特許第6395795号(P6395795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395795
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】刈込み機
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/04 20060101AFI20180913BHJP
   A01D 34/13 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A01G3/04 501B
   A01D34/13 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-242794(P2016-242794)
(22)【出願日】2016年12月15日
(62)【分割の表示】特願2013-44375(P2013-44375)の分割
【原出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2017-70302(P2017-70302A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】318001706
【氏名又は名称】京セラインダストリアルツールズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 厚人
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−178849(JP,U)
【文献】 実開昭58−121525(JP,U)
【文献】 特開昭62−088594(JP,A)
【文献】 実開昭54−040841(JP,U)
【文献】 実開昭59−176792(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0205811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/13
A01G 3/00 − 3/08
B26B 13/00 − 17/02
B26B 19/00 − 19/10
B26D 1/00 − 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部の側方に複数の切断刃が列設された上下一対のブレードが摺接状態を保ちながら往復運動して草木の切断を行う刈込み機において、
前記切断刃の刃先部は、切断時の切断抵抗により発生する切断刃同士を押し付ける方向の分力が刃元側に対して刃末側が小さくなるように、すくい面が刃元側から刃末側に向かって2つの広さの段階を有して狭くなるように形成されていることを特徴とする刈込み機。
【請求項2】
前記切断刃は、刃元側の厚さに対して刃末側の厚さが薄く設定されていることを特徴とする請求項1記載の刈込み機。
【請求項3】
前記切断刃には、刃末側のすくい面に接続する逃がし面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の刈込み機。
【請求項4】
長尺部の側方に複数の切断刃が列設された上下一対のブレードが摺接状態を保ちながら往復運動して草木の切断を行う刈込み機において、
前記切断刃の刃先部は、切断時の切断抵抗により発生する切断刃同士を押し付ける方向の分力が刃元側に対して刃末側が小さくなるように、刃元側と刃末側の中間位置から刃末側のすくい面が、該中間位置から刃元側のすくい面に対して狭くなるように形成されていることを特徴とする刈込み機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木や芝草の刈込みに使用する刈込み機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、草木の刈込みに使用される刈込み機としてヘッジトリマが知られている。このヘッジトリマには長尺部の側方に複数の切断刃が櫛歯状に列設された上下一対の板状のブレードが備えられている。各ブレードは、駆動源からの駆動により互いに摺接した状態で長手方向の往復運動を異なる位相で行うことで、切断刃間に進入した草木を切断することができるように構成されている。具体的には、上下一対のブレードの長尺部の上方および下方には上ブレードホルダと下ブレードホルダが配置されており、上ブレードホルダと下ブレードホルダの間に固定された複数のガイドスペーサに、各ブレードの長尺部に形成された複数の長孔を嵌合させることで、長手方向の往復運動が可能となっている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
上述の構成において、ブレードの往復運動を可能とするためには、ガイドスペーサの上下方向の長さ、すなわち上ブレードホルダと下ブレードホルダとの間の距離を上下一対のブレードの上下方向厚さの合計よりわずかに大きく設定しなければならない。よって、上ブレードホルダと下ブレードホルダとの間において、ブレードの上下方向には隙間が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−41816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ブレードの上下方向に隙間が形成されていることで、切断刃には局所的に大きな接触圧が負荷されることになる。そこで、この点について図10および11を参照して説明する。
【0006】
図10はヘッジトリマによる枝の切断状態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は断面C-Cを示している。図11図10の断面D-Dを示している。図10および11に示されるように、上ブレード121の切断刃122および下ブレード123の切断刃124は、その刃先部122a,124aに摺動面122c,124cとすくい面122b,124bとで構成される刃先角γ,γが設定されており、上ブレード121と下ブレード123の往復運動により切断刃122,124が互い接近することで刃先部122a,124aにより枝131の切断作業を行うことができる。なお、刃先部122a,124aの刃先角γ,γは、一般的には45度程度に設定されている。また、ヘッジトリマにより枝を切断する場合、通常、切断刃(122,124)の刃末側(先端側)が主に使用されることになる。
【0007】
切断刃122,124により枝131を切断する場合、切断刃122,124の切断位置に働く切断抵抗により、切断刃122,124は、図10中の矢印線125,126で示す方向に進行しようとする。このため、図11で示されるように、切断刃122,124同士は切断位置が重なり合う方向に傾いた状態で互い接近していくことになる。このとき、符号127で示す切断位置より刃元側の切断刃122,124同士の摺接位置には局所的に大きい接触圧が負荷される。これにより、切断刃122,124の刃先部122a,124aの先端が互いに離間する方向に変形する「ダレ」と呼ばれる不具合が発生し、その結果、切断性能が著しく低下する可能性があった。
【0008】
さらに、「ダレ」が発生した刃先部で草木の切断を行った場合、切断刃122,124同士の摺接により摺接面122c,124cに付着した草木のヤニを除去する機能が低下しているので、ヤニが切断刃122,124の摺接面122c,124cに堆積してしまう。その結果、切断刃122,124の間に隙間が形成され、「ダレ」が発生した箇所以外での切断性能も低下する可能性があった。
【0009】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は、切断刃の切断性能の低下を防止した刈込み機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る刈込み機は、長尺部の側方に複数の切断刃が列設された上下一対のブレードが摺接状態を保ちながら往復運動して草木の切断を行う刈込み機であって、前記切断刃の刃先部は、切断時の切断抵抗により発生する切断刃同士を押し付ける方向の分力が刃元側に対して刃末側が小さくなるように、すくい面が刃元側から刃末側に向かって2つの広さの段階を有して狭くなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る刈込み機においては、前記切断刃は、刃元側の厚さに対して刃末側の厚さを薄く設定することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る刈込み機においては、前記切断刃には、刃末側のすくい面に接続する逃がし面を形成することができる。
【0013】
本発明に係る刈込み機は、長尺部の側方に複数の切断刃が列設された上下一対のブレードが摺接状態を保ちながら往復運動して草木の切断を行う刈込み機であって、前記切断刃の刃先部は、切断時の切断抵抗により発生する切断刃同士を押し付ける方向の分力が刃元側に対して刃末側が小さくなるように、刃元側と刃末側の中間位置から刃末側のすくい面が、該中間位置から刃元側のすくい面に対して狭くなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切断刃の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧を低減させることで、切断刃の切断性能の低下を防止した刈り込み機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一の実施形態に係るヘッジトリマの正面図である。
図2】第一の実施形態に係るヘッジトリマの平面図である。
図3図2の断面Z−Zを示す図である。
図4】第一の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B1−B1、(c)は断面A1−A1を示している。
図5】第二の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B2−B2、(c)は断面A2−A2を示している。
図6】第三の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B3−B3、(c)は断面A3−A3を示している。
図7】第四の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B4−B4、(c)は断面A4−A4を示している。
図8】第五の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B5−B5、(c)は断面A5−A5を示している。
図9】第六の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面B6−B6、(c)は断面A6−A6を示している。
図10】ヘッジトリマによる枝の切断状態を説明する図であり、(a)は平面視、(b)は断面C-Cを示している。
図11図10の断面D-Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、刈込み機であるヘッジトリマの場合について、図1から9を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
なお、本明細書では、図1中に示すように、「上、下、前、後」を規定して説明する。
【0018】
図1から3に示すように、第一の実施形態に係るヘッジトリマは、ハウジング10と補助ハンドル21とガード板22とハウジング10から前方に突出する刈刃部50とを備えており、ハウジング10にはメインハンドル11が一体的に形成されている。メインハンドル11には刈刃部50の運転操作を行うためのトリガスイッチ12が備えられており、ハウジング10の内部には、刈刃部50を運転するための駆動部(不図示)が備えられている。駆動部には、駆動源であるモータと、モータの回転を刈刃部50の往復運動に変換するカム等からなる駆動伝達部とが備えられている。
【0019】
刈刃部50は、刈刃として板状の上ブレード51と下ブレード61を備えている。上下ブレード51,61は、前後に伸びる長尺部52,62と、長尺部52,62の両側方に櫛歯状に列設される複数の切断刃53,63を有している。上ブレード51の長尺部52の上方には金属製の板材を断面視コの字状に成形した上ブレードホルダ71が配置されており、下ブレード61の長尺部62の下方には金属製の板材からなる下ブレードホルダ72が配置されている。上ブレードホルダ71と下ブレードホルダ72の間には筒状のガイドスペーサ73が配置されている。上下ブレード51,61の長尺部52,62にはガイドスペーサ73が遊嵌する長孔54,64が形成されている。刈刃部50は、ガイドスペーサ73が長孔54,64に遊嵌した状態で、上方より、上ブレードホルダ71、上ブレード51、下ブレード61、下ブレードホルダ72の順に重ねた状態で、下側からネジ74を挿嵌し上方でナット75を締め付けることで、上ブレードホルダ71と下ブレードホルダ72がガイドスペーサ73を介して連結されるとともに、上ブレードホルダ71と下ブレードホルダ72の間で上ブレード51と下ブレード61が前後方向に移動可能に配置される。このため、ガイドスペーサ73で規定される上ブレードホルダ71と下ブレードホルダ72の間の距離は、上ブレード51と下ブレード61の厚さの合計よりわずかに大きく設定されている。なお、下ブレードホルダ72の後部はハウジング11の底面に固定されている。
【0020】
上述の構成において、トリガスイッチ12のオン操作により駆動源が駆動すると、上ブレード51と下ブレード61が互いに180度の位相差で前後に往復運動を行うことで、切断刃52,62の間に進入した草木を切断することができる。
【0021】
次に、図4を参照図に加えて、本発明の第一の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃53,63について詳細に説明する。
【0022】
本発明の第一の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃53,63の刃先部53a,63aには、摺動面53c,63cに対するすくい面53b,63bの角度である刃先角が、刃元から刃末に向かって連続的に小さくなるようにすくい面53b,63bが形成されている。そして、刃元側の刃先角は従来の切断刃の刃先角(45度程度)より大きく、刃末側の刃先角は従来の切断刃の刃先角(45度程度)より小さくなるように設定されている。すなわち、刃元側と刃末側の中間位置で従来の切断刃の刃先角と同じ角度の箇所が存在することになる。本実施形態においては、刃元側である断面B1−B1で示す位置の刃先角β1は56度であり、刃末側である断面A1−A1で示す位置の刃先角α1は40度となっている。
【0023】
上述の構成の切断刃53,63で枝を切断する場合、切断位置である刃末側の刃先角が従来のものより小さいので、切断位置のすくい面53b,63bに働く切断抵抗により発生する切断刃53,63同士を押し付ける方向の分力が、従来の刃先角の場合と比較して小さくなる。これにより、切断刃53,63の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。また、刃元側の刃先角が従来のものより大きいので、刃元側の刃先部の剛性が従来の場合と比較して高くなり、刃元側の刃先部の変形をより防止することができる。
【0024】
また、上述の構成では、刃元から刃末に向かって刃先角が連続的に小さくなるように設定したことで、接触圧が最も大きくなる刃元に近づくにしたがって刃先角が大きくなるので、刃元側ほど刃先部の剛性が高くなり、より効果的に刃元側の刃先部の変形を防止することができる。
【0025】
次に、本発明の第二の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃について図5を参照して説明する。なお、第二の実施形態の構成は第一の実施形態と切断刃のみが異なるので、切断刃以外の構成については説明を省略する。
【0026】
本発明の第二の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃82,92の刃先部82a,92aには、摺動面82e,92eに対するすくい面82d、92dの角度である刃先角が、刃末側刃先部82b,92bは従来の切断刃の刃先角(45度程度)より小さく、刃元側刃先部82c,92cは従来の切断刃の刃先角(45度程度)より大きくなるようにすくい面82d、92dが形成されている。また、刃末側刃先部82b,92bと刃元側刃先部82c,92cは、その先端を連続させて形成されている。本実施形態においては、断面A2−A2で示す刃末側刃先部82b,92bの刃先角α2は40度であり、断面B2−B2で示す刃元側刃先部82c,92cの刃先角β2は63度となっている。
【0027】
上述の構成の切断刃82,92で枝を切断する場合、切断位置である刃末側刃先部82b,92bの刃先角が従来のものより小さいので、切断位置のすくい面82d、92dに働く切断抵抗により発生する切断刃82,92同士を押し付ける方向の分力が、従来の刃先角の場合と比較して小さくなる。これにより、切断刃82,92の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。さらに、刃元側刃先部82c,92cの刃先角が従来のものより大きいので、刃元側刃先部82c,92cの剛性が従来の場合と比較して高くなり、刃元側刃先部82c,92cの変形をより防止することができる。
【0028】
次に、本発明の第三の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃について図6を参照して説明する。なお、第三の実施形態の構成は第一の実施形態と切断刃のみが異なるので、切断刃以外の構成については説明を省略する。
【0029】
本発明の第三の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃83,93の刃先部83a,93aには、摺動面83f,93fに対するすくい面83e,93eの角度である刃先角が、刃末側刃先部83b,93bは従来の切断刃の刃先角(45度程度)より小さく、刃元側刃先部83c,93は従来の切断刃の刃先角(45度程度)より大きくなるようにすくい面83e,93eが形成されている。また、刃末側刃先部83b,93bの先端は、刃元側刃先部83c,93cの先端の延長線に対して内側にオフセットしており、先端同士はR部83d,93dを介して接続されている。本実施形態においては、断面A3−A3で示す刃末側刃先部83b,93bの刃先角α3は40度であり、断面B3−B3で示す刃元側刃先部83c,93cの刃先角β3は63度となっている。
【0030】
上述の構成の切断刃83,93で枝を切断する場合、切断位置である刃末側刃先部83b,93bの刃先角が従来のものより小さいので、切断位置のすくい面83e,93eに働く切断抵抗により発生する切断刃83,93同士を押し付ける方向の分力が、従来の刃先角の場合と比較して小さくなる。これにより、切断刃83,93の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。また、刃元側刃先部83c,93cの刃先角が従来のものより大きいので、刃元側刃先部83c,93cの剛性が従来の場合と比較して高くなり、刃元側刃先部83c,93cの変形をより防止することができる。さらに、刃末側刃先部83b,93bの先端と刃元側刃先部83c,93cの先端とを不連続としたので、連続する形状と比較して加工精度を低くでき、製造が容易となる。
【0031】
次に、本発明の第四の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃について図7を参照して説明する。なお、第四の実施形態の構成は第一の実施形態と切断刃のみが異なるので、切断刃以外の構成については説明を省略する。
【0032】
本発明の第四の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃84,94の刃先部84a,94aには、摺動面84e,94eに対するすくい面84d,94dの角度である刃先角が、刃末側刃先部84b,94bは従来の切断刃の刃先角(45度程度)より小さく、刃元側刃先部84c,94cは従来の切断刃の刃先角(45度程度)より大きくなるようにすくい面84d,94dが形成されている。また、刃末側刃先部84b,94bの先端は、刃元側刃先部84c,94cの先端の延長線に対して内側に傾斜している。本実施形態においては、断面A4−A4で示す刃末側刃先部84b,94bの刃先角α4は40度であり、断面B4−B4で示す刃元側刃先部84c,94cの刃先角β4は62度となっている。
【0033】
上述の構成の切断刃84,94で枝を切断する場合、切断位置である刃末側刃先部84b,94bの刃先角が従来のものより小さいので、切断位置のすくい面84d,94dに働く切断抵抗により発生する切断刃84,94同士を押し付ける方向の分力が、従来の刃先角の場合と比較して小さくなる。これにより、切断刃84,94の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。また、刃元側刃先部84c,94cの刃先角が従来のものより大きいので、刃元側刃先部84c,94cの剛性が従来の場合と比較して高くなり、刃元側刃先部84c,94cの変形をより防止することができる。さらに、刃末側刃先部84b,94bの先端と刃元側刃先部84c,94cの先端とを不連続としたので、連続する形状と比較して加工精度を低くでき、製造が容易となる。
【0034】
次に、本発明の第五の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃について図8を参照して説明する。なお、第五の実施形態の構成は第一の実施形態と切断刃のみが異なるので、切断刃以外の構成については説明を省略する。
【0035】
本発明の第五の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃85,95の刃先部85a,95aは、図8中に符号α5で示す摺動面85c,95cに対するすくい面85b,95bの角度である刃先角が刃先から刃元において一定に設定されている。なお、本実施形態においては、刃先角α5は45度に設定されている。また、切断刃85,95は、符号Tで示す摺動面85c,95cと刃元側外面85d,95dの距離である刃元側厚さに対し、符号Sで示す摺動面85c,95cと刃末側外面85e,95eの距離である刃末側厚さが薄くなるように刃元側外面85d,95dと刃末側外面85e,95eとがオフセットした平面上に形成されている。刃元側外面85d,95dと刃末側外面85e,95eとの接続部は応力集中を避けるためR面85f、95fで接続されている。また、刃元側外面85d,95dは長尺部と連続した平面となっている。なお、刃末側厚さSは、本実施形態においては一定としているが、刃末から刃元方向に向かって連続的に厚くなるように刃末側外面を傾斜面として形成しても良い。この場合、R面の形成を不要とすることができる。
【0036】
上述の構成の切断刃85,95で枝を切断する場合、切断位置である刃末側の切断刃の厚さを薄く設定したことで、刃末側の切断刃のすくい面が狭く形成されているので、刃末側のすくい面に働く切断抵抗自体が小さくなり、それに比例して切断刃85,95同士を押し付ける方向の分力も小さくなる。これにより、切断刃85,95の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。また、刃先角は一定となっているので、ブレードの製造が容易になるとともに、刃先磨耗時の再研磨も容易となる。
【0037】
次に、本発明の第六の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃について図9を参照して説明する。なお、第六の実施形態の構成は第一の実施形態と切断刃のみが異なるので、切断刃以外の構成については説明を省略する。
【0038】
本発明の第六の実施形態に係るヘッジトリマの切断刃86,96の刃先部86a,96aは、図9中に符号α6で示す摺動面86c,96cに対するすくい面86b,96bの角度である刃先角が刃先から刃元において一定に設定されている。なお、本実施形態においては、刃先角α6は45度に設定されている。切断刃86,96のすくい面86b,96bは、図9(b)で示す刃元側においては、摺動面86c,96cから外面86d,96dまでの間全面に形成されているのに対し、図9(c)で示す刃末側においては、符号Eで示す摺動面86c,96cから外面86d,96dの方向に向かう所定の範囲のみに形成されており、符号Eで示すすくい面86b,96bと外面86d,96dとの間は、符号θで示す刃先角α6より小さい角度で傾斜した逃がし面86e,96eが形成されている。
【0039】
上述の構成の切断刃86,96で枝を切断する場合、切断位置である刃末側の切断刃に刃先角α6より小さい角度で傾斜した逃がし面86e,96eを設けたことで、全面がすくい面86b,96bで形成された場合と比較して、切断位置に働く切断抵抗が小さくなり、それにより切断刃86,96同士を押し付ける方向の分力も小さくなる。これにより、切断刃86,96の切断位置より刃元側の摺接位置に負荷される接触圧が低減されるので、刃元側の刃先部の変形を防止することができる。また、刃先角は一定となっているので、ブレードの製造が容易になるとともに、刃先磨耗時の再研磨も容易となる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる形態に変更することが可能である。
【0041】
例えば、上述の第二から第四の実施形態においては、切断刃の刃先角は、刃末から刃元に向かって2種類の刃先角で段階的に大きくしたが、3種類以上の刃先角で段階的に大きくしても良い。また、上述の実施形態においては、上ブレード51と下ブレード61の両方が往復運動を行う構成としたが、いずれが一方のブレードのみが往復運動を行う構成としても良い。
【0042】
また、上述の第五および第六の実施形態においては、切断刃の刃先角は刃先から刃元において一定に設定されていたが、上述の第一から第四の実施形態で説明した刃元側の刃先角に対して刃末側の刃先角を小さく設定された切断刃において、さらに第五および第六の実施形態で説明した構成を実施することで、極めて有効に刃元側の刃先部の変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 ハウジング、11 メインハンドル、12 トリガスイッチ、21 補助ハンドル、22 ガード板、50 刈刃部、51 上ブレード、52 長尺部、53 切断刃、53a 刃先部、53b すくい面、53c 摺動面、54 長孔、61 下ブレード、62 長尺部、63 切断刃、63a 刃先部、63b すくい面、63c 摺動面、64 長孔、71 上ブレードホルダ、72 下ブレードホルダ、73 ガイドスペーサ、74 ネジ、75 ナット、82 切断刃、82a 刃先部、82b 刃末側刃先部、82c 刃元側刃先部、82d すくい面、82e 摺動面、83 切断刃、83a 刃先部、83b 刃末側刃先部、83c 刃元側刃先部、83d R部、83e すくい面、83f 摺動面、84 切断刃、84a 刃先部、84b 刃末側刃先部、84c 刃元側刃先部、84d すくい面、84e 摺動面、85 切断刃、85a 刃先部、85b すくい面、85c 摺動面、85d 刃元側外面、85e 刃末側外面、85f R面、86 切断刃、86a 刃先部、86b すくい面、86c 摺動面、86d 外面、86e 逃がし面、92 切断刃、92a 刃先部、92b 刃末側刃先部、92c 刃元側刃先部、92d すくい面、92e 摺動面、93 切断刃、93a 刃先部、93b 刃末側刃先部、93c 刃元側刃先部、93d R部、93e すくい面、93f 摺動面、94 切断刃、94a 刃先部、94b 刃末側刃先部、94c 刃元側刃先部、94d すくい面、94e 摺動面、95 切断刃、95a 刃先部、95b すくい面、95c 摺動面、95d 刃元側外面、95e 刃末側外面、95f R面、96 切断刃、96a 刃先部、96b すくい面、96c 摺動面、96d 外面、96e 逃がし面
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