(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同時にオンしない第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を直列接続した第1レグと、
同時にオンしない第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を直列接続した第2レグと、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の中点と前記第3スイッチング素子の前記第4スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第1リアクトルと、
前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の中点と前記第2スイッチング素子の前記第1スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第2リアクトルと、
前記第1スイッチング素子の前記第1リアクトルが接続されていない端と前記第4スイッチング素子の前記第2リアクトルが接続されていない端との間に接続された直流電源と、を備え、
前記第1レグの両端の電圧指令値をVO1*、前記第2レグの両端の電圧指令値をVO2*、前記直流電源の電圧をEとすると、前記第1スイッチング素子は下記の式(1)により決定される値d1をデューティー指令値としてスイッチング制御され、前記第4スイッチング素子は下記の式(2)により決定される値d4をデューティー指令値としてスイッチング制御され、
【数1】
【数2】
前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子はダイオードであり、
前記第1レグ及び前記第2レグに負荷を並列に接続可能とする電力変換装置。
【背景技術】
【0003】
従来から用いられている電力変換装置として、例えば双方向チョッパが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
図10は、従来の双方向チョッパの回路図である。双方向チョッパ2は、スイッチング素子45又は46のオンする比率によって直流電源から入力された直流電圧を変換する。降圧チョッパとして使用する場合には、端子AB間に直流電源を接続し、端子CD間に負荷を接続し、スイッチング素子46は常にオフとし、スイッチング素子45をスイッチング制御(オン/オフ制御)する。この場合の出力電圧はスイッチング素子45のデューティー比(通流率)により決定される。一方、昇圧チョッパとして使用する場合には、端子AB間に負荷を接続し、端子CD間に直流電源を接続し、スイッチング素子45は常にオフとし、スイッチング素子46をスイッチング制御する。この場合の出力電圧はスイッチング素子46のデューティー比により決定される。
【0004】
この双方向チョッパ2において、スイッチング素子45がオンした場合にはスイッチング素子46に電源電圧が印加され、スイッチング素子46がオンした場合にはスイッチング素子45に電源電圧が印加される。
【0005】
さらに、双方向チョッパ2において、スイッチング素子45,46を、それぞれ2個のスイッチング素子を直列接続した構成とすることも可能である(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
図10に示す双方向チョッパ2において、電源電圧が上昇するとスイッチング素子45,46に印加される電圧も上昇するため、スイッチング素子45,46の耐圧を電源電圧の最大上昇量を見込んだ量にしなければならない。
【0009】
また、スイッチング素子45,46をそれぞれ2個のスイッチング素子を直列接続した構成とすると、各スイッチング素子に印加される電圧は半分になるものの、電源電圧の上昇の影響は解決できず、またスイッチング素子の増加により回路規模及びコストが増加する。
【0010】
一般的に、低耐圧のスイッチング素子は高耐圧のスイッチング素子に比べて損失が小さく、高速動作が可能であるが、電源電圧が上昇する場合はスイッチング素子に印加される電圧も上昇するので、低耐圧のスイッチング素子を用いることができない。そのため、電力変換装置を高効率化・小型化できないという問題があった。
【0011】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、スイッチング素子に印加される電圧を所定の範囲内に抑制することにより、高効率且つ小型の電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明
の第1の態様に係る電力変換装置は、同時にオンしない第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を直列接続した第1レグと、同時にオンしない第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を直列接続した第2レグと、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の中点と前記第3スイッチング素子の前記第4スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第1リアクトルと、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の中点と前記第2スイッチング素子の前記第1スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第2リアクトルと、前記第1スイッチング素子の前記第1リアクトルが接続されていない端と前記第4スイッチング素子の前記第2リアクトルが接続されていない端との間に接続された直流電源と、を備え、
前記第1レグの両端の電圧指令値をVO1*、前記第2レグの両端の電圧指令値をVO2*、前記直流電源の電圧をEとすると、前記第1スイッチング素子は下記の式(1)により決定される値d1をデューティー指令値としてスイッチング制御され、前記第4スイッチング素子は下記の式(2)により決定される値d4をデューティー指令値としてスイッチング制御され、
【数1】
【数2】
前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子はダイオードであり、前記第1レグ及び前記第2レグに負荷を並列に接続可能とする。
【0013】
また、本発明
の第2の態様に係る電力変換装置
は、
同時にオンしない第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を直列接続した第1レグと、同時にオンしない第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を直列接続した第2レグと、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の中点と前記第3スイッチング素子の前記第4スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第1リアクトルと、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の中点と前記第2スイッチング素子の前記第1スイッチング素子と接続されていない端との間に接続された第2リアクトルと、前記第1スイッチング素子の前記第1リアクトルが接続されていない端と前記第4スイッチング素子の前記第2リアクトルが接続されていない端との間に接続された直流電源と、を備え、前記第1レグの両端の電圧指令値をV
O1*、前記第2レグの両端の電圧指令値をV
O2*、前記直流電源の電圧をEとすると、前記第1スイッチング素子は下記の式(1)により決定される値d
1から前記第1リアクトルの電流値の高周波成分に比例した値を差し引いた値をデューティー指令値としてスイッチング制御され、前記第4スイッチング素子は下記の式(2)により決定される値d
4から前記第2リアクトルの電流値の高周波成分に比例した値を差し引いた値をデューティー指令値としてスイッチング制御され
、前記第1レグ及び前記第2レグに負荷を並列に接続可能とする。
【数3】
【数4】
【0015】
本発明
の第2の態様に係る電力変換装置において、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をダイオードとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スイッチング素子に印加される電圧を所定の範囲内に抑制することができるため、低耐圧のスイッチング素子を使用することができ、その結果、高効率・小型な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置で用いるスイッチング素子の第1の例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置で用いるスイッチング素子の第2の例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置に接続される負荷の第1の例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置に接続される負荷の第2の例を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置における制御部の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の出力電圧及びインダクタ電流のシミュレーション波形を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の出力電圧及びインダクタ電流のシミュレーション波形を示す図である。
【
図10】従来の電力変換装置の一例である双方向チョッパの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。
図1に示す例では、電力変換装置1は、直流電源10と、スイッチング素子41(第1スイッチング素子)及びスイッチング素子(第2スイッチング素子)42を直列接続したレグ(第1レグ)31と、スイッチング素子(第3スイッチング素子)43及びスイッチング素子(第4スイッチング素子)44を直列接続したレグ(第2レグ)32と、リアクトル(第1リアクトル)61と、リアクトル(第2リアクトル)62とを備える。制御部80は、電力変換装置1に接続される。また、レグ31には負荷21を並列に接続可能であり、レグ32には負荷22を並列に接続可能である。
【0020】
図2は、各スイッチング素子41〜44の一例を示す図である。
図2に示すように、各スイッチング素子41〜44は、オンオフ可能なIGBTなどのスイッチング素子411と、還流ダイオード412とを備える。スイッチング素子41及びスイッチング素子42は同時にオンすることはなく、また、スイッチング素子43及び44も同時にオンすることはない。
【0021】
図3は、スイッチング素子42,43の別の例を示す図である。スイッチング素子42,43については、
図2に示すスイッチング素子411を常にオフとしてもよいし、
図3に示すように、ダイオード413のみを使用してもよい。
【0022】
リアクトル61は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42の中点と、スイッチング素子43のスイッチング素子44と接続されていない端との間に接続される。リアクトル62は、スイッチング素子43及びスイッチング素子44の中点と、スイッチング素子42のスイッチング素子41と接続されていない端との間に接続される。
【0023】
直流電源10は、スイッチング素子41のリアクトル61が接続されていない端とスイッチング素子44のリアクトル62が接続されていない端との間に接続される。
【0024】
図4及び
図5は、負荷21,22の一例を示す図である。負荷21,22は、例えば
図4に示すように、コンデンサ71と抵抗8を並列接続した抵抗負荷であってもよいし、
図5に示すように、スイッチング素子47,48を直列接続したレグ34と、スイッチング素子49,50を直列接続したレグ35と、コンデンサ72と、負荷24とを備えるインバータであってもよいし、一方を
図4に示す負荷とし他方を
図5に示す負荷としてもよい。もちろん、負荷21,22の構成はこれらに限定されるものではない。
【0025】
制御部80は、スイッチング素子41〜44のデューティー指令値d
1〜d
4を決定し、スイッチング素子41〜44は、デューティー指令値d
1〜d
4に基づいてスイッチング制御される。レグ31の端子間電圧(第1の出力電圧)の電圧指令値をV
O1*、レグ32の端子間電圧(第2の出力電圧)の電圧指令値をV
O2*、直流電源10の電圧をEとすると、スイッチング素子42の端子ab間の電圧はV
O1*×d
1となり、スイッチング素子43の端子cd間の電圧はV
O2*×d
4となる。また、端子aの電位はE−V
O1*+V
O1*×d
1となる。
【0026】
制御部80は、電圧Eが変動しても電圧指令値V
O1*,V
O2*を一定とするために、端子a及びcの電位が等しくなり、且つ、端子b及びdの電位が等しくなるように制御するのが好適である。この場合、デューティー指令値d
1,d
4は、式(1)(2)により算出される。ただし、式(1)(2)を満たすには、E≦V
O1*+V
O2*≦2Eとする必要がある。
【0029】
レグ31のスイッチング素子41及び42は同時にオンすることはなく、レグ32のスイッチング素子43及び44も同時にオンすることはなく、デューティー指令値d
2,d
3は、式(3)(4)を満たす。例えば、スイッチング素子42,43を常にオフとするか、あるいはダイオードを使用することにより、d
2=d
3=0としてもよい。
【0032】
電力変換装置1は上述した構成を有することにより、直流電源10の電圧Eが上昇しても、E≦V
O1*+V
O2*であれば、レグ31の端子間電圧をV
O1*に保ち、レグ32の端子間電圧をV
O2*に保つことができる。電圧V
O1*及びV
O2*は電圧Eを降圧した電圧であるため、低耐圧のスイッチング素子41〜44を用いることができ、かくして電力変換装置1を高効率化及び小型化することができるようになる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。電力変換装置の構成は
図1に示した第1の実施形態と同一であり、第1の実施形態と比較して制御部の構成のみ相違する。
【0034】
図7は、制御部81の構成例を示すブロック図である。この例では、制御部81は、ハイパスフィルタ91,92と、減算器101,102と、デューティー指令値生成器111,112とを備える。
【0035】
デューティー指令値生成器111は、上述した式(1)に基づき、デューティー指令値d
1を生成し、減算器101に出力する。また、上述した式(2)に基づき、デューティー指令値d
4を生成し、減算器102に出力する
。
【0036】
ハイパスフィルタ91は、リアクトル61の電流i
L1を入力し、電流i
L1から定常成分を取り除いた高周波成分HPF[i
L1]を求め、該HPF[i
L1]に比例した値K
1・HPF[i
L1]を減算器101に出力する。減算器101は、デューティー指令値生成器111の出力値であるデューティー指令値d
1から、ハイパスフィルタ91の出力値であるK
1・HPF[i
L1]を差し引くことで、スイッチング素子41に対するデューティー指令値d
1’を算出する。すなわち、デューティー指令値d
1’は次式(5)により算出される。
【0038】
デューティー指令値生成器112は、次式(6)により、スイッチング素子42に対するデューティー指令値d
2’を算出する。図中では一例として、d
2’=1−d
1’としている。
【0040】
同様に、ハイパスフィルタ92は、リアクトル62の電流i
L2を入力し、電流i
L2から定常成分を取り除いた高周波成分HPF[i
L2]を求め、該HPF[i
L2]に比例した値K
2・HPF[i
L2]を減算器102に出力する。減算器102は、デューティー指令値生成器111の出力値であるデューティー指令値d
4から、ハイパスフィルタ92の出力値であるK
2・HPF[i
L2]を差し引くことで、スイッチング素子4
4に対するデューティー指令値d
4’を算出する。すなわち、デューティー指令値d
4’は次式(7)により算出される。
【0042】
また、デューティー指令値生成器112は、次式(8)により、スイッチング素子43に対するデューティー指令値d
3’を算出する。図中では一例として、d
3’=1−d
4’としている。
【0044】
図5に示したインバータを負荷として用いた場合などにおいて、負荷の特性によっては負荷21及び22に供給する電圧が振動するが、本実施形態によれば、発生した振動を抑制することができるようになる。
【0045】
第2の実施形態に係る電力変換装置1の効果を示すために、まず第1の実施形態に係る電力変換装置1のシミュレーション波形を
図8に示す。シミュレーション条件は、リアクトル61,62のインダクタンスを2mH、スイッチング周波数を5kHz、出力電圧指令V
O1*=V
O2*=500Vとする。また、負荷21,22はそれぞれレグ31,32に並列接続されたコンデンサを含むものとし、このコンデンサのキャパシタンスを940μFとする。シミュレーション波形は0.08秒で直流電源10の電圧Eを500Vから750Vに変化させ、0.16秒で負荷消費電力を7.5kWから10kWに変化させたときの、電源電圧E、レグ31の出力電圧V
O1、及びリアクトル62に流れる電流i
L2を示す。なお、インダクタ電流については,スイッチングリプル成分を除去するため移動平均を取っている。
図8から、電源電圧及び負荷消費電力変化後も出力電圧は電圧指令値に追随していることが確認できる。ただし、電源電圧及び負荷消費電力の変化後は電圧・電流ともに振動が持続している。
【0046】
上記と同じ条件で、ハイパスフィルタ91,92の遮断周波数を50Hz、K
1=K
2=0.005としたときのシミュレーション波形を
図9に示す。
図9から、制御部81による制御を行うことにより、電源電圧及び負荷消費電力が変化しても振動が抑制され、定常状態で指令値通りの出力電圧を得られることが確認できる。
【0047】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。