【実施例】
【0034】
(実施例1:酸性イオン液体の合成)
酸性イオン液体の合成は、二工程の反応で実施される。第一の工程では、1-メチルイミダゾールと1,3-プロパンスルトンとの等モル混合物が、トルエン中で一晩16時間に亘り115℃で還流されて、白色析出物(双性イオン)をもたらした。第二工程反応では、前記白色析出物をHClの等モル溶液と溶媒なしに反応させ、16時間に亘り105℃にて、酸性イオン液体1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロライドが生じた。同様に、別の酸性イオン液体が、双性イオンと、硫酸とパラ-トルエンスルホン酸一水和物との等モル溶液との反応によって合成される。
【0035】
(実施例2:触媒の特徴付け)
A) (1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム4-メチルベンゼンスルホネート)
1HNMR(200MHz, D
20) δ 8.59(s, 1H), 7.55(d, 2H), 7.36(s, 1H), 7.30(s, 1H), 7.27(d, 2H), 4.11(t, 2H), 3.76(s, 3H), 2.83(t, 2H) 2.28(s, 3H), 1.90(m, 2H)
13CNMR 142.42, 139.43, 136.09, 129.40, 125.31, 123.72, 122.14, 47.69, 47.17, 35.66, 25.05, 20.44
微量分析:微量分析による元素のおよその%は、C(43)、H(5.3)、N(7.5)、及びS(15)。
B) (1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム水素スルフェート) [C
3SC
1IM][HSO
4]
1HNMR(200MHz, D20) δ 8.66(s, 1 H), 7.42(s, 1 H), 7.35(s, 1 H), 4.26(t, 2H), 3.79(s, 3H), 2.82(t, 2H), 2.21(m, 2H)
13CNMR 136.16, 123.74, 122, 47.69, 47.19, 35.66, 25
微量分析:微量分析による元素のおよその%は、C(30.56)、H(7.31 )、N(11 .63)、及びS (23.89)。
C) 1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロライド
1HNMR(200MHz, D
2O) δ 8.63(s, 1 H), 7.40(s, 1 H), 7.32(s, 1 H), 4.24(t,2H), 3.77(s, 3H), 2.80(t,2H), 2.19(m,2H)
13CNMR 136.19, 123.76, 122.18, 47.72, 47.18, 35.7, 25.08
微量分析:微量分析による元素のおよその%は、C(35.10)、H (6.02)、N (13.16)、及びS (14.25)。
D) 1-ブチル- 3-メチルイミダゾリウムクロライド
1HNMR(200MHz, D
20) δ 8.82(s, 1 H), 7.67(s, 1 H), 7.61(s, 1 H), 4.35(t,3H), 4(s, 3H), 1.91(m, 2H), 1.40(m, 2H), 0.94 (t, 3H)
13CNMR 123.76, 122.18, 49.32, 35.7, 31.2, 19.12,及び12.34
微量分析:微量分析による元素のおよその%は、C(55)、H (9)、及びN (16)。
【0036】
(実施例3:以下の条件を用いるリグニンの脱重合)
脱アルカリリグニン(0.5g)、[C
3SC
1IM][HSO
4](0.5g)をメタノール及び水(30mL、5:1比)中に入れ、反応混合物を120℃の温度で1時間に亘って攪拌し、反応生成物を、THF溶解性フェノール性モノマーについて分析する。
収率:97%(THF溶解性フェノール性モノマー)
【0037】
【表1】
【0038】
触媒反応結果を、以下の表にまとめる。
【0039】
【化2】
【0040】
溶媒比研究:
メタノールの水に対する比を変化させ、結果を以下の表1に表す。
【0041】
【表2】
【0042】
反応条件:リグニン(0.5g)、[C
3SC
1IM][HSO
4](0.5g)、メタノール+水(30mL)、120℃、1時間
【0043】
上記より、メタノール/水の比が5であるとより優れた生成物収率が得られることが明らかである。
リグニンの脱重合に対する酸性イオン液体の効果は、表2に示される。
【0044】
【表3】
【0045】
リグニン(0.2g)、触媒(0.05g)、溶媒(水+MeOH=2+10mL)
混合溶媒:THF+EtOAc
【0046】
上記より、イオン液体の使用により、フェノール性モノマーの収率が改善されることは明らかである。
リグニンの脱重合に対する触媒量の効果は、表3に示される。
【0047】
【表4】
【0048】
リグニン(0.2g)、温度(150℃)、溶媒(水+MeOH=2+10mL)
混合溶媒:THF+EtOAc
【0049】
上記より、リグニンの触媒に対する比が1:1であるとよりよい収率が得られることは明らかである。
リグニンの脱重合に対する時間の効果は、表4に示される。
【0050】
【表5】
【0051】
リグニン(0.2g)、触媒(0.2g)、溶媒(水+MeOH=2+10mL)
混合溶媒:THF+EtOAc
【0052】
上記の表より、6時間の長い反応時間と比較すると、よりよい結果を得るためには2時間の反応時間で十分であることが明らかである。
収率の低下は、おそらくは生成物の分解または生成物の再重合に由来し得る。
リグニンの脱重合に対する反応温度の効果は、表5に示される。
【0053】
【表6】
【0054】
リグニン(0.2g)、触媒(0.2g)、溶媒(水+MeOH=2+10mL)
混合溶媒:THF+EtOAc
【0055】
上記の研究より明らかな通り、反応が100℃の温度でさえも滞りなく進行して60%もの収率を得るとはいえ、温度の上昇に伴って、収率は83%にまで改善される。
リグニンの脱重合に対するILの効果は、表6に示される。
【0056】
【表7】
【0057】
リグニン(0.2g)、触媒(0.2g)、溶媒(水+MeOH=2+10mL)
混合溶媒:THF+EtOAc
【0058】
上記の表からは、反応が(1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムの様々なアニオンを用いて滞りなく進行するとはいえ、最良の結果は(1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムの(HSO
4)アニオンを用いて達成されることが明らかである。(-SO
3H基を有する)ブレンステッドイオン液体、すなわち、SO
3H基を有する(1-メチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムを使用すると、97%の収率でフェノール性モノマーが得られる。触媒反応混合物を、GC及びGCMSで分析してフェノール性モノマー生成物の収率(%)を評価した。
酸性イオン液体の特徴付けを、
1H及び
13C NMR、CHNS分析、IR、及びTGAで行った。
【0059】
(実施例4)
再生触媒を第二回操作において使用した。回収過程でIL[C
3SC
1IM][HSO
4]の損失があるため、リグニンの触媒に対する比を同等に維持するために、更なる量のリグニン(0.25g)及びIL触媒[C
3SC
1IM][HSO
4](0.25g)を、5:1の比を維持するためにメタノール及び水(15mL)に添加した。反応物質を120℃の温度で1時間に亘り攪拌し、反応物質をTHF溶解性フラクションについて分析した。
収率:76%(THF溶解性フェノール性モノマー)
【0060】
(実施例5:触媒の再生方法)
反応後、反応混合物から、溶媒(水+メタノール)を回転式エバポレーターで除去して固形物を得た。この固形物に、THFを添加してあらゆる有機化合物(リグニン脱重合により得られた)を除去した。イオン液体(IL)がTHFに溶解性でなく、非常にべたつくため、これは丸底フラスコに粘着した。その後、THFをデカントし、かくしてILをTHF溶解物から分離した。THFの不溶性部分(IL及び別の不溶性部分を含む)に、水を加えた。ILは水に溶解するが、他の有機化合物は溶解しない。濾過の後に、水溶性ILを分離した。NaがIL中の汚染物質であることから(リグニンはppmレベルのNaを含有する)、この溶液にHClを加えてNaClを生成させた。この溶液を室温で2時間に亘って攪拌した後、回転式エバポレーターにかけてNaClと共にILを得た。この粘性の準固形物にエタノールを添加した。NaClがエタノールに溶解性でない一方でILはエタノールに溶解性であることから、NaClとILとの分離は濾過を用いて行った。エタノールに溶解したILは、回転式エバポレーターによりエタノールを除去した後に回収された。このILは、次の反応に使用された。ILの回収は、NMR、CHNS分析、IR、及びTGAなどにより確認された。
【0061】
a. 穏やかな条件下でのリグニン化合物の脱重合。
b. 300以下の分子量を有する芳香族モノマーが得られた。
c. モノマー生成の収率は97%にもなる。