(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395805
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】アルコールを用いた食品加熱調理器具および方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
A47J27/00 102
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-505876(P2016-505876)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2016-514559(P2016-514559A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】FR2014050755
(87)【国際公開番号】WO2014162086
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】1352997
(32)【優先日】2013年4月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514242992
【氏名又は名称】クーカル
【氏名又は名称原語表記】COOKAL
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト,ロラン
【審査官】
八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第02880250(FR,A1)
【文献】
実開昭60−036810(JP,U)
【文献】
実開昭51−021130(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3150614(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第4127077(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を収容することができるタンク(2)と、食品を収容することを目的とした容器(3)と、前記容器(3)の保持用支え(1)とを有する食品加熱調理器具または食品加熱器具であって、前記タンク(2)が、底(6)および、最上部に向かって内側に傾斜した側壁(7)を有し、前記底(6)が、前記側壁に接近してより高く、そして前記側壁から遠ざかるにつれてより低くなるように傾いていることを特徴とする器具。
【請求項2】
液体燃料を収容することができるタンク(2)と、食品を収容することを目的とした容器(3)と、前記容器(3)の保持用支え(1)とを有する食品加熱調理器具または食品加熱器具であって、前記タンク(2)が、底(6)および、最上部に向かって内側に傾斜した側壁(7)を有し、前記タンク(2)が回転形状を呈し、底(6)が、頂点が下の方に向けられる逆円錐形を呈する底領域を定義し、また前記側壁が、頂点が上の方に向けられる円錐台形の壁領域を定義することを特徴とする器具。
【請求項3】
前記タンク(2)が回転形状を呈する、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
側壁の最上部の直径が、側壁の最上部の直径の値の2%と10%の間に含まれる値、とりわけ5%の値分、側壁の下部の直径より小さい、請求項2または3に記載の器具。
【請求項5】
さらに、前記タンクが、頂点が下の方に向けられる逆円錐台形の、前記側壁の上に配置される開口部領域(10)を有する、請求項2〜4のいずれか一つに記載の器具。
【請求項6】
底(6)が、頂点が下の方に向けられる逆円錐形を呈する底領域を定義し、また前記側壁が、頂点が上の方に向けられる円錐台形の壁領域を定義する、請求項3から5のいずれか一つに記載の器具。
【請求項7】
底領域の高さが、壁領域の高さより大きいこと、とりわけ二倍の大きさである、請求項2または6に記載の器具。
【請求項8】
前記容器(3)が、半球形の基部を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の器具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の器具を使った食品の加熱調理方法であって、以下の過程を有する方法:
−タンク(2)を平面の上に、必要があれば保持用支え(1)の上に、置く、
−容器(3)を、前記保持用支え(1)によって保持されるようにタンク(2)の中に置く、容器(3)はタンク(2)の底(6)に触れる、
−食品を前記容器(3)の中に配置する、
−あらかじめ決められた量のアルコールをタンク(2)の中に注入する、
−アルコールに火をつけて、燃え尽きさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加熱調理の分野に関するものである。本発明は、より詳細には、アルコールを用いた加熱調理器具に関している。
【背景技術】
【0002】
そのような器具は、仏国特許発明第2897521号明細書の対象となっており、該特許は、液体燃料を収容することができるタンクが上に乗っている支えを有するタイプの食品加熱調理器具または食品加熱器具を記述しており、前記支えは、タンクに対してあらかじめ決められた高さに容器を保持するのに適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この文書に記述されるような装置を用いて加熱調理を制御することは困難であり、また炎は、食品の均質な加熱調理を得るようには容器を熱しない。
【0004】
本発明は、上述の不都合のうちの少なくとも一部を改善しようとするものであり、また、前記容器の外側にあるタンクの中に配置されるアルコールの燃焼によって容器の中に配置される食品の均質な加熱調理を得ることを可能にする解決案を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は食品加熱調理器具または食品加熱器具用のタンクに関し、液体燃料を収容することができるタンクと、前記食品を収容することを目的とした容器と、前記タンクおよび前記容器の保持用支えとを有するタイプの食品加熱調理器具または食品加熱器具用のタンクに関している。このタンクは、底および、最上部に向かって内側に傾斜した側壁を有するという点で特徴的である。
【0006】
これらの配置のおかげで、タンクの中で燃えているアルコールは、容器の方へ差し向けられるようになる炎を生じさせて、こうして信頼度の高いまた繰り返される燃焼を可能にするであろう。
【0007】
他の特徴によると:
−前記底は、前記壁に接近してより高く、そして前記壁から遠ざかるにつれてより低くなるように傾いていることができ、前記タンクに、燃焼用に適合した閉じ込められる空間を与える、
−前記タンクは、回転形状を呈することができ、燃焼の均質性およびタンクの製造の容易性を可能にする、
−壁領域の最上部の直径は、壁領域の最上部の直径の値の2%と10%の間に含まれる値、とりわけ5%の値分、壁領域の下部の直径より小さいことが可能であるが、これらの値は、実現された多数の実験の際に最良の結果を与えるものとして評されている、
−前記タンクは、さらに、頂点が下の方に向けられる逆円錐台形の、前記壁領域の上に配置される開口部領域を有することができ、タンクの中へのアルコールの注入を容易にすることを可能にする、
−底は、頂点が下の方に向けられる逆円錐形を呈する底領域を定義することができ、また前記壁は、頂点が上の方に向けられる円錐台形の壁領域を定義することができるが、そのような配置は、とりわけ好都合な炎の質と容器の方への炎の誘導との組合わせを与え、質の良い加熱調理を可能にする、
−底領域の高さは、壁領域の高さより大きいこと、とりわけ二倍の大きさであることが可能であり、そのような配置は、優れた結果を与える。
【0008】
本発明はまた食品加熱調理器具または食品加熱器具にも関するものであり、それは、本発明によるタンクと、前記食品を収容することを目的とした容器と、前記タンクおよび前記容器の保持用支えとを有するタイプの食品加熱調理器具または食品加熱器具にも関しており、そのような加熱調理器具は、ダイニングテーブルの上でそれぞれの客または会食者が個々に使用できるという利点を有する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によると、前記容器は、半球形の基部を有することができ、タンクの円錐形の底への寄り掛かりの優れた安定性を可能にする。
【0010】
最後に、本発明は、本発明による器具を使った食品の加熱調理方法に関しており、該方法は以下の過程を有する:
−タンクを平面の上に、必要があれば保持用支えの上に、置く、
−容器を、前記保持用支えによって保持されるようにタンクの中に置く、容器はタンクの底に触れる、
−食品を前記容器の中に配置する、
−あらかじめ決められた量のアルコールをタンクの中に注入する、
−アルコールに火をつけて、燃え尽きさせる。
【0011】
本発明から生じる利点は、本発明が、食卓でそれぞれの客または会食者のために個々に行われることができる、信頼度の高いまた再現可能な加熱調理を得ることを可能にするということにあり、このことは、賞味に先立つ独創的な光景を作り出す。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、参考までにまた非限定的に与えられる実施例に関連して続いていく詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
以下のような添付の図面を参照することによって、この説明の理解が容易になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による加熱調理器具または加熱器具の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面の
図1で示されるように、本発明は、タンク2の中に配置されて容器3を支えることを意図した保持用支え1を有する、食品加熱調理器具または食品加熱器具に関している。
【0016】
食品、例えば泡立てた卵を加熱調理するために、タンク2を土台の上に置くが、該土台は、タンク2のための場所、小さなスプーンのための場所、および容器3の蓋5のための場所のある、例えばテーブルまたは本発明のために特別に設計されるトレイ4であり、これらの後者二つの場所は
図1には示されていない。次に、保持用支え1を、タンク2の中の、この目的を意図した場所に置く。最後に、容器3を、保持用支え1によって保持されるようにタンク2の底6の上に置く。食品が、そのとき容器3の中に入れられ、あらかじめ決められた量のアルコールが、タンク2の中の容器3の周りに流し込まれ、次いで火がつけられる。食品の加熱調理は、アルコールの燃焼の間に成される。アルコールが完全に燃え尽きると、食品は、容器3の中で直接に、あるいは皿の上に移し換えられた後に、供されることが出来る状態になっている。
【0017】
本発明にしたがって、アルコールの良好な燃焼を得るためには、本発明に適合した形を与えることが必要である。
図1は、そのようなタンク2の実施例を示しているが、該タンクは円形であり、また直径に沿って実現される断面図で示されている。
【0018】
本発明によると、側壁7は内側にへこんで傾いている。用語「内側にへこんで」は、円形のタンク2の場合は、側壁7の下方端での内径が、この側壁7の上方端での内径よりも大きいことを意味する。
【0019】
任意の形の場合において、用語「内側にへこんで」は、タンク2の少なくとも一つの垂直断面図によると、壁が、側壁7の下方端での方が、この側壁7の上方端でよりも離れていると解釈されなければならない。
【0020】
そのような内側にへこんだ側壁7は、アルコールの燃焼によって生じる炎が上がるときに容器3の方へ戻ってくることを余儀なくさせ、このことにより、容器3の中に含まれる食品のより均質な加熱調理が行われる。
【0021】
図1のタンク2は、その底6もまた下に向かってその中心8に傾いているという追加の特徴を有しており、その結果、その中心8は、その周囲9よりも低く位置している。このことは、アルコールが容器3の近くに集まるという追加の利点を示すが、一方、本タンクに反してもし底6が平らで水平ならばアルコールは底6の全表面にわたって広がってしまうであろう。傾いている底6によって、このように、より良い炎が得られる。
【0022】
示される例において、底6の傾斜は、水平の位置に対しておよそ30°傾いた円錐の形で成され、このことは、断面図上で、直線で表現される。このことは、側壁7の上部の直径110mmに対して、およそ30mmの底6の深さで表現される。側壁7は、示される例では、およそ20mmの高さを呈しており、また該側壁は、その頂部に、およそ10mmの高さの開口部領域10が続き、ここで側壁7は反対方向におよそ45°傾く。この開口部領域10は、タンク2の中へのアルコールの注入を容易にするという利点を有する。
【0023】
タンク2は、外側のシャフト15によって補完されることができ、この目的を意図したテーブルまたはトレイ4の上に安定した仕方で置かれることが可能となる。
【0024】
容器3は、好ましくは、例えば高さおよそ100mmおよび直径およそ50mmの長い垂直の円筒形部分を有する。その基部は、半球形を形成するように、例えば半径およそ25mmで、丸くなっている。そのような丸みは、タンク2の底6の上に置かれる容器3に、平らな基部より優れた安定性を与えるが、これには、保持用支え1としては、容器3の最上部からおよそ25mmのところにある保持用支え1の弓形部分11による唯一の保持が必要なだけである。別の面では、容器3の基部の丸みは、生産するのが比較的容易である。別の面では、タンク2の底6と容器3の基部との間に入ってしまう可能性のあるアルコールの割合は、ごくわずかであり、費用がかかると想像される、形状のより正確な適合を正当化するものではない。
【0025】
容器3は、好ましくは透明であり、食品の加熱調理のプロセスの観察を可能にする。容器は、加熱調理によって引き起こされる温度の変化に確実に耐えるように、例えばパイレックス(登録商標)の名称で公知のガラスのようなホウケイ酸タイプの、低い膨張係数のガラス製であることができる。
【0026】
容器3は、やはり好ましくは透明で、やはり例えばホウケイ酸タイプのガラス製である、取外しのできる蓋5によって補完されることができる。蓋5を用いて加熱調理を実現することを望むとき空気や蒸気の排出を可能にするために、蓋5に直径2〜3mmの小さい孔12を準備することができる。
【0027】
保持用支え1は、例えば、容器3をその上半分の中に位置する領域において取り囲むことを目的とした前記弓形部分11、タンク2の底6の上に置かれることを目的とした環13、および弓形部分11を環13に堅固な仕方でつなぐ連結棒14から成ることができる。好ましくは、環13は、保持用支え1の安定性を保証するために、側壁7の近くに置かれるように意図されるであろう。側壁7の上方端によって形成される開口部から挿入されることが可能となるように、環13が完全な円形を成さないようにすることが可能であろう。
【0028】
別の実施形態によると、底6および側壁7は、球形の半分より少し上で切られる球形状の形で一緒に形成されることができるが、その結果、底6は球形の下部となり、また側壁は、直径がだんだん小さくなっていく部分である球形の半分を越えている部分となる。この実施形態もまた、たとえ底6と側壁7との間に不連続性がなくても、本発明の範囲に含まれる。しかしながら、容器3の安定性を保証するために、底6の下部の特有の形、ならびに保持用支え1のための寄り掛かりを準備することが適切であろう。
【0029】
別の実施形態によると、保持用支え1は、容器3がタンク2の底6の上に置かれることを可能にする仕方で、タンク2と容器3とを同時に支えるために意図されることができる。
【0030】
本発明の利点は、とりわけ、本加熱調理器具が、少量のアルコールで、また客や会食者のために加熱調理のプロセスを目に見えるようにするように、食品の信頼度の高いまた繰り返される加熱調理を可能にすることにある。
【0031】
本発明が特定の実施の形態に関して記述されているにも拘らず、本発明がそれに全く制限されていないこと、また本発明の範囲を逸脱することなく、形、材料、およびこれらの様々な要素の組合わせの様々な変更をそこにもたらすことができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 保持用支え
2 タンク
3 容器
4 トレイ
5 蓋
6 底
7 側壁
8 底の中心
9 底の周囲
10 開口部領域
11 弓形部分
12 小さい孔
13 環
14 連結棒
15 外側のシャフト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】仏国特許発明第2897521号明細書