特許第6395861号(P6395861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395861自動遠近調節を行うための眼球装着可能デバイス、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395861
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】自動遠近調節を行うための眼球装着可能デバイス、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20180913BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20180913BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20180913BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20180913BHJP
   A61F 9/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02C7/04
   G02C7/08
   G02B3/14
   G02F1/13 505
   A61F9/00
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-567497(P2016-567497)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公表番号】特表2017-520783(P2017-520783A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】US2015031415
(87)【国際公開番号】WO2015191247
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】62/012,005
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/012,017
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/012,033
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/710,332
(32)【優先日】2015年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】エッツコーン,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】リンハルド,ジェフリー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】オーティス,ブライアン
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−517081(JP,A)
【文献】 特表2005−535942(JP,A)
【文献】 特表2005−505789(JP,A)
【文献】 特表2016−502910(JP,A)
【文献】 特表2011−516927(JP,A)
【文献】 特表2013−513127(JP,A)
【文献】 特表平08−508826(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/048647(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0140167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00−7/16
A61F 9/00
G02B 3/14
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と第2の層とを含レンズ囲いと、
記レンズ囲い内に配置された前電極と、
記レンズ囲い内に配置された後電極と、
前記レンズ囲いの中心領域にわたって配置された遠近調節アクチュエータ要素であって、前記遠近調節アクチュエータ要素が前記中心領域内で前記前電極を前記後電極から分離し、前記第1の層の一部が前記第2の層の一部に物理的に接触するピンチオフ領域が前記中心領域の周囲を画成する遠近調節アクチュエータ要素と
前記ピンチオフ領域の少なくとも一部の周りで延びる前記レンズ囲いの周辺領域で前記第1の層と前記第2の層との間に配置された基板と
を備え
前記前電極が、前主本体部分と、前記前主本体部分から前記ピンチオフ領域を通って延びて前記基板上の前接触パッドに接触する前接続タブとを含み、
前記後電極が、後主本体部分と、前記後主本体部分から前記ピンチオフ領域を通って延びて前記基板上の後接触パッドに接触する後接続タブとを含み、
前記前接続タブと前記後接続タブとが互いに回転してずれる、眼球装着可能デバイス(EMD)。
【請求項2】
前記遠近調節アクチュエータ要素が、前記中心領域内で前記前電極を前記後電極から分離する液晶層を含む、請求項1に記載のEMD。
【請求項3】
前記第1の層および前記第2の層が、可撓性コンタクトレンズ材料を含む、請求項1に記載のEMD。
【請求項4】
前記基板上に配置されて、前記前電極および前記後電極にわたって電圧を印加することにより前記遠近調節アクチュエータを動作させるコントローラをさらに備える、請求項1に記載のEMD。
【請求項5】
記遠近調節アクチュエータ要素の一部が、前記ピンチオフ領域と前記前主本体部分および前記後主本体部分の少なくとも一方との間に配置される、請求項1に記載のEMD。
【請求項6】
前記第1の層の前記凹側が前記中心部分に凹部を形成する、請求項1に記載のEMD。
【請求項7】
前記第2の層の前記凸側が前記中心部分に凹部を形成する、請求項1に記載のEMD。
【請求項8】
前記遠近調節アクチュエータ要素が、
液晶層と、
前記液晶層および前記前電極の間に配置され、前記前電極の部位よりも大きい前記中心領域の部位にわたって延びる前配向層と、
前記液晶層および前記後電極の間に配置され、前記後電極の部位よりも大きい前記中心領域の部位にわたって延びる後配向層とを備える、請求項1に記載のEMD。
【請求項9】
前記第1の層と前記第2の層とが、前記ピンチオフ領域に向かう方向へ延びる、前記中心部分のテーパを形成する、請求項1に記載のEMD。
【請求項10】
前記第1の層と前記第2の層とが、前記ピンチオフ領域に向かう方向へ延びる、前記周辺領域のテーパを形成する、請求項1に記載のEMD。
【請求項11】
前記第1の層および前記第2の層のそれぞれの縁部が、前記周辺領域の周りで共に封止される、請求項1に記載のEMD。
【請求項12】
レンズ囲いを有するコンタクトレンズを作製する方法であって、
前主本体部分と、前記前主本体部分から延びる前接続タブとを含む前電極を形成することおよび第1の液体導体材料を囲い材料の前層の凹面上に堆積させることを含む、前電極を前記前層上に形成することと、
前主本体部分と、前記前主本体部分から延びる前接続タブとを含む後電極を形成することおよび第2の液体導体材料を囲い材料の後層の凸面上に堆積させることを含む、後電極を前記後層上に形成することと、
遠近調節アクチュエータ構造を前記前層と前記後層との間に配置することと、
集積回路が上に配置される基板を、前記凹面と前記凸面との間に位置決めすることと、
前記前電極および後電極、前記遠近調節アクチュエータ構造および前記基板を前記レンズ囲い内に入れるために、前記前層を前記後層に封止することであって、前記前層の一部が前記後層の一部に物理的に接触するピンチオフ領域を形成することを含む、封止することとを含み、
前記ピンチオフ領域が前記レンズ囲いの中心領域の周囲を画成し、前記遠近調節アクチュエータ構造が、前記中心領域内で前記前電極を前記後電極から分離し、前記基板が、前記ピンチオフ領域の少なくとも一部の周りに延びる前記レンズ囲いの周辺領域で前記前層と前記後層との間に配置され、前記前電極の前記前接続タブは前記前主本体部分から前記ピンチオフ領域を通って延びて前記基板上の前接触パッドに重なり、前記後電極の前記後接続タブは前記後主本体部分から前記ピンチオフ領域を通って延びて前記基板上の後接触パッドに重なり、前記前接続タブと前記後接続タブとが互いに回転してずれる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、35U.S.C.§119(e)の規定の下、参照により本明細書に組み込まれている、2014年6月13日に提出された米国仮出願第62/012,005号、2014年6月13日に提出された米国仮出願第62/012,017号、および2014年6月13日に提出された米国仮出願第62/012,033号の優先権を主張する。
【0002】
[0002] 本開示は、一般に光学の分野に関し、特に、限定されないがコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 遠近調節は、眼がその焦点距離を調節して、距離が変化する物体に焦点を維持するプロセスである。遠近調節は反射作用であるが、意識的に操ることができる。遠近調節は、毛様体筋の収縮により制御される。毛様体筋は、眼の弾性水晶体を取り囲み、弾性水晶体の焦点を変化させる筋肉収縮の間に弾性水晶体に力を加える。
【0004】
[0004] 人の年齢と共に、毛様体筋の効果が低下する。老眼は、加齢に伴って眼の遠近調節力または焦点調節力が進行して損なわれることであり、これにより、近距離がぼやけて見えることが増える。この年齢に伴う遠近調節力の低下については、十分に研究されており、比較的安定し、予測可能である。現在、世界中で約17億人(米国のみで1億1千万人)が老眼を患っており、この数は世界の年齢別人口と共に実質的に増加すると予想される。人々が老眼の作用を埋め合わせるのを助けることのできる技法およびデバイスが、ますます必要になっている。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 添付図面において、本発明の様々な実施形態について、限定ではなく例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]実施形態による、自動遠近調節を行う眼球装着可能デバイスと、眼球装着可能デバイスと相互作用する外部リーダとの機能ブロック図である。
図2A】[0007]実施形態による、眼球装着可能デバイスの上面図である。
図2B】[0008]実施形態による、眼球装着可能デバイスの斜視図である。
図3】[0009]実施形態による、眼球装着可能デバイスの様々な部品および層を示す分解斜視図である。
図4】[0010]実施形態による、液晶遠近調節アクチュエータを有する眼球装着可能デバイスを作製するためのプロセスを示すフローチャートである。
図5】[0011]実施形態による、眼球装着可能デバイスを作製するためのプロセスの横断面図である。
図6】[0012]各々対応する実施形態による、それぞれの眼球装着可能デバイスの横断面図である。
図7A】[0013]実施形態による、眼球装着可能デバイス内の、液晶層に対する導電性電極の構成を示す図である。
図7B】実施形態による、眼球装着可能デバイス内の、液晶層に対する導電性電極の構成を示す図である。
図7C】実施形態による、眼球装着可能デバイス内の、液晶層に対する導電性電極の構成を示す図である。
図8】[0014]実施形態による、眼球装着可能デバイス内の、リング基板と導電性電極との接続を示す外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0015] 遠近調節アクチュエータを備える眼球装着可能デバイス(または「EMD」)を作製するシステム、装置、および方法の実施形態について、本明細書で説明する。以下の説明において、実施形態の完全な理解をもたらすために多くの特定の詳細について述べる。しかしながら、当業者は、本明細書に記載の技法を、特定の詳細の1つまたは複数を含まずに、または他の方法、部品、材料などを含んで実施してもよいことを理解するであろう。他の例では、ある態様が不明瞭になることを避けるために、周知の構造、材料、または動作を図示せず、または詳細に説明しない。
【0008】
[0016] 本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の機能、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所に現れる「一実施形態において」または「実施形態において」という言い回しは、必ずしもすべて同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の機能、構造、または特徴を、1つまたは複数の実施形態において適切に組み合わせてもよい。
【0009】
[0017] コンタクトレンズの焦点距離を調節するための遠近調節アクチュエータを含む電気的に起動されるレンズを備える、スマートコンタクトレンズまたは他の眼球装着可能デバイスについて本明細書で説明する。一部の実施形態において、遠近調節は、ユーザの注視方向に基づいてリアルタイムで自動調節される。遠近調節アクチュエータは、スマートコンタクトレンズの中心領域(例えば、少なくとも中心視覚を覆う)に配置される。このようにして、構造および/または作製プロセスが、例えば、遠近調節アクチュエータの動作を支持することになっている電極および/または他の回路に対する遠近調節アクチュエータの位置決めを支援することが望ましい。
【0010】
[0018] 遠近調節アクチュエータは、液晶(LC)材料の層により実施され、遠近調節アクチュエータを電子制御するための電極を必要とし得る。したがって、例えば、EMDの電極間または液晶と制御回路との間に、電気的、構造的および/または他の絶縁を設ける必要がある。本開示の実施形態は、例えば、他のレンズ構造とは別に遠近調節アクチュエータを作製することに関連する欠点を軽減する。ある実施形態により、遠近調節アクチュエータ(例えば、LC材料および隣接する層またはポリイミドまたは他の配向材料を含む)を、連続する加工工程によって囲い層上に様々に構築することができ、この囲い層は、例えば、レンズ囲いの外側の少なくとも一部を形成することになっている。その後、そのような囲い層を別の囲い層に封止してレンズ囲いを形成することができ、遠近調節アクチュエータは、レンズ囲いのピンチオフ領域により囲まれ、封止される。
【0011】
[0019] 眼球装着可能デバイスの実施形態は、眼に接触装着されるように形成されたレンズ囲い(例えば、角膜に着脱可能に装着されて眼瞼の動きを開閉できるように形成される)内にすべて埋め込まれた、電源、制御電子機器、遠近調節アクチュエータ、注視方向センサシステム、およびアンテナを備えてもよい。一実施形態において、制御電子機器は、センサシステムをモニタして、注視方向/焦点距離を特定し、遠近調節アクチュエータを操作して、眼球装着可能デバイスの屈折力を制御し、外部リーダとの無線通信を行うように連結される。一部の実施形態において、電源は、埋め込まれたバッテリの誘導無線充電を制御するための充電回路を備えてもよい。
【0012】
[0020] レンズ囲いは、ポリマー材料、ヒドロゲル、PMMA、シリコーンベースのポリマー(例えば、フルオロシリコンアクリレート)その他など、人の眼に直接接触するのに適合した様々な材料から作製することができる。電子機器は、その周辺近くのレンズ囲い内に埋め込まれた、例えばリング形状を有する基板上に配置されて、角膜の中心領域近くで受けられる入射光との干渉を避けることができる。センサシステムは、眼瞼に向かって外側に向くように基板上に配置されて、センサシステム上で眼瞼が覆う量および位置に基づいて注視方向/焦点距離を検出する。眼瞼がセンサシステムの異なる部分を覆うと、これにより特徴(例えば、その静電容量)が変化し、これを測定して注視方向および/または焦点距離を判定することができる。
【0013】
[0021] 一部の実施形態において、その後、注視方向/焦点距離情報を使用して、レンズ囲いの中心部に位置決めされた透明の遠近調節アクチュエータを介して施される遠近調節の量を判定することができる。遠近調節アクチュエータは、コントローラに連結されて、対の電極にわたって電圧を加えることにより、電気的に操作される。例えば、遠近調節アクチュエータを、電極にわたって印加された電気バイアス信号に応答してその屈折率を変化させるLCセルにより実施してもよい。他の実施形態において、遠近調節アクチュエータを、印加された電界または変形可能なレンズの形状を変化させる電気機械構造の存在下で屈折率を変化させる、電気光学材料などの他のタイプの電気活性材料を使用して実施してもよい。遠近調節アクチュエータを実施するために使用可能な他の構造例としては、エレクトロウェッティング光学素子、マイクロ電気機械システムその他が挙げられる。
【0014】
[0022] 本明細書で、デバイスの光学強度(例えば、特定の焦点長さに対応する)を容量式注視追跡機構に基づいて変化させることのできる、LC層を含む遠近調節アクチュエータを備える可撓性の眼球装着可能な遠近調節レンズデバイスの文脈において、様々な実施形態の特徴について説明する。しかしながら、加えてまたはあるいは、ユーザの眼の中または上で動作可能な様々な他の遠近調節光学デバイスのいずれかに当てはまるように、そのような説明を拡張してもよい。例えば、ある実施形態は、眼球装着可能デバイスおよび/または遠近調節アクチュエータがデバイスの光学強度を変化させる特定の機構(例えば、LC要素その他)の特定の可撓性/剛性に関して限定されない。さらに、一部の実施形態は、容量式注視追跡に限定されず、他の技法の光検出器注視追跡を使用して、光学強度の変化が生じるかどうかを判定してもよい。
【0015】
[0023] 図1は、本開示の実施形態による、自動遠近調節の注視追跡を含む眼球装着可能デバイス(EMD)100と、外部リーダ105との機能ブロック図である。EMD100の露出部分は、眼の角膜表面に接触装着されるように形成された可撓性レンズ囲い110である。基板115が可撓性レンズ囲い110内に埋め込まれ、または可撓性レンズ囲い110に囲まれて、電源120、コントローラ125、センサシステム135、アンテナ140、および様々な相互接続部145、150のための装着面を提供する。遠近調節アクチュエータ130が、可撓性レンズ囲い110内に埋め込まれ、コントローラ125に連結されて、EMD100の着用者に自動遠近調節をもたらす。電源120の例示した実施形態は、エネルギーハーベスティングアンテナ155、充電回路160、およびバッテリ165を備える。コントローラ125の例示した実施形態は、制御論理170、遠近調節論理175、および通信論理180を備える。リーダ105の例示した実施形態は、プロセッサ182、アンテナ184、およびメモリ186を備える。
【0016】
[0024] コントローラ125は、センサシステム135からのフィードバック制御信号を受信するように連結され、遠近調節アクチュエータ130を動作させるようにさらに連結される。電源120は、動作電圧をコントローラ125および/または遠近調節アクチュエータ130に供給する。アンテナ140は、コントローラ125により動作されて、EMD100へおよび/またはEMD100から情報を通信する。一実施形態において、アンテナ140、コントローラ125、電源120、およびセンサシステム135はすべて、埋め込まれた基板115上に位置する。一実施形態において、遠近調節アクチュエータ130は、可撓性レンズ囲い110の中心領域内に埋め込まれるが、基板115上には配置されない。EMD100は、電子機器を備え、眼に接触装着されるように構成されるため、本明細書では、眼科用電子機器プラットフォーム、コンタクトレンズ、またはスマートコンタクトレンズとも呼ばれる。
【0017】
[0025] 接触装着を容易にするために、可撓性レンズ囲い110は、(例えば、角膜表面を覆う涙液膜による毛管力によって)湿った角膜表面に付着する(「装着される」)ように構成された凹面を有してもよい。加えてまたはあるいは、凹状湾曲による角膜表面と可撓性レンズ囲い110との間の真空力によって、EMD100を付着させてもよい。凹面により眼に装着されるが、可撓性レンズ囲い110の外向き面は、EMD100が眼に装着されている間の眼瞼の動きに干渉しないように形成された凸状湾曲を有してもよい。例えば、可撓性レンズ囲い110は、コンタクトレンズと同様に形成された略透明な湾曲した円板であってもよい。
【0018】
[0026] 可撓性レンズ囲い110は、角膜表面との直接の接触を伴うコンタクトレンズまたは他の眼科用途で使用するために採用されるものなどの1つまたは複数の生体適合性材料を含んでよい。可撓性レンズ囲い110は、任意選択により、そのような生体適合性材料から部分的に形成されてもよく、または、そのような生体適合性材料による外側コーティングを含んでもよい。可撓性レンズ囲い110は、ヒドロゲルなどの、角膜表面を湿らせるように構成された材料を含んでもよい。可撓性レンズ囲い110は、着用者の快適性を高めるための変形可能(「軟質」)材料である。一部の例では、可撓性レンズ囲い110が、コンタクトレンズによって提供できるような所定の視力矯正屈折力をもたらすように形成されてもよい。可撓性レンズ囲い110は、ポリマー材料、ヒドロゲル、PMMA、シリコーンベースのポリマー(例えば、フルオロシリコンアクリレート)その他を含む様々な材料から作製することができる。
【0019】
[0027] 基板115は、センサシステム135、コントローラ125、電源120、およびアンテナ140を装着するのに適した1つまたは複数の面を含む。基板115は、チップベース回路のための実装プラットフォーム(例えば、フリップチップ実装による)として、および/または導電性材料(例えば、金、白金、パラジウム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金属、他の導電性材料、これらの組合せなど)をパターニングして電極、相互接続部、アンテナなどを作るためのプラットフォームとして採用することができる。一部の実施形態において、略透明な導電性材料(例えば、インジウムスズ酸化物、または以下で説明する可撓性導電性材料)を基板115上にパターニングして、回路、電極などを形成してもよい。例えば、金または別の導電性材料のパターンを基板115上に堆積させることによって、アンテナ140を形成してもよい。同様に、導電性材料の適切なパターンを基板115上に堆積させることによって、相互接続部145、150を形成してもよい。レジスト、マスク、および堆積技法の組合せを採用して、材料を基板115上にパターニングしてもよい。基板115は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、または囲い材料110内の回路および/または電子機器を構造的に支持するのに十分な別の材料などの比較的剛性の材料であってよい。あるいは、EMD100は、単一の基板ではなく、接続されない一群の基板を有して配置されてもよい。例えば、コントローラ125および電源120が1つの基板に実装され、アンテナ140およびセンサシステム135が別の基板に実装され、2つの基板が相互接続部を介して電気的に接続されていてもよい。
【0020】
[0028] ある実施形態はこれに限定されないが、基板115は、埋め込まれた電子機器部品の実装プラットフォームを提供するのに十分な半径方向幅寸法を有する平坦なリングとして形成されてもよい。基板115の厚さは、EMD100の外形に悪影響を及ぼすことなく、基板を可撓性レンズ囲い110に埋め込むことができるように十分に薄いものであってよい。基板115の厚さは、その上に実装される電子機器を支持するのに適した構造的安定性をもたらすのに十分に厚いものであってよい。例えば、基板115は、直径約10ミリメートル、半径方向幅約1ミリメートル(例えば、外径が内径よりも1ミリメートル大きい)、および厚さ約50マイクロメートルのリングとして形成されてもよい。基板115は、任意選択により、EMD100の眼球装着面(例えば、凸面)の湾曲に整合されてもよい。例えば、基板115は、内径および外径を画成する2つの円形セグメント間の仮想の円錐の表面に沿って形成されてもよい。そのような例では、仮想の円錐の表面に沿った基板115の表面が、その半径における眼球装着面の湾曲と略整合される傾斜面を画成する。
【0021】
[0029] 一部の実施形態において、電源120およびコントローラ125(および基板115)は、EMD100の中心から離れて位置決めされることにより、EMD110の中心を通る眼への光の透過との干渉を避けることができる。逆に、遠近調節アクチュエータ130は、中心に位置決めされて、囲い材料110の中心を通る眼への光の透過に対して光学遠近調節を施すことができる。例えば、EMD100が凹状に湾曲した円板として形成される場合、基板115を円板の周辺(例えば、外周近く)に沿って埋め込んでもよい。一部の実施形態において、センサシステム135は、眼瞼の重なりを検知するために周辺に分散された1つまたは複数の個々の静電容量センサを備える。
【0022】
[0030] 例示した実施形態において、電源120は、コントローラ125を含む様々な埋め込まれた電子機器に電力供給するためのバッテリ165を備える。バッテリ165は、充電回路160およびエネルギーハーベスティングアンテナ155により誘導的に充電されてよい。一実施形態において、アンテナ140とエネルギーハーベスティングアンテナ155とは独立したアンテナであり、エネルギーハーベスティングおよび通信というそれぞれの機能を果たす。別の実施形態において、エネルギーハーベスティングアンテナ155とアンテナ140とは同一の物理的アンテナであり、誘導充電およびリーダ105との無線通信というそれぞれの機能を時分割する。充電回路160は、バッテリ165を充電するために取り込まれたエネルギーを調整するための、またはバッテリ165なしでコントローラ125に直接電力供給するための整流器/調整器を備えてもよい。充電回路160はまた、1つまたは複数のエネルギー貯蔵デバイスを含んで、エネルギーハーベスティングアンテナ155内の高周波数変動を軽減してもよい。例えば、1つまたは複数のエネルギー貯蔵デバイス(例えば、キャパシタ、インダクタなど)を、ローパスフィルタとして機能するように接続してもよい。
【0023】
[0031] コントローラ125は、他の埋め込まれた部品の動作を演出する論理を含む。制御論理170は、論理ユーザインタフェース、電力制御機能などを設けることを含む、EMD100の全般的な動作を制御する。遠近調節論理175は、センサシステム135からのフィードバック信号をモニタし、ユーザの現在の注視方向または焦点距離を判定し、対応して遠近調節アクチュエータ130を操作して適切な遠近調節をもたらすための論理を含む。自動遠近調節は、注視追跡からのフィードバックに基づいてリアルタイムで実施してもよく、ユーザ制御により特定の遠近調節法(例えば、読書のための近視野調節、通常の活動のための遠視野調節など)を選択できるようにしてもよい。通信論理180は、アンテナ140を介してリーダ105と無線通信するための通信プロトコルを提供する。一実施形態において、通信論理180は、リーダ105から出力された電磁場171の存在下にあるときに、アンテナ140を介して後方散乱通信を行う。一実施形態において、通信論理180は、後方散乱無線通信のためにアンテナ140のインピーダンスを変調するスマート無線自動識別(「RFID」)タグとして動作する。コントローラ125の様々な論理モジュールを、汎用マイクロプロセッサで実行されるソフトウェア/ファームウェア、ハードウェア(例えば、特定用途向け集積回路)、または両方の組合せで実施してもよい。
【0024】
[0032] EMD100は、様々な他の埋め込まれた電子機器および論理モジュールを含んでもよい。例えば、ユーザに視覚フィードバックを与えるために、光源または画素配列が含まれていてもよい。位置、回転、方向、または加速度フィードバック情報をコントローラ125に与えるために、加速度計またはジャイロスコープが含まれていてもよい。
【0025】
[0033] 図2Aおよび図2Bは、本開示の実施形態によるEMD200の2つの図である。図2AはEMD200の上面図、図2BはEMD200の斜視図である。EMD200は、図1に例示したEMD100の1つの可能な実施である。EMD200の例示した実施形態は、可撓性レンズ囲い210、リング基板215、電源220、コントローラ225、遠近調節アクチュエータ230、容量式センサシステム235、およびアンテナ240を備える。図2Aおよび図2Bは、必ずしも縮尺通りに描かれてはおらず、EMD200の例の配置を記載する際の説明の目的のみで例示されていることを理解されたい。
【0026】
[0034] EMD200の可撓性レンズ囲い210は、湾曲した円板として形成される。可撓性レンズ囲い210には、眼の角膜表面にフィットするのに適した凹面211を有する一側が形成される。円板の反対側は、EMD200が眼に装着されている間に眼瞼の動きに干渉しない凸面212を有する。例示した実施形態において、円形または長円形の外側縁部213が凹面211と凸面212とを接続する。
【0027】
[0035] EMD200は、直径約1センチメートル、厚さ約0.1〜約0.5ミリメートルなどの、視力矯正および/または美容コンタクトレンズと同様の寸法を有してよい。しかしながら、直径および厚さの値は、説明の目的のみで提示されたものである。一部の実施形態において、EMD200の寸法は、着用者の眼の角膜表面のサイズおよび/または形状に従って選択される。可撓性レンズ囲い210には、湾曲形状が様々な方法で形成されてよい。例えば、熱成形、射出成形、スピンキャスティングなどの、視力矯正コンタクトレンズを形成するために採用されるものと同様の技法を採用して、可撓性レンズ囲い210を形成してもよい。
【0028】
[0036] リング基板215が可撓性レンズ囲い210内に埋め込まれる。リング基板215は、遠近調節アクチュエータ230が位置決めされる中心領域から離れて、可撓性レンズ囲い210の外周に沿って位置するように埋め込まれてもよい。例示した実施形態において、リング基板215は遠近調節アクチュエータ230を取り囲む。リング基板215は視野に干渉しない。これは、リング基板215が、眼に近すぎて焦点が合わず、入射光が眼の光感知部分に透過される中心領域から離れて位置決めされるからである。一部の実施形態において、リング基板215を、任意選択により透明材料から形成して、視覚への影響をさらに軽減してもよい。リング基板215を、平坦な円形リング(例えば、中心孔を有する円板)として形成してもよい。リング基板215の平坦面(例えば、半径方向幅に沿った)は、電子機器を実装し、かつ導電性材料をパターニングして電極、アンテナ、および/または相互接続部を形成するためのプラットフォームである。
【0029】
[0037] 容量式センサシステム235が、EMD200の周りに分散されて、容量式タッチスクリーンと同様の方法で眼瞼の重なりを検知する。眼瞼の重なりの量および位置をモニタすることによって、容量式センサシステム235からのフィードバック信号をコントローラ225により測定して、おおよその注視方向および/または焦点距離を判定することができる。例示した実施形態において、容量式センサシステム235が、一連の平行に連結された個々の容量式要素によって形成される。他の実施を使用してもよい。
【0030】
[0038] 遠近調節アクチュエータ230は、可撓性レンズ囲い210内で中心に位置決めされて、ユーザの視野中心においてEMD200の屈折力に影響を与える。ピンチオフ領域232を遠近調節アクチュエータ230とリング基板215との間に配置して、リング基板215の少なくとも一部の回路からの電気的絶縁をもたらしてもよい。様々な実施形態において、遠近調節アクチュエータ230は、コントローラ225により操作される可撓性の導電性電極の影響下で屈折率を変化させる要素を備える。屈折率を変化させることにより、EMD200の湾曲面の正味屈折力が変化して、制御可能な遠近調節を施す。遠近調節アクチュエータ230を、様々な異なる光電子工学要素を使用して実施してもよい。例えば、遠近調節アクチュエータ230を、可撓性レンズ囲い210の中心に配置された液晶の層(例えば、LCセル)を使用して実施してもよい。他の実施形態において、遠近調節アクチュエータ230を、印加された電界の存在下で屈折率を変化させる電気光学材料などの他のタイプの電気活性光学材料を使用して実施してもよい。遠近調節アクチュエータ230は、囲い材料210(例えば、LCセル)、または制御可能な屈折率を有するバルク材内に埋め込まれた別個のデバイスであってもよい。さらに別の実施形態において、遠近調節アクチュエータ230を、電気信号の影響下で形状を変化させる変形可能なレンズ構造を使用して実施してもよい。したがって、コントローラ225から遠近調節アクチュエータ230まで延びる1つまたは複数の電極を介して電気信号を加えることにより、EMD200の屈折力がコントローラ225によって制御される。
【0031】
[0039] 図3は、本開示の実施形態による、EMD300を示す分解斜視図である。EMD300はEMD100または200の1つの可能な実施であるが、分解斜視図は様々な部品のさらなる詳細を示す。EMD300の例示した実施形態は、前層305および後層310を含む可撓性レンズ囲い、可撓性の前導電性電極(ANT)315、可撓性の後導電性電極(POST)320、液晶層325、リング基板330、電源335、コントローラ回路340、前接触パッド345、ならびに後接触パッド350(図3では見えない)を備える。ANT315、LC層325、およびPOST320はまとめて、コントローラ回路340の影響下で操作される遠近調節アクチュエータを形成する。ANT315の例示した実施形態は接続タブ360を備え、POST320の例示した実施形態は接続タブ365を備える。
【0032】
[0040] ANT315およびPOST320は、電極にわたる電圧の印加によりLC層325を電気的に操作する透明電極である。ANT315およびPOST320は、折畳みおよび曲げを含む周期的な機械的応力の存在下でも導電性を実質的に維持する可撓性導体である。ANT315およびPOST320は、前層305および後層310のそれぞれの湾曲面上で硬化され、したがってこの湾曲面に一致する液体導体材料から形成される。ANT315およびPOST320は、様々な技法を使用して、前層305および後層310のそれぞれに施すことができる。例えば、導電性エポキシ、導電性ポリマー、導電性シリコン、蒸着金属または他の導電性材料を含む液体導体材料を、スプレーコーティング、型押し、シャドーマスク、またはその他の方法で配置して、電極構造を形成し、遠近調節アクチュエータを動作させてもよい。一実施形態において、液体導体材料は、一致する凹ステンシルを使用して前層305の内側凹面にスプレーコーティングされ、かつ一致する凸ステンシルを使用して後層310の内側凸面にスプレーコーティングされる。他の実施形態において、ステンシルを使用することなくスプレーコーティングを能動的に制御してもよく、または仮マスクを施した後にスプレーコーティングしてもよい。さらに他の実施形態において、一致する形状の表面を有する押し型上に液体導体材料がコーティングされ、その後、押し型が前層305または後層310に押し付けられて、液体導体材料を移す。他の塗布技法を使用して、ANT315およびPOST320を前層305および後層310のそれぞれに形成し位置決めしてもよい。一実施形態において、ANT315およびPOST320は、所望の総シート抵抗を得るように形成される。目標シート抵抗は、100オーム/スクエア〜2000スクエア(例えば、190オーム/スクエア)であってよい。勿論、この範囲外の他の目標シート抵抗を使用してもよい。
【0033】
[0041] LC層325は、EMD300の中心領域で前層305と後層310との間に配置されてよい。LC層325の形成は、スプレー、スピニング、マスキング、型押し、ステンシル刷り、および/または従来の作製技法から適応される他の動作を含んでよい。LC層325は、例えば、ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸塩)(もしくはPEDOT:PSS)または可変の屈折率特徴に備えた様々な他の液晶のいずれかを含んでよい。実施形態において、LC層325は、リング基板325の少なくとも一部の回路から電気的に絶縁される。加えてまたはあるいは、LC層325は、EMD300の中心領域でANT315とPOST320との間に配置されてもよい。
【0034】
[0042] 図4は、本開示の実施形態による、EMD、例えば眼球装着可能デバイス100、200、または300の1つを作製するためのプロセス400を示すフローチャートである。プロセスブロックの一部または全部がプロセス400に現れる順序は、限定するものと考えるべきではない。むしろ、本開示の恩恵を有する当業者は、プロセスブロックのいくつかを様々な順序(図示せず)で、またはさらには並列して実行してもよいことを理解するであろう。本明細書で、プロセス400の特徴をEMD300の作製に関して説明する。しかしながら、加えてまたはあるいは、本明細書に記載の特徴を有する様々な他のEMDのいずれかの作成に当てはまるように、そのような説明を拡張してもよい。
【0035】
[0043] プロセスブロック405、410では、前層305および後層310がレンズ囲いの別々の層として形成される。前層305および後層310を、可撓性の透明材料でスプレーコーティングまたは射出された金型を使用して形成してもよい。可撓性の透明材料は、ポリマー材料、ヒドロゲル、PMMA、シリコーンベースのポリマー(例えば、フルオロシリコンアクリレート)その他のいずれかを含んでよい。
【0036】
[0044] 前層305および/または後層310を処理して、ANT315およびPOST320への結合を向上させるために反応面を形成してもよいが、ある実施形態はこれに関して限定されない。例えば、前層305および後層310の内面を化学的に反応させる高電離環境で、前層305および後層310をプラズマ処理してもよい。
【0037】
[0045] プロセスブロック415では、ANT315およびPOST320を形成する導体材料が、前層305の凹面に堆積され、後層310の凸面に堆積される。一実施形態において、液体導体材料の堆積は、凹面および凸面に一致するステンシル上にスプレーコーティングされてもよい。さらに別の実施形態において、前層305および後層310のそれぞれの凹面および凸面に一致する湾曲面を有する押し型に、液体導電性材料を施す。その後、コーティングされた押し型を前層305および後層310の内面に押し付けて、インクパターンをその内面に移す。液体導体材料を施した後、例えば熱によりこれを硬化させ、および/または焼きなますことができる。
【0038】
[0046] 導体材料は、導電性エポキシ(例えば、様々な導電性シリコーンのいずれか)、蒸着金属(金、アルミニウム)、導電性粒子(例えば、ナノチューブまたはナノワイヤ)のコロイド溶液などを含んでよい。導体材料の堆積は、限定されないが、1つまたは複数の金ワイヤ、銀ナノワイヤ、インジウムスズ酸化物薄膜などを含む様々な導電性構造のいずれかを形成することを含んでよい。一部の実施形態において、様々な溶媒(例えば、アルコール)、界面活性剤、または希釈剤を液体導体材料に添加して、前層305および後層310のそれぞれへのANT315およびPOST320の均一なコーティングおよび付着を向上させてもよい。
【0039】
[0047] 次に、電源335およびコントローラ回路340を備えるリング基板330が、前層305と後層310との間に位置決めされ、これは、例えば、後層310の凸面上への基板の位置決め(プロセスブロック420)を含む。420での位置決め前または位置決め中に、ANT315およびPOST320の一方または両方へのリング基板330の電気的結合に備えて、導電性接着剤をリング基板330上の接触パッドに施してもよい。420での位置決めは、例えば、接続タブ360、365が互いに半径方向にずれる場合に、接続タブ360、365の各々をリング基板330のそれぞれの接触パッドに整合させることを含んでよい。
【0040】
[0048] プロセスブロック425では、遠近調節アクチュエータ構造が前層と後層との間に配置される。例えば、液晶材料を前層305の凹面の中心領域の周りに分配してもよく(例えば、中心領域の上に分配することを含む)、ANT315を覆う。一実施形態において、LC材料は、LC層325がANT315またはPOST320よりも大きい部位を覆うように、より大きい部位にわたって分配される。
【0041】
[0049] プロセスブロック430では、レンズ囲いの2つの半部(前層305および後層310)が、押し合わされ封止される。例えば、ある量の囲い材料を、LC材料の周囲に沿った領域で前層305と後層310との間に添加してもよい。前層と後層との間でこの材料が硬化することにより、ピンチオフ領域をLC材料の周りに形成することができる。一実施形態において、接合した前層305および後層310の下縁部または縁により多くの囲い材料を添加して、封止を形成してもよい。この追加の囲い材料の硬化により、前層305と後層310との間の周辺領域で基板を封止することができる。最後に、眼球装着可能デバイスまたはスマートコンタクトレンズは、販売用に、封止されたレンズ溶液の容器内に包装される(プロセスブロック435)。
【0042】
[0050] 方法400について示す動作の特定の順序は、一部の実施形態に限定されないことを理解されたい。限定ではなく例示として、異なる実施形態により、遠近調節アクチュエータ、電極構造および/またはリング基板の一部または全部を、一方または両方のレンズ囲い層とのそのような部品の組立前に、別々の部品として様々に作製し、互いに組み合わせてもよい。
【0043】
[0051] 図5は、実施形態による、眼球装着可能デバイスを作製するための加工の横断面詳細図である。図5に示す作製プロセスは、例えば、動作400の特徴の一部または全部を含んでよい。詳細図500は、金型502上での後層504(例えば、層310)の形成を示し、詳細図510は、金型512上での前層514(例えば、層305)の形成を示す。
【0044】
[0052] 層504、510の一方または各々は、シリコーン、シリコーンヒドロゲル、ヒドロゲル、剛性のガス透過性(RGP)材料、剛性プラスチック(例えば、ポリカーボネート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、重合アクリレートのうちの1つから構成されてもよい。一部の実施形態において、層504、510は可撓性であってよいが、ある実施形態はこれに関して限定されない。例示的な一実施形態において、層504、510の一方または各々は、直径11〜14mmのサイズである。あるいはまたは加えて、層504、510の一方または各々は、厚さ20ミクロン〜150ミクロン(例えば、20ミクロン〜100ミクロン)である。しかしながら、そのような寸法は、異なる実施形態において、実施の特定の詳細に従って変化してもよい。
【0045】
[0053] 層504、514の形成は、例えば405、410での形成の特徴の一部または全部を含んでもよい。実施形態において、例えば、深さ0.1〜50μmの凹部(図示せず)が、前層514の凹側534、または後層504の凸側524の凹部に形成されて、遠近調節アクチュエータ要素のLC層の形成を助ける。そのような凹部の形成は、2つの金型間で、層504、514の一方の囲い材料を押すことおよび硬化させることを含んでよい。
【0046】
[0054] 詳細図520は、後層504の凸面524に堆積された可撓性電極522(例えば、電極320)を示し、詳細図530は、後層514の凹面534に堆積された可撓性電極532(例えば、電極315)を示す。電極522、532の一方または各々の形成は、導電性エポキシ(例えば、導電性シリコーン)、金属(例えば、金、アルミニウム、銀など)または他の導電性材料を、スプレー、型押し、シャドーマスク、蒸着、または他の方法で堆積させることを含んでよい。これにより得られる電極522、532は、金属ワイヤ、ナノワイヤ、インジウムスズ酸化物薄膜、または遠近調節アクチュエータを動作させるための他のそのような導電性構造を含んでよい。実施形態において、可撓性電極522、532の一方または各々は、厚さ10nm〜10ミクロン、直径2mm〜3mmである。しかしながら、そのような厚さは、実施の特定の詳細に従って変化してもよい。一部の実施形態において、可撓性電極は、主本体部分と主本体部分から延びるタブ部分(図示せず)とを有し、主本体部分は、遠近調節アクチュエータのLC層と整合され、タブ部分は、内部および/または上に集積回路が配置された基板からLC層を分離するピンチオフ領域を通って延びることになっている。
【0047】
[0055] 詳細図540は、例えば例示的な制御回路542およびアンテナ544を含むそのような基板(例えば、リング基板330)を後層504上に置く様子を示す。別の実施形態において、代わりに、基板を最初に表面534上に置いてもよい。詳細図550は、前層514の凹側へのLC層554の堆積を示す。LC層554の堆積は、従来のシャドーマスク、型押しまたは他の作製技法から適応された動作を含んでもよい。実施形態において、遠近調節アクチュエータ構造(例えば、LC層)は、ピンチオフ領域と電極構造との間の1つまたは複数の導電性経路を妨害または限定する少なくとも一部の絶縁をもたらす絶縁層を含み、またはこれに隣接する。例えば、遠近調節アクチュエータの少なくとも部分的に誘電の配向層(図示せず)を、LC層554の反対側に配置してもよい。LC層554は、厚さ0.1μm〜50μmおよび/または直径4mm〜10mmであってよい。しかしながら、そのような寸法は例示的なものに過ぎず、ある実施形態に限定するものではない。
【0048】
[0056] 詳細図560は、互いに整合させ接触させた、詳細図540、550のそれぞれの構造を示す。一部の実施形態において、表面524、534の一方または両方を、例えばプラズマにより前処理して、2つの間の付着を向上させてもよい。その後、層504、514を封止して可撓性囲いを形成し、遠近調節アクチュエータ562を可撓性囲いの中心領域内に位置させる。中心領域の周囲を、層504、514が互いに隣接する(例えば、物理的に接触する)ピンチオフ領域564により少なくとも部分的に画成してもよい。
【0049】
[0057] 例えば、追加量のコンタクトレンズ材料、例えば、シリコーンエラストマー、シリコーンヒドロゲルなどを、LC層554の周りに配置して、層504、514の付着を助けてもよい。そのような追加の材料を(例えば、熱または紫外光により)硬化させることによって、ピンチオフ領域564が周りに配置される中心領域内に遠近調節アクチュエータを封止することができる。一部の実施形態において、コンタクトレンズ材料を層504、514の一方の周りの縁部領域に施してもよく、この追加の材料も硬化させて、ピンチオフ領域564と層504、514のそれぞれの縁部との間のレンズ囲いの領域でリング基板を封止する。
【0050】
[0058] 電極522、532を、ピンチオフ領域564で互いに分離させてもよい。例えば、例示的な一実施形態において、導電層522、532は直径6mmであり、ピンチオフ領域は直径7mmであり、ピンチオフ領域564が周りに形成される中心領域で、LC層554が導電性層522、532を分離する。
【0051】
[0059] 図6は、それぞれの実施形態による、各々の眼球装着可能デバイスの横断面詳細図600、650である。例えば、詳細図600は、前封入層620により封止されて可撓性レンズ囲いを形成する後封入層610を示す。可撓性レンズ囲いの中心領域は、中心領域の周囲の周りで延びるピンチオフ領域625により少なくとも部分的に画成される。ピンチオフ領域625は、遠近調節アクチュエータ615を中心領域内に保持するためのシールとして機能することができる。一部の実施形態において、周辺領域630がピンチオフ領域625の周辺に位置し、例えば、周辺領域630はピンチオフ領域625から封入層610、620のそれぞれの周囲縁部へ延びる。周辺領域630は、配置され硬化されて封入層610、620を互いに封止するのを助けるコンタクトレンズ材料を含んでよい。集積回路が上に配置された基板635を、周辺領域630内で封入層610、620の間に配置してもよい。
【0052】
[0060] 詳細図600では、凹部が前封入層620の凹面に形成されて、作製加工(例えば、方法400による)中に遠近調節アクチュエータ615の位置決めを助ける。別の実施形態において、加えてまたはあるいは、封入層を変形させてピンチオフ領域の形成を助けてもよい。限定ではなく例示として、詳細図650は、前封入層670により封止されて可撓性レンズ囲いを形成する後封入層660を示し、遠近調節アクチュエータが、眼球装着可能デバイスの中心領域内で封入層660、670の間に配置される。封入層660、670のそれぞれの部分が互いに隣接して、中心領域の周囲を少なくとも部分的に画成するピンチオフ領域680を形成してもよい。領域680などのピンチオフ領域をレンズ材料の層により少なくとも部分的に形成してもよく、この層の厚さは、可撓性導体からEMDの外面へ延びる。例えば、それぞれの可撓性導体からEMDの異なるそれぞれの外側へ各々延びるレンズ材料の前層および後層によって、ピンチオフ領域を形成することができる。レンズ材料のそのような層の外面は、ピンチオフ領域上の部位で変形してもよい。詳細図650に例示したように、ピンチオフ領域680は、層670などの前封入層の他の凹面(例えば、後面)の平坦部分または凸部分によって少なくとも部分的に形成されてもよい。
【0053】
[0061] ピンチオフ領域680は、可撓性レンズ囲いの周辺領域で封入層660、670の間に配置された回路685(例えば、リング基板330の回路)から、LC層665を分離することができる。詳細図650に示すように、封入層660、670により形成された中心領域は、ピンチオフ領域680側へ延びる方向にテーパ状になっていてよい。あるいはまたは加えて、集積回路685を含む周辺領域が、ピンチオフ領域680側へ延びる方向にテーパ状になっていてもよい。
【0054】
[0062] 遠近調節アクチュエータは、遠近調節アクチュエータ構造(例えば、液晶層)のそれぞれの部分と可撓性導体との間に配置された絶縁層を含んでよく、またはこれに隣接してもよい。例えば、遠近調節アクチュエータは、配向層674a、674bおよびLC層665を含んでよい。配向層674a、674bの一方または各々は、厚さ10nm〜10ミクロンであってよいが、ある実施形態はこれに関して限定されない。可撓性の透明電極672a、672b(例えば、電極315、320)は、遠近調節アクチュエータの反対側に配置されてもよく、例えば、配向層674a、674bが少なくともいくらかの絶縁をもたらして、ピンチオフ領域680と透明電極672a、672bとの間の1つまたは複数の導電性経路を妨害する。回路685の制御下で、電極672a、672bは、遠近調節アクチュエータにわたって電圧差を印加することがある。配向層672a、672bは、ポリイミドまたは他の適切な材料を含んで、液晶分子の配向を変化させ、LC層665の屈折率を変化させてもよい。一実施形態において、LC層665に電力供給されない状態によって、遠くを見ることが可能になる。例えば、液晶層にわたって印加される非ゼロ電圧により、眼球装着可能デバイスの焦点距離が短くなる(そのような電圧が印加されない眼球装着可能デバイスの焦点距離と比較して)。
【0055】
[0063] 図7A図7Cは、実施形態による、眼球装着可能デバイス700内の可撓性の前導電性電極(ANT)705および可撓性の後導電性電極(POST)732の向きの例を示す。図7Aは、前層705の凹面に形成されたANT705を示し、図7Bは後層710の凸面に形成されたPOST732を示し、図7Cは、完全に組み立てられた眼球装着可能デバイス700の平面図である。図8は、実施形態による、ANT715の接続タブ760とPOST732の接続タブ765との電気接続部を形成するリング基板730の一部の外形図である。
【0056】
[0064] 例示した実施形態において、ANT715は、リング基板730の前側に配置された前接触パッド745に電気的に接続する接続タブ760を備える。これに対応して、POST732は、リング基板730の後側に配置された後接触パッド750に電気的に接続する接続タブ765を備える。図8は、導電性接着剤785を使用して接続タブ760、765と接触パッド745、750のそれぞれとの電気的な接続を向上させる様子を示す。銀添加エポキシ、シリコン、またはポリウレタンその他などの様々な異なる材料を使用して、導電性接着剤785を実施してもよい。導電性接着剤785は、眼球装着可能デバイス700の様々な構成部品の異なる可撓性の特徴に関わらずスマートコンタクトレンズが曲げられ、または折り畳まれるときに電気接続を維持する、可撓性かつ導電性の付着を提供する。
【0057】
[0065] 例示した実施形態において、接続タブ760、765は互いに対して回転してずれることにより、接触パッド745、765の一方または両方の貫通基板ビアのためのスペースを作る。例えば、例示した実施形態において、電源735およびコントローラ回路740は、リング基板730の前側に配置されるため、後接触パッド750は、貫通基板ビアを使用してコントローラ回路740に接続される。
【0058】
[0066] 図7Cは、ANT715とPOST732との間のLC層の輪郭712をさらに示す。LC層は、ANT715とPOST732とを互いに分離することができ、コントローラ回路740によってこれらの電極にわたって印加された電圧により作動され得る。例示した実施形態において、LC層は、中心領域のより大きい部分にわたって延びて、確実にANT715とPOST732とが互いに短絡しないようにする。一実施形態において、透明絶縁層(例えば、ポリイミド)を各々さらに施して、ANT715およびPOST732のそれぞれからLC層を分離してもよく、他の実施形態において、ANT715およびPOST732がLC層との直接接触を形成してもよい。LC層720と、ANT715およびPOST732の、例えば接続タブ760、765以外のそれぞれの部分が、リング基板730の内径内に含まれていてもよく、リング基板730の内縁部に接触していなくてもよい。一実施形態において、ANT715およびPOST732は、直径約6mm、LC層725は直径約7mm、中心領域を画成するリング基板730の内縁部は直径9mmである。勿論、他の寸法を実施してもよい。前層705および後層710は互いに接触して、輪郭712の直径とリング基板730の内縁部のより大きい直径との間にピンチオフ領域720を形成してもよい。ピンチオフ領域720は、リング基板730の少なくとも一部の回路に対する液晶層、ANT715および/またはPOST732の短絡を様々に防止することができる。
【0059】
[0067] 眼球装着可能デバイスにより自動遠近調節を提供するための技法および構成について本明細書で説明している。本明細書の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットでの動作のアルゴリズムおよび記号表現に関して提示される。これらのアルゴリズムの説明および表現は、コンピュータ技術分野の当業者によって他の当業者にそれらの作業の要旨を最も効果的に伝えるために使用される手段である。ここでは、アルゴリズムは、概して、所望の結果をもたらす工程の自己矛盾のない順番列であると考えられる。その工程は、物理量の物理的操作を必要とするものである。通常、必ずではないが、これらの量は、記憶、転送、結合、比較、および他の方法で操作可能な電気または磁気信号の形をとる。ビット、値、要素、記号、文字、用語、数字などとしてこれらの信号を参照することは、主に共通使用の理由で、時に好都合であることが判明している。
【0060】
[0068] しかしながら、これらおよび同様の用語のすべては、適切な物理量に関連付けられることになり、これらの量に適用される単に便宜的なラベルであることに留意されたい。本明細書の記述から明らかなように別段の具体的な記述のない限り、本明細書を通して、「処理」または「演算」または「計算」または「判定」または「表示」などの用語を使用した記述は、コンピュータシステム、あるいは、そのコンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子)量として表されたデータを操作し、コンピュータシステムメモリまたはレジスタまたは他のそのような情報記憶、送信または表示デバイス内の物理量として同様に表される他のデータに変形する同様の電子計算デバイスの動作およびプロセスを指すことが理解される。
【0061】
[0069] ある実施形態はまた、本明細書の動作を実行するための装置に関する。この装置は、要求される目的のために特に構築することができ、または、この装置は、そのコンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動され、もしくは再構成される汎用コンピュータを備え得る。そのようなコンピュータプログラムは、限定されないが、フロッピディスク、光ディスク、CD−ROM、および磁気−光ディスクを含む任意のタイプのディスク、読取り専用メモリ(ROM)、ダイナミックRAM(DRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気もしくは光カード、または、電子命令を記憶するのに適した、およびコンピュータシステムバスに結合された任意のタイプの媒体などのコンピュータ可読記憶媒体内に記憶され得る。
【0062】
[0070] 本明細書で提示されるアルゴリズムおよび表示は、特定のコンピュータまたは他の装置に本質的に関連しない。様々な汎用システムが、本明細書の教示に従ってプログラムと共に使用可能であり、あるいは、要求される方法工程を実行するためのより専門の装置を構築することが好都合であると証明され得る。様々なこれらのシステムの要求される構造が、本明細書の説明から明らかになろう。加えて、ある実施形態は、特定のプログラミング言語を参照して説明されない。様々なプログラミング言語が、本明細書に記載されるそのような実施形態の教示を実施するために使用され得ることが理解されよう。
【0063】
[0071] 本明細書の説明に加えて、開示された実施形態およびその実施に、それらの範囲を逸脱することなく様々な修正を行ってもよい。したがって、本明細書の説明および例は、例示的なものと解釈すべきであり、限定的な意味で解釈すべきではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲を参照することによってのみ判断すべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8