特許第6395732号(P6395732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395732ガスタービン空気圧縮機での腐食を防止するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395732
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ガスタービン空気圧縮機での腐食を防止するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/00 20060101AFI20180913BHJP
   C23G 1/02 20060101ALI20180913BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20180913BHJP
   F02C 7/04 20060101ALI20180913BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180913BHJP
   F04D 29/02 20060101ALI20180913BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C23F11/00 C
   C23G1/02
   F02C7/00 D
   F02C7/04
   F01D25/00 X
   F01D25/00 Q
   F04D29/02
   F04D29/70 N
   F04D29/70 Q
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-560362(P2015-560362)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-511329(P2016-511329A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014019521
(87)【国際公開番号】WO2014134491
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/771,416
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】エスポジット,サル
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ,ケルシー・イー
(72)【発明者】
【氏名】デイル,トレバー・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】エスマチャー,メル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘフナー,レベッカ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,アンソニー
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01557539(EP,A1)
【文献】 特開2006−249079(JP,A)
【文献】 特開2006−348755(JP,A)
【文献】 特表平05−500237(JP,A)
【文献】 特開2010−101317(JP,A)
【文献】 特表2002−532628(JP,A)
【文献】 特開平01−159388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00−11/18
C23F 14/00−17/00
C23G 1/00−5/06
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン空気圧縮機の金属表面での腐食を、金属表面を防食組成物と接触させることによって防止する方法であって、前記組成物が1種以上の膜形成性アミンを含前記金属表面を組成物と接触させる前に、前記金属表面をクエン酸溶液と接触させるステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記膜形成性アミンが一般式Y−R(式中、Yは1又は複数のヘテロ原子(N又はO)を含有する基であり、Rは脂肪酸由来のアルキル基である。)のものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記膜形成性アミンが、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン及び/又は次式の1種以上の脂肪ポリアミンを含む、請求項2記載の方法。
【化1】
式中、xは1〜8であり、yは0〜7であり、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C24炭化水素基である。
【請求項4】
前記膜形成性アミンが、N−オレイルアミン、N−オクタデシルアミン、(Z)−N−9−オクタデセニル−1,3−プロパンジアミン、オクタデセニルアミノトリメチレンアミン、オクタデセニルアミノジ−(トリメチルアミノ)−トリメチレンアミン、N−ステアリル−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノプロピル)−N−ヘキサデシル−N−メチル−1,3−プロパンジアミン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が1種以上の中和アミンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記中和アミンが、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン(「MEA」)、モルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(「DMAPA」)、メトキシプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール(「DEAE」)、N,N−ジメチルエタノールアミン(「DMAE」)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記膜形成性アミン対中和アミンの重量比が、1:0.1〜1:25である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記重量比が1:2〜1:10である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が2種類以上の中和アミンを含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が水をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
水に対する組成物の濃度が、水の0.1〜20000体積ppmである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
金属表面が、処理中又は処理後に、水分及び/又は水及び/又は水溶液に曝露され、水分及び/又は水及び/又は水溶液が1000〜10000重量ppbの溶存酸素(O2)を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
表面をクエン酸溶液と接触させた後、かつ金属表面を組成物と接触させる前に、金属表面を水で濯ぐステップをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項14】
オフラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法であって、当該方法が、洗浄サイクルと、濯ぎサイクルと、オフライン処理サイクルとを含んでおり、オフライン処理サイクルが、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を防食組成物と接触させるステップを含んでいて、前記組成物が1種以上の膜形成性アミンを含んでいる、方法。
【請求項15】
前記膜形成性アミンが一般式Y−R(式中、Yは1又は複数のヘテロ原子(N又はO)を含有する基であり、Rは脂肪酸由来のアルキル基である。)のものである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記膜形成性アミンが、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン及び/又は次式の1種以上の脂肪ポリアミンを含む、請求項15記載の方法;
【化2】
式中、xは1〜8であり、yは0〜7であり、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C24炭化水素基である。
【請求項17】
オンラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法であって、当該方法が、オンライン処理サイクルを含んでおり、オンライン処理サイクルが、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を防食組成物と接触させるステップを含んでいて、前記組成物が下記表の配合を有する、方法。
【表1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の環境条件及びプロセス条件に起因するガスタービン空気圧縮機での腐食を防止するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所は、予定外の停電もしくは保守を除いて連続的に、又は、周期的電力需要パターンによって駆動される非連続もしくは送出ベースで、発電所のガスタービンを動作させ得る。後者の設備は、多くの場合、電力に対する消費者需要が高い「ピーク」時の間のみ使用される、アイドリングタービンを有する。ピーク時の持続時間は、空調負荷に影響を与え得る時季、及び家庭用電化製品の使用に影響を与え得る時刻を包含する、多くの要因に応じて変動し得る。ガスタービン圧縮機は、塩及び金属表面上に堆積している他の汚染物質を含有し得る大量の空気を吸入し、オフライン期間中に凝結に曝露された場合、後に、水性腐食性種を形成する。使用していない時には、屋外に位置しているタービンは、雨、熱駆動凝結及び蒸発サイクル、大気中酸素への曝露、並びにさらには海岸線付近に位置している発電所で空気中に同伴する塩水等、腐食に寄与する複数の環境要因に曝露される。屋内に位置していたとしても、大気中水分は、タービン表面上で凝結して、腐食を引き起こし得る。
【0003】
金属表面の水性電気化学的腐食において、酸化プロセスは、還元プロセスと共に発生する。腐食が発生するためには、金属の酸化又は劣化が発生する陽極表面において、イオンの形成及び電子の放出がなくてはならない。陽極において生成された電子を消費するために、陰極表面における同時対反応がある。陽極反応及び陰極反応は、同時にかつ同等の速度で進行する。鉄に対する腐食攻撃は、方程式(I)及び(II)に従う電気化学回路のように(例えば、自動車のバッテリーと同様に)作用する金属表面上の水性膜又は電解質層によって支持される電気化学反応である。
陽極において(酸化):Fe(s)→Fe2++2e (I)
陰極において(還元):2H++2e-→H2(g) (II)
陰極表面における水素イオンのこの還元は、酸性水素(H+)イオンとアルカリ性ヒドロキシル(OH-)イオンとの間の平衡を乱し、腐食界面において溶液を酸性度の低い、又はアルカリ度の高いものにする。これは、方程式(III)及び(IV)のように、酸素還元の機構に影響を及ぼす。
(酸性溶液):O2+4H++4e-→2H2O (III)
(中性又は塩基性溶液)O2+2H2O+4e-→4OH- (IV)
鉄は、溶存酸素が水性膜中に存在する場合、はるかに容易に酸化し腐食する。水性膜は、水洗、大気中凝結、雨水、及び海岸地域における海水霧を包含するがこれらに限定されない種々の源から存在し得る。溶存酸素が存在する場合、全体腐食及び酸素孔食の両方が発生し得る。全体腐食は、全表面からの金属の損失をもたらす。酸素孔食は、金属表面上における広範な欠損又は応力集中をもたらし、亀裂及び構成要素の故障につながり得る、表面金属の高度に局在した損失をもたらす。塩化物(Cl-)及び硫酸塩(SO42-)等、ある特定の負に帯電したイオン(アニオンと称される)は、陽極部位に移動し、上記に示す通り、陽極における鉄腐食又は酸化反応の第一の生成物である新たに形成された第一鉄イオン(Fe2+)の中和及び溶媒和を容易にすることによって、腐食反応を加速できることが周知である。この効果は、多くの場合、「脱分極」と称される。これらのアニオンは、多くの場合「孔食攻撃」と称される局在した腐食反応、及び影響を受けた金属表面のより広い領域にわたる全体腐食の両方を、容易にする又は加速させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/037777号明細書
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、膜形成性アミンを含む防食組成物は、ガスタービン空気圧縮機に典型的な条件下であっても、金属表面での腐食を防止するのに有効であることが発見された。したがって、ガスタービン空気圧縮機の金属表面での腐食を防止するための方法及び組成物が開示される。本方法は、金属表面を1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含む。
【0006】
一実施形態では、膜形成性アミンは、一般式Y−R(式中、Yは1又は複数のヘテロ原子(N又はO)を含有する基であり、Rは脂肪酸由来のアルキル基である。)のものである。別の実施形態では、膜形成性アミンは、N−オレイルアミン、N−オクタデシルアミン、(Z)−N−9−オクタデセニル−1,3−プロパンジアミン、オクタデセニルアミノトリメチレンアミン、オクタデセニルアミノジ−(トリメチルアミノ)−トリメチレンアミン、N−ステアリル−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノプロピル)−N−ヘキサデシル−N−メチル−1,3−プロパンジアミン及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0007】
別の実施形態では、組成物は、1種以上の中和アミンをさらに含み得る。中和アミンは、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン(「MEA」)、モルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(「DMAPA」)、メトキシプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール(「DEAE」)、N,N−ジメチルエタノールアミン(「DMAE」)及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0008】
別の方法では、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:0〜約1:25である。また別の方法では、該重量比は、約1:2〜約1:10である。代替として、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:4であってよい。
【0009】
別の方法では、組成物は、2種類以上の中和アミンを含み得る。組成物は、水又は水溶液で希釈されていてよい。組成物の濃度は、体積で、水の約0.1〜約20000ppmである。
【0010】
別の実施形態では、方法は、金属表面を防食組成物と接触させる前に、金属表面をクエン酸溶液と接触させるステップをさらに含み得る。また別の実施形態では、方法は、表面をクエン酸溶液と接触させた後、かつ金属表面を組成物と接触させる前に、金属表面を水で濯ぐステップをさらに含み得る。また別の実施形態では、金属表面は、ガスタービン空気圧縮機の表面である。
【0011】
別の実施形態では、オフラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法が開示される。オフライン洗浄方法は、洗浄サイクルと、濯ぎサイクルと、オフライン処理サイクルとを含み得る。オフライン処理サイクルは、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を、1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含み得る。好適な膜形成性アミンには、上述のものが挙げられる。また別の実施形態では、オンラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法が開示される。オンライン洗浄方法は、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を、1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含む、オンライン処理サイクルを含み得る。好適な膜形成性アミンには、上述のものが挙げられる。別のオンライン洗浄方法では、方法は、オンライン処理サイクルの前に濯ぎサイクルを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電気プローブが腐食シミュレーションにおいて曝露された一連の溶液を示すフローチャートである。
図2】表面に傷をつけた後、かつプローブがあらゆる溶液に曝露される前のプローブを示す図である。
図3】エージングステップ中におけるプローブの腐食速度(μm/年)のチャートを示す図である。
図4】エージングステップ後のプローブを示す図である。
図5】プローブの腐食速度(μm/年)に対するH22洗浄の効果のチャートを示す図である。
図6】プローブの腐食速度(μm/年)に対するクエン酸洗浄の効果のチャートを示す図である。
図7】室温クエン酸洗浄後かつ75℃塩水への曝露前のプローブを示す図である。
図8】75℃クエン酸洗浄後かつ75℃塩水への曝露前のプローブを示す図である。
図9】75℃クエン酸洗浄後かつ75℃塩水への曝露後のプローブを示す図である。
図10】プローブの平均及び最大腐食速度(μm/年)の両方に対する防食組成物の効果を示す図である。
図11】プローブの平均腐食速度に対する防食組成物の効果を示す図である。
図12】75℃クエン酸洗浄後かつ防食液への曝露前のプローブを示す図である。
図13】防食液への曝露、続いて75℃塩水への2時間曝露後のプローブを示す図である。
図14図1に示す通りの試験シーケンス全体についてプローブの平均腐食速度のチャートを示す図である。
図15】群「A」箔及び対照箔についての水ビーズ試験結果の写真である。
図16】高速空気試験の前後の、群「A」箔及び群「B」箔についての水ビーズ試験結果の写真である。
図17】ボイラー条件下で、膜形成性アミン(ポリアミン)を含む防食組成物を試験するために使用される腐食装置の概略図である。
図18】腐食試験後、慣習的な亜硫酸ナトリウム処理で処理したクーポンの写真である。
図19】1000ppbの溶存O2の存在下、組成物2(中和アミンのみ)で処理したクーポンの写真である。
図20】1000ppbの溶存O2の存在下、Ex2で処理したクーポンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1以上の膜形成性アミン、高頻度で中和アミンを含む防食組成物は、ボイラー用途において使用されてきた。そのような組成物はボイラー用途において使用されてきたが、そのような組成物が、典型的にはガスタービン空気圧縮機周囲の環境条件及びプロセシング条件での腐食を有効に防止するであろうことは、以前は公知でなかった。
【0014】
ボイラー用途における動作条件は、ガスタービン空気圧縮機周囲の条件とは非常に異なっている。最初に、ボイラー給水は、ボイラーにおいて使用される前に、大規模な精製ステップを経る。結果として、ボイラー給水は、典型的には、無機塩、酸、塩基及びガス等、非常に低レベルの腐食誘発汚染物質を有する。典型的には、ボイラーは、二相の蒸気及び水環境において、非常に低レベルの酸素を用い、高温及び高圧で動作する。溶存酸素は、ボイラーシステムが動作する温度、典型的には、大気圧での水の沸点を著しく上回る温度(212°F又は100℃未満)で、水への極めて低い溶解度を有する。ボイラーは、通常、ボイラー給水からの溶存酸素を加熱し除去するという明確な目的のために、機械的又は熱的脱気機器(一般に「脱気器」と称される)を備えている。脱気器は、典型的には、O2換算で10ppb未満の溶存酸素レベルを含有する(重量ppb又はugl)、加熱したボイラー給水を生成することができる。脱気した後、ボイラー給水から最後に残ったいかなる微量の溶存酸素も除去するために、化学的溶存酸素捕捉剤を添加することは常識である。加えて、ボイラーが動作している間、水を連続的に処理するために、防食剤を添加してよい。
【0015】
対照的に、ガスタービン空気圧縮機は、典型的には、大気温度及び大気圧で、完全に曝気された水により洗浄される。これらの条件下で、水は、通常、O2換算で7〜10ppm(重量ppm)の間の溶存酸素を、又は7000〜10000ppbのO2を含有する。ガスタービン空気圧縮機を、雨水又は大気中凝結によって形成された液体水等の自然水に曝露してもよい。自然水は、典型的には、ボイラー水又は凝結した蒸気よりも数百乃至数千倍の高レベルの溶存酸素を含有する。
【0016】
さらに、ガスタービン空気圧縮機は、酸素濃度が比較的高い周囲条件で空気を吸入する。周囲条件において、空気圧縮機は、温度、圧力及び水分を包含する、空気圧縮機の地理的な位置の、一般的な、優勢な、かつ制御されていない大気中及び気象条件に曝露される。本明細書で先に言及した通り、金属表面と接触している水膜中における高レベルの溶存酸素の存在は、腐食速度及び発生する腐食の種類の両方を著しく増大させる。タービンオンライン洗浄水に防食剤を添加してよいが、アイドリングガスタービン表面での腐食を防止する方法も必要である。
【0017】
ガスタービン空気圧縮機は、地理的な位置及び時季に応じて、多種多様な温度も経験し得る。これらの温度は、約−18℃〜約50℃(0oF〜120oF)の範囲であってよい。動作している場合、空気圧縮機内の温度は、750〜950oF(400〜480℃)の高さにまで到達し得る。
【0018】
模倣ボイラー水条件下で膜形成性アミンを使用する以前の試験は、膜形成性アミンが、O2換算で1000ppbを上回る溶存酸素レベルを含有する(重量ppb又はμgl)水を使用する用途において功を奏する見込みはないことを示した。しかしながら、驚くべきことに、膜形成性アミンを含む防食組成物は、ガスタービン空気圧縮機に典型的な曝露条件下であっても、ガスタービン空気圧縮機の金属表面での腐食を防止するのに有効であることが発見された。したがって、金属表面での腐食を防止するための方法及び組成物が開示される。方法は、金属表面を、1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含む。
【0019】
ガスタービン空気圧縮機を洗浄する場合に、防食組成物を適用してよい。典型的には、オペレータは、二種類の圧縮機洗浄、オンライン及びオフライン洗浄を利用してよい。オフライン洗浄において、ユニットは発電しておらず、典型的には、「回転ギア」モーターによって約800RPM(毎分回転数)で回転する。オフライン洗浄は、定期清浄中、又はガスタービン空気圧縮機がアイドリングされる前に利用される。典型的なオフライン洗浄は、少なくとも、洗浄、濯ぎ、及び乾燥サイクルを包含する。洗浄サイクルは、圧縮機から塵及び破片を洗浄するための、界面活性剤又は洗剤等の清浄剤の使用を包含する。防食剤は、使用されるならば、洗浄サイクル中に適用される。洗浄サイクルの後、残ったあらゆる界面活性剤を除去するために、圧縮機に濯ぎが適用される。乾燥サイクルは、遠心力によって過剰な流体を除去するために、モーター始動機上での非燃焼スピン(unfired spin)を含み得る。オフライン洗浄の一部として適用される場合、防食剤は、圧縮機がオフライン洗浄後にアイドリングされるならば、72時間〜約3週間持続し得る。
【0020】
オンライン洗浄は、ガスタービン空気圧縮機が発電しているか、又は全速力もしくは全負荷で動作している場合に発生する。オンライン洗浄は、典型的には、圧縮機が清浄又はかなり清浄であり、オペレータが圧縮機をオフラインにすることを望まない場合に使用される。通常、脱イオン(DI)水のみがオンライン洗浄に使用される。洗剤も界面活性剤も、熱運転ユニットに蓄積され得るため、使用されない。その上、いくつかの界面活性剤は、強電解質として作用し、圧縮機表面を濡らし得るため、実際に腐食を増大させ得る。
【0021】
本発明の防食組成物は、オフライン洗浄及びオンライン洗浄の両方において使用され得る。オフライン洗浄において使用されるならば、防食組成物は、洗浄及び濯ぎサイクル後に、組成物が可能な限り清浄な表面に適用されることを確実にし、それ故、膜形成機構の効能を最大化するための別個の処理サイクルとして適用され得る。先行技術の防食剤とは違い、本発明の組成物は、清浄又は比較的清浄な圧縮機の防食期間を延長するために、オンライン洗浄においても使用され得る。
【0022】
上述した使用に加えて、組成物は、ガスタービン空気圧縮機に注入された低圧蒸気に添加されてもよく、濯ぎ水の後に空気圧縮機に添加されてもよく、又は洗浄水とは別にスプレーもしくはエアゾールとして添加されてもよい。防食組成物は、金属表面を防食組成物と接触させる、当業者によって予測される他の方法によって適用されてもよい。そのような予測される方法は、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0023】
膜形成性アミンは、本明細書において使用される場合、金属表面上に有機膜を形成し、それにより、腐食性材料及び酸化材料が金属表面に接触するのを防ぐ任意の材料であってよい。腐食性材料及び酸化材料の例は、酸素、溶存酸素、塩化物及び硫化物塩、並びに炭酸等の酸性種を包含するがこれらに限定されない。好適な膜形成性アミンは、一般式Y−R(式中、Yは1又は複数のヘテロ原子(N又はO)を含有する基であり、Rは脂肪酸由来のアルキル基である。)を有する。これらの膜形成性アミンは、エトキシ化脂肪アミン及びジアミン、オクタデシルアミン、エトキシ化獣脂アミン、並びにエトキシ化オレイン酸を包含する。好適なエトキシ化脂肪アミンは、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン等の飽和C12〜C18鎖を持つものを包含する。一実施形態では、Rはオレイル基であってよく、YはNHCH2CH2CH2NH2であってよい。したがって、好適な膜形成性アミンは、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン及び/又は次式の1種以上の脂肪ポリアミンを包含し得る。
【0024】
【化1】
式中、xは約1〜約8であり、yは約0〜約7であり、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C24炭化水素基である。別の実施形態では、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C18炭化水素基であってよい。膜形成性アミンの具体例は、N−オレイルアミン、N−オクタデシルアミン、(Z)−N−9−オクタデセニル−1,3−プロパンジアミン、オクタデセニルアミノトリメチレンアミン、オクタデセニルアミノジ−(トリメチルアミノ)−トリメチレンアミン、N−ステアリル−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノプロピル)−N−ヘキサデシル−N−メチル−1,3−プロパンジアミン及びこれらの混合物を包含するがこれらに限定されない。
【0025】
別の実施形態では、組成物は、1種以上の中和アミンをさらに含み得る。中和アミンは、本明細書において使用される場合、炭酸を中和し、水のpHを上昇させる1以上の材料であってよい。これらの材料は、アンモニア、ヒドラジン、アルキルアミン、環状アミン(アリールアミン)、アルカノールアミン及びこれらの混合物を包含する。中和アミンの具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン(モノエタノールアミン又は「MEA」)、モルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(「DMAPA」)、メトキシプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール(「DEAE」)、及びN,N−ジメチルエタノールアミン(「DMAE」)を包含するがこれらに限定されない。
【0026】
別の方法では、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:0.1〜約1:25である。また別の方法では、該重量比は、約1:2〜約1:10である。代替として、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:4であってよい。
【0027】
別の方法では、組成物は、2種類以上の中和アミンを含み得る。組成物は希釈されていてよい。好適な希釈剤は、水、低分子量アルコール、及び中和アミンシクロヘキシルアミンを包含するがこれらに限定されない。別の実施形態では、組成物は、水又は水溶液で希釈されていてよい。組成物の濃度は、体積で、水の約0.1〜約20000ppmである。
【0028】
例示的な防食組成物は、以下の表1に収載されている範囲内にある任意の配合物を有してよく、但し、個々の構成要素の重量範囲は、防食組成物の総重量百分率が100wt%と等しくなるように選定される。
【0029】
【表1】
当業者であれば、1つを超える配合物が、表1に収載されている範囲内にあってよいことを理解するであろう。したがって、別の実施形態では、防食組成物は、表2に配合1、配合2、配合3、配合4又は配合5という名称で記載された配合物を有し得る。
【0030】
【表2】
別の実施形態では、方法は、金属表面を防食組成物と接触させる前に、金属表面をクエン酸溶液と接触させるステップをさらに含み得る。本発明を1つの動作理論に限定するものではないが、クエン酸洗浄は、膜形成性アミンが金属表面により良好に接着するのを補助し、膜形成機構を改善し得る清浄な表面を提供すると考えられる。クエン酸洗浄は、鋼表面が既に清浄であり、翼板上に、残留石けんも塵も腐食生成物もないならば、必要ない。電気化学的インピーダンス分光法試験は、清浄な金属表面上で、膜形成性アミンの適用前の希釈クエン酸による前処理は、付加的な不動態化利益を提供しないことを示した。しかしながら、汚染された及び又は腐食した金属表面上では、クエン酸が付加的な清浄及び酸化鉄キレート化利益を提供し、これがアミン膜形成作用効能を改善するであろうことが期待される。また別の実施形態では、方法は、表面をクエン酸溶液と接触させた後、かつ金属表面を組成物と接触させる前に、金属表面を水で濯ぐステップをさらに含み得る。
【0031】
金属表面を、防食組成物による処理の最中又は後に、高酸素含有量を持つ追加の水又は水分に曝露してよい。したがって、また別の方法では、金属表面を、処理中又は処理後に、追加の水分及び/又は水及び/又は水溶液に曝露してよい。追加の水分及び/又は水及び/又は水溶液は、その中に、100ppb(重量ppb)より大きい溶存酸素(O2)を有し得る。一実施形態では、溶存酸素含有量は、重量で、約1000ppb(0.1ppm)〜約10000ppb(10000ppm)である。代替として、溶存酸素含有量は、重量で、約7000〜約10000ppbである。
【0032】
上記で言及した通りに、ガス圧縮機は、酸素濃度が比較的高い、周囲温度及び周囲圧力で動作する。酸素の存在は、腐食速度及び発生する腐食の種類を増大させる。タービンオンライン洗浄水に防食剤を添加してよいが、試験は、タービンがオンラインに戻った後にこれらの防食剤が有効性を失うことを示した。故に、アイドリング及び動作ガスタービン表面両方の上において腐食を防止する方法が必要である。本明細書において開示されている防食組成物は、アイドリングガスタービン表面での腐食を防止するのに好適である。防食組成物は、タービンがオンラインである間の腐食を防止するためにも使用され得る。
【0033】
したがって、別の実施形態では、オフラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法が開示されている。オフライン洗浄方法は、洗浄サイクルと、濯ぎサイクルと、オフライン処理サイクルとを含み得る。オフライン処理サイクルは、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を、1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含み得る。好適な膜形成性アミンは、一般式Y−R(式中、Yは1又は複数のヘテロ原子(N又はO)を含有する基であり、Rは脂肪酸由来のアルキル基である。)を持つ膜形成性アミンを包含する、上述したものを包含する。一実施形態では、Rはオレイル基であってよく、YはNHCH2CH2CH2NH2であってよい。これらの膜形成性アミンは、エトキシ化脂肪アミン及びジアミン、オクタデシルアミン、エトキシ化獣脂アミン、並びにエトキシ化オレイン酸を包含する。好適なエトキシ化脂肪アミンは、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン等の飽和C12〜C18鎖を持つものを包含する。したがって、好適な膜形成性アミンは、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン及び/又は次式の1種以上の脂肪ポリアミンを含む。
【0034】
【化2】
式中、xは約1〜約8であり、yは約0〜約7であり、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C24炭化水素基である。別の実施形態では、R1は飽和又は不飽和脂肪族C12〜C18炭化水素基であってよい。膜形成性アミンの具体例は、N−オレイルアミン、N−オクタデシルアミン、(Z)−N−9−オクタデセニル−1,3−プロパンジアミン、オクタデセニルアミノトリメチレンアミン、オクタデセニルアミノジ−(トリメチルアミノ)−トリメチレンアミン、N−ステアリル−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノプロピル)−N−ヘキサデシル−N−メチル−1,3−プロパンジアミン及びこれらの混合物を包含するがこれらに限定されない。
【0035】
別の実施形態では、組成物は、1種以上の中和アミンをさらに含み得る。好適な中和アミンは、アンモニア、ヒドラジン、アルキルアミン、環状アミン(アリールアミン)、アルカノールアミン及びこれらの混合物を包含するがこれらに限定されない。中和アミンの具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン(「MEA」)、モルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(「DMAPA」)、メトキシプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール(「DEAE」)、及びN,N−ジメチルエタノールアミン(「DMAE」)を包含するがこれらに限定されない。
【0036】
別の方法では、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:0.1〜約1:25である。また別の方法では、該重量比は、約1:2〜約1:10である。代替として、膜形成性アミン対中和アミンの重量比は、約1:4であってよい。
【0037】
別の方法では、組成物は、2種類以上の中和アミンを含み得る。組成物は希釈されていてよい。好適な希釈剤は、水、低分子量アルコール、及びシクロヘキシルアミンを包含するがこれらに限定されない。別の実施形態では、組成物は、水又は水溶液で希釈されていてよい。組成物の濃度は、体積で、水の約0.1〜約20000ppmである。
【0038】
また別の実施形態では、オンラインガスタービン空気圧縮機の洗浄方法が開示されている。オンライン洗浄方法は、ガスタービン空気圧縮機の金属表面を、1種以上の膜形成性アミンを含む防食組成物と接触させるステップを含む、オンライン処理サイクルを含み得る。好適な膜形成性アミンには、上述のものが挙げられる。別のオンライン洗浄方法では、方法は、オンライン処理サイクルの前に濯ぎサイクルを含み得る。
【実施例】
【0039】
ガスタービン用途
ガスタービン空気圧縮機グレード材料に対する腐食効果を、実験室において、2つの連結多電極アレイ(「CMA」)プローブ、プローブ1(P1番)及びプローブ2(P2番)を使用して模倣した。プローブ電極は、17−4PHステンレス鋼、ガスタービン空気圧縮機グレード材料でできていた。
【0040】
CMAセンサを備えたnanoCorr(商標)フィールドモニタに、プローブを接続した。CMAセンサは、腐食電極から陰極への電子の流量を測定する。CMAプローブでの腐食電極は、腐食材料における陽極部位のように作用する。したがって、腐食電極からの電子の流量を使用して、電極材料、この場合は17−4PHについて腐食速度を算出することができる。
【0041】
下記の項において記述する通り、傷をつけたプローブを複数の溶液に浸漬するのに応答して、17−4PHの腐食速度を監視した。試験は、プローブを異なる溶液に順次に曝露することによって実施した。使用した溶液を表3に収載する。
【0042】
【表3】
プローブを、図1に示す通り、溶液に順次に曝露した。各溶液曝露間に、プローブを脱イオン(DI)水で濯ぎ、乾燥させた(図示せず)。プローブ表面を研磨しないで、溶液曝露間に表面を新しくした。腐食シミュレーション試験を実施する前に、各プローブから1つの電極に傷をつけて、腐食孔核形成を促進した。傷つけ後かつ溶液のいずれかへの曝露前のプローブの写真を、図2に示す。
【0043】
図1に示す通り、塩水溶液を試験全体を通して数回使用して、ガスタービン空気圧縮機周囲の環境条件及びプロセス条件を模倣した。電極腐食を加速させるために、プローブをエージングステップにも供した。エージングステップの後、H22洗浄ステップの効果を決定した。H22溶液を使用して、センサ上に存在するあらゆる油性堆積物を破壊し、それにより、曝露効率を改善した。次いで、プローブを酸洗浄プロセスに供して、プローブ上に存在するあらゆる錆を除去し、膜形成効率を改善した。酸洗浄は、クエン酸溶液を含んでいた。最後に、プローブの腐食速度に対する、ポリアミンブレンドの効果を測定した。例1については、配合4(表2を参照)を脱イオン(DI)水で希釈した。
【0044】
図3は、エージングステップ中におけるプローブの腐食速度(μm/年)のチャートを示す。エージングステップは、プローブを、室温の塩水に約4日間、次いで、75℃に加熱した塩水に約24時間浸漬することを含んでいた。次いで、電極腐食を加速させるために、プローブを、HCl及びH2SO4水溶液を含むエージング溶液に約10時間浸漬した。図3は、とりわけプローブをHCl及びH2SO4水溶液に曝露した場合の、プローブの測定可能な腐食を示す。次いで、プローブを75℃塩水中に戻して約2時間置いた。エージング後のプローブの写真を図4に示す。図4に示す通り、エージングステップ後、プローブ上には目に見える腐食がある。図3中のポイントAは、図2中の写真を撮影した時間軸におけるポイントを指定する。図3中のポイントBは、図4中の写真を撮影した時間軸におけるポイントを表す。
【0045】
エージングステップの後、プローブをH22中で洗浄した効果を観察した。図5は、プローブの腐食速度(μm/年)に対するH22洗浄の効果を示す。図5に示す通り、プローブを75℃塩水に約3.5時間浸漬した。次いで、プローブをH22溶液に室温で約20分間入れた。次いで、プローブを75℃塩水中に戻して約1時間置いて、H22洗浄前後のプローブの腐食挙動を比較した。H22洗浄後及び1時間の75℃塩水曝露中のプローブの腐食挙動を、クエン酸洗浄のための新たな基準点として使用した。図5において見られる通り、プローブを塩水に曝露した場合、測定可能な腐食がある。H22で清浄することにより、プローブを塩水に再度曝露した場合の腐食の量をわずかに低減させると思われる。
【0046】
クエン酸洗浄を使用して、いくらかの不動態化効果を提供し、センサ表面上に存在するあらゆる錆を清浄し、それにより、膜形成効率を改善した。最初に、プローブを室温クエン酸溶液に約20分間浸漬した。次いで、プローブを75℃塩水に約3.5時間入れ、次いで、75℃クエン酸溶液に約20分間移した。次いで、プローブを75℃塩水中に戻し、クエン酸洗浄前後のプローブの腐食挙動を比較した。プローブの腐食速度(μm/年)に対するクエン酸洗浄の効果を、図6に示す。図6中のX軸は、時間(分)である。図7は、図6中でポイントCによって表されている、プローブを室温クエン酸で洗浄した後、かつ75℃塩水中に戻す前の、プローブの写真を示す。腐食は、図7中のプローブ上で目に見える。図6中のポイントDは、75℃クエン酸洗浄後、プローブを75℃塩水中に戻す前のポイントである。ポイントDにおけるプローブの写真を、図8に示す。75℃クエン酸洗浄後のプローブ上には、室温クエン酸洗浄後よりも少ない腐食が目に見える。75℃クエン酸洗浄及び75℃塩水への曝露両方の後の、ポイントEにおけるプローブの写真を、図9に示す。プローブ上のいくらかの腐食が、図9において目に見える。図6において見られる通り、プローブをクエン酸で洗浄した場合、とりわけ75℃クエン酸で洗浄した場合、腐食の量は低減したと思われる。
【0047】
次に、プローブの腐食速度に対するポリアミンブレンド、例1(Ex1)の効果を測定した。Ex1は、250mlのDI水中5mlの配合4を含む防食液であった。ポリアミンブレンドは、複数の中和アミン及び膜形成性アミンを約4:1の重量比で含んでいた。プローブに対するEx1の効果を測定するために、プローブを再度75℃クエン酸洗浄に入れた。次いで、プローブをEx1に5分間浸漬した。希釈剤、この場合はDI水に対するポリアミンブレンドの濃度は、水に対して体積で約20400ppmのアミンであった(5mlのポリアミンブレンド/250mlのDI水、ここで、ポリアミンブレンドの密度は1.02g/mlである)。より低濃度の活性物質が、ガスタービン空気圧縮機システムでの腐食を防止するのに依然として有効であろうと予測される。有効濃度は、約0.1〜約2000ppmである。別の実施形態では、有効濃度は、約0.1〜約100ppmである。また別の実施形態では、有効濃度は、約0.1〜約50ppmである。代替として、有効濃度は、希釈剤に対して、体積で、約1〜約20ppmの活性物質であってよい。プローブをEx1に沈めた後、再度75℃塩水に2時間沈めた。
【0048】
図10は、プローブの平均及び最大腐食速度(μm/年)の両方に対するEx1の効果を示す。ポイントEを図10に再度示す。図11は、平均腐食速度に対するEx1の効果だけを示す。図10及び11において見られる通り、ポリアミン処理は、プローブ上での腐食の量を著しく低減させた。図12は、75℃クエン酸洗浄後、かつプローブをEx1に沈める前の、ポイントF(図10)におけるプローブを示す。図13は、Ex1に、及び75℃塩水に2時間沈めた後の、図10中のポイントGのプローブを示す。図12及び13を比較すると、ポリアミン処理後に塩水に曝露したプローブにおいて、目に見える腐食はほとんど又は全くない。
【0049】
図14は、図1に示す通りの試験シーケンス全体について平均腐食速度を示す。図14中の卵形領域は、プローブの平均腐食速度を示す。卵形Hは、エージング前の塩水中におけるプローブの腐食速度を包囲する。卵形Iは、エージング後かつEx1での処理後の塩水中での腐食速度を包囲する。図14において見られる通り、ポリアミン処理後の平均腐食速度は、約3.0μm/年未満であった。
【0050】
高速空気中でのポリアミン性能
下記の例は、高速空気流が存在する場合のガスタービン空気圧縮機用途における防食組成物を実証する。該例の目標は、防食組成物によって形成された膜が、高速空気流に曝露された場合、動作している圧縮機内の処理された金属表面上に残るか否かを決定することであった。
【0051】
高速空気試験は、ポリアミンを含む防食組成物で処理した12枚の翼形クーポン「箔」及び1枚の未処理の箔に対して実施した。「箔」は、17−4PHステンレス鋼からできており、翼が受けるのと同じ表面整羽圧縮機に供した。次いで、箔をプロパノールで清浄して、あらゆる残留油を除去した。12枚の箔のうち六(6)枚を、22ppmの配合4を含む防食組成物に12分間浸漬した(表2を参照)。配合4で処理した箔を「A群」として分類した。12枚の箔のうち六(6)枚を、温クエン酸に13分間浸し、濯ぎ、次いで、22ppmの配合5を含む防食組成物に16分間浸漬した(表2を参照)。配合5で処理した箔を「B群」として分類した。最後の箔、対照を、プロパノールで清浄して、あらゆる残留油を除去したが、いかなる防食処理にも供さなかった。
【0052】
次いで、水ビーズ試験を13枚すべての箔に対して実施した。水ビーズ試験は、DI水を充填した噴霧ボトルを使用して、各箔の左から右に、一定流を噴霧することを含んでいた。次いで、各箔の写真を撮った。対照箔は、水ビーズ形成をほとんど又は全く呈さなかった。12枚の処理した箔は、対照よりも多くの水ビーズ形成を呈した。図15は、2枚の箔についての水ビーズ試験結果を示す。左側の箔は、防食組成物で処理したA群からの箔であり、箔の表面上に水ビーズ形成を示す。右側の箔は防食処理なしの対照であり、最小限の水ビーズ形成を示す。
【0053】
次いで、箔を空気流較正リグ(Aerodyne Research社、米国マサチューセッツ州ビルリカ)に装填した。各箔を、空気流試験中、箔の片側が正流に供され、一方、反対側が該流から遮蔽されるように装填した。各箔を、特定のマッハ数に600±5秒間供した。試験条件は、複数の迎え角及び気流速度を包含していた。マッハ試験の後、箔を空気流較正リグから除去し、第二の水ビーズ試験を実施した。再度箔の写真を撮り、膜劣化の兆候について観察した。図16は、水ビーズ試験結果の例示的な写真である。左側の群は、試験前、かつ0.5のマッハ数で試験した後の、45°の迎え角で配向された「A群」箔を示す。図16の右側の群は、0.5のマッハ数前後の、45°の迎え角で配向された「B群」箔を示す。A群及びB群の箔はいずれも、高速空気流試験前後に実質的な水ビーズ形成を示す。表4は、試験したすべての箔についてビーズ水試験結果を示す。「レ」を付けた試験結果は、箔が高速空気に曝露される前のビーズ試験結果と比較して、高速空気試験後の膜劣化がないことを示す。「−」を付けた試験結果は、膜劣化を示す。
【0054】
【表4】
ボイラー用途−比較例
ボイラー用途におけるポリアミンの性能を試験する実験を実施した。実験は、実験用流水式腐食試験システム装置を使用して完了させた。装置は、一連の検出器、化学注入ポンプ、高圧ポンプ及びクーポンラックホルダからなるものであった。図17は、流水式試験システムの概略図である。腐食は、試験クーポンを装置に入れ、各クーポンの重量損失を測定することによって測定した。
【0055】
腐食試験装置コンポーネントはいずれも、304又は316型いずれかのオーステナイトステンレス鋼構造ものであった。装置は、脱イオン水(DI)源と、又は脱イオン水及び脱酸素水と接続されていてよい。DI水は、100ppbより大きい酸素含有量を有していた。脱酸素は、膜接触器カートリッジによって遂行した。脱酸素水は、正しく動作している圧力脱気器を出る水に相当する、8〜12ppb(mg/l)の酸素という酸素含有量を有していた。装置の入口には、混床式イオン交換ポリッシャーがあった。高圧ポンプは、560〜580ml/分の流量を維持していた。化学物質マニホールドは、化学物質の導入が、システム内における水質及び所望の化学的性質を取得することを可能にした。化学注入ポンプは、Eldex(商標)(Eldex Laboratories社、米国カリフォルニア州ナパ)精密注入ポンプであり、処理組成物(組成物1、組成物2及びEx2)は、Isco HPLC噴射ポンプ(Teledyne Technologies社、米国ネブラスカ州リンカーン)を使用して適用した。サーモスタットでオン/オフ制御された流水式加熱器によって、温度を実現し、維持した。装置内の圧力は、120psig(9.3bar、0.93MPa)に維持した。この圧力は、すべての場合において、液相のみ(蒸気なし)が存在することを保証するために、システムの温度における飽和沸騰圧力を上回っていた。システム内の圧力は、高流量ドーム圧力調整器によって一定に保った。
【0056】
入口溶存酸素、pH及び伝導度は、インライン加熱器後に、冷却した側流試料中で測定した。故に、pH及び伝導度は、室温で測定した。クーポンラックは4つのクーポンを含有しており、システム及び化学的パラメータを調整及び平衡化している間に、必要ならばバイパスさせてよい。ドーム圧力調整器の前に、腐食クーポンラックの下流の溶存酸素出口測定のために、別の冷却した側流試料が利用可能であった。
【0057】
酸素の濃度は、曝気されたDI水を脱酸素水流に送給することによって実現した。典型的な実行は、室温ですべての所望の化学パラメータを確立することによって開始し、クーポンラックをバイパスさせた。クーポンを清浄し、秤量し、テフロン(登録商標)洗浄機を使用してクーポンホルダ内にセットして、電解腐食を最小化した。この測定された重量が、初期クーポン重量である。通常、各実行において、4つのクーポン−2つの低炭素鋼合金(LCS)、1つのアドミラルティ黄銅合金(ADM)及び1つの銅(Cu)がある。ラック内の鋼クーポンの下流には、あらゆる潜在的な銅が低炭素鋼をめっきするのを回避するために、金クーポンが位置していた。
【0058】
高温Corrater(商標)(Rohrback Cosasco Systems社、米国カリフォルニア州サンタフェスプリングズ)直線偏光プローブを、即時腐食決定に使用した。一方のプローブはLCS電極を、他方はADM電極を有していた。実験の経過中に、Corrater(商標)機器を介して為された即時腐食速度測定と標準的なクーポン重量損失法によって測定された重量測定腐食速度との間に相関の欠如があったことに着目された。これは、使用した試験水の比較的低い伝導度に部分的に起因すると考えられた。
【0059】
クーポンラックを窒素ガスでパージして、空気を排除した後、ラックを試験システムに組み込んだ。バイパス弁を使用して、給水にクーポンラックを通過させた。加熱器を実行の温度に設定し、システムが温度に到達するのに15〜25分を要した。1セットを除いてすべての実行について、標準的な曝露時間は、7日間であった。560ml/分の流量で、クーポンラックにおける線形速度は、約3.64フィート/分(毎分1.1メートル)であった。
【0060】
クーポンを7日間曝露させた後、加熱器を外し、装置を給水流で冷却させた。バイパス弁を使用して、クーポンラックを装置から外した。クーポンを除去し、DI水及びイソプロパノールで濯ぎ、風乾させ、写真を撮り、清浄し、秤量した。清浄後の重量が、最終クーポン重量であった。実行のそれぞれを2連で実施した。2連の実行間の再現性は、およそ0.2mpy(5.08μm又は0.005mm年)又はそれよりわずかに低かった。
【0061】
試験前のクーポン重量(初期重量)マイナス試験後の重量(最終重量)を使用して、クーポン重量損失を決定し、標準的な様式にて腐食速度を1年当たりのミル(mpy)で算出した。
【0062】
評価したポリアミン配合物(Ex2)は、アルカリ培地を提供するための中和アミンのブレンドであるポリアミン構成要素と、少量の合成ポリマー分散剤とを包含していた。より具体的には、Ex2は、配合4と同じ構成要素(表2を参照)をその中に含んでいたが、幾分異なる比率であった。2つの標準、又は比較例(組成物1及び組成物2)も試験した。組成物1は、10ppmの慣習的な亜硫酸ナトリウム処理を含む水溶液であった。組成物2はEx2において使用したものと同じ中和アミンのブレンドを含む水溶液であった。
【0063】
平均腐食速度差パーセント(%AvCorDiff)は、以下の式(1)に従って、標準処理(1又は複数)におけるクーポンの平均腐食速度(avB)から、ポリアミンベース生成物についてのクーポンの平均腐食速度(avP)を引き、標準(1又は複数)の平均腐食で割り、結果に100を乗じたものとして定義される。
【0064】
%AvCorDiff=[(avB−avP)/avB]×100 (1)
方程式(1)によって定義される通り、%AvCorDiffが正数であれば、ポリアミン生成物は、クーポン中において標準(1又は複数)よりも少ない腐食を生成した。%AvCorDiffが負数であれば、ポリアミン生成物は、クーポン中において標準(1又は複数)よりも多い腐食を生成した。
【0065】
標準及びポリアミン実行は重複して行ったため、各平均は、各重複からの腐食結果をすべて考慮している。したがって、LCS結果は、4つのクーポンの腐食速度を平均したものであり、ADM及びCu結果は、それぞれ2つのクーポンを平均したものである。
【0066】
軟質化した水、1000ppb(μg/l)の溶存酸素を、85℃(185oF)の温度で使用して、給水条件の非常に厳密なセットを試験して、工業用低圧ボイラー給水を模倣した。軟質化した水は、CaCO3換算で0.2ppm(mg/l)のCa、CaCO3換算で0.1ppm(mg/l)のMg、SiO2換算で5ppmのシリカ、及びCaCO3換算で50ppmのMアルカリ度から構成されていた。この模倣水の室温伝導度は、およそ100μScm-1であった。
【0067】
この給水についての腐食結果を、表5に提示する。亜硫酸ナトリウム酸素スカベンジャー処理を含む組成物1標準のみが、LCSについては1.5mpy(0.0381mm/年)よりも低い、ADMについては0.6mpy(0.015mm/年)よりも低い腐食速度をもたらした。すべての銅クーポンは、標準及びポリアミンベース生成物について、0.5mpy(0.0127mm/年)を下回る腐食速度を有していた。換言すれば、この模倣した軟化給水条件における処理間で、銅の腐食における差はなかった。
【0068】
【表5】
組成物2及びポリアミン生成物(Ex2)を加えたシステム中の溶存酸素濃度が1000ppbであったのに対し、慣習的な亜硫酸ナトリウム処理をした組成物1においては、溶存酸素が12ppb(μg/l)に低減し、pHがおよそ9であったことに留意されたい。
【0069】
表5に示す結果から、ポリアミン生成物は、同一のアミンブレンドと同じ給水pHでの慣習的な亜硫酸ナトリウム処理によって提供されるものに相当する炭素鋼の腐食保護を提供しなかったことが明らかである。O2換算で1000ppb(μg/l)のこの高溶存酸素条件は、圧力脱気器の非存在下で低圧ボイラー給水を模倣することを意図したものである。
【0070】
腐食試験後に慣習的な亜硫酸ナトリウム処理で処理したクーポンの写真を、図18に示す。図18において見られる通り、慣習的な亜硫酸ナトリウム処理で処理したクーポンは、ごくわずかな目に見える腐食を示す。図18中のクーポンについて、平均腐食速度は、約1.27mpy又は約32.3μm/年であった。1000ppbの溶存O2の存在下、組成物2(中和アミンのみ)で処理したクーポンの写真を、図19に示す。図19に示すクーポンは、かなりの量の腐食を示す。図19中のクーポンについて、平均腐食速度は、約14mpy又は約356μm/年であった。
【0071】
1000ppbの溶存O2の存在下、Ex2で処理したクーポンの写真を、図20に示す。ポリアミン生成物及び組成物2の両方について、LCSクーポンは、縞の入った表面、及び縞の入った領域においてはピットを示した。ポリアミンブレンドEx2が、組成物2に対してADMの腐食速度に悪影響を及ぼしたと思われる。表5に示す通りのポリアミン処理は、低炭素鋼腐食速度を組成物2標準に対して59%減少させたが、慣習的な亜硝酸スカベンジャー処理に対して著しく高い、炭素鋼上での腐食速度が依然としてあった。Ex2で処理した、図20に示すクーポンについて、平均腐食速度は、約6.1mpy又は約155μm/yであった。この結果は、ポリアミン処理による給水溶存酸素レベルの観点から耐性の限界があること、及び正しく動作している圧力脱気器の非存在下でポリアミン処理を適用することは賢明であろうことを示すであろう。その上、組成物2及びEx2で処理したクーポンについて、平均腐食速度は、ボイラー用途には許容できないほど高い腐食を呈し、呈された腐食速度は、ガスタービン空気圧縮機用途にも許容できないものであっただろう。
【0072】
故に、ボイラー水処理の当業者は、金属表面が高レベルの溶存酸素に曝露されるであろう用途において、ポリアミンブレンドが功を奏することを期待しないであろう。これは、タービンが周囲条件で動作し、ガスタービン合金上に存在するあらゆる液体が完全に酸素化されるであろう、ガスタービン空気圧縮機用途を包含する。上記の表5及び図19に記述されているボイラー腐食試験において、溶存酸素レベルは、1000ppb(1ppm)に制御されており、これは、不適切に動作している脱気加熱器、又は脱気機器の非存在のいずれかを示す、ボイラーシステムにおいては非常に高い溶存酸素レベルとみなされるであろう。比較すると、周囲温度、大気条件下、ガスタービン空気圧縮機上で形成された完全に曝気された水膜は、具体的な温度及び大気圧に応じて、典型的には、7000〜10000ppb(7〜10ppm)の間の溶存酸素レベルを含有するであろう。しかしながら、驚くべきことに、ポリアミンブレンドは、2つの連結多電極アレイ(「CMA」)プローブを使用して、完全に曝気されたガスタービン空気圧縮機条件を模倣している実験室試験において功を奏した。ここで図11に戻ると、平均腐食速度は、ポリアミン処理後に、概して約10μm/年未満であり、いくつかの場合においては著しく低い。しかしながら、ボイラー用途におけるポリアミン処理クーポンの腐食速度は、少なくとも1桁大きいものであった。
【0073】
この書面による明細は、例を使用して最良の形態を包含する本発明を開示し、また、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを包含する本発明を、当業者が実践できるようにするものである。本発明の特許性のある範囲は請求項によって定義され、当業者が想到する他の例を包含し得る。そのような他の例は、請求項の逐語的文言と相違のない構造要素を有するならば、又は請求項の逐語的文言との相違がごくわずかな同等の構造要素を包含するならば、請求項の範囲内であるように意図されている。
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