特許第6395842号(P6395842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395842割出し可能な中央ドリルインサートおよび切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395842
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】割出し可能な中央ドリルインサートおよび切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   B23B51/00 T
   B23B51/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-544873(P2016-544873)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-501897(P2017-501897A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】IL2014051095
(87)【国際公開番号】WO2015107513
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】14/155,122
(32)【優先日】2014年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】セゲヴ エデン
(72)【発明者】
【氏名】キタポヴ マーク
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−514580(JP,A)
【文献】 特開平6−190607(JP,A)
【文献】 特開2001−138119(JP,A)
【文献】 特開2005−193377(JP,A)
【文献】 特表2005−527390(JP,A)
【文献】 特開2002−66809(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0182680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00−51/14,
27/02,27/04,27/14,
27/16,27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央インサート軸(I)の周りに回転対称を有する中央ドリルインサート(100)であって、前記中央ドリルインサート(100)は、
底平面(P)を有する底面(102)と、上面(104)と、それらの間に広がる周囲面(106)と;
少なくとも3つのリードドリル部(108)であって、前記周囲面(106)から外方へ突出し、それぞれのリードドリル部(108)は、ドリル軸(H)と、ドリル軸(H)の方へ収束する複数のドリル切削刃(110)と、を有する、少なくとも3つのリードドリル部(108)と;
少なくとも3つの二次的切削刃(112)であって、関連するリードドリル部(108)とそれぞれ隣り合い、各ドリル軸(H)に対し横方向に、前記上面(104)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って延び、それぞれの二次的切削刃(112)は、各ドリル軸(H)に沿って各リードドリル部(108)の前記ドリル切削刃(110)から軸方向に離間している、少なくとも3つの二次的切削刃(112)と;
少なくとも3つの当接アンダーカット(114)であって、それぞれ、前記底面(102)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って前記周囲面(106)に形成され、二次的切削刃(112)の1つと向かい合って延びる、少なくとも3つの当接アンダーカット(114)と;
少なくとも3つの当接フランク(116)であって、前記上面(104)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って前記周囲面(106)に形成され、それぞれ、リードドリル部(108)の1つから、別のリードドリル部(108)と関連する二次的切削刃(112)の方へ、延び、それぞれの当接フランク(116)は、前記底平面(P)とダブテール角(α)を形成する、少なくとも3つの当接フランク(116)と、
を備える、中央ドリルインサート。
【請求項2】
請求項1に記載のドリル中央ドリルインサート(100)であって、中央インサート軸(I)の周りの回転対称は、120°回転対称である、中央ドリルインサート。
【請求項3】
軸部(122)と中央回転軸(R)とを含む工具ホルダ(118)を有する切削工具(120)であって、前記切削工具(120)は、
前記工具ホルダ(118)の前端部(126)に形成された第1インサートポケット(124)と、その中に保持された側部切削インサート(128)であって、前記側部切削インサート(128)は、前記回転軸(R)に対して直角の第1切削刃(130)を有する、側部切削インサート(128)と;
前記回転軸(R)周りの前記第1インサートポケット(124)の回転対向で前記工具ホルダ(118)の前端部(126)に形成された第2インサートポケットと、その中に保持された中央ドリルインサート(100)であって、前記中央ドリルインサート(100)は、中央インサート軸(I)の周りに回転対称を有する中央ドリルインサート(100)と、
を備え、
前記中央ドリルインサート(100)は、
底面(102)と、上面(104)と、それらの間に広がる周囲面(106)と、少なくとも3つのリードドリル部(108)であって、前記周囲面(106)から外方へ突出し、それぞれのリードドリル部(108)は、ドリル軸(H)と、前記ドリル軸(H)の方へ収束する複数のドリル切削刃(110)と、を有し、前記ドリル軸(H)の1つは、前記工具ホルダ(118)の前記回転軸(R)と一致する、少なくとも3つのリードドリル部(108)と;
少なくとも3つの二次的切削刃(112)であって、関連するリードドリル部(108)とそれぞれ隣り合い、各ドリル軸(H)に対し横方向に、前記上面(104)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って延び、それぞれの二次的切削刃(112)は、各ドリル軸(H)に沿って各リードドリル部(108)の前記ドリル切削刃(110)から軸方向に離間している、少なくとも3つの二次的切削刃(112)と、を備える、
切削工具。
【請求項4】
請求項3に記載の切削工具(120)であって、前記中央ドリルインサート(100)は、
少なくとも3つの当接アンダーカット(114)であって、前記底面(102)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って前記周囲面(106)に形成され、それぞれが前記二次的切削刃(112)の1つと向かい合って延びる、少なくとも3つの当接アンダーカット(114)と;
少なくとも3つの当接フランク(116)であって、前記上面(104)と前記周囲面(106)が交わる部分に沿って前記周囲面(106)に形成され、それぞれ、リードドリル部(108)の1つから、別のリードドリル部(108)と関連する前記二次的切削刃(112)の方へ、延びる、少なくとも3つの当接フランク(116)と;
をさらに備え、
前記第2インサートポケット(132)は、
支持平面(S)を含む支持面(134)であって、前記回転軸(R)に平行に広がり、前記中央ドリルインサート(100)の前記底面(102)と当接する、支持面(134)と;
ダブテールクランプ面(136)であって、前記支持平面(S)とダブテール角(α)を形成し、前記中央ドリルインサート(100)の前記当接フランク(116)の1つと当接するダブテールクランプ面(136)と;
前記ダブテールクランプ面(136)の向かい側に位置するクランプレッジ(138)であって、前記中央ドリルインサート(100)の前記当接アンダーカット(114)の1つと当接するクランプレッジ(138)と、を有する、
切削工具。
【請求項5】
請求項4に記載の切削工具(120)であって、前記底面(102)は、前記当接フランク(116)のそれぞれとダブテール角(α)を形成する底平面(P)を有する、切削工具。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記中央ドリルインサート(100)の回転対称は、前記中央インサート軸(I)の周りで120°回転対称である、切削工具。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記リードドリル部(108)の1つは、作動可能であり、前記工具ホルダ(118)の前端部(126)の外側に突出し、前記ドリル切削刃(110)が、前記切削工具(120)の最前方刃である、切削工具。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記二次的切削刃(112)の1つは、作動可能であり、前記側部切削インサート(128)の前記第1切削刃(130)と径方向に重なる、切削工具。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記側部切削インサート(128)の前記第1切削刃(130)は、第1刃長(L1)を有し、作動可能二次的切削刃(112)および隣り合う作動可能ドリル切削刃(110)は、一体となった第2刃長(L2)を有し、
第1刃長(L1)と第2刃長(L2)との長さの和は、円筒状軸部(122)の半径(r)よりも大きい、切削工具。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記側部切削インサート(128)および前記中央ドリルインサート(100)だけが、工具前端部(126)での切削インサートである、切削工具。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか1項に記載の切削工具(120)であって、前記第1および第2インサートポケット(124,132)は、前記中央回転軸(R)の周りに互いに回転対向している、切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、割出し可能な切削インサートおよび切削工具に、特に、割出し可能な中央ドリルインサートおよび切削工具に、関する。
【背景技術】
【0002】
スポットドリルまたはパイロットドリルなどの金属切削工具は、ドリルの前部に保持されたスポットドリルインサート、および場合によりスポットドリルインサートに沿って位置する追加の切削インサートを、有する。スポットドリルインサートは、複数の切削領域を有してよく、それは、使用された切削領域が摩耗または損傷したときに異なる切削領域を使用するように割出し可能であり得る。
【0003】
ドリル本体は、スポットドリルインサートおよび追加の切削インサートを受け取り、機械加工の際にこれらを保持するように適合された各インサートポケットを有する。上記の切削インサートおよび切削工具は、例えば、以下の特許文献に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第19710996号
【特許文献2】欧州特許第1080812号
【特許文献3】米国特許第4100983号
【特許文献4】米国特許第5259707号
【特許文献5】米国特許第5688083号
【特許文献6】米国特許第5505569号
【特許文献7】米国特許第5954459号
【特許文献8】米国特許第7198460号
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/124016号
【特許文献10】米国特許出願公開第2011/305534号
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/189393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数のリードドリル部と各二次的切削刃を含む新しい割出し可能な中央ドリルインサートと、その中央ドリルインサートを受け取ってしっかりと保持するのに適した中央ドリルインサートポケットを含む工具ホルダと、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の内容に従って、中央インサート軸の周りに回転対称を有する中央ドリルインサートが提供され、その中央ドリルインサートは、
底平面を有する底面と、上面と、それらの間に広がる周囲面と;
少なくとも3つのリードドリル部であって、周囲面から外方へ突出し、それぞれのリードドリル部は、ドリル軸と、ドリル軸の方へ収束する複数のドリル切削刃と、を有する、少なくとも3つのリードドリル部と;
少なくとも3つの二次的切削刃であって、関連するリードドリル部とそれぞれ隣り合い、各ドリル軸に対し横方向に、上面と周囲面が交わる部分に沿って延び、それぞれの二次的切削刃は、各ドリル軸に沿って各リードドリル部のドリル切削刃から軸方向に離間している、少なくとも3つの二次的切削刃と;
少なくとも3つの当接アンダーカットであって、それぞれ、底面と周囲面が交わる部分に沿って周囲面に形成され、二次的切削刃の1つと向かい合って延びる、少なくとも3つの当接アンダーカットと;
少なくとも3つの当接フランクであって、上面と周囲面が交わる部分に沿って周囲面に形成され、それぞれ、リードドリル部の1つから、別のリードドリル部と関連する二次的切削刃の方へ、延び、それぞれの当接フランクは、底平面とダブテール角を形成する、少なくとも3つの当接フランクと、
を備える。
【0007】
本発明の別の実施形態の内容に従って、軸部および中央回転軸を含む工具ホルダを有する切削工具が提供され、その切削工具は、
工具ホルダの前端部に形成された第1インサートポケットと、その中に保持された側部切削インサートであって、側部切削インサートは、回転軸に対して直角の第1切削刃を有する、側部切削インサートと;
第1インサートポケットの回転対向で工具ホルダの前端部に形成された第2インサートポケットと、その中に保持された中央ドリルインサートであって、中央ドリルインサートは、中央インサート軸の周りに回転対称を有する中央ドリルインサートと、
を備え、
その中央ドリルインサートは、
底面と、上面と、それらの間に広がる周囲面と、少なくとも3つのリードドリル部であって、周囲面から外方へ突出し、それぞれのリードドリル部は、ドリル軸と、ドリル軸の方へ収束する複数のドリル切削刃と、を有し、ドリル軸の1つは、工具ホルダの回転軸と一致する、少なくとも3つのリードドリル部と;
少なくとも3つの二次的切削刃であって、関連するリードドリル部とそれぞれ隣り合い、各ドリル軸に対し横方向に、上面と周囲面が交わる部分に沿って延び、それぞれの二次的切削刃は、各ドリル軸に沿って各リードドリル部のドリル切削刃から軸方向に離間している、少なくとも3つの二次的切削刃と、
を備える。
【0008】
本出願のある実施形態の内容に従って、上記の切削工具が提供され、
少なくとも3つの当接アンダーカットは、底面と周囲面が交わる部分に沿って周囲面に形成され、それぞれが二次的切削刃の1つと向かい合って延び;
少なくとも3つの当接フランクは、上面と周囲面が交わる部分に沿って周囲面に形成され、それぞれ、リードドリル部の1つから、別のリードドリル部と関連する二次的切削刃の方へ、延び;
第2インサートポケットは、
支持平面を含む支持面であって、回転軸に平行に広がり、中央ドリルインサートの底面と当接する、支持面と;
ダブテールクランプ面であって、支持平面とダブテール角を形成し、中央ドリルインサートの当接フランクの1つと当接するダブテールクランプ面と;
ダブテールクランプ面の向かい側に位置するクランプレッジであって、中央ドリルインサートの当接アンダーカットの1つと当接するクランプレッジと、
を有する。
【0009】
本発明のより良い理解のために、および本発明の実際の実施の仕方を示すために、これから添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に従った切削工具の透視図である。
図2図1の切削工具の別の透視図である。
図3】部分的に分解された、図1の切削工具の透視図である。
図4図1の切削工具の第1の側面図である。
図5図1の切削工具の別の側面図である。
図6図1の切削工具の前面図である。
図7図1の切削工具の工具ホルダの前面図である。
図8】本発明の実施形態に従った切削インサートの上面図である。
図9図8の切削インサートの底面図である。
図10図8の切削インサートの上面透視図である。
図11図8の切削インサートの底面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当然のことながら、説明の簡潔さおよび明確さのために、図に示されている要素は、正確な縮尺で示されていない。例えば、要素のいくつかの寸法は、明確さのために他の要素に対して誇張されることがある、または、数個の物理的構成要素は、1個の機能ブロックまたは要素に含まれることがある。さらに、適切と考えられる場合、符号は、対応するまたは類似した要素を示すように図の中で繰り返されることがある。
【0012】
以下の説明では、本発明の様々な態様が記載される。説明のために、特定の構成および詳細が、本発明の完全な理解を提供するように、記述されている。しかしながら、当業者には、本発明は本明細書に提示される具体的な詳細がなくても実施できることも、明らかである。さらに、周知の特徴は、本発明を分かりにくくしないように、省略または簡略化されることがある。
【0013】
本発明の実施形態に従った切削工具120を描いている、図1‐7が参照される。切削工具120は、円筒状軸部122および長手方向回転軸Rを含む工具ホルダ118を有する、ドリル工具である。第1インサートポケット124および第2インサートポケット132は、工具ホルダ118の前端部126に形成される。第1および第2インサートポケット124,132は、回転軸Rの周りに互いに回転対向している(すなわち、回転軸Rの周りに回転するときに異なる方向で面する)。
【0014】
側部切削インサート128は、第1インサートポケット124に保持される。側部切削インサート128は、回転軸Rに対して直角に延びる第1切削刃130を有する。側部切削インサート128は、第1切削刃130に対して角度の付いた第2切削刃131も有してよい。特定の実施形態では、第2切削刃131は、第1切削刃130に垂直である。図に見られるように、第2切削刃131は、回転軸Rに沿って延びる。
【0015】
第2切削刃131は、側部切削インサート128が割出されたときに、例えば、第1切削刃130が摩耗または損傷したときに、用いられる(すなわち、第1切削刃130が切削工具120の前部で作動位置にあるときに、第2切削刃131は作動しない)ことが、記される。第2切削刃131に加えて、側部切削インサート128は、追加の割出し切削刃(例えば、本願の図に示されている四角形側部切削インサート128のように、合計4つの切削刃)を有してよい。
【0016】
中央ドリルインサート100は、本発明の実施形態に従って、第2インサートポケット132に保持される。中央ドリルインサート100の様々な図を描いている、図8‐11がさらに参照される。中央ドリルインサート100は、中央インサート軸Iを有し、その周りで、中央インサート100は、120°回転対称を有する(すなわち、3回回転対称)。中央インサート100は、底面102、上面104、およびそれらの間に広がる周囲面106を備える。底面102は、図6に見られるように、底平面Pを定める。インサートクランプ孔117は、中央インサート軸Iに沿って通り、底面および上面102,104に開いている。なお、本出願では、用語「中央インサート」、「中央切削インサート」および「中央ドリルインサート」は、交互に用いられる。当然のことながら、側部切削インサート128および中央ドリルインサート100だけが、工具前端部126での切削インサートである。
【0017】
中央インサート100は、周囲面106から外方へ突き出る少なくとも3つのリードドリル部108を有する。それぞれのリードドリル部108は、ドリル軸Hと、ドリル軸Hの方へ収束する複数の前部ドリル切削刃110と、を有する。それぞれのドリル切削刃110は、少なくとも1つのドリルフランク111によって周囲面106から離間している。リードドリル部108は、中央軸Iの周りに対称的に配置され、図8に記されるように、1つのドリル軸Hと別のとの間の角が120°であるようになっている。中央インサート100は、割出し可能であり、リードドリル部108の1つが摩耗または損傷した場合に、異なるリードドリル部108を用いることができるようになっている。
【0018】
添付図面に描かれている中央インサート100は、3つのリードドリル部108を有する。しかしながら、中央インサート100は、3つより多いリードドリル部108を有してよいことが記され、その場合、中央インサート100は、中央軸の周りに回転対称n回回転対称を有するであろう(nはリードドリル部108の数である)。切削工具150のある実施形態では、中央インサート100は、少なくとも2つのリードドリル部108を有する。
【0019】
二次的切削刃112は、それぞれのリードドリル部108と隣り合って位置し、ドリル軸Hに対し横方向に、上面104と周囲面106が交わる部分に沿って延びる。ある実施形態では、それぞれの二次的切削刃112は、各ドリル軸Hに実質的に垂直であってよい。それぞれの二次的切削刃112は、各ドリル軸Hに沿って各リードドリル部108のドリル切削刃110から軸方向に離間している。言い換えれば、二次的切削刃112は、少なくとも1つのドリルフランク111によってそこから間隔を置かれた、ドリル切削刃110の後方に位置する。従って、当然のことながら、ドリル切削刃110と第2切削刃112とは、軸方向に非連続の切削刃である。
【0020】
当接アンダーカット114は、周囲面106に凹設され、底面102と周囲面106とが交わる部分に沿って延び、二次的切削刃112のそれぞれ1つと向かい合う。当接フランク116は、上面104と周囲面106が交わる部分に沿って周囲面106に形成され、リードドリル部108のそれぞれ1つから、別の隣り合うリードドリル部108と関連する二次的切削刃112の方へ、延びる。それぞれの当接フランク116は、図6に記されるように、底平面Pとダブテール角αを形成する。
【0021】
切削工具120では、第2インサートポケット132は、回転軸Rに平行に広がる、支持平面Sを定めている支持面134を有する(図7に記されるように)。ポケットクランプ孔140は、工具ホルダ118を通過し、内部ねじ面を有し、支持面134に開いている。ダブテールクランプ面136は、支持面134から離れて延び、図7に記されるように、支持平面Sとダブテール角αを形成する。クランプレッジ138は、支持面134から離れて延び、ダブテールクランプ面136の向かい側に位置する。
【0022】
中央インサート100は、第2インサートポケット132に締め付けねじ142で保持され、締め付けねじ142は、インサートクランプ孔117を通り、ポケットクランプ孔140に螺合する。中央インサート100の底面102は、支持面134に当接する。中央インサート100の当接アンダーカット114の1つは、クランプレッジ138に当接する。中央インサート100の当接フランク116の1つは、ダブテールクランプ面136に当接する。ダブテールクランプ面136と支持面Sとの間に形成されたダブテール角は、ダブテールαよりもわずかに小さくてよく、ダブテールクランプ面136と当接フランク116の1つとの間のクランプを確かにするようになっている。
【0023】
当接フランク116とダブテールクランプ面136との間のダブテールクランプは、支持面Sに垂直な分力を加え、中央インサート100が、支持面Sに垂直な方向に第2インサートポケット132から引き出されるのを防ぐ。加えて、それぞれの当接アンダーカット114は、向かい合った二次的切削刃112から離間している。従って、中央インサート100のクランプにより、その二次的切削刃112に直接力が加えられず、それによって、クランプ力によるその二次的切削刃112への損傷を回避する。
【0024】
中央インサート100は第2インサートポケット132に保持され、中央インサート100のリードドリル部108の1つが、作動可能であり、工具ホルダ118の前端部126の前方におよび外側に突き出るようになっている。作動可能リードドリル部108と関連する二次的切削刃112は、作動可能二次的切削刃112と称される。作動可能リードドリル部108のドリル軸Hは、工具ホルダ118の回転軸Rと一致する。このようにして、作動可能リードドリル部108のドリル切削刃110は、切削工具120の最前方刃であり、切削工具120によって機械加工されるワークピースに接触する最初のものである。切削工具120が回転軸Rに沿ってさらにワークピースの中に進むにつれて、二次的切削刃112と側部切削インサート128の第1切削刃130とが、ワークピースに接触する。作動可能リードドリル部108がワークピースに最初に接触するので、切削工具120は、少ない振動および回転軸Rからのずれで、回転軸Rに沿って着実に安定化して導かれる。
【0025】
切削工具120の前面図を描いている、図6が特に参照される。この図は、側部切削インサート128の第1切削刃130が、第1刃長L1を有することを示している。作動可能二次的切削刃112および隣り合う作動可能ドリル切削刃110は、一体となった第2刃長L2を有する(すなわち、回転軸Rからの作動可能二次的切削刃112の広がり)。第1刃長L1と第2刃長L2との長さの和は、円筒状軸部122の半径rよりも大きく、切削工具120の径方向刃連続性を提供する。言い換えれば、作動可能二次的切削刃112は、側部切削インサート128の第1切削刃130と径方向に重なる。このようにして、切削工具120は、径方向につながった円形ドリル孔をワークピースに切削することができる。当然のことながら、横方向に延びる二次的切削刃112は、中央切削インサート100の両側で、2つの側部切削インサートを有する必要性をなくし、そのようにして、側部切削インサート128および中央ドリルインサート100だけが、工具前端部126での切削インサートである。
【0026】
本発明は1つ以上の特定の実施形態に関して記載されたが、記載は、全体として実例となるよう意図されており、示されている実施形態に本発明を限定すると解釈されるべきでない。様々な変更は、当業者が思い付き、本明細書に具体的に示されていないが、それでもなお本発明の範囲内である。
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