特許第6395788号(P6395788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395788
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ボート
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/02 20060101AFI20180913BHJP
   B63H 7/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B63B59/02 B
   B63B59/02 A
   B63B59/02 Z
   B63H7/02
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-209093(P2016-209093)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-69812(P2018-69812A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 淳
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−179593(JP,U)
【文献】 特開2015−083433(JP,A)
【文献】 特開2015−000596(JP,A)
【文献】 特開2011−245945(JP,A)
【文献】 実開昭57−144794(JP,U)
【文献】 特開平05−016877(JP,A)
【文献】 特開平11−091685(JP,A)
【文献】 特開2001−323438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/02
B63H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1縁部および前記第1縁部から下方に延びる第1側壁部を有する下部本体、ならびに前記第1縁部から下方かつ前記下部本体の外部に位置するように突出する第1フランジ部を含む下部構造体と、
前記第1縁部に接合される第2縁部および前記第2縁部から上方に延びる第2側壁部を有する上部本体、ならびに前記第2縁部から上方かつ前記上部本体の外部に位置するように突出する第2フランジ部を含む上部構造体と、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを覆うように前記下部構造体と前記上部構造体とに取り付けられる防舷材とを備え、
前記防舷材は、前記下部本体と前記第1フランジ部との間に位置するように上方に向かって突出する第1係止部、前記上部本体と前記第2フランジ部との間に位置するように下方に向かって突出する第2係止部、および前記第1係止部と前記第2係止部とをつなぐ中間部を有し、
前記第1係止部の上部は前記第1側壁部と前記第1フランジ部とに密着し、前記第2係止部の下部は前記第2側壁部と前記第2フランジ部とに密着する、ボート。
【請求項2】
第1縁部を有する下部本体、および前記第1縁部から下方かつ前記下部本体の外部に位置するように突出する第1フランジ部を含む下部構造体と、
前記第1縁部に接合される第2縁部を有する上部本体、および前記第2縁部から上方かつ前記上部本体の外部に位置するように突出する第2フランジ部を含む上部構造体と、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを覆うように前記下部構造体と前記上部構造体とに取り付けられる防舷材とを備え、
前記防舷材は、前記下部本体と前記第1フランジ部との間に位置するように上方に向かって突出する第1係止部、前記上部本体と前記第2フランジ部との間に位置するように下方に向かって突出する第2係止部、および前記第1係止部と前記第2係止部とをつなぐ中間部を有し、
前記第1係止部は、前記第1フランジ部および前記第1フランジ部に対向する前記下部本体のうち前記第1フランジ部に対向する部分に密着するように形成され、
前記第2係止部は、前記第2フランジ部および前記第2フランジ部に対向する前記上部本体のうち前記第2フランジ部に対向する部分に密着するように形成される、ボート。
【請求項3】
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部と前記防舷材とは、当該ボートの少なくとも前部に設けられる、請求項1または2に記載のボート。
【請求項4】
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部と前記防舷材とは、当該ボートの左右両側部にも設けられる、請求項に記載のボート。
【請求項5】
前記中間部と、前記第1フランジ部および前記第2フランジ部との間に中空部を有し、
前記中間部の内面は水平方向の外方に湾曲するように形成される、請求項1からのいずれかに記載のボート。
【請求項6】
前記防舷材の比重は1未満である、請求項1からのいずれかに記載のボート。
【請求項7】
前記防舷材は可撓性を有する、請求項1からのいずれかに記載のボート。
【請求項8】
駆動源と前記駆動源の回転に基づいて回転するプロペラとをさらに備え、前記駆動源と前記プロペラとは前記上部構造体の下端部よりも上方に設けられる農薬散布用ボートである、請求項1から7のいずれかに記載のボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はボートに関し、より特定的には、防舷材を有するボートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1には、緩衝体が取り付けられた救命艇が開示されている。この救命艇は、上部構造体および下部構造体を有し、緩衝体は、上部構造体および下部構造体のそれぞれに配置された係止部材と、係止部材に掛け渡されるベルト部材とによって、上部構造体および下部構造体に締め付け固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−73825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1の救命艇では、緩衝体を上部構造体および下部構造体に固定するために別途ベルト部材や係止部材が必要であり、部品数が多くなる。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、防舷材を取り付けるための部品を必要としないことによって部品数を減らすことができる、ボートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第1縁部を有する下部本体、および第1縁部から下方かつ下部本体の外部に位置するように突出する第1フランジ部を含む下部構造体と、第1縁部に接合される第2縁部を有する上部本体、および第2縁部から上方かつ上部本体の外部に位置するように突出する第2フランジ部を含む上部構造体と、第1フランジ部と第2フランジ部とを覆うように下部構造体と上部構造体とに取り付けられる防舷材とを備え、防舷材は、下部本体と第1フランジ部との間に位置するように上方に向かって突出する第1係止部、上部本体と第2フランジ部との間に位置するように下方に向かって突出する第2係止部、および第1係止部と第2係止部とをつなぐ中間部を有する、ボートが提供される。
【0007】
この発明では、防舷材は、第1フランジ部と第2フランジ部とを覆い、第1係止部が下部本体と第1フランジ部との間に位置しかつ第2係止部が上部本体と第2フランジ部との間に位置するように、下部構造体と上部構造体とに取り付けられる。したがって、防舷材が下方から力を受けた場合には、第1係止部が下部構造体によって係止され、防舷材が上方から力を受けた場合には、第2係止部が上部構造体によって係止される。また、防舷材がボートとは反対側に(外方に)引っ張られるように力を受けた場合には、第1係止部が第1フランジ部によって係止され、第2係止部が第2フランジ部によって係止される。このように、防舷材を取り付けるための部品がなくても、防舷材を下部構造体および上部構造体から外れないように取り付けることができ、部品数を減らすことができる。
【0008】
好ましくは、第1フランジ部と第2フランジ部と防舷材とは、当該ボートの少なくとも前部に設けられる。この場合、ボートが前進したときに前方にある障害物と接触しても、防舷材によって衝撃を抑制することができる。
【0009】
また好ましくは、第1フランジ部と第2フランジ部と防舷材とは、当該ボートの左右両側部にも設けられる。この場合、ボートが左右両側方にある障害物と接触しても、防舷材によって衝撃を抑制することができる。
【0010】
さらに好ましくは、中間部と、第1フランジ部および第2フランジ部との間に中空部を有する。この場合、防舷材の中間部に障害物が接触したときに、中空部にある空気によって、さらに衝撃を抑制することができる。また、防舷材が水に浸かったときに、中空部にある空気によって浮力を得ることができる。これによって、ボートが浮きやすくなる。
【0011】
好ましくは、防舷材の比重は1未満である。この場合、防舷材が水に浸かったときに、防舷材によって浮力を得ることができる。これによって、ボートが浮きやすくなる。
【0012】
また好ましくは、防舷材は可撓性を有する。この場合、防舷材を変形させて下部構造体と上部構造体とに取り付けることができるので、防舷材の取り付けが容易になる。
【0013】
さらに好ましくは、第1係止部は、第1フランジ部および第1フランジ部に対向する下部本体に密着するように形成され、第2係止部は、第2フランジ部および第2フランジ部に対向する上部本体に密着するように形成される。この場合、防舷材は、がたつくことなく下部構造体と上部構造体とに強く固定される。これによって、防舷材に障害物が接触したときにボートが受ける衝撃を安定して抑制することができる。
【0014】
好ましくは、この発明は、駆動源と駆動源の回転に基づいて回転するプロペラとをさらに備え、駆動源とプロペラとは上部構造体の下端部よりも上方に設けられる農薬散布用ボートである。このような、農薬散布用ボートは、水が張られた水田等に農薬を散布するために好適に用いられる。この場合、農薬散布用ボートが畦などの障害物と接触しても防舷材によって衝撃を抑制することができるため、水田の隅々まで容易に農薬を散布することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、防舷材を取り付けるための部品を必要としないことによって部品数を減らすことができる、ボートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態に係るボートを示す側面図である。
図2】この発明の一実施形態に係るボートを示す平面図である。
図3図2のA−A端面図である。
図4図3の防舷材およびその近傍を示す拡大図である。
図5図2のB−B端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の好ましい実施形態について説明する。ここでは、この発明を、ボートの一例である農薬散布用ボート10に適用した場合について説明する。なお、この発明の実施形態における、前後、左右、上下とは、農薬散布用ボート10を基準とした前後、左右、上下を意味する。
【0018】
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る農薬散布用ボート10は、艇体12、推進装置14および散布装置16を含む。艇体12は、前後方向に延び、前端部がやや上方に位置するように湾曲する。艇体12の上面後部には、推進装置14が設けられる。艇体12の上面中央部には、散布装置16が設けられる。
【0019】
図1図4を参照して、艇体12は、上部構造体18、下部構造体20および防舷材22を含む。なお、図2では、図面が煩雑になることを避けるために、推進装置14および散布装置16の図示を省略する。
【0020】
図5をも参照して、上部構造体18は、上部本体24、第2フランジ部26および第4フランジ部28を含む。上部本体24は、天板部30、側壁部32、第2縁部34および第4縁部36を含む。天板部30は、前後方向に延び、前部および左右後部は、略円弧状に形成される。また、天板部30は、前後方向に延びる甲板部38、甲板部38の前端部から前方斜め上方に延びた後にさらに前方に延びる船首部40、ならびに甲板部38および船首部40の左右両側方において前後方向に延びる左舷部42,右舷部44を有する。側壁部32は、天板部30の外周部のうち後部の範囲C1を除いた部分に沿ってかつ下方に突出するように形成される。第2縁部34は、側壁部32の下端部に沿ってかつ略水平に突出するように形成される。第4縁部36は、甲板部38の後端部に沿って範囲C1を左右方向に延びかつ略水平に突出するように形成される。第2フランジ部26は、第2縁部34の先端部に沿ってかつ上方に突出するように形成される。第4フランジ部28は、第4縁部36の先端部に沿って範囲C2を左右方向に延びかつ下方に突出するように形成される。
【0021】
下部構造体20は、下部本体46、第1フランジ部48および第3フランジ部50を含む。下部本体46は、底部52、側壁部54、第1縁部56および第3縁部58を含む。底部52は、前後方向に延びる薄板状に形成され、前端部がやや上方に位置するように湾曲する。底部52の前部および左右後部は、天板部30の前部および左右後部のように、略円弧状に形成される。側壁部54は、底部52の外周部の全周に亘ってかつ上方に突出するように形成される。第1縁部56は、平面視(図2参照)において第2縁部34と重なるように、側壁部54の上端部のうち範囲C1を除いた部分に沿ってかつ略水平に突出するように形成される。第3縁部58は、平面視(図2参照)において第4縁部36と重なるように、側壁部54の上端部のうち範囲C1に形成される部分に沿って左右方向に延びかつ略水平に突出するように形成される。第1フランジ部48は、平面視(図2参照)において第2フランジ部26と重なるように、第1縁部56の先端部に沿ってかつ下方に突出するように形成される。第3フランジ部50は、第4フランジ部28と重なるように、第3縁部58の先端部に沿って範囲C2を左右方向に延びかつ下方に突出するように形成される。
【0022】
下部構造体20と上部構造体18とは、相互に対向するように設けられる。上部構造体18の第2縁部34は、接着部材59によって、下部構造体20の第1縁部56に接着され、上部構造体18の第4縁部36は、接着部材59によって、下部構造体20の第3縁部58に接着される。下部構造体20と上部構造体18とが接着された状態では、第1フランジ部48は下部本体46の外部に位置し、第2フランジ部26は上部本体24の外部に位置する。また、下部構造体20と上部構造体18との接着部分の近傍に第1フランジ部48および第2フランジ部26を設けることによって、艇体12の強度を高めることができる。
【0023】
図1図4を参照して、防舷材22は、断面略C字状に形成され、第1フランジ部48と第2フランジ部26とを覆いかつ第1フランジ部48と第2フランジ部26とに沿うようにして、下部構造体20と上部構造体18とに取り付けられる。防舷材22は、第1係止部60、第2係止部62および中間部64を含む。第1係止部60は、側壁部54と第1フランジ部48との間に位置するように上方に向かって突出する。また、第1係止部60の上部は、側壁部54と第1フランジ部48とに密着する。第2係止部62は、側壁部32と第2フランジ部26との間に位置するように下方に向かって突出する。また、第2係止部62の下部は、側壁部32と第2フランジ部26とに密着する。言い換えれば、第1係止部60は、下部本体46と第1フランジ部48との間に位置するように上方に向かって突出する。また、第1係止部60は、第1フランジ部48と第1フランジ部48に対向する下部本体46とに密着するように形成される。第2係止部62は、上部本体24と第2フランジ部26との間に位置するように下方に向かって突出する。また、第2係止部62は、第2フランジ部26と第2フランジ部26に対向する上部本体24とに密着するように形成される。中間部64は、第1係止部60の下端部と第2係止部62の上端部とを繋ぎ、やや外方に膨らむように形成される。また、第1係止部60と第2係止部62と中間部64とは、下部構造体20および上部構造体18の外周部のうち後部の範囲C1を除く部分において、第1フランジ部48と第2フランジ部26とに沿って延びる。防舷材22としては、たとえば、ゴムやプラスチック等の可撓性を有する材料を用いることができる。防舷材22の比重は、1未満に設定されることが好ましい。
【0024】
このように、第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とは、農薬散布用ボート10の前部と左右両側部とに設けられる。また、第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とは、農薬散布用ボート10の外周部において、同一範囲に設けられる。
【0025】
防舷材22を下部構造体20と上部構造体18とに取り付けるときは、たとえば、第1フランジ部48と第2フランジ部26とを上下から挟むように取り付けることができる。図4を参照して、この場合には、まず、第1係止部60を下方に引っ張り、第1フランジ部48の下端部よりも下方から、第1係止部60を第1フランジ部48と側壁部54との間に嵌め込む。次に、第2係止部62を上方に引っ張り、第2フランジ部26の上端部よりも上方から、第2係止部62を第2フランジ部26と側壁部32との間に嵌め込む。
【0026】
また、他の方法として、たとえば、防舷材22を下部構造体20および上部構造体18の外周部(第1フランジ部48および第2フランジ部26)に沿って摺動させることで、防舷材22を下部構造体20と上部構造体18とに取り付けることもできる。図2をも参照して、この場合には、第1フランジ部48および第2フランジ部26の端部Dから、第1係止部60を第1フランジ部48と側壁部54との間に挿入し、かつ第2係止部62を第2フランジ部26と側壁部32との間に挿入する。そして、その状態から、防舷材22を下部構造体20および上部構造体18の外周部(第1フランジ部48および第2フランジ部26)に沿って摺動させればよい。
【0027】
図2図4を参照して、防舷材22を下部構造体20と上部構造体18とに取り付けた状態では、中間部64と、第1フランジ部48および第2フランジ部26との間に、中空部66が形成される。中空部66は、下部構造体20および上部構造体18の外周部のうち後部の範囲C1を除く部分において、第1フランジ部48と第2フランジ部26と中間部64とに沿って延びる。このように、農薬散布用ボート10は、中間部64と、第1フランジ部48および第2フランジ部26との間に中空部66を有する。
【0028】
図1を参照して、推進装置14は、エンジン68、プロペラ70、舵72および電装品74を含む。
【0029】
エンジン68は、エンジンマウント76を介して、上部構造体18上に取り付けられる。プロペラ70は、エンジン68の後部に取り付けられ、エンジン68の回転に基づいて回転する。舵72は、プロペラ70の後方において、左右方向に回動自在となるように、上部構造体18上に取り付けられる。電装品74は、ラジコン受信機等を有し、図示しない支持部材によって、エンジン68の上方に取り付けられる。
【0030】
上述したことから明らかなように、エンジン68とプロペラ70と舵72と電装品74とは、上部構造体18の下端部よりも上方に設けられる。なお、推進装置14としては、公知の種々の農薬散布用ボートに用いられる推進装置を利用できるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
散布装置16は、農薬が充填されるタンク78を含む。タンク78は、上部構造体18上に取り付けられる。タンク78には、図示しないパイプが接続され、このパイプを介して、艇体12の底から農薬が吐出される。なお、散布装置16としては、公知の種々の農薬散布用ボートに用いられる散布装置を利用できるので、詳細な説明は省略する。
【0032】
農薬散布用ボート10を用いて農薬を散布する場合には、たとえば、農薬散布用ボート10を水田に浮かべて、図示しないリモコンによって、農薬散布用ボート10を操作する。農薬散布用ボート10を走行させながら、農薬散布用ボート10の底から農薬を水中に散布すれば、農薬散布用ボート10が通過したところに農薬を散布することができる。
【0033】
このような農薬散布用ボート10によれば、防舷材22は、第1フランジ部48と第2フランジ部26とを覆い、第1係止部60が下部本体46と第1フランジ部48との間に位置しかつ第2係止部62が上部本体24と第2フランジ部26との間に位置するように、下部構造体20と上部構造体18とに取り付けられる。したがって、防舷材22が下方から力を受けた場合には、第1係止部60が下部構造体20によって係止され、防舷材22が上方から力を受けた場合には、第2係止部62が上部構造体18によって係止される。また、防舷材22が農薬散布用ボート10とは反対側に(外方に)引っ張られるように力を受けた場合には、第1係止部60が第1フランジ部48によって係止され、第2係止部62が第2フランジ部26によって係止される。このように、防舷材22を取り付けるための部品がなくても、防舷材22を下部構造体20および上部構造体18から外れないように取り付けることができ、部品数を減らすことができる。
【0034】
第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とは、農薬散布用ボート10の前部に設けられるので、農薬散布用ボート10が前進したときに前方にある障害物と接触しても、防舷材22によって衝撃を抑制することができる。
【0035】
第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とは、農薬散布用ボート10の左右両側部にも設けられるので、農薬散布用ボート10が左右両側方にある障害物と接触しても、防舷材22によって衝撃を抑制することができる。
【0036】
中間部64と、第1フランジ部48および第2フランジ部26との間に中空部66を有するので、防舷材22の中間部64に障害物が接触したときに、中空部66にある空気によって、さらに衝撃を抑制することができる。また、防舷材22が水に浸かったときに、中空部66にある空気によって浮力を得ることができる。これによって、農薬散布用ボート10が浮きやすくなる。
【0037】
防舷材22の比重を1未満に設定すれば、防舷材22が水に浸かったときに、防舷材22によって浮力を得ることができる。これによって、農薬散布用ボート10が浮きやすくなる。
【0038】
防舷材22は可撓性を有するので、防舷材22を変形させて下部構造体20と上部構造体18とに取り付けることができる。これによって、防舷材22の取り付けが容易になる。
【0039】
第1係止部60は、第1フランジ部48および第1フランジ部48に対向する下部本体46に密着するように形成され、第2係止部62は、第2フランジ部26および第2フランジ部26に対向する上部本体24に密着するように形成されるので、防舷材22は、がたつくことなく下部構造体20と上部構造体18とに強く固定される。これによって、防舷材22に障害物が接触したときに農薬散布用ボート10が受ける衝撃を安定して抑制することができる。
【0040】
農薬散布用ボート10は、エンジン68とエンジン68の回転に基づいて回転するプロペラ70とを備え、エンジン68とプロペラ70とは上部構造体18の下端部よりも上方に設けられるので、水が張られた水田等に農薬を散布するために、好適に用いられる。この場合、農薬散布用ボート10が畦などの障害物と接触しても防舷材22によって衝撃を抑制することができるため、水田の隅々まで容易に農薬を散布することができる。
【0041】
上述した実施形態では、第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とが、農薬散布用ボート10の前部と左右両側部とに設けられる場合について説明したが、これに限定されず、第1フランジ部と第2フランジ部と防舷材とは、農薬散布用ボートの前部にのみ設けられてもよく、農薬散布用ボートの後部にも設けられてもよい。第1フランジ部と第2フランジ部と防舷材とは、ボートの種類や用途に応じて適した位置に設けることができる。
【0042】
上述した実施形態では、第1フランジ部48と第2フランジ部26と防舷材22とが、農薬散布用ボート10の外周部において、同一範囲に設けられる場合について説明したが、これに限定されず、第1フランジ部と第2フランジ部と防舷材とは、農薬散布用ボートの外周部において、同一範囲に設けられなくてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、農薬散布用ボート10が、中空部66を有する場合について説明したが、これに限定されず、中空部66を有していなくてもよい。
【0044】
防舷材22としては、ゴムやプラスチック以外の材料を用いることもできる。
【0045】
防舷材22の比重は1未満でなくてもよく、防舷材22は可撓性を有していなくてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、第1係止部60が、第1フランジ部48および第1フランジ部48に対向する下部本体46に密着するように形成され、第2係止部62が、第2フランジ部26および第2フランジ部26に対向する上部本体24に密着するように形成される場合について説明したが、これに限定されず、第1係止部は、第1フランジ部48および第1フランジ部48に対向する下部本体46に密着するように形成されていなくてもよく、第2係止部は、第2フランジ部26および第2フランジ部26に対向する上部本体24に密着するように形成されていなくてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、エンジン68とプロペラ70とが、上部構造体18の下端部よりも上方に設けられる場合について説明したが、これに限定されず、エンジン68とプロペラ70とは、下部構造体20の下端部よりも上方に設けられてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、この発明を、農薬散布用ボート10に適用した場合について説明したが、これに限定されず、この発明は、公知の種々のボートに適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 農薬散布用ボート
12 艇体
14 推進装置
16 散布装置
18 上部構造体
20 下部構造体
22 防舷材
24 上部本体
26 第2フランジ部
34 第2縁部
46 下部本体
48 第1フランジ部
56 第1縁部
60 第1係止部
62 第2係止部
64 中間部
66 中空部
68 エンジン
70 プロペラ
図1
図2
図3
図4
図5