【文献】
J. Mol. Biol.,1996年,Vol.262,pp.732-745
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、メソテリンに特異的であるかまたは高い親和性を有し、対象に治療利益を送
達できる新規免疫複合体の発見に基づく。本発明の免疫複合体は、本明細書に十分以上に
記載されている多くの文脈において使用できる。本明細書に記載の本発明は、記載の抗メ
ソテリン抗体、免疫複合体、処置法、プロトコル、細胞系、動物種もしくは属、構築物お
よび試薬を包含する本発明の任意の態様に関して本明細書に記載される特定の詳細に限定
されるものではなく、そしてそのようなものとして異なり得ることが理解されるべきであ
る。本明細書において使用する専門用語は具体的な態様のみを記述する目的のためであり
、そして本発明の範囲を限定するものではないこともまた理解されるべきである。
【0018】
定義
他に定義がない限り、本明細書において使用する全ての技術および科学用語は、本発明
が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。しかしながら、以下の参考文献
は、本発明が関連する当業者に本発明において使用する用語の多くの一般的定義を提供す
ることができ、そしてそのような定義が当該技術分野において一般に理解される意味と一
致する限り参照しそして使用することができる。そのような参考文献には、Singleton et
ah, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2d ed. 1994); The Cambrid
ge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); Hale & Marham, The H
arper Collins Dictionary of Biology (1991);および Lackie et al., The Dictionary
of Cell & Molecular Biology (3d ed. 1999);および Cellular and Molecular Immunolo
gy, Eds. Abbas, Lichtman and Pober, 2nd Edition, W.B. Saunders Companyが含まれる
がこれらに限定されない。当該技術分野において一般に理解される意味を有する本明細書
において使用する用語の定義を提供する当業者に利用可能な任意の追加の技術的資源を参
考にすることができる。本発明の目的のために、以下の用語がさらに定義される。追加の
用語は、記述の他の所に定義される。
【0019】
本明細書においてそして添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「1つの(
a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、文脈が他に明らかに指示しない限
り複数の言及が包含される。従って、例えば、「1つの遺伝子(a gene)」への言及は1
つもしくはそれ以上の遺伝子への言及であり、そして当業者に既知であるその同等物など
が包含される。
【0020】
本明細書において用いる場合、「抗体」という用語には天然から単離されるかもしくは
組換え手段により製造される免疫グロブリン分子(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよ
びIgYを包含する任意のタイプ、ならびに/もしくはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およ
びIgA2を包含する任意のクラス)が包含される。抗体にはまた、完全な免疫グロブリンか
ら製造されるかもしくは組換え手段により製造される、Fab、F(ab’)2、scFv(一本鎖Fv
)、Fv、一本鎖抗体、二重特異性抗体、ジスルフィド結合したFv(sdFv)、およびVLもし
くはVHドメインを含んでなるフラグメントのような抗原結合抗体フラグメントも包含され
るものとする。
【0021】
本発明の抗体および/もしくは抗原結合抗体フラグメントは、単一特異性(例えばモノ
クローナル)、二重特異性、三重特異性であるかもしくはより大きい多重特異性のもので
あってよい。多重特異性抗体は、抗原の異なるエピトープに特異的であってよく、あるい
は1個以上の抗原のエピトープに特異的であってよい。例えば、PCT公開公報WO 93/17715
; WO 92/08802; WO 91/00360; WO 92/05793; Tutt, et al., 1991, J. Immunol. 147:60
69; 米国特許4,474,893; 4,714,681; 4,925,648; 5,573,920; 5,601,819; Kostelny et a
l., 1992, J. ImmunoL 148:1547 1553参照されたい。これらの各々は参照により本明細書
の一部とする。
【0022】
抗原結合抗体フラグメントは、単独でもしくは以下のもの:ヒンジ領域、CH1、CH
2、CH3およびCLドメインの全部もしくは一部と組み合わせて可変領域(1つもしく
は複数)を含んでなることができる。また本発明に包含されるのは、ヒンジ領域、CH1
、CH2、CH3およびCLドメインと可変領域(1つもしくは複数)の任意の組み合わ
せもまた含んでなる抗原結合抗体フラグメントである。
【0023】
好ましくは、抗体もしくは抗原結合抗体フラグメントはヒト、ヒト化、ネズミ科動物(
例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ科動
物、ウマもしくはニワトリである。本明細書において用いる場合、「ヒト」抗体にはヒト
免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が包含され、以下にそして例えばKucherlapa
tiらによる米国特許5,939,598に記載のように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、
ヒトB細胞から、または1つもしくはそれ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジ
ェニックの動物から単離された抗体が包含される。抗体という用語はまた、CDRが由来
する自然抗体の結合活性に対してこれらのキメラタンパク質で認められる標的抗原の結合
が維持されるように自然抗体に存在するものと同じ活性結合構造に抗体CDRインサート
を配置することができる他のタンパク質骨格にも及ぶ。
【0024】
本明細書において用いる場合、非ヒト(例えばネズミ科動物)抗体の「ヒト化」形態と
いう用語は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分
について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基(例えば相補性決定領域「CD
R」)が所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギもしくは非ヒ
ト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基(CDR)で置換されて
いるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合において、ヒト免疫グロ
ブリンのフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基で置換されうる。さらに
、ヒト化抗体はレシピエント抗体にもしくはドナー抗体に存在しない残基を含んでいても
よい。そのような改変は、抗体性能をさらに改善するために行われる。一般に、ヒト化抗
体は少なくとも1つのもしくは典型的には2つの可変領域の実質的に全てを含んでなるこ
とができ、ここで、超可変領域の全てもしくは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのも
のに対応し、そしてFRの全てもしくは実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のもので
ある。ヒト化抗体は所望により免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型
的にはヒト免疫グロブリンのものを含んでいてもよい。概説として、Jones, et al., (Na
ture 321:522-525, 1986); Reichmann, et al., (Nature 332:323-329, 1988);および Pr
esta, (Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992)を参照されたい。ヒト化抗体の製造
は、米国特許7,049,135、6,828,422、6,753,136、6,706,484、6,696,248、6,692,935、6,
667,150、6,653,068、6,300,064、6,294,353および5,514,548に見られ、これらは各々そ
れらの全体において本明細書の一部とする。
【0025】
本明細書において用いる場合、「一本鎖Fv」もしくは「sFv」抗体フラグメントという用
語は抗体のVHおよびVLドメインを含んでなり、ここで、これらのドメインは単一のポ
リペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構
造を形成することを可能にするVHとVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含
んでなる。概説として、Pluckthun (The Pharmacology of Monoclonal Antibodies. Vol.
113, Rosenburg and Moore eds. Springer- Verlag, New York, pp. 269- 315, 1994)を
参照されたい(参照により本明細書の一部とする)。
【0026】
「二重特異性抗体」という用語は、2個の抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを
意味し、これらのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変
ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含んでなる。短すぎるために
同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を与えないリンカーを用いることにより、これらのド
メインはもう一つの鎖の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を生じさせられる
。二重特異性抗体は、例えばEP 404,097; WO 93/11161;および Hollinger, et al., (Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993)にさらに十分に記載され、これらは各々
参照により本明細書の一部とする。
【0027】
「線状抗体」という表現は、当該技術分野において、例えばZapata, et al., (Protein
Eng. 8(10): 1057-1062, 1995)に記載の抗体を意味する(参照により本明細書の一部と
する)。簡潔に言えば、かかる抗体は1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFd
セグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含んでなる。線状抗体は、二重特異性もし
くは単一特異性であることができる。
【0028】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において用いる場合、実質的に均質な
抗体の集団から得られる抗体、すなわち、微量で存在し得る可能な天然に存在する突然変
異を除いて同一の集団を含んでなる個々の抗体を意味する。モノクローナル抗体は非常に
特異的であり、すなわち、単一の抗原部位に向けられる。さらに、異なる決定基(エピト
ープ)に対する異なる抗体を典型的に含む常套の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的
に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。「モノクローナル」と
いう修飾語句は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、そして任意
の特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明
に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler, et al., (Nature 256:495, 1975)に
より最初に説明されたハイブリドーマ法により製造することができ、もしくは組換えDN
A法(例えば米国特許4,816,567参照)により製造することができる。モノクローナル抗
体はまた、例えばClackson, et al., (Nature 352:624-628,1991) and Marks, et al., (
J. MoI. Biol. 222:581-597, 1991)に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから
単離することもできる。
【0029】
本明細書のモノクローナル抗体にはまた、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および
/または軽鎖の一部が、特定の種から得られるかまたは特定の抗体クラスもしくはサブク
ラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同であり、一方、鎖(
1つもしくは複数)の残りの部分が別の種から得られるかまたは別の抗体クラスもしくは
サブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同である「キメ
ラ」抗体、ならびにそのような抗体のフラグメントも包含される(例えば、米国特許4,81
6,567;およびMorrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855, 1984参照
。これらは各々参照により本明細書の一部とする)。
【0030】
本明細書において用いる場合、「生体サンプル」または「患者サンプル」という用語は
、本明細書において用いる場合に、生物または生物の構成要素(例えば細胞)から得られ
るサンプルを意味する。サンプルは、任意の生物学的組織または液体のものであってよい
。サンプルは、患者から得られるサンプルである「臨床サンプル」であってもよい。その
ようなサンプルには、他の体液サンプルの中でも、痰、血液、血清、血漿、血球細胞(例
えば白血球)、組織サンプル、生検サンプル、尿、腹水および胸膜液、唾液、精液、乳房
浸出液(breast exudate)、脳脊髄液、涙液、粘液、リンパ液、サイトゾル、腹水、羊水
、膀胱洗浄液および気管支肺胞洗浄液またはそれら由来の細胞が包含されるが、これらに
限定されない。患者サンプルは新鮮であるかもしくは凍結してよく、そしてヘパリン、ク
エン酸塩もしくはEDTAで処理することができる。生体サンプルにはまた、組織学的目
的のために採取した凍結切片のような組織の切片を包含してもよい。
【0031】
「がん」という用語には、膵臓、乳房、呼吸器、脳、生殖器官、消化管、尿路、眼、肝
臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがんのような固形腫瘍、およびそれらの遠隔転移
が包含されるがこれらに限定されない。該用語にはまた、肉腫、リンパ腫、白血病および
形質細胞性骨髄腫も包含される。
【0032】
呼吸器のがんの例には、小細胞および非小細胞肺がん、ならびに気管支腺腫および胸膜
肺芽腫が包含されるがこれらに限定されない。乳がんの例には、浸潤性腺管がん、浸潤性
小葉がん、非浸潤性腺管がんおよび非浸潤性小葉がんが包含されるがこれらに限定されな
い。脳腫瘍の例には、脳幹および視床下部(hypophtalmic)神経膠腫、小脳および大脳星
状細胞腫、髄芽細胞腫、上衣細胞腫、ならびに神経外胚葉性および松果体部腫瘍が包含さ
れるがこれらに限定されない。男性生殖器官の腫瘍には、前立腺がんおよび精巣がんが包
含されるがこれらに限定されない。女性生殖器官の腫瘍には、子宮内膜がん、子宮頸がん
、卵巣がん、膣がんおよび外陰がん、ならびに子宮の肉腫が包含されるがこれらに限定さ
れない。消化管の腫瘍には、肛門がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、
胃がん、膵臓がん、直腸がん、小腸がんおよび唾液腺がんが包含されるがこれらに限定さ
れない。尿路の腫瘍には、膀胱がん、陰茎がん、腎臓がん、腎盂がん、尿管がんおよび尿
道がんが包含されるがこれらに限定されない。眼がんには、眼内黒色腫および網膜芽細胞
腫が包含されるがこれらに限定されない。肝臓がんの例には、肝細胞がん(繊維層板バリ
アント(fibrolamellar variant)を有するもしくは有さない肝細胞がん)、胆管がん(
肝内胆管がん)および混合型肝細胞胆管がんが包含されるがこれらに限定されない。皮膚
がんには、扁平上皮細胞がん、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚がんおよび非
黒色腫皮膚がんが包含されるがこれらに限定されない。頭頸部がんには、喉頭がん/下咽
頭がん/鼻咽頭がん/口腔咽頭がん、ならびに口唇および口腔がんが包含されるがこれら
に限定されない。リンパ腫には、エイズ関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞
性リンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が包含されるがこれらに限定されな
い。肉腫には、軟組織の肉腫、骨肉種、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉
腫が包含されるがこれらに限定されない。白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽
球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が包含される
がこれらに限定されない。
【0033】
本発明において用いる場合、「エピトープ」という用語は、それに対して抗体が抗原結
合部位を介して結合する、抗原、例えばメソテリンタンパク質上の任意の抗原決定基を意
味する。決定基もしくは抗原決定基は、通常はアミノ酸もしくは糖側鎖のような分子の化
学的に活性の表面集団からなり、そして通常は特定の3次元構造特性ならびに特定の荷電
特性を有する。
【0034】
「特異的に免疫反応性である」という用語は、抗体と抗体の抗原結合部位により認識さ
れるエピトープを有するタンパク質、化合物もしくは抗原との間の結合反応を意味する。
この結合反応は、タンパク質および他の生体分子の不均一な集団の存在の中で認識エピト
ープを有するタンパク質、抗原もしくはエピトープの存在を決定する。免疫アッセイとの
関連において、特異的に免疫反応性である抗体は認識エピトープを有するタンパク質に結
合し、そしてサンプルに存在するエピトープを欠く他のタンパク質にはたとえあったとし
てもほとんど検出されない程度しか結合しない場合がある。インビボとの関連において、
「特異的に免疫反応性である」とは、動物においてワクチンもしくは抗原に対する免疫応
答、例えば抗原に対する体液性応答(免疫学的に反応性の条件下でそれに提示されるワク
チン、タンパク質、化合物もしくは抗原に対する抗体の生産)もしくは細胞性(本明細書
において「細胞性免疫応答」、すなわち、それに提示されるワクチン、タンパク質、化合
物もしくは抗原に対するTリンパ球により媒介される応答とも称する)を生じる条件を意
味しうる。
【0035】
本明細書において用いる場合、「免疫学的に反応性の条件」という用語は、免疫アッセ
イもしくはインビトロ反応との関連において使用され、ここで、例えば温度、塩濃度、p
H、試薬およびそれらの濃度、ならびに抗原および抗原に特異的に免疫反応性であるコグ
ネイト抗体の濃度を包含する反応の物理的条件は、抗原へのコグネイト抗体の結合を可能
にするように与えられるかもしくは調整される。免疫学的に反応性の条件は抗体結合反応
の形態によって決まり、そして典型的には免疫アッセイプロトコルにおいて利用されるも
のである。免疫アッセイ形態および条件の記載について、Harlow and Lane (1988) Antib
odies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照され
たい。
【0036】
「患者」もしくは「対象」という用語には、本明細書において用いる場合、哺乳類(例
えばヒトおよび動物)が包含される。
【0037】
本明細書において用いる場合、メソテリンに対する特定の抗体の「不変性結合」という
用語は、異なる形態のメソテリンを発現するメソテリン発現がん細胞系の広い範囲におい
て、メソテリンと結合するその能力を意味する。不変性結合は抗体またはその抗原結合抗
体フラグメントまたはその変異体が、メソテリンと相互作用する別の細胞外抗原、例えば
がん抗原125 (CA125)によってマスクされないメソテリンのエピトープを認識するという
事実によって引き起こされうるが、これに限定されない。不変的結合抗体について、2つ
の異なるがん細胞系についてのFACS滴定によって測定されるEC50値は、10倍以下、また
は好ましくは5倍以下、最も好ましくは1〜3倍異なりうる。
【0038】
本明細書において使用するとき、「免疫複合体」という用語は、好ましくは好適な結合
基またはその前駆体を介して細胞傷害剤、例えばマイタンシノイドまたはその誘導体と結
合している、少なくとも1個の抗体またはその抗原結合抗体フラグメントを含んでなる複
合体分子を意味する。
【0039】
本発明の免疫複合体
本発明は、抗メソテリン免疫複合体を提供することによって、メソテリン陽性がん細胞
の増殖および腫瘍性疾患の進行を阻害する方法に関する。提供される免疫複合体の抗体部
分は、メソテリン前駆体ポリペプチド(配列番号36)の40 kDaのC末端ドメイン(本明細
書においてメソテリンと称する)と特異的に免疫反応性である。
【0040】
本発明の一つの局面において、本発明の抗体、抗原結合抗体フラグメントならびに本発
明の抗体およびフラグメントの変異体は、PCT/EP2008/009756に記載されており、軽鎖可
変領域および重鎖可変領域を含む。本発明に包含される抗体または抗原結合抗体フラグメ
ントの変異体は、メソテリンに対する本抗体または抗原結合フラグメントの結合活性が維
持されている分子である。
【0041】
本発明はまた、PCT/EP2008/009756に記載されているものとは異なる本発明の抗メソテ
リン抗体、抗原結合抗体フラグメントならびに本発明の抗体およびフラグメントの変異体
を含み、化学療法剤、例えばマイタンシノイドまたはその誘導体と結合している免疫複合
体に関する。
【0042】
本発明に使用できるマイタンシノイドは、当該技術分野において周知であり、既知の方
法に従って天然源から単離でき、あるいは既知の方法に従って合成的に製造できる。
【0043】
好適なマイタンシノイドの例は、マイタンシノールおよびマイタンシノールアナログを
含む。好適なマイタンシノールアナログの例は、修飾された芳香環を有するものおよび他
の位置での修飾を有するものを含む。
【0044】
修飾された芳香環を有するマイタンシノールの好適なアナログの具体例は次のものを含
む:
(1) C−19−デクロロ (米国特許4,256,746)(アンサミトシンP2のLAH還元によっ
て製造);
(2) C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ (米国
特許4,361,650および4,307,016) (ストレプトマイセスもしくはアクチノマイセスを用い
た脱メチル化またはLAHを用いた脱塩素化によって製造);および
(3) C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米
国特許4,294,757) (アシルクロライドを用いたアシル化によって製造)。
【0045】
他の位置での修飾を有するマイタンシノールの好適なアナログの具体例は次のものを含
む:
(1) C−9−SH(米国特許4,424,219) (マイタンシノールとH2SまたはP2S5の反
応によって製造);
(2) C−14−アルコキシメチル (デメトキシ/CH2OR) (米国特許4,331,598);
(3) C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2O
Ac) (米国特許4,450,254) (ノカルジアから製造);
(4) C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ (米国特許4,364,866) (ストレプトマイセスに
よるマイタンシノールの変換によって製造);
(5) C−15−メトキシ(米国特許4,313,946および4,315,929) (Trewia nudifloraから単
離);
(6) C−18−N−デメチル(米国特許4,362,663および4,322,348) (ストレプトマイセス
によるマイタンシノールの脱メチル化により製造);および
(7) 4,5−デオキシ(米国特許4,371,533) (マイタンシノールのチタニウムトリクロラ
イド/LAH還元によって製造)。
【0046】
本発明に有用なチオール含有マイタンシノイドの合成は、米国特許5,208,020、5,416,0
64、および7,276,497に十分に記載されている。
【0047】
C−3位、C−14位、C−15位またはC−20位にチオール基を有するマイタンシ
ノイドは、全て有用と予測される。C−3位が好ましく、マイタンシノールのC−3位が
特に好ましい。N−メチル−アラニン含有C−3チオール基マイタンシノイドおよびN−
メチル−システイン含有C−3チオール基マイタンシノイドおよびN−メチル−システイ
ン含有C―3チオール基マイタンシノイドならびにそれぞれのアナログも好ましい。好ま
しいマイタンシノイドは、米国特許5,208,020; 5,416,064; 6,333.410; 6,441,163; 6,71
6,821; RE39,151および7,276,497に記載のものであり、それらの全体について、各々参照
により本明細書の一部とする。好ましい態様において、エステル化マイタンシノールは、
N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン
(DM1、CAS登録番号139504-50-0)、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−1
−オキソペンチル)−マイタンシン (DM3、CAS登録番号796073-54-6)、およびN2’−デ
アセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシ
ン (DM4 CAS登録番号796073-69-3)から選択される。
【0048】
本明細書を通じて、下記の代表的な本発明の抗体について参照する:「MF-J」、「MOR0
6640」、「MF-226」および「MF-T」。MF-Jは、配列番号28(DNA)/配列番号20(
タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号32(DNA)/配列番号24(タ
ンパク質)に対応する可変軽鎖領域を有する抗体を意味する。MOR 06640は、配列番号2
9(DNA)/配列番号21(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号33
(DNA)/配列番号25(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を有する抗体を意味す
る。MF-226は、配列番号30(DNA)/配列番号22(タンパク質)に対応する可変重
鎖領域および配列番号34(DNA)/配列番号26(タンパク質)に対応する可変軽鎖
領域を有する抗体を意味する。MF-Tは、配列番号31(DNA)/配列番号23(タンパ
ク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号35(DNA)/配列番号27(タンパク
質)に対応する可変軽鎖領域を有する抗体を意味する。本発明は、これらの抗体に限られ
ず、ここでは例示として使用する。他の有用な抗体は例えばPCT/EP2008/009756に記載さ
れている。
【0049】
一つの局面において、本発明は、がん抗原125 (CA125/MUC16)の存在下でメソテリンと
特異的に免疫反応性であり、したがってメソテリンおよびCA125の両方を発現するがん細
胞、例えばOVCAR-3細胞を効果的に標的とする免疫複合体を提供する。
【0050】
別の局面において、本発明は、抗体MOR 06640またはMF-Tのエピトープの1個以上のア
ミノ酸に特異的に免疫反応性である免疫複合体を提供する。ある局面において、当該免疫
複合体は、抗体MOR 06640またはMF-Tのエピトープの少なくとも2個、少なくとも3個、
少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも6個のアミノ酸に特異的に免疫反応性
である。ある局面において、本発明の免疫複合体は、抗体MOR 06640によって認識される
エピトープの1個以上のアミノ酸に特異的に免疫反応性である。別の局面において、本発
明の抗体は、抗体MF-Tによって認識されるエピトープの1個以上のアミノ酸に特異的に免
疫反応性である。
【0051】
別の局面において、本発明は、アミノ酸配列が配列番号36で示されるメソテリンの1
個以上の領域に特異的に免疫反応性であるかまたはそれに高い親和性を有する抗原結合領
域を有する、免疫複合体を提供する。親和性測定が少なくとも100 nM (Fabフラグメン
トの一価アフィニティー)である場合に、免疫複合体は、「高い親和性」を有すると言わ
れる。本発明の免疫複合体は、好ましくは、約100 nM未満、より好ましくは約60 nM未満
、さらにより好ましくは約30 nM未満の親和性で、メソテリンに特異的に免疫反応性であ
りうる。約10 nM未満、より好ましくは約3 nM未満の親和性でメソテリンに結合する抗体
がさらに好ましい。例えば、本発明の抗体のメソテリン親和性は、約9.1 nMまたは0.9 nM
であり得る(IgG1フォーマットの一価アフィニティー)。
【0052】
使用方法
「処置」という用語には任意の方法、作用、適用、治療などが包含され、ここで、ヒト
を含む対象(または患者)には、直接もしくは間接的に患者の症状を改善するか、または
対象における症状もしくは疾患の進行を遅くするか、または処置下の疾病もしくは疾患の
少なくとも1つの症状を改善する目的で医療扶助が与えられる。
【0053】
「組み合わせ治療」もしくは「共治療」という用語は、疾患、症状および/もしくは障
害を処置するための2つもしくはそれ以上の治療薬の投与を意味する。そのような投与に
は、固定比率の有効成分を有する単一のカプセル剤におけるか、もしくは各阻害剤の複数
の別個のカプセル剤におけるような、実質的に同時の方法での2つもしくはそれ以上の治
療薬の共投与が包含される。さらに、そのような投与には、順次の方法での治療薬の各タ
イプの使用が包含される。2つもしくはそれ以上の順次に共投与される治療薬の投与の順
序は限定されない。
【0054】
「治療的に有効な量」という語句は、既定の治療処置と関連する有害な副作用を回避す
るかもしくは最小限に抑えながら、疾患、症状、および/もしくは障害の重症度、および
/もしくはその症状の改善の目的を果たす投与される各薬剤の量を意味する。
【0055】
「薬学的に許容しうる」という用語は、対象物品が医薬品における使用に適切であるこ
とを意味する。
【0056】
本発明の免疫複合体は、治療薬として有益であると予想される。従って、本発明の態様
には、標的症状の処置に有効な量の本発明の免疫複合体を含有する組成物を患者に投与す
ることを含んでなる、患者(哺乳類を包含する)における様々な症状を処置する方法が包
含される。
【0057】
本発明の免疫複合体は、メソテリンタンパク質と関連する疾患および/または行動の処
置に使用できる。これらの疾患および/または行動には、例えば、膵臓、卵巣、胃、食道
、子宮頸部、結腸、肝臓、呼吸管および肺の癌腫のようながんが包含される。本発明はま
た、、メソテリンが上昇しているかもしくはそうでなければ異常に発現される障害の症状
を改善する方法にも関する。これらの障害には、膵臓、卵巣、胃、食道、子宮頸部、結腸
、肝臓、呼吸管および肺の癌腫のようながんが包含されるが、これらに限定されない(例
えば、Liao, Cancer Res. 57:2827-2831, 1997; Turner, Hum. Pathol. 28:740-744, 199
7; Liao, et al., Am. J. Pathol. 145:598-609, 1994; Saarnio, et al., Am. J. Patho
l. 153:279-285, 1998; Vermylen, et al., Eur. Respir. J. 14:806-811, 1999参照)。
本発明の一つの態様において、治療上有効量の本発明の免疫複合体をa 治療的なメソテリ
ンが上昇する障害を有する患者に投与する。
【0058】
本発明の免疫複合体は、単独でまたは1つもしくはそれ以上の追加の治療薬と組み合わ
せて投与できる。組み合わせ治療には、本発明の免疫複合体および1つもしくはそれ以上
の追加の治療薬を含有する単一の製薬学的投与製剤の投与ならびにそれ自体の別個の製薬
学的投与製剤における本発明の免疫複合体および各追加の治療薬の投与が包含される。例
えば、本発明の抗体免疫複合体および治療薬は単一の経口投与組成物において一緒に患者
に投与することができ、もしくは各薬剤は別個の経口投与組成物において投与することが
できる。
【0059】
別個の投与製剤が使用される場合、本発明の抗体および1つもしくはそれ以上の追加の
治療薬は本質的に同時期に(例えば同時に)もしくは別個に時間差で(例えば順次)投与
することができる。薬剤の投与の順序は限定されない。
【0060】
例えば、一つの局面において、抗メソテリン免疫複合体もしくは抗がん剤(1つもしく
は複数)のいずれかもしくは両方の効果を高めるための1つもしくはそれ以上の抗がん剤
と一緒の本発明の抗メソテリン免疫複合体の共投与は、がんのようなメソテリン関連疾患
を処置することにおける使用が意図される。そのような組み合わせ治療はまた、がんを防
ぐか、がんの再発を防ぐか、がんの広がりもしくは転移を防ぐか、またはがんと関連する
症状を軽減するかもしくは改善するために用いることもできる。
【0061】
1つもしくはそれ以上の抗癌剤には、例えば、化学療法剤、他の免疫治療薬、がんワク
チン、抗血管新生剤、サイトカイン、ホルモン治療、遺伝子治療および放射線治療のよう
な、当該技術分野における任意の既知のそして適当な化合物を包含することができる。化
学療法剤(もしくは「抗がん剤」もしくは「抗腫瘍剤」もしくは「がん治療法」)は、が
んの処置において役立つ任意の分子もしくは化合物を意味する。本発明により意図される
化学療法剤の例には、シトシンアラビノシド、タキソイド(例えば、パクリタキセル、ド
セタキセル)、抗チューブリン剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン
B、もしくはそのアナログ)、マクロライド(例えば、リゾキシン)、シスプラチン、カ
ルボブラチン、アドリアマイシン、テノポシド、ミトキサントロン、ディスコデルモリド
、エレウテロビン、2−クロロデオキシアデノシン、アルキル化剤(例えば、シクロホス
ファミド、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カ
ルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothospha
mide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC
、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、チオテパ)、抗
生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミト
ラマイシン、アントラマイシン)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6−メルカ
プトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、フラボピリドール、5−フルオロウラシル
、フルダラビン、ゲムシタビン、ダカルバジン、テモゾラミド)、アスパラギナーゼ、バ
チルス・カルメッテおよびグエリン(Bacillus Calmette and Guerin)、ジフテリア毒素
、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、LYSODREN.RTM.、ヌクレオシドアナログ、
植物アルカロイド(例えば、タキソール、パクリタキセル、カンプトテシン、トポテカン
、イリノテカン(CAMPTOSAR,CPT-11)、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド、例えばビ
ンブラスチン)、ポドフィロトキシン(エピポドフィロトキシン、VP-16(エトポシド)
、VM-26(テニポシド)のような誘導体を包含する)、サイトカラシンB、コルチン、グ
ラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、プロカルバジン、メクロレ
タミン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキ
ソルビシン、リポソーム化ドキソルビシン)、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキ
サントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、プロカイン、テトラカイン、リドカ
イン、プロプラノロール、ピューロマイシン、抗有糸分裂剤、アブリン、リシンA、シュ
ードモナス菌外毒素、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチ
ベーター、アルデスロイキン、アルタミン(allutamine)、アナストロゾール(anastroz
le)、ビカルタミド、ビアオマイシン(biaomycin)、ブスルファン、カペシタビン、カ
ルボプラチン(carboplain)、クロラムブシル(chlorabusil)、クラドリビン、シララ
ビン(cylarabine)、ダクチノマイシン(daclinomycin)、エストラムシン、フロキシウ
リジン(floxuridhe)、ゲムシタビン(gamcitabine)、ゴセレリン(gosereine)、イダ
ルビシン、イホスファミド(itosfamide)、酢酸ロイプロリド(lauprolide acetate)、
レバミゾール、ロムスチン(lomusline)、メクロレタミン、酢酸メゲストロール(mages
trol)、メルカプトプリン、メスナ、ミトランク(mitolanc)、ペグアスパラガーゼ(pe
gaspergase)、ペントスタチン(pentoslatin)、ピカマイシン(picamycin)、リツキシ
ルマブ(riuxlmab)、キャンパス−1、ストレプトゾシン(straplozocin)、チオグアニ
ン、トレチノイン、ビノレルビン、またはその製薬学的に許容しうる塩を包含する、その
任意のフラグメント、ファミリーメンバーもしくは誘導体が包含されるがこれらに限定さ
れるものではない。1つもしくはそれ以上の化学療法剤を含んでなる組成物(例えば、FL
AG、CHOP)もまた、本発明により意図される。FLAGは、フルダラビン、シトシンアラビノ
シド(Ara-C)およびG-CSFを含んでなる。CHOPは、シクロホスファミド、ビンクリスチン
、ドキソルビシンおよびプレドニゾンを含んでなる。
【0062】
化学療法剤は、例えば、アンジオスタチン、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))
、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、バキュロスタチン、カンスタチン、マス
ピン、抗VEGF抗体もしくはペプチド、抗胎盤成長因子抗体もしくはペプチド、抗Flk-
1抗体、抗Flt-1抗体もしくはペプチド、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、
プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフ
ェロン、インターロイキン12、IP-10、Gro-β、トロンボスポンジン、2−メトキシエ
ストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CM10
1、マリマスタット、ポリ硫酸ペントサン、アンジオポエチン2、インターフェロン−ア
ルファ、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド、サ
リドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、エンドスタチン、パクリタ
キセル、アククチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小
板第4因子またはミノサイクリンのような抗血管新生剤でありうる。
【0063】
1つの態様において、該化学療法剤は100〜1000 mg/m2/サイクルの間の用量のゲムシタ
ビンである。1つの態様において、該化学療法剤は200〜4000 mg/m2/サイクルの間の用量
のダカルバジンである。別の態様において該用量は700〜1000 mg/m2/サイクルの間である
。さらに別の態様において、該化学療法剤は25〜50 mg/m2/サイクルの間の用量のフルダ
ラビンである。別の態様において、該化学療法剤は200〜2000 mg/m2/サイクルの間の用量
のアラビノシド(Ara-C)である。さらに別の態様において、該化学療法剤は1.5〜7.5 mg
/kg/サイクルの間の用量のドセタキセルである。さらに別の態様において、該化学療法剤
は5〜15 mg/kg/サイクルの間の用量のパクリタキセルである。さらなる態様において、該
化学療法剤は5〜20 mg/kg/サイクルの間の用量のシスプラチンである。なおさらなる態様
において、該化学療法剤は5〜20 mg/kg/サイクルの間の用量の5−フルオロウラシルであ
る。別の態様において、該化学療法剤は2〜8 mg/kg/サイクルの間の用量のドキソルビシ
ンである。なおさらなる態様において、該化学療法剤は40〜160 mg/kg/サイクルの間の用
量のエピポドフィロトキシンである。さらに別の態様において、該化学療法剤は50〜200
mg/kg/サイクルの間の用量のシクロホスファミドである。さらなる態様において、該化学
療法剤は50〜150 mg/m2/サイクルの間の用量のイリノテカンである。なおさらなる態様に
おいて、該化学療法剤は3.7〜18.5 mg/m2/サイクルの間の用量のビンブラスチンである。
別の態様において、該化学療法剤は0.7〜2 mg/m2/サイクルの間の用量のビンクリスチン
である。1つの態様において、該化学療法剤は3.3〜1000 mg/m2/サイクルの間の用量のメ
トトレキセートである。
【0064】
別の態様において、本発明の抗メソテリン免疫複合体は、Herceptin(登録商標)、Ret
uxan(登録商標)、OvaRex、Panorex、BEC2、IMC-C225、Vitaxin、Campath I/H、Smart M
I95、LymphoCide、Smart I D10およびOncolym、リツキサン、リツキシマブ、ゲムツズマ
ブもしくはトラスツズマブが包含されるがこれらに限定されるものではない、抗体もしく
は免疫調節薬のような1つもしくはそれ以上の免疫療法薬と組み合わせて投与される。
【0065】
本発明はまた、アンジオスタチン、サリドマイド、クリングル5、エンドスタチン、Serp
in(セリンプロテアーゼ阻害剤)、抗トロンビン、フィブロネクチンの29 kDaのN末端お
よび40 kDaのC末端タンパク質分解フラグメント、プロラクチンの16 kDaのタンパク質分
解フラグメント、血小板第4因子の7.8 kDaのタンパク質分解フラグメント、血小板第4
因子のフラグメントに対応するβ−アミノ酸ペプチド(Maione et al., 1990, Cancer Res
. 51:2077)、コラーゲンIのフラグメントに対応する14アミノ酸ペプチド(Tolma et al
., 1993, J. Cell Biol. 122:497)、トロンボスポンジンIのフラグメントに対応する1
9アミノ酸ペプチド(Tolma et al., 1993, J. Cell Biol. 122:497)、SPARCのフラグメン
トに対応する20アミノ酸ペプチド(Sage et al., 1995, J. Cell. Biochem. 57: 1329-)
、またはその製薬学的に許容しうる塩を包含する、その任意のフラグメント、ファミリー
メンバーもしくは誘導体が包含されるがこれらに限定されるものではない1つもしくはそ
れ以上の抗血管新生剤と本発明の抗メソテリン免疫複合体を投与することも意図する。血
管新生を抑制しそしてラミニン、フィブロネクチン、プロコラーゲンおよびEGFのフラグ
メントに対応する他のペプチドもまた記述されている(Cao, 1998, Prog. MoI. Subcell.
Biol. 20:161による概説を参照)。RGDタンパク質(すなわち、ペプチドモチーフArg-Gl
y-Aspを保有する)に結合するある種のインテグリンを阻止するモノクローナル抗体およ
び環式ペンタペプチドは、抗血管形成活性を有することが示されている(Brooks et al.,
1994, Science 264:569; Hammes et al., 1996, Nature Medicine 2:529)。さらに、アン
タゴニストによるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体の阻害は、血管新
生、腫瘍増殖および転移を抑制する(Min et al., 1996, Cancer Res. 56:2428-33; Crowl
ey et aL, 1993, Proc Natl Acad. Sci. USA 90:5021)。そのような抗血管新生剤の使用
もまた、本発明により意図される。
【0066】
別の態様において、本発明の抗メソテリン免疫複合体は、放射線の処方レジメンと組み
合わせて投与される。
【0067】
本発明の抗メソテリン免疫複合体はまた、リンホカイン、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子
様サイトカイン、リンホトキシン−α、リンホトキシン−β、インターフェロン−β、マ
クロファージ炎症タンパク質、顆粒球単球コロニー刺激因子、インターロイキン(インタ
ーロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−6、インターロイキン−1
2、インターロイキン−15、インターロイキン−18が包含されるがこれらに限定され
るものではない)、OX40、CD27、CD30、CD40もしくはCD137リガンド、Fas-Pasリガンド、
4-1BBL、内皮単球活性化タンパク質またはその製薬学的に許容しうる塩を包含する、その
任意のフラグメント、ファミリーメンバーもしくは誘導体が包含されるがこれらに限定さ
れるものではない1つもしくはそれ以上のサイトカインと組み合わせて投与することもで
きる。
【0068】
本発明の抗メソテリン免疫複合体はまた、例えば自己細胞もしくは組織、非自己細胞も
しくは組織、がん胎児性抗原、アルファ−フェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン
、BCG生ワクチン、メラニン細胞系統タンパク質(例えば、gp100、MART-1/MelanA、TRP-1
(gp75)、チロシナーゼ、広く共有される腫瘍関連(腫瘍特異的を包含する)抗原(例え
ば、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-3、N−アセチルグルコサミニルトランスフェ
ラーゼ−V、p15)、腫瘍に関連する突然変異抗原(β−カテニン、MUM-1、CDK4)、非黒
色腫抗原(例えば、HER-2/neu(乳がんおよび卵巣がん)、ヒトパピローマウイルス-E6、E
7(子宮頸がん)、MUC-1(乳がん、卵巣がんおよび膵臓がん)が包含されるがこれらに限
定されるものではない、がんワクチンと組み合わせて投与することもできる。T細胞によ
り認識されるヒト腫瘍抗原については、一般に、Robbins and Kawakami, 1996, Curr. Op
in. Immunol. 8:628を参照されたい。がんワクチンは、精製された調製物であることがで
きもしくはそうでなくてもよい。
【0069】
さらに別の態様において、本発明の抗メソテリン免疫複合体は、ホルモン療法と関連し
て使用される。ホルモン治療療法は、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例
えば、フルタミド、タモキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON)、LH-RHアンタゴニス
ト)、ホルモン生合成およびプロセシングの阻害剤、ならびにステロイド(例えば、デキ
サメタゾン、レチノイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デ
ヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テ
ストステロン、プロゲスチン)、抗ゲスターゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリ
ストン)、および抗アンドローゲン(例えば、酢酸シプロテロン)を含んでなる。
【0070】
本発明の抗メソテリン免疫複合体は、抗MDR(多剤耐性)表現型剤と組み合わせて用
いることができ、例えば共投与することができる。薬剤種類の各々は異なる構造および作
用機序を有するにもかかわらず、多くのヒトがんは同時にいくつかの種類の抗がん剤に対
する耐性を本質的に発現するかもしくは自然に発生する。培養した哺乳類細胞において模
倣することができるこの現象は、一般に多剤耐性(「MDR」)もしくは多剤耐性表現型
と呼ばれる。MDR表現型は、ヒト患者におけるがんの化学療法処置の成功に重大な障害
を与える。多数の化学療法剤に対する悪性腫瘍の耐性は、処置の失敗の主要原因である(W
ittes et al., Cancer Treat. Rep. 70:105 (1986); Bradley, G. et al., Biochim. Bio
phys. Acta 948:87 (1988); Griswald, D. P. et al., Cancer Treat. Rep. 65(S2):51 (
1981); Osteen, R. T. (ed.), Cancer Manual, (1990))。最初は細胞傷害剤に感受性であ
る腫瘍は、しばしば、再発するかもしくは多数の化学療法剤に反応しなくなる(Riordan e
t al., Pharmacol. Ther. 28:51 (1985); Gottesman et al., Trends Pharmacol. Sci. 9
:54 (1988); Moscow et al., J. Natl. Cancer Inst. 80:14 (1988); Croop, J. M. et a
l., J. Clin. Invest. 81:1303 (1988))。腫瘍から得られそして選択する細胞傷害剤の存
在下で培養した細胞もしくは組織は、その種類における他の薬剤ならびにアントラサイク
リン、ビンカアルカロイドおよびエピポドフィロトキシンが包含されるがこれらに限定さ
れるものではない他の種類の薬剤に対する交差耐性をもたらしうる。(Riordan et al., P
harmacol. Ther. 28:51 (1985); Gottesman et al., J. Biol. Chem. 263:12163 (1988))
。従って、単一の薬剤に対する獲得耐性は、構造的にそして機能的に関係のない薬剤の多
様な群に対する同時の耐性をもたらす。そのような耐性は、固体形態および液体形態の腫
瘍(例えば、血液もしくはリンパ液に基づくがん)両方の問題であり得る。
【0071】
哺乳類細胞における多剤耐性の1つの主要な機序は、170 kDaの原形質膜糖タンパク質
ポンプシステムの増加した発現を伴う(Juranka et al., FASEB J 3:2583 (1989); Bradle
y, G. et al., Blochem. Biophys. Acta 948:87 (1988))。多剤輸送体と呼ばれることも
ある、このポンプシステムをコードする遺伝子は培養したヒト細胞からクローン化されて
おり、そして一般にmdr1と呼ばれる。この遺伝子はいくつかの種類の正常組織において発
現されるが、これらの組織におけるmdr1遺伝子産物の輸送される生理的基質は同定されて
いない。MDR1産物は、エネルギー依存性輸送機能を有する一群のタンパク質、ABC輸送体
タンパク質スーパーファミリーのメンバーである。P−糖タンパク質(「P-170」、「P-g
p」)として一般に既知である、mdr1遺伝子のタンパク質産物は、上記のエネルギー依存
性排出ポンプを構成する170 kDaの原形質膜貫通タンパク質である。P-gpに媒介されるMDR
は、異なるタイプの腫瘍における腫瘍耐性の重要な臨床成分であるように思われ、そして
mdr1遺伝子発現は異なるタイプの癌における化学療法に対する耐性と相関関係がある。md
r1遺伝子のヌクレオチド配列(Gros, P. et al., Cell 47:371 (1986); Chen, C. et al.,
Cell 47:381 (1986))は、それがP−糖タンパク質と同様のもしくは同一のポリペプチド
をコードすること、およびこれらが細菌輸送体と同様のそして正常な生理的輸送プロセス
に関与する膜タンパク質の高度に保存された種類のメンバーであることを示す。mdr1遺伝
子の配列分析は、P-gpが2つの相同な(43%の同一性)半分の間に分散している1280アミ
ノ酸からなることを示す。分子の各半分は6個の疎水性膜貫通ドメインを有し、そして各
々大きな細胞質ループ内にATP結合部位を有する。分子の約8%のみが細胞外であり、
そして炭水化物部分(約30 kDa)はこの領域中の部位に結合している。
【0072】
従って、「多剤耐性」もしくは「多剤耐性」表現型を有する哺乳類細胞は、細胞内環境
から複数の細胞毒性物質(例えば化学療法剤)を封鎖するか、輸送するかもしくは放出す
る能力を特徴とすることが理解される。細胞は、単一の化学療法剤(選択毒素)への暴露
により課せられる選択圧の結果としてこの表現型を獲得し得る。あるいはまた、細胞毒性
物質の輸送は細胞分泌産物、代謝物などの通常の輸送と共通する機序に関連し得るので、
細胞は毒素暴露の前に該表現型を示し得る。多剤耐性は、細胞が以前にさらされなかった
追加の細胞毒素(他の化学療法剤)を輸送する能力を細胞が獲得する点において選択毒素
に対する単純な獲得耐性と異なる。例えば、Mirski et al. (1987), 47 Cancer Res. 259
4-2598は、選択毒素としてアドリアマイシン(ドキソルビシン)の存在下で、ヒト小細胞
肺癌由来のH69細胞系を培養することによる多剤耐性細胞集団の単離を記載している。生
存細胞は、アントラサイクリンアナログ(例えば、ダウノマイシン、エピルビシン、メノ
ガリルおよびミトキサントロン)、アシビシン、エトポシド、グラミシジンD、コルヒチ
ンおよびビンカ由来のアルカロイド(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)のならびに
アドリアマイシンの細胞毒性効果に耐性であることが見出された。同様の選択培養技術は
、追加の多剤耐性細胞集団を生成するために適用することができる。従って、本発明の医
薬組成物はMDR表現型および/もしくはMDR表現型と関連する症状を抑制するように
働く化合物をさらに含むことができる。そのような化合物には、多剤耐性を覆すかもしく
は抑制することが既知の薬剤である、特にタモキシフェン、ベラパミルおよびサイクロス
ポリンAを包含する、MDR成分に特異的な抗体(例えば、抗MDR輸送体抗体)もしく
はMDR輸送体の小分子阻害剤のような、当該技術分野における任意の既知のMDR阻害
剤化合物を包含することができる(Lavie et al. J. Biol. Chem. 271: 19530-10536, 19
96、参照により本明細書の一部とする)。そのような化合物は米国特許5,773,280、6,225
,325および5,403,574に見出され、それらの各々は参照により本明細書の一部とする。そ
のようなMDR阻害剤化合物は、化学療法処置を助けるかもしくは高めるためにMDR表
現型の検出後にMDR表現型を覆すことを包含する様々な目的のために本発明の抗MN抗
体および/もしくはフラグメントと共投与することができる。例えば、タモキシフェン、
ベラパミルもしくはサイクロスポリンAのようなMDR阻害剤は、MDR表現型の検出を
助けるために本発明の化合物と併せて用いることができる。この局面に従って、基質ドメ
インに関して画像化化合物を輸送することもしくは「排出すること」におけるMDR輸送
系の能力はMDR阻害剤の存在下で減少されるので、MDR阻害剤はMDRがん細胞にお
ける本発明の化合物の取り込みおよび蓄積を高めることができる。
【0073】
さらに別の態様において、本発明の抗メソテリン免疫複合体は、癌の処置において遺伝
子治療プログラムと関連して使用される。インターロイキン−2を分泌する組換え細胞で
の遺伝子治療は癌、特に乳癌を防ぐかもしくは処置するために本発明の抗体と組み合わせ
て投与することができる(例えば、Deshmukh et al., 2001, J. Neurosurg. 94: 287参照
)。
【0074】
例えば、がんを処置するために治療的に有用である具体的な免疫複合体の能力を評価す
るために、抗体をマウス異種移植片腫瘍モデルにおいてインビボで試験することができる
。治療モデルの例は実施例1および2において詳述されている。抗体活性はまた、実施例
3において記載されるように抗体依存性細胞媒介性細胞傷害アッセイを用いて試験しても
よい。
【0075】
医薬組成物投与量
本明細書に記載の免疫複合体は、薬学的に許容しうる担体を含んでなる医薬組成物にお
いて提供することができる。薬学的に許容しうる担体は、非発熱性であることができる。
組成物は単独でもしくは安定化化合物のような少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて
投与することができ、それは食塩水、緩衝食塩水、デキストロースおよび水が包含される
がこれらに限定されるものではない任意の無菌生体適合性医薬担体において投与すること
ができる。食塩水、グリシンなどが包含されるがこれらに限定されるものではない様々な
水性担体を用いることができる。これらの溶液は無菌であり、そして粒子状物質を一般に
含まない。これらの溶液は、通常の周知の滅菌技術(例えば濾過)により滅菌することが
できる。
【0076】
一般に、「薬学的に許容しうる担体」という語句は当該技術分野において認められてお
り、そして哺乳類に本発明の化合物を投与するために適当な薬学的に許容しうる物質、組
成物もしくはビークルが包含される。担体には、1つの臓器もしくは体の部分から別の臓
器もしくは体の部分に対象薬物を運ぶこともしくは輸送することに関与する、液体もしく
は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは封入材料が包含される。各担体は、製剤の
他の成分と適合しそして患者に有害でないという意味において「許容可能」でなければな
らない。薬学的に許容しうる担体として働くことができる物質のいくつかの例には:糖、
例えばラクトース、グルコースおよびショ糖;澱粉、例えばコーンスターチおよびジャガ
イモ澱粉;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム
、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タル
ク;賦形剤、例えばココアバターおよび座薬ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油
、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイルおよびダイズ油;グリコール、例えば
プロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールお
よびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチ
ル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸
;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸バッフ
ァー溶液;ならびに薬学的製剤に用いられる他の無毒の適合する物質が包含される。湿潤
剤、乳化剤および潤滑剤、例えばラルリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウ
ム、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香料および芳香剤、防腐剤およ
び抗酸化剤もまた、本発明の免疫複合体組成物に存在することができる。
【0077】
薬学的に許容しうる抗酸化剤の例には:水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸
システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶
性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA
)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−
トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸
(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが包含される。
【0078】
組成物は、pH調整剤および緩衝化剤などのような生理的条件に近づけるために必要と
されるような薬学的に許容しうる補助剤を含有することができる。そのような薬学的製剤
における本発明の免疫複合体の濃度は広く異なることができ、そして選択した具体的な投
与形態に従って、主に液量、粘度などに基づいて選択することができる。所望により、1
つより多くのタイプの抗体または免疫複合体が医薬組成物に含まれていてもよい(例えば
、メソテリン結合について異なるKdを有する抗体)。
【0079】
組成物は、単独でまたは他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組み合わせて患者に投与す
ることができる。有効成分に加えて、これらの医薬組成物は、薬学的に使用することがで
きる製剤への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含んでなる適当な薬学的
に許容しうる担体を含有することができる。本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉
内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下
もしくは直腸手段が包含されるがこれらに限定されるものではない任意の数の経路により
投与することができる。
【0080】
本発明の組成物は適当な免疫担体、例えばタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド
、例えばアルブミン、ヘモシアニン、チログロブリンおよびその誘導体、特にウシ血清ア
ルブミン(BSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、多糖、炭水化
物、ポリマーならびに固相をさらに意図する。他のタンパク質由来のもしくは非タンパク
質由来の物質は、当業者に既知である。
【0081】
本発明の抗体と共にワクチン、例えばがんワクチンを含む局面において、本発明の組成
物はアジュバントと共にもしくはそれなしに投与することができる。投与は、なんらかの
アジュバント誘導毒性を回避するためにアジュバントの非存在下で実施することができる
。本発明が関係する当業者、例えばがんを専門とする医師は、アジュバントを使用すべき
かもしくはすべきでないかを確かめる方法を認識しそして理解し、そして患者の薬歴、家
族データ、毒性データ、アレルギー関連試験結果などによって決定しうる。アジュバント
を使用する態様において、アジュバントが防御IgG抗体のような防御抗体の形成を促進す
ることは好都合である。当業者に既知である任意の適当なアジュバントが本発明により意
図され、そして本発明に容易に適応される。動物にワクチン接種することにおける使用に
適当なアジュバントには、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、サポニンおよびそ
の精製成分Quit A、完全フロインドアジュバント(CFA)および不完全フロインドアジ
ュバント(IFA)を包含することができるが、これらに限定されるものではない。硫酸
デキストランは、ブドウ球菌細胞表面抗原に対するIgG2抗体の強力な刺激因子であること
が示されており、そして同様にアジュバントとして適当である。あるアジュバントは獣医
適用により好ましい可能性があり、一方、あるアジュバントはヒトにおける使用に好まし
いこと、そしてアジュバント毒性はヒトへの化合物の投与の前に当業者により考慮される
べき事項であることが当業者により理解される。
【0082】
非経口、皮下、静脈内、筋肉内などに適当な製剤;適当な製薬学的担体;ならびに調合
および投与の技術は、当該技術分野において周知である方法のいずれかにより製造するこ
とができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., E
aston, Pa., 20th edition, 2000を参照)。本発明の化合物の経口投与のための液状投与
形態物には、薬学的に許容しうるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、
シロップ剤およびエリキシル剤が包含される。有効成分に加えて、液状投与形態物は例え
ば水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピル
アルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピ
レングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コー
ンオイル、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロ
フリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならび
にその混合物のような当該技術分野において一般に用いられる不活性希釈剤を含有するこ
とができる。
【0083】
「非経口投与」および「非経口的に投与する」という語句は、本明細書において用いる
場合、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与の形態を意味し、そして静脈内
、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮
下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内注射および注入が包含されるが、こ
れらに限定されるものではない。
【0084】
治療上有効量の決定は、当業者の能力の十分に範囲内である。治療上有効量は、治療的
に有効な用量の不在下で生じる効能と比較して、疾病(例えばがん)を効果的に処置する
ために用いることができる免疫複合体の量を意味する。
【0085】
治療上有効量は、動物モデル(例えば、ラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタ)
において最初に概算することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与の
経路を決定するために用いることもできる。次に、そのような情報は、ヒトにおける有用
な用量および投与の経路を決定するために用いることができる。免疫複合体の治療効能お
よび毒性(例えば、ED50−集団の50%において治療的に有効な用量およびLD50
−集団の50%に致命的な用量)は、細胞培養もしくは実験動物において標準的な製薬学
的方法により決定することができる。毒性:治療効果の用量比は治療指数であり、そして
比率、LD50/ED50として表すことができる。動物研究から得られるデータは、ヒ
ト使用のための投薬量の範囲を策定するために用いることができる。そのような組成物に
含まれる投薬量は、ほとんどもしくは全く毒性なしにED50を含む循環濃度の範囲内で
あることができる。投薬量は、用いる投与形態物、患者の感受性および投与の経路により
この範囲内で異なる。
【0086】
正確な投薬量は、処置を必要とする患者に関連する要因に照らして、医師により決定さ
れることができる。投薬量および投与は、免疫複合体の十分なレベルを提供するためにも
しくは所望の効果を維持するために調整することができる。考慮されうる要因には、病状
の重症度、患者の一般的な健康、患者の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および
頻度、薬剤の組み合わせ(1つもしくは複数)、反応感受性および治療への耐容性/応答
が包含される。本発明の免疫複合体をコードするポリヌクレオチドを構築し、そしてトラ
ンスフェリン−ポリカチオン媒介DNA導入、裸のもしくは封入された核酸でのトランス
フェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プ
ロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔、「遺伝子銃」およびDEAE−もしくはリ
ン酸カルシウム媒介トランスフェクションが包含されるがこれらに限定されるものではな
い確立した技術を用いてエクスビボもしくはインビボのいずれかで細胞に導入することが
できる。
【0087】
免疫複合体の担毒体成分の有効なインビボ投薬量は、約5 μg〜約500 μg/kg患者体重
の範囲である。本発明の免疫複合体を含有する医薬組成物の投与の形態は、抗体を宿主に
送達する任意の適当な経路であることができる。例として、本発明の医薬組成物は非経口
投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは鼻腔内投与)に有用であることができる。
【0088】
本開示において引用される全ての特許および特許出願は、引用することにより明白に本
明細書に組み込まれる。上記の開示は本発明を一般的に記述する。説明の目的のためにの
み提供されそして本発明の範囲を限定するものではない以下の特定の実施例を参照するこ
とにより、より完全な理解を得ることができる。
【実施例1】
【0089】
実施例
実施例1:メソテリン発現ヒト膵臓がん腫異種移植マウスモデルにおける免疫複合体の有
効性
抗メソテリン免疫複合体がメソテリン依存的に腫瘍の増殖を低減しうるかを分析するた
めに、ヒト膵臓がん腫細胞(MiaPaCa-2)をメソテリンで安定的にトランスフェクトし、皮
下増殖腫瘍マウスモデルを確立するために用いた。ヒト結腸がん腫細胞系HT29を用いて、
有効性試験におけるメソテリンネガティブコントロール腫瘍を確立した。10% (v/v) FCS
、2.5% (v/v)ウマ血清、1.5 g/l 炭酸水素ナトリウム、4,5 g/l グルコース、4mM グルタ
ミンおよび0,4 % (v/v) Hygromycinを補ったDMEM培地中で接着培養として、MiaPaCa細胞
を維持した。1,5 mM グルタミン、2,2g/l 炭酸水素ナトリウムおよび10% (v/v) FCSを含
むMcCoy’s 5a培地中でHT29細胞を培養した。MiaPaCa-2細胞のメソテリン発現およびHT29
細胞がメソテリンを含まないことを、FACSにより確認した(示さず)。腫瘍細胞のインビ
ボ増殖を評価するため、メスNMRIヌードマウスの右側腹部に、50% Matrigel(商標)およ
び50% Medium中に再懸濁した3 x 10
6個のMiaPaCa-2細胞または1 x 10
6個のHT29細胞を皮
下接種した。抗メソテリン免疫複合体として、MF-J-SPDB-DM4、MF-T-SPDB-DM4、MF226-SP
DB-DM4 および MOR6640-SPDB-DM4を、処置用量0.01 mg/kg、0.03 mg/kg、0.05 mg/kg お
よび0.2 mg/kg (担毒体の量に関する)で試験した。MF-J-SPDB-DM4、MF-T-SPDB-DM4、MF22
6-SPDB-DM4 および MOR6640-SPDB-DM4は次の方法によって作成した:抗メソテリン抗体を
4−[2−ピリジルジチオ]ブタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDB)で修
飾して、ジチオピリジル基を導入した。8 mg/mLの抗体について、〜6倍のモル量過剰の
SPDB(EtOH中原液〜20mM)を用いて抗体を修飾した。修飾した抗体を、チオピリジル
に対して1.7倍モル量過剰のマイタンシノイドの無チオール形態で処理した。反応は3%
ジメチルアセトアミド(3% v/v)の存在下、室温で20分間、2.5 mg/mlの抗体で実施した。
脱塩Sephadex G25カラムを用いて複合体反応混合物を未反応薬物および反応副生成物から
精製した。280nmで抗体について励起係数224000 M
-1 cm
-1およびDM4について5180 M
-1 cm
-1を用いて、252 nmおよび280 nmでの吸光度を測定して抗体あたりのマイタンシノイド分
子の数を計算した。252 nm/280 nm吸光度比は、抗体について0.37、DM4について5.05であ
る。
【0090】
腫瘍細胞接種後5日目に腫瘍確立後、処置を開始し、次いで腫瘍細胞接種後8および1
2日目にさらに2回処置を行った。コントロールマウスは、0.2 mg/kg 非ターゲティング
免疫複合体(抗リゾチームSPDB-DM4)または等体積のビークルのみ(10 mM ヒスチジン、
130 mM グリシン、5% (w/v) ショ糖、pH 5.5)で処置した。処置は静脈内投与により、投
与体積100 μl/10g 体重で行った。群は各々6匹の動物からなる。マウスの健康状態は毎
日試験した。週2回電子ノギスを用いて皮下腫瘍の長さおよび幅を測定した。腫瘍面積は
次の式により計算した:腫瘍面積 [mm
2] = 長さ [mm] x 幅 [mm]。実験を通じて得た全デ
ータを文書化した。抗メソテリン免疫複合体MF-T-SPDB-DM4の異なる処置用量でのメソテ
リントランスフェクトヒト膵臓がん腫細胞に対する抗腫瘍効果の例は、
図1に示す。メス
NMRIヌードマウスの右側腹部に、50% Matrigel(商標)/50% 培地中に再懸濁した3 x 10
6個
のメソテリンポジティブMiaPaCa-2ヒト膵臓がん腫細胞(A)または1 x 10
6個のメソテリン
ネガティブHT29ヒト結腸がん腫細胞(B)を接種した。腫瘍細胞接種後5、8および12日
目に、マウスに0.01、0.03、0.05、0.2 mg/kg MF-T-SPDB-DM4 (濃度は全て担毒体の量に
関する)またはビークルのみを投与した。週2回腫瘍の長さおよび幅を測定し、腫瘍面積
を幅×長さにより計算した。各群および測定時点の平均値および標準偏差をプロットする
。nは全て6である。アスタリスクはP値<0.05を意味する。
【0091】
腫瘍を有するマウスの処置によって、試験した全ての抗メソテリン免疫複合体が、0.03
mg/kg、0.05 mg/kg および0.2 mg/kgの用量で、インビボでメソテリンポジティブMiaPaC
a-2腫瘍の増殖を抑制することが示された。MF-T-SPDB-DM4の0.05 mg/kgおよび0.2 mg/kg
の用量で、132日の観察期間の終了まで腫瘍の再増殖のない完全腫瘍根絶が生じた。0.05
mg/kgの非ターゲティングコントロールである抗リゾチームSPDB-DM4は、メソテリンポジ
ティブMiaPaCa腫瘍増殖に対して効果がなかった(表1)。未処置およびビークル処置の
腫瘍と比較して、メソテリンネガティブHT29腫瘍の増殖は、最高用量の0.2 mg/kg MF-T-S
PDB-DM4によって、有為に低減されなかった。このことは、MF-T-SPDB-DM4の強い腫瘍阻害
効果は腫瘍内のメソテリンの発現に依存していることを示している。
【0092】
表1:メソテリンポジティブMiaPaCa異種移植腫瘍モデルにおける抗メソテリン免疫複合
体の腫瘍阻害効果。
【表1】
【0093】
実施例2:メソテリンを内因的に発現する腫瘍における効能および異なるリンカーの比較
抗メソテリン免疫複合体が内因的にメソテリンを発現する腫瘍細胞の増殖をインビボで
抑制できるかを試験するため、ヒト子宮頸がん腫細胞(HeLaMATU)を皮下で増殖する異種移
植モデルを使用した。10% (v/v) FCS、2.5% (v/v)ウマ血清、1% ピルビン酸ナトリウムお
よび1% (w/v)グルタミンを補ったDMEM/HAMS12培地中で接着培養としてHeLaMATU細胞を維
持した。メソテリン発現はインビトロでのFACS分析により確認した。メスNMRIヌードマウ
スの右側腹部に、50% Matrigel(商標)/50% Medium中に再懸濁した1.5 x 10
6個のHeLaMA
TU細胞を皮下接種した。さらに、極性リンカー(-スルホ-SPDB)、安定リンカー(-SMCC)ま
たは極性かつ安定リンカー(-(PEG)4-mal)による切断可能なSPDBリンカーの交換がインビ
ボでMOR6640ベースの免疫複合体の異なった抗腫瘍効能を導くかについて取り組んだ。腫
瘍細胞接種後5、8および12日目に、0.2 mg/kgのMOR6640-SPDB-DM4、MOR6640-SMCC-DM
1、MOR6640-Sulfo-SPDB-DM4またはMOR6640-(PEG)4-mal-DM1 (担毒体の量に関する)でHeLa
MATU腫瘍を有するマウスを静脈内処置した。コントロールマウスは、0.2 mg/kg 非ターゲ
ティング免疫複合体(抗リゾチームSPDB-DM4)または等体積のビークルのみで処置した。
群は各々6匹の動物からなる。マウスの健康状態は毎日試験した。週2回電子ノギスを用
いて皮下腫瘍の長さおよび幅を測定した。腫瘍面積は次の式により計算した:腫瘍面積 [
mm
2] = 長さ [mm] x 幅 [mm]。得られたデータを
図2に示す。腫瘍を有するマウスの処置
によって、a) 抗メソテリン免疫複合体が内因的にメソテリンを発現する腫瘍の抑制にイ
ンビボで有効であること、そしてb) 切断可能なリンカーを有する免疫複合体が(MOR6640-
SPDB-DM4 および MOR6640)安定なリンカーを有する免疫複合体(MOR6640-SMCC-DM1 および
MOR6640-(PEG)4-mal-DM1)よりも高い抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。特に、MO
R6640-SPDB-DM4およびMOR6640-sulfo-SPDB-DM4は、最後の処置から11日後に、全処置動
物の腫瘍の根絶を導いたが、一方でMOR6640-SMCC-DM1およびMOR6640-(PEG)4-mal-DM1での
処置は、腫瘍増殖の遅延のみをもたらした。しかし、最後の処置から11日後に、MOR664
0-SMCC-DM1およびMOR6640-(PEG)4-mal-DM1で処置した腫瘍面積は、ビークルまたは抗リゾ
チーム-SPDB-DM4で処置した腫瘍と比較して、それぞれ有為に小さかった。非ターゲティ
ングコントロール複合体は腫瘍増殖に効果を有しなかった。
【0094】
第二の異種移植モデルでの異なるリンカーの抗腫瘍効果を比較するため、我々は、皮下
増殖するベクターまたはメソテリントランスフェクト(#37) MiaPaCa-2細胞(ヒト膵臓が
ん腫細胞)を有するモデルを用いた。10% (v/v) FCS、1% (w/v) グルタミンおよび0.1 mM
非必須アミノ酸を補ったDMEM/HAMS12培地中での接着培養として、MiaPaCa-2-ベクターお
よびMiaPaCa-2#37細胞を維持した。メソテリン発現はFACS分析およびインビボでの皮下腫
瘍の免疫組織化学的分析によって確認した。メスNMRIヌードマウスの右側腹部に、 50% M
atrigel(商標)/50% Medium中に再懸濁した3 x 10
6個のMiaPaCa-2-ベクターおよびMiaPa
Ca-2#37細胞をそれぞれ皮下接種した。腫瘍細胞接種後5、8および12日目に、0.05 mg
/kgのMOR6640-SPDB-DM4、MOR6640-SMCC-DM1、MOR6640-Sulfo-SPDB-DM4またはMOR6640-(PE
G)4-mal-DM1 (担毒体の量に関する)で腫瘍を有するマウスを処置した。コントロールマウ
スは、0.05 mg/kg 非ターゲティング免疫複合体(抗リゾチームSPDB-DM4)または等体積
のビークルのみで処置した。群は各々6匹の動物からなる。マウスの健康状態は毎日試験
した。週2回電子ノギスを用いて皮下腫瘍の長さおよび幅を測定した。腫瘍面積は次の式
により計算した:腫瘍面積 [mm
2] = 長さ [mm] x 幅 [mm]。腫瘍増殖のデータは
図3に示
す。メソテリン発現腫瘍を有するマウスにおいて、MOR6640-SPDB-DM4およびMOR6640-sulf
o-SPDB-DM4での処置は、最後の処置から12日後に全処置動物の腫瘍の根絶を導いた。し
かし、10日後にはこれらの腫瘍の再増殖が得られた(
図3A)。MOR6640-SMCC-DM1、MO
R6640-(PEG)4-mal-DM1および抗リゾチーム-SPDB-DM4での処置は、有為に腫瘍増殖に影響
しなかった。メソテリン発現腫瘍とは異なり、いずれの処置もインビボでベクタートラン
スフェクトMiaPaCa-2細胞の異なる増殖を導かなかった(
図3B)。
【0095】
実施例3:抗メソテリン免疫複合体のインビトロ細胞傷害性
抗メソテリン免疫複合体の細胞傷害性を評価するため、異なるメソテリン発現細胞系を
80〜90%コンフルエントに増殖し、トリプシン処理し、計測した。次いで全細胞系につい
て増殖培地中、体積25 μl中800個/ウェルで細胞を384ウェル平底プレートに播種した。
培地のみのウェルはブランクとして設定した。播種の24時間後、MF-J-SPDB-DM4、MF-22
6-SPDB-DM4、MOR6640-SPDP-DM4、MF226-SPDP-DM4および抗リゾチームSPDP-DM4を0,01〜3
00 nMの用量で投与した。各希釈について3連で行った。96時間後に終点測定を行った
。WST-1アッセイ測定(Roche Cat# 1644807)により細胞生存率を評価した。IC
50値を表2
に示す。HelaMatu細胞に対するMF-T-SPDP-DM4のインビトロ細胞傷害性を示す用量応答曲
線を
図4に示す。
【0096】
表2:メソテリン発現細胞系に対する抗メソテリン免疫複合体の nM IC
50値
【表2】
【0097】
【表3】