶液であった。組成物2はEx2において使用したものと同じ中和アミンのブレンドを含む水溶液であった。
【0063】
平均腐食速度差パーセント(%AvCorDiff)は、以下の式(1)に従って、標準処理(1又は複数)におけるクーポンの平均腐食速度(avB)から、ポリアミンベース生成物についてのクーポンの平均腐食速度(avP)を引き、標準(1又は複数)の平均腐食で割り、結果に100を乗じたものとして定義される。
【0064】
%AvCorDiff=[(avB−avP)/avB]×100 (1)
方程式(1)によって定義される通り、%AvCorDiffが正数であれば、ポリアミン生成物は、クーポン中において標準(1又は複数)よりも少ない腐食を生成した。%AvCorDiffが負数であれば、ポリアミン生成物は、クーポン中において標準(1又は複数)よりも多い腐食を生成した。
【0065】
標準及びポリアミン実行は重複して行ったため、各平均は、各重複からの腐食結果をすべて考慮している。したがって、LCS結果は、4つのクーポンの腐食速度を平均したものであり、ADM及びCu結果は、それぞれ2つのクーポンを平均したものである。
【0066】
軟質化した水、1000ppb(μg/l)の溶存酸素を、85℃(185oF)の温度で使用して、給水条件の非常に厳密なセットを試験して、工業用低圧ボイラー給水を模倣した。軟質化した水は、CaCO
3換算で0.2ppm(mg/l)のCa、CaCO
3換算で0.1ppm(mg/l)のMg、SiO
2換算で5ppmのシリカ、及びCaCO
3換算で50ppmのMアルカリ度から構成されていた。この模倣水の室温伝導度は、およそ100μScm
-1であった。
【0067】
この給水についての腐食結果を、表5に提示する。亜硫酸ナトリウム酸素スカベンジャー処理を含む組成物1標準のみが、LCSについては1.5mpy(0.0381mm/年)よりも低い、ADMについては0.6mpy(0.015mm/年)よりも低い腐食速度をもたらした。すべての銅クーポンは、標準及びポリアミンベース生成物について、0.5mpy(0.0127mm/年)を下回る腐食速度を有していた。換言すれば、この模倣した軟化給水条件における処理間で、銅の腐食における差はなかった。
【0068】
【表5】
組成物2及びポリアミン生成物(Ex2)を加えたシステム中の溶存酸素濃度が1000ppbであったのに対し、慣習的な亜硫酸ナトリウム処理をした組成物1においては、溶存酸素が12ppb(μg/l)に低減し、pHがおよそ9であったことに留意されたい。
【0069】
表5に示す結果から、ポリアミン生成物は、同一のアミンブレンドと同じ給水pHでの慣習的な亜硫酸ナトリウム処理によって提供されるものに相当する炭素鋼の腐食保護を提供しなかったことが明らかである。O
2換算で1000ppb(μg/l)のこの高溶存酸素条件は、圧力脱気器の非存在下で低圧ボイラー給水を模倣することを意図したものである。
【0070】
腐食試験後に慣習的な亜硫酸ナトリウム処理で処理したクーポンの写真を、
図18に示す。
図18において見られる通り、慣習的な亜硫酸ナトリウム処理で処理したクーポンは、ごくわずかな目に見える腐食を示す。
図18中のクーポンについて、平均腐食速度は、約1.27mpy又は約32.3μm/年であった。1000ppbの溶存O
2の存在下、組成物2(中和アミンのみ)で処理したクーポンの写真を、
図19に示す。
図19に示すクーポンは、かなりの量の腐食を示す。
図19中のクーポンについて、平均腐食速度は、約14mpy又は約356μm/年であった。
【0071】
1000ppbの溶存O
2の存在下、Ex2で処理したクーポンの写真を、
図20に示す。ポリアミン生成物及び組成物2の両方について、LCSクーポンは、縞の入った表面、及び縞の入った領域においてはピットを示した。ポリアミンブレンドEx2が、組成物2に対してADMの腐食速度に悪影響を及ぼしたと思われる。表5に示す通りのポリアミン処理は、低炭素鋼腐食速度を組成物2標準に対して59%減少させたが、慣習的な亜硝酸スカベンジャー処理に対して著しく高い、炭素鋼上での腐食速度が依然としてあった。Ex2で処理した、
図20に示すクーポンについて、平均腐食速度は、約6.1mpy又は約155μm/yであった。この結果は、ポリアミン処理による給水溶存酸素レベルの観点から耐性の限界があること、及び正しく動作している圧力脱気器の非存在下でポリアミン処理を適用することは賢明であろうことを示すであろう。その上、組成物2及びEx2で処理したクーポンについて、平均腐食速度は、ボイラー用途には許容できないほど高い腐食を呈し、呈された腐食速度は、ガスタービン空気圧縮機用途にも許容できないものであっただろう。
【0072】
故に、ボイラー水処理の当業者は、金属表面が高レベルの溶存酸素に曝露されるであろう用途において、ポリアミンブレンドが功を奏することを期待しないであろう。これは、タービンが周囲条件で動作し、ガスタービン合金上に存在するあらゆる液体が完全に酸素化されるであろう、ガスタービン空気圧縮機用途を包含する。上記の表5及び
図19に記述されているボイラー腐食試験において、溶存酸素レベルは、1000ppb(1ppm)に制御されており、これは、不適切に動作している脱気加熱器、又は脱気機器の非存在のいずれかを示す、ボイラーシステムにおいては非常に高い溶存酸素レベルとみなされるであろう。比較すると、周囲温度、大気条件下、ガスタービン空気圧縮機上で形成された完全に曝気された水膜は、具体的な温度及び大気圧に応じて、典型的には、7000〜10000ppb(7〜10ppm)の間の溶存酸素レベルを含有するであろう。しかしながら、驚くべきことに、ポリアミンブレンドは、2つの連結多電極アレイ(「CMA」)プローブを使用して、完全に曝気されたガスタービン空気圧縮機条件を模倣している実験室試験において功を奏した。ここで
図11に戻ると、平均腐食速度は、ポリアミン処理後に、概して約10μm/年未満であり、いくつかの場合においては著しく低い。しかしながら、ボイラー用途におけるポリアミン処理クーポンの腐食速度は、少なくとも1桁大きいものであった。
【0073】
この書面による明細は、例を使用して最良の形態を包含する本発明を開示し、また、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを包含する本発明を、当業者が実践できるようにするものである。本発明の特許性のある範囲は請求項によって定義され、当業者が想到する他の例を包含し得る。そのような他の例は、請求項の逐語的文言と相違のない構造要素を有するならば、又は請求項の逐語的文言との相違がごくわずかな同等の構造要素を包含するならば、請求項の範囲内であるように意図されている。