(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395839
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】非晶質合金で作られるコレクターを有するアノードコンパートメント
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20180913BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20180913BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20180913BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20180913BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20180913BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20180913BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20180913BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20180913BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20180913BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/134
H01M4/1395
H01M4/40
H01M10/0585
H01M10/0566
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-541437(P2016-541437)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-500710(P2017-500710A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】FR2014053380
(87)【国際公開番号】WO2015092267
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】1362919
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スティーヴンズ
(72)【発明者】
【氏名】グエナエル・トゥーサン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ピュエッシュ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヴィナティエ
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−250559(JP,A)
【文献】
特開2005−209434(JP,A)
【文献】
特表2013−506950(JP,A)
【文献】
特開2000−294291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質、
前記固体電解質に堆積される電流コレクター、及び
前記電流コレクターと共にリチウム金属又はナトリウム金属で作られる電極を形成するように、前記固体電解質と前記電流コレクターとの間に最初に電気化学的に成長されるリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を含み、
前記電流コレクターが、非晶質合金で作られ、
前記非晶質合金が、1.8%を超える最大相対伸び率を有し、
前記非晶質合金が、CuxZr1−xであり、xが0.25から0.75である、リチウム又はナトリウム二次電池用のアノードコンパートメント。
【請求項2】
前記電流コレクターが、1μm未満の厚さを有する微細な層の形態である、請求項1に記載のアノードコンパートメント。
【請求項3】
前記固体電解質が、セラミック材料で作られる、請求項1または2に記載のアノードコンパートメント。
【請求項4】
固体電解質、
非晶質合金で作られる電流コレクター、並びに
前記固体電解質及び前記コレクターの間のリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を含むリチウム又はナトリウム二次電池用のアノードコンパートメントの製造方法であって、
前記方法が、
前記コレクターを形成するために前記固体電解質上に非晶質合金を堆積する段階と、
前記固体電解質及び前記電流コレクターの間にリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を最初に電気化学的に成長させ、前記アノードコンパートメントを得る段階と、
を含み、
前記非晶質合金が、1.8%を超える最大相対伸び率を有し、
前記非晶質合金が、CuxZr1−xであり、xが、0.25から0.75である、リチウム又はナトリウム二次電池用のアノードコンパートメントの製造方法。
【請求項5】
前記非晶質合金が、陰極スパッタリング又はイオンビームスパッタリングによって前記固体電解質に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記固体電解質が、セラミック材料で作られる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
カソード、液体電解質、及び請求項1から3の何れか一項に記載のアノードコンパートメントを含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム及びナトリウム二次電池の技術分野に関し、特に、このような電池用のアノードコンパートメントに加えてそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相対的に低い質量エネルギー密度が、今日、携帯可能な電子設備又は電気自動車等の携帯可能な設備におけるリチウム又はナトリウム二次電池の使用に対する主要な欠点である。これは、電池を構成する材料の性能に大いに関連するものである。現在、負極に対して利用可能な材料は、300から350Ah/kgの比容量を有する。材料の比容量が大きくなればなるほど、質量エネルギー密度がますます増加し得る。
【0003】
リチウム金属が3800Ah/kgを超える理論的な比容量を有するので、負極用の材料としてのその使用は、期待ができるものと考えられる。
【0004】
残念なことに、負極において活物質として使用されるこの材料は、充電段階中にデンドライトの形態で成長する望まれない傾向を有する。成長中に、これらのデンドライトは、液体電解質を通過し、結果的に、負極に正極を電気的に接続することによって短絡を引き起こし得る。
【0005】
充電段階中におけるデンドライトの形態のリチウム金属の成長を避けるために、リチウムイオン電池は、リチウムイオンが充電段階中に導入され得、リチウムイオンが放電段階中に放出され得る負極材料を使用する。グラファイトは、これの一例である。負極材料としてのグラファイトの使用の図が、米国特許第5053297号明細書に与えられている。
【0006】
それにもかかわらず、グラファイトは、リチウム金属の比容量よりかなり低い比容量(理論的には、例えば、LiC
6の場合には376Ah/kg)を有するという欠点を有する。
【0007】
あるいは、リチウム金属は、リチウムビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド(LiTFSIとも称される)等のリチウム塩が溶解されるポリエチレンオキサイド(PEOとも称される)等の中性マトリクスで構成されるポリマー電解質と組み合わせて使用され得る。これは、リチウム金属ポリマー電池(LMP電池)を用いた場合である。デンドライトの形態におけるリチウム金属の成長の危険を制限するために、リチウム金属の厚さは、通常、LMP電池の負極において30から100μmに制限される。そのため、リチウム金属は、その表面積の単位あたりの電荷密度が比較的低い、通常1から10mAh/cm
2であるアノードコンパートメントを得るためにポリマー電解質フィルム上にリボンの形態で積層される。
【0008】
さらに、このようなポリマー電解質において、電解質のイオン伝導性は、LiTFSI塩の添加によって得られる。中性マトリクスにおけるこの塩、特にアニオンの移動度は、イオン電流の通過中に塩の濃度勾配を生成し、実際に、カチオンの輸率(すなわち、イオンによって運ばれる電流の割合)は、1未満である。電流密度が高くなればなるほど、この濃度勾配は高い。ここで、デンドライトの形態におけるリチウム金属の形成は、急な濃度勾配によって促進される。
【0009】
ここに記載されるデンドライトの形態のリチウム金属の成長を避けるための最終的な解決方法は、非常に硬い固体電解質の使用である。これらの固体電解質の高い硬度は、固体電解質を通過し、短絡回路を生成することから形成されるデンドライトを避けるという利点を有する。文献(“Lithium metal stability in batteries with block copolymer electrolytes”, D. Hallinan et al.)において、約6GPaの硬度を有するポリマー電解質がデンドライトの形成を避けるために必要であることが計算されている(Journal of the Electrochemical Society, 160 (3) A464−A470 (2013))。
【0010】
Lisicon(リチウム超イオン伝導:Li super ionic conductor)又はNasicon(ナトリウム超イオン伝導:Na super ionic Conductor)等のセラミック材料は、固体電解質として使用され得るが、約6GPaの硬度を有する。さらに、これらのセラミック材料は、それらが本質的にイオンの伝導体であるので、イオン伝導特性を有するためにそれらのマトリクス中に溶解されるあらゆる塩に依存しない:イオン伝導は、これらのセラミック材料の結晶構造を通るカチオン輸送によってのみ得られ、電子の伝導は、無視できる。結果として、それらの輸率は1であり、それは、デンドライトの形態におけるリチウム金属の成長を妨げるものでさえある。
【0011】
従って、セラミック電解質の使用は、デンドライトの形成の問題が起こらないので、非常に大きな厚さを有する負極の使用の道を開く。そのため、非常に高い表面積容量を有する負極を得ることができる。従って、非常に高い表面積容量を有する負極と、非常に大きい容量を有する、空気電極(空気中の酸素を用いる)又は硫黄電極等の正極との組合せは、非常に高い質量及び体積エネルギー密度が得られる電池をもたらすことができる。このような電池において、金属、例えば鋼は、例えば陰極スパッタリングによって、集電体を形成するために薄層のセラミック電解質上に堆積される。後に、リチウム金属は、コレクター及びセラミック電解質の間に成長する。
【0012】
非常に高い質量及び体積エネルギー密度を有するこのような電池において、充電段階中におけるカチオンの還元は、セラミック電解質とリチウム金属である活性材料との間の界面において起こる。そのため、リチウム金属の成長は、一次元においてこの界面から生じる。
【0013】
それにもかかわらず、リチウム金属は、密度の高い均一な層の形態で成長し(
図7参照)、又は、繊維質又は多孔質の堆積の形態で成長する(
図6参照)。本発明者は、繊維質又は多孔質の形態におけるリチウム金属で作られる負極が、密度が高い均一な形態におけるリチウム金属で作られる負極と比較して、充放電サイクルの数に伴って急激に増加する抵抗を有することを観察した。
【0014】
それらは、リチウム金属及び固体電解質の間の界面によって決定される負極の活性表面における還元に対するこの増加に寄与する。この表面における還元は、負極の容量の低減及び負極の抵抗の増加をもたらす。充電段階中に生成されるリチウムの層が密で均一であるとき、負極の抵抗の増加はなく、負極は、多数の充放電サイクルに使用され得る。
【0015】
さらに、本発明者は、繊維質又は多孔質の形態(それほど密ではない形態)におけるリチウムの成長が、リチウム金属の一部を放電段階中にアクセスできない状態にすることによって、負極の容量を低減することを観察した。リチウム金属のこの部分は、酸化されない。例えば、本発明者は、完全に放電された負極を解析し、充電段階中に形成されるリチウム金属の30%が、放電段階中にアクセスできず、繊維質又は多孔質の形態で存在することを観察した。これは、リチウム金属が、もはや固体電解質に効果的に接触しておらず、従って、界面のレベルにおいて放電段階中にLi
+カチオンに酸化され得ないという事実によるものである。この同一の負極において、固体電解質との良好な界面を有する密度が高く均一な形態で存在した全ての部分は、放電段階中にアクセル可能であり、全体的に消費され得る。
【0016】
この課題に対する解決方法の探求において、本発明者は、集電体を形成するための非晶質金属の使用が、それほど密ではないリチウムの形成を避け、密度の高いリチウムのみが生成することを発見した。本発明は、この発見に基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5053297号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】“Lithium metal stability in batteries with block copolymer electrolytes”, D. Hallinan et al. Journal of the Electrochemical Society, 160 (3) A464−A470 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
結果として、本発明は、以上に記載の従来技術において直面する問題を解決する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このために、本発明は、
固体電解質、
前記固体電解質に堆積されるコレクター、及び
前記コレクターと共にリチウム金属又はナトリウム金属で作られる電極を形成するように、前記固体電解質と前記コレクターとの間に成長されるリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を含み、
前記コレクターが、非晶質合金で作られる、リチウム又はナトリウム二次電池用のアノードコンパートメントを提案する。
【0021】
このようなアノードコンパートメントにおいて、リチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質は、密度の高い形態で成長する。そのため、コレクターによって、及び活物質によって形成され負極は、10から500mAh/cm
2の高い比容量を有する。
【0022】
他の任意の且つ限定的ではない特徴は以下の通りである。
【0023】
前記非晶質合金は、好ましくは1.8%を超える最大相対伸び率を有する。前記非晶質合金は、有利には、Si、Sn及びAg原子の数で合計10%未満含む。前記非晶質合金は、好ましくは、Cu
xZr
1−xであり、xが0.25から0.75である。
【0024】
前記コレクターは、1μm未満の厚さを有する微細な層の形態であり得る。
【0025】
前記固体電解質は、有利には、セラミック材料で作られる。
【0026】
本発明はまた、
固体電解質、
非晶質合金で作られるコレクター、並びに
前記固体電解質及び前記コレクターの間のリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を含むリチウム二次電池用のアノードコンパートメントの製造方法であって、
前記方法が、
前記コレクターを形成するために前記固体電解質上に非晶質合金を堆積する段階と、
前記固体電解質及び前記コレクターの間にリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質を成長させ、前記アノードコンパートメントを得る段階と、
を含む、リチウム二次電池用のアノードコンパートメントの製造方法を提案する。
【0027】
前記非晶質合金は、陰極スパッタリング又はイオンビームスパッタリングによって前記固体電解質に堆積され得る。
【0028】
前記非晶質合金は、好ましくは、Cu
xZr
1−xであり、xが、0.25から0.75である。
【0029】
前記活物質は、有利には、電気化学的堆積によって前記固体電解質及び前記コレクターの間に成長される。
【0030】
前記固体電解質は、有利には、セラミック材料で作られる。
【0031】
本発明はまた、上記に記載されるようなアノード、及びカソードを含む電池を提案する。
【0032】
他の目的、特徴及び利点は、例示として与えられ、限定的ではない図面を参照して以下に続く例示的な詳細な説明を読むことによって明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】コーティングを有しない本発明によるアノードコンパートメントの概略図である。
【
図2】コーティングを有する本発明によるアノードコンパートメントの概略図である。
【
図3】コーティングを有さず、ケースを備える本発明によるアノードコンパートメントの概略図である。
【
図4】コーティングを有すると共にケースを備える本発明によるアノードコンパートメントの概略図である。
【
図5】本発明によるアノードコンパートメントの製造方法の種々の段階を概略的に示す図であり、任意の段階は、点線で示される。
【
図6】充電段階後に鋼で作られたコレクターの表面の状態を示す図である。
【
図7】密度の高いリチウム金属で作られた活物質の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から
図4を参照して、本発明によるリチウム又はナトリウム二次電池用のアノードコンパートメントが以下に示される。
【0035】
このアノードコンタクトパートメント1は、固体電解質2、固体電解質2上のコレクター3、及び、固体電解質2及びコレクター3の間のリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質4を含む。活物質4は、これらの2つの構成要素の間にリチウム金属又はナトリウム金属の成長によるものであり、コレクター3と共にリチウム金属又はナトリウム金属で作られる電極を形成する。
【0036】
アノードコンパートメント1は、コレクター3が非晶質合金で作られる点において新規である。実際に、以上に既に記載されたように、本発明者は、このようなコレクターがそれほど密ではない形態の活物質の成長を可能にすることを発見した。
【0037】
後に、本発明者は、従来技術におけるコレクターの活物質のそれほど密ではない形態のこの成長の原因を認識しようとした。本発明者は、このように、通常鋼で作られるコレクターが固体電解質に堆積されるところに特に生じ、その下でリチウム金属が成長し、クラックを示す、それほど密ではない形態のリチウム金属のこの成長を観察した(
図6参照)。
【0038】
本発明者は、それほど密ではない形態のこの成長が、クラックのこれらの領域でリチウム金属が制約にさらされることなく、従って、より制御できない方法で形成する傾向があるという事実によることを仮定する。
【0039】
クラックの出現を説明するために、本発明者は、コレクター及び固体電解質の間のリチウム金属の成長中に、固体電解質及びその破裂へのリードに共線形的に適応させられるコレクターの表面に張力が発生するという前提を提案する。
【0040】
結晶質合金とは対照的に、非晶質合金は、平均及び長距離にわたって不規則である配列を構成する原子配列を有する。本発明の非晶質合金で作られるコレクター3は、アノードコンパートメントを含む電池の充電段階中にクラックが生じず、それは、それほど密ではない形態(繊維質又は多孔質)の活物質の成長が避けられる。それは、活物質を圧縮する圧力が大きい場合に可逆的な方式(弾性変形)で変形することができる。実際に、応力(σ
Y)をヤング率(E)で割った値である非晶質合金の最大相対伸び率(ε
Y)は、結晶質金属又は合金の最大相対伸び率より大きい。
【0041】
有利に選択される非晶質合金は、1.8%を超える最大相対伸び率(ε
Y)を有する。
【0042】
非晶質合金は、好ましくは、このような合金で作られるコレクター3のリチウム金属の電気化学的堆積中にリチウム金属と合金を形成しない金属で構成される。そのため、非晶質合金は、好ましくは、シリコン、錫及び銀原子の数で合計10%未満含む。
【0043】
有利には、非晶質合金は、Cu
xZr
1−xであり、xが0.25から0.75であり、好ましくは、xは、約0.4である。
【0044】
コレクター3は、1μm未満の厚さを有する微細な層の形態である。そのため、コレクター3は、フレキシブルである。
【0045】
コレクター3は、フレキシブルな金属グリッド又はフィルム、好ましくは鋼で作られたフレキシブルなグリッドによって形成されるフレキシブルな導電体に電気的に接続される。このフレキシブルな金属グリッドは、集電体の表面の少なくとも一部、好ましくは全部を覆う。集電体及び導電体の間の電気接続を改善するために、銀ラッカーは、好ましくは、それらの接触領域に塗布される。導電体は、アノードコンパートメントの外部の素子にコレクター3を電気的に接続することを可能にする。
【0046】
固体電解質2は、アルカリ金属カチオン、例えばリチウム又はナトリウム、好ましくはリチウムを伝導するセラミック材料で作られる。
【0047】
このようなリチウム伝導セラミック材料は、例えば、LIC−GC(日本のオオハラ社のLithium Ion Conducting Glass Ceramic)が知られている。それらは、例えば、化学式Li
1−x(M、Ga、Al)
x(Ge
1−yTi
y)
2−x(PO
4)
3のセラミックであり、ここで、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1つ又はそれ以上の金属を表し、0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0である。文献(“The effects of crystallization parameters on ionic conductivity of a lithium aluminium germanium phosphate glass−ceramics” by J. S. Thokchom, and B. Kumar, in J. Power Sources, vol.195, p.2870, 2010)に記載される化学式Li
1+xAl
xTi
2−x(PO
4)
3のLATP、又は、文献(“Fast Lithium Ion Conduction in Garnet−Type Li
7La
3Zr
2O
12” by R. Murugan, V. Thangadurai, and W. Weppner, in Angew. Chem. Int. Ed., 46 (2007), p. 7778)に記載される化学式Li
7La
3Zr
2O
12のLLZ等のこのタイプの他の材料はまた、文献で知られている。
【0048】
ナトリウム伝導セラミック材料は、例えば、化学式Na
1−xZr
2Si
xP
3−xO
12の材料であり、ここおで、0≦x≦3である。それらは、特に米国特許第6485622号明細書、文献(“Comparison of Different Synthesis Methods for Nasicon Ceramics” by N. Gasmi et al., J. from Sol−Gel Science and Technology 4(3) (1995) p. 231−237)及びNasiconによる文献に開示されている。
【0049】
固体電解質2は、好ましくは膜の形態である。その厚さは、その2つの他の寸法による。膜の表面が大きくなればなるほど、厚さは、機械的応力に抵抗するように大きくならなければならない。さらに、電池の電気効率は、電解質の比抵抗によって部分的に支配され、この比抵抗Rは、化学式R=(r・e)/Aによって表され、rは、電解質の抵抗率を示し、eは、膜の厚さを示し、Aは、その表面積を示す。そのため、可能な場合、薄い固体電解質が一般的に使用される。膜の厚さは、有利には、30μmから500μmであり、好ましくは50μmから160μmである。これらの厚さは、1mm
2を超える、好ましくは1mm
2から400cm
2である、さらに好ましくは4cm
2から100cm
2である表面積に対して適切である。
【0050】
セラミック電解質2は、特に活物質がリチウム金属で作られるとき、活物質が成長するその表面の少なくとも一方にコーティングされ得る。Li
3N、Li
3P、LiI、LiBr、LiF又は窒化リン酸リチウム(LiPON)(X. Yu et al., J. Electrochem. Soc. (1997) 144(2), page 524を参照)に基づくコーティング5の例は、リチウムの伝導のために言及され得、例えば、Na
2O又は窒化リン酸ナトリウム(NaPON)が添加されたホウケイ酸ガラス(Chun et al., Proc. 124th Meeting Electrochem. Soc. (2008) 195を参照)は、ナトリウムの伝導のために言及され得る。
【0051】
活物質4は、充電段階の終わりに、有利には、50μから5mm、好ましくは100μmから500μmの最大厚さを有する。
【0052】
アノードコンパートメント1は、密閉された堅いケース6を含み得、その中に固体電解質2、コレクター3及び活物質2が見られる。コレクター3に対して向けられた表面と反対の固体電解質2の表面は、少なくとも部分的にケース6の外部表面を形成する。このケース6は、電池に含ませることができるあらゆる適切な形状、例えば円筒形又は平行六面体形状を有し得る。そのため、ケース6及び固体電解質2は、密閉された内部空間を画定する。ケース6は、合成樹脂、好ましくは熱硬化性又は低温硬化性樹脂で作られ得る。この樹脂の化学的性質は、それが、アノードコンパートメント1に含まれる構成要素及びアノードコンパートメント1が使用される電池の要素と不利に相互作用しないのであれば、重要ではない。例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール及びポリイミド樹脂が適切である。
【0053】
この場合、有利には、コレクター3は、固体電解質2の表面全体を事実上覆うが、特に密閉されたケース6の壁にそれが接触することを避けるために完全には覆わない。実際に、活物質が充電段階の終わりに比較的大きな厚さを有する場合であって、コレクター3がケース6の内部壁に接触する場合、コレクター3は、活物質4が充電段階中に成長するときに、それが固体電解質2から離れて動くので、変形及び/又は破壊する危険性がある。固体電解質2におけるコレクター3の伸長は、コレクター3の端部及びケース6の壁部の間の距離が好ましくは最大で数百ミクロンであるように選択される。
【0054】
この場合、依然として、アノードコンパートメント1はまた、これが、固体電解質2に方向に強制され、それによって活物質4の連続的な圧縮を可能にするように、コレクター3に作用する弾性要素を含み得る。弾性材料は、ケース6の1つ又はそれ以上の壁自体、又は、発泡体等の弾性材料で作られるブロック7であり得る。第2の場合において、活物質が完全に消費されるとき、すなわち放電段階の終わりに、弾性材料で作られるブロックは、カセット内に残された自由な空間の全てを占める。
【0055】
弾性材料で作られるブロック7は、例えば、ポリ(クロロプレン)発泡体(ネオプレン(登録商標)と呼ばれる)、好ましくは、Hutchinson社によってBulatex(登録商標)の名で市販されているネオプレン発泡体、特にBulatex(登録商標)C166である。他の実施例は、製品Sylomer(登録商標)G、Plastiform社によって市販されているポリ(エーテルウレタン)発泡体であろう。
【0056】
上記のアノードコンパートメントを含む電池は、以下に記載される。
【0057】
この電池は、アノードコンパートメントに加えて、正極、任意に液体電解質を含む。
【0058】
正極は、例えば、空気電極又は硫黄を用いた電極であり得る。
【0059】
正極が空気電極であるとき、それは、好ましくは、電子を伝導する多孔性材料で作られる。多孔性材料は、例えば、カーボンブラック、マンガン又はコバルト酸化物に基づく触媒、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の疎水性の結合剤、及びニッケルグリッドの形態のコレクター等の集電体の化合物である。アニオン伝導ポリマーは、特に電極が水溶性であるときに、国際公開第2010/128242号に開示されるような電極に加えられ得る。このポリマーは、空気中に含まれるCO
2による水性電解質の炭酸化を避ける機能を有する。疎水性結合剤は、その電子の透過が炭素粒子間の接触によって保証される粉末から機械的に集積された多孔性構造体を生成する二重の機能を有し、これが液体であるときに電解質が電極を通過することを避けるために十分に疎水性である。
【0060】
この電池は、例えば、リチウム−空気若しくはナトリウム−空気電池、又は、リチウム−硫黄電池、又は、リチウム金属若しくはナトリウム金属で作られたアノードを用いたあらゆる電池である。
【0061】
図5を参照して、以上に提供されたようなアノードコンパートメントの製造方法が以下に記載される。
【0062】
この方法は、コレクターを形成するための固体電解質上における非晶質合金の堆積、並びに、それによってアノードコンパートメントを得る、固体電解質及びコレクターの間におけるリチウム金属又はナトリウム金属で作られる活物質の成長を含む。
【0063】
非晶質合金は、陰極スパッタリング又はイオンビームスパッタリングによって固体電解質に堆積され得る。
【0064】
陰極スパッタリングの場合、使用されるターゲットの材料は、直接的に固体電解質に堆積されることが望まれる合金であり、この材料は、結晶質であり得、又は既に非晶質であり得る。変形例として、幾つかのターゲットが使用され得、その最大数は、固体電解質に堆積されることが望まれる非晶質合金を構成する金属要素の数である。ターゲットの数が非晶質合金を構成する金属要素の数より少ない場合、ターゲットの少なくとも1つは、合金で作られる。金属要素の定義は、鋼と同様に、遷移元素を全て含むものと理解される。例えば、ターゲットの材料は、非晶質又は結晶質のCuZrの合金で作られる。他の例によると、2つのターゲットが使用され、一方がCuで作られ、他方がZrで作られる。
【0065】
非晶質合金は、2μm未満の厚さに達するまで、好ましくは200から400nmで固体電解質に堆積される。
【0066】
固体電解質及びコレクターの間の活物質の成長は、以下のように行われる。コレクター3に向いていない固体電解質の面は、少なくとも部分的に、活物質を生成するアルカリ金属のカチオンを含む液体電解質に接触するように配置される。次いで、還元電位が、コレクター及びアルカリ金属のカチオンを含有する液体電解質に含浸されている正極に印加される。還元電位は、活物質が固体電解質及び所望の厚さのコレクターの間を横切るために十分な時間にわたってコレクター及び正極の間に維持される。
【0067】
液体電解質は、例えば、リチウム金属で作られる活物質の場合にはLiOHであり、ナトリウム金属で作られる活物質の場合にはNaOHであり得る。LiOH又はNaOHの濃度は、好ましくは、少なくとも1mol/Lであり、飽和するまでの範囲又はそれを超える範囲であり得る。
【0068】
リチウム金属又はナトリウム金属の成長に使用される正極は、使用される液体電解質及び液体電解質のイオンの酸化電位において安定である金属又は合金で作られる電極であり得る。
【0069】
印加される還元電位は、好ましくは、液体電解質における1MのHg/HgO/KOHの参照電極に対して、−3.1Vから−3.6Vの値に維持される。この電位は、実際に、アルカリ金属に対する還元されるアルカリイオンにおける絶対値で十分に高くなければならない。好ましくは、電流強度は、0.1mAh/cm
2から100mAh/cm
2である。
【0070】
コーティングが固体電解質に提供される場合、これは、例えば陰極スパッタリングによる非晶質合金の堆積前に固体電解質に堆積される。
【0071】
アノードコンパートメントがケースの形態の場合、ケースは、固体電解質、任意にコーティング、活物質、コレクター及び、任意に弾性材料で作られるブロックによって構成されるアセンブリの周囲に置かれる。
【符号の説明】
【0072】
1 アノードコンタクトパートメント
2 固体電解質
3 コレクター
4 活物質
5 コーティング
6 ケース
7 ブロック