【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、これらの目的は、添付の請求項に規定される特徴を有する方法によって達成される。この方法の好ましい実施形態が、添付の従属請求項によって提示されている。
【0010】
本発明の第1の態様は、吸収性物品における液体排出事象を検出する方法に関しており、その方法では、吸収性物品は、吸収性物品の湿り度合いを表す電気出力信号を生成するように適合されたセンサを備え、その電気出力信号は処理装置によって受信される。方法は、液体排出事象を表す経時的な基準データを提供するステップと、電気出力信号の形態で経時的な液体排出データを取得するステップと、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で、処理装置を用いて分析するステップと、その分析に基づいて液体排出事象を検出するステップとを含む。
【0011】
ここで、湿り度合いとは、任意の湿り度合いと共に、まったく湿っていないこと、つまり、完全に乾いているか、または、他の乾き度合いであることを意味することが意図されている。湿り度合いは、代わりに、湿り状態として表現することもできる。さらに、センサは、吸収性物品の湿り状態または湿り度合いを表す電気出力を生成する任意適切なタイプのセンサであり得る。このようなセンサは、コンダクタンス、インピーダンス、抵抗、アドミタンス、電圧、電流などの電気的特性、または、温度、湿度、pH、もしくは他の適切な特性に相当する電気的特性を測定するセンサであり得る。さらに、センサは、尿または湿気に反応する半導体を備えることができる。経時的な基準データは、データセット、または、液体排出事象を表すと共に経時的なデータセットを導き出すことができる数学的モデルであり得る。このようなデータセットは、必要または要望により、基準曲線として描画できる。液体排出事象を表す基準データは、異なる種類のセンサに対しては異なる特性を有している。液体排出事象を表す基準データが異なる種類のセンサに対して異なる特性を有しているため、基準データは、本発明による方法の間に使用されるセンサに対して決定される必要がある。さらに、分析するステップは、液体排出すなわち湿気のデータと基準データとを経時的に比較する任意適切な方法、または、液体排出データと基準データとの間の差を経時的に評価する任意適切な方法を含むことができる。例えば、液体排出データと基準データとを何らかの手法で経時的に比較することや、データセットと液体排出データとの相関性の度合いを計算することである。他の適切な方法は、データに一致する数学的関数または曲線を見つけ出してから、一致した曲線を、液体排出または湿り事象のための所定の数学的モデルを表す所定の数学的関数と比較するために、液体排出データを曲線に一致させることであってもよい。また、適合性の度合い、または、液体排出データと基準データとの間の相似性の度合いを評価するさらに他の適切な方法が、用いられてもよい。
【0012】
経時的な液体排出データを経時的な基準データとの関連で分析することによって、方法は、瞬間的な液体排出データ値を閾値と単に比較する代わりに、経時的な基準データとの関連でデータの変化を考慮できる。換言すれば、基準データと液体排出データとの経時的な特性の差が比較されるため、より信頼できる液体排出の検出となる。さらに、方法は、センサの電気出力信号と、吸収性物品の湿気状態すなわち湿り度合いとの間の非線形的な関係を考慮できる。
【0013】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、基準データは所定のものである。ここで、所定とは、データセットまたは数学的モデルが、本発明の方法が適用される前に決定されることを意味することが意図されている。少なくとも1つの例示の実施形態によれば、基準データは、本発明の方法を適用する前に実施される一式の液体排出測定に基づき、好ましくは、統計的に信頼できる一式の測定に基づく。
【0014】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、液体排出データを表す曲線と、基準データを表す曲線との適合性の度合いを経時的にそれぞれ評価することを含み、液体排出事象を検出するステップは、その適合性の度合いに基づく。
【0015】
ここで、適合性の度合いとは、2つのデータセットをそれぞれ表す経時的な曲線同士の間での形態の対応性の度合いを意味することが意図されている。適合性の度合いと相関性の度合いとは、特には形態で曲線同士を視覚的に比較すること、相関係数を計算すること、または、他の公知の数学的方法など、任意適切な方法を用いて評価できる。適合性の度合いは所定の適合性の度合いと比較でき、その場合、液体排出は、適合性の度合いが所定の適合性の度合い以上であるとき、発生したと見なされる。適合性の度合いは、それぞれのデータの実際の大きさとは無関係に、適切に分析される。複数の液体排出事象の場合では、適合性の度合いは、単一の液体排出事象に対応する各期間に関して評価される。
【0016】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、液体排出データと基準データとの相関性の度合いを経時的にそれぞれ評価することを含み、液体排出事象を検出するステップは、その相関性の度合いに基づく。
【0017】
液体排出データと基準データとの相関性の度合いを経時的に評価することによって、方法は、単一の閾値と比較する代わりに、経時的なデータの変化を考慮できる。したがって、より信頼できる液体排出の検出が得られる。相関性の度合いは、液体排出データを表す曲線と基準データを表す曲線とのそれぞれを視覚的に比較すること、または、相関係数を計算すること、または、他の公知の方法など、任意適切な方法を用いて評価できる。相関性の度合いは所定の相関性の度合いと比較でき、その場合、液体排出は、相関性が正または負のどちらであるかに応じて、相関性の度合いが所定の相関性の度合い以上または以下であるとき、発生したと見なされる。正の相関性の場合、液体排出は、相関性の度合いが所定の相関性の度合い以上であるとき、発生したと見なされる。また、負の相関性の場合、液体排出は、相関性の度合いが所定の相関性の度合い以下であるとき、発生したと見なされる。複数の液体排出事象の場合では、相関性の度合いは、単一の液体排出事象に対応する各期間に関して評価される。
【0018】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、液体排出データと基準データとの積を計算することを含む。
【0019】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、液体排出データと基準データとの畳み込みを計算することを含む。少なくとも1つの例示の実施形態によれば、畳み込みは積を含む。
【0020】
ここで、畳み込みの離散した形態が適切である。このような畳み込みは、実施および分析するのが比較的容易であるため、有利である。さらに、畳み込みを用いることは、経時的な基準データをそれぞれ単一の液体排出事象に偏移するための複雑なアルゴリズムを必要としない。代替で、相互相関を畳み込みの代わりに用いることができる。
【0021】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、そのデータと基準データとの積または畳み込みの値を、液体排出データのベースレベルとの関連で、第1の所定値と比較することを含み、液体排出事象を検出するステップはその比較に基づき、液体排出は、積または畳み込みがベースレベルから少なくとも先の第1の所定値だけ逸脱するとき、発生したと見なされる。
【0022】
ベースレベルとは、先の電気信号が液体排出事象の前または後において安定しているレベルを意味することが意図されている。つまり、何らかの液体排出事象の前の安定レベル、または、液体排出事象の後に信号が安定したレベルのいずれかである。逸脱は、積または相関性が負または正であるかに応じて、負または正であり得る。積または相関性が正である場合、液体排出事象は、積または畳み込みがベース値との関連で、第1の所定値で正側に逸脱しているとき、発生したと見なされる。積または相関性が負である場合、液体排出事象は、積または畳み込みがベース値との関連で、第1の所定値で負側に逸脱しているとき、発生したと見なされる。
【0023】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、経時的な液体排出データを、経時的な基準データとの関連で分析するステップは、ベースレベルから第1の所定値だけ逸脱する先の積または畳み込みの順次データ値の数値を計算することを含み、順次データ値のその数値は第2の所定値と比較され、液体排出は、順次データ値の数値が第2の所定値を超えているとき、発生したと見なされる。
【0024】
ここで、順次とは、絶対的な順次を意味することが意図されている。つまり、順次データ点とは、互いに順番に続いていく一連のデータ点である。第2の所定値は、第1の所定値と等しくてもよいし、または、異なっていてもよく、本発明の方法を適用する前に実施される一式の液体排出測定に基づく。
【0025】
このような比較は、検出される誤った液体排出事象の数を減らせるため、有利である。したがって、方法の精度がさらに高められる。
【0026】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、センサは、液体排出を検出するための複数の検出領域を備え、検出領域の各々は、それぞれの各領域の湿り度合いを表す対応する電気出力信号を生成するように適合される。
【0027】
複数の検出領域は、代替で、複数の湿気センサ要素、または、複数の検出領域を形成する湿気センサの形態であってもよい。
【0028】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、液体排出データを取得するステップは、検出領域の各々に対して個々に実施される。
【0029】
各検出領域に関して個々にデータを取得することは、ある種の誤差または不正確さを含む場合に、所望の領域に関するデータを無関係とすることができるため、有利である。
【0030】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、液体排出データを分析するステップと液体排出事象を検出するステップとは、検出領域の各々に関するデータから構成される液体排出データに対して実施されるか、または、検出領域の各々に関するデータに対して個々に実施される。
【0031】
ここで、構成されるとは、液体排出データが、各液体検出領域に関する液体排出データを、例えば、各検出領域に関する液体排出データの合計の形態、または、何らかの他の適切な手法で含むことを意味することが意図されている。液体排出データを分析するステップと液体排出事象を検出するステップとを実施することによって、このように構成された液体排出データは、より少ない計算ステップが実施されることになるため、より速い計算を可能にする。また、必要なコンピュータ要件がより少なく、必要なメモリがより少なくなる。
【0032】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、液体排出事象を検出するステップは、少なくとも1つの後に起こる液体排出を、検出領域の各々に関して個々に取得されたデータに基づいて検出するステップをさらに含み、液体排出データを分析するステップは、取得された全体の経時的なデータに適用されるか、または、単一の液体排出に対応する取得された経時的なデータの各部分に関して適用される。
【0033】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、方法は、液体排出データを分析するステップの前に、2つの異なる時間の間における、湿り度合いを表す電気出力信号の変化を、第3の所定値と繰り返し比較するステップをさらに含み、液体排出データを分析するステップを実施する決定がその比較に基づく。
【0034】
このような比較は、不必要なデータ処理を回避することができる。そのため、必要なデータ容量がより小さくなる。
【0035】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、出力信号は、第1の処理装置によって、液体排出データを取得するステップの間に、電気出力信号の形態で受信される。
【0036】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、液体排出データを、液体排出を表す基準データとの関連で分析するステップと、分析に基づいて液体排出事象を検出するステップとは、第1の処理装置を用いるか、または、第2の処理装置を用いることによって実施される。
【0037】
2つの処理装置は離れた場所でのデータ処理を可能にし、これは、いくつかの理由のために有利である。例えば、吸収性物品にある装置は、データを処理するように構成されていない場合、比較的小さい可能性がある。さらに、介護者が遠隔から液体排出データを観察できることは、実用的であり得る。
【0038】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、電気出力信号は、抵抗、コンダクタンス、インピーダンス、電圧、アドミタンス、または電流のうちの1つである。
【0039】
本発明の第2の態様は、吸収性物品における液体排出事象を検出するシステムに関する。そのシステムは、電気的特性を表す出力信号を生成するように配置されているセンサを備えた吸収性物品と、吸収性物品のセンサによって生成された出力信号を処理するように適合された処理装置とを備える。処理装置は、本発明による方法を実施するように、かつ、吸収性物品への液体排出事象をその方法に基づいて検出するように適合されている。
【0040】
適切には、システムは、液体排出事象を指し示すように適合される。
【0041】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、システムは、処理装置に接続されているか、または、接続可能となっており、本発明による方法の結果を表示するように配置された表示装置をさらに備える。
【0042】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、システムは、液体排出事象が検出されたとき、検出に基づいた警報信号を生成するように適合された警報装置をさらに備える。
【0043】
システムの利点は、前述した方法の利点と同様である。
【0044】
概して、特許請求の範囲で用いられるすべての用語は、本明細書において明確に定められていない場合、技術分野におけるそれらの普通の意味によって解釈されるものである。「1つまたはその要素(element)、装置(device)、部品(component)、手段(means)、ステップ(step)など」へのすべての言及は、明確に述べられていない場合、その要素、装置、部品、手段、ステップなどの少なくとも1つの例に言及しているとして、非制限的に解釈されるものである。
【0045】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な開示から、添付の従属請求項から、および、図面から明らかになるものである。
【0046】
ここで、本発明のこの態様および他の態様を、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照しつつ、より詳細に説明する。