特許第6395864号(P6395864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395864
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】垂直全回転かま
(51)【国際特許分類】
   D05B 57/14 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   D05B57/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-569156(P2016-569156)
(86)(22)【出願日】2015年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2015050702
(87)【国際公開番号】WO2016113852
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156167
【氏名又は名称】株式会社廣瀬製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 潤
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭61−047114(JP,B2)
【文献】 特開平04−303495(JP,A)
【文献】 米国特許第3347193(US,A)
【文献】 特開平03−212287(JP,A)
【文献】 実開平06−055576(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫針が取付けられる針棒の軸線に垂直な回転軸線まわりに回転駆動される下軸に固定され、前記下軸の回転方向下流側に先端部を向けて先細状となる剣先部を有する外かまと、
前記外かまに、前記回転軸線まわりに回転自在に保持される内かまであって、
前記縫針が挿通する針落ち孔が形成される周壁部を有し、該周壁部の内周面における前記針落ち孔の前記回転方向下流側に、糸逃げ凹部が設けられる内かまと、
前記内かまに着脱自在に装着されるボビンケースと、
前記ボビンケースに収容され、下糸が巻回されるボビンと、を含むことを特徴とする垂直全回転かま。
【請求項2】
前記糸逃げ凹部は、前記針落ち孔から前記回転方向下流側になるにつれて浅くなることを特徴とする請求項1に記載の垂直全回転かま。
【請求項3】
前記糸逃げ凹部は、前記針落ち孔から前記回転方向下流側になるにつれて深くなることを特徴とする請求項1に記載の垂直全回転かま。
【請求項4】
前記ボビンケースは、前記ボビンケースが前記内かまに装着された状態で、前記糸逃げ凹部から前記回転方向下流側に延び、かつ前記ボビンケースと前記内かまとの間を前記内かまの開口端側から覆う外向き壁部を有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の垂直全回転かま。
【請求項5】
前記内かまは、前記ボビンケースが前記内かまに装着された状態で、前記糸逃げ凹部から前記回転方向下流側に延び、かつ前記ボビンケースと前記内かまとの間を前記内かまの開口端側から覆う内向き壁部を有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の垂直全回転かま。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに備えられる垂直全回転かまに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の垂直全回転かまは、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術の垂直全回転かまは、ミシンの下軸に固定され、剣先部を有する外かまと、外かまに収容された状態で保持される内かまと、内かまに着脱自在に装着されるボビンケースと、下糸が巻回され、ボビンケースに収容されるボビンとを備える。
【0003】
ミシンの縫製動作が開始されると、下軸が水平な回転軸線まわりに予め定める回転方向に回転駆動されるとともに、下軸の回転軸線に垂直な軸線に沿って縫針が前記回転軸線に近接および離反する動作を繰り返す。縫針に挿通された針糸は、剣先によって捕捉されて針糸ループを形成し、この針糸ループが内かまの表面に沿って移動しながら糸越しすることによって、針糸が内かまからミシンヘッド上の針板の針穴に引出されている下糸に係合して、被縫製物に縫目が形成される。
【0004】
内かまは、略円筒状の周壁部と、周壁部の軸線方向一端部に連なって一直径線方向に延びて底部を形成するブリッジ部と、ブリッジ部に周壁部の軸線方向他端部側に向けて立設されるスタッドと、周壁部の軸線方向他端部側に連なって半径方向外方に延びる外向きフランジと、周壁部の外周面から突出して周方向に延びる略C字状の軌条とを有する。
【0005】
周壁部には、縫針が挿通する針落ち孔が形成され、この針落ち孔が常に縫針の軸線上に配置されるように、内かまはミシンの機体に基端部が連絡された回り止め部材によって回り止めされ、外かまに追従して回転することが阻止されている。
【0006】
周壁部は、ボビンケースから引出された下糸の通過を許容するため、針落ち孔から外かまの回転方向下流側へ約90°の範囲にわたって薄肉状の薄肉部分を有する。このような薄肉部分を周壁部に設けることによって、ボビンケースの外周部と内かまの内周部との間に、下糸が円滑に通過することができる空隙を確保し、下糸の不所望な張力変化を防止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭61−14375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の従来技術では、ミシンの縫製動作が停止されると、縫針の往復変位動作および外かまの回転動作が停止するが、下糸は縫製中に縫目の進行に伴ってボビンケースから引出されるため、ボビンは下糸の払い出しによる引張り力によってボビンケース内で回転している。縫製動作が停止され、縫針の往復変位動作および外かまの回転動作が停止しても、ボビンは慣性によって回転し、下糸がボビンケースから排出される。ボビンケースから排出された下糸は、内かまの内周部とボビンケースの外周部との間の前述の狭い空隙内に弛んだ状態で滞留している。そのため、次の縫製動作が開始されると、空隙内の下糸が円滑に引出されずに絡みが生じ、糸切れおよび糸玉を生じてしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、糸切れおよび糸玉の発生を防止することができる垂直全回転かまを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、縫針が取付けられる針棒の軸線に垂直な回転軸線まわりに回転駆動される下軸に固定され、前記下軸の回転方向下流側に先端部を向けて先細状となる剣先部を有する外かまと、
前記外かまに、前記回転軸線まわりに回転自在に保持される内かまであって、
前記縫針が挿通する針落ち孔が形成される周壁部を有し、該周壁部の内周面における前記針落ち孔の前記回転方向下流側に、糸逃げ凹部が設けられる内かまと、
前記内かまに着脱自在に装着されるボビンケースと、
前記ボビンケースに収容され、下糸が巻回されるボビンと、を含むことを特徴とする垂直全回転かまである。
【0011】
また本発明において、前記糸逃げ凹部は、前記針落ち孔から前記回転方向下流側になるにつれて浅くなることが好ましい。
【0012】
また本発明において、前記糸逃げ凹部は、前記針落ち孔から前記回転方向下流側になるにつれて深くなることが好ましい。
【0013】
また本発明において、前記ボビンケースは、前記ボビンケースが前記内かまに装着された状態で、前記糸逃げ凹部から前記回転方向下流側に延び、かつ前記ボビンケースと前記内かまとの間を前記内かまの開口端側から覆う外向き壁部を有することが好ましい。
【0014】
また本発明において、前記内かまは、前記ボビンケースが前記内かまに装着された状態で、前記糸逃げ凹部から前記回転方向下流側に延び、かつ前記ボビンケースと前記内かまとの間を前記内かまの開口端側から覆う内向き壁部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内かまに、糸逃げ凹部が設けられるので、内かまの内周部とボビンケースの外周部との間に、糸逃げ凹部が設けられていない領域に比べて広い空隙を得ることができる。したがって、縫製動作が停止されたとき、ボビンの慣性による回転によって内かまの内周部とボビンケースの外周部との間に引出された下糸は、糸逃げ凹部とボビンケースの外周部との間の広い空隙内に弛緩した状態で滞留させることができる。これによって再び縫製動作が開始されたとき、空隙に滞留している下糸が絡まることなく円滑に引出され、糸切れおよび糸玉の発生を防止することができる。
【0016】
また本発明によれば、糸逃げ凹部は、回転方向下流側になるにつれて浅くなるので、糸逃げ凹部とボビンケースの外周部との間の空隙に入り込む下糸を、下流側底面部によって針落ち孔側へ案内し、下糸が空隙内に留まって高密度になってしまうことを防ぎ、より一層円滑に空隙から下糸を排出させることができる。
【0017】
また本発明によれば、糸逃げ凹部は、回転方向下流側になるにつれて深くなるので、糸逃げ凹部とボビンケースの外周部との間の空隙に入り込む下糸を、上流側底面部によって針落ち孔から離反する回転方向下流側へ案内し、下糸が空隙内に留まって高密度になってしまうことを防ぎ、より一層円滑に空隙から下糸を排出させることができる。
【0018】
また本発明によれば、ボビンケースに外向き壁部が設けられるので、下糸が緩んだ際に、糸逃げ凹部に収容しきれずに内かまとボビンケースとの間から下糸が突出することを阻止し、下糸が糸越しする上糸に干渉して、上糸の張力が不所望に変化してしまうことを防止することができる。
【0019】
また本発明によれば、内かまに内向き壁部が設けられるので、下糸が緩んだ際に、糸逃げ凹部に収容しきれずに内かまとボビンケースとの間から下糸が突出することを阻止し、下糸が糸越しする上糸に干渉して、上糸の張力が不所望に変化してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0021】
図1】本発明の一実施形態の垂直全回転かま1に備えられる内かま3を正面側から見た断面図である。
図2】垂直全回転かま1の正面図である。
図3】垂直全回転かま1を図2の切断面線II−IIから見た断面図である。
図4】内かま3の斜視図である。
図5】内かま3の左側面図である。
図6】内かま3の正面図である。
図7】内かま3を図6の切断面線VII−VIIから見た断面図である。
図8】内かま3の糸逃げ凹部18付近の拡大正面図である。
図9】本発明の他の実施形態の垂直全回転かま1aに備えられる内かま3a、ボビン4およびボビンケース5の一部を示す拡大斜視図である。
図10】垂直全回転かま1aに備えられる内かま3aの断面図である。
図11】内かま3aを図10の切断面線XI−XIから見た断面図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1bに備えられる内かま3bの斜視図である。
図13】内かま3bの断面図である。
図14】内かま3bを図12の切断面線XIV−XIVから見た断面図である。
図15】本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1cを示す正面図である。
図16】垂直全回転かま1cに備えられる内かま3cの断面図である。
図17】内かま3cを図16の切断面線XVII−XVIIから見た断面図である。
図18】本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1dを示す斜視図である。
図19図19は垂直全回転かま1dに備えられる内かま3dの断面図である。
図20図20は内かま3dを図19の切断面線XX−XXから見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参考にして本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の垂直全回転かま1に備えられる内かま3を正面側から見た断面図であり、図2は垂直全回転かま1の正面図であり、図3は垂直全回転かま1を図2の切断面線II−IIから見た断面図である。図4は内かま3の斜視図であり、図5は内かま3の左側面図である。図1は、内かま3を図5の切断面線I−Iから見た断面を示す。
【0023】
本実施形態の垂直全回転かま1は、外かま2と、内かま3と、ボビン4と、ボビンケース5とを含む。外かま2は、縫針6が着脱可能に同軸に取付けられ針棒7の軸線L1に垂直な回転軸線L2まわりに矢符A方向に回転駆動される下軸8に固定される。外かま2は、下軸8の回転方向A下流側に先端部を向けて先細状となる剣先部9を有する。
【0024】
外かま2には、内かま3が嵌め込まれ、凹部10に図示しない回り止め部材の凸部が嵌合して、内かま3の回転が阻止される。内かま3は、縫針6が挿通する針落ち孔11が形成される周壁部12と、周壁部12の軸線方向一端部に連なり、一直径線方向に延びるブリッジとも呼ばれる底部13と、底部13の中心に周壁部12の軸線方向他端部側に向かって垂直に立設されるスタッド14と、周壁部12の軸線方向他端部に連なり、半径方向外方に拡開して形成されるフランジ部15と、周壁部12にその外周面から突出して形成される軌条16とを有する。
【0025】
外かま2および内かま3は、たとえば浸炭焼入れ炭素網から成り、熱処理によって硬さ650HV以上とされる。またボビン4およびボビンケース5は、鋼鉄製またはステンレス鋼製である。
【0026】
フランジ部15には、前述の凹部10が形成され、凹部10の背後側、すなわち周壁部12の軸線方向一端部側に、前述の針落ち孔11が形成されるとともに、凹部10によって規定される、前述の図示しない回り止め部材の凸部が嵌合する嵌合空間に、回転方向A下流側から臨んで開放する下糸案内溝35が形成される。下糸案内溝35には、ボビンケース5の周壁部と、該周壁部に設けられる糸調子ばね33との間から引出された下糸21が挿通され、ミシンヘッドに設けられる針板の針穴36に張架される下糸21が、糸越し時に凹部10から糸抜けして離脱するまでの間に図示しない糸切りメスによる切断動作などによって緩んでも、下糸案内溝35内に嵌まり込んだ状態に保たれ、凹部10から外部へ飛び出すことが防がれる。
【0027】
このような内かま3において、周壁部12の針落ち孔11の回転方向A下流側の内周部17には、内周部17に内接する仮想円筒面よりも半径方向外方側、すなわち外周側に凹んだ糸逃げ凹部18が設けられる。この糸逃げ凹部18の詳細については、後述する。
【0028】
内かま3には、ボビンケース5が着脱自在に装着され、ボビンケース5には、ボビン糸とも呼ばれる下糸21が巻回されたボビン4が収容される。ボビンケース5には、縫針6の降下を許容するための第1の切欠き22が形成される。この切欠き22は、ボビンケース5の周壁部に軸線方向に延びて形成される。第2の切欠き23に連なる。
【0029】
内かま3の内周部17には、一対の突部24が設けられる。これらの突部24は、切欠き23を介して対向するボビンケース5の周壁部の内面に接触する。これによってボビンケース5を内かま3に装着する際に、ボビンケース5の内かま3への挿入を案内するとともに、ラッチ機構25とともにボビンケース5と内かま3との相互の角変位を阻止する。
【0030】
ラッチ機構25は、操作レバー26と係合片27とを含み、係合片27が内かま3に形成された係合凹所28に係合することによって、内かま3とボビンケース5との角変位が阻止されるとともに、内かま3に対してボビンケース5を係止して抜出しを防止し、かつボビン4の交換時には、ボビンケース5の内かま3への係止状態を解除して、ボビンケース5を内かま3から離脱させることができる。
【0031】
図6は内かま3の正面図であり、図7は内かま3を図6の切断面線VII−VIIから見た断面図であり、図8は内かま3の糸逃げ凹部18付近の拡大正面図である。糸逃げ凹部18は、針落ち孔11から回転方向A下流側になるにつれて仮想円筒面から離反する、半径方向外方に凸に湾曲して深くなる上流側底面部31と、上流側底面部31の回転方向A下流側の端部に連なり、針落ち孔11から回転方向A下流側になるにつれて仮想円筒面に近接する、半径方向外方に凸に湾曲して浅くなる下流側底面部32とを有する。
【0032】
これらの上流側底面部31と下流側底面部32とを含んで、半径R1の直円筒面の一部から成る底面部30を構成する。仮想円筒面の内径D1が22.8mm以上27.6mm以下の場合、半径R1は、2mm以上8mm以下に選ばれる。この場合、始点P1は、針棒7の軸線L1および下軸8の回転軸線L2を含む仮想一平面から回転方向A下流側に角度θ1の位置に設定される。また、上流側底面部31と下流側底面部32との変曲点である中点P2は、仮想一平面から回転方向A下流側に角度θ2の位置に設定される。さらに、終点P3は、仮想一平面から回転方向A下流側に角度θ3の位置に設定される。角度θ1は20°以上40°以下であり、角度θ2は、30°以上60°以下であり、角度θ3は40°以上70°以下である。
【0033】
このような糸逃げ凹部18が内かま3の内周部17に形成されるので、内かま3の内周部17とボビンケース5の外周部との間に前述の糸逃げ凹部18が設けられていない領域、すなわち角度θ3よりも回転方向A下流側の領域に比べて、広い空隙を得ることができる。したがって、縫製動作が停止されて針棒7の上下動および下軸8の回転が停止されたとき、ボビン4の慣性による回転によって内かま3の内周部17とボビンケース5の外周部との間に、糸調子ばね33とボビンケース5の外周部との間から引出された下糸21は、糸逃げ凹部18とボビンケース5の外周部との間の広い空隙内に弛緩した状態で入り込み、滞留させることができる。
【0034】
これによって、再び縫製動作が開始されたとき、広い空隙に滞留している下糸21が絡ませることなく円滑に引出され、糸切れおよび糸玉の発生を防ぐことができる。
【0035】
また、糸逃げ凹部18は、下流側底面部32を有するので、糸逃げ凹部18とボビンケース5の外周部との間の広い空隙に入り込む下糸21を、下流側底面部32によって針落ち孔11側、すなわち回転方向A上流側へ案内し、下糸21が広い空隙内に留まって高密度になってしまうことを防ぐことができる。これによって、広い空隙から下糸21をより一層円滑に排出させることができる。
【0036】
図9は本発明の他の実施形態の垂直全回転かま1aに備えられる内かま3a、ボビン4およびボビンケース5の一部を示す拡大斜視図であり、図10は垂直全回転かま1aに備えられる内かま3aの断面図であり、図11は内かま3aを図10の切断面線XI−XIから見た断面図である。図10は、内かま3aを図11の切断面線X−Xから見た断面を示す。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
本実施形態の垂直全回転かま1aは、外かま2と、内かま3aと、ボビン4と、ボビンケース5とを含んで構成される。内かま3aのフランジ部15には、凹部10によって規定される嵌合空間に回転方向A下流側から臨んで開放する下糸案内溝35と、下糸案内溝35に回転方向A下流側から臨んで開放する糸逃げ凹部18aとが形成される。
【0038】
糸逃げ凹部18aは、下糸案内溝35から回転方向A下流側に連なって、正面視で、針落ち孔11よりも回転方向A下流側に形成される。内かま3aにはこのような糸逃げ凹部18aが形成されるので、前述の実施形態と同様に、下糸21が糸越し時に凹部10から糸抜けして離脱するまでの間に、糸切りメスによる切断動作などによって緩んでも、下糸案内溝35から糸逃げ凹部18a内の空間へ退避することができ、下糸21が凹部10から突出することを抑制することができる。
【0039】
図12は本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1bに備えられる内かま3bの斜視図であり、図13は内かま3bの断面図であり、図14は内かま3bを図12の切断面線XIV−XIVから見た断面図である。図13は、内かま3bを図14の切断面線XIII−XIIIから見た断面を示す。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
本実施形態の垂直全回転かま1bは、外かま2と、内かま3bと、ボビン4と、ボビンケース5とを含んで構成される。内かま3bのフランジ部15には、凹部10によって規定される嵌合空間に回転方向A下流側から臨んで開放する下糸案内溝35と、下糸案内溝35に回転方向A下流側から臨んで開放する第1糸逃げ凹部18b1と、周壁部12の針落ち孔11の回転方向A下流側の内周部17に、該内周部内に内接する仮想円筒面よりも半径方向外方側に凹んだ第2糸逃げ凹部18b2とが形成される。本実施形態では、第1糸逃げ凹部18b1と、第2糸逃げ凹部18b2とを含んで、糸逃げ凹部を構成する。
【0041】
第1糸逃げ凹部18b1の回転方向A下流側の端部は、回転軸線L2方向の底部13で第2糸逃げ凹部18b2に連通し、下糸21が前述のように緩んだとき、下糸案内溝35内の下糸21は第1糸逃げ凹部18b1に入り込み、さらに大きな緩みが生じると、第2糸逃げ凹部18b2に入り込んで退避させ、凹部10から下糸21が突出することを防止することができる。
【0042】
図15は本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1cを示す正面図であり、図16は垂直全回転かま1cに備えられる内かま3cの断面図であり、図17は内かま3cを図16の切断面線XVII−XVIIから見た断面図である。図16は、内かま3cを図17の切断面線XVI−XVIから見た断面を示す。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
本実施形態の垂直全回転かま1cは、外かま2と、内かま3cと、ボビン4と、ボビンケース5cとを含んで構成される。内かま3cには、前述の図1図8に示される実施形態の内かま3に形成される糸逃げ凹部18と同様な糸逃げ凹部18cが形成される。ボビンケース5cの周壁部には、該ボビンケース5cが内かま3cに装着された状態で、糸逃げ凹部18cの回転方向A下流側の端部付近から予め定める角度θ11にわたって、回転方向A下流側に延び、内かま3cの開口端周縁部を部分的に覆うように、ボビンケース5cの半径方向外方に突出する外向き壁部37が形成される。外向き壁部37は、図15において、図解を容易にするため、斜線を付して示す。
【0044】
外向き壁部37は、回転軸線L2に平行な方向の厚さT1が約1mmであり、角度θ11は15°以上35°以下に選ばれる。また外向き壁部37の一半径線上におけるボビンケース5cの周壁部の外周面からの突出高さH1は、1mm以上1.5mm以下に選ばれ、内かま3cに接触して干渉しないように設定されている。
【0045】
このような外向き壁部37を有するボビンケース5cを用いることによって、下糸21が前述のように緩んだ際に、糸逃げ凹部18によって形成される凹所内に収容しきれずに内かま3cとボビンケース5cとの間から内かま開放端側(図15の紙面に垂直手前側)に下糸21が突出することを阻止し、糸越しする上糸(上糸ループ)との干渉を防いで、下糸21および上糸の不所望な聴力変化を防ぐことができる。
【0046】
図18は本発明のさらに他の実施形態の垂直全回転かま1dを示す斜視図であり、図19は垂直全回転かま1dに備えられる内かま3dの断面図であり、図20は内かま3dを図19の切断面線XX−XXから見た断面図である。ず18は図解を容易にするため、外かま2を省略して示し、図19は内かま3dを図20の切断面線XIX−XIXから見た断面を示す。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態の垂直全回転かま1dは、外かま2と、内かま3dと、ボビン4と、ボビンケース5cとを含んで構成される。内かま3dは、前述の糸逃げ凹部18と同様な糸逃げ凹部18dと、糸逃げ凹部18dの回転方向A下流側の端部付近から予め定める角度θ12にわたって、回転方向A下流側に延び、内かま3dの開口端周縁部の内周から装着されたボビンケース5の周壁部の外周面近傍までの隙間を塞ぐように、該内かま3dの開口端周縁部の内周に形成される内向き壁部38とを有する。内向き壁部38は、図18において、図解を容易にするため、斜線を付して示す。
【0048】
内向き壁部38は、回転軸線L2に平行な方向の厚さT2が約1mmであり、角度θ12は10°以上30°以下に選ばれる。また内向き壁部38の一半径線上における内かま3dの開口端周縁部の内周面からの突出高さH2は、1mm以上1.5mm以下に選ばれ、ボビンケース5に接触して干渉しないように設定されている。
【0049】
このような内向き壁部38を有する内かま3dを用いることによって、下糸21が前述のように緩んだ際に、糸逃げ凹部18dによって形成される凹所内に収容しきれずに内かま3dとボビンケース5との間から内かま開放端側(図19の左側)に下糸21が突出することを阻止し、糸越しする上糸(上糸ループ)との干渉を防いで、下糸21および上糸の不所望な張力変化を防ぐことができる。
【0050】
また、糸逃げ凹部18は、上流側底面部31を有するので、糸逃げ凹部18とボビンケース5の外周部との間の広い空隙に入り込む下糸21を、上流側底面部31によって針落ち孔11から離反する方向、すなわち回転方向A下流側へ案内し、下糸21が広い空隙内に留まって高密度になってしまうことを防ぐことができる。これによって広い空隙から下糸21をより一層円滑に排出させることができる。
【0051】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0052】
1,1a,1b,1c,1d 垂直全回転かま
2 外かま
3,3a,3b,3c,3d 内かま
4 ボビン
5,5c ボビンケース
6 縫針
7 針棒
8 下軸
9 剣先部
10 凹部
11 針落ち孔
12 周壁部
13 底部
14 スタッド
15 フランジ部
16 軌条
17 内周部
18;18a;18b1,18b2;18c 糸逃げ凹部
21 下糸
22 切欠き
23 切欠き
24 突部
25 ラッチ機構
26 操作レバー
27 係合片
28 係合凹所
30 底面部
31 上流側底面部
32 下流側底面部
33 糸調子ばね
35 下糸案内溝
36 針穴
37 外向き壁部
38 内向き壁部
図1
図2
図3
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図5
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